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「すみません、お待たせしました」
「二人とも、欲しかったものは買えたかな」
「はい」「うん」
そう元気良く答えたリアと梓の手には小さな紙袋と手提げの紙袋があった
ダリウス達の所へ行きルードや虎、コハクを見ると彼等も何個か紙袋を持っていた
今日は月に一度の買い出しの日、この日に食料や生活品をまとめ買いするのがダリウスの邸の生活での決まりの1つでもあった
今回はゲストである梓とコハクもいると言う事でいつもより遠出をして買い出しをし、以前梓とリアがお茶会をした時に行ってみたいと話していた店にも立ち寄り、買い物を済ませ店から出てきたのだった
「さて、残るは材料だけです」
「・・・チッ、仕方がねえ。腕がもげるのは覚悟してやる」
「え! そんなに――」
「買う訳ないでしょう。虎、毎月、同じ事を言わせないで下さい」
「ダリウス、リアさん、ありがとう。気遣ってくれて嬉しかった」
「どういたしまして。律儀な事だ」
「また今度二人で買い物しましょうね」
「うん」
「ふふっ、まるで姉妹みたいだね」
仲良さげに楽しく笑い合う二人を見てダリウスがそう言っていると、周りが少し騒がしくなり始めた
「・・・あれ? なんだか周りが少し騒がしくなったような・・・」
「公園の方からだね。気になるなら、俺とリアと一緒に行ってみようか」
「食料の買い出しはどうすんだ」
「3人いれば手は足りるだろう? むしろ、買いすぎの方が心配だけどそこは優秀な管理者がいるしね」
「お任せを」
「おれとしては、政虎さんに味方したいな~・・・」
「話が分かるじゃねえか」
「・・・させませんからね」
「ふふ・・・では、頼んだよ。行こうか、リア、梓」
「はい」「あっ・・・うん」
08.情報屋と珈琲
公園に行くと既に人集りが出来ていた
「―― 諸君、終末の時は近い!」
「何かの演説・・・?」
「・・・のようだね」
「魔に侵され、怨霊蔓延る帝都・・・市民は日々、恐怖と不安に苛まれている。そして、今、憑闇と言う恐ろしい病まで流行り始めた」
公園の中央で演説をしている男の声に続くように人集りの中に居た人々から更に声が上がる
「・・・鬼の所為だわ・・・怨霊も、憑闇も・・・鬼の仕業よ」
「彼奴等、一体何処まで、我々を苦しめれば気が済むんだ」
「「っ・・・」」
「・・・・」
その言葉に梓もリアも表情を変え、ダリウスも黙ってはいるものの少し険しい表情をしていた
「だが! 天は我等を見捨ててはいない。流星の如く、闇を裂きこの地に舞い降りる救世主―― その者こそ、龍神の神子!」
演説をしていた男のその言葉に周りから歓声の声が上がる
「龍神の神子様・・・」
「本当に、そんな方が来て下さればね・・・でも・・・」
「案ずるな、信じろ。心から救いを求めるのだ。歴代の神子がなした偉業を今一度、思い起こせ。信仰と祈りを取り戻せ。さすれば、神子は諸君の前に姿を現し帝都を安寧へと導くだろう」
「龍神の神子の熱心な信者達か」
「みたいですね・・・」
ダリウスの言葉にリアは小さく頷き、梓は周りから上がる「龍神の神子様、救世主、万歳!」と言う声に驚きと圧倒を感じていた
「・・・・」
だがそれ以外にリアは何かを気にしている顔をしていた
途端、肩に何かが乗った気がして見るとダリウスが優しい顔をしてリアの肩の上に手を乗せていた
「・・・ダリウスさん」
「君が気に病む事はないよ」
「でも・・・、やっぱりあんな風に言われるのは、私は嫌です・・」
「君は本当に優しい子だね。その気持ちだけで俺は嬉しいよ」
何処か辛そうな顔をして片手を胸の前で握って言うリアを見てダリウスはまた優しい笑顔をして今度はリアの頭を撫でてあげた
こうされてしまうと何も言えなくなってしまい、その話題は此処までにしようと思い隣を見ると梓の姿がなかった
「あれ? 梓ちゃんは? ・・って、あそこに居るのは」
少しだけ後ろに下がっていたようだったが、梓の隣には見覚えのある人物がいた
「やあ、村雨、こんな所で会えるとはね」
「こんにちは、村雨さん」
「むらさめ・・・? ダリウスとリアさんの知り合いなの?」
「ああ」
「ダリウス、楓月。まさか、お宅等の連れかい・・・って事は―――」
村雨と呼ばれた人物はそこで何か悟ったのかそこで言葉を切る
「ふふ、紹介するよ。店に寄って行っても?」
「・・・構わんよ。此処で話しの続きをすれば騒ぎになりかねない」
村雨の視線に気付くとリアも頷き梓と共に彼等の後に続いていく
公園からだいぶ離れ飲食街の少し離れにある所へやって来た
そのまま「ハイカラヤ」と言うカフェーに入るとマスターが声を掛けリアにも声を掛けた
「あら、今日はリアちゃんも一緒なのね」
「はい、お邪魔してます」
「リアちゃんがいるならアタシが接客してあげたいけど、今日は村雨のお客さんみたいだし、接客は不要ね。ごゆっくり~」
言うとマスターはカウンターに戻って行った
「随分とマスター気に入られているね」
「たまに一人で来てマスターと喋っているからな・・・お宅等、何処でも良いから座っててくれ」
村雨はそう言うと奥へ向かい、リア達は空いている席へと向かい座った
「リアさんもこの店の常連なんだね」
「ええ。マスターも村雨さんも良い人だし、色々な人が居て面白いもの」
「そうだね。此処は客層が広いから社会の縮図を見るようだね」
「そりゃ、大げさだ。お待ちどう」
そう声が聞こえたかと思うと村雨が珈琲の入ったカップをテーブルに置くと珈琲の良い香りが漂ってくる
「言っとくが、変更は利かんよ。これしか煎れられないんでな」
「ありがとう御座います。頂きます」
「ん」
村雨にお礼を言ってリアは一口飲む
(やっぱり村雨さんが淹れてくれる珈琲は美味しいな)
何処か他の人や店とも違った味わいが口に広がりリアも気に入っているのだった
「で、ダリウス、この娘があんたが探していた神子なのか?」
「ああ、そうだよ。間違いなく、龍神の神子殿だ。その節は、情報提供ありがとう」
「情報提供?」
「君がこの世界に現れる日にちと場所を俺に教えてくれたのは他ならぬ村雨だ」
「え?」
「ふうん――。・・・随分、若いね。と言うか、まだガキだ。いくつだ?」
「一応、16歳です。高校生なんですけど・・・」
「・・・コウコウセイ」
その言葉に梓以外が疑問を抱く
「あ、えっと、学生って意味で・・・」
「・・・変わったガキだ。どっから、此処へ迷いこんだ?」
「えっ・・・?」
「流石だね、村雨。早速見抜くとは。そう、彼女はこの世界の人間じゃない」
「・・・なるほどな。神子が時空を超えて来た例は少なくない」
「あの・・・コーヒー、有り難う御座います。遅くなりましたが、私、高塚 梓と言います」
そこでまだ自己紹介していなかった事に気が付き梓が挨拶すると村雨も自己紹介を始めた
「・・・ん。俺は里谷村雨だ。表向き、小説を書いて生計を立てている。裏家業は推して量れ」
「・・・探偵・・でしょうか」
「やってる事は限りなく近い。事務所は開いていないがな」
「村雨さんは情報屋をやっているのよ」
「情報屋?」
「軍を始め、様々な秘密に通じている。どんなに頼み込んでも情報元は明かしてくれないけれどね」
「当然だろう。情報屋がそれをしちゃ機密違反だ」
「じゃあ、ダリウスの仲間と言う訳ではないんですか?」
「違うね。情報屋ってのは中立の生業だ。仕事柄、軍側と鬼側、両者の出方をそれなりに見てきたが・・・個人的にはどっちの思想にも興味ない。だから、軍や世間にならって神子を担ぎ上げる気もなければダリウス達のように囲う気もないよ」
「そう・・・ですか」
「・・・おい、そろそろ珈琲が冷めるぞ」
「あ・・はい、頂きます。・・・!」
梓は珈琲を一口飲むと目を丸くした
「おや、目を丸くしてる。美味しい?」
「・・・うん。こんなの、初めて飲んだ。なめらかで香りが良くて―― 後、とんでもなく黒くて苦い」
「・・・・」
「・・ふふっ」
梓の答えに思わずリアは笑ってしまい村雨は少し呆れ気味に言う
「あんた、それどう考えても文句だろうが」
「すみません、ブラックコーヒーはあまり飲む機会がなくて・・・」
「・・・ガキ」
言うと村雨は梓のコーヒーにミルクを注ぎ一口飲むと先程より良い表情をし今度こそ飲めるようになったのだと見て分かった
「村雨さん、表の職業は小説家だって言ってましたけど・・・このお店でもバイトしてるんですか?」
「・・・バイト?」
「ええと・・・不定期で働いてるのかと思って」
「ムカデじゃないんだ。そう何足も草鞋を履けない」
「村雨は、店の豆と道具を使って勝手に珈琲を淹れているだけだ。店主の目こぼしを良い事にね」
「自分で淹れた方が美味いんだから、仕方ない」
「梓ちゃんも村雨さんの珈琲が気に入ったみたいね」
美味しそうに珈琲を飲む梓の顔を見てリアがそう言うと村雨がそりゃどうもと返事を返した
「・・・だったら、また来い。あんたの分の珈琲代くらいは払ってやるよ」
「え・・・っ?」
「おや、珍しいね。村雨、どんな魂胆かな?」
「・・不憫なガキには優しい性分なんだ」
「私、不憫ですか?」
「・・・不憫だろう。何処の世界から来たかは知らんがね。何処にでも居る、ただの娘が救世主なんて、大層なものに奉りあげられて」
「神子殿に対してただの娘とは、お言葉だね」
「俺は神子様の御利益なんて信じてやいないからな。今、目の前に居るのは何処からどう見てもただの、小娘だろうに」
村雨の言葉が意外だったのか衝撃だったのか梓は暫く驚いた顔をしていたが、何処か肩の力が抜けたような雰囲気になった事にリアは気が付いていた
リアがそう思っていると村雨がダリウスに封筒を渡し内容を確認した後ダリウスはお礼を言い、村雨は原稿が残っているからと言って店の奥へと消えていった
「ゆっくり飲んで良いよ。ルード達の買い出しもそれなりに時間が掛かるだろうから」
ダリウスの言葉に頷き、梓もリアもまた一口飲んで、ルード達の買い出しが終わるまでハイカラヤで時間を潰したのだった
続く
あとがき
わ~い、やっと村雨さん登場だ~!
そしてハイカラヤとマスターと村雨さんの珈琲も登場だ~!ww
この辺りすっごい好きなんです、はいww
さて、今回は買い出しに出てる所からスタートでした
やっぱり買い出しに行ったら女子二人で何処か買い物に出て欲しかったので最初は梓と買い物してましたw
そして演説のところでダリウスともやっと夢っぽくなったね!!ww
ずっと鬼の一族の事を昔から知っているリアちゃんにとっては鬼の仕業とか言われるのは嫌だろうしね・・・
その気持ちはきっとダリウスだけでなくルードくんや虎にも伝わってるだろうし、ああ言われたら絶対嬉しいですよねw
で、ハイカラヤでのやり取り、うん、此処も好きなんです
今後村雨さんやマスター達とも絡みが書けたら良いなと思っています
さ、次は・・・あそこかな?
では!
2015.06.21
「二人とも、欲しかったものは買えたかな」
「はい」「うん」
そう元気良く答えたリアと梓の手には小さな紙袋と手提げの紙袋があった
ダリウス達の所へ行きルードや虎、コハクを見ると彼等も何個か紙袋を持っていた
今日は月に一度の買い出しの日、この日に食料や生活品をまとめ買いするのがダリウスの邸の生活での決まりの1つでもあった
今回はゲストである梓とコハクもいると言う事でいつもより遠出をして買い出しをし、以前梓とリアがお茶会をした時に行ってみたいと話していた店にも立ち寄り、買い物を済ませ店から出てきたのだった
「さて、残るは材料だけです」
「・・・チッ、仕方がねえ。腕がもげるのは覚悟してやる」
「え! そんなに――」
「買う訳ないでしょう。虎、毎月、同じ事を言わせないで下さい」
「ダリウス、リアさん、ありがとう。気遣ってくれて嬉しかった」
「どういたしまして。律儀な事だ」
「また今度二人で買い物しましょうね」
「うん」
「ふふっ、まるで姉妹みたいだね」
仲良さげに楽しく笑い合う二人を見てダリウスがそう言っていると、周りが少し騒がしくなり始めた
「・・・あれ? なんだか周りが少し騒がしくなったような・・・」
「公園の方からだね。気になるなら、俺とリアと一緒に行ってみようか」
「食料の買い出しはどうすんだ」
「3人いれば手は足りるだろう? むしろ、買いすぎの方が心配だけどそこは優秀な管理者がいるしね」
「お任せを」
「おれとしては、政虎さんに味方したいな~・・・」
「話が分かるじゃねえか」
「・・・させませんからね」
「ふふ・・・では、頼んだよ。行こうか、リア、梓」
「はい」「あっ・・・うん」
08.情報屋と珈琲
公園に行くと既に人集りが出来ていた
「―― 諸君、終末の時は近い!」
「何かの演説・・・?」
「・・・のようだね」
「魔に侵され、怨霊蔓延る帝都・・・市民は日々、恐怖と不安に苛まれている。そして、今、憑闇と言う恐ろしい病まで流行り始めた」
公園の中央で演説をしている男の声に続くように人集りの中に居た人々から更に声が上がる
「・・・鬼の所為だわ・・・怨霊も、憑闇も・・・鬼の仕業よ」
「彼奴等、一体何処まで、我々を苦しめれば気が済むんだ」
「「っ・・・」」
「・・・・」
その言葉に梓もリアも表情を変え、ダリウスも黙ってはいるものの少し険しい表情をしていた
「だが! 天は我等を見捨ててはいない。流星の如く、闇を裂きこの地に舞い降りる救世主―― その者こそ、龍神の神子!」
演説をしていた男のその言葉に周りから歓声の声が上がる
「龍神の神子様・・・」
「本当に、そんな方が来て下さればね・・・でも・・・」
「案ずるな、信じろ。心から救いを求めるのだ。歴代の神子がなした偉業を今一度、思い起こせ。信仰と祈りを取り戻せ。さすれば、神子は諸君の前に姿を現し帝都を安寧へと導くだろう」
「龍神の神子の熱心な信者達か」
「みたいですね・・・」
ダリウスの言葉にリアは小さく頷き、梓は周りから上がる「龍神の神子様、救世主、万歳!」と言う声に驚きと圧倒を感じていた
「・・・・」
だがそれ以外にリアは何かを気にしている顔をしていた
途端、肩に何かが乗った気がして見るとダリウスが優しい顔をしてリアの肩の上に手を乗せていた
「・・・ダリウスさん」
「君が気に病む事はないよ」
「でも・・・、やっぱりあんな風に言われるのは、私は嫌です・・」
「君は本当に優しい子だね。その気持ちだけで俺は嬉しいよ」
何処か辛そうな顔をして片手を胸の前で握って言うリアを見てダリウスはまた優しい笑顔をして今度はリアの頭を撫でてあげた
こうされてしまうと何も言えなくなってしまい、その話題は此処までにしようと思い隣を見ると梓の姿がなかった
「あれ? 梓ちゃんは? ・・って、あそこに居るのは」
少しだけ後ろに下がっていたようだったが、梓の隣には見覚えのある人物がいた
「やあ、村雨、こんな所で会えるとはね」
「こんにちは、村雨さん」
「むらさめ・・・? ダリウスとリアさんの知り合いなの?」
「ああ」
「ダリウス、楓月。まさか、お宅等の連れかい・・・って事は―――」
村雨と呼ばれた人物はそこで何か悟ったのかそこで言葉を切る
「ふふ、紹介するよ。店に寄って行っても?」
「・・・構わんよ。此処で話しの続きをすれば騒ぎになりかねない」
村雨の視線に気付くとリアも頷き梓と共に彼等の後に続いていく
公園からだいぶ離れ飲食街の少し離れにある所へやって来た
そのまま「ハイカラヤ」と言うカフェーに入るとマスターが声を掛けリアにも声を掛けた
「あら、今日はリアちゃんも一緒なのね」
「はい、お邪魔してます」
「リアちゃんがいるならアタシが接客してあげたいけど、今日は村雨のお客さんみたいだし、接客は不要ね。ごゆっくり~」
言うとマスターはカウンターに戻って行った
「随分とマスター気に入られているね」
「たまに一人で来てマスターと喋っているからな・・・お宅等、何処でも良いから座っててくれ」
村雨はそう言うと奥へ向かい、リア達は空いている席へと向かい座った
「リアさんもこの店の常連なんだね」
「ええ。マスターも村雨さんも良い人だし、色々な人が居て面白いもの」
「そうだね。此処は客層が広いから社会の縮図を見るようだね」
「そりゃ、大げさだ。お待ちどう」
そう声が聞こえたかと思うと村雨が珈琲の入ったカップをテーブルに置くと珈琲の良い香りが漂ってくる
「言っとくが、変更は利かんよ。これしか煎れられないんでな」
「ありがとう御座います。頂きます」
「ん」
村雨にお礼を言ってリアは一口飲む
(やっぱり村雨さんが淹れてくれる珈琲は美味しいな)
何処か他の人や店とも違った味わいが口に広がりリアも気に入っているのだった
「で、ダリウス、この娘があんたが探していた神子なのか?」
「ああ、そうだよ。間違いなく、龍神の神子殿だ。その節は、情報提供ありがとう」
「情報提供?」
「君がこの世界に現れる日にちと場所を俺に教えてくれたのは他ならぬ村雨だ」
「え?」
「ふうん――。・・・随分、若いね。と言うか、まだガキだ。いくつだ?」
「一応、16歳です。高校生なんですけど・・・」
「・・・コウコウセイ」
その言葉に梓以外が疑問を抱く
「あ、えっと、学生って意味で・・・」
「・・・変わったガキだ。どっから、此処へ迷いこんだ?」
「えっ・・・?」
「流石だね、村雨。早速見抜くとは。そう、彼女はこの世界の人間じゃない」
「・・・なるほどな。神子が時空を超えて来た例は少なくない」
「あの・・・コーヒー、有り難う御座います。遅くなりましたが、私、高塚 梓と言います」
そこでまだ自己紹介していなかった事に気が付き梓が挨拶すると村雨も自己紹介を始めた
「・・・ん。俺は里谷村雨だ。表向き、小説を書いて生計を立てている。裏家業は推して量れ」
「・・・探偵・・でしょうか」
「やってる事は限りなく近い。事務所は開いていないがな」
「村雨さんは情報屋をやっているのよ」
「情報屋?」
「軍を始め、様々な秘密に通じている。どんなに頼み込んでも情報元は明かしてくれないけれどね」
「当然だろう。情報屋がそれをしちゃ機密違反だ」
「じゃあ、ダリウスの仲間と言う訳ではないんですか?」
「違うね。情報屋ってのは中立の生業だ。仕事柄、軍側と鬼側、両者の出方をそれなりに見てきたが・・・個人的にはどっちの思想にも興味ない。だから、軍や世間にならって神子を担ぎ上げる気もなければダリウス達のように囲う気もないよ」
「そう・・・ですか」
「・・・おい、そろそろ珈琲が冷めるぞ」
「あ・・はい、頂きます。・・・!」
梓は珈琲を一口飲むと目を丸くした
「おや、目を丸くしてる。美味しい?」
「・・・うん。こんなの、初めて飲んだ。なめらかで香りが良くて―― 後、とんでもなく黒くて苦い」
「・・・・」
「・・ふふっ」
梓の答えに思わずリアは笑ってしまい村雨は少し呆れ気味に言う
「あんた、それどう考えても文句だろうが」
「すみません、ブラックコーヒーはあまり飲む機会がなくて・・・」
「・・・ガキ」
言うと村雨は梓のコーヒーにミルクを注ぎ一口飲むと先程より良い表情をし今度こそ飲めるようになったのだと見て分かった
「村雨さん、表の職業は小説家だって言ってましたけど・・・このお店でもバイトしてるんですか?」
「・・・バイト?」
「ええと・・・不定期で働いてるのかと思って」
「ムカデじゃないんだ。そう何足も草鞋を履けない」
「村雨は、店の豆と道具を使って勝手に珈琲を淹れているだけだ。店主の目こぼしを良い事にね」
「自分で淹れた方が美味いんだから、仕方ない」
「梓ちゃんも村雨さんの珈琲が気に入ったみたいね」
美味しそうに珈琲を飲む梓の顔を見てリアがそう言うと村雨がそりゃどうもと返事を返した
「・・・だったら、また来い。あんたの分の珈琲代くらいは払ってやるよ」
「え・・・っ?」
「おや、珍しいね。村雨、どんな魂胆かな?」
「・・不憫なガキには優しい性分なんだ」
「私、不憫ですか?」
「・・・不憫だろう。何処の世界から来たかは知らんがね。何処にでも居る、ただの娘が救世主なんて、大層なものに奉りあげられて」
「神子殿に対してただの娘とは、お言葉だね」
「俺は神子様の御利益なんて信じてやいないからな。今、目の前に居るのは何処からどう見てもただの、小娘だろうに」
村雨の言葉が意外だったのか衝撃だったのか梓は暫く驚いた顔をしていたが、何処か肩の力が抜けたような雰囲気になった事にリアは気が付いていた
リアがそう思っていると村雨がダリウスに封筒を渡し内容を確認した後ダリウスはお礼を言い、村雨は原稿が残っているからと言って店の奥へと消えていった
「ゆっくり飲んで良いよ。ルード達の買い出しもそれなりに時間が掛かるだろうから」
ダリウスの言葉に頷き、梓もリアもまた一口飲んで、ルード達の買い出しが終わるまでハイカラヤで時間を潰したのだった
続く
あとがき
わ~い、やっと村雨さん登場だ~!
そしてハイカラヤとマスターと村雨さんの珈琲も登場だ~!ww
この辺りすっごい好きなんです、はいww
さて、今回は買い出しに出てる所からスタートでした
やっぱり買い出しに行ったら女子二人で何処か買い物に出て欲しかったので最初は梓と買い物してましたw
そして演説のところでダリウスともやっと夢っぽくなったね!!ww
ずっと鬼の一族の事を昔から知っているリアちゃんにとっては鬼の仕業とか言われるのは嫌だろうしね・・・
その気持ちはきっとダリウスだけでなくルードくんや虎にも伝わってるだろうし、ああ言われたら絶対嬉しいですよねw
で、ハイカラヤでのやり取り、うん、此処も好きなんです
今後村雨さんやマスター達とも絡みが書けたら良いなと思っています
さ、次は・・・あそこかな?
では!
2015.06.21