長短編
夢主名変更
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「ありがとう御座いました~!」
扉に着けてあるベルがチリンと鳴り扉は閉まり、その店から紙袋を抱えた一人の女性が出てきた
「・・・今日も良い天気」
リアは空を眺めて澄み渡る青空を見上げてぽつりと呟き小さく微笑んだ
「あれから半年、か・・・」
半年前、この世界テルカ・リュミレースは大きな災厄に襲われた
星喰みと言う生き物がこの世界を覆い、世界を食い尽くそうとしていた
その星喰みは此処にいるリア、そしてリア達の仲間とこの世界の人々の力と精霊達のお陰で災厄を打ち倒す事が出来、今までとは違う新しい世界を歩む事となった
その災厄と戦ったのは、帝国騎士団と言われている
だがそれは表向きの事で合って、本当に星喰みと戦ったのはリア達言霊使いとその式神達、そしてリアの大事な仲間であるギルド凛々の明星、そして英雄と言われたデュークとデュークの事を知る“ある人達”だった
彼等の事は今も世の中には殆ど知られていない
それは現皇帝であるヨーデルの計らいだった
世界の災厄の件が片付いた後、彼等に不満がいかないように、と言う事も含めてだった
リア達も戦いの際に各々その責任を担う事を決意していた
「みんな、元気かな?」
リアは荷物を抱え直して小さく微笑んで歩き出し、共に戦った仲間達の事を思った
戦いが終わった後、凛々の明星の一員はその決意を胸に刻み各地に散らばった
リアの幼馴染の一人であるユーリは凛々の明星の首領であるカロルとギルドの一員のジュディスとラピードと共にギルドで活動しているが、皆それぞれ各地にいる
ユーリとラピードは帝都ザーフィアスの下町にいて、呼び出された時にカロルがいるギルドの巣窟であるダングレストや各地へと赴いている
カロルはダングレストで仕事を引き受け、順調にこなしていき凛々の明星の知名度も上がってきていた
が、仕事を選ばないギルド、と言われている為かなかなかメンバーが集まらないようだ
「けどカロル頑張ってるからね」
カロルの頑張りがあるからか、前みたいに“子供がギルドの首領”と言う事に驚かれなくなっていた
ジュディスはギルドの仕事と共に個人で受けた仕事をこなし、相棒のバウルと共に世界を見て回っていて、時々リタの研究を手伝っているようだ
リタは相変わらずの研究三昧で、魔導器に代わる新しい動力機関の探求で悩んでいる
勿論今までやっていた精霊の研究もやっているが、どちらもなかなか上手く捗っていないようだ
「リタなら絶対にやり遂げるわよね」
リアはリタの研究熱心な事と確信を持って微笑んだ
「でも、一番驚いたのはレイヴン・・かな」
リアはぽつりと呟きその時の事を思い出す
レイヴンは戦いが終わった後、自分の二つの顔の事を公にした
下手をすればどちらも批難されかねない行為だが、彼は今も帝都とギルド、両方で活動している
帝国とギルド、どちらも協調を深めたとはいえ今までの事があり互いを称えられる人は多くない
その一人が元騎士団の隊長であるシュヴァーンであり天を射る矢に所属していてユニオン幹部であるレイヴンという男だからだと、リアは理解していた
そして今のレイヴンは前とは違い色々な変化が見えていた
彼も新たな明日を見つけたのだろうと再会した時にリア達は思ったのだった
「・・・?」
ふと露店街に並んでいる本に目が止まった
それは絵本だった
「そういえばエステル、新しい絵本書いたのかな?」
リアは絵本を手に取り、エステルの事を思って小さく微笑んだ
エステルは旅の途中で絵本作家になりたいと言う夢を見つけた
戦いが終わった後、エステルは帝都とハルルを行き来していた
皇族争いが終わり皇帝も決まったが、どうあれ彼女は一国のお姫様
皇族である以上はその責任を果たしたいと思い、ヨーデルの手伝いをしていた
両立が難しい生活をしているにも関わらず、エステルはとても楽しそうにその生活を満喫していた
「今度会った時に新しい話が読めたら良いな」
手に取っていた絵本を置いて顔を上げるとザーフィアス城が目に入った
そしてもう一人の幼馴染であり、現騎士団長であるフレンの事を思った
フレンが騎士団長になり苦しい生活を送っていた人々の暮らしが少しだけ楽になっていた
それはフレンの指揮の下、騎士団とギルドが多くの場面で協力をしているからだろう
魔導器があった頃の生活に比べるとまだまだ苦しい所は多くあるが、それでも幾分マシになっていた
「ユーリとフレンの夢が叶う日もそう遠くないかも」
リアはザーフィアス城から視線を外し露店街を見渡し下町や他の街の事を思い出し、二人が昔から言っていた“誰もが笑って暮らせる世界”と言う事を思い出し小さく笑って歩き出した
仲間達とは手紙のやり取りをしていたから状況を把握していて、数ヶ月前、各々時間が取れ新しくなったこの世界テルカ・リュミレースを見て回る旅をした後、皆また各地に散らばった
リアも戦いが終わった後、自分のすべき事をする為に兄であるセイと相棒であり式神であるアスラ達と共に言霊使いの故郷へと戻って行った
この世界の災厄の出来事はリアの先祖である言霊使いとリアの一族に使えている式神達、そして満月の子とクリティア族が知っていた事だった
リアもエステルも“世界の災厄”を招く力を持っていた
彼女達の稀な力、それが引き金となっていたがお互いにその事は知らなかった
今はお互いにその力を悪用される事なく、事を片付けて生活している
それもこれも仲間達のお陰だと思っている
「ホント、みんなには感謝しきれないほど、なんだよね」
自分達の命を救ってくれ、数え切れない程多くの戦いを乗り越え、禁忌とされている存在である自分達を受け入れてくれ、大切な事を教えてくれた
それはリアと同じ一族で兄であるセイも同じ事を思っていた
セイは妹であり稀な力を持った言霊使いの姫であるリアに重荷を背負わせない為に、稀な力の事や災厄へと続く事を黙っていた
それはリアの一族に使えていて始祖の隷長と同じように長い時を生きているアスラ達式神にとっても同じ事だった
稀な力を持ち本家の人間であるリアとセイは言霊使いの仕事でとても危険な仕事を担う事が多い、その事も含めリアもセイも皆に大事にされて育てられてきた
「兄さんにもアスラ達にも、そして精霊達やデュークやシエラさん、エルシフルにも感謝、なんだよね」
星喰みの戦いに向けて協力をしてくれた精霊達
彼等は始祖の隷長から生まれ変わった存在で今もこの世界を何処かで見守り続けている
彼等が“始祖の隷長”と言う存在だった時と同じように
戦いが終わった後、エステルから離れてしまったが満月の子の力は暴走する事無くエステルは今まで通りの生活を送っている
彼等との接触は無くなったが、リアもエステルと彼等の存在を身近に感じる時がある
アスラ達も今まで通り、彼等とは干渉せずにこの世界がどう変わっていくかを見ていくと決め、故郷から見守り続けていて時々こちらに足を運んだりしていた
そして、あの戦いで何度も忠告をしたり手助けをしてくれたデュークとリアと同じく言霊使いだったシエラ、そして始祖の隷長の長だったエルシフル
彼等もあの戦いの時に協力をしてくれた大事な人達だ
あの後彼等はリア達と別の場所に移動し各々時間が残されている限り話しをしたのだろう
リア達はその場を見ていない為どうなったかは解らないがリア達の所に戻って来たデュークを見た限り、言えずにいた事が言えたのだろうとリアとユーリは思った
その後、デュークとは会ってはいないが今も何処かでこの世界の行く末を見ていて、いつかまた何処かで会えるのだろうとリアは思っていた
露店街と広場を抜け下町に戻って来たリアはある場所へと足を運んだ
「ワンッ!」
リアは小さな路地に入りると聞き覚えのある鳴き声が聞こえた
「ラピード、久しぶり」
「アンっ、アンっ!」
「貴方達も久しぶりね」
荷物を置き屈むと足下にラピードと二匹の子犬がやってくる
「暫く見ない間にまた大きくなったね」
「ワフっ!」「「アンっ!!」」
リアが子犬達を撫でながら言うとラピードと二匹の子犬は嬉しそうに答えた
この子犬はラピードの子供だった
どちらもラピードそっくりで、子供の頃のラピードを知っているリアとユーリとフレンとセイとアスラは初めて見た時に当時の事を思い出して顔を見合わせて笑ってしまった
リアは紙袋の中からミルクと小さな皿を二つ取り出して、皿にミルクを注いで子犬達の前に出した
「はい、ミルク。ラピードはこっちね」
「ワン」
元気良くミルクを飲む二匹を見てリアは小さく笑い、ラピードにドッグフードが入った皿を出した
そしてその親子達を見て微笑んでいるとミルクを飲み終えた子犬達がじっとラピードの前に置かれたドッグフードを見ていた
「ふふっ。貴方達はもう少し大きくなったらね」
「「ワンぅ?」」
リアはその様子が可愛くて笑いながら子犬達を撫でると、子犬達はリアの言葉に疑問符を出していた
「やっぱりこの子達も賢い子になるわね、ラピード」
「ワンっ!」
ラピードの子供である子犬達を見てこの年で自分が言っている事を理解していると分かり、ラピードの子供の頃とそして軍用犬だったラピードの父親、ランバートや他の軍用犬達の事を思いそう言ったのだった
「そういえば、ユーリは?」
此処最近仕事も一段落して下町に戻って来ているリアだったが、肝心のユーリとはまだ会っていない
あの戦いの時、ユーリはリアに自分の気持ちを伝えリアもユーリが誰もよりも大事な存在 だ、と気付き思いを伝え恋人同士となった
お互いに仕事の合間を見つけては下町に戻って来て会っていたが、今回はまだ会えていない
「戻るね、って早めに連絡してなかったからかもだけど・・・」
いつもなら連絡を入れて戻るのだが、今回は思ったより早く仕事が片付いたから手紙を出すのが遅れてしまった
「ワフッ」
「ラピード? きゃっ///!?」
そう思っていると急にラピードが一声鳴き、リアが疑問符を出していると急に後ろから何かに抱きしめられた
「なにやってんだ、こんなとこで」
その懐かしい声と暖かさにリアは振り向くと
「ユーリ!」
そこには今思っていた人物、ユーリの顔がありユーリはリアを後ろから抱きしめていた
「どうして此処が解ったの?」
「さっきテッドがリアがラピードんとこ行くの見たって聞いてな。つか帰って来るなら連絡しろよ。手紙今届いたぞ」
「ごめんね。連絡遅れて・・・」
ユーリはリアが出した手紙を見せながら言うとリアは少しだけシュンとしてしまった
「ま、オレも今戻ってたとこだけどな」
そんなリアを見てユーリは小さく笑ってリアの頭を撫でた
「ギルドの仕事? それとも、また何処かに行ってたの?」
「ん? なんでだ?」
「みんなが言ってたよ、色んな所でユーリを見たって。兄さんもアスラ達もね」
「あいつ等、んな事言ってたのかよ」
リアは体の向きを変えながら言うとユーリは苦笑していた
「神出鬼没だけど、どうなの? って、手紙で聞かれてるんだけど」
仲間達からの手紙には近況報告なども含めリアとユーリの事も書かれている事が多かった
特に最近はユーリが一人で色んな所にいるのを見かけた、と言う事が書かれていた
リアも情報集めをしている式神達からそう言った話しは聞いていたが、リア自身はそれを見た事がないがこれだけ報告が出ているからなのかみんなから色々と心配されていた
「みんな心配してるよ?」
「余計なお世話だっつっとけ」
ユーリの言葉にリアは思わず笑ってしまった
「で、リアはそれにどう答えてんだ?」
「ん? ユーリだからね、って」
「なんだよそれ」
「ふふっ」
「なんで笑うんだよ」
「ううん」
そう言ってリアはまた笑いだし、ユーリは拗ねたような顔をしていた
(そういう所がユーリ、なんだよね)
戦いが終わった後でも仲間達からの手紙でも下町の人々からも、色々と心配されている所があるが、リアは知っている
ユーリが世界の事も旅での出来事も、そしてリアの事も含め、
今もずっと自分の信じる正義を貫き通していると言う事を
変わっていない彼を見てリアは自然と微笑んで笑っていた
「ったく、いつまで笑ってんだよ」
「ふふっ、ごめん」
リアは笑うのをやめてユーリを見た
(そんなユーリだから、好きになったのかも)
昔から変わらない優しさと強さ、それがこの世界を救いリア自身も救ってくれた
だから・・・。
「ユーリ、」
「ん?」
「言うの遅くなっちゃったけど、」
リアはそこで言葉を切り、
「ただいま」
満面の笑みを浮かべユーリに抱きついた
ユーリは驚いて目を瞠ったが直ぐに小さく笑って、
「ああ、おかえり」
そう返事を返しリアを抱きしめ唇にキスを落とした
これからも、ずっと、
ずっと、傍にいようね。
Avec la pensée qui ne change pas
END
あとがき
小説書いたのも含めお久しぶりですw
PS3版のヴェスペリアのシナリオブックのユーリ達のその後のストーリー“不変と流転の狭間で”を読んだ後にこれに沿って箱版ED後とオリジナルで考えていた設定を含んで箱版ED後のそれぞれを書いてみました
本編でも言ってた通り、レイヴンの事は本当に驚きでした
けどそれが許されたのは彼の人望があったからなんでしょうね
あと、凛々の明星が各地に散ってた事も驚きだったな
でも確かに彼等はずっと同じ所にいたり一緒に居たりって言う感じじゃないから個々にやって集まるって方があってるのかもしれませんね
そしてラピードも忘れちゃいけない!
まさか子供がいたなんてね~!
ラピードにそっくりって事はやっぱ劇場版で見た仔ラピっぽいんでしょうねぇ~ww
他のキャラ達もそれぞれ頑張っているようで、今後もどうなっていくのか楽しみですねw
ユーリが変わらずだと言うのはやっぱり安心しますよね
けど彼も色々と成長してると思うのは俺だけでしょうか?
箱版の方ではユーリもリアちゃんもちゃんと恋人同士になっているので最後はちょっとだけその後の二人を書いてみました
ちゃんと甘いものとか日常的な事はそのうち書きたいと思っています
今回のタイトルはフランス語が一番しっくりと来たのでフランス語にしましたが発音は知りませんw
そして当サイトも一年を迎えました
これも大いに応援して下さっている皆様のお陰です、本当に有り難う御座います!
それを記念して箱版ED後のこの話を書いてみました
長くなりましたが、此処まで読んで頂き、有り難う御座いました!
Avec la pensée qui ne change pas:変わらない想いと共に、
2010.06.16
扉に着けてあるベルがチリンと鳴り扉は閉まり、その店から紙袋を抱えた一人の女性が出てきた
「・・・今日も良い天気」
リアは空を眺めて澄み渡る青空を見上げてぽつりと呟き小さく微笑んだ
「あれから半年、か・・・」
半年前、この世界テルカ・リュミレースは大きな災厄に襲われた
星喰みと言う生き物がこの世界を覆い、世界を食い尽くそうとしていた
その星喰みは此処にいるリア、そしてリア達の仲間とこの世界の人々の力と精霊達のお陰で災厄を打ち倒す事が出来、今までとは違う新しい世界を歩む事となった
その災厄と戦ったのは、帝国騎士団と言われている
だがそれは表向きの事で合って、本当に星喰みと戦ったのはリア達言霊使いとその式神達、そしてリアの大事な仲間であるギルド凛々の明星、そして英雄と言われたデュークとデュークの事を知る“ある人達”だった
彼等の事は今も世の中には殆ど知られていない
それは現皇帝であるヨーデルの計らいだった
世界の災厄の件が片付いた後、彼等に不満がいかないように、と言う事も含めてだった
リア達も戦いの際に各々その責任を担う事を決意していた
「みんな、元気かな?」
リアは荷物を抱え直して小さく微笑んで歩き出し、共に戦った仲間達の事を思った
戦いが終わった後、凛々の明星の一員はその決意を胸に刻み各地に散らばった
リアの幼馴染の一人であるユーリは凛々の明星の首領であるカロルとギルドの一員のジュディスとラピードと共にギルドで活動しているが、皆それぞれ各地にいる
ユーリとラピードは帝都ザーフィアスの下町にいて、呼び出された時にカロルがいるギルドの巣窟であるダングレストや各地へと赴いている
カロルはダングレストで仕事を引き受け、順調にこなしていき凛々の明星の知名度も上がってきていた
が、仕事を選ばないギルド、と言われている為かなかなかメンバーが集まらないようだ
「けどカロル頑張ってるからね」
カロルの頑張りがあるからか、前みたいに“子供がギルドの首領”と言う事に驚かれなくなっていた
ジュディスはギルドの仕事と共に個人で受けた仕事をこなし、相棒のバウルと共に世界を見て回っていて、時々リタの研究を手伝っているようだ
リタは相変わらずの研究三昧で、魔導器に代わる新しい動力機関の探求で悩んでいる
勿論今までやっていた精霊の研究もやっているが、どちらもなかなか上手く捗っていないようだ
「リタなら絶対にやり遂げるわよね」
リアはリタの研究熱心な事と確信を持って微笑んだ
「でも、一番驚いたのはレイヴン・・かな」
リアはぽつりと呟きその時の事を思い出す
レイヴンは戦いが終わった後、自分の二つの顔の事を公にした
下手をすればどちらも批難されかねない行為だが、彼は今も帝都とギルド、両方で活動している
帝国とギルド、どちらも協調を深めたとはいえ今までの事があり互いを称えられる人は多くない
その一人が元騎士団の隊長であるシュヴァーンであり天を射る矢に所属していてユニオン幹部であるレイヴンという男だからだと、リアは理解していた
そして今のレイヴンは前とは違い色々な変化が見えていた
彼も新たな明日を見つけたのだろうと再会した時にリア達は思ったのだった
「・・・?」
ふと露店街に並んでいる本に目が止まった
それは絵本だった
「そういえばエステル、新しい絵本書いたのかな?」
リアは絵本を手に取り、エステルの事を思って小さく微笑んだ
エステルは旅の途中で絵本作家になりたいと言う夢を見つけた
戦いが終わった後、エステルは帝都とハルルを行き来していた
皇族争いが終わり皇帝も決まったが、どうあれ彼女は一国のお姫様
皇族である以上はその責任を果たしたいと思い、ヨーデルの手伝いをしていた
両立が難しい生活をしているにも関わらず、エステルはとても楽しそうにその生活を満喫していた
「今度会った時に新しい話が読めたら良いな」
手に取っていた絵本を置いて顔を上げるとザーフィアス城が目に入った
そしてもう一人の幼馴染であり、現騎士団長であるフレンの事を思った
フレンが騎士団長になり苦しい生活を送っていた人々の暮らしが少しだけ楽になっていた
それはフレンの指揮の下、騎士団とギルドが多くの場面で協力をしているからだろう
魔導器があった頃の生活に比べるとまだまだ苦しい所は多くあるが、それでも幾分マシになっていた
「ユーリとフレンの夢が叶う日もそう遠くないかも」
リアはザーフィアス城から視線を外し露店街を見渡し下町や他の街の事を思い出し、二人が昔から言っていた“誰もが笑って暮らせる世界”と言う事を思い出し小さく笑って歩き出した
仲間達とは手紙のやり取りをしていたから状況を把握していて、数ヶ月前、各々時間が取れ新しくなったこの世界テルカ・リュミレースを見て回る旅をした後、皆また各地に散らばった
リアも戦いが終わった後、自分のすべき事をする為に兄であるセイと相棒であり式神であるアスラ達と共に言霊使いの故郷へと戻って行った
この世界の災厄の出来事はリアの先祖である言霊使いとリアの一族に使えている式神達、そして満月の子とクリティア族が知っていた事だった
リアもエステルも“世界の災厄”を招く力を持っていた
彼女達の稀な力、それが引き金となっていたがお互いにその事は知らなかった
今はお互いにその力を悪用される事なく、事を片付けて生活している
それもこれも仲間達のお陰だと思っている
「ホント、みんなには感謝しきれないほど、なんだよね」
自分達の命を救ってくれ、数え切れない程多くの戦いを乗り越え、禁忌とされている存在である自分達を受け入れてくれ、大切な事を教えてくれた
それはリアと同じ一族で兄であるセイも同じ事を思っていた
セイは妹であり稀な力を持った言霊使いの姫であるリアに重荷を背負わせない為に、稀な力の事や災厄へと続く事を黙っていた
それはリアの一族に使えていて始祖の隷長と同じように長い時を生きているアスラ達式神にとっても同じ事だった
稀な力を持ち本家の人間であるリアとセイは言霊使いの仕事でとても危険な仕事を担う事が多い、その事も含めリアもセイも皆に大事にされて育てられてきた
「兄さんにもアスラ達にも、そして精霊達やデュークやシエラさん、エルシフルにも感謝、なんだよね」
星喰みの戦いに向けて協力をしてくれた精霊達
彼等は始祖の隷長から生まれ変わった存在で今もこの世界を何処かで見守り続けている
彼等が“始祖の隷長”と言う存在だった時と同じように
戦いが終わった後、エステルから離れてしまったが満月の子の力は暴走する事無くエステルは今まで通りの生活を送っている
彼等との接触は無くなったが、リアもエステルと彼等の存在を身近に感じる時がある
アスラ達も今まで通り、彼等とは干渉せずにこの世界がどう変わっていくかを見ていくと決め、故郷から見守り続けていて時々こちらに足を運んだりしていた
そして、あの戦いで何度も忠告をしたり手助けをしてくれたデュークとリアと同じく言霊使いだったシエラ、そして始祖の隷長の長だったエルシフル
彼等もあの戦いの時に協力をしてくれた大事な人達だ
あの後彼等はリア達と別の場所に移動し各々時間が残されている限り話しをしたのだろう
リア達はその場を見ていない為どうなったかは解らないがリア達の所に戻って来たデュークを見た限り、言えずにいた事が言えたのだろうとリアとユーリは思った
その後、デュークとは会ってはいないが今も何処かでこの世界の行く末を見ていて、いつかまた何処かで会えるのだろうとリアは思っていた
露店街と広場を抜け下町に戻って来たリアはある場所へと足を運んだ
「ワンッ!」
リアは小さな路地に入りると聞き覚えのある鳴き声が聞こえた
「ラピード、久しぶり」
「アンっ、アンっ!」
「貴方達も久しぶりね」
荷物を置き屈むと足下にラピードと二匹の子犬がやってくる
「暫く見ない間にまた大きくなったね」
「ワフっ!」「「アンっ!!」」
リアが子犬達を撫でながら言うとラピードと二匹の子犬は嬉しそうに答えた
この子犬はラピードの子供だった
どちらもラピードそっくりで、子供の頃のラピードを知っているリアとユーリとフレンとセイとアスラは初めて見た時に当時の事を思い出して顔を見合わせて笑ってしまった
リアは紙袋の中からミルクと小さな皿を二つ取り出して、皿にミルクを注いで子犬達の前に出した
「はい、ミルク。ラピードはこっちね」
「ワン」
元気良くミルクを飲む二匹を見てリアは小さく笑い、ラピードにドッグフードが入った皿を出した
そしてその親子達を見て微笑んでいるとミルクを飲み終えた子犬達がじっとラピードの前に置かれたドッグフードを見ていた
「ふふっ。貴方達はもう少し大きくなったらね」
「「ワンぅ?」」
リアはその様子が可愛くて笑いながら子犬達を撫でると、子犬達はリアの言葉に疑問符を出していた
「やっぱりこの子達も賢い子になるわね、ラピード」
「ワンっ!」
ラピードの子供である子犬達を見てこの年で自分が言っている事を理解していると分かり、ラピードの子供の頃とそして軍用犬だったラピードの父親、ランバートや他の軍用犬達の事を思いそう言ったのだった
「そういえば、ユーリは?」
此処最近仕事も一段落して下町に戻って来ているリアだったが、肝心のユーリとはまだ会っていない
あの戦いの時、ユーリはリアに自分の気持ちを伝えリアもユーリが誰もよりも大事な
お互いに仕事の合間を見つけては下町に戻って来て会っていたが、今回はまだ会えていない
「戻るね、って早めに連絡してなかったからかもだけど・・・」
いつもなら連絡を入れて戻るのだが、今回は思ったより早く仕事が片付いたから手紙を出すのが遅れてしまった
「ワフッ」
「ラピード? きゃっ///!?」
そう思っていると急にラピードが一声鳴き、リアが疑問符を出していると急に後ろから何かに抱きしめられた
「なにやってんだ、こんなとこで」
その懐かしい声と暖かさにリアは振り向くと
「ユーリ!」
そこには今思っていた人物、ユーリの顔がありユーリはリアを後ろから抱きしめていた
「どうして此処が解ったの?」
「さっきテッドがリアがラピードんとこ行くの見たって聞いてな。つか帰って来るなら連絡しろよ。手紙今届いたぞ」
「ごめんね。連絡遅れて・・・」
ユーリはリアが出した手紙を見せながら言うとリアは少しだけシュンとしてしまった
「ま、オレも今戻ってたとこだけどな」
そんなリアを見てユーリは小さく笑ってリアの頭を撫でた
「ギルドの仕事? それとも、また何処かに行ってたの?」
「ん? なんでだ?」
「みんなが言ってたよ、色んな所でユーリを見たって。兄さんもアスラ達もね」
「あいつ等、んな事言ってたのかよ」
リアは体の向きを変えながら言うとユーリは苦笑していた
「神出鬼没だけど、どうなの? って、手紙で聞かれてるんだけど」
仲間達からの手紙には近況報告なども含めリアとユーリの事も書かれている事が多かった
特に最近はユーリが一人で色んな所にいるのを見かけた、と言う事が書かれていた
リアも情報集めをしている式神達からそう言った話しは聞いていたが、リア自身はそれを見た事がないがこれだけ報告が出ているからなのかみんなから色々と心配されていた
「みんな心配してるよ?」
「余計なお世話だっつっとけ」
ユーリの言葉にリアは思わず笑ってしまった
「で、リアはそれにどう答えてんだ?」
「ん? ユーリだからね、って」
「なんだよそれ」
「ふふっ」
「なんで笑うんだよ」
「ううん」
そう言ってリアはまた笑いだし、ユーリは拗ねたような顔をしていた
(そういう所がユーリ、なんだよね)
戦いが終わった後でも仲間達からの手紙でも下町の人々からも、色々と心配されている所があるが、リアは知っている
ユーリが世界の事も旅での出来事も、そしてリアの事も含め、
今もずっと自分の信じる正義を貫き通していると言う事を
変わっていない彼を見てリアは自然と微笑んで笑っていた
「ったく、いつまで笑ってんだよ」
「ふふっ、ごめん」
リアは笑うのをやめてユーリを見た
(そんなユーリだから、好きになったのかも)
昔から変わらない優しさと強さ、それがこの世界を救いリア自身も救ってくれた
だから・・・。
「ユーリ、」
「ん?」
「言うの遅くなっちゃったけど、」
リアはそこで言葉を切り、
「ただいま」
満面の笑みを浮かべユーリに抱きついた
ユーリは驚いて目を瞠ったが直ぐに小さく笑って、
「ああ、おかえり」
そう返事を返しリアを抱きしめ唇にキスを落とした
これからも、ずっと、
ずっと、傍にいようね。
Avec la pensée qui ne change pas
END
あとがき
小説書いたのも含めお久しぶりですw
PS3版のヴェスペリアのシナリオブックのユーリ達のその後のストーリー“不変と流転の狭間で”を読んだ後にこれに沿って箱版ED後とオリジナルで考えていた設定を含んで箱版ED後のそれぞれを書いてみました
本編でも言ってた通り、レイヴンの事は本当に驚きでした
けどそれが許されたのは彼の人望があったからなんでしょうね
あと、凛々の明星が各地に散ってた事も驚きだったな
でも確かに彼等はずっと同じ所にいたり一緒に居たりって言う感じじゃないから個々にやって集まるって方があってるのかもしれませんね
そしてラピードも忘れちゃいけない!
まさか子供がいたなんてね~!
ラピードにそっくりって事はやっぱ劇場版で見た仔ラピっぽいんでしょうねぇ~ww
他のキャラ達もそれぞれ頑張っているようで、今後もどうなっていくのか楽しみですねw
ユーリが変わらずだと言うのはやっぱり安心しますよね
けど彼も色々と成長してると思うのは俺だけでしょうか?
箱版の方ではユーリもリアちゃんもちゃんと恋人同士になっているので最後はちょっとだけその後の二人を書いてみました
ちゃんと甘いものとか日常的な事はそのうち書きたいと思っています
今回のタイトルはフランス語が一番しっくりと来たのでフランス語にしましたが発音は知りませんw
そして当サイトも一年を迎えました
これも大いに応援して下さっている皆様のお陰です、本当に有り難う御座います!
それを記念して箱版ED後のこの話を書いてみました
長くなりましたが、此処まで読んで頂き、有り難う御座いました!
Avec la pensée qui ne change pas:変わらない想いと共に、
2010.06.16