TALES OF THE WORLD ~Dear Cruise~
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「ロア達、遅くないか?」
「ああ、もうすぐ夕方だぜ」
その言葉に皆ちらりと時計や外を見た
確かにロアとリア、そしてアスラが入隊試験の為に村の外に出たのは二時間位前だった
試験の内容もそんなに難しいものでもないし、何より戦いに慣れているリアとアスラが一緒だ
「やっぱり何か遭ったんじゃないかな?」
いくら戦いに慣れているとは言っても何か事故が遭ったのかもと言う不安も過ぎっていた
「・・・・」
だがクラースは何かを言う訳でもなく目を瞑ってじっとロア達の帰りを待っていた
「わたし、やっぱりちょっと外見て来る」
「そうだね。僕もアニーやナナリー達の所に「ただいまー」
心配になり椅子から立ち上がったファラを見てクレスも続こうとしていると、途端扉が開く音と同時にロアの声が聞こえた
「「「ロア!!」」」」
「うえ? ど、どうしたの、みんな集まって?」
ロアは一斉に集まって来たクレス、チェスター、リッド、ファラを見て少し驚いてしまった
「どうしたじゃねえだろ」
「お前等の帰りが遅いから心配してたんだよ」
「だからロアは先に帰った方が良いって言ったのに」
「ごめんね。ちょっと色々と遭って・・・」
ロアの後ろには遠慮がちに謝るリアと少しだけ呆れて溜息を吐いているアスラが居た
「・・・とりあえず、遅くなった理由を聞こうか」
そんなリア達を見てクラースは小さく息を吐いてリア達に目を向ける
「入隊試験が終わって帰ろうとした時に、私の仕事の報せが入ったんです。直ぐに終わる内容だったから少しだけロアに待っててもらったんです。それから村に戻ろうとしたんですけど」
「村のちょっと手前の方で村人が魔物に襲われそうになってたからそれを助けたんだ」
「そうしたらおじいさんとおばあさんに凄く感謝されて、お礼をしたいからうちまで来て欲しいって言われて、おじいさん達の荷物を持って家まで行ってお茶とお菓子をご馳走して貰ったんだ」
「で、戻ろうとしてたら馴染みの情報屋の人と会ったんだよね」
「けど、ちょっと時間が掛かりそうだからロアは先にギルドに戻って良いよって言ったんですけど」
「試験付き合ってもらったのに、リアの用事に付き合わないのもなんか悪い気がして」
「・・・それでリアの用事が終わるまで待っていた、と言う事か」
「・・・はい」
「なんだ、そう言う事だったのか」
「良かったぁ、みんな無事で」
「心配を掛けてすいませんでした」
「無事だったんだから気にするなって」
「ああ。怪我もないみたいで安心したよ」
ロア達の無事で何事もなかったと確認出来てクレス達は安堵し、わいわいと賑わっていた
クラースも一通り聞き終え、安堵した顔をしたが直ぐに真剣な表情に戻る
「それでリア、アスラ、ロアの入隊試験は・・・」
その言葉を聞きクレス達も一斉にリアとアスラに視線を向ける
「はい。魔物五体の退治、そしてスクの実を5つ集める事、この入隊試験内容、無事に見届けました」
「スクの実5つ、これだよね」
リアはニコリとしてクラースに告げ、ロアはポシェットからスクの実を取り出してクラースの所に持って行く
「・・・ふむ。確かにスクの実5つを確認した」
「クラースさん、じゃあ」
クレスの言葉にクラースは頷いた
「ロアの入隊試験は合格だ」
「やった~! 良かったね、ロア!」
「これからよろしくな」
「これからはオレ達とも組めるから、一緒にやっていこうぜ」
「改めてよろしく、ロア」
「うん」
「う、うん。お前達、喜ぶ前にまず言う事があるだろう」
ロアの入隊が認められた事に喜びを見せる一同だったが、クラースは皆を落ち着かせる為に一旦咳払いをしてそう告げると皆、何かを思い出したような顔をして一斉にロアの方を向いて同じ事を言った
「「「「「「ようこそ、ギルド・アドリビトムへ!!」」」」」」
03.ギルド・アドリビトム
「ロア、そっちに行ったぞ!」
アリート村の近くにある森の中を疾走する影が数個、リッドが右の草陰に向かって行った魔物を確認するとそこに声を掛けると
「剛・魔神剣!!」
ロアは草陰から飛び出し技を繰り出し、更にその後ろからチェスターの放った数本の矢が目の前にいた数匹の魔物に命中し魔物は悲鳴を上げて倒れた
「やったな」
「ナイス連携!」
「良い動きだったよ」
「みんなのお陰だよ」
ロアは自分の近くに来たクレス、チェスター、リッドに笑顔でお礼を言った
ロアがアドリビトムに入って約一ヶ月、ロアは確実に腕を上げ、仕事も順調にこなし、クレス達とも一緒に稽古をしたり仕事もしていた
現在もクレス達と共に森の魔物退治に出向いていた
「この一ヶ月で、これほどまで依頼をこなすとはな」
「ああ、ほんと大したもんだよ」
クラースはロアがこなした仕事の数が書かれている書類に目を通し、ナナリーもその数を見て微笑んでいた
「なんだか初めて会った頃とは随分印象も変わった気がします」
「ええ。ロアも成長した証拠でしょうね」
アニーの言葉にリアもアスラも同意していた
初めて会った頃は自分の名前以外何も覚えていない状態だったが、剣の腕はなかなかのもので一通りの事を覚えてもらうと言う意味も含めてアドリビトムに加入してみてはどうかと進めた
彼の身元はまだ解らない状態だがあのまま村の外に放りっぱなしにすると言うのは誰も賛成はしない
記憶がない、と言う重いものを抱えているが、ロア自身はそんな事は気にせずただひたすら前だけを見て毎日を楽しく過ごし、剣の腕も最初に比べると断然成長していた
それを見てリア達も思っていたより生活出来ていると言う事に安堵していた
「良い出会いは人を変える、って言うけど、ロアもその一人かもしれないね」
「そうね」
アスラの言葉にリアは何処か懐かしそうな顔をして微笑んでいた
「ただいま~!」
元気の良い女の子の声が聞こえ振り返るとファラが仕事を終えて戻って来た所だった
「おかえりなさい、ファラさん」
「あれ? ロア達まだ戻って来てないの?」
「うん。多分もう少ししたら戻って来ると思うけど」
「そのまま剣の稽古って言うパターンになってるかもしれないけどね」
「・・・あいつ等ならやりかねんな。その前に報告に来て貰えると助かるんだがな・・」
その光景が目に浮かんだのかクラースは大きな溜息を吐いた
「あ、そうだ。さっき郵便屋さんから手紙を貰ってきたの」
「手紙? 誰からだい」
「・・・ほう、これは・・「ただいま~」
クラースがファラから貰った手紙の差出人を見てそう呟いているとまた元気な男の子の声が聞こえた
「あ、皆さん、おかえりなさい」
「おかえり、みんな」
「お疲れ様」
「どうやら無事に戻って来たようだな」
「ん? なんか遭ったのか?」
「いや、みんなの帰りが遅いから、魔物退治が終わったらそのまま剣の稽古でもしてるんじゃないかと思ってね」
「ああ、そういう事か」
ぞろぞろと部屋に入って来たロア達を見てそう呟くと等の本人達は疑問符を出していたがそう言われこの空気を把握した
「・・・剣の稽古、して良かったの?」
「報告してからそうしてくれ・・・ι」
きょとんとして言うロアを見てクラースは更に溜息を吐いた
「じゃあ後でやろうよ、クレス!」
「解った。じゃあ後で一緒にやろう」
「うん!」
「ところでクラースさん、その手紙は・・・?」
話しが盛り上がっていたがアニーがクラースが持っている手紙を見て言うと皆自然とその手紙に目をやった
「ああ、これは本部からの手紙だ」
「またリーダー会議ってやつか?」
「さあな。まだ開けていないから何とも言えないが。ともかく、お前達の仕事は終了だ。後は好きにするといい」
「はーい」
言うとクラースはイスから立ち上がり手紙を持って二階へと上がっていった
「さてと、じゃあ私もそろそろ仕事に行こうかな」
「もう行くの?」
「うん、ちょっと様子を見に着ただけだし。それにこの時間じゃないとあそこの人達いないから・・・」
「あぁ、あのじいさん達のとこか」
「じゃ、あたしもそろそろ宿に戻ろうかね」
「わたしもそろそろ診療の時間なので」
「オレは昼飯でも食うかな」
「じゃあオレもそうするかな。ファラ、オムレツ頼む~」
「はいはい。今作るからちょっと待ってて」
「僕達も食べて行こうか」
「うん。ファラが作るオムレツって美味しいってリッドが言ってたから気になってたんだ」
言って各々仕事に行ったり、食事をしたりしていた
*
「ふう、今日もこれで終わりね」
「お疲れ様、リア」
「あ、リア、アスラ!」
夕日が沈み夜の空へと変わっている頃、リアは仕事終え宿に戻って来た所だったが聞き慣れた声が聞こえ振り返るとロアが二人の所へ走って来ていた
「ロア。ロアも今帰って来た所?」
「うん。あ、夕飯一緒に食べよう。話したい事があるんだ」
「そうだね。早く行かないと込むしね」
アスラの言葉に同意し、二人は宿屋の扉を開けて中に入りいつも座っている場所に座り夕食を取った
ロアが話したいと言っていた事は今日の出来事だった
あの後クレスと剣の稽古をし、また腕を上げ更にクレスから新しい技を教えて貰ったそうだ
「それでご機嫌だったんだね」
「うん、それとちょっとだけ隣の村に行って来たんだ」
「隣の村に?」
「入隊試験の時に採ってきたスクの実があったでしょ、あれを薬にするから持ってきて欲しいってクラースさんの所に連絡が来てクレスと二人で持って行ったんだ」
アリート村から少し離れた所にあるその村はこの村より小さいが、人工はこの村とあまり変わらない
お互いに協力し合って生活をしている村なのでこうやって荷物運びの仕事がある事は珍しい事ではない
「初めて他の村に行ったけど、あっちの村も良い所だったよ」
村での出来事を思い出したのかロアは嬉しそうに笑っていた
「あ、」
が、何かを思い出したのかそのままリアの方を向く
「そういえば、リアとアスラってこの村とは別の所から来たんだよね?」
「ええ。此処からずっと北東の方にある国からね」
「北東の方・・・?」
「地図見せた方が早いんじゃない?」
「そうね。アスラ、持ってきて貰ってもいい?」
「了解。ちょっと待ってて」
首を傾げたロアを見てアスラがそう言いリアは頷き、アスラはそのまま二階に上がりリアが泊っている部屋からワールドマップを持ってきてリアに渡しテーブルの上に広げた
「今いるアリート村は此処ね。ロアが今日行った村は小さいから地図には載ってないけどこの辺りね。で、私の住んでる所は此処よ」
ロアはリアが指さしている所を見てそこに書かれている文字を読んだ
「帝都ウィニアス・・・? どんな所なの?」
「王族が住んでいるお城があって、貴族街や下町、市民街や市場、それに露店街があるのよ。自然もあって街並みも凄く綺麗な所よ」
「へえ、そうなんだ。リアがそう言うんだから凄く良い所なんだろうね」
「ええ。街の人達も良い人達ばかりよ」
本当に嬉しそうに話すリアを見てロアも自然と微笑んでいた
「それと、此処と同じでアドリビトムもあるんだよ」
「え? アドリビトム?」
アスラの言葉にロアは驚いた顔をしてきょとんとした
「同じギルドが他の街にもあるの?」
「ギルドはどの街にも必ずあるよ。けど、アドリビトムだけは他のギルドとは違うんだ」
「アドリビトムは、この聖都サイファートが本拠地なの」
リアはそう言って地図の真ん中にある街を指さした
「・・・そういえば、昼間クラースさん達が本部って言ってたけど、」
「そう、それがこの聖都サイファートの事ね。アドリビトムって言うのは古代神官語で“自由”と言う意味なの」
「聖都は教会信仰の街なんだけど、そこの人達の協力があって、各地にアドリビトムが出来たって訳」
「・・この世界樹って・・・?」
ロアはサイファートの近くにある、地図で言うと丁度真ん中に位置する場所を指さした
「世界樹って言うのはこの世界の守り神みたいなものかな?」
「守り神?」
「簡単に言えば、って事だよ。世界樹はこの世界の源とも言っていいものだからね」
「世界の源・・?」
「私達が生活しているもの、それに技や魔術って言うのは世界樹から生み出される生命エネルギー『マナ』を使っているの」
「僕やリア、みんなが使う技も?」
「うん。まあサイファートと世界樹の話しをこれ以上詳しく話してたらきっと夜が明けちゃうと思うから今はこれくらいで大丈夫?」
「うん、ありがとう、リア、アスラ」
リアとアスラの話しを聞き終えるとロアは正面を向いて食事を再開し、リアも同じように再開した
が、ロアは何かを思っているような顔をしていた
「・・・ねえ、リア」
「ん?」
数分お互いに食事を取っていたがロアがぽつりとリアを呼び、少しだけ首を傾けると
「いつか僕も、世界中を見て回れるかな?」
その言葉にリアは少し驚いていたが直ぐに微笑んで答えた
「ええ。いつか、ロアも世界中を回れる日が来ると思うよ」
リアの言葉と笑みにロアも嬉しそうに微笑み頷いて答えた
続く
あとがき
うわあ、めっちゃ日にち空いてしまったιι
えと、お久し振りです、なんとか第三話仕上がりました
今回はロア君がアドリビトムに加入した所とその後の日常を書いてみました
アリートメンバーほのぼのとした感じを書きたかったので、満足しておりますw
次回からはちょっと展開すると思いますよ!?
では~!
2012.05.23
「ああ、もうすぐ夕方だぜ」
その言葉に皆ちらりと時計や外を見た
確かにロアとリア、そしてアスラが入隊試験の為に村の外に出たのは二時間位前だった
試験の内容もそんなに難しいものでもないし、何より戦いに慣れているリアとアスラが一緒だ
「やっぱり何か遭ったんじゃないかな?」
いくら戦いに慣れているとは言っても何か事故が遭ったのかもと言う不安も過ぎっていた
「・・・・」
だがクラースは何かを言う訳でもなく目を瞑ってじっとロア達の帰りを待っていた
「わたし、やっぱりちょっと外見て来る」
「そうだね。僕もアニーやナナリー達の所に「ただいまー」
心配になり椅子から立ち上がったファラを見てクレスも続こうとしていると、途端扉が開く音と同時にロアの声が聞こえた
「「「ロア!!」」」」
「うえ? ど、どうしたの、みんな集まって?」
ロアは一斉に集まって来たクレス、チェスター、リッド、ファラを見て少し驚いてしまった
「どうしたじゃねえだろ」
「お前等の帰りが遅いから心配してたんだよ」
「だからロアは先に帰った方が良いって言ったのに」
「ごめんね。ちょっと色々と遭って・・・」
ロアの後ろには遠慮がちに謝るリアと少しだけ呆れて溜息を吐いているアスラが居た
「・・・とりあえず、遅くなった理由を聞こうか」
そんなリア達を見てクラースは小さく息を吐いてリア達に目を向ける
「入隊試験が終わって帰ろうとした時に、私の仕事の報せが入ったんです。直ぐに終わる内容だったから少しだけロアに待っててもらったんです。それから村に戻ろうとしたんですけど」
「村のちょっと手前の方で村人が魔物に襲われそうになってたからそれを助けたんだ」
「そうしたらおじいさんとおばあさんに凄く感謝されて、お礼をしたいからうちまで来て欲しいって言われて、おじいさん達の荷物を持って家まで行ってお茶とお菓子をご馳走して貰ったんだ」
「で、戻ろうとしてたら馴染みの情報屋の人と会ったんだよね」
「けど、ちょっと時間が掛かりそうだからロアは先にギルドに戻って良いよって言ったんですけど」
「試験付き合ってもらったのに、リアの用事に付き合わないのもなんか悪い気がして」
「・・・それでリアの用事が終わるまで待っていた、と言う事か」
「・・・はい」
「なんだ、そう言う事だったのか」
「良かったぁ、みんな無事で」
「心配を掛けてすいませんでした」
「無事だったんだから気にするなって」
「ああ。怪我もないみたいで安心したよ」
ロア達の無事で何事もなかったと確認出来てクレス達は安堵し、わいわいと賑わっていた
クラースも一通り聞き終え、安堵した顔をしたが直ぐに真剣な表情に戻る
「それでリア、アスラ、ロアの入隊試験は・・・」
その言葉を聞きクレス達も一斉にリアとアスラに視線を向ける
「はい。魔物五体の退治、そしてスクの実を5つ集める事、この入隊試験内容、無事に見届けました」
「スクの実5つ、これだよね」
リアはニコリとしてクラースに告げ、ロアはポシェットからスクの実を取り出してクラースの所に持って行く
「・・・ふむ。確かにスクの実5つを確認した」
「クラースさん、じゃあ」
クレスの言葉にクラースは頷いた
「ロアの入隊試験は合格だ」
「やった~! 良かったね、ロア!」
「これからよろしくな」
「これからはオレ達とも組めるから、一緒にやっていこうぜ」
「改めてよろしく、ロア」
「うん」
「う、うん。お前達、喜ぶ前にまず言う事があるだろう」
ロアの入隊が認められた事に喜びを見せる一同だったが、クラースは皆を落ち着かせる為に一旦咳払いをしてそう告げると皆、何かを思い出したような顔をして一斉にロアの方を向いて同じ事を言った
「「「「「「ようこそ、ギルド・アドリビトムへ!!」」」」」」
03.ギルド・アドリビトム
「ロア、そっちに行ったぞ!」
アリート村の近くにある森の中を疾走する影が数個、リッドが右の草陰に向かって行った魔物を確認するとそこに声を掛けると
「剛・魔神剣!!」
ロアは草陰から飛び出し技を繰り出し、更にその後ろからチェスターの放った数本の矢が目の前にいた数匹の魔物に命中し魔物は悲鳴を上げて倒れた
「やったな」
「ナイス連携!」
「良い動きだったよ」
「みんなのお陰だよ」
ロアは自分の近くに来たクレス、チェスター、リッドに笑顔でお礼を言った
ロアがアドリビトムに入って約一ヶ月、ロアは確実に腕を上げ、仕事も順調にこなし、クレス達とも一緒に稽古をしたり仕事もしていた
現在もクレス達と共に森の魔物退治に出向いていた
「この一ヶ月で、これほどまで依頼をこなすとはな」
「ああ、ほんと大したもんだよ」
クラースはロアがこなした仕事の数が書かれている書類に目を通し、ナナリーもその数を見て微笑んでいた
「なんだか初めて会った頃とは随分印象も変わった気がします」
「ええ。ロアも成長した証拠でしょうね」
アニーの言葉にリアもアスラも同意していた
初めて会った頃は自分の名前以外何も覚えていない状態だったが、剣の腕はなかなかのもので一通りの事を覚えてもらうと言う意味も含めてアドリビトムに加入してみてはどうかと進めた
彼の身元はまだ解らない状態だがあのまま村の外に放りっぱなしにすると言うのは誰も賛成はしない
記憶がない、と言う重いものを抱えているが、ロア自身はそんな事は気にせずただひたすら前だけを見て毎日を楽しく過ごし、剣の腕も最初に比べると断然成長していた
それを見てリア達も思っていたより生活出来ていると言う事に安堵していた
「良い出会いは人を変える、って言うけど、ロアもその一人かもしれないね」
「そうね」
アスラの言葉にリアは何処か懐かしそうな顔をして微笑んでいた
「ただいま~!」
元気の良い女の子の声が聞こえ振り返るとファラが仕事を終えて戻って来た所だった
「おかえりなさい、ファラさん」
「あれ? ロア達まだ戻って来てないの?」
「うん。多分もう少ししたら戻って来ると思うけど」
「そのまま剣の稽古って言うパターンになってるかもしれないけどね」
「・・・あいつ等ならやりかねんな。その前に報告に来て貰えると助かるんだがな・・」
その光景が目に浮かんだのかクラースは大きな溜息を吐いた
「あ、そうだ。さっき郵便屋さんから手紙を貰ってきたの」
「手紙? 誰からだい」
「・・・ほう、これは・・「ただいま~」
クラースがファラから貰った手紙の差出人を見てそう呟いているとまた元気な男の子の声が聞こえた
「あ、皆さん、おかえりなさい」
「おかえり、みんな」
「お疲れ様」
「どうやら無事に戻って来たようだな」
「ん? なんか遭ったのか?」
「いや、みんなの帰りが遅いから、魔物退治が終わったらそのまま剣の稽古でもしてるんじゃないかと思ってね」
「ああ、そういう事か」
ぞろぞろと部屋に入って来たロア達を見てそう呟くと等の本人達は疑問符を出していたがそう言われこの空気を把握した
「・・・剣の稽古、して良かったの?」
「報告してからそうしてくれ・・・ι」
きょとんとして言うロアを見てクラースは更に溜息を吐いた
「じゃあ後でやろうよ、クレス!」
「解った。じゃあ後で一緒にやろう」
「うん!」
「ところでクラースさん、その手紙は・・・?」
話しが盛り上がっていたがアニーがクラースが持っている手紙を見て言うと皆自然とその手紙に目をやった
「ああ、これは本部からの手紙だ」
「またリーダー会議ってやつか?」
「さあな。まだ開けていないから何とも言えないが。ともかく、お前達の仕事は終了だ。後は好きにするといい」
「はーい」
言うとクラースはイスから立ち上がり手紙を持って二階へと上がっていった
「さてと、じゃあ私もそろそろ仕事に行こうかな」
「もう行くの?」
「うん、ちょっと様子を見に着ただけだし。それにこの時間じゃないとあそこの人達いないから・・・」
「あぁ、あのじいさん達のとこか」
「じゃ、あたしもそろそろ宿に戻ろうかね」
「わたしもそろそろ診療の時間なので」
「オレは昼飯でも食うかな」
「じゃあオレもそうするかな。ファラ、オムレツ頼む~」
「はいはい。今作るからちょっと待ってて」
「僕達も食べて行こうか」
「うん。ファラが作るオムレツって美味しいってリッドが言ってたから気になってたんだ」
言って各々仕事に行ったり、食事をしたりしていた
*
「ふう、今日もこれで終わりね」
「お疲れ様、リア」
「あ、リア、アスラ!」
夕日が沈み夜の空へと変わっている頃、リアは仕事終え宿に戻って来た所だったが聞き慣れた声が聞こえ振り返るとロアが二人の所へ走って来ていた
「ロア。ロアも今帰って来た所?」
「うん。あ、夕飯一緒に食べよう。話したい事があるんだ」
「そうだね。早く行かないと込むしね」
アスラの言葉に同意し、二人は宿屋の扉を開けて中に入りいつも座っている場所に座り夕食を取った
ロアが話したいと言っていた事は今日の出来事だった
あの後クレスと剣の稽古をし、また腕を上げ更にクレスから新しい技を教えて貰ったそうだ
「それでご機嫌だったんだね」
「うん、それとちょっとだけ隣の村に行って来たんだ」
「隣の村に?」
「入隊試験の時に採ってきたスクの実があったでしょ、あれを薬にするから持ってきて欲しいってクラースさんの所に連絡が来てクレスと二人で持って行ったんだ」
アリート村から少し離れた所にあるその村はこの村より小さいが、人工はこの村とあまり変わらない
お互いに協力し合って生活をしている村なのでこうやって荷物運びの仕事がある事は珍しい事ではない
「初めて他の村に行ったけど、あっちの村も良い所だったよ」
村での出来事を思い出したのかロアは嬉しそうに笑っていた
「あ、」
が、何かを思い出したのかそのままリアの方を向く
「そういえば、リアとアスラってこの村とは別の所から来たんだよね?」
「ええ。此処からずっと北東の方にある国からね」
「北東の方・・・?」
「地図見せた方が早いんじゃない?」
「そうね。アスラ、持ってきて貰ってもいい?」
「了解。ちょっと待ってて」
首を傾げたロアを見てアスラがそう言いリアは頷き、アスラはそのまま二階に上がりリアが泊っている部屋からワールドマップを持ってきてリアに渡しテーブルの上に広げた
「今いるアリート村は此処ね。ロアが今日行った村は小さいから地図には載ってないけどこの辺りね。で、私の住んでる所は此処よ」
ロアはリアが指さしている所を見てそこに書かれている文字を読んだ
「帝都ウィニアス・・・? どんな所なの?」
「王族が住んでいるお城があって、貴族街や下町、市民街や市場、それに露店街があるのよ。自然もあって街並みも凄く綺麗な所よ」
「へえ、そうなんだ。リアがそう言うんだから凄く良い所なんだろうね」
「ええ。街の人達も良い人達ばかりよ」
本当に嬉しそうに話すリアを見てロアも自然と微笑んでいた
「それと、此処と同じでアドリビトムもあるんだよ」
「え? アドリビトム?」
アスラの言葉にロアは驚いた顔をしてきょとんとした
「同じギルドが他の街にもあるの?」
「ギルドはどの街にも必ずあるよ。けど、アドリビトムだけは他のギルドとは違うんだ」
「アドリビトムは、この聖都サイファートが本拠地なの」
リアはそう言って地図の真ん中にある街を指さした
「・・・そういえば、昼間クラースさん達が本部って言ってたけど、」
「そう、それがこの聖都サイファートの事ね。アドリビトムって言うのは古代神官語で“自由”と言う意味なの」
「聖都は教会信仰の街なんだけど、そこの人達の協力があって、各地にアドリビトムが出来たって訳」
「・・この世界樹って・・・?」
ロアはサイファートの近くにある、地図で言うと丁度真ん中に位置する場所を指さした
「世界樹って言うのはこの世界の守り神みたいなものかな?」
「守り神?」
「簡単に言えば、って事だよ。世界樹はこの世界の源とも言っていいものだからね」
「世界の源・・?」
「私達が生活しているもの、それに技や魔術って言うのは世界樹から生み出される生命エネルギー『マナ』を使っているの」
「僕やリア、みんなが使う技も?」
「うん。まあサイファートと世界樹の話しをこれ以上詳しく話してたらきっと夜が明けちゃうと思うから今はこれくらいで大丈夫?」
「うん、ありがとう、リア、アスラ」
リアとアスラの話しを聞き終えるとロアは正面を向いて食事を再開し、リアも同じように再開した
が、ロアは何かを思っているような顔をしていた
「・・・ねえ、リア」
「ん?」
数分お互いに食事を取っていたがロアがぽつりとリアを呼び、少しだけ首を傾けると
「いつか僕も、世界中を見て回れるかな?」
その言葉にリアは少し驚いていたが直ぐに微笑んで答えた
「ええ。いつか、ロアも世界中を回れる日が来ると思うよ」
リアの言葉と笑みにロアも嬉しそうに微笑み頷いて答えた
続く
あとがき
うわあ、めっちゃ日にち空いてしまったιι
えと、お久し振りです、なんとか第三話仕上がりました
今回はロア君がアドリビトムに加入した所とその後の日常を書いてみました
アリートメンバーほのぼのとした感じを書きたかったので、満足しておりますw
次回からはちょっと展開すると思いますよ!?
では~!
2012.05.23