蠱惑の森大団円ルート
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9月1日、秋の朔日 ――
今日がダリウス達と共に革命を起こす決行当日だった
革命は夜に行う事になっている
事前にこの日は用事があると言って休みを貰っていてリアは街の中を歩いていた
道行く人々の数は以前より減っていた
それは、数日前に東京駅の屋根の上から垂れ幕がされていて、その勧告を受け身の安全を確保する為、帝都を離れた人が居たからだった
勿論それはダリウスやリア達がこれからやろうとしている事、そして、帝都の闇に巻き込まない為に勧告したものだったが、単なる悪戯と思っている人々も多く、避難していない人も居た
リアの知り合いや店で働いている人、客の中にも避難した人やしていない人もいる
道行く人々の表情や街の様子を見て、そして今日の作戦に参加するもう一人の人物の事を思いながら、リアは更に街の中を歩いて行った
37.帝都の闇
革命決行の夜、リアはダリウス達と共に空間移動で凌雲閣側に来ていた
先程まで邸の中に居たから気付かなかったが、頬に触れる夜の風は心なしか涼しく感じられていた
凌雲閣の前を見ると、厳重な警備がされていて複数の軍人が入り口を守っていた
だが、リア達は凌雲閣の正面に向かわず近くの茂みの方へ歩いて行く
そして一角にある葉っぱを退かすとそこには扉の取っ手があった
此処から地下へ入れるようだった
「足下に気を付けて」
「うん」
事前に調査をしていたのでこれで無事に地下へ降りる事が出来るが、この先に入るのは初めてで、足元も暗いのでルードの言葉に頷き、ダリウスを先頭にコハク、リア、ルード、虎と続く
長い廊下を歩く中、リア達の足音が辺りに響き渡る
その廊下にはいくつもの隠し部屋がある
だがリア達が目指している場所はもっと先だ
それでも徐々に空気が淀んでいっているのが解り、気を引き締め直す
そして最深部と言ってもいい場所に着き、ダリウスは扉を開ける
部屋の中は無機質だった
だが、強い瘴気を感じた
「・・・・」
「っ・・・!」
そして部屋の奥を見るとガラスの中に沢山の禍々しい花弁があり培養液が入っていた
いや、それだけではなかった
その中には、人間も入っていた
「っ・・・」
その光景にリアだけでなくダリウスもルードも虎もコハクも目を瞠って息を詰めていた
「想像していたより酷い光景だね・・・」
「はい・・・」
「リアさん、大丈夫・・?」
「うん・・・。コハクくんも、大丈夫・・?」
「うん・・・」
コハクが心配してそう言ってくれたが、コハクもこの場に来て一番辛い顔をしていた
それはコハク自身もこの場に居た事があり、あの残酷な出来事が遭った場所だったからだ
「では、ダリウス様、私は梓さんを迎えに行って参ります」
「ああ。頼んだよ」
言うとルードは来た道を戻って行き凌雲閣を目指している梓を地上へと迎えに行った
「・・・・・」
この計画には梓の力も必要になってくる
梓自身も帝都の闇の事知りたいと思っていた
だが、この真実を知って梓がどう受け止めるか
自分達のように衝撃を受けてしまうのは当然だ
否、梓だけではない、この真実は他の人が知っても衝撃を受けてしまう
コハクが記憶を取り戻し話してくれた内容を聞いただけでも残酷過ぎる出来事だと思っていたが、その原因であり帝都の闇の正体の一つを目の当たりにして言葉を無くしてしまう
そう思っていると遠くから足音が響いてくるのが分かった
どうやらルードが無事に梓と合流してこちらに向かって来ているようだった
足音が完全に近付いた所でリア達は一斉に梓とルードの方を向く
「梓、無事に辿り着けたようだね」
「ルードくんが誘導してくれたから」
「「・・・・・」」
梓は目の前にいるダリウス、虎、リア、コハクを見る
だが、リアとコハクの顔色は優れなかった
「君が、見事四神の協力を得てくれたお陰で此処まで容易に入れたよ」
「うん・・・驚いたよ。凌雲閣の中にこんな大きな隠し部屋があったなんて。所で、この瘴気って一体何処から・・・?」
「奥をご覧。あれが、我々が探してきた帝都を蝕む諸悪の根源だ」
「諸悪の根源・・・?」
言うとダリウス達はそこから少し離れ、梓に奥にあるものを見やすくしてあげた
「あれ、何・・・?」
「「っ・・・」」
梓は奥にあるものをじっと見る
そして、ある事に気が付く
「・・・! ・・・もしかして、これ・・・人間が、入れられてるの?」
梓もリア達同様、この光景を見て驚きを隠せないでいた
「この機械は何?」
「アダバナの溶液で満たされているんだ。人を狂わせる魔性の花・・・」
「コハク・・・」
「思い出したんだよ、その機械の中におれが押し込められてた事」
「・・・!」
「その機械は、人の体を兵器として強化する為のものだ。アダバナの蜜が体に入ると闘争能力を掻き立てられ人にあらざる力を得る。記憶や心を失うのと引き換えに」
「そんな・・・それじゃあ「強兵計画」って・・・」
「八百万の神の力なんて嘘だったって事よ」
「ま、待って。コハクがこの中に入っていたって事はまさか、憑闇の正体も・・・」
「憑闇こそ強兵計画の失敗作・・・と考えて良いでしょうね。憑闇を生んだ原因を散々鬼になすりつけておいて、胸の悪くなる真実ですが」
「本当にな。なーにが「強兵計画」だ。神々の力を借りる所か人の体を好きにいじってたなんざ正気の沙汰じゃねえよ」
「・・・・」
リアもこの事はコハクが記憶を取り戻した時に聞いていたが、梓同様、この光景を見て、夜会での友部の事や花火大会での新兵も此処で無理に力を増幅させられ、憑闇になってしまったのだと思い驚きや悲しみ、そして怒りを隠せないでいた
「・・・今まで見た、憑闇はみんな此処で無理に力を増幅させられて・・・耐えきれずああなってしまったって事? 帝国軍は、兵士達が憑闇になる危険を分かった上で強兵計画を進めていたの・・・?」
「・・・っ」
「信じ・・・られない」
梓も帝都の・・否、帝国軍のやっていた真実を知り、衝撃を受けていた
自分が所属している軍が、こんなにもおぞましく残酷な事をしていたのだから・・・
「すべては帝国軍参謀本部総長・・・片霧 清四郎が指揮したものだろう。あの男なら、やりかねない」
「! その口振り・・・ダリウスは総長さんを知っているの?」
「ああ、過去、秘密裏に俺は帝国軍に協力していたから」
「え・・・」
梓の言葉を聞くとダリウスはゆっくりと過去の出来事を話し出す
「我が一族は優れた能力を持つ反面、少々弱い立場にあってね。姿形が異質な所為か、古来より、迫害や偏見に晒されてきた。だが、時が流れるにつれ、鬼の純血種も減り、それに比例して自由も許されるようになった。そうなると今度は、純血種を残す為に鬼の血を引く者達が寄り集まろうとする動きが再燃し・・・それを知った帝国軍は我等を利用しようとした」
「「・・・・・」」
それを聞き、ルードもリアもその当時の事を思い返していて、ダリウスはそのまま言葉を続ける
「―― 3年程前、帝国軍から取引を持ちかけられたんだ。一族の隠れ里の場所は知っている。これまで通りの平穏な暮らしを守りたければ、力を貸せと。幸いな事にリア達の一族が住んでいる隠れ里の事は帝国軍に知られていなかったよ」
梓が思っている事を読み取ったのかダリウスはそう言うと梓は少し安堵した表情を見せるも、その続きが気になっている顔をしていた
「鬼の首領として俺が携わった仕事は他愛のないものだったよ。禁じられた品種・アダバナを輸送し、栽培の準備をしたり・・・各国の関諜役を担ったり・・・だけど、それは片霧が目指す愚かな富国強兵の理想へと繋がっていたんだ。おぞましい計画の片棒を担がされていると気付いた時には遅かった。帝国軍は怨霊の存在を鬼の所為だと騙っていた。本当はこの地下で繰り広げられていた・・・憎むべき強兵策の所為なのに」
「嘘・・・そんなのって・・・」
「信じられない? でも、これが今の腐敗しきった帝都の姿だよ」
「・・・・」
そこまで聞き梓は言葉を無くしてしまった
「言葉が出ないだろうね。まったく、愚かだろう? ・・・戦争を望み、兵士を思うがまま操ろうとする今の片霧は強欲に過ぎるんだ。民衆は戦争など望んでいない。静かで、平穏な生活・・・それだけで良いはずなのに」
「ダリウス、貴方の目的は・・・」
「俺が望むのは腐敗の元凶、帝国軍を解体し静かな世へと導く事。そして、世の平和を保つ為には理性的で、無欲な指導者が必要だ。俺がその役を勤めよう。実は、協力者も見つけている。市井の有力者にね」
「・・・!」
そこで梓はそれが村雨の事だと気付く
「帝国軍を解体するって何をするつもりなの?」
「勘が悪いですよ。目の前の状況を見れば想像付きませんか? まずは、この機械を爆破し帝国軍への宣戦布告とします。これで帝国軍の要、強兵達は封じられますしね」
「その後は、即刻参謀本部に奇襲を掛け占拠するって手はずだったな」
「はい。既に村雨さん達「結実なき花」の残党も待機済みです」
「頭を落とし、軍を制圧した後は静かで平和な世へとダリウス様が導かれます」
「・・・っ」
今まで黙っていたルード、虎、リアの言葉を聞き、梓は何かを思っている顔をした
「さて、君を呼んだ意味もそろそろ、分かるかな。・・・強兵計画とは神の加護などを得るものではない。アダバナを介して人の邪気を引き出すもの。そして、この機械こそ帝都に怨霊を呼び込んだ・・・穢れの源だ。破壊するには、少々纏っている瘴気が厄介だけど・・・我々鬼の力に、四神に認められた今の君の力が加われば不可能じゃないよ」
「・・・・」
「怪我をしたとしても私が直ぐに治すから」
「リアさん・・・でも、あの機械を壊したりしたら、中に入ってる人達は――」
「・・・出来る事なら、私も助けたいよ。・・でも・・」
「おれだってリアさんと同じで本当は助けたい。だけど―― この機械だけは壊さなくちゃ駄目だ。人の命をもう二度と無駄にさせない為にも――」
「・・・!」
確かにコハクやリアの言う通りだ
だが、梓は奥を見て言う
「・・・ねえあの機械を壊すのは危ないんじゃ・・・ただでさえあんなに瘴気が溢れてるんだもの。無理に破壊したりしたらダリウス達の身だってただじゃ済まないんじゃ・・・」
「私が結界を張ります。その間に空間移動で避難すれば良い」
「けど、もし街にも被害が広がれば・・・」
「事前に勧告はした。出来うる限りの手は尽くしているよ」
「!」
そう言われ、あの東京駅の垂れ幕がダリウス達がやったのだと梓も気付く
「・・・・」
覚悟は決まっている、だけど梓の迷いはリアも思っていた事だった
事前に勧告はし、この辺りの住民が避難した事はリアも店で聞いていたし、一緒に働いてる人達も一時的に実家や他の場所に避難している事を知っていた
そう思っていた時だった
途端、扉が開き銃声の音が部屋に響き渡った
続く
あとがき
さて、大団円ルートはもう帝都の闇の真実に一足早く辿り着きましたねw
・・うん、ほんと、これは衝撃的だよね・・・ゲームやってほんと驚いたもん・・・
梓に真実を話していよいよ・・・って所で続きましたが、いよいよ本当に佳境です!
この後は各ルートによってEDが違うのでそこも楽しんでもらえたらなと思っています!
では、次回もお楽しみに!
せ、戦闘シーン、が、頑張って書きまーす(^_^;)
2015.08.04
今日がダリウス達と共に革命を起こす決行当日だった
革命は夜に行う事になっている
事前にこの日は用事があると言って休みを貰っていてリアは街の中を歩いていた
道行く人々の数は以前より減っていた
それは、数日前に東京駅の屋根の上から垂れ幕がされていて、その勧告を受け身の安全を確保する為、帝都を離れた人が居たからだった
勿論それはダリウスやリア達がこれからやろうとしている事、そして、帝都の闇に巻き込まない為に勧告したものだったが、単なる悪戯と思っている人々も多く、避難していない人も居た
リアの知り合いや店で働いている人、客の中にも避難した人やしていない人もいる
道行く人々の表情や街の様子を見て、そして今日の作戦に参加するもう一人の人物の事を思いながら、リアは更に街の中を歩いて行った
37.帝都の闇
革命決行の夜、リアはダリウス達と共に空間移動で凌雲閣側に来ていた
先程まで邸の中に居たから気付かなかったが、頬に触れる夜の風は心なしか涼しく感じられていた
凌雲閣の前を見ると、厳重な警備がされていて複数の軍人が入り口を守っていた
だが、リア達は凌雲閣の正面に向かわず近くの茂みの方へ歩いて行く
そして一角にある葉っぱを退かすとそこには扉の取っ手があった
此処から地下へ入れるようだった
「足下に気を付けて」
「うん」
事前に調査をしていたのでこれで無事に地下へ降りる事が出来るが、この先に入るのは初めてで、足元も暗いのでルードの言葉に頷き、ダリウスを先頭にコハク、リア、ルード、虎と続く
長い廊下を歩く中、リア達の足音が辺りに響き渡る
その廊下にはいくつもの隠し部屋がある
だがリア達が目指している場所はもっと先だ
それでも徐々に空気が淀んでいっているのが解り、気を引き締め直す
そして最深部と言ってもいい場所に着き、ダリウスは扉を開ける
部屋の中は無機質だった
だが、強い瘴気を感じた
「・・・・」
「っ・・・!」
そして部屋の奥を見るとガラスの中に沢山の禍々しい花弁があり培養液が入っていた
いや、それだけではなかった
その中には、人間も入っていた
「っ・・・」
その光景にリアだけでなくダリウスもルードも虎もコハクも目を瞠って息を詰めていた
「想像していたより酷い光景だね・・・」
「はい・・・」
「リアさん、大丈夫・・?」
「うん・・・。コハクくんも、大丈夫・・?」
「うん・・・」
コハクが心配してそう言ってくれたが、コハクもこの場に来て一番辛い顔をしていた
それはコハク自身もこの場に居た事があり、あの残酷な出来事が遭った場所だったからだ
「では、ダリウス様、私は梓さんを迎えに行って参ります」
「ああ。頼んだよ」
言うとルードは来た道を戻って行き凌雲閣を目指している梓を地上へと迎えに行った
「・・・・・」
この計画には梓の力も必要になってくる
梓自身も帝都の闇の事知りたいと思っていた
だが、この真実を知って梓がどう受け止めるか
自分達のように衝撃を受けてしまうのは当然だ
否、梓だけではない、この真実は他の人が知っても衝撃を受けてしまう
コハクが記憶を取り戻し話してくれた内容を聞いただけでも残酷過ぎる出来事だと思っていたが、その原因であり帝都の闇の正体の一つを目の当たりにして言葉を無くしてしまう
そう思っていると遠くから足音が響いてくるのが分かった
どうやらルードが無事に梓と合流してこちらに向かって来ているようだった
足音が完全に近付いた所でリア達は一斉に梓とルードの方を向く
「梓、無事に辿り着けたようだね」
「ルードくんが誘導してくれたから」
「「・・・・・」」
梓は目の前にいるダリウス、虎、リア、コハクを見る
だが、リアとコハクの顔色は優れなかった
「君が、見事四神の協力を得てくれたお陰で此処まで容易に入れたよ」
「うん・・・驚いたよ。凌雲閣の中にこんな大きな隠し部屋があったなんて。所で、この瘴気って一体何処から・・・?」
「奥をご覧。あれが、我々が探してきた帝都を蝕む諸悪の根源だ」
「諸悪の根源・・・?」
言うとダリウス達はそこから少し離れ、梓に奥にあるものを見やすくしてあげた
「あれ、何・・・?」
「「っ・・・」」
梓は奥にあるものをじっと見る
そして、ある事に気が付く
「・・・! ・・・もしかして、これ・・・人間が、入れられてるの?」
梓もリア達同様、この光景を見て驚きを隠せないでいた
「この機械は何?」
「アダバナの溶液で満たされているんだ。人を狂わせる魔性の花・・・」
「コハク・・・」
「思い出したんだよ、その機械の中におれが押し込められてた事」
「・・・!」
「その機械は、人の体を兵器として強化する為のものだ。アダバナの蜜が体に入ると闘争能力を掻き立てられ人にあらざる力を得る。記憶や心を失うのと引き換えに」
「そんな・・・それじゃあ「強兵計画」って・・・」
「八百万の神の力なんて嘘だったって事よ」
「ま、待って。コハクがこの中に入っていたって事はまさか、憑闇の正体も・・・」
「憑闇こそ強兵計画の失敗作・・・と考えて良いでしょうね。憑闇を生んだ原因を散々鬼になすりつけておいて、胸の悪くなる真実ですが」
「本当にな。なーにが「強兵計画」だ。神々の力を借りる所か人の体を好きにいじってたなんざ正気の沙汰じゃねえよ」
「・・・・」
リアもこの事はコハクが記憶を取り戻した時に聞いていたが、梓同様、この光景を見て、夜会での友部の事や花火大会での新兵も此処で無理に力を増幅させられ、憑闇になってしまったのだと思い驚きや悲しみ、そして怒りを隠せないでいた
「・・・今まで見た、憑闇はみんな此処で無理に力を増幅させられて・・・耐えきれずああなってしまったって事? 帝国軍は、兵士達が憑闇になる危険を分かった上で強兵計画を進めていたの・・・?」
「・・・っ」
「信じ・・・られない」
梓も帝都の・・否、帝国軍のやっていた真実を知り、衝撃を受けていた
自分が所属している軍が、こんなにもおぞましく残酷な事をしていたのだから・・・
「すべては帝国軍参謀本部総長・・・片霧 清四郎が指揮したものだろう。あの男なら、やりかねない」
「! その口振り・・・ダリウスは総長さんを知っているの?」
「ああ、過去、秘密裏に俺は帝国軍に協力していたから」
「え・・・」
梓の言葉を聞くとダリウスはゆっくりと過去の出来事を話し出す
「我が一族は優れた能力を持つ反面、少々弱い立場にあってね。姿形が異質な所為か、古来より、迫害や偏見に晒されてきた。だが、時が流れるにつれ、鬼の純血種も減り、それに比例して自由も許されるようになった。そうなると今度は、純血種を残す為に鬼の血を引く者達が寄り集まろうとする動きが再燃し・・・それを知った帝国軍は我等を利用しようとした」
「「・・・・・」」
それを聞き、ルードもリアもその当時の事を思い返していて、ダリウスはそのまま言葉を続ける
「―― 3年程前、帝国軍から取引を持ちかけられたんだ。一族の隠れ里の場所は知っている。これまで通りの平穏な暮らしを守りたければ、力を貸せと。幸いな事にリア達の一族が住んでいる隠れ里の事は帝国軍に知られていなかったよ」
梓が思っている事を読み取ったのかダリウスはそう言うと梓は少し安堵した表情を見せるも、その続きが気になっている顔をしていた
「鬼の首領として俺が携わった仕事は他愛のないものだったよ。禁じられた品種・アダバナを輸送し、栽培の準備をしたり・・・各国の関諜役を担ったり・・・だけど、それは片霧が目指す愚かな富国強兵の理想へと繋がっていたんだ。おぞましい計画の片棒を担がされていると気付いた時には遅かった。帝国軍は怨霊の存在を鬼の所為だと騙っていた。本当はこの地下で繰り広げられていた・・・憎むべき強兵策の所為なのに」
「嘘・・・そんなのって・・・」
「信じられない? でも、これが今の腐敗しきった帝都の姿だよ」
「・・・・」
そこまで聞き梓は言葉を無くしてしまった
「言葉が出ないだろうね。まったく、愚かだろう? ・・・戦争を望み、兵士を思うがまま操ろうとする今の片霧は強欲に過ぎるんだ。民衆は戦争など望んでいない。静かで、平穏な生活・・・それだけで良いはずなのに」
「ダリウス、貴方の目的は・・・」
「俺が望むのは腐敗の元凶、帝国軍を解体し静かな世へと導く事。そして、世の平和を保つ為には理性的で、無欲な指導者が必要だ。俺がその役を勤めよう。実は、協力者も見つけている。市井の有力者にね」
「・・・!」
そこで梓はそれが村雨の事だと気付く
「帝国軍を解体するって何をするつもりなの?」
「勘が悪いですよ。目の前の状況を見れば想像付きませんか? まずは、この機械を爆破し帝国軍への宣戦布告とします。これで帝国軍の要、強兵達は封じられますしね」
「その後は、即刻参謀本部に奇襲を掛け占拠するって手はずだったな」
「はい。既に村雨さん達「結実なき花」の残党も待機済みです」
「頭を落とし、軍を制圧した後は静かで平和な世へとダリウス様が導かれます」
「・・・っ」
今まで黙っていたルード、虎、リアの言葉を聞き、梓は何かを思っている顔をした
「さて、君を呼んだ意味もそろそろ、分かるかな。・・・強兵計画とは神の加護などを得るものではない。アダバナを介して人の邪気を引き出すもの。そして、この機械こそ帝都に怨霊を呼び込んだ・・・穢れの源だ。破壊するには、少々纏っている瘴気が厄介だけど・・・我々鬼の力に、四神に認められた今の君の力が加われば不可能じゃないよ」
「・・・・」
「怪我をしたとしても私が直ぐに治すから」
「リアさん・・・でも、あの機械を壊したりしたら、中に入ってる人達は――」
「・・・出来る事なら、私も助けたいよ。・・でも・・」
「おれだってリアさんと同じで本当は助けたい。だけど―― この機械だけは壊さなくちゃ駄目だ。人の命をもう二度と無駄にさせない為にも――」
「・・・!」
確かにコハクやリアの言う通りだ
だが、梓は奥を見て言う
「・・・ねえあの機械を壊すのは危ないんじゃ・・・ただでさえあんなに瘴気が溢れてるんだもの。無理に破壊したりしたらダリウス達の身だってただじゃ済まないんじゃ・・・」
「私が結界を張ります。その間に空間移動で避難すれば良い」
「けど、もし街にも被害が広がれば・・・」
「事前に勧告はした。出来うる限りの手は尽くしているよ」
「!」
そう言われ、あの東京駅の垂れ幕がダリウス達がやったのだと梓も気付く
「・・・・」
覚悟は決まっている、だけど梓の迷いはリアも思っていた事だった
事前に勧告はし、この辺りの住民が避難した事はリアも店で聞いていたし、一緒に働いてる人達も一時的に実家や他の場所に避難している事を知っていた
そう思っていた時だった
途端、扉が開き銃声の音が部屋に響き渡った
続く
あとがき
さて、大団円ルートはもう帝都の闇の真実に一足早く辿り着きましたねw
・・うん、ほんと、これは衝撃的だよね・・・ゲームやってほんと驚いたもん・・・
梓に真実を話していよいよ・・・って所で続きましたが、いよいよ本当に佳境です!
この後は各ルートによってEDが違うのでそこも楽しんでもらえたらなと思っています!
では、次回もお楽しみに!
せ、戦闘シーン、が、頑張って書きまーす(^_^;)
2015.08.04