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邸に戻ると既にダリウスとルードが戻って来ていた
虎はそのままコハクを部屋へと連れて行き、リアはダリウスとルードの元へ行く
「コハクは・・・」
「大丈夫、気を失ってるだけ。・・・」
そこで言葉を切りリアは少しだけ怠そうにしているダリウスへと目を向ける
「ダリウスさん、大丈夫ですか・・? 顔色が悪いみたいですけど・・・」
「大丈夫。・・ちょっと仮面の力を使って、疲れているだけだよ」
「「・・・・」」
その言葉にリアだけでなくルードも心配の色を見せていた
ダリウスの言う仮面、それは鬼の一族に伝わるものだが、その力は強力なもので扱う事が難しく代々の鬼の首領となったもののみ扱う事が出来るものだった
だが、長年の間力を持っているからこそ、いつかその強力な力に飲み込まれてしまうのではないか、と言う恐怖をリアもルードも覚えていた
それは多分ダリウスも同じであろうが・・・
「そんなに心配そうな顔をしなくても少し休めば大丈夫だよ。それよりリアは怪我してない」
「はい。私も政虎さんもコハクくんも怪我はしてないです」
「なら良かった。特にリアに怪我をされたらみんな心配してしまうからね」
その言葉に以前怪我をしてしまった時にダリウスやルードに凄く心配されてしまった事を思い出した
そう思っていると階段を降りて来る音が聞こえ虎がリア達のところにきた
「虎、コハクの様子は」
「ひとまずはベッドに寝かせてきたが、・・・帰って来る時と変わらず何かに怯えたような感じでうなされてるぜ」
「・・・・」
此処に戻って来る間、コハクは何かに怯えたようにうなされていた
それは、きっと――
「なら、俺達はお互いに遭った事を話そうか」
言うと皆それぞれソファに腰掛け、お互いに遭った事を話した
28.記憶と真実
「・・・それでコハクくんは気を失ってしまって」
まず先にリアと虎が自分達の出来事を話した
「・・・あの小僧、記憶が突然溢れたって感じだったぜ。これも、ダリウスお前の狙い通りか?」
虎もコハクの様子を見て薄々そう思っていたようだった
「まあ、ね。コハクを強兵に会わせればもしかしたら・・・と思っていた」
「だからリアがオレ達と残ってたって事か」
「はい。コハクくんに何か遭った時直ぐに駆け付けられるように、とダリウスさんに言われていましたから」
リアが強い事は虎も知っているが、普段ならこんな危険な事にリアを付き合わせないのにと思っていたがこれで納得がいったようだった
「・・・コハクの記憶は今後、重要な手掛かりになってくれるだろう。既に帝国軍の隠し玉・・・強兵師団については有益な情報が得られた」
ダリウスとルードはあの後、強兵団長から強兵が生まれた場所を聞き出せたがやはり一筋縄ではいかないようだった
「ただ、拠点が凌雲閣だと言う事は明らかになりましたが、四神の結界と言うのは厄介ですね」
「四神まで関わっているんですか?」
まさか此処で四神まで関わっているとはリアも思っていなかった
「ああ。虎、村雨と協力して四神についての情報を集めなさい」
「・・・はあ?」
「ルードと俺は襲撃の計画を練らなければならないからね。君は元々、足を使う係だ。文句は言えないはずだよ」
「文句って言うより・・・四神ってのは、聖獣だよな。オレや情報屋が駆けずり回った所で簡単に探れるとは思わねえ。・・・こういう気やら、なんやら探るのが得意な女がいただろう」
「つまり、梓さんを頼れと?」
「その方が手っ取り早い」
「・・・あの子は駄目だ。まだ時機ではないよ。帝国軍の護衛が離れない。出来る限り、俺達だけで事を進めよう。良いね?」
「解ったよ・・・で、こいつはどうするんだ?」
「リアにはコハクに付いていてもらうよ。コハクが目覚めた時に一人だと不安になるだろう」
虎はリアを見てそう言い、ダリウスの言葉にリアもはい、と頷いていた
実際にコハクの事は気になっていた
ダリウスに記憶の手掛かりになるかもしれないと言われていたのもあるが、ずっとうなされて夢の中で怯え続けているのだから誰か一人でも側にいれば安心出来るだろう
だが、それとは別にずっと気に掛かっていた事があった
「あの、・・」
リアのその言葉に一斉に視線が集まる
「どうかしましたか?」
「・・・強兵と戦ってる時に感じた事があるんですけど」
「感じた事?」
「・・・微かになんですけど、あの感じを前に何処かで感じた事があったんです・・」
強兵達と戦うのは今回が初めてだ
だが、リアが言っているのはそう言う意味ではない
リアもどう言って良いのか解らないが強兵から微かに感じたもの、あれは何処かで感じていた
「・・・! ・・あの時だ」
「え?」
そう思っていた時、リアもその微かに感じたものの正体を思い出した
「ルードくんに助けて貰った時、凌雲閣の裏通りで感じたあの嫌な感じと一緒だったの」
「!」
その言葉にダリウス達は目を瞠った
「・・・リア、その時の事をもう一度話してもらえる?」
「はい」
今ので何か思い当たる事が遭ったのかダリウスの言葉にリアは頷いてあの時の出来事を話し出した
*
デモが起きてから2日が経った
あのデモの後、各所で起きていた事態は治まった
村雨達結実なき花はマスターを始め半数の人が捕縛されてしまったが、村雨と共に逃げた人達は無事で今は帝国軍に見つからないよう各々身を隠していた
街で起きていた二次災害も無事とまではいかないが、こちらも収拾がついたようだった
だが、今回の出来事、そして強兵師団を見て民衆もそして梓達や有馬達精鋭分隊や一部の帝国軍人も違和感を感じたり、不審を抱き始めていた
その矢先、白龍の神子である千代が何者かに襲われ病院に運ばれ入院したと言う知らせも入ってきた
徐々に帝都が嫌な方向へと進み始めている
ダリウスとルードと虎はあの時話した通りの行動に移っていて、リアも朝からずっとコハクに付きっきりだった
ずっとうなされていて見ているだけでも辛いが一番辛いのはコハクだ
それでも少しでも落ち着けたらと思いコハクの手を握っていた
(・・・コハクくん、千代ちゃん・・・)
今一番辛い状況の二人の事を思っていると扉をノックする音が聞こえ返事を返すとダリウスが入って来た
「コハクの様子はどう?」
「・・・まだうなされています」
「そう・・・」
ダリウスも心配そうな顔してコハクを見た後、ある事を思い出しリアを見る
「そう言えば、昼食を食べていなかったね」
「・・すみません。ずっとコハクくんに付きっきりだったので忘れていました・・・」
朝からずっとコハクの側に居たので今の今までその事に気が回っていなかったし既に夜になっていた事にも気が付いていなかった
「食べないと体を壊してしまうよ」
「そうですね・・・でも・・」
記憶が溢れてきた時のコハクを見ていたし、何よりあの時感じたものとコハクが言っていた言葉と強兵の事、色々と気になって動けずにいた
「ん・・・」
「! コハクくん!」
そう話しているとコハクの声が聞こえ微かに瞼が動き徐々に目を開けた
「目が覚めたかい?」
「あ、ダリウス、さん・・・? それに、リア、さん・・・?」
二人の姿を確認しながらコハクはゆっくりと体を起こし始めリアも支えて起こしてあげた
「良かった。心配していたよ。君はもう丸2日も寝ていたんだから」
「2日も? おれは・・・」
「2日前、参謀本部で暴動が起きた時、君は強兵と戦って倒れたんだ」
「ずっとうなされていたけど・・・大丈夫? 怖い夢でも見てた?」
「夢・・・?」
その言葉に何か思い当たったのかコハクは少し震えだした
「あ、ああっ・・・!!」
「コハク?」
「・・・傷!? 夢で出てきた傷が、オレの左腕に・・・!!」
「え・・・?」
「まさか、そんな・・・あの禍々しい力も、残酷な訓練も本当に遭った事なのか? 嘘だ、そんな事あるはずない・・・!」
「コハクくん、大丈夫、落ちついて・・」
取り乱したコハクを見て落ちつかせるようにリアが優しく背中をさすってあげる
「ふうん・・・」
コハクのその様子を見てダリウスはある確信に辿り着く
「その反応・・・やっぱりだ。君は、帝国軍の強兵計画に関与させられていたんだね?」
「! やっぱり・・・って?」
「ごめんね、コハク。君を暴動へ連れて行ったのは正直、期待していたからなんだ。強兵と戦えば、君が記憶を取り戻すんじゃないかって」
「え・・・?」
「村雨達が暴動を起こしたのは俺の手回しがあったからだ。参謀本部を攻撃されればきっと帝国軍はここぞとばかりに強兵を仕向けると思っていた。現に俺とルードは強兵師団の団長と接触して、計画の本拠地を突き止められたしね」
「・・・ダリウスさん、貴方は何を知っているの?」
「俺は、帝国軍について人より少し詳しいだけだ。今は、君の記憶こそより真実に近いと思うよ」
「真実? あれが本当に遭った事だって・・・?」
「・・・辛いかもしれないけど、ゆっくりでも良いから話してほしいの。コハクくんの事も知りたいし、帝国軍が何をしたのかも知りたいから」
「リアさん・・・。・・うん」
リアの強い眼差しを受けてコハクも頷き少しずつゆっくりと話し始めた
コハクは病に冒された身体を引き摺って母親の病を治す為の薬の資金を得る為に須崎を出たが思っていたよりも病が酷く途中で力尽きて倒れてしまったようだった
だが、そこで見世で何度か見かけた事のある帝国軍の高官達が自分の前を歩いているのを見かけ彼等なら話しを聞いて貰えると思い残っている力を振り絞って一人の脚を掴んで必死に訴えたが聞く耳を持たず手を離せと言って蹴られてしまうがコハクは諦める事なくその手を離さなかった
そしてもう一人の高官がコハクの生命力を見て、「・・・いっそ、そいつを訓練に連れて行くか?」と口にした
コハクに脚を掴まれている高官はその言葉に疑問を持つも、その後の言葉を聞き納得したようだった
特殊訓練の志願者が足りず民間からも徴兵されている為、死に損ないと判断されたコハクを連れ去っても構わないと
彼等はそう判断しそのままコハクを引き摺って行き、コハクは荷馬車に放り込まれそのまま何処かへ連れて行かれた
コハクが気が付いた時には部屋に花の甘く痺れるような香りがし、周りには沢山の若い軍人がいた
自分達の前に教官がやって来て皆敬礼をしてそれが終わると教官が話しを始める
「これより、特殊訓練を開始する! 諸君等には神の加護が与えられ強兵へと生まれ変わるのだ」
「はっ・・・!」
「諸君等は、選ばれた人間だ! 必ずこの辛い訓練を乗り越え最強の強兵になれる。勝利が為、我が帝国の権威を他国へ示す魁けとなれ!」
コハクは高官が何を言っているのか理解出来ていなかった
その間に高官は訓練開始!と指示を出していたが、一人の若い軍人が教官に質問をしていた
その内容はこの訓練が極秘である理由と肉親にも報告出来ないのかと言う事だった
だが、教官は知った事ではないと言う様に鼻で笑うように言ってさっさと部屋を出て行ってしまい、周りは異様な雰囲気に包まれた
途端、水の中から何かが上がる音と異質な声が聞こえたと思うと急に部屋の中が先程よりも寒くなり足下に何かがまとわりついて力が抜けていくのを感じた・・・
『ヨコセ・・・貴様ラノ・・・力・・・・』
「うわっ、あ、頭が割れる・・・!!」
また異質な恐ろしい声が聞こえたと思ったら次々に周りの若い軍人達は頭や胸を押さえて倒れていく
「(これが訓練? 神の加護だって? 嘘だ、こんなのは・・・!)う、うう・・・っ、あああアアアアアアアア・・・っ!!!!」
コハクも段々と足下にまとわりついていたものがどんどんと迫ってきているのを感じた途端力が抜け目の前が深い暗闇に覆われたまま気絶してしまった
―――
「・・・目が覚めたら、おれはすべてを忘れていた。周りの兵士達は我を失ったまま暴徒と化して外へ出て行って・・・おれもそれに流されるように小石川まで走って行ったんだ」
「そして、俺達と出会ったんだね」
思い出した事を話したコハクは目覚めた頃より落ちついてはいたがまだ顔色が優れなかった
「しかし、酷い話だ。強兵の特殊訓練だなんて偽って・・・」
「・・・・」
ダリウスの言葉にリアもコハクも頷き、コハクはゆっくりと口を開く
「全てが、大嘘だったんだ。あれは、神の加護を授けるものじゃない。もっとおぞましいものだ。人の精神ごと奪って体を変えていったんだから」
「・・・うん。けれど、一つ不思議だね。君は、意志を奪われず記憶を失うだけで済んだ」
「もしかして、コハクくんが疫病に冒されていたから・・?」
「可能性はあるね・・。コハクの体を病が蝕んでいた所為で恐ろしい力も精神の表層にしか及ばなかったのかもしれない」
「・・・だとしたら、おれは本当に運が良かったんだね。でも、他の人は? 強兵から、憑闇になった人はどうなるんだろう?」
「憑闇になった彼等は白龍の神子が浄化しても心が戻らないと聞くよ」
「・・・・」
ダリウスの言葉にコハクは辛そうな顔をした
「信じられないよ。何が憑闇は『原因不明の病』だ。訓練兵達は、若かった。みんな、おれと同じくらいの歳で将来があったんだ。なのに、何も説明がないまま自分の名前も記憶も意志も奪われて・・・何が帝国の―――勝利の為だ? こんなの人間がする事じゃない・・・!!」
そう言ったコハクの声は今まで以上に聞いた事のない怒りを露わにした声だった
「っ、コハクくん・・・」
「!」
言うとリアはそのまま優しくコハクを抱きしめた
「辛かったよね・・・。辛いのに話してくれて、ありがとう」
「・・・リアさん・・」
コハクはリアに抱きしめられいつも以上に温かさを感じたが、リアも辛さを感じていたのか少しだけ手が震えていた
「コハク、俺からも話してくれてありがとう。けれど、今こそ、君は俺達の真の同士になれるだろう」
「っ!?」
「ルード、虎、入っておいで」
ダリウスのその言葉を聞くとコハクは顔を上げダリウスがルードと虎を呼んだのを見てリアもゆっくりとコハクを放しダリウスの隣へ移動する
「ようやく、お呼びだな」
「コハク、温かいお茶ですよ。気分を落ち着けて下さい」
ルードは手に持っていたティーカップをチェストの上に置くとコハクは急に集まった面々を見て少し戸惑っていた
「な、なに? みんな・・・」
「飲みながら、聞くといい。ルード、頼んでおいた事は?」
「強兵計画に関する情報はこちらの資料に纏めてあります」
「では、さっそく説明を。ルード」
「はい―――」
ルードはある資料を手にしダリウスの言葉に頷いて説明を始めた
続く
あとがき
ようやく此処まで辿り着きました
みんな色々と気になる事が出てきてリアちゃんも思い当たる節を言っていたし・・・
そして何よりコハクが記憶を思い出したけども、すげーツラいものだったのでゲームやってた時ほんとに泣きそうだったわ(ノД`)
だけど色々と解った事でこれから色んな動きが見えてくると思います
次回もちょっとシリアス入ってから話は進むと思います(まだ模索中(^_^;))
ではまた次回
2015.07.02
虎はそのままコハクを部屋へと連れて行き、リアはダリウスとルードの元へ行く
「コハクは・・・」
「大丈夫、気を失ってるだけ。・・・」
そこで言葉を切りリアは少しだけ怠そうにしているダリウスへと目を向ける
「ダリウスさん、大丈夫ですか・・? 顔色が悪いみたいですけど・・・」
「大丈夫。・・ちょっと仮面の力を使って、疲れているだけだよ」
「「・・・・」」
その言葉にリアだけでなくルードも心配の色を見せていた
ダリウスの言う仮面、それは鬼の一族に伝わるものだが、その力は強力なもので扱う事が難しく代々の鬼の首領となったもののみ扱う事が出来るものだった
だが、長年の間力を持っているからこそ、いつかその強力な力に飲み込まれてしまうのではないか、と言う恐怖をリアもルードも覚えていた
それは多分ダリウスも同じであろうが・・・
「そんなに心配そうな顔をしなくても少し休めば大丈夫だよ。それよりリアは怪我してない」
「はい。私も政虎さんもコハクくんも怪我はしてないです」
「なら良かった。特にリアに怪我をされたらみんな心配してしまうからね」
その言葉に以前怪我をしてしまった時にダリウスやルードに凄く心配されてしまった事を思い出した
そう思っていると階段を降りて来る音が聞こえ虎がリア達のところにきた
「虎、コハクの様子は」
「ひとまずはベッドに寝かせてきたが、・・・帰って来る時と変わらず何かに怯えたような感じでうなされてるぜ」
「・・・・」
此処に戻って来る間、コハクは何かに怯えたようにうなされていた
それは、きっと――
「なら、俺達はお互いに遭った事を話そうか」
言うと皆それぞれソファに腰掛け、お互いに遭った事を話した
28.記憶と真実
「・・・それでコハクくんは気を失ってしまって」
まず先にリアと虎が自分達の出来事を話した
「・・・あの小僧、記憶が突然溢れたって感じだったぜ。これも、ダリウスお前の狙い通りか?」
虎もコハクの様子を見て薄々そう思っていたようだった
「まあ、ね。コハクを強兵に会わせればもしかしたら・・・と思っていた」
「だからリアがオレ達と残ってたって事か」
「はい。コハクくんに何か遭った時直ぐに駆け付けられるように、とダリウスさんに言われていましたから」
リアが強い事は虎も知っているが、普段ならこんな危険な事にリアを付き合わせないのにと思っていたがこれで納得がいったようだった
「・・・コハクの記憶は今後、重要な手掛かりになってくれるだろう。既に帝国軍の隠し玉・・・強兵師団については有益な情報が得られた」
ダリウスとルードはあの後、強兵団長から強兵が生まれた場所を聞き出せたがやはり一筋縄ではいかないようだった
「ただ、拠点が凌雲閣だと言う事は明らかになりましたが、四神の結界と言うのは厄介ですね」
「四神まで関わっているんですか?」
まさか此処で四神まで関わっているとはリアも思っていなかった
「ああ。虎、村雨と協力して四神についての情報を集めなさい」
「・・・はあ?」
「ルードと俺は襲撃の計画を練らなければならないからね。君は元々、足を使う係だ。文句は言えないはずだよ」
「文句って言うより・・・四神ってのは、聖獣だよな。オレや情報屋が駆けずり回った所で簡単に探れるとは思わねえ。・・・こういう気やら、なんやら探るのが得意な女がいただろう」
「つまり、梓さんを頼れと?」
「その方が手っ取り早い」
「・・・あの子は駄目だ。まだ時機ではないよ。帝国軍の護衛が離れない。出来る限り、俺達だけで事を進めよう。良いね?」
「解ったよ・・・で、こいつはどうするんだ?」
「リアにはコハクに付いていてもらうよ。コハクが目覚めた時に一人だと不安になるだろう」
虎はリアを見てそう言い、ダリウスの言葉にリアもはい、と頷いていた
実際にコハクの事は気になっていた
ダリウスに記憶の手掛かりになるかもしれないと言われていたのもあるが、ずっとうなされて夢の中で怯え続けているのだから誰か一人でも側にいれば安心出来るだろう
だが、それとは別にずっと気に掛かっていた事があった
「あの、・・」
リアのその言葉に一斉に視線が集まる
「どうかしましたか?」
「・・・強兵と戦ってる時に感じた事があるんですけど」
「感じた事?」
「・・・微かになんですけど、あの感じを前に何処かで感じた事があったんです・・」
強兵達と戦うのは今回が初めてだ
だが、リアが言っているのはそう言う意味ではない
リアもどう言って良いのか解らないが強兵から微かに感じたもの、あれは何処かで感じていた
「・・・! ・・あの時だ」
「え?」
そう思っていた時、リアもその微かに感じたものの正体を思い出した
「ルードくんに助けて貰った時、凌雲閣の裏通りで感じたあの嫌な感じと一緒だったの」
「!」
その言葉にダリウス達は目を瞠った
「・・・リア、その時の事をもう一度話してもらえる?」
「はい」
今ので何か思い当たる事が遭ったのかダリウスの言葉にリアは頷いてあの時の出来事を話し出した
*
デモが起きてから2日が経った
あのデモの後、各所で起きていた事態は治まった
村雨達結実なき花はマスターを始め半数の人が捕縛されてしまったが、村雨と共に逃げた人達は無事で今は帝国軍に見つからないよう各々身を隠していた
街で起きていた二次災害も無事とまではいかないが、こちらも収拾がついたようだった
だが、今回の出来事、そして強兵師団を見て民衆もそして梓達や有馬達精鋭分隊や一部の帝国軍人も違和感を感じたり、不審を抱き始めていた
その矢先、白龍の神子である千代が何者かに襲われ病院に運ばれ入院したと言う知らせも入ってきた
徐々に帝都が嫌な方向へと進み始めている
ダリウスとルードと虎はあの時話した通りの行動に移っていて、リアも朝からずっとコハクに付きっきりだった
ずっとうなされていて見ているだけでも辛いが一番辛いのはコハクだ
それでも少しでも落ち着けたらと思いコハクの手を握っていた
(・・・コハクくん、千代ちゃん・・・)
今一番辛い状況の二人の事を思っていると扉をノックする音が聞こえ返事を返すとダリウスが入って来た
「コハクの様子はどう?」
「・・・まだうなされています」
「そう・・・」
ダリウスも心配そうな顔してコハクを見た後、ある事を思い出しリアを見る
「そう言えば、昼食を食べていなかったね」
「・・すみません。ずっとコハクくんに付きっきりだったので忘れていました・・・」
朝からずっとコハクの側に居たので今の今までその事に気が回っていなかったし既に夜になっていた事にも気が付いていなかった
「食べないと体を壊してしまうよ」
「そうですね・・・でも・・」
記憶が溢れてきた時のコハクを見ていたし、何よりあの時感じたものとコハクが言っていた言葉と強兵の事、色々と気になって動けずにいた
「ん・・・」
「! コハクくん!」
そう話しているとコハクの声が聞こえ微かに瞼が動き徐々に目を開けた
「目が覚めたかい?」
「あ、ダリウス、さん・・・? それに、リア、さん・・・?」
二人の姿を確認しながらコハクはゆっくりと体を起こし始めリアも支えて起こしてあげた
「良かった。心配していたよ。君はもう丸2日も寝ていたんだから」
「2日も? おれは・・・」
「2日前、参謀本部で暴動が起きた時、君は強兵と戦って倒れたんだ」
「ずっとうなされていたけど・・・大丈夫? 怖い夢でも見てた?」
「夢・・・?」
その言葉に何か思い当たったのかコハクは少し震えだした
「あ、ああっ・・・!!」
「コハク?」
「・・・傷!? 夢で出てきた傷が、オレの左腕に・・・!!」
「え・・・?」
「まさか、そんな・・・あの禍々しい力も、残酷な訓練も本当に遭った事なのか? 嘘だ、そんな事あるはずない・・・!」
「コハクくん、大丈夫、落ちついて・・」
取り乱したコハクを見て落ちつかせるようにリアが優しく背中をさすってあげる
「ふうん・・・」
コハクのその様子を見てダリウスはある確信に辿り着く
「その反応・・・やっぱりだ。君は、帝国軍の強兵計画に関与させられていたんだね?」
「! やっぱり・・・って?」
「ごめんね、コハク。君を暴動へ連れて行ったのは正直、期待していたからなんだ。強兵と戦えば、君が記憶を取り戻すんじゃないかって」
「え・・・?」
「村雨達が暴動を起こしたのは俺の手回しがあったからだ。参謀本部を攻撃されればきっと帝国軍はここぞとばかりに強兵を仕向けると思っていた。現に俺とルードは強兵師団の団長と接触して、計画の本拠地を突き止められたしね」
「・・・ダリウスさん、貴方は何を知っているの?」
「俺は、帝国軍について人より少し詳しいだけだ。今は、君の記憶こそより真実に近いと思うよ」
「真実? あれが本当に遭った事だって・・・?」
「・・・辛いかもしれないけど、ゆっくりでも良いから話してほしいの。コハクくんの事も知りたいし、帝国軍が何をしたのかも知りたいから」
「リアさん・・・。・・うん」
リアの強い眼差しを受けてコハクも頷き少しずつゆっくりと話し始めた
コハクは病に冒された身体を引き摺って母親の病を治す為の薬の資金を得る為に須崎を出たが思っていたよりも病が酷く途中で力尽きて倒れてしまったようだった
だが、そこで見世で何度か見かけた事のある帝国軍の高官達が自分の前を歩いているのを見かけ彼等なら話しを聞いて貰えると思い残っている力を振り絞って一人の脚を掴んで必死に訴えたが聞く耳を持たず手を離せと言って蹴られてしまうがコハクは諦める事なくその手を離さなかった
そしてもう一人の高官がコハクの生命力を見て、「・・・いっそ、そいつを訓練に連れて行くか?」と口にした
コハクに脚を掴まれている高官はその言葉に疑問を持つも、その後の言葉を聞き納得したようだった
特殊訓練の志願者が足りず民間からも徴兵されている為、死に損ないと判断されたコハクを連れ去っても構わないと
彼等はそう判断しそのままコハクを引き摺って行き、コハクは荷馬車に放り込まれそのまま何処かへ連れて行かれた
コハクが気が付いた時には部屋に花の甘く痺れるような香りがし、周りには沢山の若い軍人がいた
自分達の前に教官がやって来て皆敬礼をしてそれが終わると教官が話しを始める
「これより、特殊訓練を開始する! 諸君等には神の加護が与えられ強兵へと生まれ変わるのだ」
「はっ・・・!」
「諸君等は、選ばれた人間だ! 必ずこの辛い訓練を乗り越え最強の強兵になれる。勝利が為、我が帝国の権威を他国へ示す魁けとなれ!」
コハクは高官が何を言っているのか理解出来ていなかった
その間に高官は訓練開始!と指示を出していたが、一人の若い軍人が教官に質問をしていた
その内容はこの訓練が極秘である理由と肉親にも報告出来ないのかと言う事だった
だが、教官は知った事ではないと言う様に鼻で笑うように言ってさっさと部屋を出て行ってしまい、周りは異様な雰囲気に包まれた
途端、水の中から何かが上がる音と異質な声が聞こえたと思うと急に部屋の中が先程よりも寒くなり足下に何かがまとわりついて力が抜けていくのを感じた・・・
『ヨコセ・・・貴様ラノ・・・力・・・・』
「うわっ、あ、頭が割れる・・・!!」
また異質な恐ろしい声が聞こえたと思ったら次々に周りの若い軍人達は頭や胸を押さえて倒れていく
「(これが訓練? 神の加護だって? 嘘だ、こんなのは・・・!)う、うう・・・っ、あああアアアアアアアア・・・っ!!!!」
コハクも段々と足下にまとわりついていたものがどんどんと迫ってきているのを感じた途端力が抜け目の前が深い暗闇に覆われたまま気絶してしまった
―――
「・・・目が覚めたら、おれはすべてを忘れていた。周りの兵士達は我を失ったまま暴徒と化して外へ出て行って・・・おれもそれに流されるように小石川まで走って行ったんだ」
「そして、俺達と出会ったんだね」
思い出した事を話したコハクは目覚めた頃より落ちついてはいたがまだ顔色が優れなかった
「しかし、酷い話だ。強兵の特殊訓練だなんて偽って・・・」
「・・・・」
ダリウスの言葉にリアもコハクも頷き、コハクはゆっくりと口を開く
「全てが、大嘘だったんだ。あれは、神の加護を授けるものじゃない。もっとおぞましいものだ。人の精神ごと奪って体を変えていったんだから」
「・・・うん。けれど、一つ不思議だね。君は、意志を奪われず記憶を失うだけで済んだ」
「もしかして、コハクくんが疫病に冒されていたから・・?」
「可能性はあるね・・。コハクの体を病が蝕んでいた所為で恐ろしい力も精神の表層にしか及ばなかったのかもしれない」
「・・・だとしたら、おれは本当に運が良かったんだね。でも、他の人は? 強兵から、憑闇になった人はどうなるんだろう?」
「憑闇になった彼等は白龍の神子が浄化しても心が戻らないと聞くよ」
「・・・・」
ダリウスの言葉にコハクは辛そうな顔をした
「信じられないよ。何が憑闇は『原因不明の病』だ。訓練兵達は、若かった。みんな、おれと同じくらいの歳で将来があったんだ。なのに、何も説明がないまま自分の名前も記憶も意志も奪われて・・・何が帝国の―――勝利の為だ? こんなの人間がする事じゃない・・・!!」
そう言ったコハクの声は今まで以上に聞いた事のない怒りを露わにした声だった
「っ、コハクくん・・・」
「!」
言うとリアはそのまま優しくコハクを抱きしめた
「辛かったよね・・・。辛いのに話してくれて、ありがとう」
「・・・リアさん・・」
コハクはリアに抱きしめられいつも以上に温かさを感じたが、リアも辛さを感じていたのか少しだけ手が震えていた
「コハク、俺からも話してくれてありがとう。けれど、今こそ、君は俺達の真の同士になれるだろう」
「っ!?」
「ルード、虎、入っておいで」
ダリウスのその言葉を聞くとコハクは顔を上げダリウスがルードと虎を呼んだのを見てリアもゆっくりとコハクを放しダリウスの隣へ移動する
「ようやく、お呼びだな」
「コハク、温かいお茶ですよ。気分を落ち着けて下さい」
ルードは手に持っていたティーカップをチェストの上に置くとコハクは急に集まった面々を見て少し戸惑っていた
「な、なに? みんな・・・」
「飲みながら、聞くといい。ルード、頼んでおいた事は?」
「強兵計画に関する情報はこちらの資料に纏めてあります」
「では、さっそく説明を。ルード」
「はい―――」
ルードはある資料を手にしダリウスの言葉に頷いて説明を始めた
続く
あとがき
ようやく此処まで辿り着きました
みんな色々と気になる事が出てきてリアちゃんも思い当たる節を言っていたし・・・
そして何よりコハクが記憶を思い出したけども、すげーツラいものだったのでゲームやってた時ほんとに泣きそうだったわ(ノД`)
だけど色々と解った事でこれから色んな動きが見えてくると思います
次回もちょっとシリアス入ってから話は進むと思います(まだ模索中(^_^;))
ではまた次回
2015.07.02