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「ただいま」
「ただいま、ルードくん」
「・・・お帰りなさいませ。ご無事で何よりです」
ダリウス達が蠱惑の森の入り口の怨霊を倒し邸に戻って来た頃には既に外は暗くなっていた
丁度夕食の準備をしていたのかルードは厨房から姿を見せた
「あれ? 政虎さんは?」
「虎は部屋で寝てますよ。ダリウス様からの指示がなくともやるべき事はあるのに」
「彼らしいね。ところでそこにあるのは今日の新聞かな」
「はい。朝のうちに買って来たものです。お読みになりますか?」
「ありがとう。ひとつ、確認しておきたい事があってね」
ルードから新聞を受け取るとダリウスは一通り目を通す
「・・・ふうん。てっきり、『消えた龍神の神子』なんて、見出しが出てるかと思ったけれど・・・何も記載がない。帝国軍は、神子の降臨を隠す方針のようだ」
神子召喚儀式は秘密裏に行われたものだ
そしてその召喚に成功し現れた龍神の神子が鬼の手により奪還されてしまっている
帝国軍も失敗を表沙汰にして世間を騒がせ信用を失う事をしたくはないだろうから新聞には記載がないのだろうと検討がついた
そう思っていると梓は自分がこの世界に飛ばされて来た時に周りに軍人達がいた事を思い出し、ルードとダリウスが帝国軍と鬼が対立している理由を話し始めた
帝国軍は鬼の異形の力を忌み嫌い、鬼の一族も彼等の強権的な統括には賛成出来かねている事
確かに帝国軍はすべての権力を軍に集中し民衆の信頼を得ようとしている
それはこの帝都に住んでいれば誰もが感じ実感している事だった
だが、ダリウス達が帝国軍を嫌っているのはそれだけの理由ではない
「鬼の一族は古来から人々に恐れられていた。だからかな、俺達は何でも災いの元凶にされてしまう。怨霊騒ぎについても例に漏れず」
「まったく・・・本当に忌々しい。人間達が怨霊を増やしたくせに原因を省みず、神子を呼び鬼に責任を押しつけるとは」
「・・・・」
ダリウスとルードの言葉を聞きリアは少しだけ表情を歪め、梓は更にその言葉に疑問を抱く
「先日、帝国軍は急激に怨霊が増えた要因を鬼の陰謀だと公示したんだ」
「えっ・・・」
「2、3年前からか・・・怨霊が増えたのは時の流れの所為だよ。この所急激に文明が進んで色んな思想や欲望が渦巻いて・・・。邪気に導かれて、怨霊が力を増し龍脈は穢れた・・・」
「・・・・・」
「怨霊の出没を鬼の責任にされ誤解されたまま奥地に潜み暮らすのも楽じゃない。西洋人と容姿が近いから簡単に正体を見破られないのがまだ救いだけど」
確かにダリウスもルードも出逢った時から帝国軍の人達と違う容姿だと思っていたがそれは今の話を聞いて納得したが、自然とこの場にいるもう一人へと視線を移してしまう
「・・・璃唖さんも、鬼の一族、・・なんですよね?」
「いや、リアは君と同じ人間だよ」
「えっ! でも今、人間は鬼の一族を嫌っているって・・・」
「ダリウスさん達鬼の一族とは縁のある一族だからね。今は帝都で仕事をしながら此処に住んでいるの」
「じゃあ昔からの知り合いって事ですか?」
「ええ。ですから先程言った人間達の例には該当しません」
梓がちらりとリアを見るとまた優しい笑顔を向けた
言われて見れば二人とは少し違うような気もするし同じ人間だから安心出来る・・・
だが、彼等の話を何処まで信じて良いのか・・・
梓が考え込んでいるのを見てダリウスとルードは言葉を続ける
あのまま帝国軍の元にいても権力の道具として利用されるだろうと言う事、そして此処にいれば神子の役目などに縛り付けず梓が元の世界に帰る手助けをする事など
「・・・警戒しないで。君と俺達は利害が一致している。つまり、仕事仲間のようなものだと思ってくれたらいい。怨霊を倒すと言う同じ目的を持つ者同士手を組んだ方がいいだろう? 暫くの間、よろしく」
ダリウスはそう言って手を差し出すと梓は少し考えダリウス、ルード、そしてリアを見てまた少し考えた後その手を取った
「はい、こちらこそよろしくお願いします。ダリウスさんに・・・ルードハーネくん、璃唖さん」
「ダリウスでいいよ。その堅苦しい言葉遣いもやめにしようか。ルードハーネの事もルード、と。構わないね、ルード?」
「ダリウス様がおっしゃるなら」
「私の事もリア、で構わないわ」
「短い間かもしれないけれど、俺達は仲間だからね」
「・・・仲間・・・そう・・・ですね。わかった。なら・・・これからよろしく。ダリウス、ルードくん、リアさん」
「ええ、改めてこれからよろしくね」
にこりと笑う梓にリアも微笑みお互いに握手をしたが、その時の梓の笑顔は今までの中でやっと気を緩めてくれて始めて見せた笑顔だった
「良かった。やっと少しだけ表情を和らげてくれたね。さて、疲れただろう。今日はもう部屋で休むといい。後で軽食を届けさせるよ」
「ありがとう・・・。あの、明日からはまた、怨霊を退治しに行くんだよね?」
「ああ。外に出る時は、一人か二人共を付けると良い。リアも時間が空いている時は手伝えると思うけど、二人だけで出掛けては駄目だよ。女性二人で何か遭ったら事だからね。ただ、明日は俺は用事で付き添えないから虎を連れておいで」
「虎って・・・」
「本条政虎。ダリウス様の雇われ人です。先程も会ったでしょう」
「・・・!」
その反応を見ると出逢った時に何か遭ったのか、それとも今朝「力ずくで言う事聞かせる」と言われた事を気にしているのだろうか少し怯えていた
「・・・大丈夫ですか? あの人、怖い人なんじゃ・・・」
「あれを怖がる必要などないですよ。一族の純血種ではないからか品位と清潔感には欠けていますが」
「うーん・・・その言い方はどうかと思うけどね。虎は、仕事はきっちり熟す方だ。心配いらないよ」
「心配なら明日私もルードくんと一緒に行くよ」
「・・・良いんですか?」
「ええ。ルードくんもそれで良いよね」
「構いませんが」
「決まりだね。ルード、リア、明日は頼んだよ」
「畏まりました」「はい」
03.険悪からの出発
翌朝、リアはいつもより早めに起きて仕事に出掛けた
8時前までには邸に戻らなくてはならないので今日は朝の仕込みの手伝いと店の準備だけして邸へと戻った
邸の前に戻ると既にルードと梓の姿があった
「ルードくん、梓ちゃん、お待たせ」
「あ、リアさん。お仕事お疲れ様です。すみません、仕事終わりに付き合わせてしまって・・・」
「気にしないで。それに今日は元々朝だけだったから」
「そうなんですか?」
「梓さん、丁寧語に戻っていますよ」
ルードに指摘され思わず口に手を当ててしまう
「ごめん・・・その、雰囲気でつい・・・」
「まあ、解らなくもないですが」
梓が言わんとしている事はルードも解っていた
年下や同い年ならまだ直ぐに丁寧語から普通通りに喋る事が出来るが年上だと直ぐには無理があった
リアもダリウスも徐々に慣れていけば良いからと言ってくれたが、リアはお姉さんのような感じがしてつい丁寧語になってしまっていたし、未だにリアさんと呼んでいるが、そこは気にした様子がないし呼び捨ても気が引けてしまうのでさん付けで呼んでいる
「ところで政虎さんは?」
そう、今日は梓とルードとリアと共に政虎も一緒に怨霊退治に出向くはずなのだが、この場に政虎だけいなかった
「・・・・」
虎の名を聞きルードの表情が少し険しくなった
この表情を見る限り、未だに寝ているのだろうと察しが付いた
「リアさん、虎はまだ来ないようですし今のうちに水を飲んで来てはどうですか」
一仕事終え急いで帰って来たしこの夏の暑さだ、喉が渇くのは当然だ
「ありがとう。じゃあちょっと行ってくるね」
そう言って邸の中に入り厨房へ行って水を飲んで戻って来たがまだ虎の姿はなかった
(これはもう少し時間が掛かりそうね・・・)
そう思い梓に声を掛け日陰に移動し政虎が来るのを待っているが一向に来る気配はなく、段々とルードの表情が険しくなっていく
その表情に梓も沈黙を保もこの空気に耐えられなくなって来ているのが見て取れた
「・・・てめえ、此処にいたか」
「っ!」
が、途端荒々しく扉が開く音と共に聞こえた男の声に梓はびくりと肩を振るわせた
「何、びくついてんだ。お前の事じゃねえよ。どけ。おい、ルード、俺の朝飯が残ってねえぞ」
「でしょうね。時間を守らないからです」
「雇用条件に『三食昼寝付き』って書いてあったぜ」
「権利は義務を果たす者にのみ与えられるもの。大体、貴方外出の時間にさえ遅れているんですからね」
「ああ?」
「昨晩、伝えたはずですよ。朝8時に此処、玄関に集合するように、と」
「・・・ああ、そういや、んな事言ってたか。怨霊退治だっけ?」
「ええ、そうです。それにリアさんは仕事を終えて蜻蛉返りして怨霊退治に付き合ってくれるんですよ。少しは見習って下さい」
いきなり始まった言い合いに梓はリアに止めなくて良いのかと目で訴えていた
「大丈夫、もうすぐ終わるから」
そう言われルードと虎の二人を見ると確かに言い合いは止まったが、お互い睨み合っていて雰囲気が悪くなっていた
「はい、二人とも言い合いはそこまでにして下さいね。そろそろ出発しないと怨霊退治する時間もなくなるし梓ちゃんに帝都の案内をする時間も減っちゃいますよ?」
「・・・・」「・・・チッ」
リアの言葉に少し不満を感じているかの様な表情を浮かべるもそれが最優先と判断し梓も声を掛けた
「・・・あの、怨霊討伐って今日は何処に行けば?」
「・・・それは貴女が決める事です」
「え?」
「伝承によれば、貴女には怨霊の声を聞く力がある・・・街を巡れば感じるものがあるはずです」
「昨日怨霊退治に出掛けた時に感じたようなものって言えば解るかな?」
「便利なもんだ。せいぜい、早く見つけてくれ。・・・間違っても帝都中をうろつかせたりするなよ」
「政虎さん、梓ちゃんを恐がらせないで下さい。梓ちゃん、行こう」
「あ、うん・・・」
リアに促され梓は小走りでリアの隣に並び、ちらりと後ろを見るとまだ険悪な雰囲気を漂わせながら歩いてくるルードと虎を見て改めて
(今日リアさんがいてくれて本当に良かった・・・)
と安堵していたのだった
続く
あとがき
さてさて、やっと3話まで辿り着きましたw
そしてやっとリアちゃんが鬼の一族ではなく人間だと言う事が解りましたね
まだ詳しい事は解ってないけどそれは後々ねw
そして白虎コンビと共に怨霊退治&帝都案内をする事になっていたが、・・・ルードと虎、険悪だな、おいwww
ほんとにこれリアちゃんいなかったら梓ちゃんの疲労感半端なかったと思うよww
さて、次回は怨霊退治してちょっと進む感じ・・・かな?ww
ではまた次回
2015.06.19
「ただいま、ルードくん」
「・・・お帰りなさいませ。ご無事で何よりです」
ダリウス達が蠱惑の森の入り口の怨霊を倒し邸に戻って来た頃には既に外は暗くなっていた
丁度夕食の準備をしていたのかルードは厨房から姿を見せた
「あれ? 政虎さんは?」
「虎は部屋で寝てますよ。ダリウス様からの指示がなくともやるべき事はあるのに」
「彼らしいね。ところでそこにあるのは今日の新聞かな」
「はい。朝のうちに買って来たものです。お読みになりますか?」
「ありがとう。ひとつ、確認しておきたい事があってね」
ルードから新聞を受け取るとダリウスは一通り目を通す
「・・・ふうん。てっきり、『消えた龍神の神子』なんて、見出しが出てるかと思ったけれど・・・何も記載がない。帝国軍は、神子の降臨を隠す方針のようだ」
神子召喚儀式は秘密裏に行われたものだ
そしてその召喚に成功し現れた龍神の神子が鬼の手により奪還されてしまっている
帝国軍も失敗を表沙汰にして世間を騒がせ信用を失う事をしたくはないだろうから新聞には記載がないのだろうと検討がついた
そう思っていると梓は自分がこの世界に飛ばされて来た時に周りに軍人達がいた事を思い出し、ルードとダリウスが帝国軍と鬼が対立している理由を話し始めた
帝国軍は鬼の異形の力を忌み嫌い、鬼の一族も彼等の強権的な統括には賛成出来かねている事
確かに帝国軍はすべての権力を軍に集中し民衆の信頼を得ようとしている
それはこの帝都に住んでいれば誰もが感じ実感している事だった
だが、ダリウス達が帝国軍を嫌っているのはそれだけの理由ではない
「鬼の一族は古来から人々に恐れられていた。だからかな、俺達は何でも災いの元凶にされてしまう。怨霊騒ぎについても例に漏れず」
「まったく・・・本当に忌々しい。人間達が怨霊を増やしたくせに原因を省みず、神子を呼び鬼に責任を押しつけるとは」
「・・・・」
ダリウスとルードの言葉を聞きリアは少しだけ表情を歪め、梓は更にその言葉に疑問を抱く
「先日、帝国軍は急激に怨霊が増えた要因を鬼の陰謀だと公示したんだ」
「えっ・・・」
「2、3年前からか・・・怨霊が増えたのは時の流れの所為だよ。この所急激に文明が進んで色んな思想や欲望が渦巻いて・・・。邪気に導かれて、怨霊が力を増し龍脈は穢れた・・・」
「・・・・・」
「怨霊の出没を鬼の責任にされ誤解されたまま奥地に潜み暮らすのも楽じゃない。西洋人と容姿が近いから簡単に正体を見破られないのがまだ救いだけど」
確かにダリウスもルードも出逢った時から帝国軍の人達と違う容姿だと思っていたがそれは今の話を聞いて納得したが、自然とこの場にいるもう一人へと視線を移してしまう
「・・・璃唖さんも、鬼の一族、・・なんですよね?」
「いや、リアは君と同じ人間だよ」
「えっ! でも今、人間は鬼の一族を嫌っているって・・・」
「ダリウスさん達鬼の一族とは縁のある一族だからね。今は帝都で仕事をしながら此処に住んでいるの」
「じゃあ昔からの知り合いって事ですか?」
「ええ。ですから先程言った人間達の例には該当しません」
梓がちらりとリアを見るとまた優しい笑顔を向けた
言われて見れば二人とは少し違うような気もするし同じ人間だから安心出来る・・・
だが、彼等の話を何処まで信じて良いのか・・・
梓が考え込んでいるのを見てダリウスとルードは言葉を続ける
あのまま帝国軍の元にいても権力の道具として利用されるだろうと言う事、そして此処にいれば神子の役目などに縛り付けず梓が元の世界に帰る手助けをする事など
「・・・警戒しないで。君と俺達は利害が一致している。つまり、仕事仲間のようなものだと思ってくれたらいい。怨霊を倒すと言う同じ目的を持つ者同士手を組んだ方がいいだろう? 暫くの間、よろしく」
ダリウスはそう言って手を差し出すと梓は少し考えダリウス、ルード、そしてリアを見てまた少し考えた後その手を取った
「はい、こちらこそよろしくお願いします。ダリウスさんに・・・ルードハーネくん、璃唖さん」
「ダリウスでいいよ。その堅苦しい言葉遣いもやめにしようか。ルードハーネの事もルード、と。構わないね、ルード?」
「ダリウス様がおっしゃるなら」
「私の事もリア、で構わないわ」
「短い間かもしれないけれど、俺達は仲間だからね」
「・・・仲間・・・そう・・・ですね。わかった。なら・・・これからよろしく。ダリウス、ルードくん、リアさん」
「ええ、改めてこれからよろしくね」
にこりと笑う梓にリアも微笑みお互いに握手をしたが、その時の梓の笑顔は今までの中でやっと気を緩めてくれて始めて見せた笑顔だった
「良かった。やっと少しだけ表情を和らげてくれたね。さて、疲れただろう。今日はもう部屋で休むといい。後で軽食を届けさせるよ」
「ありがとう・・・。あの、明日からはまた、怨霊を退治しに行くんだよね?」
「ああ。外に出る時は、一人か二人共を付けると良い。リアも時間が空いている時は手伝えると思うけど、二人だけで出掛けては駄目だよ。女性二人で何か遭ったら事だからね。ただ、明日は俺は用事で付き添えないから虎を連れておいで」
「虎って・・・」
「本条政虎。ダリウス様の雇われ人です。先程も会ったでしょう」
「・・・!」
その反応を見ると出逢った時に何か遭ったのか、それとも今朝「力ずくで言う事聞かせる」と言われた事を気にしているのだろうか少し怯えていた
「・・・大丈夫ですか? あの人、怖い人なんじゃ・・・」
「あれを怖がる必要などないですよ。一族の純血種ではないからか品位と清潔感には欠けていますが」
「うーん・・・その言い方はどうかと思うけどね。虎は、仕事はきっちり熟す方だ。心配いらないよ」
「心配なら明日私もルードくんと一緒に行くよ」
「・・・良いんですか?」
「ええ。ルードくんもそれで良いよね」
「構いませんが」
「決まりだね。ルード、リア、明日は頼んだよ」
「畏まりました」「はい」
03.険悪からの出発
翌朝、リアはいつもより早めに起きて仕事に出掛けた
8時前までには邸に戻らなくてはならないので今日は朝の仕込みの手伝いと店の準備だけして邸へと戻った
邸の前に戻ると既にルードと梓の姿があった
「ルードくん、梓ちゃん、お待たせ」
「あ、リアさん。お仕事お疲れ様です。すみません、仕事終わりに付き合わせてしまって・・・」
「気にしないで。それに今日は元々朝だけだったから」
「そうなんですか?」
「梓さん、丁寧語に戻っていますよ」
ルードに指摘され思わず口に手を当ててしまう
「ごめん・・・その、雰囲気でつい・・・」
「まあ、解らなくもないですが」
梓が言わんとしている事はルードも解っていた
年下や同い年ならまだ直ぐに丁寧語から普通通りに喋る事が出来るが年上だと直ぐには無理があった
リアもダリウスも徐々に慣れていけば良いからと言ってくれたが、リアはお姉さんのような感じがしてつい丁寧語になってしまっていたし、未だにリアさんと呼んでいるが、そこは気にした様子がないし呼び捨ても気が引けてしまうのでさん付けで呼んでいる
「ところで政虎さんは?」
そう、今日は梓とルードとリアと共に政虎も一緒に怨霊退治に出向くはずなのだが、この場に政虎だけいなかった
「・・・・」
虎の名を聞きルードの表情が少し険しくなった
この表情を見る限り、未だに寝ているのだろうと察しが付いた
「リアさん、虎はまだ来ないようですし今のうちに水を飲んで来てはどうですか」
一仕事終え急いで帰って来たしこの夏の暑さだ、喉が渇くのは当然だ
「ありがとう。じゃあちょっと行ってくるね」
そう言って邸の中に入り厨房へ行って水を飲んで戻って来たがまだ虎の姿はなかった
(これはもう少し時間が掛かりそうね・・・)
そう思い梓に声を掛け日陰に移動し政虎が来るのを待っているが一向に来る気配はなく、段々とルードの表情が険しくなっていく
その表情に梓も沈黙を保もこの空気に耐えられなくなって来ているのが見て取れた
「・・・てめえ、此処にいたか」
「っ!」
が、途端荒々しく扉が開く音と共に聞こえた男の声に梓はびくりと肩を振るわせた
「何、びくついてんだ。お前の事じゃねえよ。どけ。おい、ルード、俺の朝飯が残ってねえぞ」
「でしょうね。時間を守らないからです」
「雇用条件に『三食昼寝付き』って書いてあったぜ」
「権利は義務を果たす者にのみ与えられるもの。大体、貴方外出の時間にさえ遅れているんですからね」
「ああ?」
「昨晩、伝えたはずですよ。朝8時に此処、玄関に集合するように、と」
「・・・ああ、そういや、んな事言ってたか。怨霊退治だっけ?」
「ええ、そうです。それにリアさんは仕事を終えて蜻蛉返りして怨霊退治に付き合ってくれるんですよ。少しは見習って下さい」
いきなり始まった言い合いに梓はリアに止めなくて良いのかと目で訴えていた
「大丈夫、もうすぐ終わるから」
そう言われルードと虎の二人を見ると確かに言い合いは止まったが、お互い睨み合っていて雰囲気が悪くなっていた
「はい、二人とも言い合いはそこまでにして下さいね。そろそろ出発しないと怨霊退治する時間もなくなるし梓ちゃんに帝都の案内をする時間も減っちゃいますよ?」
「・・・・」「・・・チッ」
リアの言葉に少し不満を感じているかの様な表情を浮かべるもそれが最優先と判断し梓も声を掛けた
「・・・あの、怨霊討伐って今日は何処に行けば?」
「・・・それは貴女が決める事です」
「え?」
「伝承によれば、貴女には怨霊の声を聞く力がある・・・街を巡れば感じるものがあるはずです」
「昨日怨霊退治に出掛けた時に感じたようなものって言えば解るかな?」
「便利なもんだ。せいぜい、早く見つけてくれ。・・・間違っても帝都中をうろつかせたりするなよ」
「政虎さん、梓ちゃんを恐がらせないで下さい。梓ちゃん、行こう」
「あ、うん・・・」
リアに促され梓は小走りでリアの隣に並び、ちらりと後ろを見るとまだ険悪な雰囲気を漂わせながら歩いてくるルードと虎を見て改めて
(今日リアさんがいてくれて本当に良かった・・・)
と安堵していたのだった
続く
あとがき
さてさて、やっと3話まで辿り着きましたw
そしてやっとリアちゃんが鬼の一族ではなく人間だと言う事が解りましたね
まだ詳しい事は解ってないけどそれは後々ねw
そして白虎コンビと共に怨霊退治&帝都案内をする事になっていたが、・・・ルードと虎、険悪だな、おいwww
ほんとにこれリアちゃんいなかったら梓ちゃんの疲労感半端なかったと思うよww
さて、次回は怨霊退治してちょっと進む感じ・・・かな?ww
ではまた次回
2015.06.19