サイト10周年記念小説
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「うーん・・・」
店先に並べられている小物を見てカロルは小さく唸り声を出していた
「もうちょっと中の物も見てみる?」
「・・・うん」
そんなカロルを見てリアは優しく微笑みそう声を掛けてカロルと店の中へと入って行った
心のこもった大切な贈り物
「はあ・・・」
「カロル、元気を出して。大丈夫、まだ時間も日にちもあるんだし」
「うん・・・」
店を出た後、リアとカロルはもう何度目か解らないこのやり取りをしながら次の店へと向かっていた
何故リアとカロルだけで店を回っているか、それは数日前の事だった
リアは仕事が終わり昼食でも取ろうと思い、ダングレストの商店を歩いていた
「・・・あれ? あそこにいるの・・・」
ふとある店を見るとそこに見知った人物がいた
「カロル・・?」
「え!? あ、・・・な、なんだ、リアか」
「ごめん、驚かせちゃった・・?」
「ううん! 全然! リアは仕事?」
「さっき終わった所よ。それでお昼にしようと思って。カロルは何してたの?」
「え? あ、えと・・・」
そう言うとカロルは視線を泳がせ出した
「・・・カロル?」
その様子にリアは首を傾げるとカロルは何かを思った顔をしてリアを見た
「・・・えっと、リアにちょっと相談があるんだけど・・・」
「相談・・・?」
「成る程ね。それであの店の前にいたのね」
「うん・・・」
あれから場所を変え、昼食も兼ねてカフェに来ていた
カロルがいた店、それは女性向けの小物が多く置いてる店だった
最初はギルドの依頼かと思ったが、どうやら別の理由があったようだ
それはカロルの想い人でもあり魔狩りの剣に所属しているナンの誕生日が近いので何かプレゼントをしようと思って色々な店を見て回っていたが、何を送ったら良いのか悩んでいたようだった
誰かに相談しようにもあの戦いが終わった後、皆それぞれやるべき事の為に各地に散らばったので、どうしようとかと思っていた時にたまたまリアが通り掛かったのだった
「リアだったら何か良い物思い付くかなって思って・・・」
確かにリアだったら親身になって相談を聞いてくれるし、誕生日プレゼントも贈ったり貰ったりしているから相談相手としてはうってつけだった
凄く真剣に悩んでいるカロルを見てリアは優しく微笑んだ
「そうやって真剣に悩んでカロルが決めた物だったら、ちゃんと相手にその気持ちは伝わるし貰った相手も嬉しいものよ」
「そうかな・・・」
「ええ。私もそうだから」
言うとリアは自然と自分が付けているリボンに触れていた
カロルもリアが付けているリボンは昔、ユーリとフレンから誕生日プレゼントで貰ったものだと聞いていたので嬉しそうに微笑むリアを見てその通りかもしれないと思った
「けど、何をあげたらナン、喜んでくれるんだろう・・・」
「うーん・・・あ、ならプレゼント選び、私も手伝うよ」
「え、良いの?」
「うん、丁度仕事も終わって暫くゆっくり出来るし、それにカロルの思いを聞いて手伝いたいって思ったから」
「ありがとう、リア!」
こうしてリアはカロルと一緒にナンの誕生日プレゼントを探す手伝いを始めたのだった
「どう? 何個か候補は決まった?」
「うん・・・今のとこ、これかなーって」
あれから何軒か回り、休憩も兼ねてカフェに寄り、この数日で回った店でプレゼント候補をメモしていた
そしてそのメモを見ると今日回った店の物も何個か書かれてた
「・・・・」
リアはそのメモを見ながらちらりとカロルを見ると、まだ何処か納得のいかない顔をしながらオレンジジュースを飲んでいた
「・・・あ、」
「どうしたの?」
リアはメモの一番下に書かれている文字を見てそう声を出すとカロルはリアを見た
「髪飾り・・・そう言えばナンって髪飾りしてたわよね?」
「うん。だからどうかなって思って・・・」
「じゃあこういうのはどう?」
言うとリアは自分の荷物の中からある物を取り出しそれをカロルに見せた
そして、
「・・・それで、話しって何?」
ナンの誕生日当日、カロルは事前にナンに手紙を出していて、ダングレストの宿屋の前で待ち合わせをしていた
ナンと数言話し終えるとナンはそう言ってカロルを見た
「えっと、今日ってナンの誕生日でしょ」
「え・・・あ、うん・・・」
覚えてたんだ・・・とぼそりと少しだけ視線を逸らしたが直ぐに視線を戻す
「それで、誕生日プレゼントを渡したくて・・・」
「え・・・」
「誕生日おめでとう、ナン。・・・プレゼント、受け取って貰える・・・?」
「え・・・あ、うん・・・・」
言うとカロルはラッピングされた箱を取り出しナンに渡すとナンは驚いた顔をしつつ、そのプレゼントを受け取った
「・・・ありがとう・・・これ、開けても良い・・?」
「うん」
その返事を聞きカロルは嬉しそうに頷き、ナンはラッピングを綺麗に開け箱を開けた
「・・・これ、・・髪飾り・・・?」
「うん、簪って言うんだって」
「簪・・・?」
聞いた事のない言葉にナンは疑問符を出した
「こっちじゃないものなんだ」
「こっち・・・?」
更に解らない事を言われ疑問に思うとカロルはあー・・っと言って宿の方を見る
「これ以上詳しくはボクからは話せないんだ。リア、後、お願いしても良い?」
「え?」
そう言うと宿の扉が開き、リアが出て来た
「カロル、約束守ってくれてありがとう。じゃあ二人共、中に入って」
そう言われ宿の中に入り、リアが泊まっている部屋にナンだけ通された
「・・・これ、どう言う事?」
「さっきの簪の挿し方を教えてあげるね。此処、座ってくれる?」
「え? ええ・・・」
そう言われ、鏡の前の椅子に座り結っていた髪をほどき、リアから簪の挿し方を教えて貰いながらリアは慣れた手つきで簪を挿していった
「はい、これで大丈夫よ」
「・・わあ・・・・」
説明が終わったと同時にそう言われ、鏡を見ると今までとは違った髪型になっていたが簪とも良く似合っていた
「うん、思った通り、良く良く似合ってる」
満足そうに微笑むリアを見てナンは思っていた事を聞いた
「・・・ねえ、これ、貴女が選んだの?」
「いいえ、選んだのはカロルよ」
「でもさっき思った通りって・・・」
「この簪はね、私の生まれ育った言霊使いの故郷で良く使っている髪飾りなの」
「え・・・?」
ナンの表情を見てリアは小さく笑った
「・・・言霊使いの事は貴女も知ってるでしょ」
「うん・・・」
リアが言霊使いだと言う事はナンもあの旅の時に、グシオスとの戦いが終わった後に知った事だった
さっきカロルに言ってた約束と言うのは言霊使いの故郷の事を言わないように、と言う事だった
世界は安定したとは言え、言霊使いの事は今までと同じように世間には実在している、と知られないようにしているのだった
それからリアはこの数日の出来事を話した
あの時リアは髪飾りと言う文字を見て簪の事を思い付き、自分が持っている簪をカロルに見せた
この世界にはないもので珍しいものだからどう?と提案するとカロルも色々な物を見てみたいと言い、次の日に故郷にある簪を何個か女性の神将に持って来てもらいこの部屋でその中から選び、リアが故郷に戻りこの新しい簪を買い、綺麗にラッピングして貰ったのだった
「・・そう、だったの・・・」
「カロル、本当に貴女の事を思って凄く真剣に一生懸命悩んでこのプレゼントを決めたのよ」
「・・・けど、あたし、魔物と戦う事が多いから直ぐに壊れちゃうかも」
ナンは少しだけ表情を曇らせたがリアは微笑みながら言葉を続けた
「ずっと身に付けてる事はないと思うわ」
「え?」
「プレゼントはね、贈ってくれた人の気持ちが相手にちゃんと伝わっている事が大事なの。勿論身に付けられる物は付けてくれてる方が嬉しいと思う。けど、そう言う風に大事に思う物だったら特別な日や大事な時に付ければ良いと思うの」
「・・・・」
「だから普段は大事に持っていたり、部屋に飾っていても良いと思うよ」
「・・・・」
そう言われナンは暖かい気持ちになり、更に鏡に映る自分の姿を見ていた
「それじゃあ、そろそろカロルに見せてあげよう」
「え?」
「贈ってくれた人に見せるのも、感謝の気持ちの一つよ」
「う、うん・・・///」
リアは優しく微笑みそう言うとナンは少し照れくさくなったようだったが、その後リアと共に部屋を出てエントランスで待っているカロルの所へ向かったのだった
*
「カロル、良かったね。ナンが喜んでくれて」
あれから暫くしてナンはギルドへ戻って行ったが、此処に来た時よりも良い表情をしていた
「リアのお陰だよ。本当にありがとう」
「私はカロルの手伝いをしただけよ。プレゼントを決めたのはカロルだもの。それにちゃんとナンにカロルの気持ちは伝わってたよ」
カロルに簪を挿した所を見た後、普段の髪型に戻って部屋を後にする時、ナンはリアとカロルに「ありがとう・・・」とお礼を言ったのだった
「普段は魔物と戦うから付けられないと思うけど、大事な時とかにはちゃんと付けてくれると思うよ」
「うん、そうだと良いな」
「きっと大事にしてくれるよ。カロルが一生懸命悩んで選んだプレゼントだからね」
自分の経験を思い出しながら言うとカロルも嬉しそうに頷いてくれた
「リアには沢山手伝ってもらったからお礼をしなくちゃね」
「お礼なんて良いよ。私もカロルとナンの嬉しそうな顔が見られたから満足してるよ」
「・・・リアならそう言うと思った。けど、実はちゃんとお礼の準備してるんだ。あ、きたきた」
「え?」
そう言うとカロルは少し先の方を見て言っていると足音が近付いて来ていて、リアもそこを見ると
「よ、カロル、リア」
「! ユーリ!」
宿屋の入口から入って自分達がいるエントランスに向かって来ていた
「ユーリ、どうして此処に?」
「カロル先生に呼ばれてな」
「時間通りだね、ユーリ」
どうやらユーリが此処に来たのはカロルが呼んだからだったようだ
「時間通りって、これからギルドの仕事?」
「いや、違うぜ」
「じゃあどうして?」
「お姫様のお迎えってとこだ」
「え・・?」
「ボクからのお礼だよ」
「・・・カロル」
カロルにそう言われ、やっとユーリが此処に来た理由が分かり驚きもしたが、直ぐに嬉しそうな表情を浮かべた
「ありがとう、カロル」
「ううん、こちらこそ。じゃあユーリ、後は頼んだよ」
「了解、首領。じゃ、行くか」
「うん」
リアは嬉しそうに微笑み、椅子から立ち上がってユーリと共に宿を後にした
二人を見送った後、カロルはさっきのナンの事を思い出していた
「ナン、本当に似合ってたな。大事にしてくれたら良いな」
そう思いながらカロルも宿を後にしたのだった
end.
あとがき
と事でサイト10周年記念小説、カロル編如何だったでしょうか?
フレン編から随分と間が空いて年も越してしまったが(^^;)w、無事にカロル編も完成しました!
カロルとの話を考えた時にナンとの事を書けたらなーって思ってて、ずっと内容どうしよう・・・って考えてたんだけど、ホントに数日前に簪をプレゼントしたら良いかもって思って構成を立てていったらサラッと書けてしまったw
簪って意外と髪が短い人でも挿せるんですよね、エステルやリタくらいの長さでも(昔友達と簪屋を見てた時に店員さんにして貰った事あります)
話としてはゲーム本編後の設定でした(読んだら解るがw)
なので、ナンとのやり取りもそこまでツンとしてない感じでw仕上げてます・・・
つか、ナンとリアちゃんが会話するのって案外これが初めてかも・・・
ゲーム本編後の設定なので、最後はカロル先生からのお礼は“ユーリとの時間”って事で、最後は彼にお迎えに来て貰いましたw(相変わらずユーリはオイシイ所を持って行くなw)
きっとこの後、リアちゃんはユーリにこの数日の出来事を話しつつ二人で幸せな時間を過ごしたであろうw
個人的にカロナンは本編でも続きを見たいなーって思ってたので、今回ちょっとでも書けて満足しております!
カロル編は以上となりますが、まだまだ残りのパーティメンバーとの話が残っています
まだ読んでないキャラ達がいたら其方も是非とも読んで頂けたらと思います!
改めて、サイト10周年、本当に有り難う御座います!!
これからも地道にやっていきますので、今後とも宜しくお願いします!
それからよければ・サイト10周年記念小説アンケートのアンケートにもご協力をお願いします。
10周年:2019.07.18
完成:2019.03.12
店先に並べられている小物を見てカロルは小さく唸り声を出していた
「もうちょっと中の物も見てみる?」
「・・・うん」
そんなカロルを見てリアは優しく微笑みそう声を掛けてカロルと店の中へと入って行った
心のこもった大切な贈り物
「はあ・・・」
「カロル、元気を出して。大丈夫、まだ時間も日にちもあるんだし」
「うん・・・」
店を出た後、リアとカロルはもう何度目か解らないこのやり取りをしながら次の店へと向かっていた
何故リアとカロルだけで店を回っているか、それは数日前の事だった
リアは仕事が終わり昼食でも取ろうと思い、ダングレストの商店を歩いていた
「・・・あれ? あそこにいるの・・・」
ふとある店を見るとそこに見知った人物がいた
「カロル・・?」
「え!? あ、・・・な、なんだ、リアか」
「ごめん、驚かせちゃった・・?」
「ううん! 全然! リアは仕事?」
「さっき終わった所よ。それでお昼にしようと思って。カロルは何してたの?」
「え? あ、えと・・・」
そう言うとカロルは視線を泳がせ出した
「・・・カロル?」
その様子にリアは首を傾げるとカロルは何かを思った顔をしてリアを見た
「・・・えっと、リアにちょっと相談があるんだけど・・・」
「相談・・・?」
「成る程ね。それであの店の前にいたのね」
「うん・・・」
あれから場所を変え、昼食も兼ねてカフェに来ていた
カロルがいた店、それは女性向けの小物が多く置いてる店だった
最初はギルドの依頼かと思ったが、どうやら別の理由があったようだ
それはカロルの想い人でもあり魔狩りの剣に所属しているナンの誕生日が近いので何かプレゼントをしようと思って色々な店を見て回っていたが、何を送ったら良いのか悩んでいたようだった
誰かに相談しようにもあの戦いが終わった後、皆それぞれやるべき事の為に各地に散らばったので、どうしようとかと思っていた時にたまたまリアが通り掛かったのだった
「リアだったら何か良い物思い付くかなって思って・・・」
確かにリアだったら親身になって相談を聞いてくれるし、誕生日プレゼントも贈ったり貰ったりしているから相談相手としてはうってつけだった
凄く真剣に悩んでいるカロルを見てリアは優しく微笑んだ
「そうやって真剣に悩んでカロルが決めた物だったら、ちゃんと相手にその気持ちは伝わるし貰った相手も嬉しいものよ」
「そうかな・・・」
「ええ。私もそうだから」
言うとリアは自然と自分が付けているリボンに触れていた
カロルもリアが付けているリボンは昔、ユーリとフレンから誕生日プレゼントで貰ったものだと聞いていたので嬉しそうに微笑むリアを見てその通りかもしれないと思った
「けど、何をあげたらナン、喜んでくれるんだろう・・・」
「うーん・・・あ、ならプレゼント選び、私も手伝うよ」
「え、良いの?」
「うん、丁度仕事も終わって暫くゆっくり出来るし、それにカロルの思いを聞いて手伝いたいって思ったから」
「ありがとう、リア!」
こうしてリアはカロルと一緒にナンの誕生日プレゼントを探す手伝いを始めたのだった
「どう? 何個か候補は決まった?」
「うん・・・今のとこ、これかなーって」
あれから何軒か回り、休憩も兼ねてカフェに寄り、この数日で回った店でプレゼント候補をメモしていた
そしてそのメモを見ると今日回った店の物も何個か書かれてた
「・・・・」
リアはそのメモを見ながらちらりとカロルを見ると、まだ何処か納得のいかない顔をしながらオレンジジュースを飲んでいた
「・・・あ、」
「どうしたの?」
リアはメモの一番下に書かれている文字を見てそう声を出すとカロルはリアを見た
「髪飾り・・・そう言えばナンって髪飾りしてたわよね?」
「うん。だからどうかなって思って・・・」
「じゃあこういうのはどう?」
言うとリアは自分の荷物の中からある物を取り出しそれをカロルに見せた
そして、
「・・・それで、話しって何?」
ナンの誕生日当日、カロルは事前にナンに手紙を出していて、ダングレストの宿屋の前で待ち合わせをしていた
ナンと数言話し終えるとナンはそう言ってカロルを見た
「えっと、今日ってナンの誕生日でしょ」
「え・・・あ、うん・・・」
覚えてたんだ・・・とぼそりと少しだけ視線を逸らしたが直ぐに視線を戻す
「それで、誕生日プレゼントを渡したくて・・・」
「え・・・」
「誕生日おめでとう、ナン。・・・プレゼント、受け取って貰える・・・?」
「え・・・あ、うん・・・・」
言うとカロルはラッピングされた箱を取り出しナンに渡すとナンは驚いた顔をしつつ、そのプレゼントを受け取った
「・・・ありがとう・・・これ、開けても良い・・?」
「うん」
その返事を聞きカロルは嬉しそうに頷き、ナンはラッピングを綺麗に開け箱を開けた
「・・・これ、・・髪飾り・・・?」
「うん、簪って言うんだって」
「簪・・・?」
聞いた事のない言葉にナンは疑問符を出した
「こっちじゃないものなんだ」
「こっち・・・?」
更に解らない事を言われ疑問に思うとカロルはあー・・っと言って宿の方を見る
「これ以上詳しくはボクからは話せないんだ。リア、後、お願いしても良い?」
「え?」
そう言うと宿の扉が開き、リアが出て来た
「カロル、約束守ってくれてありがとう。じゃあ二人共、中に入って」
そう言われ宿の中に入り、リアが泊まっている部屋にナンだけ通された
「・・・これ、どう言う事?」
「さっきの簪の挿し方を教えてあげるね。此処、座ってくれる?」
「え? ええ・・・」
そう言われ、鏡の前の椅子に座り結っていた髪をほどき、リアから簪の挿し方を教えて貰いながらリアは慣れた手つきで簪を挿していった
「はい、これで大丈夫よ」
「・・わあ・・・・」
説明が終わったと同時にそう言われ、鏡を見ると今までとは違った髪型になっていたが簪とも良く似合っていた
「うん、思った通り、良く良く似合ってる」
満足そうに微笑むリアを見てナンは思っていた事を聞いた
「・・・ねえ、これ、貴女が選んだの?」
「いいえ、選んだのはカロルよ」
「でもさっき思った通りって・・・」
「この簪はね、私の生まれ育った言霊使いの故郷で良く使っている髪飾りなの」
「え・・・?」
ナンの表情を見てリアは小さく笑った
「・・・言霊使いの事は貴女も知ってるでしょ」
「うん・・・」
リアが言霊使いだと言う事はナンもあの旅の時に、グシオスとの戦いが終わった後に知った事だった
さっきカロルに言ってた約束と言うのは言霊使いの故郷の事を言わないように、と言う事だった
世界は安定したとは言え、言霊使いの事は今までと同じように世間には実在している、と知られないようにしているのだった
それからリアはこの数日の出来事を話した
あの時リアは髪飾りと言う文字を見て簪の事を思い付き、自分が持っている簪をカロルに見せた
この世界にはないもので珍しいものだからどう?と提案するとカロルも色々な物を見てみたいと言い、次の日に故郷にある簪を何個か女性の神将に持って来てもらいこの部屋でその中から選び、リアが故郷に戻りこの新しい簪を買い、綺麗にラッピングして貰ったのだった
「・・そう、だったの・・・」
「カロル、本当に貴女の事を思って凄く真剣に一生懸命悩んでこのプレゼントを決めたのよ」
「・・・けど、あたし、魔物と戦う事が多いから直ぐに壊れちゃうかも」
ナンは少しだけ表情を曇らせたがリアは微笑みながら言葉を続けた
「ずっと身に付けてる事はないと思うわ」
「え?」
「プレゼントはね、贈ってくれた人の気持ちが相手にちゃんと伝わっている事が大事なの。勿論身に付けられる物は付けてくれてる方が嬉しいと思う。けど、そう言う風に大事に思う物だったら特別な日や大事な時に付ければ良いと思うの」
「・・・・」
「だから普段は大事に持っていたり、部屋に飾っていても良いと思うよ」
「・・・・」
そう言われナンは暖かい気持ちになり、更に鏡に映る自分の姿を見ていた
「それじゃあ、そろそろカロルに見せてあげよう」
「え?」
「贈ってくれた人に見せるのも、感謝の気持ちの一つよ」
「う、うん・・・///」
リアは優しく微笑みそう言うとナンは少し照れくさくなったようだったが、その後リアと共に部屋を出てエントランスで待っているカロルの所へ向かったのだった
*
「カロル、良かったね。ナンが喜んでくれて」
あれから暫くしてナンはギルドへ戻って行ったが、此処に来た時よりも良い表情をしていた
「リアのお陰だよ。本当にありがとう」
「私はカロルの手伝いをしただけよ。プレゼントを決めたのはカロルだもの。それにちゃんとナンにカロルの気持ちは伝わってたよ」
カロルに簪を挿した所を見た後、普段の髪型に戻って部屋を後にする時、ナンはリアとカロルに「ありがとう・・・」とお礼を言ったのだった
「普段は魔物と戦うから付けられないと思うけど、大事な時とかにはちゃんと付けてくれると思うよ」
「うん、そうだと良いな」
「きっと大事にしてくれるよ。カロルが一生懸命悩んで選んだプレゼントだからね」
自分の経験を思い出しながら言うとカロルも嬉しそうに頷いてくれた
「リアには沢山手伝ってもらったからお礼をしなくちゃね」
「お礼なんて良いよ。私もカロルとナンの嬉しそうな顔が見られたから満足してるよ」
「・・・リアならそう言うと思った。けど、実はちゃんとお礼の準備してるんだ。あ、きたきた」
「え?」
そう言うとカロルは少し先の方を見て言っていると足音が近付いて来ていて、リアもそこを見ると
「よ、カロル、リア」
「! ユーリ!」
宿屋の入口から入って自分達がいるエントランスに向かって来ていた
「ユーリ、どうして此処に?」
「カロル先生に呼ばれてな」
「時間通りだね、ユーリ」
どうやらユーリが此処に来たのはカロルが呼んだからだったようだ
「時間通りって、これからギルドの仕事?」
「いや、違うぜ」
「じゃあどうして?」
「お姫様のお迎えってとこだ」
「え・・?」
「ボクからのお礼だよ」
「・・・カロル」
カロルにそう言われ、やっとユーリが此処に来た理由が分かり驚きもしたが、直ぐに嬉しそうな表情を浮かべた
「ありがとう、カロル」
「ううん、こちらこそ。じゃあユーリ、後は頼んだよ」
「了解、首領。じゃ、行くか」
「うん」
リアは嬉しそうに微笑み、椅子から立ち上がってユーリと共に宿を後にした
二人を見送った後、カロルはさっきのナンの事を思い出していた
「ナン、本当に似合ってたな。大事にしてくれたら良いな」
そう思いながらカロルも宿を後にしたのだった
end.
あとがき
と事でサイト10周年記念小説、カロル編如何だったでしょうか?
フレン編から随分と間が空いて年も越してしまったが(^^;)w、無事にカロル編も完成しました!
カロルとの話を考えた時にナンとの事を書けたらなーって思ってて、ずっと内容どうしよう・・・って考えてたんだけど、ホントに数日前に簪をプレゼントしたら良いかもって思って構成を立てていったらサラッと書けてしまったw
簪って意外と髪が短い人でも挿せるんですよね、エステルやリタくらいの長さでも(昔友達と簪屋を見てた時に店員さんにして貰った事あります)
話としてはゲーム本編後の設定でした(読んだら解るがw)
なので、ナンとのやり取りもそこまでツンとしてない感じでw仕上げてます・・・
つか、ナンとリアちゃんが会話するのって案外これが初めてかも・・・
ゲーム本編後の設定なので、最後はカロル先生からのお礼は“ユーリとの時間”って事で、最後は彼にお迎えに来て貰いましたw(相変わらずユーリはオイシイ所を持って行くなw)
きっとこの後、リアちゃんはユーリにこの数日の出来事を話しつつ二人で幸せな時間を過ごしたであろうw
個人的にカロナンは本編でも続きを見たいなーって思ってたので、今回ちょっとでも書けて満足しております!
カロル編は以上となりますが、まだまだ残りのパーティメンバーとの話が残っています
まだ読んでないキャラ達がいたら其方も是非とも読んで頂けたらと思います!
改めて、サイト10周年、本当に有り難う御座います!!
これからも地道にやっていきますので、今後とも宜しくお願いします!
それからよければ・サイト10周年記念小説アンケートのアンケートにもご協力をお願いします。
10周年:2019.07.18
完成:2019.03.12