ダリウスルート
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『救える力があるなら、私は救いたい! それが私に出来る事だから』
『大切な人と一緒に居られるなら、私はがんばるよ』
『沢山の時空を渡って大切な人達を守って今一緒に戦えているんだもん。これからもみんなと一緒に私は戦い続けるよ』
『私の命が掛かっていても、それでも大切な人や大切な世界を救いたい!』
知らない人達の声が聞こえて、その人物達が見える
これは、夢・・・?
でも、・・・何でだろう・・・凄く、懐かしく思うし、とても温かい
・・・そうか、これが ―――
そこである確信を得る
『そうだね。淋しいのは好きじゃないよ。だからリアに側にいて欲しいし甘えたいんだ』
『・・・その顔を見てるとキスしたくなってしまうな』
そして次に浮かんだのはダリウスの事だった
『俺は、リアの事が好きだよ ――』
っ・・! ダリウスさんっ!!
そうして目の前は眩い光に包まれた
「う・・・此処は・・・」
「リアさん!」
「え・・?」
眩い光に包まれた後、ゆっくりと目を開けていると梓の声が聞こえ視線を移す
「大丈夫か?」
「傷が痛むなら、無理に起きないで」
「そうですね。まだ傷は完全には塞がっていませんから」
「・・・梓ちゃん、有馬さん、コハクくん、片霧さん・・・?」
体を起こして周りを見ると心配そうな顔をして自分を見ている梓達が居た
そして周りを見るとどうやら此処は病院の一室のようで、あの後運ばれて来たんだと思った
「・・・ダリウスさんは?」
「・・・ダリウスさんの行方なら、外を見れば分かるよ」
直ぐにダリウスの事を思い出して言うと、コハクが少しだけ表情を暗くして言い、リアは梓に支えられて窓際に移動して窓を開けて外を見ると遠くで邪気が立ち昇っていた
「・・・あそこって、蠱惑の森? ダリウスさんは、森の中に居るんですか?」
「そう考えるのが妥当でしょうね。あの邪気は禍津迦具土神のものと同じです」
「蠱惑の森には侵入者を迷わせる結界術が掛けられているそうだな。お前の目覚めを待つ間、九段殿と鬼の少年が先に行って結界の解除方法を探っている」
「帝都西部には避難勧告を出し、帝国軍が誘導にあたっています・・・敵が禍津迦具土神の残骸と鬼だと知れた以上、精鋭分隊以外の隊は戦力にはなりませんから」
「・・・なら、私も蠱惑の森に行きます!」
「無理をするな。お前は精神的にも来ているだろう・・・」
確かに有馬の言う通り、怪我だけならまだしもリアはダリウスの事があり一番心を痛めそれが精神的にも来ているのはあの場に居た皆が解っていた
「それでも私は行かなくちゃいけないんです。ダリウスさんは私達が来るのを待っています。私は約束しました、何が遭っても最後まで参加するって」
「「・・・・」」
リアの強い眼差しと意志を聞くと有馬と秋兵は黙ってしまい、それを見て梓は小さく笑って有馬を見る
「有馬さん」
「・・・高塚、お前の言う通りだな」
「え?」
「高塚は楓月が目覚めたら必ず自分も行くと言うと言っていた。お前達の関係も高塚やそこの青年から聞いた」
どうやらリアが眠っている間に有馬達はリアや梓、そしてコハクやルード達鬼の一族の関係を改めて聞いたようだった
リアもいつか聞かれるだろうとは思っていたが、今の話からするとこれ以上の事は深く聞かれる事はないと判断した
そしてその後梓がリアが目を覚ませば自分達と行くと言う事を事前に有馬達に話していたようだった
「怪我をしているお前を連れてはいけないと言いたい所だが・・・」
「怪我なら、直ぐに治しますので・・・」
「っ!」
言うとリアは自分の肩に手を当て目を瞑って治癒の力を使って傷を塞いだ
「・・・傷が、塞がった・・・?」
リアの力を見た事がない有馬と秋兵は驚いていたがリアはそれを気にする事無く、支えてくれていた梓にお礼を言って前を見据える
「有馬さん、片霧さん、お願いします。私も一緒に連れて行って下さい。これ以上ダリウスさんの苦しむ所は見たくないし、大切な人を早く助けたいんです」
「リアさん・・・」
「それに、避難勧告を出していたとしても、蠱惑の森があの状態だと近隣の人達が騒いで鬼の仕業だと押し寄せている可能性もあります・・・」
「!」
その可能性はない訳ではない
鬼に対する言動は梓もこの帝都に来て沢山見て聞いていた
自分も、そしてリアも人間と鬼、どちらの種族など関係なく接している
そう言った事が他の人達にはないから帝都の脅威が鬼、と皆の中で位置づけされていて、その例外はない事も梓達も良く知っていた
「分かった。楓月、お前も来い」
「有馬・・・!? 良いんですね?」
「禍津迦具土神の本体を倒せたのは、鬼の首領の功績による所が大きい。そのダリウスが、今、禍々しい力に囚われている。俺とて救えるなら、救いたい。そして、楓月、その為にはお前が絶対に必要だ。凌雲閣の展望階で、ダリウスにお前の声だけは届いた。それに懸けたい」
「私も絶対にリアさんが必要だと思ってる。ダリウスを救えるのはリアさんだけだから」
「おれも勿論行くよ。おれも、絶対にリアさんは必要だと思ってるし、ダリウスさんを助けたいからさ」
「有馬さん、梓ちゃん、コハクくん・・・ありがとう御座います」
「では、我々も出発ですね。精鋭分隊にも声を掛けましょう」
「はい、皆さん、よろしくお願いします」
そうして梓達と精鋭分隊と共に蠱惑の森を目指した
43.大切な人、大切な棲家
「! あれっ!」
あれから急いで愛宕山を目指して走っていて、先頭を走っていたコハクが何かに気付く
「松明を掲げてる人が大勢!?」
「どうやらリアくんの予想は当たっていたようですね」
「精鋭分隊だ! お前達、何をしている!」
リアとコハクの案内で集まっている人達の前に出てくると有馬はそう言い、その声に入口に居たルードと九段も有馬達を見た
「此処は鬼の棲家なんだろ? 隠したって分かってるんだぞ!」
「鬼に好き放題させといて、何故指を加えて見てる! 鬼が怖くて手も出せないのか?」
「そうだ、そうだ!! 彼奴等の棲家など焼き尽くせ! 帝国軍に出来ないなら、俺達がやる!」
「――・・・!」
その言葉に自分達の後ろにいるルード、そしてリアとコハクと梓は驚いて目を瞠る
「ちょっと、そこにいる子、鬼の子供なんじゃないの!? 森に出入りしてる所何度か見たわ!」
人並みの中にいたおばさんはリア達の後ろにいるルードを見てそう言うと一気に視線が集まり他の者達も次々に口を開く
「鬼共が・・・帝都をめちゃくちゃにしやがって!」
「鬼のガキめっ! これでも食らえ――!!」
「皆さん・・・! 待って下さい!」
一人の男が足元に転がっていた石を拾いルードに向かって投げるのが見え、秋兵が止めに入るもその石はルードの方へ飛んで行く
「・・・っ!」
そしてルードはその石を避ける事無くそのまま受け止めた
「ルードくん・・・! どうして、避けないの? あんな石、ルードくんなら軽く・・・」
「・・・これで満足ですか?」
「・・・なにぃ?」
「・・・何も知らないくせに。何も犠牲にしてないくせに―― 鬼を悪者にして石を投げれば、満足かと聞いたんです」
「ルードハーネ・・・」
石を避けなかったルードを見てコハクが慌てて駆け寄りそう言うもルードは何かを堪えながら人々を見て言う
「・・・っ、ダリウス様は・・・革命の為、やむを得ず争いを仕掛けた事はあります。けれど、根も葉もない噂を囁かれても民を敵視した事はありません。いつも、悪いのは頭だけだからと悪の大本を取り除く事だけに心を砕いて―― 貴方方の弱さや、無力を責めた事なんて一度だってないんです。なのに、貴方方はダリウス様の覚悟も知らず・・・ただ鬼だからと言う理由でダリウス様を責めるのですね」
「なんだと・・・」
「・・・貴方方と争う気はありません。だから、つぶても受けました。ただ、私は―― 悔しいです。ダリウス様が理解されない事が」
「・・・・そうだね。確かにダリウスさんは・・・悪い事もしたのかもしれない。でも、憑闇のおれを受け入れてくれた。帝都で病気扱いされていたおれをさ。だから――おれは、ダリウスさんを絶対、嫌いになれないよ」
「・・・・」
ルードは抑えていた悔しさを露わにして言い、コハクも思っていた事を言うとその言葉を聞いていた人々は口を継ぐんだ
「・・・ダリウスさんは、とても優しい人なんですよ。邸のみんなの事や一族の事を大切に思ってくれていて花も綺麗に育てる人なんです」
ずっと黙っていたリアがゆっくりと語りかける
「いつも温かい場所を与えてくれて、その優しさに見守られて、まるで父親のように私達の事を見てくれていたんです。そして、自分の罪と向き合い帝都の未来の事を誰よりも真剣に考えてくれてる人なんですよ。その人が今、帝都の闇を一人で背負って戦っているんです。鬼だとか人間だとか、そんな事に拘ってちゃいつまで経っても何も変わらないんです! だから、そんな物騒なものは消して此処から立ち去って下さい・・・私達の、・・私の大切な場所や大切な人を、奪って傷つけるような事はしないで下さい・・・!」
「リアさん・・・」
「「「・・・・」」」
涙を流しながら必死に訴えるリアを見て梓だけでなく、有馬も秋兵も九段も、そして松明を掲げていた者達は動揺していた
「・・・うん。ダリウスは本当に温かい人だよね」
「梓くん・・・?」
「私が初めてこの世界に来て右も左も解らなくてどうしたら良いのか解らなかった時、ダリウスは優しく私を迎えてくれて色んな事も教えてくれた。勿論、怖い思いもしたけど、ダリウスはちゃんと一人一人の事を見てくれたし、私の事も黒龍の神子って言うだけじゃなくてちゃんと私個人としても見てくれていたって今なら解るよ。それに、大切な人を守れる人だって事も知ってる」
「神子様・・・」
「梓ちゃん・・・」
「「「・・・・」」」
梓も今までの事を思い出してそう言い、最後はリアに向けて言った言葉でありその笑顔はとても優しいもので、それを見ていた人々はまた言葉に詰まって罰が悪いと言うような表情をしていた
だが、
「だ、騙されるな! あんた達も鬼の変な術で手下にされちまってるんだろ!」
「えっ?」
「そ、そうだ。そんな事で俺達を誤魔化せると思ってるのか!」
それでも納得出来ないのか数人の男達が騒ぎ初め他の人々もそれに乗じ始める
「っ! 待って下さい! 私達が言ってる事は」
「梓ちゃん、もう良いよ・・」
「え・・?」
言うとリアは顔を俯けたままゆっくりと歩き出す
「リア・・さん・・・?」
その様子を見て普段のリアと違うと梓は思っていた
「・・・もう一度、言います。今すぐ、此処から立ち去って下さい」
「なに・・?!」
言うとリアの体から光が溢れているのが見えた
「私の大切な棲家 は壊させない、大切な人を傷つけさせない、絶対に! だから、退いて下さい!!」
「!?」
そうリアが叫んだ瞬間強い光が放たれ、その光は人々を包み辺りに風が巻き起こる
「! これは、まさか!」
「浄化の力・・・!?」
「何故、リアさんに・・・!?」
「・・っ、まぶしっ・・!」
その光は徐々に強まっていき皆目を瞑り、松明の火は次々に消えていった
「・・・・修まった・・のか・・?」
もう風の音も光の眩しさも感じないと思い皆目を開けると佇んでいるリアに目が行く
「・・・リア、さん・・・?」
「人の憎しみ、それがこの帝都の乱れの一つ。今この場にその力があれば禍津迦具土神はまた力を増してダリウスさんはもっと危なくなってしまう。皆さんがそこまで鬼が悪だと決めつけるのであれば、その真実をちゃんと見極めるべきです。私達は戦う力がある。けれど皆さんにはない。だから、皆さんはこれから私達が戦おうとしているこの帝都の闇を見届けて欲しい。・・・それが、貴方達に出来る事じゃないんですか」
「・・・・」
真剣な眼差しで言うリアを見て皆心を打たれていた
「楓月の言う通りだな」
「! その声!」
「・・・ふうん、面倒な事になってやがるな」
「村雨さん、虎!」
「捕縛無用に頼むよ」
「ハイカラヤのマスター? それに結実なき花の面々!?」
聞き慣れた声が聞こえたと思ったら村雨と虎、そして帝国軍に捕縛されていたマスターや結実なき花の面々が同じくリア達が通ってきた道を通ってリア達の前にやって来た
「貴方方は投獄されていたはずでは・・っ、まさか」
「ハッ、凌雲閣の襲撃前からダリウスには脱獄を助けるよう言われてたからな。昨日、今日ごたごたしてた所為で、牢獄の警備は隙だらけだったぜ」
「蠱惑の森の邪気を見て民衆の不安の矛先が、そっちに向かいやしないかと気になってな。結実なき花を集めて駆け付けて来たんだよ。が、大半は終わっちまってるか」
「みたいだな」
黙りこくっている民衆を見て村雨と虎はそう言うが、リアは何かを確信していた
「いえ、まだです。彼等は納得してくれるかもしれません。でも、これ以上は私達が何を言っても無駄です。それに、此処に集まっていない人達も同じ事を思っていますから」
「なら、俺達は此処と他の場所を当たるか」
「待て、村雨。ぬしはこちら側のようだ」
「え?」
そう言って踵を返そうとしている村雨を見て九段が何かを思っている顔をしてそう言う
「やっぱり、この石ころは・・・」
「石ころ・・・あ、」
村雨を見ると八葉の宝玉が埋まっていた
「じゃあ最後の一人って村雨さん!?」
「みたいだな」
それを冷静に見ていたリアはマスターや結実なき花の面々を見る
「マスター、皆さん、お願いしても良いですか」
「リアちゃんの頼みなら喜んで引き受けるわ」
「此処は俺達に任せて早く大切な人を助けに行きな!」
「はいっ、有り難う御座います!」
言うとリアは一礼して踵を返して森の中へ走って入って行った
「リアさん!」
「私達も行こう!」
「うん!」
ルードはリアを見てその後を追い、梓もそれを見てコハクと共に後に続いた
「精鋭分隊も此処に残って下さい」
「はいっ! 承知しました」
「では、我々は楓月を追うぞ!」
有馬の言葉に頷き秋兵、虎、九段、そして村雨も森の中へ入って行った
続く
あとがき
おう、予定ではもっと先まで書いてたんだが思ったより長く書けたww
けどやっぱり此処は何度見ても切ないし泣ける・・・(ノД`)
ルードくんもコハクも梓ちゃんも、そしてリアちゃんもそれぞれが思っていた事を言っているけどそれでも伝わらないのが切ない・・・
でもリアちゃんの力で収まりはしたものの・・あれは・・・?
冒頭も気になる所があったけれども、マスターや結実なき花の面々や精鋭分隊のお陰で何とか森に入る事が出来ました
気になる所も色々とありますが、それは次回!
2015.08.16
『大切な人と一緒に居られるなら、私はがんばるよ』
『沢山の時空を渡って大切な人達を守って今一緒に戦えているんだもん。これからもみんなと一緒に私は戦い続けるよ』
『私の命が掛かっていても、それでも大切な人や大切な世界を救いたい!』
知らない人達の声が聞こえて、その人物達が見える
これは、夢・・・?
でも、・・・何でだろう・・・凄く、懐かしく思うし、とても温かい
・・・そうか、これが ―――
そこである確信を得る
『そうだね。淋しいのは好きじゃないよ。だからリアに側にいて欲しいし甘えたいんだ』
『・・・その顔を見てるとキスしたくなってしまうな』
そして次に浮かんだのはダリウスの事だった
『俺は、リアの事が好きだよ ――』
っ・・! ダリウスさんっ!!
そうして目の前は眩い光に包まれた
「う・・・此処は・・・」
「リアさん!」
「え・・?」
眩い光に包まれた後、ゆっくりと目を開けていると梓の声が聞こえ視線を移す
「大丈夫か?」
「傷が痛むなら、無理に起きないで」
「そうですね。まだ傷は完全には塞がっていませんから」
「・・・梓ちゃん、有馬さん、コハクくん、片霧さん・・・?」
体を起こして周りを見ると心配そうな顔をして自分を見ている梓達が居た
そして周りを見るとどうやら此処は病院の一室のようで、あの後運ばれて来たんだと思った
「・・・ダリウスさんは?」
「・・・ダリウスさんの行方なら、外を見れば分かるよ」
直ぐにダリウスの事を思い出して言うと、コハクが少しだけ表情を暗くして言い、リアは梓に支えられて窓際に移動して窓を開けて外を見ると遠くで邪気が立ち昇っていた
「・・・あそこって、蠱惑の森? ダリウスさんは、森の中に居るんですか?」
「そう考えるのが妥当でしょうね。あの邪気は禍津迦具土神のものと同じです」
「蠱惑の森には侵入者を迷わせる結界術が掛けられているそうだな。お前の目覚めを待つ間、九段殿と鬼の少年が先に行って結界の解除方法を探っている」
「帝都西部には避難勧告を出し、帝国軍が誘導にあたっています・・・敵が禍津迦具土神の残骸と鬼だと知れた以上、精鋭分隊以外の隊は戦力にはなりませんから」
「・・・なら、私も蠱惑の森に行きます!」
「無理をするな。お前は精神的にも来ているだろう・・・」
確かに有馬の言う通り、怪我だけならまだしもリアはダリウスの事があり一番心を痛めそれが精神的にも来ているのはあの場に居た皆が解っていた
「それでも私は行かなくちゃいけないんです。ダリウスさんは私達が来るのを待っています。私は約束しました、何が遭っても最後まで参加するって」
「「・・・・」」
リアの強い眼差しと意志を聞くと有馬と秋兵は黙ってしまい、それを見て梓は小さく笑って有馬を見る
「有馬さん」
「・・・高塚、お前の言う通りだな」
「え?」
「高塚は楓月が目覚めたら必ず自分も行くと言うと言っていた。お前達の関係も高塚やそこの青年から聞いた」
どうやらリアが眠っている間に有馬達はリアや梓、そしてコハクやルード達鬼の一族の関係を改めて聞いたようだった
リアもいつか聞かれるだろうとは思っていたが、今の話からするとこれ以上の事は深く聞かれる事はないと判断した
そしてその後梓がリアが目を覚ませば自分達と行くと言う事を事前に有馬達に話していたようだった
「怪我をしているお前を連れてはいけないと言いたい所だが・・・」
「怪我なら、直ぐに治しますので・・・」
「っ!」
言うとリアは自分の肩に手を当て目を瞑って治癒の力を使って傷を塞いだ
「・・・傷が、塞がった・・・?」
リアの力を見た事がない有馬と秋兵は驚いていたがリアはそれを気にする事無く、支えてくれていた梓にお礼を言って前を見据える
「有馬さん、片霧さん、お願いします。私も一緒に連れて行って下さい。これ以上ダリウスさんの苦しむ所は見たくないし、大切な人を早く助けたいんです」
「リアさん・・・」
「それに、避難勧告を出していたとしても、蠱惑の森があの状態だと近隣の人達が騒いで鬼の仕業だと押し寄せている可能性もあります・・・」
「!」
その可能性はない訳ではない
鬼に対する言動は梓もこの帝都に来て沢山見て聞いていた
自分も、そしてリアも人間と鬼、どちらの種族など関係なく接している
そう言った事が他の人達にはないから帝都の脅威が鬼、と皆の中で位置づけされていて、その例外はない事も梓達も良く知っていた
「分かった。楓月、お前も来い」
「有馬・・・!? 良いんですね?」
「禍津迦具土神の本体を倒せたのは、鬼の首領の功績による所が大きい。そのダリウスが、今、禍々しい力に囚われている。俺とて救えるなら、救いたい。そして、楓月、その為にはお前が絶対に必要だ。凌雲閣の展望階で、ダリウスにお前の声だけは届いた。それに懸けたい」
「私も絶対にリアさんが必要だと思ってる。ダリウスを救えるのはリアさんだけだから」
「おれも勿論行くよ。おれも、絶対にリアさんは必要だと思ってるし、ダリウスさんを助けたいからさ」
「有馬さん、梓ちゃん、コハクくん・・・ありがとう御座います」
「では、我々も出発ですね。精鋭分隊にも声を掛けましょう」
「はい、皆さん、よろしくお願いします」
そうして梓達と精鋭分隊と共に蠱惑の森を目指した
43.大切な人、大切な
「! あれっ!」
あれから急いで愛宕山を目指して走っていて、先頭を走っていたコハクが何かに気付く
「松明を掲げてる人が大勢!?」
「どうやらリアくんの予想は当たっていたようですね」
「精鋭分隊だ! お前達、何をしている!」
リアとコハクの案内で集まっている人達の前に出てくると有馬はそう言い、その声に入口に居たルードと九段も有馬達を見た
「此処は鬼の棲家なんだろ? 隠したって分かってるんだぞ!」
「鬼に好き放題させといて、何故指を加えて見てる! 鬼が怖くて手も出せないのか?」
「そうだ、そうだ!! 彼奴等の棲家など焼き尽くせ! 帝国軍に出来ないなら、俺達がやる!」
「――・・・!」
その言葉に自分達の後ろにいるルード、そしてリアとコハクと梓は驚いて目を瞠る
「ちょっと、そこにいる子、鬼の子供なんじゃないの!? 森に出入りしてる所何度か見たわ!」
人並みの中にいたおばさんはリア達の後ろにいるルードを見てそう言うと一気に視線が集まり他の者達も次々に口を開く
「鬼共が・・・帝都をめちゃくちゃにしやがって!」
「鬼のガキめっ! これでも食らえ――!!」
「皆さん・・・! 待って下さい!」
一人の男が足元に転がっていた石を拾いルードに向かって投げるのが見え、秋兵が止めに入るもその石はルードの方へ飛んで行く
「・・・っ!」
そしてルードはその石を避ける事無くそのまま受け止めた
「ルードくん・・・! どうして、避けないの? あんな石、ルードくんなら軽く・・・」
「・・・これで満足ですか?」
「・・・なにぃ?」
「・・・何も知らないくせに。何も犠牲にしてないくせに―― 鬼を悪者にして石を投げれば、満足かと聞いたんです」
「ルードハーネ・・・」
石を避けなかったルードを見てコハクが慌てて駆け寄りそう言うもルードは何かを堪えながら人々を見て言う
「・・・っ、ダリウス様は・・・革命の為、やむを得ず争いを仕掛けた事はあります。けれど、根も葉もない噂を囁かれても民を敵視した事はありません。いつも、悪いのは頭だけだからと悪の大本を取り除く事だけに心を砕いて―― 貴方方の弱さや、無力を責めた事なんて一度だってないんです。なのに、貴方方はダリウス様の覚悟も知らず・・・ただ鬼だからと言う理由でダリウス様を責めるのですね」
「なんだと・・・」
「・・・貴方方と争う気はありません。だから、つぶても受けました。ただ、私は―― 悔しいです。ダリウス様が理解されない事が」
「・・・・そうだね。確かにダリウスさんは・・・悪い事もしたのかもしれない。でも、憑闇のおれを受け入れてくれた。帝都で病気扱いされていたおれをさ。だから――おれは、ダリウスさんを絶対、嫌いになれないよ」
「・・・・」
ルードは抑えていた悔しさを露わにして言い、コハクも思っていた事を言うとその言葉を聞いていた人々は口を継ぐんだ
「・・・ダリウスさんは、とても優しい人なんですよ。邸のみんなの事や一族の事を大切に思ってくれていて花も綺麗に育てる人なんです」
ずっと黙っていたリアがゆっくりと語りかける
「いつも温かい場所を与えてくれて、その優しさに見守られて、まるで父親のように私達の事を見てくれていたんです。そして、自分の罪と向き合い帝都の未来の事を誰よりも真剣に考えてくれてる人なんですよ。その人が今、帝都の闇を一人で背負って戦っているんです。鬼だとか人間だとか、そんな事に拘ってちゃいつまで経っても何も変わらないんです! だから、そんな物騒なものは消して此処から立ち去って下さい・・・私達の、・・私の大切な場所や大切な人を、奪って傷つけるような事はしないで下さい・・・!」
「リアさん・・・」
「「「・・・・」」」
涙を流しながら必死に訴えるリアを見て梓だけでなく、有馬も秋兵も九段も、そして松明を掲げていた者達は動揺していた
「・・・うん。ダリウスは本当に温かい人だよね」
「梓くん・・・?」
「私が初めてこの世界に来て右も左も解らなくてどうしたら良いのか解らなかった時、ダリウスは優しく私を迎えてくれて色んな事も教えてくれた。勿論、怖い思いもしたけど、ダリウスはちゃんと一人一人の事を見てくれたし、私の事も黒龍の神子って言うだけじゃなくてちゃんと私個人としても見てくれていたって今なら解るよ。それに、大切な人を守れる人だって事も知ってる」
「神子様・・・」
「梓ちゃん・・・」
「「「・・・・」」」
梓も今までの事を思い出してそう言い、最後はリアに向けて言った言葉でありその笑顔はとても優しいもので、それを見ていた人々はまた言葉に詰まって罰が悪いと言うような表情をしていた
だが、
「だ、騙されるな! あんた達も鬼の変な術で手下にされちまってるんだろ!」
「えっ?」
「そ、そうだ。そんな事で俺達を誤魔化せると思ってるのか!」
それでも納得出来ないのか数人の男達が騒ぎ初め他の人々もそれに乗じ始める
「っ! 待って下さい! 私達が言ってる事は」
「梓ちゃん、もう良いよ・・」
「え・・?」
言うとリアは顔を俯けたままゆっくりと歩き出す
「リア・・さん・・・?」
その様子を見て普段のリアと違うと梓は思っていた
「・・・もう一度、言います。今すぐ、此処から立ち去って下さい」
「なに・・?!」
言うとリアの体から光が溢れているのが見えた
「私の大切な
「!?」
そうリアが叫んだ瞬間強い光が放たれ、その光は人々を包み辺りに風が巻き起こる
「! これは、まさか!」
「浄化の力・・・!?」
「何故、リアさんに・・・!?」
「・・っ、まぶしっ・・!」
その光は徐々に強まっていき皆目を瞑り、松明の火は次々に消えていった
「・・・・修まった・・のか・・?」
もう風の音も光の眩しさも感じないと思い皆目を開けると佇んでいるリアに目が行く
「・・・リア、さん・・・?」
「人の憎しみ、それがこの帝都の乱れの一つ。今この場にその力があれば禍津迦具土神はまた力を増してダリウスさんはもっと危なくなってしまう。皆さんがそこまで鬼が悪だと決めつけるのであれば、その真実をちゃんと見極めるべきです。私達は戦う力がある。けれど皆さんにはない。だから、皆さんはこれから私達が戦おうとしているこの帝都の闇を見届けて欲しい。・・・それが、貴方達に出来る事じゃないんですか」
「・・・・」
真剣な眼差しで言うリアを見て皆心を打たれていた
「楓月の言う通りだな」
「! その声!」
「・・・ふうん、面倒な事になってやがるな」
「村雨さん、虎!」
「捕縛無用に頼むよ」
「ハイカラヤのマスター? それに結実なき花の面々!?」
聞き慣れた声が聞こえたと思ったら村雨と虎、そして帝国軍に捕縛されていたマスターや結実なき花の面々が同じくリア達が通ってきた道を通ってリア達の前にやって来た
「貴方方は投獄されていたはずでは・・っ、まさか」
「ハッ、凌雲閣の襲撃前からダリウスには脱獄を助けるよう言われてたからな。昨日、今日ごたごたしてた所為で、牢獄の警備は隙だらけだったぜ」
「蠱惑の森の邪気を見て民衆の不安の矛先が、そっちに向かいやしないかと気になってな。結実なき花を集めて駆け付けて来たんだよ。が、大半は終わっちまってるか」
「みたいだな」
黙りこくっている民衆を見て村雨と虎はそう言うが、リアは何かを確信していた
「いえ、まだです。彼等は納得してくれるかもしれません。でも、これ以上は私達が何を言っても無駄です。それに、此処に集まっていない人達も同じ事を思っていますから」
「なら、俺達は此処と他の場所を当たるか」
「待て、村雨。ぬしはこちら側のようだ」
「え?」
そう言って踵を返そうとしている村雨を見て九段が何かを思っている顔をしてそう言う
「やっぱり、この石ころは・・・」
「石ころ・・・あ、」
村雨を見ると八葉の宝玉が埋まっていた
「じゃあ最後の一人って村雨さん!?」
「みたいだな」
それを冷静に見ていたリアはマスターや結実なき花の面々を見る
「マスター、皆さん、お願いしても良いですか」
「リアちゃんの頼みなら喜んで引き受けるわ」
「此処は俺達に任せて早く大切な人を助けに行きな!」
「はいっ、有り難う御座います!」
言うとリアは一礼して踵を返して森の中へ走って入って行った
「リアさん!」
「私達も行こう!」
「うん!」
ルードはリアを見てその後を追い、梓もそれを見てコハクと共に後に続いた
「精鋭分隊も此処に残って下さい」
「はいっ! 承知しました」
「では、我々は楓月を追うぞ!」
有馬の言葉に頷き秋兵、虎、九段、そして村雨も森の中へ入って行った
続く
あとがき
おう、予定ではもっと先まで書いてたんだが思ったより長く書けたww
けどやっぱり此処は何度見ても切ないし泣ける・・・(ノД`)
ルードくんもコハクも梓ちゃんも、そしてリアちゃんもそれぞれが思っていた事を言っているけどそれでも伝わらないのが切ない・・・
でもリアちゃんの力で収まりはしたものの・・あれは・・・?
冒頭も気になる所があったけれども、マスターや結実なき花の面々や精鋭分隊のお陰で何とか森に入る事が出来ました
気になる所も色々とありますが、それは次回!
2015.08.16