36.月に恋して
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途端、茂みが揺れる音が聞こえリアは振り返った
「キュウ」
「・・・キュウ?」
それと同時に何かの鳴き声が聞こえ茂みから一匹の子狐が出てきた
「・・狐・・?」
「キュウ」
仔狐は茂みから出てリアを見ると一声鳴いてトコトコとリアの側にやって来る
「随分と人懐っこい子ね」
「キュウ」
仔狐を見て微笑んでそう言っていると今度は聞き慣れた声が聞こえてきた
「おーい、キュウ介~・・・って、あれ? リアさん? どうして此処に?」
「コハクくん・・・私はちょっと散歩に」
茂みから出てきたのはコハクで仔狐はコハクを見るとまたキュウと一声鳴いた
「キュウ介ってこの子の事?」
「うん。前にこいつが怪我してる所を助けたら懐かれちゃって・・・」
どうやら以前コハクはこの仔狐が怪我をしている所を見つけ怪我の手当をして逃がしたらしいのだが仔狐はこの辺りに住み着いてしまい人にも慣れてしまったらしい
「ルードくんにはまだ見つかってないけどね。たまにだけどおれがこうやって遊んでやってるんだ」
「そうだったんだ」
それで名前を付けていたし、こんなに人懐っこいのかと思い仔狐を見ると仔狐はリアを見てまたキュウと鳴いた
「・・・撫でてほしいのかな?」
「そうだと思うよ。大人しいやつだから触って平気だよ。ほらっ」
言うとコハクは仔狐を撫でてリアもゆっくりと仔狐を撫でてあげた
「本当だ。それにふわふわしてる」
里に居た頃に狐を見かけた事はあったがこうやって直に触って撫でるのは初めてだった
「あはっ、やっぱり可愛いなぁ」
「うん。この子大人しくて可愛いよね」
「あ、違う違う。おれが言ったのはキュウ介の事じゃなくてリアさんの事なんだけど」
「え?」
コハクの言葉に思わずきょとんとしてしまう
「その顔も可愛い」
「え・・あの、コ、コハク・・くん・・?」
普段より真剣な声で言われ思わずリアも戸惑ってしまった
「リアさん、おれさ、やっぱりリアさんは聖母様だと思うんだ」
「え?」
言うとコハクはキュウ介を抱えて言葉を続ける
「邸に来た時からすっごく温かくてみんなの事を優しく照らして包み込んでくれる人だなって思ってたんだ。おれが記憶の事で悩んでた時も記憶を思い出した時も辛い思いをしていた時も一緒に居てくれておれの事優しく包み込んでくれた。それが嬉しかったし、沢山大切なものをくれたんだ。だからおれ、リアさんにはいーーーぱい感謝してるんだ」
「・・・コハクくん」
いつもの笑顔をしてコハクはそう言い、リアはコハクの素直な気持ちを聞いて少し驚いていた
「だから今度の・・最後の計画の時、おれも全力で戦うよ」
そのコハクの表情と言葉は真剣なものでその意志を受け取ってリアも頷いた
「うん。一緒に頑張ろうね」
「キュウ」
途端キュウ介が一声鳴きそれが二人を応援しているかのように思えた
「あははっ、キュウ介、お前おれ達の事応援してくれてるのか」
「キュウ」
「ふふっ、ありがとう」
そうだと言うようにキュウ介がまた一声鳴きリアも笑ってお礼を言った
「よし、じゃあおれ達はそろそろ行くか。リアさんも戻る?」
「私はもうちょっとこの景色を見てから戻るね」
「そっか。じゃあおやすみなさい」
「うん。お休み」
言うとコハクはキュウ介を抱えて歩いて行った
「へっ、小僧が大した事言うじゃねえか」
「え? 政虎さん」
いつの間にか虎がリアの後ろに居た
「・・・もしかして見ていたんですか?」
「最後の方だけな」
どうやらコハクとキュウ介が立ち去った所を見計らって出て来たようだった
「だが、コハクが言う事もあながち間違っちゃねえよな」
「?」
虎の言葉に疑問を持っていると虎は湖の方を見て話し出す
「前にお前に話しただろ。オレの親父の事。あん時にも言ったがお前はオレの行き場のねえ恨みつらみも簡単に溶かしやがったって」
確かに以前虎にそう言われ、時々だがあの時と同じような優しい笑顔を自分だけに見せてくれる事が多々あった
「政虎さんだって頼りになる所が多いじゃないですか。困っている人がいたら助けてますし」
自分達が困っている時や街に一緒に出た時でも騒動を止めたりあの時も子供を助けたりしていた
「こう言うの・・えっと、確か、ヒーローって言ってったっけ?」
「ヒーロー? なんだそら」
「梓ちゃんが教えてくれたんです。困っている人が居たら助けてくれる人の事を梓ちゃんの世界ではヒーローって言うって」
「へえ・・」
以前梓とミルクホールで話をした時にヒーローの事を教えてくれてそれを聞きまさにそれは政虎さんみたいな人の事を言うのではとリアは思っていた
「なら、リアがオレを呼んだら駆け付けてやるよ」
「え?」
虎の突然の言葉にリアはきょとんとしてしまう
「何意外そうな顔してんだ」
「いえ・・」
そうは言ったものの、虎からそう言われ驚きを隠せないでいた
「次の作戦は何が待ってるか分かんねえ。ダリウス達もお前を危険な目に遭わせねえ為に色々と気を遣うだろうが、即座に助けてやるもの悪くねえ」
「・・・政虎さん・・」
またあの時の様な優しい表情でそう言われ思わず目を瞠ってしまう
「ま、一番良いのはリアがオレの女になるつーなら話は早いがな」
「はあ・・・って、え!///」
虎の言葉に曖昧に返事を返そうとしたが直ぐにその言葉を理解し驚いて顔が赤くなってしまう
「あ、あの、今、何て・・・」
「あ? だから、お前がオレの女になるつーなら話は早いって」
「え、ええ!///」
何故そうなってしまったのかと思っていると虎はにやりと笑ってその隙を見てリアを自分の方に引き寄せた
「あ、あの、・・ま、政虎・・さ」
「・・・久々に味見させろ」
「え? !?」
そう思っていると虎は以前リアにしたように首筋の辺りの髪を避けて顔を近付けようとしていた
「ま、政虎さん、ちょっと、待っ・・・!」
そう言って目を瞑った途端、何かに引き寄せられる感じがした
「・・・虎、貴方、またリアさんにいかがわしい事をする気でしたね」
「え・・・?」
何かに引き寄せられて何かにぶつかったと思っていたら次に聞こえたのはルードの声だった
「ルード、くん・・?」
「無事ですか、リアさん」
「う、うん・・・」
「・・・チッ、邪魔が入りやがったか」
「虎、何か言いましたか?」
「何でもねえよ。おい、リア、さっき言った事覚えとけよ」
言うと虎はそのまま立ち上がってこの場を去って行った
「・・・、やっと立ち去りましたね」
「ルードくん、助けてくれてありがとう」
「いえ・・・、!///」
「? ルードくん?」
ルードはリアの方へ顔を向けるといつも以上に近くにリアの顔がある事に気が付き、頬を染めたがリアはその事に気付いていないのか疑問符を出していた
「な、何でもありません///」
言うとルードはリアから少し放れお互い話しやすい位置に移動する
「・・・それにしても、相変わらず虎は油断も隙もありませんね」
「う、うん・・・」
それにはリアも同意をせざるを得なかった
ちょっと前までは真剣に話をしていたと思っていたがいつの間にか獲物を狙う目になっていた
「ところで、ルードくんはどうして此処に?」
「リアさんが邸から出るのが見えたのですが、なかなか戻って来ないので探しに来たんです」
「そっか。ごめんね、心配掛けちゃって」
「いえ。来て正解でしたけどね」
確かにルードが来なければまた虎に味見をされていた所だった・・・
「以前、リアさんに男への警戒心を持って下さいと言ったはずですが」
「うん・・・言われた」
「邸の中でもその事は思っていた方が良いですよ。特に虎には」
「・・・はい」
迫力に押されてかつい、そう言ってしまうもルードのその忠告は気を付けていたつもりだった
それでも先程のような目に遭ってルードに助けられたのは事実なのだからそこは改めて気を付けておくべきなのかもと思った
「私・・いつもルードくんに助けられてるよね」
確かに事ある毎にルードに良く助けられていた
「ルードくん優しいし本当に頼りになるよね」
「っ・・、いきなりなんですか」
「思った事を言っただけ。いつも感謝してるよ」
「っ///」
そう言ったリアの笑顔はいつもの優しい笑顔でルードも思わず頬を染めて言葉に詰まってしまった
「・・・貴女のそう言う所は、昔から変わらずで・・ずるいです」
コハクや虎よりリアと付き合いがあるルードは昔の事を思いながら、そしてある事を思いながらそれを誤魔化すかのように踵を返した
「そろそろ戻りましょう。ダリウス様が心配しています」
「うん」
言うとリアとルードは並んで歩き出した
「二人とも、お帰り」
「ダリウスさん」
もうすぐ邸に着く、と言う所でダリウスが二人を迎えてくれた
「ルード、先に邸に入ってお茶の準備を頼めるかな」
「畏まりました」
ダリウスの言葉を聞くとルードは一礼をして先に邸の方へと向かって行く
「ダリウスさん・・・もしかして迎えに来てくれたんですか?」
「ああ。リアの帰りが遅かったからね」
「すみません」
「謝らなくて良いよ。リアだって、一人になって考え事をしたい時もあるだろうからね」
確かに今までの事や今後の事を考えていたからダリウスのその言葉は間違いではなかった
「まだ不安、かな」
「いえ、みんなと話して少し落ち着きました」
「そう言う真っ直ぐな姿勢はリアの良い所だね」
言うとダリウスはリアの頭を優しく撫でた
「そんな君がいるから俺も・・・いや、俺達も頑張れるんだよ」
「え・・?」
意外な言葉を言われ目を瞠ってしまう
「リアが居るから邸の中も温かくなっているし、君の優しさが俺達の支えにもなっているんだよ」
「・・・私の方こそ、ダリウスさんやみんなにいつも助けて貰っていますし・・」
今までダリウスやルード、虎やコハク、彼等と一緒に過ごして色々遭ったが、それでも彼等との生活がリアにとっても心地良いものと感じていた
「だから、本当にいつも感謝してます」
「・・・俺の方こそ」
今までなかなかこうやってお礼を言う事がなかったが改めてそう言われお互い驚きもしたがそれは直ぐに嬉しさに変わりダリウスはリアの頭を撫でリアもそれが心地良くて微笑んでいた
「そうやって素直な所も本当に可愛いね」
「っ/// ダリウスさん///」
ダリウスは優しく微笑むとそのままリアを包み込むように抱きしめ、リアは驚いて頬が赤くなっていた
「なあに?」
「その・・急に、抱きしめないで下さい」
「どうして?」
「っ、・・恥ずかしいですから///」
「リアの可愛い顔が直ぐ近くで見られるのに?」
「っ!///」
ダリウスはリアの耳元でそう言うとリアは顔を真っ赤にして恥ずかしさが増し目をギュッと瞑った
「ふふっ、顔が真っ赤だよ」
「・・・ダリウスさんの所為じゃないですか///」
つい先程ルードに警戒心を・・・と言われたばかりだったが、もう1人気を付けなきゃいけないかも・・・とリアは思っていた
「さて、そろそろ邸に入ろうか。ルードもお茶の用意が済んでいる頃だろうし、みんなリアを待っているだろうからね」
言うとダリウスはリアを放しにこりと微笑んでそう言ってリアの手を取り、そのまま邸へ向かい玄関を開けると
「あ、リアさん帰ってきた」
「やっと戻って来やがったか」
「温かいお茶の準備は出来ていますよ」
居間に居たコハク、虎、ルードがリアを見てそう言う
「あーダリウスさん、リアさんと手繋いでる!」
「姫のエスコートだよ。席まで案内するよ」
コハクはリアとダリウスが手を繋いでいるのを見てそう言うがダリウスは気にした様子もなくいつも通りの口調と笑顔でそう言ってリアを席に案内してリアは席に座るとルードがカップにお茶を煎れてくれた
「どうぞ」
「ありがとう、ルードくん」
「虎、先程のような真似はさせませんからね」
「チッ・・・」
「え? さっきって何の事?」
「ガキは気にしなくて良いんだよ」
自分を囲むようにして会話を繰り広げている彼等を見てリアは微笑んでいた
「どうかしましたか」
そんなリアを見てルードが声を掛けるとリアはまた嬉しそうに微笑む
「ううん。ただ、やっぱりこうやってみんなと居られるのが嬉しいなって思って」
その言葉にルード、虎、コハクは驚いて目を瞠り、ダリウスは小さく微笑んでいた
「おれもリアさんと一緒に居られて嬉しいよ」
「・・・私もです」
「急に何を言うかと思ったら何当たり前の事言ってんだか」
「ふふっ、やっぱりみんな同じ事を思っているみたいだね。俺達みんなリアの事を本当に大事に思っているからね」
「はい。私もです」
その言葉を聞き皆いつも以上に笑ったり微笑んだりしていた
いつでも温かく迎えてくれるみんなと居るのが凄く嬉しいし、幸せだなって思う
この先は今までよりも大変な事が起きるだろう
だけど、今だけでも、みんなとこうやって温かい場所に居て一緒に笑っていたいな
カップを取ってお茶を飲みながらリアはそう思っていた
皆、この月に照らされ恋している
それでも月は彼等の側で共に過ごす事を選ぶだろう
だが今はそれでも良いのかもしれないと皆思っていた
皆、月と同じように、今この瞬間が幸せだと感じているから ―――
36.月に恋して(大団円編)
続く
あとがき
大団円ルート突入編も何とか無事に完成!w
頑張って一人一人見せ場を作ってみました
まずはコハク! この子は相変わらずさらっと書けました
キュウ助出したかったんです←w
なので出してコハクとリアちゃんと書いてみましたw
コハクも決意が固まってちゃんとその気持ちを伝えたし、ずっと聖母様って言ってた理由も分かって良かったですねw
そして虎、最初は真剣だったけどやっぱそっちに行くのなww
けど、此処でやっとヒーローも使えたし俺の女に~ってとこも使えたから良し!(←だから何がだww
ルードくん、今回は見事にリアちゃん救出だったねw
でもリアちゃんの言葉に動揺する辺りがやっぱり可愛いと言うか、役得というかww
何にせよ頼りになるけど可愛い部分も書けたので満足してますw
そして最後はダリウスさん、やっぱりダリウスさんは保護者的な立ち位置になりましたねw
でもリアちゃんの事を大事に思っているし、それはみんなも思っている事だって教えてくれたから此処も大事な所で、それがあって最後のあのシーンに行くからね
それでもやっぱりダリウスさんは蠱惑の森チームの中で一番リア姫を抱きしめてるような気がするww←
因みに最後の椅子に座ってる所はゲームパッケージで梓ちゃんが座っていて周りにみんながいる感じですw
大団円は一応本編に沿ってって形にはなりますが、蠱惑の森の皆さんに好かれる方をメインで書いてきますので←w
では次回から各ルートをお楽しみに♪
2015.07.22
「キュウ」
「・・・キュウ?」
それと同時に何かの鳴き声が聞こえ茂みから一匹の子狐が出てきた
「・・狐・・?」
「キュウ」
仔狐は茂みから出てリアを見ると一声鳴いてトコトコとリアの側にやって来る
「随分と人懐っこい子ね」
「キュウ」
仔狐を見て微笑んでそう言っていると今度は聞き慣れた声が聞こえてきた
「おーい、キュウ介~・・・って、あれ? リアさん? どうして此処に?」
「コハクくん・・・私はちょっと散歩に」
茂みから出てきたのはコハクで仔狐はコハクを見るとまたキュウと一声鳴いた
「キュウ介ってこの子の事?」
「うん。前にこいつが怪我してる所を助けたら懐かれちゃって・・・」
どうやら以前コハクはこの仔狐が怪我をしている所を見つけ怪我の手当をして逃がしたらしいのだが仔狐はこの辺りに住み着いてしまい人にも慣れてしまったらしい
「ルードくんにはまだ見つかってないけどね。たまにだけどおれがこうやって遊んでやってるんだ」
「そうだったんだ」
それで名前を付けていたし、こんなに人懐っこいのかと思い仔狐を見ると仔狐はリアを見てまたキュウと鳴いた
「・・・撫でてほしいのかな?」
「そうだと思うよ。大人しいやつだから触って平気だよ。ほらっ」
言うとコハクは仔狐を撫でてリアもゆっくりと仔狐を撫でてあげた
「本当だ。それにふわふわしてる」
里に居た頃に狐を見かけた事はあったがこうやって直に触って撫でるのは初めてだった
「あはっ、やっぱり可愛いなぁ」
「うん。この子大人しくて可愛いよね」
「あ、違う違う。おれが言ったのはキュウ介の事じゃなくてリアさんの事なんだけど」
「え?」
コハクの言葉に思わずきょとんとしてしまう
「その顔も可愛い」
「え・・あの、コ、コハク・・くん・・?」
普段より真剣な声で言われ思わずリアも戸惑ってしまった
「リアさん、おれさ、やっぱりリアさんは聖母様だと思うんだ」
「え?」
言うとコハクはキュウ介を抱えて言葉を続ける
「邸に来た時からすっごく温かくてみんなの事を優しく照らして包み込んでくれる人だなって思ってたんだ。おれが記憶の事で悩んでた時も記憶を思い出した時も辛い思いをしていた時も一緒に居てくれておれの事優しく包み込んでくれた。それが嬉しかったし、沢山大切なものをくれたんだ。だからおれ、リアさんにはいーーーぱい感謝してるんだ」
「・・・コハクくん」
いつもの笑顔をしてコハクはそう言い、リアはコハクの素直な気持ちを聞いて少し驚いていた
「だから今度の・・最後の計画の時、おれも全力で戦うよ」
そのコハクの表情と言葉は真剣なものでその意志を受け取ってリアも頷いた
「うん。一緒に頑張ろうね」
「キュウ」
途端キュウ介が一声鳴きそれが二人を応援しているかのように思えた
「あははっ、キュウ介、お前おれ達の事応援してくれてるのか」
「キュウ」
「ふふっ、ありがとう」
そうだと言うようにキュウ介がまた一声鳴きリアも笑ってお礼を言った
「よし、じゃあおれ達はそろそろ行くか。リアさんも戻る?」
「私はもうちょっとこの景色を見てから戻るね」
「そっか。じゃあおやすみなさい」
「うん。お休み」
言うとコハクはキュウ介を抱えて歩いて行った
「へっ、小僧が大した事言うじゃねえか」
「え? 政虎さん」
いつの間にか虎がリアの後ろに居た
「・・・もしかして見ていたんですか?」
「最後の方だけな」
どうやらコハクとキュウ介が立ち去った所を見計らって出て来たようだった
「だが、コハクが言う事もあながち間違っちゃねえよな」
「?」
虎の言葉に疑問を持っていると虎は湖の方を見て話し出す
「前にお前に話しただろ。オレの親父の事。あん時にも言ったがお前はオレの行き場のねえ恨みつらみも簡単に溶かしやがったって」
確かに以前虎にそう言われ、時々だがあの時と同じような優しい笑顔を自分だけに見せてくれる事が多々あった
「政虎さんだって頼りになる所が多いじゃないですか。困っている人がいたら助けてますし」
自分達が困っている時や街に一緒に出た時でも騒動を止めたりあの時も子供を助けたりしていた
「こう言うの・・えっと、確か、ヒーローって言ってったっけ?」
「ヒーロー? なんだそら」
「梓ちゃんが教えてくれたんです。困っている人が居たら助けてくれる人の事を梓ちゃんの世界ではヒーローって言うって」
「へえ・・」
以前梓とミルクホールで話をした時にヒーローの事を教えてくれてそれを聞きまさにそれは政虎さんみたいな人の事を言うのではとリアは思っていた
「なら、リアがオレを呼んだら駆け付けてやるよ」
「え?」
虎の突然の言葉にリアはきょとんとしてしまう
「何意外そうな顔してんだ」
「いえ・・」
そうは言ったものの、虎からそう言われ驚きを隠せないでいた
「次の作戦は何が待ってるか分かんねえ。ダリウス達もお前を危険な目に遭わせねえ為に色々と気を遣うだろうが、即座に助けてやるもの悪くねえ」
「・・・政虎さん・・」
またあの時の様な優しい表情でそう言われ思わず目を瞠ってしまう
「ま、一番良いのはリアがオレの女になるつーなら話は早いがな」
「はあ・・・って、え!///」
虎の言葉に曖昧に返事を返そうとしたが直ぐにその言葉を理解し驚いて顔が赤くなってしまう
「あ、あの、今、何て・・・」
「あ? だから、お前がオレの女になるつーなら話は早いって」
「え、ええ!///」
何故そうなってしまったのかと思っていると虎はにやりと笑ってその隙を見てリアを自分の方に引き寄せた
「あ、あの、・・ま、政虎・・さ」
「・・・久々に味見させろ」
「え? !?」
そう思っていると虎は以前リアにしたように首筋の辺りの髪を避けて顔を近付けようとしていた
「ま、政虎さん、ちょっと、待っ・・・!」
そう言って目を瞑った途端、何かに引き寄せられる感じがした
「・・・虎、貴方、またリアさんにいかがわしい事をする気でしたね」
「え・・・?」
何かに引き寄せられて何かにぶつかったと思っていたら次に聞こえたのはルードの声だった
「ルード、くん・・?」
「無事ですか、リアさん」
「う、うん・・・」
「・・・チッ、邪魔が入りやがったか」
「虎、何か言いましたか?」
「何でもねえよ。おい、リア、さっき言った事覚えとけよ」
言うと虎はそのまま立ち上がってこの場を去って行った
「・・・、やっと立ち去りましたね」
「ルードくん、助けてくれてありがとう」
「いえ・・・、!///」
「? ルードくん?」
ルードはリアの方へ顔を向けるといつも以上に近くにリアの顔がある事に気が付き、頬を染めたがリアはその事に気付いていないのか疑問符を出していた
「な、何でもありません///」
言うとルードはリアから少し放れお互い話しやすい位置に移動する
「・・・それにしても、相変わらず虎は油断も隙もありませんね」
「う、うん・・・」
それにはリアも同意をせざるを得なかった
ちょっと前までは真剣に話をしていたと思っていたがいつの間にか獲物を狙う目になっていた
「ところで、ルードくんはどうして此処に?」
「リアさんが邸から出るのが見えたのですが、なかなか戻って来ないので探しに来たんです」
「そっか。ごめんね、心配掛けちゃって」
「いえ。来て正解でしたけどね」
確かにルードが来なければまた虎に味見をされていた所だった・・・
「以前、リアさんに男への警戒心を持って下さいと言ったはずですが」
「うん・・・言われた」
「邸の中でもその事は思っていた方が良いですよ。特に虎には」
「・・・はい」
迫力に押されてかつい、そう言ってしまうもルードのその忠告は気を付けていたつもりだった
それでも先程のような目に遭ってルードに助けられたのは事実なのだからそこは改めて気を付けておくべきなのかもと思った
「私・・いつもルードくんに助けられてるよね」
確かに事ある毎にルードに良く助けられていた
「ルードくん優しいし本当に頼りになるよね」
「っ・・、いきなりなんですか」
「思った事を言っただけ。いつも感謝してるよ」
「っ///」
そう言ったリアの笑顔はいつもの優しい笑顔でルードも思わず頬を染めて言葉に詰まってしまった
「・・・貴女のそう言う所は、昔から変わらずで・・ずるいです」
コハクや虎よりリアと付き合いがあるルードは昔の事を思いながら、そしてある事を思いながらそれを誤魔化すかのように踵を返した
「そろそろ戻りましょう。ダリウス様が心配しています」
「うん」
言うとリアとルードは並んで歩き出した
「二人とも、お帰り」
「ダリウスさん」
もうすぐ邸に着く、と言う所でダリウスが二人を迎えてくれた
「ルード、先に邸に入ってお茶の準備を頼めるかな」
「畏まりました」
ダリウスの言葉を聞くとルードは一礼をして先に邸の方へと向かって行く
「ダリウスさん・・・もしかして迎えに来てくれたんですか?」
「ああ。リアの帰りが遅かったからね」
「すみません」
「謝らなくて良いよ。リアだって、一人になって考え事をしたい時もあるだろうからね」
確かに今までの事や今後の事を考えていたからダリウスのその言葉は間違いではなかった
「まだ不安、かな」
「いえ、みんなと話して少し落ち着きました」
「そう言う真っ直ぐな姿勢はリアの良い所だね」
言うとダリウスはリアの頭を優しく撫でた
「そんな君がいるから俺も・・・いや、俺達も頑張れるんだよ」
「え・・?」
意外な言葉を言われ目を瞠ってしまう
「リアが居るから邸の中も温かくなっているし、君の優しさが俺達の支えにもなっているんだよ」
「・・・私の方こそ、ダリウスさんやみんなにいつも助けて貰っていますし・・」
今までダリウスやルード、虎やコハク、彼等と一緒に過ごして色々遭ったが、それでも彼等との生活がリアにとっても心地良いものと感じていた
「だから、本当にいつも感謝してます」
「・・・俺の方こそ」
今までなかなかこうやってお礼を言う事がなかったが改めてそう言われお互い驚きもしたがそれは直ぐに嬉しさに変わりダリウスはリアの頭を撫でリアもそれが心地良くて微笑んでいた
「そうやって素直な所も本当に可愛いね」
「っ/// ダリウスさん///」
ダリウスは優しく微笑むとそのままリアを包み込むように抱きしめ、リアは驚いて頬が赤くなっていた
「なあに?」
「その・・急に、抱きしめないで下さい」
「どうして?」
「っ、・・恥ずかしいですから///」
「リアの可愛い顔が直ぐ近くで見られるのに?」
「っ!///」
ダリウスはリアの耳元でそう言うとリアは顔を真っ赤にして恥ずかしさが増し目をギュッと瞑った
「ふふっ、顔が真っ赤だよ」
「・・・ダリウスさんの所為じゃないですか///」
つい先程ルードに警戒心を・・・と言われたばかりだったが、もう1人気を付けなきゃいけないかも・・・とリアは思っていた
「さて、そろそろ邸に入ろうか。ルードもお茶の用意が済んでいる頃だろうし、みんなリアを待っているだろうからね」
言うとダリウスはリアを放しにこりと微笑んでそう言ってリアの手を取り、そのまま邸へ向かい玄関を開けると
「あ、リアさん帰ってきた」
「やっと戻って来やがったか」
「温かいお茶の準備は出来ていますよ」
居間に居たコハク、虎、ルードがリアを見てそう言う
「あーダリウスさん、リアさんと手繋いでる!」
「姫のエスコートだよ。席まで案内するよ」
コハクはリアとダリウスが手を繋いでいるのを見てそう言うがダリウスは気にした様子もなくいつも通りの口調と笑顔でそう言ってリアを席に案内してリアは席に座るとルードがカップにお茶を煎れてくれた
「どうぞ」
「ありがとう、ルードくん」
「虎、先程のような真似はさせませんからね」
「チッ・・・」
「え? さっきって何の事?」
「ガキは気にしなくて良いんだよ」
自分を囲むようにして会話を繰り広げている彼等を見てリアは微笑んでいた
「どうかしましたか」
そんなリアを見てルードが声を掛けるとリアはまた嬉しそうに微笑む
「ううん。ただ、やっぱりこうやってみんなと居られるのが嬉しいなって思って」
その言葉にルード、虎、コハクは驚いて目を瞠り、ダリウスは小さく微笑んでいた
「おれもリアさんと一緒に居られて嬉しいよ」
「・・・私もです」
「急に何を言うかと思ったら何当たり前の事言ってんだか」
「ふふっ、やっぱりみんな同じ事を思っているみたいだね。俺達みんなリアの事を本当に大事に思っているからね」
「はい。私もです」
その言葉を聞き皆いつも以上に笑ったり微笑んだりしていた
いつでも温かく迎えてくれるみんなと居るのが凄く嬉しいし、幸せだなって思う
この先は今までよりも大変な事が起きるだろう
だけど、今だけでも、みんなとこうやって温かい場所に居て一緒に笑っていたいな
カップを取ってお茶を飲みながらリアはそう思っていた
皆、この月に照らされ恋している
それでも月は彼等の側で共に過ごす事を選ぶだろう
だが今はそれでも良いのかもしれないと皆思っていた
皆、月と同じように、今この瞬間が幸せだと感じているから ―――
36.月に恋して(大団円編)
続く
あとがき
大団円ルート突入編も何とか無事に完成!w
頑張って一人一人見せ場を作ってみました
まずはコハク! この子は相変わらずさらっと書けました
キュウ助出したかったんです←w
なので出してコハクとリアちゃんと書いてみましたw
コハクも決意が固まってちゃんとその気持ちを伝えたし、ずっと聖母様って言ってた理由も分かって良かったですねw
そして虎、最初は真剣だったけどやっぱそっちに行くのなww
けど、此処でやっとヒーローも使えたし俺の女に~ってとこも使えたから良し!(←だから何がだww
ルードくん、今回は見事にリアちゃん救出だったねw
でもリアちゃんの言葉に動揺する辺りがやっぱり可愛いと言うか、役得というかww
何にせよ頼りになるけど可愛い部分も書けたので満足してますw
そして最後はダリウスさん、やっぱりダリウスさんは保護者的な立ち位置になりましたねw
でもリアちゃんの事を大事に思っているし、それはみんなも思っている事だって教えてくれたから此処も大事な所で、それがあって最後のあのシーンに行くからね
それでもやっぱりダリウスさんは蠱惑の森チームの中で一番リア姫を抱きしめてるような気がするww←
因みに最後の椅子に座ってる所はゲームパッケージで梓ちゃんが座っていて周りにみんながいる感じですw
大団円は一応本編に沿ってって形にはなりますが、蠱惑の森の皆さんに好かれる方をメインで書いてきますので←w
では次回から各ルートをお楽しみに♪
2015.07.22
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