ルードルート
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革命決行当日の夜、
「ではみんな、準備は良いかな」
「準備は出来ております」
「ああ、いつでも良いぜ」
「うん・・・おれも、大丈夫です」
「私も大丈夫です」
ダリウスは居間に集まっているルード、虎、コハク、リアを見て凌雲閣へ向かう前に最終確認を取っていた
今日秋の朔日、つまり9月1日が、ダリウスの革命への計画を進める日であり、梓やリア達も帝都の闇の正体を目の当たりにする日でもあった
「既に村雨達、結実なき花も手はず通り動いています」
「なら、俺達もそろそろ向かおうか」
「はい」
ダリウスの言葉に頷き皆、ダリウスの側へ行く
そして、空間移動で凌雲閣側に着いた
先程まで邸の中に居たから気付かなかったが、頬に触れる夜の風は心なしか涼しく感じられていた
凌雲閣の前を見ると、厳重な警備がされていて複数の軍人が入り口を守っていた
だが、リア達は凌雲閣の正面に向かわず近くの茂みの方へ歩いて行く
そして一角にある葉っぱを退かすとそこには扉の取っ手があった
此処から地下へ入れるようだった
事前に調査をしていたのでこれで無事に地下へ降りる事が出来る
「・・・通路は暗そうだね。ルード、君はリアをエスコートして来なさい」
「ダリウス様?」
「大事な姫をエスコートするのは当然だろう?」
「っ///」
ダリウスは地下へ続く道を見てそう判断した後ルードを見てそう言い、ダリウスの言葉を聞くとルードは少しだけ言葉に詰まった
「え? どう言う事?」
「ふふっ、ではコハク、虎、俺達は先に行こうか」
「へいへい・・・おら、小僧行くぞ」
「え、あ、政虎さん、待ってよ」
ダリウスは微笑ましそうに笑ってそう言い先頭を歩きその後に虎とダリウスの言葉の意味を分かっていないコハクが続いた
「・・・何だか、気を遣って貰っちゃった・・?」
「・・・そのようですね・・・」
「「・・・・」」
先程まで緊張感があったが、急に二人きりにされ何だか気まずくなってしまう
「・・・リアさん」
ルードは軽く咳払いしてリアの方を見る
「先日も言いましたが、この先は危険が待っていると思います。ですが、必ず私が貴女を守ります。だから、安心して下さい」
「ルードくん・・・。うん、ルードくんが一緒だから大丈夫だよ」
言うとお互い微笑み合い、また気を引き締め直した
「では我々も行きましょう。足元が心配です。リアさん、手を」
「うん、ありがとう」
リアの手を取るとルードは先に階段を降りその後にリアも続き、二人並んで歩き始めた
長い廊下を歩く中、リア達の足音が辺りに響き渡る
それは自分達より先に入って行ったダリウス達の足音も少し遠くではあるが前方から聞こえていた
そして今歩いている廊下にはいくつもの隠し部屋がある
だがリア達が目指している場所はもっと先だ
それでも徐々に空気が淀んでいっているのが解り、気を引き締め直す
そして最深部と言ってもいい場所に着き、ダリウスが扉を開ける音が聞こえリアとルードも少し遅れて部屋に入り中を見た
部屋の中は無機質だったが、強い瘴気を感じた
「・・・・」
「っ・・・!」
そして部屋の奥を見るとガラスの中に沢山の禍々しい花弁があり培養液が入っていた
いや、それだけではなかった
その中には、人間も入っていた
「っ・・・」
その光景にリアだけでなくダリウスもルードも虎もコハクも目を瞠って息を詰めていた
「想像していたより酷い光景だね・・・」
「はい・・・」
「リアさん、大丈夫ですか・・」
「うん・・・」
ルードが心配してそう言い先程より少し強くリアの手を握り、リアもそれに答えるようにルードの手を握り返す
そしてコハクを見るとコハク自身もこの場に居た事があり、あの残酷な出来事が遭った場所だったからか、辛そうな表情を浮かべていた
「では、ダリウス様、私は梓さんを迎えに行って参ります」
「リア、君も一緒に行きなさい」
「え?」
「その方が気持ちも落ち着くだろうし、梓も安心出来ると思うよ」
この光景を見て顔色が少し悪くなっている事に気付いてそう言ってくれたのか、それともルードと共に居た方がリアも安心出来ると思ったのか、そのどちらもあるかもしれないがダリウスはそう言ってくれリアは頷いてルードと共に来た道を戻り始めた
「・・・ダリウスさん、凄く気を遣ってくれてるね」
「ええ。ですが、ダリウス様の判断は正しいですよ。リアさんも衝撃を受けていますしね」
「うん・・・」
手を繋いで廊下を歩きながらリアとルードはそう話していた
確かにあの地下の光景はコハクから聞いて知ってはいたが、いざそれを目の当たりにすると衝撃を受けてしまう
「梓ちゃんも、この事実を知ったら驚いちゃうだろうね」
否、梓だけではない、この真実は他の人が知っても衝撃を受けてしまう
コハクが記憶を取り戻し話してくれた内容を聞いただけでも残酷過ぎる出来事だと思っていたが、その原因であり帝都の闇の正体の一つを目の当たりにして言葉を無くしてしまう
「ですが、梓さんも帝都の闇の正体を知りたいと思っています。我々の計画に彼女の力が必要なのも事実です」
「うん・・・先に事実を知ってる分、私達が梓ちゃんを支えてあげないとだよね」
そう話しているうちに地上へ続く階段が見えた
ルードが先に上がり地上の様子確認する
丁度梓も辿り着いたばかりのようで凌雲閣の前にいる警備の人達の様子を伺っていた
そしてルードはそのまま駆け出し、警備兵達を気絶させた
「梓さん、早くこちらへ」
「ルードくん、それにリアさんも」
「久し振りね、梓ちゃん・・・って挨拶してる場合じゃないよね」
梓はリアとルードがいる事に驚いていたがリアの苦笑する言葉を聞き梓も小さく笑った
「警備の抜け穴は事前に調査済みです。ほら、地下に進む通路も」
リアが一歩避けるとそこには地下に続く階段があった
「此処から中に入れるんだね」
「ええ。他の警備の人達が来る前に行きましょう」
「地下に行く前に一つ質問があります。凌雲閣の結界が破られた事を知っている者はいますか?」
ルードの質問にリアも立ち止まり梓を見る
「結界を張った九段さんは勿論知っているよ。後、普段一緒に行動しているし・・・有馬さんや秋兵さんも気付いてる。だけど、目を瞑ってくれている。私を信じてくれているんだと思う」
「・・・そうですか。では、貴女のお味方からの妨害はないと思って良いでしょう」
「有馬さんや片霧さん、九段さんとは戦いたくないから聞いて安心したな」
リアも有馬達とも顔見知りであり、争いたくないと言う事はルードも梓も知っていたのでリアの安心した顔を見て二人も安堵していた
「ただ、油断は禁物です。急いだ方が良さそうですね」
「そうね」
「地下には何が隠されているの?」
「私がご説明するよりも実際に見た方が早いでしょう。ダリウス様もそうお考えです」
「・・・・」
「梓さん、地下にあるものを見ても動揺されませんよう。決して五月蠅く騒ぎ立てる事のなきよう、お願いします」
「・・・うん」
「・・・行こうか」
リアの表情が一瞬だが硬くなったのを梓も見ていたがこれ以上は聞くより実際に見た方が良いのだろうと思いリアとルードの後に続いた
そして、
40.帝都の闇
「梓、無事に辿り着けたようだね」
「ルードくんとリアさんが誘導してくれたから」
あれから梓を誘導しダリウス達がいるあの場所へと向かい梓が部屋に入ったのを確認すると扉を閉めてリアとルードはダリウスの側に移動した
「君が、見事四神の協力を得てくれたお陰で此処まで容易に入れたよ」
「うん・・・驚いたよ。凌雲閣の中にこんな大きな隠し部屋があったなんて。ところで、この瘴気って一体何処から・・・?」
「奥をご覧。あれが、我々が探してきた帝都を蝕む諸悪の根源だ」
「諸悪の根源・・・?」
言うとダリウス達はそこから少し離れ、梓に奥にあるものを見やすくしてあげた
「あれ、何・・・?」
「「っ・・・」」
梓は奥にあるものをじっと見る
そして、ある事に気が付く
「・・・! ・・・もしかして、これ・・・人間が、入れられてるの?」
梓もリア達同様、この光景を見て驚きを隠せないでいた
「この機械は何?」
「アダバナの溶液で満たされているんだ。人を狂わせる魔性の花・・・」
「コハク・・・」
「思い出したんだよ、その機械の中におれが押し込められてた事」
「・・・!」
「その機械は、人の体を兵器として強化する為のものだ。アダバナの蜜が体に入ると闘争能力を掻き立てられ人にあらざる力を得る。記憶や心を失うのと引き換えに」
「そんな・・・それじゃあ「強兵計画」って・・・」
「八百万の神の力なんて嘘だったって事よ」
「ま、待って。コハクがこの中に入っていたって事はまさか、憑闇の正体も・・・」
「憑闇こそ強兵計画の失敗作・・・と考えて良いでしょうね。憑闇を生んだ原因を散々鬼になすりつけておいて、胸の悪くなる真実ですが」
「本当にな。なーにが「強兵計画」だ。神々の力を借りる所か人の体を好きにいじってたなんざ正気の沙汰じゃねえよ」
「・・・・」
リアもこの事はコハクが記憶を取り戻した時に聞いていたが、梓同様、この光景を見て、夜会での友部の事や花火大会での新兵も此処で無理に力を増幅させられ、憑闇になってしまったのだと思い驚きや悲しみ、そして怒りを隠せないでいた
「・・・今まで見た、憑闇はみんな此処で無理に力を増幅させられて・・・耐えきれずああなってしまったって事? 帝国軍は、兵士達が憑闇になる危険を分かった上で強兵計画を進めていたの・・・?」
「・・・っ」
「信じ・・・られない」
梓も帝都の・・否、帝国軍のやっていた真実を知り、衝撃を受けていた
自分が所属している軍が、こんなにもおぞましく残酷な事をしていたのだから・・・
「すべては帝国軍参謀本部総長・・・片霧清四郎が指揮したものだろう。あの男なら、やりかねない」
「! その口振り・・・ダリウスは総長さんを知っているの?」
「ああ、過去、秘密裏に俺は帝国軍に協力していたから」
「え・・・」
「我が一族は優れた能力を持つ反面、少々弱い立場にあってね。姿形が異質な所為か、古来より、迫害や偏見に晒されてきた。だが、時が流れるにつれ、鬼の純血種も減り、それに比例して自由も許されるようになった。そうなると今度は、純血種を残す為に鬼の血を引く者達が寄り集まろうとする動きが再熱し・・・それを知った帝国軍は我等を利用しようとした」
「「・・・・・」」
それを聞き、ルードもリアもその当時の事を思い返していて、ダリウスはそのまま言葉を続ける
「―― 3年程前、帝国軍から取引を持ちかけられたんだ。一族の隠れ里の場所は知っている。これまで通りの平穏な暮らしを守りたければ、力を貸せと。幸いな事にリア達の一族が住んでいる隠れ里の事は帝国軍に知られていなかったよ」
梓が思っている事を読み取ったのかダリウスはそう言うと梓は少し安堵した表情を見せるも、その続きが気になっている顔をしていた
「鬼の首領として俺が携わった仕事は他愛のないものだったよ。禁じられた品種・アダバナを輸送し、栽培の準備をしたり・・・各国の関諜役を担ったり・・・だけど、それは片霧が目指す愚かな富国強兵の理想へと繋がっていたんだ。おぞましい計画の片棒を担がされていると気付いた時には遅かった。帝国軍は怨霊の存在を鬼の所為だと騙っていた。本当はこの地下で繰り広げられていた・・・憎むべき強兵策の所為なのに」
「嘘・・・そんなのって・・・」
「信じられない? でも、これが今の腐敗しきった帝都の姿だよ」
「・・・・」
そこまで聞き梓は言葉を無くしてしまった
「言葉が出ないだろうね。まったく、愚かだろう? ・・・戦争を望み、兵士を思うがまま操ろうとする今の片霧は強欲に過ぎるんだ。民衆は戦争など望んでいない。静かで、平穏な生活・・・それだけで良いはずなのに」
「ダリウス、貴方の目的は・・・」
「俺が望むのは腐敗の元凶、帝国軍を解体し静かな世へと導く事。そして、世の平和を保つ為には理性的で、無欲な指導者が必要だ。俺がその役を勤めよう。実は、協力者も見つけている。市井の有力者にね」
「・・・!」
そこで梓はそれが村雨の事だと気付く
「帝国軍を解体するって何をするつもりなの?」
「勘が悪いですよ。目の前の状況を見れば想像付きませんか? まずは、この機械を爆破し帝国軍への宣戦布告とします。これで帝国軍の要、強兵達は封じられる」
「その後は、即刻参謀本部に奇襲を掛け占拠するって手はずだったな」
「はい。既に村雨さん達「結実なき花」の残党も待機済みです」
「頭を落とし、軍を制圧した後は静かで平和な世へとダリウス様が導かれます」
「・・・っ」
今まで黙っていたルード、虎、リアの言葉を聞き、梓は何かを思っている顔をした
「さて、君を呼んだ意味もそろそろ、分かるかな。・・・強兵計画とは神の加護などを得るものではない。アダバナを介して人の邪気を引き出すもの。そして、この機械こそ帝都に怨霊を呼び込んだ・・・穢れの源だ。破壊するには、少々纏っている瘴気が厄介だけど・・・我々鬼の力に、四神に認められた今の君の力が加われば不可能じゃないよ」
「・・・・」
「怪我をしたとしても私が直ぐに治すから」
「リアさん・・・でも、あの機械を壊したりしたら、中に入ってる人達は――」
「・・・出来る事なら、私も助けたいよ。・・でも・・」
「おれだってリアさんと同じで本当は助けたい。だけど―― この機械だけは壊さなくちゃ駄目だ。人の命をもう二度と無駄にさせない為にも――」
「・・・!」
確かにコハクやリアの言う通りだ
だが、梓は奥を見て言う
「・・・ねえあの機械を壊すのは危ないんじゃ・・・ただでさえあんなに瘴気が溢れてるんだもの。無理に破壊したりしたらダリウス達の身だってただじゃ済まないんじゃ・・・」
「私が結界を張ります。その間に空間移動で避難すれば良い」
「けど、もし街にも被害が広がれば・・・」
「事前に勧告はした。出来うる限りの手は尽くしているよ」
「!」
そう言われ、あの東京駅の垂れ幕がダリウス達がやったのだと梓も気付く
「・・・・」
覚悟は決まっている、だけど梓の迷いはリアも思っていた事だった
事前に勧告はし、この辺りの住民が避難した事はリアも店で聞いていたし、一緒に働いてる人達も一時的に実家や他の場所に避難している事を知っていた
そう思っていた時だった
途端、扉が開き銃声の音が部屋に響き渡った
続く
あとがき
はい、ルードくんルートもやっと帝都の闇の正体まで辿り着きました
最初は大団円ルートと同じように書いていたんですけど、せっかくルート別で作ってるんだから多少は違う部分も入れないと飽きちゃうだろうなと思って多少追加してみました
やっぱりダリウスさんは一番ルードくんとリアちゃんの事を見ているので二人の事は微笑ましく見ていますねw
ま、何気に虎も分かってそうだけどw
そして帝都の闇に辿り着いたが・・・これからどうなるやらw
今後はまたルート毎に違う所も増えていくのでそこもお楽しみに
2015.08.13
「ではみんな、準備は良いかな」
「準備は出来ております」
「ああ、いつでも良いぜ」
「うん・・・おれも、大丈夫です」
「私も大丈夫です」
ダリウスは居間に集まっているルード、虎、コハク、リアを見て凌雲閣へ向かう前に最終確認を取っていた
今日秋の朔日、つまり9月1日が、ダリウスの革命への計画を進める日であり、梓やリア達も帝都の闇の正体を目の当たりにする日でもあった
「既に村雨達、結実なき花も手はず通り動いています」
「なら、俺達もそろそろ向かおうか」
「はい」
ダリウスの言葉に頷き皆、ダリウスの側へ行く
そして、空間移動で凌雲閣側に着いた
先程まで邸の中に居たから気付かなかったが、頬に触れる夜の風は心なしか涼しく感じられていた
凌雲閣の前を見ると、厳重な警備がされていて複数の軍人が入り口を守っていた
だが、リア達は凌雲閣の正面に向かわず近くの茂みの方へ歩いて行く
そして一角にある葉っぱを退かすとそこには扉の取っ手があった
此処から地下へ入れるようだった
事前に調査をしていたのでこれで無事に地下へ降りる事が出来る
「・・・通路は暗そうだね。ルード、君はリアをエスコートして来なさい」
「ダリウス様?」
「大事な姫をエスコートするのは当然だろう?」
「っ///」
ダリウスは地下へ続く道を見てそう判断した後ルードを見てそう言い、ダリウスの言葉を聞くとルードは少しだけ言葉に詰まった
「え? どう言う事?」
「ふふっ、ではコハク、虎、俺達は先に行こうか」
「へいへい・・・おら、小僧行くぞ」
「え、あ、政虎さん、待ってよ」
ダリウスは微笑ましそうに笑ってそう言い先頭を歩きその後に虎とダリウスの言葉の意味を分かっていないコハクが続いた
「・・・何だか、気を遣って貰っちゃった・・?」
「・・・そのようですね・・・」
「「・・・・」」
先程まで緊張感があったが、急に二人きりにされ何だか気まずくなってしまう
「・・・リアさん」
ルードは軽く咳払いしてリアの方を見る
「先日も言いましたが、この先は危険が待っていると思います。ですが、必ず私が貴女を守ります。だから、安心して下さい」
「ルードくん・・・。うん、ルードくんが一緒だから大丈夫だよ」
言うとお互い微笑み合い、また気を引き締め直した
「では我々も行きましょう。足元が心配です。リアさん、手を」
「うん、ありがとう」
リアの手を取るとルードは先に階段を降りその後にリアも続き、二人並んで歩き始めた
長い廊下を歩く中、リア達の足音が辺りに響き渡る
それは自分達より先に入って行ったダリウス達の足音も少し遠くではあるが前方から聞こえていた
そして今歩いている廊下にはいくつもの隠し部屋がある
だがリア達が目指している場所はもっと先だ
それでも徐々に空気が淀んでいっているのが解り、気を引き締め直す
そして最深部と言ってもいい場所に着き、ダリウスが扉を開ける音が聞こえリアとルードも少し遅れて部屋に入り中を見た
部屋の中は無機質だったが、強い瘴気を感じた
「・・・・」
「っ・・・!」
そして部屋の奥を見るとガラスの中に沢山の禍々しい花弁があり培養液が入っていた
いや、それだけではなかった
その中には、人間も入っていた
「っ・・・」
その光景にリアだけでなくダリウスもルードも虎もコハクも目を瞠って息を詰めていた
「想像していたより酷い光景だね・・・」
「はい・・・」
「リアさん、大丈夫ですか・・」
「うん・・・」
ルードが心配してそう言い先程より少し強くリアの手を握り、リアもそれに答えるようにルードの手を握り返す
そしてコハクを見るとコハク自身もこの場に居た事があり、あの残酷な出来事が遭った場所だったからか、辛そうな表情を浮かべていた
「では、ダリウス様、私は梓さんを迎えに行って参ります」
「リア、君も一緒に行きなさい」
「え?」
「その方が気持ちも落ち着くだろうし、梓も安心出来ると思うよ」
この光景を見て顔色が少し悪くなっている事に気付いてそう言ってくれたのか、それともルードと共に居た方がリアも安心出来ると思ったのか、そのどちらもあるかもしれないがダリウスはそう言ってくれリアは頷いてルードと共に来た道を戻り始めた
「・・・ダリウスさん、凄く気を遣ってくれてるね」
「ええ。ですが、ダリウス様の判断は正しいですよ。リアさんも衝撃を受けていますしね」
「うん・・・」
手を繋いで廊下を歩きながらリアとルードはそう話していた
確かにあの地下の光景はコハクから聞いて知ってはいたが、いざそれを目の当たりにすると衝撃を受けてしまう
「梓ちゃんも、この事実を知ったら驚いちゃうだろうね」
否、梓だけではない、この真実は他の人が知っても衝撃を受けてしまう
コハクが記憶を取り戻し話してくれた内容を聞いただけでも残酷過ぎる出来事だと思っていたが、その原因であり帝都の闇の正体の一つを目の当たりにして言葉を無くしてしまう
「ですが、梓さんも帝都の闇の正体を知りたいと思っています。我々の計画に彼女の力が必要なのも事実です」
「うん・・・先に事実を知ってる分、私達が梓ちゃんを支えてあげないとだよね」
そう話しているうちに地上へ続く階段が見えた
ルードが先に上がり地上の様子確認する
丁度梓も辿り着いたばかりのようで凌雲閣の前にいる警備の人達の様子を伺っていた
そしてルードはそのまま駆け出し、警備兵達を気絶させた
「梓さん、早くこちらへ」
「ルードくん、それにリアさんも」
「久し振りね、梓ちゃん・・・って挨拶してる場合じゃないよね」
梓はリアとルードがいる事に驚いていたがリアの苦笑する言葉を聞き梓も小さく笑った
「警備の抜け穴は事前に調査済みです。ほら、地下に進む通路も」
リアが一歩避けるとそこには地下に続く階段があった
「此処から中に入れるんだね」
「ええ。他の警備の人達が来る前に行きましょう」
「地下に行く前に一つ質問があります。凌雲閣の結界が破られた事を知っている者はいますか?」
ルードの質問にリアも立ち止まり梓を見る
「結界を張った九段さんは勿論知っているよ。後、普段一緒に行動しているし・・・有馬さんや秋兵さんも気付いてる。だけど、目を瞑ってくれている。私を信じてくれているんだと思う」
「・・・そうですか。では、貴女のお味方からの妨害はないと思って良いでしょう」
「有馬さんや片霧さん、九段さんとは戦いたくないから聞いて安心したな」
リアも有馬達とも顔見知りであり、争いたくないと言う事はルードも梓も知っていたのでリアの安心した顔を見て二人も安堵していた
「ただ、油断は禁物です。急いだ方が良さそうですね」
「そうね」
「地下には何が隠されているの?」
「私がご説明するよりも実際に見た方が早いでしょう。ダリウス様もそうお考えです」
「・・・・」
「梓さん、地下にあるものを見ても動揺されませんよう。決して五月蠅く騒ぎ立てる事のなきよう、お願いします」
「・・・うん」
「・・・行こうか」
リアの表情が一瞬だが硬くなったのを梓も見ていたがこれ以上は聞くより実際に見た方が良いのだろうと思いリアとルードの後に続いた
そして、
40.帝都の闇
「梓、無事に辿り着けたようだね」
「ルードくんとリアさんが誘導してくれたから」
あれから梓を誘導しダリウス達がいるあの場所へと向かい梓が部屋に入ったのを確認すると扉を閉めてリアとルードはダリウスの側に移動した
「君が、見事四神の協力を得てくれたお陰で此処まで容易に入れたよ」
「うん・・・驚いたよ。凌雲閣の中にこんな大きな隠し部屋があったなんて。ところで、この瘴気って一体何処から・・・?」
「奥をご覧。あれが、我々が探してきた帝都を蝕む諸悪の根源だ」
「諸悪の根源・・・?」
言うとダリウス達はそこから少し離れ、梓に奥にあるものを見やすくしてあげた
「あれ、何・・・?」
「「っ・・・」」
梓は奥にあるものをじっと見る
そして、ある事に気が付く
「・・・! ・・・もしかして、これ・・・人間が、入れられてるの?」
梓もリア達同様、この光景を見て驚きを隠せないでいた
「この機械は何?」
「アダバナの溶液で満たされているんだ。人を狂わせる魔性の花・・・」
「コハク・・・」
「思い出したんだよ、その機械の中におれが押し込められてた事」
「・・・!」
「その機械は、人の体を兵器として強化する為のものだ。アダバナの蜜が体に入ると闘争能力を掻き立てられ人にあらざる力を得る。記憶や心を失うのと引き換えに」
「そんな・・・それじゃあ「強兵計画」って・・・」
「八百万の神の力なんて嘘だったって事よ」
「ま、待って。コハクがこの中に入っていたって事はまさか、憑闇の正体も・・・」
「憑闇こそ強兵計画の失敗作・・・と考えて良いでしょうね。憑闇を生んだ原因を散々鬼になすりつけておいて、胸の悪くなる真実ですが」
「本当にな。なーにが「強兵計画」だ。神々の力を借りる所か人の体を好きにいじってたなんざ正気の沙汰じゃねえよ」
「・・・・」
リアもこの事はコハクが記憶を取り戻した時に聞いていたが、梓同様、この光景を見て、夜会での友部の事や花火大会での新兵も此処で無理に力を増幅させられ、憑闇になってしまったのだと思い驚きや悲しみ、そして怒りを隠せないでいた
「・・・今まで見た、憑闇はみんな此処で無理に力を増幅させられて・・・耐えきれずああなってしまったって事? 帝国軍は、兵士達が憑闇になる危険を分かった上で強兵計画を進めていたの・・・?」
「・・・っ」
「信じ・・・られない」
梓も帝都の・・否、帝国軍のやっていた真実を知り、衝撃を受けていた
自分が所属している軍が、こんなにもおぞましく残酷な事をしていたのだから・・・
「すべては帝国軍参謀本部総長・・・片霧清四郎が指揮したものだろう。あの男なら、やりかねない」
「! その口振り・・・ダリウスは総長さんを知っているの?」
「ああ、過去、秘密裏に俺は帝国軍に協力していたから」
「え・・・」
「我が一族は優れた能力を持つ反面、少々弱い立場にあってね。姿形が異質な所為か、古来より、迫害や偏見に晒されてきた。だが、時が流れるにつれ、鬼の純血種も減り、それに比例して自由も許されるようになった。そうなると今度は、純血種を残す為に鬼の血を引く者達が寄り集まろうとする動きが再熱し・・・それを知った帝国軍は我等を利用しようとした」
「「・・・・・」」
それを聞き、ルードもリアもその当時の事を思い返していて、ダリウスはそのまま言葉を続ける
「―― 3年程前、帝国軍から取引を持ちかけられたんだ。一族の隠れ里の場所は知っている。これまで通りの平穏な暮らしを守りたければ、力を貸せと。幸いな事にリア達の一族が住んでいる隠れ里の事は帝国軍に知られていなかったよ」
梓が思っている事を読み取ったのかダリウスはそう言うと梓は少し安堵した表情を見せるも、その続きが気になっている顔をしていた
「鬼の首領として俺が携わった仕事は他愛のないものだったよ。禁じられた品種・アダバナを輸送し、栽培の準備をしたり・・・各国の関諜役を担ったり・・・だけど、それは片霧が目指す愚かな富国強兵の理想へと繋がっていたんだ。おぞましい計画の片棒を担がされていると気付いた時には遅かった。帝国軍は怨霊の存在を鬼の所為だと騙っていた。本当はこの地下で繰り広げられていた・・・憎むべき強兵策の所為なのに」
「嘘・・・そんなのって・・・」
「信じられない? でも、これが今の腐敗しきった帝都の姿だよ」
「・・・・」
そこまで聞き梓は言葉を無くしてしまった
「言葉が出ないだろうね。まったく、愚かだろう? ・・・戦争を望み、兵士を思うがまま操ろうとする今の片霧は強欲に過ぎるんだ。民衆は戦争など望んでいない。静かで、平穏な生活・・・それだけで良いはずなのに」
「ダリウス、貴方の目的は・・・」
「俺が望むのは腐敗の元凶、帝国軍を解体し静かな世へと導く事。そして、世の平和を保つ為には理性的で、無欲な指導者が必要だ。俺がその役を勤めよう。実は、協力者も見つけている。市井の有力者にね」
「・・・!」
そこで梓はそれが村雨の事だと気付く
「帝国軍を解体するって何をするつもりなの?」
「勘が悪いですよ。目の前の状況を見れば想像付きませんか? まずは、この機械を爆破し帝国軍への宣戦布告とします。これで帝国軍の要、強兵達は封じられる」
「その後は、即刻参謀本部に奇襲を掛け占拠するって手はずだったな」
「はい。既に村雨さん達「結実なき花」の残党も待機済みです」
「頭を落とし、軍を制圧した後は静かで平和な世へとダリウス様が導かれます」
「・・・っ」
今まで黙っていたルード、虎、リアの言葉を聞き、梓は何かを思っている顔をした
「さて、君を呼んだ意味もそろそろ、分かるかな。・・・強兵計画とは神の加護などを得るものではない。アダバナを介して人の邪気を引き出すもの。そして、この機械こそ帝都に怨霊を呼び込んだ・・・穢れの源だ。破壊するには、少々纏っている瘴気が厄介だけど・・・我々鬼の力に、四神に認められた今の君の力が加われば不可能じゃないよ」
「・・・・」
「怪我をしたとしても私が直ぐに治すから」
「リアさん・・・でも、あの機械を壊したりしたら、中に入ってる人達は――」
「・・・出来る事なら、私も助けたいよ。・・でも・・」
「おれだってリアさんと同じで本当は助けたい。だけど―― この機械だけは壊さなくちゃ駄目だ。人の命をもう二度と無駄にさせない為にも――」
「・・・!」
確かにコハクやリアの言う通りだ
だが、梓は奥を見て言う
「・・・ねえあの機械を壊すのは危ないんじゃ・・・ただでさえあんなに瘴気が溢れてるんだもの。無理に破壊したりしたらダリウス達の身だってただじゃ済まないんじゃ・・・」
「私が結界を張ります。その間に空間移動で避難すれば良い」
「けど、もし街にも被害が広がれば・・・」
「事前に勧告はした。出来うる限りの手は尽くしているよ」
「!」
そう言われ、あの東京駅の垂れ幕がダリウス達がやったのだと梓も気付く
「・・・・」
覚悟は決まっている、だけど梓の迷いはリアも思っていた事だった
事前に勧告はし、この辺りの住民が避難した事はリアも店で聞いていたし、一緒に働いてる人達も一時的に実家や他の場所に避難している事を知っていた
そう思っていた時だった
途端、扉が開き銃声の音が部屋に響き渡った
続く
あとがき
はい、ルードくんルートもやっと帝都の闇の正体まで辿り着きました
最初は大団円ルートと同じように書いていたんですけど、せっかくルート別で作ってるんだから多少は違う部分も入れないと飽きちゃうだろうなと思って多少追加してみました
やっぱりダリウスさんは一番ルードくんとリアちゃんの事を見ているので二人の事は微笑ましく見ていますねw
ま、何気に虎も分かってそうだけどw
そして帝都の闇に辿り着いたが・・・これからどうなるやらw
今後はまたルート毎に違う所も増えていくのでそこもお楽しみに
2015.08.13