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「ありがとう御座いました~」
入り口の扉にセットしてあるベルの音がチリンと鳴り客が出て行きまた新しい客が店へ入って来る
「ミルクとカステラ、珈琲とシベリアですね。少々お待ち下さい」
6月26日、今日もリアはミルクホールで働いていた
数日前に新作として出したカステラの人気が好評で客が耐えずに来ていたのだった
新しい客から注文を取り厨房に伝え終えると、
「リアちゃん、そろそろ上がりの時間でしょ。もう上がって良いよ」
「はい。お疲れ様でした、お先に失礼します」
店主からそう言われ皆に声を掛け着替えて裏口から外に出ると
「リアさん」
聞き慣れた声が聞こえ前を見るとルードがいた
「ルードくん。もしかして待たせちゃった?」
「いえ。私も今来た所です」
今朝、朝食を作っている時にルードが夕食に必要なものを買いに行くと言っていてリアも買いたい物があると言いリアの仕事終わりに買いに行く約束をしていたのだった
「今日も忙しそうでしたね」
「うん、あのカステラの評判が良くてお客さんがいっぱい来てるの」
「確かにあのカステラは美味でした。客が殺到するのも納得です」
ルードが此処まで言うのも珍しいなとも思うがリアもこの前梓と食べてその味は分かっているのでそうだねと返事を返した
それから店を数軒回り、最後の一軒に立ち寄り品物を注文した時だった
「姉弟仲良く買い物かい?」
「え?」
「ああ、ごめんよ。もしかして恋人だったかい?」
「え!?///」「っ―― !!」
店のおばさんにそう言われてリアもルードも思わず言葉に詰まってしまうが直ぐにルードが平常心を保ちながら答える
「いえ、私達は、そう言った関係ではなく・・・」
「あら、そうなの? 仲良さげにしていたからあたしはてっきりそうだと思ってたよ」
と陽気に笑うおばさんを余所に二人は未だに照れたような居心地が悪そうな顔をしていた
そしておばさんから品物が入った袋を受け取ろうとしていた時だった
「号外~、号外だよ~~!!」
急にその声が辺りに響き渡り、皆号外を配っている男の元に集まり号外を貰っていた
「号外? 何か遭ったのかしら?」
「すみません、一部頂けますか」
「はいよ」
「ありがとう御座います」
ルードはすかさず号外を配っている男に声を掛けリアも先程貰った袋を片手にルードと共に少し人がいない所で号外を見ると、そこには今まで見た事もないものが記載されていた
「・・・『憑闇 、現る』?」
見出しに書かれている文字をリアが読むとルードが更に続けて読む
「人間の体が突如、変容し凶暴化した存在・・・の呼称。本日参謀本部と小石川に襲撃・・」
「小石川って、確か今日梓ちゃん達が行ってるはずじゃ・・・」
今朝ダリウス達と話した時に小石川の植物園に行くと言っていた
彼等の心配をしつつルードと共に一通り号外に目を通す
「・・・良く解らない記事ですね」
「・・・うん」
だが、リアは何か引っかかっていた
「・・・リアさん? どうかしましたか?」
「・・・ちょっとこの記事が引っかかって」
何が、と言う訳ではないがリアには何か引っかかるものがあった
リアがそう言って引っかかったものは必ず何かあると言うのはルードも知っているが、この記事だけではそれが何かと言うのは判断出来ない
「リアさんがそう言うのでしたら、少し気に留めておくべきですかね」
言うとルードは新聞を畳み紙袋の中へ入れる
「そろそろ帰りましょう。日が暮れてしまいます」
「うん、そうだね」
お互いその事を気に留めながら人並みを抜けて歩き出した
06.琥珀色の瞳 をした青年
「ただいま、戻りました」
「ただいま」
「あっ・・・、ルードくん、リアさんお帰りなさい」
ルードとリアが邸に戻った頃には既に辺りは暗くなっていた
邸から灯りが漏れている所を見ると既にダリウス達も帰って来ているのだろうと分かり、中に入ると梓が出迎えてくれた
その先を見るとダリウスと虎もまだ立ったままだった所を見ると梓達も少し前に帰って来たのだろうと思った
「今日は街に行っていたんだろう。何か、変わりは」
「号外が出ていました。意味の分からない記事ですが」
「号外? どら、俺にも見せろ」
ダリウスが新聞を広げると虎もそれを横から覗き見る
「・・・『憑闇、現る』?」
「人間の体が突如、変容し凶暴化した存在・・・の呼称だそうですよ。なんでも本日参謀本部と小石川に襲撃が遭ったとか」
「小石川って今日行ってましたよね? 大丈夫でした?」
「ああ・・・」
「・・・・」
「?」
曖昧な返事を返す虎と少し眉を寄せて悩んだような顔をしている梓を見てリアは疑問を持つ
「憑闇ねえ、たいそうな名前を付けたようだ」
「『帝都の穢れにより謎の病原菌が人体を蝕む。人間でも、怨霊でもない闇の化身が帝都を脅かす』少々胡散臭い話ですが、リアさんは少し引っかかる所があるようです」
「ふうん・・・」
ルードの言葉を聞くとダリウスはリアを見て何か思っている顔をしていた
「・・・腹、減った・・・何か食わせて・・・」
すると、赤い髪を結っている青年がか細い声でそう発したかと思うとバタンと音を立てて倒れてしまった
「は!?」
「えっ、だ、大丈夫!?」
ルードは呆気に取られリアも呆気に取られてしまうが直ぐに我に返りその青年に駆け寄る
「おや、燃料切れかな。ルード、この子の食事の用意を頼めるかな。リアは治療をお願いするよ」
「あ、はい」
ダリウスに言われ青年を見ると腕から出血しているのが解り直ぐに治癒術を使ってあげた
他の傷は部屋に運んでからと言う事になったので虎に運んでもらった
「うぅ・・・」
「大丈夫? 何処か痛む?」
ベッドに横になった途端呻き声を上げた青年に声を掛けると青年は身体を起こした
「いえ、大丈夫です。ベッドがふかふかで~」
「なら良かった。腕の傷はさっき治したけど他に怪我してる所はない?」
「え? あ、本当だ」
言われるまで気付かなかったのか腕を見て驚いていた
「あ、少しそのまま動かないで」
「え?」
怪我をしている箇所を見つけリアは目を瞑って手を当てると温かい光が発せられどんどん傷が癒えていった
「うわ、凄い・・・傷があっという間に消えちゃった・・・。痛みもないや」
「他に痛む所はない?」
「えっと・・・うん、ないや」
きょろきょろと自分の身体を確認し答えると良かったと言う優しい笑顔を向けられる
「・・・・聖母様だ」
「え?」
青年がぽつりと呟いた言葉が聞こえず首を傾げているとある場所に目が止まった
(・・・首の辺りにあるの・・・痣かな? 花の形をしているみたい・・・)
そう思っていると扉をノックする音が聞こえ開けるとルードが夕食を運んで来た
「後は私がやりますので階下へどうぞ」
「うん、じゃあお願いね」
夕食後、彼の様子はルードと梓が見ると言う事になり先に休ませてもらった
翌日、
「うん、このおひたし、うまい。それに、この焼き魚も・・・。塩が利いてて最高に美味い!」
昨日出逢った琥珀色の瞳をした青年、昨日は憔悴していて弱々しかったのだが、一日寝て体力が回復したのかルードとリアが作った朝食があっという間になくなっていく
虎で見慣れていると言えば見慣れているが、昨日の印象があったからなのか思わず唖然としてしまっていた
「慌ててかきこまなくても、貴方の分の食事はなくなりませんよ。貴方・・・ええと、名前はなんて言うんですかね」
「あ、そうだ。私も名前、聞きたかったんだ。教えてくれる?」
「名前? 知らない」
「え?」
「ついでに言えば何処で暮らしてたのか。家の場所も分からない」
彼を見る限り、嘘を付いていると言う事はない
・・・ではつまり、記憶喪失、と言う事だろうか?
「ふうん、新聞の通り、憑闇が病なら病原菌に冒された時記憶を失ったのかな。君のような病の人を他には知っているかい?」
「うーん・・・分からない。気付いたら、おれ、花の中を走っていたんだよね。数人で一緒に走ってたかもしれないけど、気付いたら一人になってて・・・」
「ふうん。だが、多分元は帝都の住民じゃねえの? その着物の柄、少し前に流行ってたもんだ」
虎の言う通り、彼が羽織っている着物は少し前に流行っていた柄だった
「・・・記憶がない、となると少々遠回りになるけど仕方ないか。・・・君、身寄りがないなら俺の元で仕事を手伝うかい?」
「ええっ? ・・・つまり、此処に置いてくれるんですか?」
「ああ、昨日の新聞を見る限り、憑闇は人を襲う危険な病だと警戒されている。うかつに外をふらつけば、君は帝国軍に捕縛されるだろう。それではあまりに酷だからね」
「そう言えば、あんまり気に留めてなかったけど貴方達、何者?」
「鬼の一族だよ。一応、俺が首領を務めている。それから、梓は・・・龍神の神子殿だ。訳あって、うちに居候している。彼女は璃唖。彼女も梓と同じ人間だけれど、俺達鬼の一族とは古い付き合いでね。今は仕事をしながら共に暮らしているよ」
「オニ? ミコ?」
「一から説明しようか」
ダリウスの言葉に青年は頷き、ダリウスやルード、リアにより説明が始まった
「・・・はあ、みんな凄い人達なんだね」
説明を聞き終わると青年は驚いた顔をしてそう呟いた
「色々抱えてるんだ。おれが『憑闇』って奴だとしても全然、薄れるくらい特別な境遇って感じ」
確かに鬼の一族と龍神の神子、鬼と人間の混血に人間だが鬼の一族と関わりがあり少し変わった力を持っている人間・・・
・・・あまり気にした事もなかったが他人から見れば特別な境遇っと言う部類に入るのかもしれない
それからダリウスは青年に此処で匿う交換条件を提示した
それは、早く記憶を取り戻す事、だった
どうやらダリウスは憑闇が生まれた秘密に興味があるようだった
憑闇が出現した日に憑闇が出現した場所で出逢った青年なのだから彼が記憶を取り戻せば何か分かるかもしれないとダリウスは踏んでいるのだろう
そう思っていると梓達が彼の名前の事で話し合っていた
これから此処に住むにしても名前がなければ不便だと言う事で代表で梓が決める事になった
「トパーズ・・・ううん、琥珀色。コハク、って言うのはどうかな」
「コハク・・・コハク、か。うん、気に入ったな。おれ、それで良いよ。ありがと、梓さん!」
コハクと言う名が気に入ったのかコハクは嬉しそうな顔をして梓にお礼を言っていた
「はん。悪童にしては洒落すぎた名前だな」
「私としては、良いと思います。簡潔な響きで呼びやすい」
「私も良いと思う。あの綺麗な瞳が印象的だったし、似合ってると思うよ」
「へへ、やった。素敵な名前を貰っちゃった上に・・・寝床と食事、可愛い女神様と素敵な聖母様付きの生活にありつけちゃった」
「女神様・・・?」「聖母、様・・・?」
その言葉に疑問を抱きリアと梓が顔を見合わせているとコハクが元気良く、
「よろしくお願いしまーす。みなさん!」
と言っていた
「・・・さてと、暫く様子を見ようかな」
わいわいと騒ぐ中、ダリウスは一人ぽつりと呟いたのだった
続く
あとがき
ほい、やっとコハク登場!
そしてやっっと蠱惑の森チーム勢揃いしました!!! わぁ~い!(≧∀≦)ノ←何度も言うが管理人は蠱惑の森チーム好きですw
コハクが登場したら絶対に聖母様!って言わせたかったんですww
みんな思ってる事だしねw
そして、やっとルードくんとちょっと夢っぽい感じになりましたね!
ルードくんのあの照れたような表情可愛くて好きなんですww
今後も頑張って夢っぽいものを入れていきたいです(・・・ほんとに誰落ちになるか分かってないしな(^_^;))
で、また色々と気になる事が出てきましたが、コハクが登場したので次回は蠱惑の森のちょっとした日常エピソード的なもの書きたいと思いますw
あれは絶対に使いたいネタだったからww
ではまた次回~
2015.06.20
入り口の扉にセットしてあるベルの音がチリンと鳴り客が出て行きまた新しい客が店へ入って来る
「ミルクとカステラ、珈琲とシベリアですね。少々お待ち下さい」
6月26日、今日もリアはミルクホールで働いていた
数日前に新作として出したカステラの人気が好評で客が耐えずに来ていたのだった
新しい客から注文を取り厨房に伝え終えると、
「リアちゃん、そろそろ上がりの時間でしょ。もう上がって良いよ」
「はい。お疲れ様でした、お先に失礼します」
店主からそう言われ皆に声を掛け着替えて裏口から外に出ると
「リアさん」
聞き慣れた声が聞こえ前を見るとルードがいた
「ルードくん。もしかして待たせちゃった?」
「いえ。私も今来た所です」
今朝、朝食を作っている時にルードが夕食に必要なものを買いに行くと言っていてリアも買いたい物があると言いリアの仕事終わりに買いに行く約束をしていたのだった
「今日も忙しそうでしたね」
「うん、あのカステラの評判が良くてお客さんがいっぱい来てるの」
「確かにあのカステラは美味でした。客が殺到するのも納得です」
ルードが此処まで言うのも珍しいなとも思うがリアもこの前梓と食べてその味は分かっているのでそうだねと返事を返した
それから店を数軒回り、最後の一軒に立ち寄り品物を注文した時だった
「姉弟仲良く買い物かい?」
「え?」
「ああ、ごめんよ。もしかして恋人だったかい?」
「え!?///」「っ―― !!」
店のおばさんにそう言われてリアもルードも思わず言葉に詰まってしまうが直ぐにルードが平常心を保ちながら答える
「いえ、私達は、そう言った関係ではなく・・・」
「あら、そうなの? 仲良さげにしていたからあたしはてっきりそうだと思ってたよ」
と陽気に笑うおばさんを余所に二人は未だに照れたような居心地が悪そうな顔をしていた
そしておばさんから品物が入った袋を受け取ろうとしていた時だった
「号外~、号外だよ~~!!」
急にその声が辺りに響き渡り、皆号外を配っている男の元に集まり号外を貰っていた
「号外? 何か遭ったのかしら?」
「すみません、一部頂けますか」
「はいよ」
「ありがとう御座います」
ルードはすかさず号外を配っている男に声を掛けリアも先程貰った袋を片手にルードと共に少し人がいない所で号外を見ると、そこには今まで見た事もないものが記載されていた
「・・・『
見出しに書かれている文字をリアが読むとルードが更に続けて読む
「人間の体が突如、変容し凶暴化した存在・・・の呼称。本日参謀本部と小石川に襲撃・・」
「小石川って、確か今日梓ちゃん達が行ってるはずじゃ・・・」
今朝ダリウス達と話した時に小石川の植物園に行くと言っていた
彼等の心配をしつつルードと共に一通り号外に目を通す
「・・・良く解らない記事ですね」
「・・・うん」
だが、リアは何か引っかかっていた
「・・・リアさん? どうかしましたか?」
「・・・ちょっとこの記事が引っかかって」
何が、と言う訳ではないがリアには何か引っかかるものがあった
リアがそう言って引っかかったものは必ず何かあると言うのはルードも知っているが、この記事だけではそれが何かと言うのは判断出来ない
「リアさんがそう言うのでしたら、少し気に留めておくべきですかね」
言うとルードは新聞を畳み紙袋の中へ入れる
「そろそろ帰りましょう。日が暮れてしまいます」
「うん、そうだね」
お互いその事を気に留めながら人並みを抜けて歩き出した
06.琥珀色の
「ただいま、戻りました」
「ただいま」
「あっ・・・、ルードくん、リアさんお帰りなさい」
ルードとリアが邸に戻った頃には既に辺りは暗くなっていた
邸から灯りが漏れている所を見ると既にダリウス達も帰って来ているのだろうと分かり、中に入ると梓が出迎えてくれた
その先を見るとダリウスと虎もまだ立ったままだった所を見ると梓達も少し前に帰って来たのだろうと思った
「今日は街に行っていたんだろう。何か、変わりは」
「号外が出ていました。意味の分からない記事ですが」
「号外? どら、俺にも見せろ」
ダリウスが新聞を広げると虎もそれを横から覗き見る
「・・・『憑闇、現る』?」
「人間の体が突如、変容し凶暴化した存在・・・の呼称だそうですよ。なんでも本日参謀本部と小石川に襲撃が遭ったとか」
「小石川って今日行ってましたよね? 大丈夫でした?」
「ああ・・・」
「・・・・」
「?」
曖昧な返事を返す虎と少し眉を寄せて悩んだような顔をしている梓を見てリアは疑問を持つ
「憑闇ねえ、たいそうな名前を付けたようだ」
「『帝都の穢れにより謎の病原菌が人体を蝕む。人間でも、怨霊でもない闇の化身が帝都を脅かす』少々胡散臭い話ですが、リアさんは少し引っかかる所があるようです」
「ふうん・・・」
ルードの言葉を聞くとダリウスはリアを見て何か思っている顔をしていた
「・・・腹、減った・・・何か食わせて・・・」
すると、赤い髪を結っている青年がか細い声でそう発したかと思うとバタンと音を立てて倒れてしまった
「は!?」
「えっ、だ、大丈夫!?」
ルードは呆気に取られリアも呆気に取られてしまうが直ぐに我に返りその青年に駆け寄る
「おや、燃料切れかな。ルード、この子の食事の用意を頼めるかな。リアは治療をお願いするよ」
「あ、はい」
ダリウスに言われ青年を見ると腕から出血しているのが解り直ぐに治癒術を使ってあげた
他の傷は部屋に運んでからと言う事になったので虎に運んでもらった
「うぅ・・・」
「大丈夫? 何処か痛む?」
ベッドに横になった途端呻き声を上げた青年に声を掛けると青年は身体を起こした
「いえ、大丈夫です。ベッドがふかふかで~」
「なら良かった。腕の傷はさっき治したけど他に怪我してる所はない?」
「え? あ、本当だ」
言われるまで気付かなかったのか腕を見て驚いていた
「あ、少しそのまま動かないで」
「え?」
怪我をしている箇所を見つけリアは目を瞑って手を当てると温かい光が発せられどんどん傷が癒えていった
「うわ、凄い・・・傷があっという間に消えちゃった・・・。痛みもないや」
「他に痛む所はない?」
「えっと・・・うん、ないや」
きょろきょろと自分の身体を確認し答えると良かったと言う優しい笑顔を向けられる
「・・・・聖母様だ」
「え?」
青年がぽつりと呟いた言葉が聞こえず首を傾げているとある場所に目が止まった
(・・・首の辺りにあるの・・・痣かな? 花の形をしているみたい・・・)
そう思っていると扉をノックする音が聞こえ開けるとルードが夕食を運んで来た
「後は私がやりますので階下へどうぞ」
「うん、じゃあお願いね」
夕食後、彼の様子はルードと梓が見ると言う事になり先に休ませてもらった
翌日、
「うん、このおひたし、うまい。それに、この焼き魚も・・・。塩が利いてて最高に美味い!」
昨日出逢った琥珀色の瞳をした青年、昨日は憔悴していて弱々しかったのだが、一日寝て体力が回復したのかルードとリアが作った朝食があっという間になくなっていく
虎で見慣れていると言えば見慣れているが、昨日の印象があったからなのか思わず唖然としてしまっていた
「慌ててかきこまなくても、貴方の分の食事はなくなりませんよ。貴方・・・ええと、名前はなんて言うんですかね」
「あ、そうだ。私も名前、聞きたかったんだ。教えてくれる?」
「名前? 知らない」
「え?」
「ついでに言えば何処で暮らしてたのか。家の場所も分からない」
彼を見る限り、嘘を付いていると言う事はない
・・・ではつまり、記憶喪失、と言う事だろうか?
「ふうん、新聞の通り、憑闇が病なら病原菌に冒された時記憶を失ったのかな。君のような病の人を他には知っているかい?」
「うーん・・・分からない。気付いたら、おれ、花の中を走っていたんだよね。数人で一緒に走ってたかもしれないけど、気付いたら一人になってて・・・」
「ふうん。だが、多分元は帝都の住民じゃねえの? その着物の柄、少し前に流行ってたもんだ」
虎の言う通り、彼が羽織っている着物は少し前に流行っていた柄だった
「・・・記憶がない、となると少々遠回りになるけど仕方ないか。・・・君、身寄りがないなら俺の元で仕事を手伝うかい?」
「ええっ? ・・・つまり、此処に置いてくれるんですか?」
「ああ、昨日の新聞を見る限り、憑闇は人を襲う危険な病だと警戒されている。うかつに外をふらつけば、君は帝国軍に捕縛されるだろう。それではあまりに酷だからね」
「そう言えば、あんまり気に留めてなかったけど貴方達、何者?」
「鬼の一族だよ。一応、俺が首領を務めている。それから、梓は・・・龍神の神子殿だ。訳あって、うちに居候している。彼女は璃唖。彼女も梓と同じ人間だけれど、俺達鬼の一族とは古い付き合いでね。今は仕事をしながら共に暮らしているよ」
「オニ? ミコ?」
「一から説明しようか」
ダリウスの言葉に青年は頷き、ダリウスやルード、リアにより説明が始まった
「・・・はあ、みんな凄い人達なんだね」
説明を聞き終わると青年は驚いた顔をしてそう呟いた
「色々抱えてるんだ。おれが『憑闇』って奴だとしても全然、薄れるくらい特別な境遇って感じ」
確かに鬼の一族と龍神の神子、鬼と人間の混血に人間だが鬼の一族と関わりがあり少し変わった力を持っている人間・・・
・・・あまり気にした事もなかったが他人から見れば特別な境遇っと言う部類に入るのかもしれない
それからダリウスは青年に此処で匿う交換条件を提示した
それは、早く記憶を取り戻す事、だった
どうやらダリウスは憑闇が生まれた秘密に興味があるようだった
憑闇が出現した日に憑闇が出現した場所で出逢った青年なのだから彼が記憶を取り戻せば何か分かるかもしれないとダリウスは踏んでいるのだろう
そう思っていると梓達が彼の名前の事で話し合っていた
これから此処に住むにしても名前がなければ不便だと言う事で代表で梓が決める事になった
「トパーズ・・・ううん、琥珀色。コハク、って言うのはどうかな」
「コハク・・・コハク、か。うん、気に入ったな。おれ、それで良いよ。ありがと、梓さん!」
コハクと言う名が気に入ったのかコハクは嬉しそうな顔をして梓にお礼を言っていた
「はん。悪童にしては洒落すぎた名前だな」
「私としては、良いと思います。簡潔な響きで呼びやすい」
「私も良いと思う。あの綺麗な瞳が印象的だったし、似合ってると思うよ」
「へへ、やった。素敵な名前を貰っちゃった上に・・・寝床と食事、可愛い女神様と素敵な聖母様付きの生活にありつけちゃった」
「女神様・・・?」「聖母、様・・・?」
その言葉に疑問を抱きリアと梓が顔を見合わせているとコハクが元気良く、
「よろしくお願いしまーす。みなさん!」
と言っていた
「・・・さてと、暫く様子を見ようかな」
わいわいと騒ぐ中、ダリウスは一人ぽつりと呟いたのだった
続く
あとがき
ほい、やっとコハク登場!
そしてやっっと蠱惑の森チーム勢揃いしました!!! わぁ~い!(≧∀≦)ノ←何度も言うが管理人は蠱惑の森チーム好きですw
コハクが登場したら絶対に聖母様!って言わせたかったんですww
みんな思ってる事だしねw
そして、やっとルードくんとちょっと夢っぽい感じになりましたね!
ルードくんのあの照れたような表情可愛くて好きなんですww
今後も頑張って夢っぽいものを入れていきたいです(・・・ほんとに誰落ちになるか分かってないしな(^_^;))
で、また色々と気になる事が出てきましたが、コハクが登場したので次回は蠱惑の森のちょっとした日常エピソード的なもの書きたいと思いますw
あれは絶対に使いたいネタだったからww
ではまた次回~
2015.06.20