サイト10周年記念小説
夢主名変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
此処は言霊使いの故郷、リアとセイは新年の準備の為に故郷に戻って来ていた
アスラ達神将も毎年同じように各々掃除をしたり飾り付けをしたりと準備を手伝っていた
「大掃除はだいぶ済んだみたいね」
「うん、後は各々が気になる所だじゃないかな?」
「飾り付けもばっちりだし、後は買い出しくらいじゃない?」
「俺達がやる事はな」
「後何か遭ったっけ?」
「何って、今年はリアとセイが舞う年じゃない!」
舞と言うのは毎年新年を迎えた時に披露するもので毎年順番で故郷の誰かがやっているのだが、今年はリアとセイの番だった
「リアとセイなら今練習してるよ」
二人の練習を相棒であるアスラとフキ、ハクスイとリンコウ、ナセアがやっていたのだった
「リアもセイも小さい頃から舞の練習やってたから心配はないと思うけど」
「でも大勢の前で舞うのは久し振りだからね」
「街の人達もリアとセイが舞うって知ってからずっと期待してるから、ちょっと緊張はしてるかもね」
センキの言う通り、リアとセイが舞うと発表された時に街の人達は大いに歓声を上げていた
丁度その頃リアとセイは故郷にいなかったからその熱気や歓声を知らなかったが、故郷に戻って来た時にイサキや神将達に話を聞き、更に街に繰り出した時にも街の人達に囲まれいつも以上に声を掛けられその期待を肌で感じていた
「後でリアとセイの様子見に行ってみる?」
「そうね。休憩の時に行ってみましょうか」
「でも片付けや買い出しが先だぞ」
「わ、解ってるわよ~」
「んじゃさっさと終わらせようぜ」
そう言って掃除の続きや買い出しに出掛ける準備を始めた
一方、リアとセイは修行の時に使う部屋で舞の練習をしていた
部屋には笛と琴の音が響きその音に合わせてリアとセイは中央で舞っていた
「良し、一旦休憩にするか」
何度か練習をして、今の一曲でだいぶコツが掴めたりタイミングも合ってきたものあり、一度休憩を挟む事にした
「ふう・・・」
リアは舞の手と緊張と集中の糸を解くように息を吐いた
「久し振りに舞って緊張でもしてたか?」
そう声を掛けたのはリアと一緒に舞っていたセイだった
「ちょっとね。何度もやってるけどやっぱり新年の舞って特別なものだからね」
新年の舞はその名の通り新年を迎えた時に舞うものなので新年を迎えたと言う気持ちがあり、舞う方も見る人達も楽しみにしているものなので舞の中でも特別なものだった
「特に今回はリアとセイが一緒に舞うからみんな期待してるからね」
「はい、皆さんとても楽しみにしていましたよ」
「勿論我々もですけれど」
ニコリとして言うハクスイとナセアの言葉にその場に居たアスラとフキ、リンコウも同じように頷いた
「ありがとう。私も兄さんと一緒に舞うのって久し振りだから楽しみにしてるんだ」
「それは俺も同じだな。昔舞ってた時より自然と感覚が掴めてるからな」
子供の頃から舞は修行の一環としてやってきていたので時々セイもリアと一緒に舞をやっていた事があった
「練習では何度か舞った事があったが、人前で披露する事は殆どなかったからな」
フキの言う様に意外とリアとセイが一緒に舞を披露すると言う事はあるようでなかった
子供の頃に何度か舞った事があるくらいで新年の舞を二人で一緒に舞うと言うのは実はこれが初めてだった
だから街の人達も姫様と若様が一緒に舞うと言う事を楽しみにしてるのだった
「リア、セイ、入るわよ」
そう声が聞こえ襖を開けて入って来たのはイサキだった
「イサキ、どうしたの?」
「そろそろ休憩する頃だろうと思ってお茶を持って来たの」
「ありがとな」
イサキは人数分のお茶を持って来ていてリア達はお茶を飲み一息吐いた
「どう、練習捗ってる?」
「なんとかな」
「その割に余裕そうに聞こえるけど?」
「兄さんとだからタイミング取りやすいからね」
「まあな」
「ふふ、流石仲良し兄妹ね」
二人の言葉にイサキは二人らしいと思いくすくすと笑った
「そう言えば他の連中はどうしている?」
「まだ掃除してる組みと買い出しに行った組みが居るわよ。それと準備ももう少し掛かりそうって」
「なら、準備の方を手伝った方が良いかもしれませんね」
「そうですね・・・。ですが舞の練習も見なくてはいけませんし・・・」
「なら一度解散して後でまたやるのはどうだ?」
「そうだね、リアとセイも一息吐いたり気分転換するのも良いだろうし」
確かに此処何日かはずっとこの部屋で舞の練習をやったりしていて外に出ている回数も減っている
気分転換と言う意味で外に出てみるのも良いかもしれない
「そうだな、たまには二人でゆっくりしてくると良いだろう」
「じゃあそうしようかな。兄さんも良い?」
「ああ。なら、ちょっと街でもぶらつくか」
「うん」
こうして一旦練習を切り上げ、リアとセイは町に繰り出す為に一度部屋に戻った
「あ、雪、だいぶ積もってたんだ」
あれから少ししてリアとセイは外に出てきた
庭にも雪が積もっているから積もっているのは知っていたが、外に出ていなかったからどのくらい積もっているかは解らなかった
「結構積もってるな。足元気を付けて歩けよ」
「うん。兄さんと二人で出掛けるのってほんとに久し振りだよね」
「そうだな。故郷の外 にいる時はあいつ等と行動する事が多かったし、仕事か買い出しの時くらいだったもんな」
「うん、でもゆっくり過ごすのは故郷に戻って来てからもなかったもんね」
お互いゆっくりと過ごしてはいたが、兄妹二人でゆっくりと過ごす事はなかった
「こっちに戻って来るとイサキや神将達 がいるからまた賑やかだもんね」
「どっちにいても騒がしいけどな」
そう言うもその騒がしさはどちらも五月蠅いと言う意味合いではなく、どちらもリアとセイにとっては居心地の良いものだった
「それにしても、今年は良く積もってるな」
「当日はそんなに積もってないと良いね・・」
この景色も綺麗だし、冬だから雪が積もっているのは当然だが、今以上に積もると当日は寒くなったり舞を披露するスペースも減ってしまうかもしれない
「まあ、姫様に若様!」
そう話していると町の中心部までやって来ていて、商売をしている一件の女将さんがリアとセイに気が付いた
「おお、本当だ。お二人揃ってお買い物ですか?」
「なら、是非うちに寄って行って下さいよ!」
「うちにも是非!」
それにつられるように次々と街の人達も声を掛けてきた
「こう言ってくれてるし、何か食って行くか」
「うん。じゃあおしるこ一つお願いします」
「俺も。あ、俺は甘さ控えめのやつで」
「はい、かしこまりました」
注文を終え、暫くしておしるこが運ばれてきておしるこを啜ると、少し寒い中歩いてきたからか身体が温まりだした
それから暫くゆっくりした後、店を出てまた町の中を見て回った
「はあ、思いっきりリフレッシュ出来た」
「確かにな」
あれから街中を離れ家へと戻る道を歩いていた
リアもセイもずっと新年の舞の練習をしていたから普段より気を張っていたようだった
「でもやっぱり街のみんなも期待してたね」
「行く先々で楽しみにしてるって声掛けられたからな」
街の人達が楽しみにしている事はリアもセイも知っていたが直接そう言われたのが今日が始めてだったので、改めて期待されてるんだな、と実感したのだった
「余計緊張してきたか?」
「うん。でも、直接楽しみにしてます。って言われて緊張もあるけど、嬉しかったから、当日は兄さんと一緒に良い舞を披露したいなって思ったの」
その笑顔は舞の練習をしていた時や先程まで街に居た時に見せた笑顔よりも、いつも自分達に見せているリアの心からの笑顔だった
「そっか、そう思えるようになったなら良かったな」
セイは安堵したように笑い、リアの頭を撫でた
「兄さんは? ちゃんと息抜き出来た?」
「ああ。お陰様でな」
セイも意識はしていなかったが、リアと同じで根を詰めていたようで、今こうやってゆっくりと出来る時間のお陰で普段の感覚が戻ってきていた
リアもセイのその笑顔を見てセイと同じように安堵して微笑んだ
「・・私ね、兄さんと一緒に舞を披露出来るって聞いて嬉しかったんだ」
「ん?」
突然リアが言った事にセイは疑問を持ちリアを見た
「兄さんと一緒に今まで色々やってきたけど、仕事とか世界の事とかと関係ない事って少なかったじゃない?」
そう言われ振り返ってみると、リアもセイも子供の頃から言霊使いの仕事もユーリ達の世界での表向きの仕事である情報屋の仕事もやっていたし、あの世界の命運を掛けた戦いも共に戦い乗り越えてきた
戦いが終わり一部変化があったり平穏な生活を送れるようになったとは言っても、今まで通り言霊使いの仕事も情報屋の仕事もやっていてそれ以外の事で二人で何かをやったりする時間もなかったかもしれない
「だから一緒に舞を披露する番だって聞いた時、凄く嬉しかったんだ」
リアはまた心からの笑顔を見せ、セイも微笑んでまたリアの頭を撫でた
「ああ、俺もだよ。・・・ついでだし、今渡しておくか」
「?」
「そのままじっとしておけよ」
「え? うん」
言うとセイは持っていた紙袋から何かを取り出しリアの首に巻いた
「・・・マフラー?」
「さっき店で見掛けてな。こういう色合いお前好きだろ」
首元に巻かれたマフラーを見ると確かに自分が好きな色合いを使ったものだった
「寒いのは平気っつっても風邪でも引いたら舞も披露出来なくなるし、五月蠅いのが何人か居るだろ」
「うん、ありがとう兄さん!」
「!」
言うとリアは嬉しくなりそのままセイに抱きついた
「・・・お前な、急に抱きつくなよ」
「だって、嬉しかったんだもん」
「・・・ほんと、お前って無意識に大胆な所があるよな」
「え?」
「いや、聞こえてないなら良いよ別に」
昔から無意識に大胆な所があり、セイだけじゃなくユーリもフレンも困ってしまう所が何度かあった
それを言おうとも思った事はあるが、それもリアらしさといえばらしさなのかもしれないと三人は思っていた
「このマフラー大事にするね」
「ああ。じゃ、そろそろ帰るか」
「うん」
言うとリアはニコリと微笑んで頷き、セイの隣に並び歩いて帰った
そして当日、
「うわぁ、やっぱり今年はいっぱい集まったね・・・」
新年の舞が披露される舞台の隅からアスラは集まっている人達を見てそう声を漏らした
「これはリアとセイじゃなくても緊張するわな」
フキも同じように言うとイサキも同意するように頷いた
「特に今年の舞は特別ですからね」
ふとそう声が聞こえ振り返ると、
「! シエラさん!」
「お久し振りです、リア様、セイ様」
そこにいたのはシエラだった
「なんだ、見に来てたのか」
「勿論ですよ、今年は姫様と若様のお二人が新年の舞を披露するんですから」
「・・・あんたからその呼び方されるの違和感あるな」
ニコリとして言うシエラにセイは若様呼びされ聞き慣れていないからか何処かくすぐったさを感じていた
「イサキからも呼ばれないからね」
「そうね、呼ぶ事なんて滅多にないわね」
そう言うとリアとイサキとシエラは可笑しくなって笑ってしまい、セイはまた何処か居心地が悪くなっていた
「リア様、そのマフラーお似合いですね」
言うとシエラはリアが首に巻いているマフラーを見た
「ありがとう御座います。これ、兄さんから貰ったんです」
「セイ様から・・?」
「・・・今、ユーリじゃなくて?、って思いましたよね?」
「・・ええ」
イサキは小声でシエラだけに聞こえる声でそう言うとシエラは頷いた
「? どうかしましたか?」
「いえ、やっぱり仲の良い兄妹だなと思いまして」
「・・・・・」
「?」
シエラの言葉に何かを感じたのかセイはまた居心地の悪そうな顔をし、イサキとアスラとフキはシエラの言いたい事が解ったのか小さく笑っていてリアは一人首を傾げていた
「そう言えばシエラさんはいつこっちに戻って来たんですか?」
「本当にちょっと前ですよ。舞を披露する時間までに戻って来ようと思っていたので」
「て事は久し振りに舞を見るって事」
「ええ。私もこうやって故郷で新年の舞を見るの久し振りなので、お二人が舞うって知ってとても楽しみにしていたんですよ」
「へえ。なら、良い舞を見せてやらないとな。なあ、リア」
「うん!」
「二人とも気合い十分だね」
「この調子なら緊張の心配もなさそうだな」
この数日間練習を見ていたアスラとフキも二人が今まで以上に良い舞を披露する為に頑張ってきていた事を知っているが、今の言葉を聞き、もっと良い舞が見られると確信していた
「リア様、セイ様、そろそろお時間です」
「うん、今行く。じゃあイサキ、シエラさん、私達の舞、客席で思いっきり楽しんで下さいね」
「「ええ」」
「アスラ、マフラー持っててね」
「了解」
「じゃ、頑張ってこい」
「ああ。行くぞ、リア」
「うん」
ハクスイから声を掛けられイサキとシエラは客席に向かい、リアはマフラーをアスラに預け、セイと一緒に舞台へと向かった
リアとセイが舞台に行くと拍手が響き、それを聞きながらリアとセイは立ち位置に立ち一礼した後、目を閉じ集中し舞の最初の形を取る
そして曲が聞こえ出し琴や笛の音色に合わせて綺麗に舞っていく
「あ、雪だぁ!」
「まるで舞に合わせて雪が降り始めたようだわ」
途中、小さな男の子が雪が降ってきた事に気付き、そう声を上げ降ってきた雪を見た後にリアとセイを見ると二人の舞の動きに合わせて雪が降ってきているような気がして一人の女性がそう言うと回りの人達も同じように思っていた
リアも視線を上に向けた時に雪が降ってきている事に気が付きセイを見るとセイも頷き、
冬空からの贈り物
である雪も演出の一つにするように二人は更に美しく綺麗に舞っていき、また今までとは違った舞を披露し、言霊使いの故郷に新年の新しい風を吹かせたのだった
end.
あとがき
と事でサイト10周年記念小説、セイ編何だったでしょうか?
いやぁ~セイ兄ちゃん編、意外と難産だったwww
この話自体は以前のサイトの時に読みたいものアンケートで『ルーティア兄妹のほのぼのを読んでみたい、言霊使いの故郷での話。冬でマフラーとかの話が読んでみたい』と言うお声を何個か頂いていた事があって下書きは書いていたんですけど、全然思い付かなくて・・・ι
でも今回みんなそれぞれの話を書いているから仕上げてみるかと思って書き始めたんですけど最初にも書いた通り難産だったwww
けど故郷での日常的なものってあんま書いてなかったし、本編でもリアちゃんが言ってますが、仕事等以外で兄妹二人だけで何かをするって事がなかったので書いていて新鮮でした(うpするの夏なのに冬設定ってツッコんじゃダメですよw ほら、新年号迎えたからそっちも含めお祝いって事でww← 世間様が騒いでる時小説カキカキしながらふつーに過ごしてたけどなw)
他のオリキャラちゃん達も久し振りに出せたし、完全にオリキャラちゃん達オンリーな話しが書けたので楽しかったですw
個人的にマフラーの辺りの会話とかが好きだし、ずっとリアちゃんは意外と大胆な所あるって事を何処かで使いたかったのでこれも使えて満足してますw
まああれ(リアちゃんから抱きつく)はセイ兄ちゃんだからこそ、出来た事だろうしねιw(それ以外の人だと大変だもんねι(ユーリ以外はw))
なので、シエラちゃんがマフラーの事をリアちゃんに聞いた時のあのイサキちゃんの反応(ユーリじゃなくて?って所)も書いてて楽しかったですw(ED後なのでそう言う所もちょっと入れたかったw)
オリキャラオンリーも兄妹ほのぼのも書いてて楽しかったのでまた機会があれば書いてみようと思います
さて、セイ編は以上となりますが、まだまだ残りのパーティメンバーとの話が残っています
まだ読んでないキャラ達がいたら其方も是非とも読んで頂けたらと思います!
改めて、サイト10周年、本当に有り難う御座います!!
これからも地道にやっていきますので、今後とも宜しくお願いします!
それからよければ・サイト10周年記念小説アンケートのアンケートにもご協力をお願いします。
遙かなる時空の中で2 イサト&彰紋 キャラクターソング 冬空からの贈り物 より
10周年:2019.07.18
完成:2019.05.04
アスラ達神将も毎年同じように各々掃除をしたり飾り付けをしたりと準備を手伝っていた
「大掃除はだいぶ済んだみたいね」
「うん、後は各々が気になる所だじゃないかな?」
「飾り付けもばっちりだし、後は買い出しくらいじゃない?」
「俺達がやる事はな」
「後何か遭ったっけ?」
「何って、今年はリアとセイが舞う年じゃない!」
舞と言うのは毎年新年を迎えた時に披露するもので毎年順番で故郷の誰かがやっているのだが、今年はリアとセイの番だった
「リアとセイなら今練習してるよ」
二人の練習を相棒であるアスラとフキ、ハクスイとリンコウ、ナセアがやっていたのだった
「リアもセイも小さい頃から舞の練習やってたから心配はないと思うけど」
「でも大勢の前で舞うのは久し振りだからね」
「街の人達もリアとセイが舞うって知ってからずっと期待してるから、ちょっと緊張はしてるかもね」
センキの言う通り、リアとセイが舞うと発表された時に街の人達は大いに歓声を上げていた
丁度その頃リアとセイは故郷にいなかったからその熱気や歓声を知らなかったが、故郷に戻って来た時にイサキや神将達に話を聞き、更に街に繰り出した時にも街の人達に囲まれいつも以上に声を掛けられその期待を肌で感じていた
「後でリアとセイの様子見に行ってみる?」
「そうね。休憩の時に行ってみましょうか」
「でも片付けや買い出しが先だぞ」
「わ、解ってるわよ~」
「んじゃさっさと終わらせようぜ」
そう言って掃除の続きや買い出しに出掛ける準備を始めた
一方、リアとセイは修行の時に使う部屋で舞の練習をしていた
部屋には笛と琴の音が響きその音に合わせてリアとセイは中央で舞っていた
「良し、一旦休憩にするか」
何度か練習をして、今の一曲でだいぶコツが掴めたりタイミングも合ってきたものあり、一度休憩を挟む事にした
「ふう・・・」
リアは舞の手と緊張と集中の糸を解くように息を吐いた
「久し振りに舞って緊張でもしてたか?」
そう声を掛けたのはリアと一緒に舞っていたセイだった
「ちょっとね。何度もやってるけどやっぱり新年の舞って特別なものだからね」
新年の舞はその名の通り新年を迎えた時に舞うものなので新年を迎えたと言う気持ちがあり、舞う方も見る人達も楽しみにしているものなので舞の中でも特別なものだった
「特に今回はリアとセイが一緒に舞うからみんな期待してるからね」
「はい、皆さんとても楽しみにしていましたよ」
「勿論我々もですけれど」
ニコリとして言うハクスイとナセアの言葉にその場に居たアスラとフキ、リンコウも同じように頷いた
「ありがとう。私も兄さんと一緒に舞うのって久し振りだから楽しみにしてるんだ」
「それは俺も同じだな。昔舞ってた時より自然と感覚が掴めてるからな」
子供の頃から舞は修行の一環としてやってきていたので時々セイもリアと一緒に舞をやっていた事があった
「練習では何度か舞った事があったが、人前で披露する事は殆どなかったからな」
フキの言う様に意外とリアとセイが一緒に舞を披露すると言う事はあるようでなかった
子供の頃に何度か舞った事があるくらいで新年の舞を二人で一緒に舞うと言うのは実はこれが初めてだった
だから街の人達も姫様と若様が一緒に舞うと言う事を楽しみにしてるのだった
「リア、セイ、入るわよ」
そう声が聞こえ襖を開けて入って来たのはイサキだった
「イサキ、どうしたの?」
「そろそろ休憩する頃だろうと思ってお茶を持って来たの」
「ありがとな」
イサキは人数分のお茶を持って来ていてリア達はお茶を飲み一息吐いた
「どう、練習捗ってる?」
「なんとかな」
「その割に余裕そうに聞こえるけど?」
「兄さんとだからタイミング取りやすいからね」
「まあな」
「ふふ、流石仲良し兄妹ね」
二人の言葉にイサキは二人らしいと思いくすくすと笑った
「そう言えば他の連中はどうしている?」
「まだ掃除してる組みと買い出しに行った組みが居るわよ。それと準備ももう少し掛かりそうって」
「なら、準備の方を手伝った方が良いかもしれませんね」
「そうですね・・・。ですが舞の練習も見なくてはいけませんし・・・」
「なら一度解散して後でまたやるのはどうだ?」
「そうだね、リアとセイも一息吐いたり気分転換するのも良いだろうし」
確かに此処何日かはずっとこの部屋で舞の練習をやったりしていて外に出ている回数も減っている
気分転換と言う意味で外に出てみるのも良いかもしれない
「そうだな、たまには二人でゆっくりしてくると良いだろう」
「じゃあそうしようかな。兄さんも良い?」
「ああ。なら、ちょっと街でもぶらつくか」
「うん」
こうして一旦練習を切り上げ、リアとセイは町に繰り出す為に一度部屋に戻った
「あ、雪、だいぶ積もってたんだ」
あれから少ししてリアとセイは外に出てきた
庭にも雪が積もっているから積もっているのは知っていたが、外に出ていなかったからどのくらい積もっているかは解らなかった
「結構積もってるな。足元気を付けて歩けよ」
「うん。兄さんと二人で出掛けるのってほんとに久し振りだよね」
「そうだな。
「うん、でもゆっくり過ごすのは故郷に戻って来てからもなかったもんね」
お互いゆっくりと過ごしてはいたが、兄妹二人でゆっくりと過ごす事はなかった
「こっちに戻って来るとイサキや
「どっちにいても騒がしいけどな」
そう言うもその騒がしさはどちらも五月蠅いと言う意味合いではなく、どちらもリアとセイにとっては居心地の良いものだった
「それにしても、今年は良く積もってるな」
「当日はそんなに積もってないと良いね・・」
この景色も綺麗だし、冬だから雪が積もっているのは当然だが、今以上に積もると当日は寒くなったり舞を披露するスペースも減ってしまうかもしれない
「まあ、姫様に若様!」
そう話していると町の中心部までやって来ていて、商売をしている一件の女将さんがリアとセイに気が付いた
「おお、本当だ。お二人揃ってお買い物ですか?」
「なら、是非うちに寄って行って下さいよ!」
「うちにも是非!」
それにつられるように次々と街の人達も声を掛けてきた
「こう言ってくれてるし、何か食って行くか」
「うん。じゃあおしるこ一つお願いします」
「俺も。あ、俺は甘さ控えめのやつで」
「はい、かしこまりました」
注文を終え、暫くしておしるこが運ばれてきておしるこを啜ると、少し寒い中歩いてきたからか身体が温まりだした
それから暫くゆっくりした後、店を出てまた町の中を見て回った
「はあ、思いっきりリフレッシュ出来た」
「確かにな」
あれから街中を離れ家へと戻る道を歩いていた
リアもセイもずっと新年の舞の練習をしていたから普段より気を張っていたようだった
「でもやっぱり街のみんなも期待してたね」
「行く先々で楽しみにしてるって声掛けられたからな」
街の人達が楽しみにしている事はリアもセイも知っていたが直接そう言われたのが今日が始めてだったので、改めて期待されてるんだな、と実感したのだった
「余計緊張してきたか?」
「うん。でも、直接楽しみにしてます。って言われて緊張もあるけど、嬉しかったから、当日は兄さんと一緒に良い舞を披露したいなって思ったの」
その笑顔は舞の練習をしていた時や先程まで街に居た時に見せた笑顔よりも、いつも自分達に見せているリアの心からの笑顔だった
「そっか、そう思えるようになったなら良かったな」
セイは安堵したように笑い、リアの頭を撫でた
「兄さんは? ちゃんと息抜き出来た?」
「ああ。お陰様でな」
セイも意識はしていなかったが、リアと同じで根を詰めていたようで、今こうやってゆっくりと出来る時間のお陰で普段の感覚が戻ってきていた
リアもセイのその笑顔を見てセイと同じように安堵して微笑んだ
「・・私ね、兄さんと一緒に舞を披露出来るって聞いて嬉しかったんだ」
「ん?」
突然リアが言った事にセイは疑問を持ちリアを見た
「兄さんと一緒に今まで色々やってきたけど、仕事とか世界の事とかと関係ない事って少なかったじゃない?」
そう言われ振り返ってみると、リアもセイも子供の頃から言霊使いの仕事もユーリ達の世界での表向きの仕事である情報屋の仕事もやっていたし、あの世界の命運を掛けた戦いも共に戦い乗り越えてきた
戦いが終わり一部変化があったり平穏な生活を送れるようになったとは言っても、今まで通り言霊使いの仕事も情報屋の仕事もやっていてそれ以外の事で二人で何かをやったりする時間もなかったかもしれない
「だから一緒に舞を披露する番だって聞いた時、凄く嬉しかったんだ」
リアはまた心からの笑顔を見せ、セイも微笑んでまたリアの頭を撫でた
「ああ、俺もだよ。・・・ついでだし、今渡しておくか」
「?」
「そのままじっとしておけよ」
「え? うん」
言うとセイは持っていた紙袋から何かを取り出しリアの首に巻いた
「・・・マフラー?」
「さっき店で見掛けてな。こういう色合いお前好きだろ」
首元に巻かれたマフラーを見ると確かに自分が好きな色合いを使ったものだった
「寒いのは平気っつっても風邪でも引いたら舞も披露出来なくなるし、五月蠅いのが何人か居るだろ」
「うん、ありがとう兄さん!」
「!」
言うとリアは嬉しくなりそのままセイに抱きついた
「・・・お前な、急に抱きつくなよ」
「だって、嬉しかったんだもん」
「・・・ほんと、お前って無意識に大胆な所があるよな」
「え?」
「いや、聞こえてないなら良いよ別に」
昔から無意識に大胆な所があり、セイだけじゃなくユーリもフレンも困ってしまう所が何度かあった
それを言おうとも思った事はあるが、それもリアらしさといえばらしさなのかもしれないと三人は思っていた
「このマフラー大事にするね」
「ああ。じゃ、そろそろ帰るか」
「うん」
言うとリアはニコリと微笑んで頷き、セイの隣に並び歩いて帰った
そして当日、
「うわぁ、やっぱり今年はいっぱい集まったね・・・」
新年の舞が披露される舞台の隅からアスラは集まっている人達を見てそう声を漏らした
「これはリアとセイじゃなくても緊張するわな」
フキも同じように言うとイサキも同意するように頷いた
「特に今年の舞は特別ですからね」
ふとそう声が聞こえ振り返ると、
「! シエラさん!」
「お久し振りです、リア様、セイ様」
そこにいたのはシエラだった
「なんだ、見に来てたのか」
「勿論ですよ、今年は姫様と若様のお二人が新年の舞を披露するんですから」
「・・・あんたからその呼び方されるの違和感あるな」
ニコリとして言うシエラにセイは若様呼びされ聞き慣れていないからか何処かくすぐったさを感じていた
「イサキからも呼ばれないからね」
「そうね、呼ぶ事なんて滅多にないわね」
そう言うとリアとイサキとシエラは可笑しくなって笑ってしまい、セイはまた何処か居心地が悪くなっていた
「リア様、そのマフラーお似合いですね」
言うとシエラはリアが首に巻いているマフラーを見た
「ありがとう御座います。これ、兄さんから貰ったんです」
「セイ様から・・?」
「・・・今、ユーリじゃなくて?、って思いましたよね?」
「・・ええ」
イサキは小声でシエラだけに聞こえる声でそう言うとシエラは頷いた
「? どうかしましたか?」
「いえ、やっぱり仲の良い兄妹だなと思いまして」
「・・・・・」
「?」
シエラの言葉に何かを感じたのかセイはまた居心地の悪そうな顔をし、イサキとアスラとフキはシエラの言いたい事が解ったのか小さく笑っていてリアは一人首を傾げていた
「そう言えばシエラさんはいつこっちに戻って来たんですか?」
「本当にちょっと前ですよ。舞を披露する時間までに戻って来ようと思っていたので」
「て事は久し振りに舞を見るって事」
「ええ。私もこうやって故郷で新年の舞を見るの久し振りなので、お二人が舞うって知ってとても楽しみにしていたんですよ」
「へえ。なら、良い舞を見せてやらないとな。なあ、リア」
「うん!」
「二人とも気合い十分だね」
「この調子なら緊張の心配もなさそうだな」
この数日間練習を見ていたアスラとフキも二人が今まで以上に良い舞を披露する為に頑張ってきていた事を知っているが、今の言葉を聞き、もっと良い舞が見られると確信していた
「リア様、セイ様、そろそろお時間です」
「うん、今行く。じゃあイサキ、シエラさん、私達の舞、客席で思いっきり楽しんで下さいね」
「「ええ」」
「アスラ、マフラー持っててね」
「了解」
「じゃ、頑張ってこい」
「ああ。行くぞ、リア」
「うん」
ハクスイから声を掛けられイサキとシエラは客席に向かい、リアはマフラーをアスラに預け、セイと一緒に舞台へと向かった
リアとセイが舞台に行くと拍手が響き、それを聞きながらリアとセイは立ち位置に立ち一礼した後、目を閉じ集中し舞の最初の形を取る
そして曲が聞こえ出し琴や笛の音色に合わせて綺麗に舞っていく
「あ、雪だぁ!」
「まるで舞に合わせて雪が降り始めたようだわ」
途中、小さな男の子が雪が降ってきた事に気付き、そう声を上げ降ってきた雪を見た後にリアとセイを見ると二人の舞の動きに合わせて雪が降ってきているような気がして一人の女性がそう言うと回りの人達も同じように思っていた
リアも視線を上に向けた時に雪が降ってきている事に気が付きセイを見るとセイも頷き、
冬空からの贈り物
である雪も演出の一つにするように二人は更に美しく綺麗に舞っていき、また今までとは違った舞を披露し、言霊使いの故郷に新年の新しい風を吹かせたのだった
end.
あとがき
と事でサイト10周年記念小説、セイ編何だったでしょうか?
いやぁ~セイ兄ちゃん編、意外と難産だったwww
この話自体は以前のサイトの時に読みたいものアンケートで『ルーティア兄妹のほのぼのを読んでみたい、言霊使いの故郷での話。冬でマフラーとかの話が読んでみたい』と言うお声を何個か頂いていた事があって下書きは書いていたんですけど、全然思い付かなくて・・・ι
でも今回みんなそれぞれの話を書いているから仕上げてみるかと思って書き始めたんですけど最初にも書いた通り難産だったwww
けど故郷での日常的なものってあんま書いてなかったし、本編でもリアちゃんが言ってますが、仕事等以外で兄妹二人だけで何かをするって事がなかったので書いていて新鮮でした(うpするの夏なのに冬設定ってツッコんじゃダメですよw ほら、新年号迎えたからそっちも含めお祝いって事でww← 世間様が騒いでる時小説カキカキしながらふつーに過ごしてたけどなw)
他のオリキャラちゃん達も久し振りに出せたし、完全にオリキャラちゃん達オンリーな話しが書けたので楽しかったですw
個人的にマフラーの辺りの会話とかが好きだし、ずっとリアちゃんは意外と大胆な所あるって事を何処かで使いたかったのでこれも使えて満足してますw
まああれ(リアちゃんから抱きつく)はセイ兄ちゃんだからこそ、出来た事だろうしねιw(それ以外の人だと大変だもんねι(ユーリ以外はw))
なので、シエラちゃんがマフラーの事をリアちゃんに聞いた時のあのイサキちゃんの反応(ユーリじゃなくて?って所)も書いてて楽しかったですw(ED後なのでそう言う所もちょっと入れたかったw)
オリキャラオンリーも兄妹ほのぼのも書いてて楽しかったのでまた機会があれば書いてみようと思います
さて、セイ編は以上となりますが、まだまだ残りのパーティメンバーとの話が残っています
まだ読んでないキャラ達がいたら其方も是非とも読んで頂けたらと思います!
改めて、サイト10周年、本当に有り難う御座います!!
これからも地道にやっていきますので、今後とも宜しくお願いします!
それからよければ・サイト10周年記念小説アンケートのアンケートにもご協力をお願いします。
遙かなる時空の中で2 イサト&彰紋 キャラクターソング 冬空からの贈り物 より
10周年:2019.07.18
完成:2019.05.04