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「うーん・・・どうしよう・・・」
天気の良い昼下がり、リアは居間のソファに座りあるものを見て悩んでいた
「どうかしましたか、リアさん」
「あ、ルードくん・・・」
「それは何かの切符ですか?」
「うん。昨日うちの店に来た常連さんから貰ったものなんだけどね・・・」
テーブルの上に置いてある切符を見ると活動写真の招待切符と書かれていた
「活動写真の招待切符・・ですか」
「うん。それでこの切符をくれた人が今やってる活動写真の脚本家なんだけど、明日仕事が休みだって言ったら、なら是非観に来て感想を聞かせて欲しいって」
流石はミルクホールの看板娘と言うべきなのか・・・
「・・・リアさんも本当に顔が広い人ですね」
村雨と言いリアと言い、2人とも人との繋がりが広いのだなと、改めて実感したルードだった
「話は分かりました。ですがリアさんなら感想を言うのは問題ないと思いますが」
「そこは私も問題ないと思ってるし日程も今日だから問題はないの。だけどね、・・・この切符、2人で行かないと使えないの・・しかも、男女じゃないと駄目なの・・・」
「は・・?」
言うとリアは切符の隅に書かれている文字をルードに見せるも、その文字は小さく書かれている為、非常に解りづらかった
つまりリアにこの割引切符を渡した相手はリアに男と一緒に観に来てそれぞれの目線での感想を聞かせてほしい、と言う事だったようだ
若干その男の申し出に何かを感じたような気もするが敢えてそこに触れず話を戻す
「・・・それで、誰と行こうか悩んでいた、と言う事ですか」
「うん。政虎さんとコハクくんはこう言うの興味ないと思うし」
「確かに虎に感想を求めるのは野暮な話ですね。コハクは・・一応答えてくれるでしょうが・・・想像はつきます」
若干失礼な事を言ってるようにも思うがルードらしい答えが返ってきてリアも多少は同じような事を思っている顔をしていた
「ダリウスさんとルードくんも用事で出掛けちゃうし、村雨さんもお仕事忙しいし、たまに梓ちゃん達の手伝いもしてるからどうしようかと思って・・・」
そこで村雨の名前まで挙がるのは意外だったが、面識があり気心が知れているから名が挙がったのだろうと思った
確かにそれ以外の人物 となると変な誤解を招きかねないし、今から一緒に行く相手を探すとしても手間も時間も掛かってしまう
「ルード、一緒に行っておやり」
そう思っていると、いつの間にかダリウスが階下に降りてきていた
「ダリウス様。ですが、」
「今日は情報集めに行くだけだから俺一人でも平気だよ。それに、感想を求めるなら俺達の中ではルードが一番適任だと思うけど」
確かにルードだったら的確に感想を言ってくれるし、一緒に行ってくれるなら凄く心強いと思いルードを見ているとルードもリアの視線に気付く
「・・・そんなに期待に満ちた眼差しをされても・・」
「ルード、困っているリアを放ってはおけないだろう」
「ルードくん、お願い」
少し意味深く言うダリウスと更に期待の眼差しをしてお願いするリアにルードは一瞬だけ頬を赤く染め言葉を詰まらせた
「・・・解りました。ダリウス様やリアさんが、そう仰るなら」
「ありがとう、ルードくん!」
「良かったね、リア」
ルードの言葉を聞きリアは嬉しそうに笑いダリウスも同じように笑っていた
「じゃあ二人とも楽しんでおいで」
「はい」
「・・では我々も向かいましょうか」
「うん」
暫くしてダリウスはそう言って空間移動で街へと向かって行き、リアとルードも活動写真館へと向かう為に邸を出た
18.キネマトグラフよりも近い存在
「活動写真に行くのも久し振りのような気がする」
「そうですね。ダリウス様とリアさんと3人で見たあの時以来ですね」
梓がこの世界に来る一月前に一度活動写真を観に来ていた
「あの時の内容は花に関する事でしたからダリウス様も聞き入っていましたね」
「うん。あの時聞いた花の植え方を試してたよね。疎らにしか咲かなかったら結局いつも通りの植え方に戻してたっけ」
活動写真の内容は月毎に変わっているのでまた別の作品が見られるんだろうと思いながら、話をしていると活動写真館の前に着いた
切符を見せて中に入り空いている席に座るとまだ始まるまで少し時間があったのでルードは気になっていた事を聞いた
「そう言えば、リアさんに切符をくれた方はどの様な方なんですか」
「まだ新人の脚本家でちょっと気弱そうな人なんだけど、真っ直ぐな人で仕事に対しても熱心で脚本や小説の話をする時も生き生きしてたよ。前回上映した処女作が好評で今回の新作も期待している人が多いの」
「それでこれだけ人が多いんですね」
ルードの言う通り、普段なら丁度良い人数が入っているのだが、今回は人が多く空いている席が少ない程だった
「招待切符貰ってて良かったね」
そう話していると男性の弁士が出てきて弁台に立ち軽く会釈し、キネマの内容を軽く説明した
その内容は、若くも辛い人生を送る男が一人の女性に惚れるも身分の違う恋に悩む、と言ういかにも恋人や女性が好みそうな話だった
弁士が説明を終えると反対側の弁台に今度は女性の弁士が立ち、上映が始まり弁士達も台詞を喋り始める
時代は江戸、貧しい村に住む男、貧乏な生活だが村の人々も温かく幸せだと感じていた
だがある日、村が水害に遭い、男も水に吞まれ知らない土地へ流されてしまうも老夫婦に助けられ養生する事になるが、後に村が水害で全滅している事を知り男は悲しみに暮れ暮らしていた
「キネマにしては随分と重たい話ね」
「けど、これからが良いんだよ」
近くに座っていたモダンボーイとモダンガールの会話が聞こえるが、弁士の声と映像に集中する
時が過ぎ男と共に暮らしていた老夫婦も亡くなってしまいまた悲しみにくれる生活を送るのかと思っている時に一軒の茶屋に目が止まった
「そう、男は店で働く女性に目を奪われて一目惚れをしてしまったのだ」
女性はこの茶屋の娘で、親思いで気の利く良い娘だった
それから男は仕事の合間や休みの度に店に訪れ彼女とも話が出来るようになり、この時間が幸せだと感じていた
だが、彼女には婚約者がいた
相手は隣町で大きな宿場を持つ家の長男だった
「茶屋の娘さんでも既に自分とは身分が違うのに嫁いでしまったらもっと身分の違う人になってしまう・・・」
男は悩むもどんどん日が過ぎていき彼女が嫁ぐ日も近付いてくる
「こうなったら一か八か。玉砕覚悟で彼女に自分の気持ちを伝えるんだ」
そう決意した男は茶屋の娘の元へ向かい、少しだけ時間を貰った
そして―――、
「凄く良かった。私、感動しちゃった」
「だろ。やっぱりこの脚本家は最高だな」
上映が終わり続々と客が出てくる中、見終わった感想をお互いに言うモダンボーイとモダンガール達の言葉を聞きながらリアとルードも外へ出ようとしていると
「璃唖さん!」
リアを呼ぶ声が聞こえ振り返るとリアの方へ走ってくる男がいた
「あのっ、今日は観に来てくれて有り難う御座います!!」
「いえ、こちらこそ招待切符ありがとう御座いました」
「・・それで、・・お隣の方は・・・」
男はリアの隣にいるルードの事が気になったのかちらりと見てリアに尋ねた
「ルードハーネです。リアさんとは同じ邸に住んでいます」
「え」
「ルードくんは私が住んでいるお邸の主に仕えているんです」
「ああ、そう言う事ですか」
男の言葉にルードは一瞬何かを思ったが男は気にした様子もなく挨拶をした
「僕は柳 林太郞と言います。今回のキネマの脚本を担当しました」
ではこの男性がリアとルードに・・・男女からの目線で見た感想を欲しいと頼んだ相手か
「では、早速ではあるんですが、お二人の感想と男女からの目線で見た感想を是非、お聞かせ下さい!」
言うと林太郞はメモ帳とペンを取り出していた
リアの言う通り、林太郞は仕事熱心のようで二人の感想を聞きメモ帳に筆を走らせながら改善点も探して同じようにメモしていた
「なるほどっ。とても参考になりました! 特にルードハーネさんの指摘は的確でどう表現しようか悩んでいた所も解決出来ました! 有り難う御座います」
二人を見てやっぱりルードと一緒に着て良かったなとリアは思っていた
「いえ。ただ、個人的な感想を言わせてもらいますと、モチーフにした人物が直ぐに思い浮かびましたね」
「っ!」
ルードの言葉を聞くと林太郞は驚いて目を瞠る
「結末としては良ったですし、見に来た人達も納得するでしょうが、私は其方の方が気になっていましたね」
「・・・ルードくん?」
少しだけ険悪な雰囲気になり始めたのをリアも感じルードと林太郞を見る
「リアさん、そろそろ行きますよ」
「え、でも」
「我々は彼の希望通り、お互いの感想を言って男女からの目線での感想も伝えました。もう此処にいる理由はありませんよ」
言うとルードは歩き出しリアも続こうとしていると
「君に僕の気持ちが分からないだろうよ。同じ環境ではないのだから!」
「・・・・」
ルードに向かって林太郞がそう言い、その声は響きルードは林太郞を一瞥した後、林太郞を見て言う
「解りませんね。貴方とは見ている場所も環境も違いますから」
急に言い合うような二人を見てリアは戸惑っていた
たが、口を挟める雰囲気でもないと言うのは見ていて解った
「ですが、」
そこでルードは一旦言葉を切り
「貴方が一番伝えたかった事は、私も理解出来ました。・・・私も、同じですから」
「えっ?」
そう言った後、ルードはリアを見ると未だにこの状況が理解出来ていないのかリアは疑問符を出していた
「では、我々はこれで」
「え、ル、ルードくん!?」
言うとルードはリアの腕を引いて歩き出し、
「林太郞さん、あの、今日は有り難う御座いました。また、時間が出来た時に店にいらして下さいね」
リアは林太郞の方を向いて何とかそれだけ伝えると二人はそのまま出口へと消えていき、シンッと静まり返った中、一人残された林太郞は先程のルードの言葉を受けてある事を思っていた
*
「ルードくん。・・ねえ、ルードくんってばっ!」
「・・・・」
活動写真館から出た後もリアはルードに腕を引かれながらルードの後ろを歩く形になっていた
だが、あれからずっとルードは黙ったままで声を掛けても返事がない
今はだいぶ浅草から離れ人も少ない場所を歩いているから人にぶつかる心配もないし、声を遮るものがないと思いリアは再びルードに声を掛けた
「・・・ルードくん、怒ってる・・・?」
「・・・何故ですか」
やっと反応してくれたルードを見て言葉を続ける
「・・・さっき林太郞さんと言い合ってたから、何か気に障る事でも遭ったのかなって思って・・」
「・・・・」
その言葉にルードの歩みが止まりリアを見ると心配と不安が混ざった瞳 をしていた
「怒ってはいません。ただ、お互いの価値観の違いを感じていただけです」
「価値観ってルードくんと林太郞さんの?」
「ええ・・。そう思うと私はまだ幸せな方なのだと思いまして。・・・まだ、貴女が私の側に居るのだから」
「え・・・?」
最後の方はリアに聞こえるか聞こえないかの声で言い優しい笑みをしてリアを見た
「・・・ルード、くん・・・」
その笑みにリアは何故か気恥ずかしさを感じていた
そんなリアを見てルードも段々と気恥ずかしくなったのか踵を返して歩き出す
「とにかく、帰りますよ。あまり遅くなってはダリウス様が心配します」
「・・・うん、そうだね」
先程よりも二人を包む空気と手が暖かくなったのを感じリアは微笑んでルードに握られた手を見てルードの優しさを感じていた
おまけ
「ああ、先程言い忘れてましたが、リアさん」
「ん、何?」
「貴女はもう少し男への警戒心を持って下さい」
「え?」
「貴女の誰にでも優しいと言うのは良い事だと思いますが、男は勘違いをしますので貴女が警戒しないとそう言った輩が増える一方ですよ」
「・・・勘違い・・? ・・えっと、それって」
「解りましたか」
「・・・・はい、・・先生・・・」
「・・・・・。先生はやめて下さい」
リアがルードの言った意味を聞こうとしているとそれを遮るようにルードが言い、その迫力に負け思わず梓が言っていたように答えてしまい、ルードもその言葉を聞くと項垂れてしまった
続く
あとがき
ふあああ~~、やっっっっとルードくんお当番回完成したあああああ!!!!
や~時間掛かった~(^_^;)ww
どう書こうかかなり悩んでまたネットで単語や意味調べたりしたし、何より一番大変だったのはキネマの上映内容!!
これが厄介だったわ~(^_^;)
あ、あの内容のラストはどうなったかは皆様のご想像にお任せします♪w
で、今回出てきた今回だけ登場するゲストオリキャラww
ルードくんは誰をモチーフして林太郞が脚本を書いたか解っていたけど、あれは林太郞がリアちゃんが働くミルクホールに行った時にリアちゃんを見て一目惚れしたから・・・ってのが元であの話が出来た訳ですw
そして最後の方ではルードも自分の気持ちを解りつつもそれを口にはせず優しい笑顔で伝えたりリアちゃんの手を握っていたりとしていてちょっとだけ前に進んだ感じでしたね
おまけではどうしても先生って言わせたかったのでリアちゃんに言ってもらいましたw(警戒心がない事書けなかったらおまけ書いたってのもあるがww)
さて、これでだいぶ時が経ったから次回はちょっと本編の方に戻りたいと思います
それでは~!
キネマトグラフ:キネマ。映画、シネマの事
2015.06.27
天気の良い昼下がり、リアは居間のソファに座りあるものを見て悩んでいた
「どうかしましたか、リアさん」
「あ、ルードくん・・・」
「それは何かの切符ですか?」
「うん。昨日うちの店に来た常連さんから貰ったものなんだけどね・・・」
テーブルの上に置いてある切符を見ると活動写真の招待切符と書かれていた
「活動写真の招待切符・・ですか」
「うん。それでこの切符をくれた人が今やってる活動写真の脚本家なんだけど、明日仕事が休みだって言ったら、なら是非観に来て感想を聞かせて欲しいって」
流石はミルクホールの看板娘と言うべきなのか・・・
「・・・リアさんも本当に顔が広い人ですね」
村雨と言いリアと言い、2人とも人との繋がりが広いのだなと、改めて実感したルードだった
「話は分かりました。ですがリアさんなら感想を言うのは問題ないと思いますが」
「そこは私も問題ないと思ってるし日程も今日だから問題はないの。だけどね、・・・この切符、2人で行かないと使えないの・・しかも、男女じゃないと駄目なの・・・」
「は・・?」
言うとリアは切符の隅に書かれている文字をルードに見せるも、その文字は小さく書かれている為、非常に解りづらかった
つまりリアにこの割引切符を渡した相手はリアに男と一緒に観に来てそれぞれの目線での感想を聞かせてほしい、と言う事だったようだ
若干その男の申し出に何かを感じたような気もするが敢えてそこに触れず話を戻す
「・・・それで、誰と行こうか悩んでいた、と言う事ですか」
「うん。政虎さんとコハクくんはこう言うの興味ないと思うし」
「確かに虎に感想を求めるのは野暮な話ですね。コハクは・・一応答えてくれるでしょうが・・・想像はつきます」
若干失礼な事を言ってるようにも思うがルードらしい答えが返ってきてリアも多少は同じような事を思っている顔をしていた
「ダリウスさんとルードくんも用事で出掛けちゃうし、村雨さんもお仕事忙しいし、たまに梓ちゃん達の手伝いもしてるからどうしようかと思って・・・」
そこで村雨の名前まで挙がるのは意外だったが、面識があり気心が知れているから名が挙がったのだろうと思った
確かにそれ以外の
「ルード、一緒に行っておやり」
そう思っていると、いつの間にかダリウスが階下に降りてきていた
「ダリウス様。ですが、」
「今日は情報集めに行くだけだから俺一人でも平気だよ。それに、感想を求めるなら俺達の中ではルードが一番適任だと思うけど」
確かにルードだったら的確に感想を言ってくれるし、一緒に行ってくれるなら凄く心強いと思いルードを見ているとルードもリアの視線に気付く
「・・・そんなに期待に満ちた眼差しをされても・・」
「ルード、困っているリアを放ってはおけないだろう」
「ルードくん、お願い」
少し意味深く言うダリウスと更に期待の眼差しをしてお願いするリアにルードは一瞬だけ頬を赤く染め言葉を詰まらせた
「・・・解りました。ダリウス様やリアさんが、そう仰るなら」
「ありがとう、ルードくん!」
「良かったね、リア」
ルードの言葉を聞きリアは嬉しそうに笑いダリウスも同じように笑っていた
「じゃあ二人とも楽しんでおいで」
「はい」
「・・では我々も向かいましょうか」
「うん」
暫くしてダリウスはそう言って空間移動で街へと向かって行き、リアとルードも活動写真館へと向かう為に邸を出た
18.キネマトグラフよりも近い存在
「活動写真に行くのも久し振りのような気がする」
「そうですね。ダリウス様とリアさんと3人で見たあの時以来ですね」
梓がこの世界に来る一月前に一度活動写真を観に来ていた
「あの時の内容は花に関する事でしたからダリウス様も聞き入っていましたね」
「うん。あの時聞いた花の植え方を試してたよね。疎らにしか咲かなかったら結局いつも通りの植え方に戻してたっけ」
活動写真の内容は月毎に変わっているのでまた別の作品が見られるんだろうと思いながら、話をしていると活動写真館の前に着いた
切符を見せて中に入り空いている席に座るとまだ始まるまで少し時間があったのでルードは気になっていた事を聞いた
「そう言えば、リアさんに切符をくれた方はどの様な方なんですか」
「まだ新人の脚本家でちょっと気弱そうな人なんだけど、真っ直ぐな人で仕事に対しても熱心で脚本や小説の話をする時も生き生きしてたよ。前回上映した処女作が好評で今回の新作も期待している人が多いの」
「それでこれだけ人が多いんですね」
ルードの言う通り、普段なら丁度良い人数が入っているのだが、今回は人が多く空いている席が少ない程だった
「招待切符貰ってて良かったね」
そう話していると男性の弁士が出てきて弁台に立ち軽く会釈し、キネマの内容を軽く説明した
その内容は、若くも辛い人生を送る男が一人の女性に惚れるも身分の違う恋に悩む、と言ういかにも恋人や女性が好みそうな話だった
弁士が説明を終えると反対側の弁台に今度は女性の弁士が立ち、上映が始まり弁士達も台詞を喋り始める
時代は江戸、貧しい村に住む男、貧乏な生活だが村の人々も温かく幸せだと感じていた
だがある日、村が水害に遭い、男も水に吞まれ知らない土地へ流されてしまうも老夫婦に助けられ養生する事になるが、後に村が水害で全滅している事を知り男は悲しみに暮れ暮らしていた
「キネマにしては随分と重たい話ね」
「けど、これからが良いんだよ」
近くに座っていたモダンボーイとモダンガールの会話が聞こえるが、弁士の声と映像に集中する
時が過ぎ男と共に暮らしていた老夫婦も亡くなってしまいまた悲しみにくれる生活を送るのかと思っている時に一軒の茶屋に目が止まった
「そう、男は店で働く女性に目を奪われて一目惚れをしてしまったのだ」
女性はこの茶屋の娘で、親思いで気の利く良い娘だった
それから男は仕事の合間や休みの度に店に訪れ彼女とも話が出来るようになり、この時間が幸せだと感じていた
だが、彼女には婚約者がいた
相手は隣町で大きな宿場を持つ家の長男だった
「茶屋の娘さんでも既に自分とは身分が違うのに嫁いでしまったらもっと身分の違う人になってしまう・・・」
男は悩むもどんどん日が過ぎていき彼女が嫁ぐ日も近付いてくる
「こうなったら一か八か。玉砕覚悟で彼女に自分の気持ちを伝えるんだ」
そう決意した男は茶屋の娘の元へ向かい、少しだけ時間を貰った
そして―――、
「凄く良かった。私、感動しちゃった」
「だろ。やっぱりこの脚本家は最高だな」
上映が終わり続々と客が出てくる中、見終わった感想をお互いに言うモダンボーイとモダンガール達の言葉を聞きながらリアとルードも外へ出ようとしていると
「璃唖さん!」
リアを呼ぶ声が聞こえ振り返るとリアの方へ走ってくる男がいた
「あのっ、今日は観に来てくれて有り難う御座います!!」
「いえ、こちらこそ招待切符ありがとう御座いました」
「・・それで、・・お隣の方は・・・」
男はリアの隣にいるルードの事が気になったのかちらりと見てリアに尋ねた
「ルードハーネです。リアさんとは同じ邸に住んでいます」
「え」
「ルードくんは私が住んでいるお邸の主に仕えているんです」
「ああ、そう言う事ですか」
男の言葉にルードは一瞬何かを思ったが男は気にした様子もなく挨拶をした
「僕は柳 林太郞と言います。今回のキネマの脚本を担当しました」
ではこの男性がリアとルードに・・・男女からの目線で見た感想を欲しいと頼んだ相手か
「では、早速ではあるんですが、お二人の感想と男女からの目線で見た感想を是非、お聞かせ下さい!」
言うと林太郞はメモ帳とペンを取り出していた
リアの言う通り、林太郞は仕事熱心のようで二人の感想を聞きメモ帳に筆を走らせながら改善点も探して同じようにメモしていた
「なるほどっ。とても参考になりました! 特にルードハーネさんの指摘は的確でどう表現しようか悩んでいた所も解決出来ました! 有り難う御座います」
二人を見てやっぱりルードと一緒に着て良かったなとリアは思っていた
「いえ。ただ、個人的な感想を言わせてもらいますと、モチーフにした人物が直ぐに思い浮かびましたね」
「っ!」
ルードの言葉を聞くと林太郞は驚いて目を瞠る
「結末としては良ったですし、見に来た人達も納得するでしょうが、私は其方の方が気になっていましたね」
「・・・ルードくん?」
少しだけ険悪な雰囲気になり始めたのをリアも感じルードと林太郞を見る
「リアさん、そろそろ行きますよ」
「え、でも」
「我々は彼の希望通り、お互いの感想を言って男女からの目線での感想も伝えました。もう此処にいる理由はありませんよ」
言うとルードは歩き出しリアも続こうとしていると
「君に僕の気持ちが分からないだろうよ。同じ環境ではないのだから!」
「・・・・」
ルードに向かって林太郞がそう言い、その声は響きルードは林太郞を一瞥した後、林太郞を見て言う
「解りませんね。貴方とは見ている場所も環境も違いますから」
急に言い合うような二人を見てリアは戸惑っていた
たが、口を挟める雰囲気でもないと言うのは見ていて解った
「ですが、」
そこでルードは一旦言葉を切り
「貴方が一番伝えたかった事は、私も理解出来ました。・・・私も、同じですから」
「えっ?」
そう言った後、ルードはリアを見ると未だにこの状況が理解出来ていないのかリアは疑問符を出していた
「では、我々はこれで」
「え、ル、ルードくん!?」
言うとルードはリアの腕を引いて歩き出し、
「林太郞さん、あの、今日は有り難う御座いました。また、時間が出来た時に店にいらして下さいね」
リアは林太郞の方を向いて何とかそれだけ伝えると二人はそのまま出口へと消えていき、シンッと静まり返った中、一人残された林太郞は先程のルードの言葉を受けてある事を思っていた
*
「ルードくん。・・ねえ、ルードくんってばっ!」
「・・・・」
活動写真館から出た後もリアはルードに腕を引かれながらルードの後ろを歩く形になっていた
だが、あれからずっとルードは黙ったままで声を掛けても返事がない
今はだいぶ浅草から離れ人も少ない場所を歩いているから人にぶつかる心配もないし、声を遮るものがないと思いリアは再びルードに声を掛けた
「・・・ルードくん、怒ってる・・・?」
「・・・何故ですか」
やっと反応してくれたルードを見て言葉を続ける
「・・・さっき林太郞さんと言い合ってたから、何か気に障る事でも遭ったのかなって思って・・」
「・・・・」
その言葉にルードの歩みが止まりリアを見ると心配と不安が混ざった
「怒ってはいません。ただ、お互いの価値観の違いを感じていただけです」
「価値観ってルードくんと林太郞さんの?」
「ええ・・。そう思うと私はまだ幸せな方なのだと思いまして。・・・まだ、貴女が私の側に居るのだから」
「え・・・?」
最後の方はリアに聞こえるか聞こえないかの声で言い優しい笑みをしてリアを見た
「・・・ルード、くん・・・」
その笑みにリアは何故か気恥ずかしさを感じていた
そんなリアを見てルードも段々と気恥ずかしくなったのか踵を返して歩き出す
「とにかく、帰りますよ。あまり遅くなってはダリウス様が心配します」
「・・・うん、そうだね」
先程よりも二人を包む空気と手が暖かくなったのを感じリアは微笑んでルードに握られた手を見てルードの優しさを感じていた
おまけ
「ああ、先程言い忘れてましたが、リアさん」
「ん、何?」
「貴女はもう少し男への警戒心を持って下さい」
「え?」
「貴女の誰にでも優しいと言うのは良い事だと思いますが、男は勘違いをしますので貴女が警戒しないとそう言った輩が増える一方ですよ」
「・・・勘違い・・? ・・えっと、それって」
「解りましたか」
「・・・・はい、・・先生・・・」
「・・・・・。先生はやめて下さい」
リアがルードの言った意味を聞こうとしているとそれを遮るようにルードが言い、その迫力に負け思わず梓が言っていたように答えてしまい、ルードもその言葉を聞くと項垂れてしまった
続く
あとがき
ふあああ~~、やっっっっとルードくんお当番回完成したあああああ!!!!
や~時間掛かった~(^_^;)ww
どう書こうかかなり悩んでまたネットで単語や意味調べたりしたし、何より一番大変だったのはキネマの上映内容!!
これが厄介だったわ~(^_^;)
あ、あの内容のラストはどうなったかは皆様のご想像にお任せします♪w
で、今回出てきた今回だけ登場するゲストオリキャラww
ルードくんは誰をモチーフして林太郞が脚本を書いたか解っていたけど、あれは林太郞がリアちゃんが働くミルクホールに行った時にリアちゃんを見て一目惚れしたから・・・ってのが元であの話が出来た訳ですw
そして最後の方ではルードも自分の気持ちを解りつつもそれを口にはせず優しい笑顔で伝えたりリアちゃんの手を握っていたりとしていてちょっとだけ前に進んだ感じでしたね
おまけではどうしても先生って言わせたかったのでリアちゃんに言ってもらいましたw(警戒心がない事書けなかったらおまけ書いたってのもあるがww)
さて、これでだいぶ時が経ったから次回はちょっと本編の方に戻りたいと思います
それでは~!
キネマトグラフ:キネマ。映画、シネマの事
2015.06.27