サイト10周年記念小説
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「さてと、じゃあそろそろこの辺で野営の準備でも始めるか」
「えーバウルでピューって街まで行きましょうよぉ~」
「ダメだよ、まだ依頼人さんから頼まれた仕事が終わってないんだから」
ユーリ達は今、ピピオニア大陸にいた
何故ピピオニア大陸に来ているか、それはカロル達のギルド凛々の明星が受けた仕事の場所が此処だったからだ
その仕事内容は失せ物捜しでこの大陸に来ていた時に魔物と遭遇し逃げる時に落としてしまったらしい
「・・・この大陸で失せ物捜しって、あの時と同じじゃない」
「マーカムさんのスコップの時ですね」
「あの時も確か魔物から逃げる時に落としたのだったわね」
「エステルが見つけたスコップを持ち帰ったから見つかったようなものじゃからの」
皆、以前遺跡の門のマーカムからスコップを探してきて欲しいと依頼された時の事を思い出し苦笑したりしていた
「それにこの辺りの魔物は一層して暴走も落ち着いたとは言え、まだ危険な事に変わりはありません」
「そうだね。セイの言う様に早めに野営の準備を始めた方が良いと思うよ」
「つー事で、諦めろよ、おっさん」
「ちぇえ~」
みんなにそう言われレイヴンは渋々諦めた
「じゃあいつものように料理とテントの準備、薪拾いと水汲みで分担しよう。今日の料理当番は・・・エステルだったわよね」
「はい! 頑張って皆さんに美味しい物を作ります!」
「練習の成果、期待してるね」
「はい!」
リアにそう言われエステルは気合い十分と言うように頷いた
が、
「エステリーゼ様、私も手伝いましょうか?」
「「「「「!?」」」」」
その言葉にフレン以外の全員が一斉に振り返った
「あ、いえ、その、大丈夫ですよ、フレン?」
「そうですか・・?」
「エステルのフォローならうちとジュディ姐でやるのじゃ。のう、エステル、ジュディ姐」
「ええ。私達に任せて頂戴」
「はい。心強い二人がいるので大丈夫ですよ!」
「フレン、お前はオレとラピードと一緒にテント張りだ」
「じゃ、じゃあおっさん達は薪拾いと水汲みに行きましょう」
「う、うん。行こうリタ、カロル」
「え、ええ、そうね」「う、うん!」
「・・・アスラ、ラピード、ユーリと一緒にフレンの事ちゃんと見張ってろよ」
「了解」「ワフ」
皆、何とかフレンが料理を作らないようにし、セイはユーリとラピードとアスラに見張りを頼みリア達と一緒に薪拾いと水汲みに向かった
「はぁ~、もうフレンちゃんの爆弾発言にはビックリするわ~」
「それには同感・・・」
「ホントだよね・・・」
「・・・お前等も一応被害者だからな」
「一応って・・・ι」
薪拾いと水汲みに向かいながらリア達は先程の事を話していた
リタもレイヴンもカロルも、そして野営地に残っているエステル達もフレンの料理がアレと言う事を知っているし実際に食べた事があるのでその味やその後の悲惨な光景の事も知っていた
「フレンのアレを見るとリアとユーリとセイが料理上手なのが納得いくよ・・・」
「何とかなんないわけ、あいつの料理?」
「何とか出来てたら俺達が苦労してねえよ・・・」
「そうよねえ、リアちゃんがトラウマになって引き籠もってたくらいだからねえ・・・ι」
「あ、はは・・・ι」
以前フレンの料理について話していた時にリアが子供の頃にその料理を食べてトラウマになり引き籠もっていた事も話した事があり、リアは苦笑するしかなかった
「まあともあれ、青年とアスラとわんこが見張ってるから大丈夫でしょ」
「だと良いけどね・・・」
そう話していると薪拾いと水汲みをするには良い場所に着いた
「この辺りで良いかな」
「そうだな。じゃあ二手に分かれるか」
「うん。じゃあジャンケンで決めよう」
「手っ取り早いし、それで良いんじゃない」
「リタっち、適当・・・ι」
「なら、グーの人は薪拾いでパーの人は水汲みでどう?」
「それでいくか。じゃあカロル、掛け声頼んだぞ」
「うん! じゃあ、いくよぉ~、ジャ~ンケン、ポン!」
こうしてジャンケンで薪拾いと水汲みに行く組みを決め、リアはレイヴンとカロルと一緒に薪拾いをする事となった
「・・・ふう、これでだいぶ集まったかな」
「おー、良い感じに集まったじゃないの」
あれから少しして薪を集め終わり、集めた薪を一カ所にまとめた
「三人だから思ったより早く終わったね」
「うん。じゃあみんなも待ってる事だし早く戻ろうか」
「はいよ。んじゃあリアちゃんは持てるだけ持ってね。後は俺様と少年が持つから」
そう言ってレイヴンは集めた薪を拾い抱えて歩き出そうとしたが、
「・・・・」
ふとあるものに目が止まってしまった
「? レイヴン?」
少し先を歩いていたリアとカロルはレイヴンが付いてこない事に気が付き振り返るとふと茂みの方を見ていた
「どうかしたの?」
「あーいやいや、魔物かと思ったけど見間違いだったわ」
「ええ! もう、驚かせないでよー!」
「だから見間違いって言ったでしょ。さ、早く戻りましょ」
そう言うとレイヴンはいつものように言ってリアとカロルの横を歩いて行き、その後をカロルが文句を言いながら歩き、
「・・・・・」
リアは何かを思っている顔をしながら二人の後を追った
そして夕食が済み、いつものようにみんな自由に過ごしていてレイヴンは散歩に出ていた
「・・・・自然と此処に来ちまうのか」
レイヴンは苦笑して言うとある場所を見つめた
そこは薪拾いに来た時の帰りに見つめていた茂みだった
その茂みの少し先に行くとある花が咲いていた
「・・・・」
レイヴンは自然とその花を一輪採り、その少し先にある川辺に腰掛けその花を見つめていた
「・・・・」
「それ、キルタンサスの花?」
「・・・リアちゃん」
ふと後ろから声が聞こえ振り返るといつの間にかリアがいた
「・・・着いて来てたの?」
「ごめん。薪拾いの帰りの時のレイヴンの表情が気になって・・・」
直ぐに謝った所もリアらしいが、更にあのほんの数分の出来事でも違いを解ってしまったのもリアらしいとレイヴンは思った
「レイヴン、その花好きなの?」
「・・・好きって言うか知り合いが好きだった花なのよ」
「レイヴンの知り合い? ・・花って事は女の人?」
「・・・まあね」
だが、レイヴンは何処か寂しそうに笑った
「・・・もしかして、騎士団時代の人・・?」
「・・・・リアちゃんには話した事なかったわね」
「え?」
そう言うとレイヴンは視線を少し空の方へと移して語り出した
「この花が好きだった奴は俺様以上の手練れで、家宝だっていう名弓を常に携えてた勇敢な騎士だったのよ」
「・・・・」
騎士団時代の知り合い、そして今のレイヴンの表情や口振りからしてその騎士は既に亡くなっているのだとリアは自然と感じ取り、レイヴンの隣に静かに腰掛けた
「あいつ、騎士団の任務も真面目、おまけに帝都の街の連中にかなり気に入られててね」
「帝都の街の人達に?」
「そう。巡回の時も困ってる奴を見掛けたら助けたり手伝ったり。小隊長だったけど、何処か他の騎士とも違ったから街の連中も気に入ってたんだろうね」
「・・・フレンのお父さん以外にもそう言う人が居たんだね」
リアの言葉にレイヴンは小さく笑った
レイヴンもフレンの父親の事は騎士団に居た頃に聞いていたのでどう言う人だったかも知っているし、同じく騎士団の隊長だった事も知っていたので、確かに似てるかもね、と付け足した
「出逢った頃は・・・まあどちらかと言えば最悪だったし、周りの騎士とも違った感じの女だったから騎士団の中でも浮いてたって感じだったかな・・・けど、下町の巡回地域の外れた所を一人で巡回したり遅くまで弓の練習をしたり、時々だったけど、下町に狩った魔物の肉を食べ物として与えたりと・・・普通の騎士じゃ考えつかないような事をやってたわね・・・」
「・・・!」
その言葉を聞きリアは一瞬何かに気付いたような顔をした
「ん? どうかした?」
「あ、ううん。・・もし良ければ続き、聞かせて?」
そう促されレイヴンは続きを話した
「・・・正直言うと、俺は最初、あいつに嫉妬してたのよ」
「・・・嫉妬?」
意外な言葉にリアは疑問を抱いた
「俺は騎士になりたくて騎士団に入った訳じゃないのよ。騎士団の大半が貴族の門弟で出来てる事は知ってるでしょ。適当に生活してて騎士団に居た頃も適当に仲間と連んで日々の生活を過ごしてたのよ。けど、あいつ、キャナリと会って、ずっと俺が探していたものをあいつは持ってたのよ・・」
「・・・それで、知らないうちにその人に嫉妬してたって事?」
「そう。ある事件がきっかけで俺はキャナリの小隊長に入る事になって、上官命令だって言われて副官をやる事になったのよ」
「・・・いきなり、副官?」
「普通は驚くわよね。俺様も言われた時は退き蒙を抜かれたからね」
「でもそれって、レイヴンの事をちゃんと認めてくれたからって事だよね?」
「ん? んー、まあ、そうね。実際その小隊に入ってからは今までとは違った生き方を送れてたのよ」
「なら、レイヴンにとってそのキャナリさんって人や小隊の人達との出会いは本当に良いものだったんだね」
リアのその笑顔と言葉を聞き、レイヴンは驚いてしまう
今まで気にした事はなかったがリアの言葉でそうだったんだと、改めて気付き、そして先程のリアの笑顔が一瞬だけだがある人物と重なってしまった
「・・・・そうね。・・・けど、あの戦争でみんないなくなっちまったけどな」
「・・・・」
戦争、それは紛れもなくあの人魔戦争の事だ
レイヴンも人魔戦争に参加していて大事なものを沢山失ってしまった事をリアも知っていた
「・・・此処まで話したの、リアちゃんが初めてだわ」
「そうなの?」
「ユーリ達・・と言うか、主にリタっちや嬢ちゃん達に聞かれた時もかるーくしか話してないからね。リアちゃんって聞き上手だから自然と話しちゃうのかもね」
「そう?」
「そうよ」
「でも私は、レイヴンからその話を聞けて良かったって思うよ」
「え?」
リアの言葉に今度はレイヴンが驚きリアを見た
「レイヴンにとってあの人魔戦争の事は本当にツラい事だらけだけど、今もその人達の事を大事に思ってるって解ったし、きっとキャナリさん達もレイヴンがそう思ってるって解って嬉しいと思ってるよ」
「・・・そう、かね・・」
「うん。それにレイヴンの話を聞いて、私も思ってた事が一つ解けたの」
「思ってた事?」
「さっき下町に狩った魔物を食べ物として配ってくれてたって言ったでしょ。この話し、小さい頃にハンクスさんや下町のみんなから聞いた事があったの」
リア達がまだ小さな頃から下町に騎士が来た事は何度もある
平民出身の騎士が下町を巡回している所や、下町の住民の民家を面白半分で荒らし盗賊と同じような振る舞いをして下町の人達の金品や食料を奪っていく騎士、そして、もう一つは先程話題に出た貴族と平民が一緒になった小隊が下町を巡回したり守ってくれたり、時々だが狩った魔物を食べ物として配ってくれていた騎士、の三種類の騎士に分かれていた
今でも前者二つは続いているが、その小隊があの人魔戦争で無くなるまでは下町の住民も帝都の街の人達と同じようにその小隊に感謝をしていた
「下町はみんなで協力して食べ物を作ったり育てたりしてるけど、それでも生活が厳しいから魔物の肉を持って来てくれるが本当に有り難かったし、凄く感謝してたんだ」
それはレイヴンも実際にその現場を何度も見ていたのでその光景は直ぐに浮かんだ
「だから、・・ありがとう、レイヴン」
「此処でリアちゃんがお礼言うの?」
「レイヴンにとっては過去の事かもしれないけど、下町のみんなの事助けてくれてたから。それに、私もずっとその騎士の人達にお礼が言いたいって思ってたから。だから、ありがとう」
ニコリと笑ってリアはそう言うとレイヴンはまた目を瞠った
本当の騎士、
それはキャナリがずっと目指していたものだった
久し振りに聞いたその言葉にあの頃の思い出が蘇り複雑そうな顔をしたけど、直ぐに参ったな・・・と言う様に笑った
「・・・ほんっと、たまにだけど、リアちゃんってキャナリと似てるって思っちゃうのよね」
「・・・え?」
レイヴンの言葉にリアはキョトンとしたような顔をしたが、レイヴンは小さく微笑んで軽く目を閉じた
(芯の強い所とか手練れな所とか、仲間思いな所とか・・・たまにだけど、笑顔とか・・本当に色々・・・)
色々な事を思いながらレイヴンは小さく笑った
「・・・そんなに似てるの? そのキャナリさんって人に?」
「まあね。けど、リアちゃんの方が魅力的よ」
「ええ!///」
ふといつもの口調でウインクをして言うレイヴンの言葉にリアは少し慌ててしまう
「けど、ありがとねリアちゃん。俺様の話聞いてくれて」
「私の方こそ話し聞かせてくれて、みんなを助けてくれてありがとう」
「・・・その事はもう言ってば」
「ふふっ・・・あ、」
照れ隠しと言う様にレイヴンはそう言って手に持っていたキルタンサスの花を川に投げ、リアもそれに気付き川の中に落ちたキルタンサスの花を見た
(・・・キャナリ、俺は今あんたに似た子や賑やかな連中と楽しくやってるよ。この先どうなるかはまだ解んないけど、お前も、あいつ等と一緒にゆっくりしてくれや)
レイヴンは流れて行くキルタンサスの花を見つめそう思った後、軽く目を閉じてリアに声を掛けた
「さ、そろそろ青年達の所に戻りますか」
「そうだね。あんまり遅くなると心配されるし」
「そうそう、リアちゃんと二人きりだったーって知ったら青年達やリタっちがコワイから」
その様子が浮かんだのかリアはくすくすと笑っていた
「あ、リアちゃん、さっき話した事だけど・・・」
「うん、勿論みんなには言わないよ」
「・・・ありがとね」
ニコリとして言うリアにレイヴンは小さくお礼を言うとリアの頭を軽く撫でて歩き出し、リアもその隣を並んで歩き出した
それは一つの花が思い出させた大事な思い出と辛い過去、
どちらも心の痛みだが、今となってはどちらも良い思い出になり始めている
自分を必要とし、前に進めてくれる新たな大事な仲間達と出逢ったから ――
その思いを受け取ったかのようにキルタンサスの花は風に揺れ、川に流れていたキルタンサスの花も月の光を受けて綺麗に輝いていた
その凛々しき華は君に似ている
end.
あとがき
と事でサイト10周年記念小説、レイヴン編何だったでしょうか?
この話しは昔、虚空の仮面を読み終わった後に仕事か学校か病院行く時に電車に乗ってて思い付いたものを携帯にメモしてて書こうかどうしようかと保留にしてたものですw
最初はやっぱりパーティーメンバー全員との会話は欲しかったのでみんなに登場して貰いましたがw、や~フレンが料理を、って辺りは書いててほんと楽しかったww
みんなならああ言う反応確実にするだろうからねww
きっとユーリとアスラとラピードが見張っててくれたお陰でエステルとジュディスとパティの料理は美味しく出来上がったでしょうww
んで、此処から本編w(←え?w)
久々にこの話を書いたので小説の方読みながら書こうかと思ったけど、キャナリとの辺りを書きたかったのでドラマCD(前編の数トラックのみ)を聞いて一部取り入れて書いてみました(ジュディス編のあとがきにも書きましたが、本を片付けている棚の下の方に埋まっていて取り出せなかったのもあるので・・・ι)
・・・泣かない所だけ書いたはずだから泣いてないと思いたいιww
ゲーム(&夢小説)本編の流れで行くとタイミング的にリアちゃんはこの話テムザで聞いてないだろうと思ったので今回テムザで話した以上の事も話してみました
個人的にもキャナリ隊の人達も好きだったので今回ちょこっとでも小説で書けて良かったし、レイヴンと二人だけで話すってのも久々に書いたので書けて良かったです(後、何気にこの小説のタイトルも気に入ってますw)
それと、やっぱり『本当の騎士』ってのはキャナリもだし、勿論ダミュロン&シュヴァーン=レイヴンって意味合いもあるのでこの言葉もちゃんと使いました
此処を理解してるとゲーム本編でフレンが言った「あの人は本当の騎士だった・・・」って言葉が良く染みますよね・・・
さて、レイヴン編は以上となりますが、まだまだ残りのパーティメンバーとの話が残っています
まだ読んでないキャラ達がいたら其方も是非とも読んで頂けたらと思います!
改めて、サイト10周年、本当に有り難う御座います!!
これからも地道にやっていきますので、今後とも宜しくお願いします!
それからよければ・サイト10周年記念小説アンケートのアンケートにもご協力をお願いします。
10周年:2019.07.18
完成:2019.05.05
「えーバウルでピューって街まで行きましょうよぉ~」
「ダメだよ、まだ依頼人さんから頼まれた仕事が終わってないんだから」
ユーリ達は今、ピピオニア大陸にいた
何故ピピオニア大陸に来ているか、それはカロル達のギルド凛々の明星が受けた仕事の場所が此処だったからだ
その仕事内容は失せ物捜しでこの大陸に来ていた時に魔物と遭遇し逃げる時に落としてしまったらしい
「・・・この大陸で失せ物捜しって、あの時と同じじゃない」
「マーカムさんのスコップの時ですね」
「あの時も確か魔物から逃げる時に落としたのだったわね」
「エステルが見つけたスコップを持ち帰ったから見つかったようなものじゃからの」
皆、以前遺跡の門のマーカムからスコップを探してきて欲しいと依頼された時の事を思い出し苦笑したりしていた
「それにこの辺りの魔物は一層して暴走も落ち着いたとは言え、まだ危険な事に変わりはありません」
「そうだね。セイの言う様に早めに野営の準備を始めた方が良いと思うよ」
「つー事で、諦めろよ、おっさん」
「ちぇえ~」
みんなにそう言われレイヴンは渋々諦めた
「じゃあいつものように料理とテントの準備、薪拾いと水汲みで分担しよう。今日の料理当番は・・・エステルだったわよね」
「はい! 頑張って皆さんに美味しい物を作ります!」
「練習の成果、期待してるね」
「はい!」
リアにそう言われエステルは気合い十分と言うように頷いた
が、
「エステリーゼ様、私も手伝いましょうか?」
「「「「「!?」」」」」
その言葉にフレン以外の全員が一斉に振り返った
「あ、いえ、その、大丈夫ですよ、フレン?」
「そうですか・・?」
「エステルのフォローならうちとジュディ姐でやるのじゃ。のう、エステル、ジュディ姐」
「ええ。私達に任せて頂戴」
「はい。心強い二人がいるので大丈夫ですよ!」
「フレン、お前はオレとラピードと一緒にテント張りだ」
「じゃ、じゃあおっさん達は薪拾いと水汲みに行きましょう」
「う、うん。行こうリタ、カロル」
「え、ええ、そうね」「う、うん!」
「・・・アスラ、ラピード、ユーリと一緒にフレンの事ちゃんと見張ってろよ」
「了解」「ワフ」
皆、何とかフレンが料理を作らないようにし、セイはユーリとラピードとアスラに見張りを頼みリア達と一緒に薪拾いと水汲みに向かった
「はぁ~、もうフレンちゃんの爆弾発言にはビックリするわ~」
「それには同感・・・」
「ホントだよね・・・」
「・・・お前等も一応被害者だからな」
「一応って・・・ι」
薪拾いと水汲みに向かいながらリア達は先程の事を話していた
リタもレイヴンもカロルも、そして野営地に残っているエステル達もフレンの料理がアレと言う事を知っているし実際に食べた事があるのでその味やその後の悲惨な光景の事も知っていた
「フレンのアレを見るとリアとユーリとセイが料理上手なのが納得いくよ・・・」
「何とかなんないわけ、あいつの料理?」
「何とか出来てたら俺達が苦労してねえよ・・・」
「そうよねえ、リアちゃんがトラウマになって引き籠もってたくらいだからねえ・・・ι」
「あ、はは・・・ι」
以前フレンの料理について話していた時にリアが子供の頃にその料理を食べてトラウマになり引き籠もっていた事も話した事があり、リアは苦笑するしかなかった
「まあともあれ、青年とアスラとわんこが見張ってるから大丈夫でしょ」
「だと良いけどね・・・」
そう話していると薪拾いと水汲みをするには良い場所に着いた
「この辺りで良いかな」
「そうだな。じゃあ二手に分かれるか」
「うん。じゃあジャンケンで決めよう」
「手っ取り早いし、それで良いんじゃない」
「リタっち、適当・・・ι」
「なら、グーの人は薪拾いでパーの人は水汲みでどう?」
「それでいくか。じゃあカロル、掛け声頼んだぞ」
「うん! じゃあ、いくよぉ~、ジャ~ンケン、ポン!」
こうしてジャンケンで薪拾いと水汲みに行く組みを決め、リアはレイヴンとカロルと一緒に薪拾いをする事となった
「・・・ふう、これでだいぶ集まったかな」
「おー、良い感じに集まったじゃないの」
あれから少しして薪を集め終わり、集めた薪を一カ所にまとめた
「三人だから思ったより早く終わったね」
「うん。じゃあみんなも待ってる事だし早く戻ろうか」
「はいよ。んじゃあリアちゃんは持てるだけ持ってね。後は俺様と少年が持つから」
そう言ってレイヴンは集めた薪を拾い抱えて歩き出そうとしたが、
「・・・・」
ふとあるものに目が止まってしまった
「? レイヴン?」
少し先を歩いていたリアとカロルはレイヴンが付いてこない事に気が付き振り返るとふと茂みの方を見ていた
「どうかしたの?」
「あーいやいや、魔物かと思ったけど見間違いだったわ」
「ええ! もう、驚かせないでよー!」
「だから見間違いって言ったでしょ。さ、早く戻りましょ」
そう言うとレイヴンはいつものように言ってリアとカロルの横を歩いて行き、その後をカロルが文句を言いながら歩き、
「・・・・・」
リアは何かを思っている顔をしながら二人の後を追った
そして夕食が済み、いつものようにみんな自由に過ごしていてレイヴンは散歩に出ていた
「・・・・自然と此処に来ちまうのか」
レイヴンは苦笑して言うとある場所を見つめた
そこは薪拾いに来た時の帰りに見つめていた茂みだった
その茂みの少し先に行くとある花が咲いていた
「・・・・」
レイヴンは自然とその花を一輪採り、その少し先にある川辺に腰掛けその花を見つめていた
「・・・・」
「それ、キルタンサスの花?」
「・・・リアちゃん」
ふと後ろから声が聞こえ振り返るといつの間にかリアがいた
「・・・着いて来てたの?」
「ごめん。薪拾いの帰りの時のレイヴンの表情が気になって・・・」
直ぐに謝った所もリアらしいが、更にあのほんの数分の出来事でも違いを解ってしまったのもリアらしいとレイヴンは思った
「レイヴン、その花好きなの?」
「・・・好きって言うか知り合いが好きだった花なのよ」
「レイヴンの知り合い? ・・花って事は女の人?」
「・・・まあね」
だが、レイヴンは何処か寂しそうに笑った
「・・・もしかして、騎士団時代の人・・?」
「・・・・リアちゃんには話した事なかったわね」
「え?」
そう言うとレイヴンは視線を少し空の方へと移して語り出した
「この花が好きだった奴は俺様以上の手練れで、家宝だっていう名弓を常に携えてた勇敢な騎士だったのよ」
「・・・・」
騎士団時代の知り合い、そして今のレイヴンの表情や口振りからしてその騎士は既に亡くなっているのだとリアは自然と感じ取り、レイヴンの隣に静かに腰掛けた
「あいつ、騎士団の任務も真面目、おまけに帝都の街の連中にかなり気に入られててね」
「帝都の街の人達に?」
「そう。巡回の時も困ってる奴を見掛けたら助けたり手伝ったり。小隊長だったけど、何処か他の騎士とも違ったから街の連中も気に入ってたんだろうね」
「・・・フレンのお父さん以外にもそう言う人が居たんだね」
リアの言葉にレイヴンは小さく笑った
レイヴンもフレンの父親の事は騎士団に居た頃に聞いていたのでどう言う人だったかも知っているし、同じく騎士団の隊長だった事も知っていたので、確かに似てるかもね、と付け足した
「出逢った頃は・・・まあどちらかと言えば最悪だったし、周りの騎士とも違った感じの女だったから騎士団の中でも浮いてたって感じだったかな・・・けど、下町の巡回地域の外れた所を一人で巡回したり遅くまで弓の練習をしたり、時々だったけど、下町に狩った魔物の肉を食べ物として与えたりと・・・普通の騎士じゃ考えつかないような事をやってたわね・・・」
「・・・!」
その言葉を聞きリアは一瞬何かに気付いたような顔をした
「ん? どうかした?」
「あ、ううん。・・もし良ければ続き、聞かせて?」
そう促されレイヴンは続きを話した
「・・・正直言うと、俺は最初、あいつに嫉妬してたのよ」
「・・・嫉妬?」
意外な言葉にリアは疑問を抱いた
「俺は騎士になりたくて騎士団に入った訳じゃないのよ。騎士団の大半が貴族の門弟で出来てる事は知ってるでしょ。適当に生活してて騎士団に居た頃も適当に仲間と連んで日々の生活を過ごしてたのよ。けど、あいつ、キャナリと会って、ずっと俺が探していたものをあいつは持ってたのよ・・」
「・・・それで、知らないうちにその人に嫉妬してたって事?」
「そう。ある事件がきっかけで俺はキャナリの小隊長に入る事になって、上官命令だって言われて副官をやる事になったのよ」
「・・・いきなり、副官?」
「普通は驚くわよね。俺様も言われた時は退き蒙を抜かれたからね」
「でもそれって、レイヴンの事をちゃんと認めてくれたからって事だよね?」
「ん? んー、まあ、そうね。実際その小隊に入ってからは今までとは違った生き方を送れてたのよ」
「なら、レイヴンにとってそのキャナリさんって人や小隊の人達との出会いは本当に良いものだったんだね」
リアのその笑顔と言葉を聞き、レイヴンは驚いてしまう
今まで気にした事はなかったがリアの言葉でそうだったんだと、改めて気付き、そして先程のリアの笑顔が一瞬だけだがある人物と重なってしまった
「・・・・そうね。・・・けど、あの戦争でみんないなくなっちまったけどな」
「・・・・」
戦争、それは紛れもなくあの人魔戦争の事だ
レイヴンも人魔戦争に参加していて大事なものを沢山失ってしまった事をリアも知っていた
「・・・此処まで話したの、リアちゃんが初めてだわ」
「そうなの?」
「ユーリ達・・と言うか、主にリタっちや嬢ちゃん達に聞かれた時もかるーくしか話してないからね。リアちゃんって聞き上手だから自然と話しちゃうのかもね」
「そう?」
「そうよ」
「でも私は、レイヴンからその話を聞けて良かったって思うよ」
「え?」
リアの言葉に今度はレイヴンが驚きリアを見た
「レイヴンにとってあの人魔戦争の事は本当にツラい事だらけだけど、今もその人達の事を大事に思ってるって解ったし、きっとキャナリさん達もレイヴンがそう思ってるって解って嬉しいと思ってるよ」
「・・・そう、かね・・」
「うん。それにレイヴンの話を聞いて、私も思ってた事が一つ解けたの」
「思ってた事?」
「さっき下町に狩った魔物を食べ物として配ってくれてたって言ったでしょ。この話し、小さい頃にハンクスさんや下町のみんなから聞いた事があったの」
リア達がまだ小さな頃から下町に騎士が来た事は何度もある
平民出身の騎士が下町を巡回している所や、下町の住民の民家を面白半分で荒らし盗賊と同じような振る舞いをして下町の人達の金品や食料を奪っていく騎士、そして、もう一つは先程話題に出た貴族と平民が一緒になった小隊が下町を巡回したり守ってくれたり、時々だが狩った魔物を食べ物として配ってくれていた騎士、の三種類の騎士に分かれていた
今でも前者二つは続いているが、その小隊があの人魔戦争で無くなるまでは下町の住民も帝都の街の人達と同じようにその小隊に感謝をしていた
「下町はみんなで協力して食べ物を作ったり育てたりしてるけど、それでも生活が厳しいから魔物の肉を持って来てくれるが本当に有り難かったし、凄く感謝してたんだ」
それはレイヴンも実際にその現場を何度も見ていたのでその光景は直ぐに浮かんだ
「だから、・・ありがとう、レイヴン」
「此処でリアちゃんがお礼言うの?」
「レイヴンにとっては過去の事かもしれないけど、下町のみんなの事助けてくれてたから。それに、私もずっとその騎士の人達にお礼が言いたいって思ってたから。だから、ありがとう」
ニコリと笑ってリアはそう言うとレイヴンはまた目を瞠った
本当の騎士、
それはキャナリがずっと目指していたものだった
久し振りに聞いたその言葉にあの頃の思い出が蘇り複雑そうな顔をしたけど、直ぐに参ったな・・・と言う様に笑った
「・・・ほんっと、たまにだけど、リアちゃんってキャナリと似てるって思っちゃうのよね」
「・・・え?」
レイヴンの言葉にリアはキョトンとしたような顔をしたが、レイヴンは小さく微笑んで軽く目を閉じた
(芯の強い所とか手練れな所とか、仲間思いな所とか・・・たまにだけど、笑顔とか・・本当に色々・・・)
色々な事を思いながらレイヴンは小さく笑った
「・・・そんなに似てるの? そのキャナリさんって人に?」
「まあね。けど、リアちゃんの方が魅力的よ」
「ええ!///」
ふといつもの口調でウインクをして言うレイヴンの言葉にリアは少し慌ててしまう
「けど、ありがとねリアちゃん。俺様の話聞いてくれて」
「私の方こそ話し聞かせてくれて、みんなを助けてくれてありがとう」
「・・・その事はもう言ってば」
「ふふっ・・・あ、」
照れ隠しと言う様にレイヴンはそう言って手に持っていたキルタンサスの花を川に投げ、リアもそれに気付き川の中に落ちたキルタンサスの花を見た
(・・・キャナリ、俺は今あんたに似た子や賑やかな連中と楽しくやってるよ。この先どうなるかはまだ解んないけど、お前も、あいつ等と一緒にゆっくりしてくれや)
レイヴンは流れて行くキルタンサスの花を見つめそう思った後、軽く目を閉じてリアに声を掛けた
「さ、そろそろ青年達の所に戻りますか」
「そうだね。あんまり遅くなると心配されるし」
「そうそう、リアちゃんと二人きりだったーって知ったら青年達やリタっちがコワイから」
その様子が浮かんだのかリアはくすくすと笑っていた
「あ、リアちゃん、さっき話した事だけど・・・」
「うん、勿論みんなには言わないよ」
「・・・ありがとね」
ニコリとして言うリアにレイヴンは小さくお礼を言うとリアの頭を軽く撫でて歩き出し、リアもその隣を並んで歩き出した
それは一つの花が思い出させた大事な思い出と辛い過去、
どちらも心の痛みだが、今となってはどちらも良い思い出になり始めている
自分を必要とし、前に進めてくれる新たな大事な仲間達と出逢ったから ――
その思いを受け取ったかのようにキルタンサスの花は風に揺れ、川に流れていたキルタンサスの花も月の光を受けて綺麗に輝いていた
その凛々しき華は君に似ている
end.
あとがき
と事でサイト10周年記念小説、レイヴン編何だったでしょうか?
この話しは昔、虚空の仮面を読み終わった後に仕事か学校か病院行く時に電車に乗ってて思い付いたものを携帯にメモしてて書こうかどうしようかと保留にしてたものですw
最初はやっぱりパーティーメンバー全員との会話は欲しかったのでみんなに登場して貰いましたがw、や~フレンが料理を、って辺りは書いててほんと楽しかったww
みんなならああ言う反応確実にするだろうからねww
きっとユーリとアスラとラピードが見張っててくれたお陰でエステルとジュディスとパティの料理は美味しく出来上がったでしょうww
んで、此処から本編w(←え?w)
久々にこの話を書いたので小説の方読みながら書こうかと思ったけど、キャナリとの辺りを書きたかったのでドラマCD(前編の数トラックのみ)を聞いて一部取り入れて書いてみました(ジュディス編のあとがきにも書きましたが、本を片付けている棚の下の方に埋まっていて取り出せなかったのもあるので・・・ι)
・・・泣かない所だけ書いたはずだから泣いてないと思いたいιww
ゲーム(&夢小説)本編の流れで行くとタイミング的にリアちゃんはこの話テムザで聞いてないだろうと思ったので今回テムザで話した以上の事も話してみました
個人的にもキャナリ隊の人達も好きだったので今回ちょこっとでも小説で書けて良かったし、レイヴンと二人だけで話すってのも久々に書いたので書けて良かったです(後、何気にこの小説のタイトルも気に入ってますw)
それと、やっぱり『本当の騎士』ってのはキャナリもだし、勿論ダミュロン&シュヴァーン=レイヴンって意味合いもあるのでこの言葉もちゃんと使いました
此処を理解してるとゲーム本編でフレンが言った「あの人は本当の騎士だった・・・」って言葉が良く染みますよね・・・
さて、レイヴン編は以上となりますが、まだまだ残りのパーティメンバーとの話が残っています
まだ読んでないキャラ達がいたら其方も是非とも読んで頂けたらと思います!
改めて、サイト10周年、本当に有り難う御座います!!
これからも地道にやっていきますので、今後とも宜しくお願いします!
それからよければ・サイト10周年記念小説アンケートのアンケートにもご協力をお願いします。
10周年:2019.07.18
完成:2019.05.05