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「ルードくん」
「なんですか」
翌日の朝、いつも通り皆で朝食を済ませ梓もそろそろ食べ終わる頃だろうと思いルードが厨房から出ようとしているとリアが声を掛けた
「・・梓ちゃんの所に行くなら私も行く」
「・・・梓さんと話をするつもりですか」
「うん。本当は昨日の夜にするつもりだったんだけど帰りが遅くなっちゃったから。話すなら多分今しかないと思うから」
リアが忙しいと言うのもあれ以来まだ梓とも話が出来ていないのもルードも知っていた
「解りました。では行きましょう」
自分達が行っても話が平行線だったりしているが、同姓であるリアが行けば話を聞いてもらえる可能性もあるしリアと話せば気持ちも落ちつくだろうと思った
階段を登り梓が今居る部屋をノックすると梓から返事が返ってきてルードは鍵を開けて中へ入りリアも中へ入る
「・・・梓ちゃん」
「! ・・・リアさん」
ベッドに腰掛けていた梓はリアの声を聞き顔を上げると驚いた顔をしていた
「10分後にまた来ます」
「解った」
言うとルードは食器を持って部屋を出て行った
少しだけシンッと静まり返り部屋を一瞥すると殺風景な部屋に窓の外には鉄格子が見え暖かさを感じない
まるで、鳥籠の中にいる気分だった
「・・・久し振りね」
「うん・・・リアさんと話すの、凄く久し振りに感じる」
数日前までは共に怨霊退治に出たり楽しくお喋りをしたり買い物に行ったりしていたが、あの日の夜以来リアも梓もお互いに会えず終いだったがようやく会って話をする事が出来た
「元気そうで良かった」
「リアさんも」
ルードから聞いてはいたが思っていたよりも元気そうな梓を見てほっとし梓も同じようにほっとしてた
こうやってずっと話をしていたいが10分だけと言う時間制限がある為リアも本題へと入った
「梓ちゃん、愛宕山での件はごめんなさい」
「リアさんが謝らなくても・・・リアさんも私とコハクと一緒で何も知らなかったんだし」
その辺りはルードやコハクから聞いたのかリアがあの作戦を知らなかった事を梓は知っていた
「でも、結果的に梓ちゃんを傷つけてしまった。私も知った時は凄く驚いて傷ついたけど、梓ちゃんの方があの場に居たからもっと傷ついてるはずよ」
その言葉はあながち嘘ではなかった
梓は未だにダリウスの革命についての話を聞こうとしない
それは信頼を裏切られた事も含め、まだ聞く気にはなれないしルードからダリウスの革命の話を聞いてもそれが正しい事だと思えていないからだった
「・・・リアさんは、これからダリウスがやろうとしている計画の事を知ってるの?」
「・・・ええ。でも、私が本当の意味でこの計画に参加するのは最後だけ。それ以外は今まで見てきた通りよ」
つまりリアがダリウスの革命と言う計画に参加するのは最後であってそれ以外の時は今のように蠱惑の森と帝都での生活を過ごして良いと言う事だった
自分との対応が全然違うと思っても、リアはダリウス達鬼の一族とは縁のある一族だ
お互いどんな環境や境遇にあるのかは良く解っているだろう・・・
それでも梓はどうしてもこれだけは聞いておきたかった
「沢山の人を傷つけていてもリアさんもダリウスの計画に賛成なの?」
「・・・そこは私も梓ちゃんと同じよ。無関係の人を傷つけたくないし、傷つけてほしくない。そんな事を繰り返していたら今以上に鬼の仕業だって騒がれてしまうし、鬼への印象も悪くなる一方だもの」
その会話は梓もあの公園での演説や、この数日ダリウスやルード、リアが出掛けている時にコハクと虎の協力で外に出ていた時に何度も耳にしていた
リアの本心は梓もみんなで流星群を見に行った時に聞いていたし、リアの言葉を聞きあの時の言葉と決意は変わらないのだと再確認した
「だから昨日、日比谷公園の辺りにいた怨霊を一掃してきたわ」
「え・・・?」
急に振られた言葉と一掃したと言う言葉に驚いて梓は顔を上げた
「あの日以来、瘴気が溢れて色んな所で怨霊が増えているの。ダリウスさんは放っておいて良いって言ったけど、少しでも怨霊は減らしておきたいと思って少しずつだけど見かけたら倒していたの」
「倒したって、リアさん一人で・・。それに一掃したって・・・」
「あの数ならダリウスさんやルードくん、政虎さんでも余裕で倒せるから」
さらっと言いのけるリアだが、数を聞いていないので梓は唖然とするしかなかった
「梓ちゃんが此処から出られない以上、私が代わりに怨霊退治してるの」
「リアさん・・・」
その言葉といつもの優しい笑みを見て色々なものが込み上げてきた
本当はこの数日外に出ている事をリアにだけは教えておきたかった
でもそれは虎から止められていて話す事が出来ないし、何より今日梓達がやろうとしている事も話せないのだった
「っ・・・」
「梓ちゃん? どうしたの?」
急に黙って俯いてしまった梓を見てリアが駆け寄ると少しだけ梓の目に涙が浮かんでいた
「ごめん・・・なんだか、急に・・・」
涙が出てきて・・と続けようとするも言葉が途絶えてしまい続ける事が出来なかった
途端、何かに包まれたような気がして顔を上げるとリアに抱きしめられていた
「・・・辛かったよね」
「え・・?」
「あんな事が遭って急にダリウスさん達の態度も変わってこんな暖かみのない殺風景な部屋に閉じ込められて・・・。私はね、梓ちゃんの事、黒龍の神子って言うより同姓の友達であり妹のように思ってるの。だから、辛い事溜めていないで、我慢しないで、・・今だけは、泣いて良いんだよ」
「リア、さん・・・っ」
まるで我が子の事を心配する母親のように感じ更にまた目頭が熱くなるのを感じた途端涙が溢れてしまい、そんな梓を見てリアは宥めるように優しく背中をさすり、頭も撫でてあげていた
*
「・・・落ちついた?」
「・・・うん」
あれから暫くして梓は落ち着きを取り戻し二人揃ってベッドに腰掛けていた
「急に泣いちゃってごめん・・・」
「気にしないで」
泣いている所を見られて恥ずかしかったのか梓は少し頬を赤くして言うがリアは優しい笑顔を向けてくれている
(やっぱりリアさんと話してると落ちつくし安心出来るな・・・)
と思っていると扉をノックをする音が聞こえルードが失礼しますと一声掛けて部屋に入る
「リアさん、そろそろ時間です」
あっという間にもう10分経ってしまったのかとお互いに思っているとリアがベッドから立ち上がり梓を見て、
「あ、そうだ。梓ちゃん、ルードくん、ちょっとだけ待ってて」
「え?」「え、リアさん」
言うとリアはそのまま部屋を出て何処かへ向かい、1分程で戻って来たがリアの手には何かがあった
「直ぐ終わるからちょっと待ってて」
すれ違い様にルードにそう声を掛け梓の所へ行く
「梓ちゃん、これ」
「! ・・・それ」
リアが持って来たのは梓が居た部屋に飾ってあった物で、それは以前みんなで月一の買い出しに行った時にリアと二人で雑貨店に入って買った硝子で作られた蝶の形をした置物だった
「この部屋何も無くて寂しいでしょ。梓ちゃんこれ気に入っていたから梓ちゃんの部屋から持って来たの」
梓自身もリアが用意してくれたあの部屋を気に入っていて更に一緒に買い物した時に購入したこの置物を気に入っていてずっと戻りたいと思っていたから、リアがこの置物を持って来てくれて嬉しかった
「ありがとう、リアさん」
「うん」
「・・・そろそろよろしいですか」
「・・うん。・・じゃあ梓ちゃん。またね・・・」
「うん、またね」
二人のやり取りを見てルードがそこで声を掛けリアも梓もお互いに挨拶を交わしリアはルードと共に部屋を出た
「・・・? ルードくん?」
階下に向かおうとしているとルードが立ち止まっているのが気になり声を掛けると何か考え事をしている顔をしたが直ぐにリアを見る
「・・いえ。では階下にいらっしゃるダリウス様の所へ行きましょう」
「うん・・」
「あ、リアさんとルードくん戻って来た」
「リア、梓と話しをして来たのかい」
「はい」
階下に行くとコハクがリア達が戻って来た事に気が付き声を掛け続けてダリウスも声を掛けた
「梓はどうしていた?」
「最初に部屋を訪れた時よりリアさんを迎えに行った時の方が表情が戻ったように感じました」
「わあ、流石リアさん」
「へえ。一体何を話していたのかな」
先程見た事をルードが話すとダリウスやコハク、そしてソファに寝そべっていた虎も気になったのか一気に視線が集まる
「それは、女同士の秘密です」
「おや、そう言われてしまったら何も聞けなくなるな」
にこりと良い笑顔で女同士の秘密と言われてしまってはダリウスも聞けなくなってしまう
「ま、とにかく、神子様が元気になったつーならそれはそれで良いんじゃねえの」
「うん。おれもそう思う」
虎の言葉にコハクもダリウスもルードも納得しその場は解散となり、昼からはまたダリウスとルードは競売に出掛け、リアも仕事の為ミルクホールへと向かい、梓もコハクと虎と共に白龍の神子に会う為に村雨と待ち合わせているハイカラヤへと向かった
その夜、
「今日でだいぶ忙しい日は終わったかな・・・」
蠱惑の森に入ってリアは息を吐き出す
ミルクホールの忙しい日程も後数日で終わる
次の新作が出るのは次の月の下旬頃だからそれまでは少し余裕があった
「後で梓ちゃんに持っていこうかな」
リアが手に持っている袋には以前梓と食べたカステラが入っていた
今朝話した時に元気になってはいたが、もう少し気持ちが落ちつくものがあればと思い買って来たのだった
「紅茶と一緒の方が良いだろうから、後でルードくんに良い茶葉を聞いて・・・」
そう思っていると邸の前に着いたが、何処か違和感を覚え歩みが止まる
サアアと木々が風に揺れその風はリアの頬と長い髪にも触れる
だが、その空気もいつもと違っていた
それは普段より空気が清浄になっていたからだった
「この清浄な空気・・・神気が強まってる。・・! まさか!?」
その清浄な空気に触れ、ある答えに辿り着く
「っ!?」
途端、ある部屋から光が発し空気が変わった
「あの部屋って、梓ちゃんがいる・・・。もしかして!」
そこである仮説が浮かび、急いで邸へ入った
「ルードくん!」
「! リアさん。どうしたんですか、そんなに慌てて」
邸に入り居間を見るとリアの声と勢い良く開いた玄関の扉の音に驚いているルードと同じく少し驚いている顔をしてソファに座っているコハクとソファに寝そべっていつも以上に怠そうにしている虎がいた
この場にダリウスがいない事を確認するとリアはまたルードを見る
「ダリウスさんは?」
「ダリウス様なら梓さんの所へ・・・」
「ごめん、ルードくん。これ厨房に置いてて!」
「―― リアさん!?」
ルードの返事を聞くと自分が持っていた紙袋をルードに渡し、急いで階段を駆け上がって行き、普段と違うリアを見てルードも、そして同じくコハクも虎も驚いていた
「・・・なんだぁ?」
「珍しいね、リアさんがあんなに慌ててるなんて・・・」
「ええ・・・」
ルード達の会話は耳に入っていないのかリアはそのまま急いで階段を駆け上がり、梓がいる部屋へと向かい扉を開ける
「ダリウスさんっ!」
「・・・」
少し息を切らせながら部屋の中を見ると、そこにダリウスは居たのだが、
梓の姿はなかった
「・・・ダリウスさん、・・さっきの光って、まさか・・」
「・・ああ、リアが思っている通りだよ。・・・梓は白龍の神子と帝国軍の元へ行ってしまったよ」
「っ!」
群青色の瞳が少し寂しそうにして声も少し悲しさが混ざっていた
「ダリウス様、リアさん、何か遭ったのですか。・・・!」
先程のリアの様子を見てルード達も気になり部屋に入って来たが、
「・・・えっ?」
「おい・・」
梓がいない事、そして立ったまま何処か遠くを見つめているダリウスと今にも泣きそうな顔をしているリアを見て言葉が途絶えてしまった
リアはルードやコハク、虎の声を聞き顔を向けて三人の様子を見てまたダリウスを見て俯くと一筋の涙が流れそれが見えないようにし声も抑えようとしていたがみんなに聞こえてしまったようで視線が集まるのを感じた
「っ・・・!」
どうにか抑えようとしているとふわりと何かに包まれたような気がして少しだけ顔を上げるとダリウスが悲しそうな顔をしてそれでも優しさの伝わる笑顔を向けてくれリアはダリウスの胸を借りて涙を流したのだった
どうやらこの数日、梓はリア達がいない間コハクと虎と共に邸を抜け出していたらしい
リアもダリウスも薄々は気が付いていたが、敢えて聞かずにいたし、リアも梓と話した時に梓が話さなかったので敢えてその事に触れずにいたが、梓がこの部屋から消えたのは今日白龍の神子と会い、白龍の神子、黒龍の神子、二人の神子の祈りが通じ、梓は光に導かれ対である白龍の神子、そして白龍の神子がいる帝国軍の元へ行ってしまった
いつかこうなってしまうのでは・・・
その予感はリアもダリウスも感じていた
だが、その予感は自分達が思っていたよりも早かった
これからは今までみたいに直ぐに接するも共に行動する事も出来ない
それでも、梓ちゃんがこれからの事を考え行動している時に
14.私たちはまた、めぐり合う
かもしれない・・・
だから、
帝国軍の方 に行っても、元気でいてね・・・
続く
あとがき
・・・はい。遂に、遂に梓がダリウス達蠱惑の森チームから離れる所まできちゃいました・・・
ほんとに此処は切ないよ
蠱惑の森チーム好きとしてもそうだし、何よりダリウスルートの時の切なさと言ったら・・・。゜(゜´Д`゜)゜。
BGMも合いすぎてて何度泣きそうになったが・・・その分うちのリア姫が泣いてましたけどww ←え、そこで?
つーかこの回、リアちゃんも梓ちゃんも泣いちゃってるなww
一番シリアスな回なのでシリアス&切なさ目指して書いてみました・・・多少本編見ながら&やりながら書いてるので此処も泣きそうになったけど(^_^;)
さて、此処で一応第一部は終了となります(ゲーム本編では第二章終了ですけど(^_^;))
次回からは梓もいなくなってしまったので本編に沿って書く事が殆ど出来ないので・・・(ゲーム本編では此処から先は帝国軍側メインで進んでいくので蠱惑の森チーム出番殆どないから・・・ι)ゲーム本編をちょこーっと入れつつ蠱惑の森チームメインでオリジナル展開していこうと思っています
では・・・
2015.06.25
「なんですか」
翌日の朝、いつも通り皆で朝食を済ませ梓もそろそろ食べ終わる頃だろうと思いルードが厨房から出ようとしているとリアが声を掛けた
「・・梓ちゃんの所に行くなら私も行く」
「・・・梓さんと話をするつもりですか」
「うん。本当は昨日の夜にするつもりだったんだけど帰りが遅くなっちゃったから。話すなら多分今しかないと思うから」
リアが忙しいと言うのもあれ以来まだ梓とも話が出来ていないのもルードも知っていた
「解りました。では行きましょう」
自分達が行っても話が平行線だったりしているが、同姓であるリアが行けば話を聞いてもらえる可能性もあるしリアと話せば気持ちも落ちつくだろうと思った
階段を登り梓が今居る部屋をノックすると梓から返事が返ってきてルードは鍵を開けて中へ入りリアも中へ入る
「・・・梓ちゃん」
「! ・・・リアさん」
ベッドに腰掛けていた梓はリアの声を聞き顔を上げると驚いた顔をしていた
「10分後にまた来ます」
「解った」
言うとルードは食器を持って部屋を出て行った
少しだけシンッと静まり返り部屋を一瞥すると殺風景な部屋に窓の外には鉄格子が見え暖かさを感じない
まるで、鳥籠の中にいる気分だった
「・・・久し振りね」
「うん・・・リアさんと話すの、凄く久し振りに感じる」
数日前までは共に怨霊退治に出たり楽しくお喋りをしたり買い物に行ったりしていたが、あの日の夜以来リアも梓もお互いに会えず終いだったがようやく会って話をする事が出来た
「元気そうで良かった」
「リアさんも」
ルードから聞いてはいたが思っていたよりも元気そうな梓を見てほっとし梓も同じようにほっとしてた
こうやってずっと話をしていたいが10分だけと言う時間制限がある為リアも本題へと入った
「梓ちゃん、愛宕山での件はごめんなさい」
「リアさんが謝らなくても・・・リアさんも私とコハクと一緒で何も知らなかったんだし」
その辺りはルードやコハクから聞いたのかリアがあの作戦を知らなかった事を梓は知っていた
「でも、結果的に梓ちゃんを傷つけてしまった。私も知った時は凄く驚いて傷ついたけど、梓ちゃんの方があの場に居たからもっと傷ついてるはずよ」
その言葉はあながち嘘ではなかった
梓は未だにダリウスの革命についての話を聞こうとしない
それは信頼を裏切られた事も含め、まだ聞く気にはなれないしルードからダリウスの革命の話を聞いてもそれが正しい事だと思えていないからだった
「・・・リアさんは、これからダリウスがやろうとしている計画の事を知ってるの?」
「・・・ええ。でも、私が本当の意味でこの計画に参加するのは最後だけ。それ以外は今まで見てきた通りよ」
つまりリアがダリウスの革命と言う計画に参加するのは最後であってそれ以外の時は今のように蠱惑の森と帝都での生活を過ごして良いと言う事だった
自分との対応が全然違うと思っても、リアはダリウス達鬼の一族とは縁のある一族だ
お互いどんな環境や境遇にあるのかは良く解っているだろう・・・
それでも梓はどうしてもこれだけは聞いておきたかった
「沢山の人を傷つけていてもリアさんもダリウスの計画に賛成なの?」
「・・・そこは私も梓ちゃんと同じよ。無関係の人を傷つけたくないし、傷つけてほしくない。そんな事を繰り返していたら今以上に鬼の仕業だって騒がれてしまうし、鬼への印象も悪くなる一方だもの」
その会話は梓もあの公園での演説や、この数日ダリウスやルード、リアが出掛けている時にコハクと虎の協力で外に出ていた時に何度も耳にしていた
リアの本心は梓もみんなで流星群を見に行った時に聞いていたし、リアの言葉を聞きあの時の言葉と決意は変わらないのだと再確認した
「だから昨日、日比谷公園の辺りにいた怨霊を一掃してきたわ」
「え・・・?」
急に振られた言葉と一掃したと言う言葉に驚いて梓は顔を上げた
「あの日以来、瘴気が溢れて色んな所で怨霊が増えているの。ダリウスさんは放っておいて良いって言ったけど、少しでも怨霊は減らしておきたいと思って少しずつだけど見かけたら倒していたの」
「倒したって、リアさん一人で・・。それに一掃したって・・・」
「あの数ならダリウスさんやルードくん、政虎さんでも余裕で倒せるから」
さらっと言いのけるリアだが、数を聞いていないので梓は唖然とするしかなかった
「梓ちゃんが此処から出られない以上、私が代わりに怨霊退治してるの」
「リアさん・・・」
その言葉といつもの優しい笑みを見て色々なものが込み上げてきた
本当はこの数日外に出ている事をリアにだけは教えておきたかった
でもそれは虎から止められていて話す事が出来ないし、何より今日梓達がやろうとしている事も話せないのだった
「っ・・・」
「梓ちゃん? どうしたの?」
急に黙って俯いてしまった梓を見てリアが駆け寄ると少しだけ梓の目に涙が浮かんでいた
「ごめん・・・なんだか、急に・・・」
涙が出てきて・・と続けようとするも言葉が途絶えてしまい続ける事が出来なかった
途端、何かに包まれたような気がして顔を上げるとリアに抱きしめられていた
「・・・辛かったよね」
「え・・?」
「あんな事が遭って急にダリウスさん達の態度も変わってこんな暖かみのない殺風景な部屋に閉じ込められて・・・。私はね、梓ちゃんの事、黒龍の神子って言うより同姓の友達であり妹のように思ってるの。だから、辛い事溜めていないで、我慢しないで、・・今だけは、泣いて良いんだよ」
「リア、さん・・・っ」
まるで我が子の事を心配する母親のように感じ更にまた目頭が熱くなるのを感じた途端涙が溢れてしまい、そんな梓を見てリアは宥めるように優しく背中をさすり、頭も撫でてあげていた
*
「・・・落ちついた?」
「・・・うん」
あれから暫くして梓は落ち着きを取り戻し二人揃ってベッドに腰掛けていた
「急に泣いちゃってごめん・・・」
「気にしないで」
泣いている所を見られて恥ずかしかったのか梓は少し頬を赤くして言うがリアは優しい笑顔を向けてくれている
(やっぱりリアさんと話してると落ちつくし安心出来るな・・・)
と思っていると扉をノックをする音が聞こえルードが失礼しますと一声掛けて部屋に入る
「リアさん、そろそろ時間です」
あっという間にもう10分経ってしまったのかとお互いに思っているとリアがベッドから立ち上がり梓を見て、
「あ、そうだ。梓ちゃん、ルードくん、ちょっとだけ待ってて」
「え?」「え、リアさん」
言うとリアはそのまま部屋を出て何処かへ向かい、1分程で戻って来たがリアの手には何かがあった
「直ぐ終わるからちょっと待ってて」
すれ違い様にルードにそう声を掛け梓の所へ行く
「梓ちゃん、これ」
「! ・・・それ」
リアが持って来たのは梓が居た部屋に飾ってあった物で、それは以前みんなで月一の買い出しに行った時にリアと二人で雑貨店に入って買った硝子で作られた蝶の形をした置物だった
「この部屋何も無くて寂しいでしょ。梓ちゃんこれ気に入っていたから梓ちゃんの部屋から持って来たの」
梓自身もリアが用意してくれたあの部屋を気に入っていて更に一緒に買い物した時に購入したこの置物を気に入っていてずっと戻りたいと思っていたから、リアがこの置物を持って来てくれて嬉しかった
「ありがとう、リアさん」
「うん」
「・・・そろそろよろしいですか」
「・・うん。・・じゃあ梓ちゃん。またね・・・」
「うん、またね」
二人のやり取りを見てルードがそこで声を掛けリアも梓もお互いに挨拶を交わしリアはルードと共に部屋を出た
「・・・? ルードくん?」
階下に向かおうとしているとルードが立ち止まっているのが気になり声を掛けると何か考え事をしている顔をしたが直ぐにリアを見る
「・・いえ。では階下にいらっしゃるダリウス様の所へ行きましょう」
「うん・・」
「あ、リアさんとルードくん戻って来た」
「リア、梓と話しをして来たのかい」
「はい」
階下に行くとコハクがリア達が戻って来た事に気が付き声を掛け続けてダリウスも声を掛けた
「梓はどうしていた?」
「最初に部屋を訪れた時よりリアさんを迎えに行った時の方が表情が戻ったように感じました」
「わあ、流石リアさん」
「へえ。一体何を話していたのかな」
先程見た事をルードが話すとダリウスやコハク、そしてソファに寝そべっていた虎も気になったのか一気に視線が集まる
「それは、女同士の秘密です」
「おや、そう言われてしまったら何も聞けなくなるな」
にこりと良い笑顔で女同士の秘密と言われてしまってはダリウスも聞けなくなってしまう
「ま、とにかく、神子様が元気になったつーならそれはそれで良いんじゃねえの」
「うん。おれもそう思う」
虎の言葉にコハクもダリウスもルードも納得しその場は解散となり、昼からはまたダリウスとルードは競売に出掛け、リアも仕事の為ミルクホールへと向かい、梓もコハクと虎と共に白龍の神子に会う為に村雨と待ち合わせているハイカラヤへと向かった
その夜、
「今日でだいぶ忙しい日は終わったかな・・・」
蠱惑の森に入ってリアは息を吐き出す
ミルクホールの忙しい日程も後数日で終わる
次の新作が出るのは次の月の下旬頃だからそれまでは少し余裕があった
「後で梓ちゃんに持っていこうかな」
リアが手に持っている袋には以前梓と食べたカステラが入っていた
今朝話した時に元気になってはいたが、もう少し気持ちが落ちつくものがあればと思い買って来たのだった
「紅茶と一緒の方が良いだろうから、後でルードくんに良い茶葉を聞いて・・・」
そう思っていると邸の前に着いたが、何処か違和感を覚え歩みが止まる
サアアと木々が風に揺れその風はリアの頬と長い髪にも触れる
だが、その空気もいつもと違っていた
それは普段より空気が清浄になっていたからだった
「この清浄な空気・・・神気が強まってる。・・! まさか!?」
その清浄な空気に触れ、ある答えに辿り着く
「っ!?」
途端、ある部屋から光が発し空気が変わった
「あの部屋って、梓ちゃんがいる・・・。もしかして!」
そこである仮説が浮かび、急いで邸へ入った
「ルードくん!」
「! リアさん。どうしたんですか、そんなに慌てて」
邸に入り居間を見るとリアの声と勢い良く開いた玄関の扉の音に驚いているルードと同じく少し驚いている顔をしてソファに座っているコハクとソファに寝そべっていつも以上に怠そうにしている虎がいた
この場にダリウスがいない事を確認するとリアはまたルードを見る
「ダリウスさんは?」
「ダリウス様なら梓さんの所へ・・・」
「ごめん、ルードくん。これ厨房に置いてて!」
「―― リアさん!?」
ルードの返事を聞くと自分が持っていた紙袋をルードに渡し、急いで階段を駆け上がって行き、普段と違うリアを見てルードも、そして同じくコハクも虎も驚いていた
「・・・なんだぁ?」
「珍しいね、リアさんがあんなに慌ててるなんて・・・」
「ええ・・・」
ルード達の会話は耳に入っていないのかリアはそのまま急いで階段を駆け上がり、梓がいる部屋へと向かい扉を開ける
「ダリウスさんっ!」
「・・・」
少し息を切らせながら部屋の中を見ると、そこにダリウスは居たのだが、
梓の姿はなかった
「・・・ダリウスさん、・・さっきの光って、まさか・・」
「・・ああ、リアが思っている通りだよ。・・・梓は白龍の神子と帝国軍の元へ行ってしまったよ」
「っ!」
群青色の瞳が少し寂しそうにして声も少し悲しさが混ざっていた
「ダリウス様、リアさん、何か遭ったのですか。・・・!」
先程のリアの様子を見てルード達も気になり部屋に入って来たが、
「・・・えっ?」
「おい・・」
梓がいない事、そして立ったまま何処か遠くを見つめているダリウスと今にも泣きそうな顔をしているリアを見て言葉が途絶えてしまった
リアはルードやコハク、虎の声を聞き顔を向けて三人の様子を見てまたダリウスを見て俯くと一筋の涙が流れそれが見えないようにし声も抑えようとしていたがみんなに聞こえてしまったようで視線が集まるのを感じた
「っ・・・!」
どうにか抑えようとしているとふわりと何かに包まれたような気がして少しだけ顔を上げるとダリウスが悲しそうな顔をしてそれでも優しさの伝わる笑顔を向けてくれリアはダリウスの胸を借りて涙を流したのだった
どうやらこの数日、梓はリア達がいない間コハクと虎と共に邸を抜け出していたらしい
リアもダリウスも薄々は気が付いていたが、敢えて聞かずにいたし、リアも梓と話した時に梓が話さなかったので敢えてその事に触れずにいたが、梓がこの部屋から消えたのは今日白龍の神子と会い、白龍の神子、黒龍の神子、二人の神子の祈りが通じ、梓は光に導かれ対である白龍の神子、そして白龍の神子がいる帝国軍の元へ行ってしまった
いつかこうなってしまうのでは・・・
その予感はリアもダリウスも感じていた
だが、その予感は自分達が思っていたよりも早かった
これからは今までみたいに直ぐに接するも共に行動する事も出来ない
それでも、梓ちゃんがこれからの事を考え行動している時に
14.私たちはまた、めぐり合う
かもしれない・・・
だから、
続く
あとがき
・・・はい。遂に、遂に梓がダリウス達蠱惑の森チームから離れる所まできちゃいました・・・
ほんとに此処は切ないよ
蠱惑の森チーム好きとしてもそうだし、何よりダリウスルートの時の切なさと言ったら・・・。゜(゜´Д`゜)゜。
BGMも合いすぎてて何度泣きそうになったが・・・その分うちのリア姫が泣いてましたけどww ←え、そこで?
つーかこの回、リアちゃんも梓ちゃんも泣いちゃってるなww
一番シリアスな回なのでシリアス&切なさ目指して書いてみました・・・多少本編見ながら&やりながら書いてるので此処も泣きそうになったけど(^_^;)
さて、此処で一応第一部は終了となります(ゲーム本編では第二章終了ですけど(^_^;))
次回からは梓もいなくなってしまったので本編に沿って書く事が殆ど出来ないので・・・(ゲーム本編では此処から先は帝国軍側メインで進んでいくので蠱惑の森チーム出番殆どないから・・・ι)ゲーム本編をちょこーっと入れつつ蠱惑の森チームメインでオリジナル展開していこうと思っています
では・・・
2015.06.25