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「政虎さん、ずるいよー」
「うるせえな・・・」
休日の昼下がり、邸の居間でコハクと虎のその声が響いていた
「おれもリアさんに膝枕されたいー」
「残念だったなぁ。リアの膝はオレの特等席なんだよ。なあ」
「・・・ι」
言うと虎はリアに同意を求めるように言うも目の前にいるコハクを見てどう答えたら良いのかと迷っていた
リアはソファに座って買い出しに行く物がないか調べていた所だった
そんな時に虎がやってきてリアの膝に頭を置いて寝ようとしているとそれを見たコハクが羨ましいと言って寄ってきたのだった
「・・じゃあ、膝枕が無理なら、おれはこうするもん」
「っ、コ、コハクくん///」
言ってコハクはリアに抱きついた
「えへへっ、やっぱりリアさんは温かいなぁ」
「・・おい小僧・・離れろ」
「政虎さんこそ・・・」
「あ、あの、二人とも・・・ι」
少し険悪になり始めた二人を見てリアはそう声を掛けるも二人は睨み合ったままだった
「虎、コハク、何をしているのかな?」
そして次に聞こえてきたのはダリウスの声だった
「っ・・・!」
だが、顔は笑ってはいるものの、その後ろに何か黒いものが見えた
「二人とも、リアから離れなさい」
その笑みが怖くコハクはビクリと肩を振るわせ、リアも虎も冷や汗をかいていた
「・・・はあ、貴方達は何をやっているんですか」
盛大な溜息が聞こえたと思ったらルードがやって来た
「リアさん、確認は終わりましたか」
「あ、うん。後はメモをしたら終わりかな」
「では終わり次第出掛けましょう。虎、コハク、いい加減リアさんから離れて下さい」
流石にルードとダリウスが相手だと分が悪いと思ったのか二人とも渋々リアから離れた
「さて、邪魔者も退きましたし、リアさん、そろそろ行きましょうか」
「え? 行くって何処に?」
「買い出しですよ」
「なら、おれも」
「駄目です。虎やコハクが着ては余計な物を買いかねません。ではダリウス様、行って参ります」
「あ、ルードくん、待って。じゃあ、私も行ってきます」
さっさと玄関の方へ向かって行くルードを見てリアもメモを持って追い掛けて行った
「・・行っちゃった」
「チッ・・、ルードの奴・・・」
「ルードにしてやられてたね」
その場に残った面々はルードにリアを連れて行かれた事にそう言っていたのだった
33.頼りがいのある君、温かな貴女
「ルードくん、ありがとう。助かったよ」
蠱惑の森の中を歩きながらリアは先程の光景から助けてくれたルードに感謝してお礼を言っていた
「構いませんよ。ただ、リアさんも嫌なら嫌とはっきり言わないと虎やコハクは調子に乗りますよ」
嫌と言う訳ではないけれども・・・と思うもそう言ってしまうと何か変な誤解を生みそうな気がしたのでそれは言わずにいた
だが、どことなくだがルードの言葉に少し棘を感じていた
「・・・ルードくん、もしかして、・・拗ねてる?」
「なっ―― ///」
ぽつりと言った言葉にルードは顔を赤くして立ち止まってしまった
・・・どうやら図星だったようだ
普段は自分より頼りがいのあるしっかりとした子だが、こう言う所は年相応の反応を見せつい小さく笑ってしまう
「・・っ、そこで、笑わないでもらえますか///」
「ふふっ、ごめん。でも、ルードくんもそんな風に思うんだなって思って」
「・・・・っ」
先程のコハクや虎のような事はルードはしないが、羨ましいと思うのかと思いリアは優しく微笑んでいた
「は、早く買い出しに行きましょう。夕食の支度に間に合わなくなりますよ」
「うん、そうだね」
軽く咳払いをしてルードはまだ頬を染めたままそう言って先に歩き出し、リアもその後に続いた
*
「これで全部かな」
あれからルードと二手に分かれて買い物をしていた
先程自分がメモしたものを確認し買い忘れた物がないかと確認し終えると店の前から歩き出した
「ルードくんと待ち合わせてる時間までもう少しあるから少しだけ雑貨も見ようかな・・・」
「・・・黒龍の神子も、大尉就任か」
「!」
そう聞こえ前を見ると正面から帝国軍が歩いて来るのが見え
「強兵も・・・」
「ああ、・・・病院に」
「!」
気配を消して横をすれ違おうとしたが、その言葉を聞き思わず足を止め振り返ってしまう
(強兵・・? それに、病院って・・・)
その事を知っているのは軍の上層部の人間、つまり彼等は高官だろう
男達は角で別れ一人は病院の方へと向かい出し、気付かれないよう気配を消してその後を追った
高官の後を追うと麻布記念病院の裏口の方へ向かって行き、リアは近くの茂みに身を潜めその様子を伺っていると病院の医師や看護婦が出て来て高官が合図すると担架に乗せられて人が運ばれてきた
「!」
だが、それは憑闇と化した軍人だった
(・・・帝国軍は、まだ強兵を生み出しているの・・・)
ダリウス達と共に色々と調査をして、コハクの記憶が手掛かりでリア達の目的の真実に近付き始めていた
だが、帝国軍はその闇にすら気付いていないのか、自分達の目的を成す為に未だに強兵を生み出していた
強兵が暴走してしまえば、憑闇と化してしまうのに・・・
その事を思っていると彼等は中へ入って行きリアもその後を追った
彼等が行き着いた先は関係者以外立ち入り禁止となっている部屋で千代が入院している部屋と同じ階だった
そしてある一室へと入って行った
(あそこが憑闇と化した人が入院してる部屋・・・)
「・・・・。っ!」
そう思っていると、急に後ろから腕を掴まれてしまうが、その人物を見て目を瞠った
「ル、ルードくん。どうして、此処に・・?」
人気の少ない所に隠れているから見つかる心配もないが、なるべく小声で話した
「リアさんの後を追って来たんです。・・・何か気になる事でも遭ったんですか」
「うん・・・」
コハクの話を聞いてからずっと気になっていた事があった
「・・・ちょっと確かめたい事があるの」
「確かめたい事、ですか」
ルードの言葉にリアは頷いて強兵達が収容されている部屋を見ると、先程部屋に入って行った高官が出て来て入り口にいる警備の軍人に何か伝えた後高官は去って行った
「・・・・」
確かめたい事がある、だが此処で騒ぎを起こす訳にもいかない
「・・・・リアさん、行きますよ」
「え? ・・!」
ルードに呼ばれたと思っていると先程の廊下の物陰から薄暗い病室の中へ移動していた
「少しの間なら感づかれる事もないでしょう」
「・・・ルードくん・・」
ルードの空間移動によって病室に入る事は出来た
リアは一瞬何かを思った顔をしたがこれで確認しておきたかった事は出来るのでルードの言葉に頷いた
だが、病室の中は予想していたよりも遙かに大人数が収容されていた
「・・・ううっ・・・ぐあああ・・・」
「ああっ・・・・・・」
そして、彼等はずっと呻き声を上げていた
その光景に思わず息を詰めてしまうも近くにいた男が体制を変える為に動いた時にリアが確認しておきたかったものは見えた
「っ! やっぱり・・」
「この痣はコハクと同じ・・・」
彼等強兵の首の後ろには、コハクと同じ、花のような痣があったのだ
「・・・やはり、これは・・」
ルードもコハクの話を思い出し、この痣を見て何かを確信したようだった
「っ!」(っ、この気配って!)
途端、瘴気が集まり怨霊が現れた
「っ、間の悪い・・・」
「こっちにも・・・、っ!」
そう思っていると、急に手首を掴まれ振り返ると横になっている強兵がリアの手首を掴んでいた
「っ、リアさん!」
横になっている強兵とは言え、やはり力はあるようで、身動きが取れなかった
だが、もう片方の手が空いていて何とかナイフを扱う事が出来るので怨霊を倒す事は出来る
それを見たルードは自分の周りに集まっている怨霊を倒し始めリアも怨霊を倒し始めた
無事に自分の周りの怨霊を倒し終えたが、強兵は一向にリアの手を離す気配はない
「っ・・。いい加減・・放して・・・」
「なんだ、何の騒ぎだ!」
だが物音を聞きつけたのか外で見張りをしていた軍人が気付き中へ入ろうとしているのが見えた
「っ・・・!」
見つかると思っていると急に視界が暗くなり、そして手を掴まれていた感覚もなくなったかと思ったら次に聞こえてきたのは鳥や虫の鳴き声だった
「・・・大丈夫、ですか・・・」
「ルード、くん・・・?」
顔を上げるとルードに抱きしめられていて、辺りを見るとどうやら愛宕山まで空間移動してきたようだった
「・・手首、赤くなっていますね。・・痛みますか?」
「うん・・・でも、ルードくんが助けてくれたから冷やせば支障は無いと思う」
利き手を掴まれてしまっていたし、強兵の力は尋常ではないから心配ではあったがリアの言葉を聞いてルードも安堵したようだった
「そうですか・・。―― っ・・・う・・・」
「! ルードくん!」
途端、ルードは苦しそうな声を上げた
「・・ごめん、無理させちゃったよね・・・」
「・・大丈夫・・です。そんなに、気にしないで下さい」
「気にするよ。私の所為でルードくんに苦しい思いをさせちゃってるんだから・・・」
言うとリアはルードを支えるようにする
元々鬼の首領はルードが後継するはずだったが、ルードは鬼の能力に恵まれていなかった
数年前まではルードも今みたいに鬼なら使えるはずの術の数々を扱う事が出来なかった
だが、ダリウスと出会って鬼の首領の座に就くと言う重荷から解放されてからは今まで以上に術を扱えるようになり、結界術は一族の中で右に出るものはなし、と言う程得意になったのだが、空間移動だけは未だに不得手だった
空間移動は想像力を要する為か使った後は今のように酷く疲弊してしまい、激しい頭痛にさいなまれるそうだ
だからダリウスもリアも極力ルードに空間移動を使わせようとしていなかった
「ルードくん」
「っ・・!」
言うとリアはそのままルードの背中に腕を回し優しく包み込んだ
「助けてくれて、本当にありがとう。・・だから、今度は私が助ける番。ルードくんが楽になるまでずっとこうしてる」
「っ・・・。貴女の帰りが遅くなっては、ダリウス様が心配します」
「私一人だけ帰ってもルードくんがいなかったら心配するよ。それに、ルードくんを放って帰れる訳ないよ。・・って、こんな会話、前にもしたよね」
「・・・・、そうですね」
その言葉にルードもあの時の事を思い出す
あの時はルードがリアを助けたが今は自分がリアに助けられてるように思い、リアの優しさに感謝して目を閉じ
「・・・解りました。では、暫くの間、こうさせていて下さい」
「うん・・・」
色々な気持ちが混ざり合う中、それでもリアの温もりを感じ嬉しそうな顔をして身を委ねた
*
「っ・・・」
「あ、ルードくん、起きた?」
「・・リア・・さん・・・? っ!///」
ルードが目を覚ますとリアの顔が上にあった
「あの後暫くしてルードくん眠っちゃったから寝にくいと思ってこうしてたんだけど・・」
つまり、ルードは今リアに膝枕されている状態だった
「っ―――///」
その状態が恥ずかしかったのかルードは頬を染め体を起こした
「もう起き上がっても平気?」
「はい。・・その、ありがとう・・御座いました。それよりリアさんの方は大丈夫ですか」
「うん、術を掛けたら痛みは引いたから。ちょっと赤みは残っちゃってるけどね」
「・・・すみません。帰ったら直ぐに治療しますので。・・・随分と時間が経ってしまったようですね。そろそろ帰りましょう」
「うん、そうだね。みんなお腹空かせちゃってるだろうしね」
言うとルードもリアも荷物を持って立ち上がって愛宕山を下ろうとしていると、
「もう暗いですし、足下に気を付けて下さい」
そう言ってルードはリアの手を握った
「え・・・」
「・・転んで怪我でもされたら、困りますので」
「うん、ありがとう」
ルードの行動に驚きもしたが、その優しさに感謝して微笑んで握り返した
そしてルードはリアが握り返した手から伝わる温かさを感じ、
いつまでも、貴女のその温かな優しさに触れていたい ――
と思っていたのだった
続く
あとがき
ほっ、やっと完成した!!
ずっと此処もどう書こうか悩んだ所だったので
ルードくんの力の事、書かなきゃと思いつつなかなか良い案が浮かばなくてやっと書き上げましたよ!
そして最初の方はなんかもう皆さん好き放題やってるよねw
抱きつき、膝枕、嫉妬の黒笑み←w
ルードくんはそれプラスで手繋いでるしねw← ある意味一番美味しいなww
でも今回はちゃんとルードくんの色々な面も見れたし、それにリアちゃんが知りたかった事も知れたから良かったのかなw
さて、本編で気になるワードが出てきましたが、それは次回から関わってくる所なのでお楽しみに!
では、また次回
2015.07.04
「うるせえな・・・」
休日の昼下がり、邸の居間でコハクと虎のその声が響いていた
「おれもリアさんに膝枕されたいー」
「残念だったなぁ。リアの膝はオレの特等席なんだよ。なあ」
「・・・ι」
言うと虎はリアに同意を求めるように言うも目の前にいるコハクを見てどう答えたら良いのかと迷っていた
リアはソファに座って買い出しに行く物がないか調べていた所だった
そんな時に虎がやってきてリアの膝に頭を置いて寝ようとしているとそれを見たコハクが羨ましいと言って寄ってきたのだった
「・・じゃあ、膝枕が無理なら、おれはこうするもん」
「っ、コ、コハクくん///」
言ってコハクはリアに抱きついた
「えへへっ、やっぱりリアさんは温かいなぁ」
「・・おい小僧・・離れろ」
「政虎さんこそ・・・」
「あ、あの、二人とも・・・ι」
少し険悪になり始めた二人を見てリアはそう声を掛けるも二人は睨み合ったままだった
「虎、コハク、何をしているのかな?」
そして次に聞こえてきたのはダリウスの声だった
「っ・・・!」
だが、顔は笑ってはいるものの、その後ろに何か黒いものが見えた
「二人とも、リアから離れなさい」
その笑みが怖くコハクはビクリと肩を振るわせ、リアも虎も冷や汗をかいていた
「・・・はあ、貴方達は何をやっているんですか」
盛大な溜息が聞こえたと思ったらルードがやって来た
「リアさん、確認は終わりましたか」
「あ、うん。後はメモをしたら終わりかな」
「では終わり次第出掛けましょう。虎、コハク、いい加減リアさんから離れて下さい」
流石にルードとダリウスが相手だと分が悪いと思ったのか二人とも渋々リアから離れた
「さて、邪魔者も退きましたし、リアさん、そろそろ行きましょうか」
「え? 行くって何処に?」
「買い出しですよ」
「なら、おれも」
「駄目です。虎やコハクが着ては余計な物を買いかねません。ではダリウス様、行って参ります」
「あ、ルードくん、待って。じゃあ、私も行ってきます」
さっさと玄関の方へ向かって行くルードを見てリアもメモを持って追い掛けて行った
「・・行っちゃった」
「チッ・・、ルードの奴・・・」
「ルードにしてやられてたね」
その場に残った面々はルードにリアを連れて行かれた事にそう言っていたのだった
33.頼りがいのある君、温かな貴女
「ルードくん、ありがとう。助かったよ」
蠱惑の森の中を歩きながらリアは先程の光景から助けてくれたルードに感謝してお礼を言っていた
「構いませんよ。ただ、リアさんも嫌なら嫌とはっきり言わないと虎やコハクは調子に乗りますよ」
嫌と言う訳ではないけれども・・・と思うもそう言ってしまうと何か変な誤解を生みそうな気がしたのでそれは言わずにいた
だが、どことなくだがルードの言葉に少し棘を感じていた
「・・・ルードくん、もしかして、・・拗ねてる?」
「なっ―― ///」
ぽつりと言った言葉にルードは顔を赤くして立ち止まってしまった
・・・どうやら図星だったようだ
普段は自分より頼りがいのあるしっかりとした子だが、こう言う所は年相応の反応を見せつい小さく笑ってしまう
「・・っ、そこで、笑わないでもらえますか///」
「ふふっ、ごめん。でも、ルードくんもそんな風に思うんだなって思って」
「・・・・っ」
先程のコハクや虎のような事はルードはしないが、羨ましいと思うのかと思いリアは優しく微笑んでいた
「は、早く買い出しに行きましょう。夕食の支度に間に合わなくなりますよ」
「うん、そうだね」
軽く咳払いをしてルードはまだ頬を染めたままそう言って先に歩き出し、リアもその後に続いた
*
「これで全部かな」
あれからルードと二手に分かれて買い物をしていた
先程自分がメモしたものを確認し買い忘れた物がないかと確認し終えると店の前から歩き出した
「ルードくんと待ち合わせてる時間までもう少しあるから少しだけ雑貨も見ようかな・・・」
「・・・黒龍の神子も、大尉就任か」
「!」
そう聞こえ前を見ると正面から帝国軍が歩いて来るのが見え
「強兵も・・・」
「ああ、・・・病院に」
「!」
気配を消して横をすれ違おうとしたが、その言葉を聞き思わず足を止め振り返ってしまう
(強兵・・? それに、病院って・・・)
その事を知っているのは軍の上層部の人間、つまり彼等は高官だろう
男達は角で別れ一人は病院の方へと向かい出し、気付かれないよう気配を消してその後を追った
高官の後を追うと麻布記念病院の裏口の方へ向かって行き、リアは近くの茂みに身を潜めその様子を伺っていると病院の医師や看護婦が出て来て高官が合図すると担架に乗せられて人が運ばれてきた
「!」
だが、それは憑闇と化した軍人だった
(・・・帝国軍は、まだ強兵を生み出しているの・・・)
ダリウス達と共に色々と調査をして、コハクの記憶が手掛かりでリア達の目的の真実に近付き始めていた
だが、帝国軍はその闇にすら気付いていないのか、自分達の目的を成す為に未だに強兵を生み出していた
強兵が暴走してしまえば、憑闇と化してしまうのに・・・
その事を思っていると彼等は中へ入って行きリアもその後を追った
彼等が行き着いた先は関係者以外立ち入り禁止となっている部屋で千代が入院している部屋と同じ階だった
そしてある一室へと入って行った
(あそこが憑闇と化した人が入院してる部屋・・・)
「・・・・。っ!」
そう思っていると、急に後ろから腕を掴まれてしまうが、その人物を見て目を瞠った
「ル、ルードくん。どうして、此処に・・?」
人気の少ない所に隠れているから見つかる心配もないが、なるべく小声で話した
「リアさんの後を追って来たんです。・・・何か気になる事でも遭ったんですか」
「うん・・・」
コハクの話を聞いてからずっと気になっていた事があった
「・・・ちょっと確かめたい事があるの」
「確かめたい事、ですか」
ルードの言葉にリアは頷いて強兵達が収容されている部屋を見ると、先程部屋に入って行った高官が出て来て入り口にいる警備の軍人に何か伝えた後高官は去って行った
「・・・・」
確かめたい事がある、だが此処で騒ぎを起こす訳にもいかない
「・・・・リアさん、行きますよ」
「え? ・・!」
ルードに呼ばれたと思っていると先程の廊下の物陰から薄暗い病室の中へ移動していた
「少しの間なら感づかれる事もないでしょう」
「・・・ルードくん・・」
ルードの空間移動によって病室に入る事は出来た
リアは一瞬何かを思った顔をしたがこれで確認しておきたかった事は出来るのでルードの言葉に頷いた
だが、病室の中は予想していたよりも遙かに大人数が収容されていた
「・・・ううっ・・・ぐあああ・・・」
「ああっ・・・・・・」
そして、彼等はずっと呻き声を上げていた
その光景に思わず息を詰めてしまうも近くにいた男が体制を変える為に動いた時にリアが確認しておきたかったものは見えた
「っ! やっぱり・・」
「この痣はコハクと同じ・・・」
彼等強兵の首の後ろには、コハクと同じ、花のような痣があったのだ
「・・・やはり、これは・・」
ルードもコハクの話を思い出し、この痣を見て何かを確信したようだった
「っ!」(っ、この気配って!)
途端、瘴気が集まり怨霊が現れた
「っ、間の悪い・・・」
「こっちにも・・・、っ!」
そう思っていると、急に手首を掴まれ振り返ると横になっている強兵がリアの手首を掴んでいた
「っ、リアさん!」
横になっている強兵とは言え、やはり力はあるようで、身動きが取れなかった
だが、もう片方の手が空いていて何とかナイフを扱う事が出来るので怨霊を倒す事は出来る
それを見たルードは自分の周りに集まっている怨霊を倒し始めリアも怨霊を倒し始めた
無事に自分の周りの怨霊を倒し終えたが、強兵は一向にリアの手を離す気配はない
「っ・・。いい加減・・放して・・・」
「なんだ、何の騒ぎだ!」
だが物音を聞きつけたのか外で見張りをしていた軍人が気付き中へ入ろうとしているのが見えた
「っ・・・!」
見つかると思っていると急に視界が暗くなり、そして手を掴まれていた感覚もなくなったかと思ったら次に聞こえてきたのは鳥や虫の鳴き声だった
「・・・大丈夫、ですか・・・」
「ルード、くん・・・?」
顔を上げるとルードに抱きしめられていて、辺りを見るとどうやら愛宕山まで空間移動してきたようだった
「・・手首、赤くなっていますね。・・痛みますか?」
「うん・・・でも、ルードくんが助けてくれたから冷やせば支障は無いと思う」
利き手を掴まれてしまっていたし、強兵の力は尋常ではないから心配ではあったがリアの言葉を聞いてルードも安堵したようだった
「そうですか・・。―― っ・・・う・・・」
「! ルードくん!」
途端、ルードは苦しそうな声を上げた
「・・ごめん、無理させちゃったよね・・・」
「・・大丈夫・・です。そんなに、気にしないで下さい」
「気にするよ。私の所為でルードくんに苦しい思いをさせちゃってるんだから・・・」
言うとリアはルードを支えるようにする
元々鬼の首領はルードが後継するはずだったが、ルードは鬼の能力に恵まれていなかった
数年前まではルードも今みたいに鬼なら使えるはずの術の数々を扱う事が出来なかった
だが、ダリウスと出会って鬼の首領の座に就くと言う重荷から解放されてからは今まで以上に術を扱えるようになり、結界術は一族の中で右に出るものはなし、と言う程得意になったのだが、空間移動だけは未だに不得手だった
空間移動は想像力を要する為か使った後は今のように酷く疲弊してしまい、激しい頭痛にさいなまれるそうだ
だからダリウスもリアも極力ルードに空間移動を使わせようとしていなかった
「ルードくん」
「っ・・!」
言うとリアはそのままルードの背中に腕を回し優しく包み込んだ
「助けてくれて、本当にありがとう。・・だから、今度は私が助ける番。ルードくんが楽になるまでずっとこうしてる」
「っ・・・。貴女の帰りが遅くなっては、ダリウス様が心配します」
「私一人だけ帰ってもルードくんがいなかったら心配するよ。それに、ルードくんを放って帰れる訳ないよ。・・って、こんな会話、前にもしたよね」
「・・・・、そうですね」
その言葉にルードもあの時の事を思い出す
あの時はルードがリアを助けたが今は自分がリアに助けられてるように思い、リアの優しさに感謝して目を閉じ
「・・・解りました。では、暫くの間、こうさせていて下さい」
「うん・・・」
色々な気持ちが混ざり合う中、それでもリアの温もりを感じ嬉しそうな顔をして身を委ねた
*
「っ・・・」
「あ、ルードくん、起きた?」
「・・リア・・さん・・・? っ!///」
ルードが目を覚ますとリアの顔が上にあった
「あの後暫くしてルードくん眠っちゃったから寝にくいと思ってこうしてたんだけど・・」
つまり、ルードは今リアに膝枕されている状態だった
「っ―――///」
その状態が恥ずかしかったのかルードは頬を染め体を起こした
「もう起き上がっても平気?」
「はい。・・その、ありがとう・・御座いました。それよりリアさんの方は大丈夫ですか」
「うん、術を掛けたら痛みは引いたから。ちょっと赤みは残っちゃってるけどね」
「・・・すみません。帰ったら直ぐに治療しますので。・・・随分と時間が経ってしまったようですね。そろそろ帰りましょう」
「うん、そうだね。みんなお腹空かせちゃってるだろうしね」
言うとルードもリアも荷物を持って立ち上がって愛宕山を下ろうとしていると、
「もう暗いですし、足下に気を付けて下さい」
そう言ってルードはリアの手を握った
「え・・・」
「・・転んで怪我でもされたら、困りますので」
「うん、ありがとう」
ルードの行動に驚きもしたが、その優しさに感謝して微笑んで握り返した
そしてルードはリアが握り返した手から伝わる温かさを感じ、
いつまでも、貴女のその温かな優しさに触れていたい ――
と思っていたのだった
続く
あとがき
ほっ、やっと完成した!!
ずっと此処もどう書こうか悩んだ所だったので
ルードくんの力の事、書かなきゃと思いつつなかなか良い案が浮かばなくてやっと書き上げましたよ!
そして最初の方はなんかもう皆さん好き放題やってるよねw
抱きつき、膝枕、嫉妬の黒笑み←w
ルードくんはそれプラスで手繋いでるしねw← ある意味一番美味しいなww
でも今回はちゃんとルードくんの色々な面も見れたし、それにリアちゃんが知りたかった事も知れたから良かったのかなw
さて、本編で気になるワードが出てきましたが、それは次回から関わってくる所なのでお楽しみに!
では、また次回
2015.07.04