サイト10周年記念小説
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「お頭、こっちの準備はOKです!」
「こっちも大丈夫です!」
「うむ、では皆の者、行くぞぉ~!」
「「「「おおおーーーう!!!」」」」「お、おーーう・・・」
「リア、声が小さーい! もう一回なのじゃ!」
「え、・・お、おーーう!」
「うむ~、良い感じなのじゃ」
パティは満足そうに言うと舵を取り、船は港を出発した
新たな船出
今、リアはパティと数人の海の男達と共にパティが幸福の市場から借りてやっている運搬の仕事の時に使う船に乗っていた
何故パティ達と一緒の船に乗っているか、それは数週間前の事だった
「次の出航時間までまだあるわね」
リアは仕事でアスラと共にトリム港に来ていた
「じゃあ少しゆっくりする?」
「そうね、トリムに来たのも久しぶりだし」
仕事も終わり次の船の出航時間を確認するとまだ時間があったのでアスラの提案に乗り、頷くとある事を思い出した
「あ、トリムと言えば・・・」
「きゃああ!」
「「!」」
途端、少し先の港の方から悲鳴が聞こえ更に男性の声も聞こえた
「盗賊だ!」
「盗賊? こんな所に?」
「・・・あそこに泊まってる船が襲われてるみたいだね」
アスラが言う方を見れば確かに少し離れた所に停泊している船が盗賊らしき男達に襲われていた
「平和になったって言ってもこういうのは何処に行っても相変わらずだね」
「・・・、とにかく助けに行くわよ」
「了解」
お互いの言葉に苦笑し、リアは野次馬を抜けその船に飛び乗った
「なんだぁ、姉ちゃん?」
「俺達に何か用かぁ?」
いきなり現れたリアを見て驚きもしたが、リアはそんな盗賊達を気にする事もなくニコリとして答えた
「いえ、ちょっと見覚えのある船が襲われていたので」
「見覚えってこの船の事かぁ?」
「知り合いの船が襲われていたら助けに入るものじゃありません?」
そう、リアがこの船を助けたのは勿論騒ぎが遭ったからというのもあるが、この船は知り合いが使っている船だったからだ
「あ、貴女は!」
「あれ? あの人ジム、だったっけ?」
船員の一人がリアを見て声を上げ、その人物を見ると、そこに居たのは以前、海精の牙に所属していたジムだった
彼とは以前旅をしていた時にこのトリム港やノードポリカで会った事があったのだが、何故か今この船に乗り合わせていた
「ジムさん? どうして此処に?」
「知り合いってこいつの事か?」
「ひっ!」
リア達のやり取りを見てジムを含む船員の近くに居た男が短剣の切っ先をジム達に向けた
それを見てリアは静かに自分の武器を抜いて構えた
「お? 姉ちゃん一人でやるつもりか?」
「うんにゃ、一人ではないのじゃ」
「うわっっ!!」
途端、聞き覚えのある声と共に銃発音が聞こえ、盗賊達の足元に発砲した弾が当たり盗賊達は驚き、リアとアスラはその声の主を見た
「パティ!」「お、お頭っ!」
「お、リアにアスラ、久し振りじゃの」
「久し振り」
「何だこのガキ、物騒なモン持ちやがって」
パティとアスラが挨拶を交わしていると盗賊達はパティを見てそう言った
「うちがおらん間に好き勝手やってくれたのお」
「何だと?」
「つまり、この子がこの船の持ち主って事ですよ」
リアがそう言うと盗賊達は更に驚いてパティを見た
「こんなガキが?」
「ぬかせぇ!」
リーダーらしき男がそう言ってリア達に向かって駆け出すと部下達もリアとパティに向けて走り出しそれを見るとリアとアスラとパティは顔を見合わせ頷いて迫って来る盗賊達の相手を始めた
「お頭~! リアさんも! 有り難う御座います!」
あれから数分してリア達はあっという間に盗賊達を片付け、騒ぎを聞きつけた騎士団に盗賊達を引き渡したのだった
「いえ。でも、どうしてジムさんはパティと一緒に?」
「それにお頭って呼ばれてるけど・・・」
「実は今、お頭の元で働かせてもらってるんです!」
どうやらパティが幸福の市場から借りてやっている船での運搬の仕事を見て手伝いたいと言ったそうだ
だが、パティは昔の事もあり以前と同じように断りもしたが、丁度その時にカウフマンが通り掛かりその様子を見て「人出は多い方が良い。それに慕ってくれる人が居た方がもっと仕事が捗るわよ」と言ってくれたお陰でパティの仕事を手伝えるようになったようだ
それでもパティはまだ何処か気にしている所もあるようだったので、お試し期間という形でジムを手伝わせているようでそれでどうするか決めたら良いとも言われたそうだ
「そうだったんだ」
一通り事情を聞き終わりジムの嬉しそうな顔を見てリアも微笑み、パティを見た
「でも此処でパティに会えて良かった」
「ん? うちに用があったのか?」
「久し振りにトリムに来たからパティに会えたら良いなって思ってたの」
リアもアスラと一緒に仕事で来ていて次の出航時間まで時間があり先程の騒ぎに出くわしたと話した
パティが船に居なかったのはどうやら今積んでいる荷物の打ち合わせに行っていたからだった
「本当にリアさんが来てくれたお陰で助かりました」
「じゃの。ありがとうなのじゃ」
「パティが戻って来たから早く片付いたんだよ」
武醒魔導器がなくてもパティもユーリ達と同じく強い事は知っているし、一緒にあの旅をした仲間だから先程の戦いでも綺麗に連携が取れたのだった
「そう言えば積み荷は大丈夫だったの?」
「はい、騒ぎで倒れてしまった物もありますが、中身も無事です」
積み荷がある場所を見ればまだ倒れている物もあったり、中身を確認し終えこれからまた綺麗に積むようだった
「パティ、私も積み荷を積むの、手伝っても良い?」
「え?」
リアの言葉に驚いたのはジムだった
「まだ船の時間まであるし、それに人出は多い方が良いだろうし」
「ん、船?」
そこでリア達が次の船の出航時間を待っていると言う事も話したのだった
「なら、うちの船に乗っていくと良いのじゃ」
「え、良いの?」
「うむ、うちが戻って来たら直ぐに出るつもりだったのじゃ。それに積み荷を手伝うというなら好都合じゃろ?」
「はい、それに船を助けて貰ったお礼もしたいですから」
「・・・じゃあ、お言葉に甘えようか」
「そうね。じゃあパティ、ジムさん、よろしくお願いします」
こうしてリアはパティの船に乗る事が出来、積み荷の片付けを手伝った後は、仕事の邪魔にならない所でパティ達の様子を見ていた
「パティ、やっぱりジム以外の人にも慕われてるね」
海精の牙の首領をやっていただけあって、それぞれにちゃんと指示を出しているし、しっかりとしているから船員も楽しそうに仕事をしていた
それを見てリアも自然と微笑んでいるとリアの様子にパティが気付いた
「どうしたんじゃ?」
「パティもジムさん達もみんな楽しそうに仕事してるなって思って」
「やっぱりみんな海の漢、なんだね」
「うむ。皆生き生きしておるぞ」
「パティもね。このまま上手くいけばパティが思ってるパティのギルドも、出来るんじゃない?」
「・・・・」
そう言うと少しだけパティの表情が曇った
「パティ・・・?」
「・・・やっぱりまだ迷ってる?」
「・・・まあの」
リア達はあの旅でブラックホープ号事件の真実を知ったが、世間にも、勿論ギルドにもあの事件の真相は明かされていない為、海精の牙の印象は良くなかった
それはアイフリードの孫と名乗っていたパティも例外ではなかった
その風当たりの強さはリアもあの旅で見て来ていたから解っていた
「でも此処に居る人達やジムさんはパティと一緒に仕事をしたいって思ってるはずよ」
「それはうちも解ってるおる・・・じゃが・・・・・・・」
が、まだ何処か吹っ切れていないようだった
「・・・ま、少しは考える時間はいるだろうね」
「・・・そうね」
そう言ってリアはその場から離れ船員達がいる方へと足を運ぶ
「あ、リアさん、どうしたんですか?」
そんなリアに直ぐに気付いたのはジムだった
「ジムさん、凄く楽しそうですね」
「はい! お頭のお孫さんと一緒に仕事をしてたら本当に昔お頭達と仕事をしていた時の事を思い出して」
「ジムさんにとってその時の事は大事な思い出なんですね」
「はい! ・・その、世間や他のギルドではああ言われてますけど、俺達はお頭があんな事をしたなんて思ってませんから」
そうはっきり言ったジムを見てリアだけでなく、アスラと共にその様子を見ていたパティも目を瞠った
「ジムさんはこれからもパティや此処に居る皆さんと一緒に仕事を続けたいですか?」
「勿論ですよ! 今もあの頃と同じように海の上で働けるのは楽しいですから。だから、お頭のお孫さんに俺は着いて行きますよ!」
その返事を聞きリアもニコリと微笑み、アスラは隣に居るパティを見る
「ジム・・・」
「こう言ってるよ。パティもジムや他の人達とちゃんと話して仕事続けてみても良いんじゃない?」
「・・・じゃの」
そう言ったパティの表情は先程よりも良い表情をしていた
そして数週間後、
「では、皆の者、準備は良いか?」
「「「「はい!!」」」」
パティ達はノードポリカの港で積み荷を終え、出航の合図を取っていた
そしてこの船にはリアも乗っていた
リアもパティやジムや他の船員達の事が気になっていたのでその様子を見に来ていた
だが、前よりも人が増えていた
その人達はジムと同じで元、海精の牙だった人達だった
あれからパティはこれからの事をみんなに話し、後に海賊パティ・フルールのギルドを作りたいと思っている事も話した
世間の評価もある為最初は驚きもしたが、パティと仕事をしている人達もパティやジム達の事を聞きつけた元海精の牙の人達も「その事は気にしない」と言ってくれた
それはパティの人柄もあるだろうし、何よりみんな共に仕事が出来たり海の上で仕事をする事が本当に好きだからだろうとリアは思った
そして此処に集まった人達もカウフマンが正式にパティと一緒に仕事を出来るように手配もしてくれたのだった
そうして最初の台詞に戻り、リアも船員達と掛け声を上げた後に船は出航し、リアは改めて生き生きと仕事をしているパティやジム達を見てまたにこりと微笑んでいた
「リア、ありがとうなのじゃ」
「ん?」
ふとそう聞こえパティを見ると吹っ切れた顔をして微笑んでいた
「うちやジム達の事気に掛けてくれて」
「私はパティやジムさん達の背中を押しただけよ。答えを出したのはパティや此処に居る皆さんでしょ」
「それでもうちを後押しして踏ん切りを付けてくれたのはリアとアスラなのじゃ。だから礼を言わせてほしいのじゃ」
「・・・うん。パティも前より良い表情してるし楽しそうだから良かった」
「うちはいつでも海の上では生き生きしておるぞ」
「うん、そうだね。凄く頼もしいよ」
「うむ~、リアもうちの勇姿に惚れるが良いぞ」
「ふふっ」
久し振りにパティらしい言葉を聞き思わず旅をしていた時のような感じになり懐かしさにリアも笑ってしまったが、パティも同じように思っていたのが伝わってきた
「手伝える事があったらいつでも言ってね。勿論情報提供もするから」
「おう。その時は頼りにさせてもらうのじゃ。うちは冒険家であり、海賊だからの! お宝がある所には必ず行くのじゃ!」
「うん」
そう言ってお互いに微笑みあい、パティは前を見て舵を握り直し
「では改めて、ノール港目指して出発なのじゃ!」
「「「「おーーう!」」」」
パティの掛け声の後に、リアもジム達もそう返事を返し、船はノール港を目指して海の上を進んで行ったのだった
end.
あとがき
と事でサイト10周年記念小説、パティ編もやっと完成したよ!!
えー改めまして、パティ編如何だったでしょうか?
10周年イベのパンフにパティは幸福の市場から船を借りて運搬の仕事をしつつ、冒険家であり海賊だから未知なる所に赴いているって書かれてたのでそこを使って話を考えてみようと思って色々考えてこうなりました
個人的にジムさんはやっぱ印象深かったのでせっかくだし、と思って出してみました
事件の生き残りはいないってなってたから途中で辞めた感じだろうなって思ってたし、他にもそう言うメンバーいるかなーって思って船員だけじゃなく元メンバーも出してみましたw
パティの話し、実は仕事中にちょこーっと空き時間が出来る時があるのでその間にちまちまと書いてましたww
パティと二人だけで話すって言うのは本編でも書いてたから思ったよりは苦戦しなかったです(話を思い付くまではちょっと苦戦したが・・・ι)
最初に出て来た盗賊ですが、海の上じゃないから盗賊でって事になりましたιw
パティ編は以上となりますが、まだまだ残りのパーティメンバーとの話が残っています
まだ読んでないキャラ達がいたら其方も是非とも読んで頂けたらと思います!
改めて、サイト10周年、本当に有り難う御座います!!
これからも地道にやっていきますので、今後とも宜しくお願いします!
それからよければ・サイト10周年記念小説アンケートのアンケートにもご協力をお願いします。
10周年:2019.07.18
完成:2019.05.01
「こっちも大丈夫です!」
「うむ、では皆の者、行くぞぉ~!」
「「「「おおおーーーう!!!」」」」「お、おーーう・・・」
「リア、声が小さーい! もう一回なのじゃ!」
「え、・・お、おーーう!」
「うむ~、良い感じなのじゃ」
パティは満足そうに言うと舵を取り、船は港を出発した
新たな船出
今、リアはパティと数人の海の男達と共にパティが幸福の市場から借りてやっている運搬の仕事の時に使う船に乗っていた
何故パティ達と一緒の船に乗っているか、それは数週間前の事だった
「次の出航時間までまだあるわね」
リアは仕事でアスラと共にトリム港に来ていた
「じゃあ少しゆっくりする?」
「そうね、トリムに来たのも久しぶりだし」
仕事も終わり次の船の出航時間を確認するとまだ時間があったのでアスラの提案に乗り、頷くとある事を思い出した
「あ、トリムと言えば・・・」
「きゃああ!」
「「!」」
途端、少し先の港の方から悲鳴が聞こえ更に男性の声も聞こえた
「盗賊だ!」
「盗賊? こんな所に?」
「・・・あそこに泊まってる船が襲われてるみたいだね」
アスラが言う方を見れば確かに少し離れた所に停泊している船が盗賊らしき男達に襲われていた
「平和になったって言ってもこういうのは何処に行っても相変わらずだね」
「・・・、とにかく助けに行くわよ」
「了解」
お互いの言葉に苦笑し、リアは野次馬を抜けその船に飛び乗った
「なんだぁ、姉ちゃん?」
「俺達に何か用かぁ?」
いきなり現れたリアを見て驚きもしたが、リアはそんな盗賊達を気にする事もなくニコリとして答えた
「いえ、ちょっと見覚えのある船が襲われていたので」
「見覚えってこの船の事かぁ?」
「知り合いの船が襲われていたら助けに入るものじゃありません?」
そう、リアがこの船を助けたのは勿論騒ぎが遭ったからというのもあるが、この船は知り合いが使っている船だったからだ
「あ、貴女は!」
「あれ? あの人ジム、だったっけ?」
船員の一人がリアを見て声を上げ、その人物を見ると、そこに居たのは以前、海精の牙に所属していたジムだった
彼とは以前旅をしていた時にこのトリム港やノードポリカで会った事があったのだが、何故か今この船に乗り合わせていた
「ジムさん? どうして此処に?」
「知り合いってこいつの事か?」
「ひっ!」
リア達のやり取りを見てジムを含む船員の近くに居た男が短剣の切っ先をジム達に向けた
それを見てリアは静かに自分の武器を抜いて構えた
「お? 姉ちゃん一人でやるつもりか?」
「うんにゃ、一人ではないのじゃ」
「うわっっ!!」
途端、聞き覚えのある声と共に銃発音が聞こえ、盗賊達の足元に発砲した弾が当たり盗賊達は驚き、リアとアスラはその声の主を見た
「パティ!」「お、お頭っ!」
「お、リアにアスラ、久し振りじゃの」
「久し振り」
「何だこのガキ、物騒なモン持ちやがって」
パティとアスラが挨拶を交わしていると盗賊達はパティを見てそう言った
「うちがおらん間に好き勝手やってくれたのお」
「何だと?」
「つまり、この子がこの船の持ち主って事ですよ」
リアがそう言うと盗賊達は更に驚いてパティを見た
「こんなガキが?」
「ぬかせぇ!」
リーダーらしき男がそう言ってリア達に向かって駆け出すと部下達もリアとパティに向けて走り出しそれを見るとリアとアスラとパティは顔を見合わせ頷いて迫って来る盗賊達の相手を始めた
「お頭~! リアさんも! 有り難う御座います!」
あれから数分してリア達はあっという間に盗賊達を片付け、騒ぎを聞きつけた騎士団に盗賊達を引き渡したのだった
「いえ。でも、どうしてジムさんはパティと一緒に?」
「それにお頭って呼ばれてるけど・・・」
「実は今、お頭の元で働かせてもらってるんです!」
どうやらパティが幸福の市場から借りてやっている船での運搬の仕事を見て手伝いたいと言ったそうだ
だが、パティは昔の事もあり以前と同じように断りもしたが、丁度その時にカウフマンが通り掛かりその様子を見て「人出は多い方が良い。それに慕ってくれる人が居た方がもっと仕事が捗るわよ」と言ってくれたお陰でパティの仕事を手伝えるようになったようだ
それでもパティはまだ何処か気にしている所もあるようだったので、お試し期間という形でジムを手伝わせているようでそれでどうするか決めたら良いとも言われたそうだ
「そうだったんだ」
一通り事情を聞き終わりジムの嬉しそうな顔を見てリアも微笑み、パティを見た
「でも此処でパティに会えて良かった」
「ん? うちに用があったのか?」
「久し振りにトリムに来たからパティに会えたら良いなって思ってたの」
リアもアスラと一緒に仕事で来ていて次の出航時間まで時間があり先程の騒ぎに出くわしたと話した
パティが船に居なかったのはどうやら今積んでいる荷物の打ち合わせに行っていたからだった
「本当にリアさんが来てくれたお陰で助かりました」
「じゃの。ありがとうなのじゃ」
「パティが戻って来たから早く片付いたんだよ」
武醒魔導器がなくてもパティもユーリ達と同じく強い事は知っているし、一緒にあの旅をした仲間だから先程の戦いでも綺麗に連携が取れたのだった
「そう言えば積み荷は大丈夫だったの?」
「はい、騒ぎで倒れてしまった物もありますが、中身も無事です」
積み荷がある場所を見ればまだ倒れている物もあったり、中身を確認し終えこれからまた綺麗に積むようだった
「パティ、私も積み荷を積むの、手伝っても良い?」
「え?」
リアの言葉に驚いたのはジムだった
「まだ船の時間まであるし、それに人出は多い方が良いだろうし」
「ん、船?」
そこでリア達が次の船の出航時間を待っていると言う事も話したのだった
「なら、うちの船に乗っていくと良いのじゃ」
「え、良いの?」
「うむ、うちが戻って来たら直ぐに出るつもりだったのじゃ。それに積み荷を手伝うというなら好都合じゃろ?」
「はい、それに船を助けて貰ったお礼もしたいですから」
「・・・じゃあ、お言葉に甘えようか」
「そうね。じゃあパティ、ジムさん、よろしくお願いします」
こうしてリアはパティの船に乗る事が出来、積み荷の片付けを手伝った後は、仕事の邪魔にならない所でパティ達の様子を見ていた
「パティ、やっぱりジム以外の人にも慕われてるね」
海精の牙の首領をやっていただけあって、それぞれにちゃんと指示を出しているし、しっかりとしているから船員も楽しそうに仕事をしていた
それを見てリアも自然と微笑んでいるとリアの様子にパティが気付いた
「どうしたんじゃ?」
「パティもジムさん達もみんな楽しそうに仕事してるなって思って」
「やっぱりみんな海の漢、なんだね」
「うむ。皆生き生きしておるぞ」
「パティもね。このまま上手くいけばパティが思ってるパティのギルドも、出来るんじゃない?」
「・・・・」
そう言うと少しだけパティの表情が曇った
「パティ・・・?」
「・・・やっぱりまだ迷ってる?」
「・・・まあの」
リア達はあの旅でブラックホープ号事件の真実を知ったが、世間にも、勿論ギルドにもあの事件の真相は明かされていない為、海精の牙の印象は良くなかった
それはアイフリードの孫と名乗っていたパティも例外ではなかった
その風当たりの強さはリアもあの旅で見て来ていたから解っていた
「でも此処に居る人達やジムさんはパティと一緒に仕事をしたいって思ってるはずよ」
「それはうちも解ってるおる・・・じゃが・・・・・・・」
が、まだ何処か吹っ切れていないようだった
「・・・ま、少しは考える時間はいるだろうね」
「・・・そうね」
そう言ってリアはその場から離れ船員達がいる方へと足を運ぶ
「あ、リアさん、どうしたんですか?」
そんなリアに直ぐに気付いたのはジムだった
「ジムさん、凄く楽しそうですね」
「はい! お頭のお孫さんと一緒に仕事をしてたら本当に昔お頭達と仕事をしていた時の事を思い出して」
「ジムさんにとってその時の事は大事な思い出なんですね」
「はい! ・・その、世間や他のギルドではああ言われてますけど、俺達はお頭があんな事をしたなんて思ってませんから」
そうはっきり言ったジムを見てリアだけでなく、アスラと共にその様子を見ていたパティも目を瞠った
「ジムさんはこれからもパティや此処に居る皆さんと一緒に仕事を続けたいですか?」
「勿論ですよ! 今もあの頃と同じように海の上で働けるのは楽しいですから。だから、お頭のお孫さんに俺は着いて行きますよ!」
その返事を聞きリアもニコリと微笑み、アスラは隣に居るパティを見る
「ジム・・・」
「こう言ってるよ。パティもジムや他の人達とちゃんと話して仕事続けてみても良いんじゃない?」
「・・・じゃの」
そう言ったパティの表情は先程よりも良い表情をしていた
そして数週間後、
「では、皆の者、準備は良いか?」
「「「「はい!!」」」」
パティ達はノードポリカの港で積み荷を終え、出航の合図を取っていた
そしてこの船にはリアも乗っていた
リアもパティやジムや他の船員達の事が気になっていたのでその様子を見に来ていた
だが、前よりも人が増えていた
その人達はジムと同じで元、海精の牙だった人達だった
あれからパティはこれからの事をみんなに話し、後に海賊パティ・フルールのギルドを作りたいと思っている事も話した
世間の評価もある為最初は驚きもしたが、パティと仕事をしている人達もパティやジム達の事を聞きつけた元海精の牙の人達も「その事は気にしない」と言ってくれた
それはパティの人柄もあるだろうし、何よりみんな共に仕事が出来たり海の上で仕事をする事が本当に好きだからだろうとリアは思った
そして此処に集まった人達もカウフマンが正式にパティと一緒に仕事を出来るように手配もしてくれたのだった
そうして最初の台詞に戻り、リアも船員達と掛け声を上げた後に船は出航し、リアは改めて生き生きと仕事をしているパティやジム達を見てまたにこりと微笑んでいた
「リア、ありがとうなのじゃ」
「ん?」
ふとそう聞こえパティを見ると吹っ切れた顔をして微笑んでいた
「うちやジム達の事気に掛けてくれて」
「私はパティやジムさん達の背中を押しただけよ。答えを出したのはパティや此処に居る皆さんでしょ」
「それでもうちを後押しして踏ん切りを付けてくれたのはリアとアスラなのじゃ。だから礼を言わせてほしいのじゃ」
「・・・うん。パティも前より良い表情してるし楽しそうだから良かった」
「うちはいつでも海の上では生き生きしておるぞ」
「うん、そうだね。凄く頼もしいよ」
「うむ~、リアもうちの勇姿に惚れるが良いぞ」
「ふふっ」
久し振りにパティらしい言葉を聞き思わず旅をしていた時のような感じになり懐かしさにリアも笑ってしまったが、パティも同じように思っていたのが伝わってきた
「手伝える事があったらいつでも言ってね。勿論情報提供もするから」
「おう。その時は頼りにさせてもらうのじゃ。うちは冒険家であり、海賊だからの! お宝がある所には必ず行くのじゃ!」
「うん」
そう言ってお互いに微笑みあい、パティは前を見て舵を握り直し
「では改めて、ノール港目指して出発なのじゃ!」
「「「「おーーう!」」」」
パティの掛け声の後に、リアもジム達もそう返事を返し、船はノール港を目指して海の上を進んで行ったのだった
end.
あとがき
と事でサイト10周年記念小説、パティ編もやっと完成したよ!!
えー改めまして、パティ編如何だったでしょうか?
10周年イベのパンフにパティは幸福の市場から船を借りて運搬の仕事をしつつ、冒険家であり海賊だから未知なる所に赴いているって書かれてたのでそこを使って話を考えてみようと思って色々考えてこうなりました
個人的にジムさんはやっぱ印象深かったのでせっかくだし、と思って出してみました
事件の生き残りはいないってなってたから途中で辞めた感じだろうなって思ってたし、他にもそう言うメンバーいるかなーって思って船員だけじゃなく元メンバーも出してみましたw
パティの話し、実は仕事中にちょこーっと空き時間が出来る時があるのでその間にちまちまと書いてましたww
パティと二人だけで話すって言うのは本編でも書いてたから思ったよりは苦戦しなかったです(話を思い付くまではちょっと苦戦したが・・・ι)
最初に出て来た盗賊ですが、海の上じゃないから盗賊でって事になりましたιw
パティ編は以上となりますが、まだまだ残りのパーティメンバーとの話が残っています
まだ読んでないキャラ達がいたら其方も是非とも読んで頂けたらと思います!
改めて、サイト10周年、本当に有り難う御座います!!
これからも地道にやっていきますので、今後とも宜しくお願いします!
それからよければ・サイト10周年記念小説アンケートのアンケートにもご協力をお願いします。
10周年:2019.07.18
完成:2019.05.01