星喰み編
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ダングレストとノードポリカに行って戻って来た私達は唖然とした
何もなかった野原に街が出来ていたのだ
流石、天下の幸福の市場・・・
みんな徹夜で頑張ったのか、騎士団も大工ギルドの人達も地面に横になったまま寝ていた
フレンに話を聞くとヨーデル様も来て貰える事になり今は船で向かっているそうだ
だけど、今は一刻を争う時なのでジュディスがバウルで迎えに行く事にした
そして今此処に帝国からフレンとヨーデル様、ユニオンからはハリーとカウフマンさん、戦士の殿堂からはナッツさんと言う世界の首脳陣が集まり、私達は今この世界で何が起こっているのか、そして魔導器を精霊に変える事や今までの事を話した
勿論、私達言霊使いと式神の事も・・・
90.親友
「精霊・・・星喰み・・・デューク・・・」
「言霊使いに式神・・・」
「世界中の魔刻を精霊の変える・・・」
「・・・途方もない話ですね・・・」
私達の話を聞いたヨーデル様達はやっぱり信じられない、と言った顔をしていた
「信じがたいだろうがな。これが今オレ達のぶつかってる現実だ」
「魔導器がこの世から無くなる・・・結界もなくなる。大混乱になるな」
「でなきゃデュークか星喰みにやられて一巻の終わり」
「選択の余地はないが・・・果たして受け入れられるか?」
レイヴンの言葉にハリーも頷いて答え、エステルも必死に語り掛ける
「誰も破滅の未来を望んでいないと思います。辛くても生きていれば前に進めます」
「うん。だからボク達はやるんだ」
「・・・人々の混乱を防ぎ、明日へ導くのは帝国の務め。今こそ人々の為の知性を敷く時なのですね」
「我々も忙しくなりますね」
「人々の生活基盤を整えて魔導器に変わる産業を確立・・・燃えるわね」
「結界無しで魔物を退ける為の方法も考えなければ」
「傭兵ギルドや魔狩りの剣だけじゃまかなえないしな」
「騎士団の再編をギルドと合同で行うというのはどうでしょう?」
「面白い試みだけど、すんなりいくかしら?」
思っていた以上に話しが進み、前を向いている彼等を見て私達は安堵した顔をした
彼等に任せれば大丈夫だ
そう思って皆ユーリを見ると、ユーリは私達の視線に気付くと頷き歩き出し私達もその後に続いた
「最後まで立ち会わないのか?」
騎士団本部から離れようとしているとフレンが私達を呼び止めた
「ああいうのはオレ等の仕事じゃねぇだろ」
「そうそう。お偉いさんが纏めれば良いんじゃない?」
「彼等が思うよりも人々は今の生活から離れられないと思うけれど、彼等はそれを支えるのが仕事。私達の仕事は・・・」
「星喰みをぶっ潰してデュークのヤツを止める事」
「そして、リアの力も解放するさ」
「・・・そうか」
「すまねぇな。面倒な事は全部お前等に回しちまって」
フレンは首を横に振る
「こっちの台詞だ。いつも一番辛い所を君達に任せてしまってすまない」
「ううん、お互い様だもん」
「そうだな」
私達はお互いの顔を見て小さく笑った
「さぁ、ボク等も頑張らなくっちゃ!」
「でも世界中の魔刻にアクセスする方法が・・・」
「それなんですけど・・・」
リタがそう言うとフレンの後ろにいたウィチル君が口を開いて数歩前に出た
「アレクセイやバルボスの残した研究成果の中に、魔導器間のネットワークを構築するみたいな記述が・・・」
「本当!? それ今どこにあるの!?」
「えっと、僕の私物と一緒に運んで来ました・・・。あ、ちょっと、ねえ、人の荷物勝手に見る気ですか!?」
「あ! わたしも行って来ます」
リタはその言葉を聞き、直ぐさま走って行き、慌ててウィチル君もエステルも走って行った
「・・・行っちゃった」
「少し、望みが繋がったようね」
「ええ。あの子がああなったらきっと答えを見つけてくれるわ」
「だな。期待して待ってようぜ」
「じゃあ俺等は今のうちに休んどくか」
そう言って兄さん達が歩きだし私も続こうとしたがフレンがユーリを呼び止めた
「ユーリ、ちょっと良いかい?」
「ん、ああどうした?」
そして何か話を終えると二人は街の外へ歩き出した
「・・・?」
アスラとラピードと一緒に二人の後を追うと二人は街から少し離れた所で止まった
「改まってどうしたんだ?」
「君はこのまま行くのか?」
「あん?」
「此処に世界の指揮を執る人達が集まってる。今こそ君の功績を称えられる時だ」
「またその話か」
「僕の功績の半分、いやそれ以上が本当は君の・・・」
「良いじゃねぇか。誰がやったかなんてどうでも」
「良くないさ。何故自分だけ損な選択をする? どうして辛い部分を全部背負い込もうとする? 僕には背負えないからか?」
フレンはそう言って少しだけ悲しそうな顔をした
確かにユーリは損な役回りをずっと引き受けている
それは私の事も含め、というのもあるだろうけど・・・
「・・・お前はオレが背負えないもの、背負ってくれてんじゃねえか。オレが好き勝手やれてんのが誰のお陰かって事くらい、分かってるつもりだぜ」
「だけど・・・!!」
フレンは一度言葉を切り首を横に振った
「・・・駄目だ、どうも余計な言葉ばかり出て来てしまう」
「フッ、なら・・・」
ユーリはそう言って剣を抜いた
「こいつで来いよ」
「ユーリ・・・!」
「お前が口でオレに勝てる訳ねぇだろ。お前がオレに勝てるのは・・・こいつだろ?」
「そうか・・・そうだったな。君はいつもそうだ」
そしてフレンも剣を抜き、ユーリの剣に自分の剣を重ね、お互いに重ねた剣をじっと見る
「思いは全てこの剣に乗せる!」
「・・・良いぜ、きな!」
ユーリの言葉を合図に、剣を弾き後ろに下がり、そして体制を整えて走り出した
「・・・始まったね」
「うん。二人共互角だから、どっちが勝ってもおかしくない」
「けど、ボク等が知っている以上に本気で戦うと思うよ」
「うん・・・」
私とアスラはそこで言葉を切り、少し先で剣を交じり合わせているユーリとフレンに目を戻した
数分剣を交じり合わせているとユーリがフレンを見て口を開いた
「更に腕を上げたな」
「腕を上げたのは君も同じだろ」
「お互い無駄に年月重ねて来た訳じゃないか」
「でもこうして剣を合わせるのは何年振りだろう」
「闘技場でも戦っただろう、忘れちまったか?」
「違うよ。此処まで色々遭ったからね。それに」
「それに?」
「あの時と今は何か違うんだ」
「奇遇だな。オレもあん時と何か違う気がする」
「何だろうこの感じ」
「何だって良いだろ、オレは全力でお前にぶつかって行く!」
「それじゃあ僕も全力で君を倒す!」
「倒せるものなら倒してみろ!」
言ってお互いに向かって行き、剣を交じり合わせる
だけどその顔は闘技場で見た顔よりも、魔物の群れの中に入った時に見た顔よりも、もっと輝いていて活き活きしていた
(本気で楽しんでる)
ユーリとアスラの言う通り、ユーリもフレンもお互いに腕を上げ今まで以上に本気でぶつかり合っている
互角の戦い、一瞬の気の緩みが、この勝負の勝敗を決める事になるだろう
「そろそろいかせてもらうよ!」
「飛ばしていきますか!」
同時に力を解放すると、距離を置いて大技を繰り出す体制に入った
(これで勝負は決まる・・・!)
「此処で終いにするよ! ・・はぁぁっ! 光竜滅牙槍!!」
「貫け! 鮮烈なる刃!! 無辺の闇を鋭く斬り裂き、仇名す者を微塵に砕く!!」
ユーリはフレンの隙を見て、そのまま飛び込む
「漸毅狼影陣ッ!!」
「ぐあっ!」
ユーリの大技が見事にヒットし、フレンは地面に倒れそれを見るとユーリもゆっくりと地面に倒れ、二人は大の字になって荒い息を吐き呼吸を整えていた
「剣でも・・・負けてしまったな」
「はっはっは。ざまぁ見ろ」
「・・・腕を上げたな、ユーリ」
「・・・お前もな。昔のままのお前だったら楽勝だったはずなんだがな」
「・・・昔、剣に誓ったっけ。人々の笑顔の為に戦うのだと」
フレンは剣を見つめながら言う
「ああ、例え歩む道が違っても」
「背負うものが違っても」
「賛辞を受けても、罵られても・・・」
「騎士もギルドもそれは変わらない。そうだね?」
ユーリも剣を掲げ見つめる
「オレ達は互いに手の届かない所がある」
「だから僕達は一人ではない」
「「・・・・・」」
そしてお互い無言で剣を重ねた
「フッ」「ハッ」
「「はははははは」」
そしてお互いに小さく笑い、声を出して笑い出し、そんな二人の嬉しそうな顔を見て私も自然と微笑んでいた
「やっぱりあの二人はああでなくちゃね」
「うん。ユーリとフレン、やっぱり親友、よね」
「ワン」
そしてゆっくりと二人の元へ向か出す
「二人共お疲れ様」
「リア。アスラにラピードも」
「お前等いつから・・・」
「じっとしてて、今治すから」
身体を起こそうとしていた二人にそう声を掛けるとユーリとフレンは小さく笑ってまた横になった
「・・・もしかして見てたのかい?」
「うん、ずっとね」
「ずっと、って事は最初からか?」
「うん」
「・・・参ったなぁ」
「お陰でイイもん見れたけどな」
「「「セイ!」」」「兄さん!」
フレンが照れくさそうに言っていると突然兄さんの声が聞こえ振り向くと、いつの間にか私達の後ろに兄さんが立っていた
「兄さん、いつの間に・・・」
「つか、見れたって事はセイも見てたのか?」
「ああ。お前等、ホント腕上げたな」
兄さんはいつも以上に優しい声で言うとユーリとフレンは嬉しそうに笑っていた
子供の頃からずっと私達の面倒を見ていた兄さんにしてみれば、ユーリとフレンの成長振りは本当に嬉しかったのだろう
それはアスラも同じだったのか、アスラも笑っていて私にもそれが伝わって自然と微笑んでいた
「はい、これで大丈夫」
「ありがとう、リア」
「サンキュ」
二人の傷もなくなった所で私は手を止めた
けど、ユーリとフレンが起き上がる気配はなかった
「? きゃあ!」
まだ何処か痛むのかと思って見ていると、急に腕を引っ張られユーリとフレンの間に倒れた
「・・・ユーリ、急に引っ張らないで」
幸い、芝生があったから怪我はなかったけど・・・
「リア、怪我はないかい?」
「うん、大丈夫」
「見てみろよ」
フレンに返事を返しているとユーリが空を見ながらそう言い、私も地面に寝転んで空を眺めると、綺麗な夕空が広がっていた
「綺麗・・・」
その言葉を聞くと兄さんも地面に寝転んで空を眺めだした
「なんかガキん時みたいだな」
「ああ。いつもこの位の時間まで遊んでたっけ」
「あの頃、凄く一生懸命遊んでたね」
「そうだな」
そう言って私達は昔を思い出しながら夕空を眺めた
あの頃はこんな風に四人一緒にいる事が当たり前で、毎日夕空になるまで夢中で遊んでいた
大人になって会う機会も減り、会ってもゆっくり出来なかったし、最近は色々とあって忘れていたけど、こんな風に地面に寝転んだりして空を眺めていた事もあったな
それを思い出し小さく笑うと、ユーリとフレンと兄さんも小さく笑って、また夕空を眺めだした
「・・・良い親友、だね」
「ワン・・・」
地面に寝転んで夕空を眺めているリア達を見て、アスラはラピードだけに聞こえる声でそう言い、その言葉にラピードも同意してリア達を見ていた
続く
あとがき
終わったぁぁ~~~!
やっと完成した!
此処は本当に好きな所なのでかなり悩んで納得いくまで書きました!
最後はギャグで終わらせようかな、とか思ったけどしんみりとした空気で終わらせました
本当にユーリとフレンは良い親友ですよね
本音を言える、本気で戦える、信頼しきってる、お互いの事をちゃんと解っている親友ってなかなかいませんからね
流石、制作者達も認める相思相愛な二人!w
因みに、此処もアビスのルークVSアッシュ戦の時みたいに曲とセリフが聞きたいが為に、フィールド逃げ回ってた一人ですww(だって神曲だし、ミッション解除もあったけどさ・・・ι)
此処の回は語り出すと長くなるのでこの辺で終わらせよう(笑)
さて、次回は決戦前夜の話しになります
会話メインになるから頑張って書こう・・・
では!
下書き:2009.01.18
完成:2009.08.18
何もなかった野原に街が出来ていたのだ
流石、天下の幸福の市場・・・
みんな徹夜で頑張ったのか、騎士団も大工ギルドの人達も地面に横になったまま寝ていた
フレンに話を聞くとヨーデル様も来て貰える事になり今は船で向かっているそうだ
だけど、今は一刻を争う時なのでジュディスがバウルで迎えに行く事にした
そして今此処に帝国からフレンとヨーデル様、ユニオンからはハリーとカウフマンさん、戦士の殿堂からはナッツさんと言う世界の首脳陣が集まり、私達は今この世界で何が起こっているのか、そして魔導器を精霊に変える事や今までの事を話した
勿論、私達言霊使いと式神の事も・・・
90.親友
「精霊・・・星喰み・・・デューク・・・」
「言霊使いに式神・・・」
「世界中の魔刻を精霊の変える・・・」
「・・・途方もない話ですね・・・」
私達の話を聞いたヨーデル様達はやっぱり信じられない、と言った顔をしていた
「信じがたいだろうがな。これが今オレ達のぶつかってる現実だ」
「魔導器がこの世から無くなる・・・結界もなくなる。大混乱になるな」
「でなきゃデュークか星喰みにやられて一巻の終わり」
「選択の余地はないが・・・果たして受け入れられるか?」
レイヴンの言葉にハリーも頷いて答え、エステルも必死に語り掛ける
「誰も破滅の未来を望んでいないと思います。辛くても生きていれば前に進めます」
「うん。だからボク達はやるんだ」
「・・・人々の混乱を防ぎ、明日へ導くのは帝国の務め。今こそ人々の為の知性を敷く時なのですね」
「我々も忙しくなりますね」
「人々の生活基盤を整えて魔導器に変わる産業を確立・・・燃えるわね」
「結界無しで魔物を退ける為の方法も考えなければ」
「傭兵ギルドや魔狩りの剣だけじゃまかなえないしな」
「騎士団の再編をギルドと合同で行うというのはどうでしょう?」
「面白い試みだけど、すんなりいくかしら?」
思っていた以上に話しが進み、前を向いている彼等を見て私達は安堵した顔をした
彼等に任せれば大丈夫だ
そう思って皆ユーリを見ると、ユーリは私達の視線に気付くと頷き歩き出し私達もその後に続いた
「最後まで立ち会わないのか?」
騎士団本部から離れようとしているとフレンが私達を呼び止めた
「ああいうのはオレ等の仕事じゃねぇだろ」
「そうそう。お偉いさんが纏めれば良いんじゃない?」
「彼等が思うよりも人々は今の生活から離れられないと思うけれど、彼等はそれを支えるのが仕事。私達の仕事は・・・」
「星喰みをぶっ潰してデュークのヤツを止める事」
「そして、リアの力も解放するさ」
「・・・そうか」
「すまねぇな。面倒な事は全部お前等に回しちまって」
フレンは首を横に振る
「こっちの台詞だ。いつも一番辛い所を君達に任せてしまってすまない」
「ううん、お互い様だもん」
「そうだな」
私達はお互いの顔を見て小さく笑った
「さぁ、ボク等も頑張らなくっちゃ!」
「でも世界中の魔刻にアクセスする方法が・・・」
「それなんですけど・・・」
リタがそう言うとフレンの後ろにいたウィチル君が口を開いて数歩前に出た
「アレクセイやバルボスの残した研究成果の中に、魔導器間のネットワークを構築するみたいな記述が・・・」
「本当!? それ今どこにあるの!?」
「えっと、僕の私物と一緒に運んで来ました・・・。あ、ちょっと、ねえ、人の荷物勝手に見る気ですか!?」
「あ! わたしも行って来ます」
リタはその言葉を聞き、直ぐさま走って行き、慌ててウィチル君もエステルも走って行った
「・・・行っちゃった」
「少し、望みが繋がったようね」
「ええ。あの子がああなったらきっと答えを見つけてくれるわ」
「だな。期待して待ってようぜ」
「じゃあ俺等は今のうちに休んどくか」
そう言って兄さん達が歩きだし私も続こうとしたがフレンがユーリを呼び止めた
「ユーリ、ちょっと良いかい?」
「ん、ああどうした?」
そして何か話を終えると二人は街の外へ歩き出した
「・・・?」
アスラとラピードと一緒に二人の後を追うと二人は街から少し離れた所で止まった
「改まってどうしたんだ?」
「君はこのまま行くのか?」
「あん?」
「此処に世界の指揮を執る人達が集まってる。今こそ君の功績を称えられる時だ」
「またその話か」
「僕の功績の半分、いやそれ以上が本当は君の・・・」
「良いじゃねぇか。誰がやったかなんてどうでも」
「良くないさ。何故自分だけ損な選択をする? どうして辛い部分を全部背負い込もうとする? 僕には背負えないからか?」
フレンはそう言って少しだけ悲しそうな顔をした
確かにユーリは損な役回りをずっと引き受けている
それは私の事も含め、というのもあるだろうけど・・・
「・・・お前はオレが背負えないもの、背負ってくれてんじゃねえか。オレが好き勝手やれてんのが誰のお陰かって事くらい、分かってるつもりだぜ」
「だけど・・・!!」
フレンは一度言葉を切り首を横に振った
「・・・駄目だ、どうも余計な言葉ばかり出て来てしまう」
「フッ、なら・・・」
ユーリはそう言って剣を抜いた
「こいつで来いよ」
「ユーリ・・・!」
「お前が口でオレに勝てる訳ねぇだろ。お前がオレに勝てるのは・・・こいつだろ?」
「そうか・・・そうだったな。君はいつもそうだ」
そしてフレンも剣を抜き、ユーリの剣に自分の剣を重ね、お互いに重ねた剣をじっと見る
「思いは全てこの剣に乗せる!」
「・・・良いぜ、きな!」
ユーリの言葉を合図に、剣を弾き後ろに下がり、そして体制を整えて走り出した
「・・・始まったね」
「うん。二人共互角だから、どっちが勝ってもおかしくない」
「けど、ボク等が知っている以上に本気で戦うと思うよ」
「うん・・・」
私とアスラはそこで言葉を切り、少し先で剣を交じり合わせているユーリとフレンに目を戻した
数分剣を交じり合わせているとユーリがフレンを見て口を開いた
「更に腕を上げたな」
「腕を上げたのは君も同じだろ」
「お互い無駄に年月重ねて来た訳じゃないか」
「でもこうして剣を合わせるのは何年振りだろう」
「闘技場でも戦っただろう、忘れちまったか?」
「違うよ。此処まで色々遭ったからね。それに」
「それに?」
「あの時と今は何か違うんだ」
「奇遇だな。オレもあん時と何か違う気がする」
「何だろうこの感じ」
「何だって良いだろ、オレは全力でお前にぶつかって行く!」
「それじゃあ僕も全力で君を倒す!」
「倒せるものなら倒してみろ!」
言ってお互いに向かって行き、剣を交じり合わせる
だけどその顔は闘技場で見た顔よりも、魔物の群れの中に入った時に見た顔よりも、もっと輝いていて活き活きしていた
(本気で楽しんでる)
ユーリとアスラの言う通り、ユーリもフレンもお互いに腕を上げ今まで以上に本気でぶつかり合っている
互角の戦い、一瞬の気の緩みが、この勝負の勝敗を決める事になるだろう
「そろそろいかせてもらうよ!」
「飛ばしていきますか!」
同時に力を解放すると、距離を置いて大技を繰り出す体制に入った
(これで勝負は決まる・・・!)
「此処で終いにするよ! ・・はぁぁっ! 光竜滅牙槍!!」
「貫け! 鮮烈なる刃!! 無辺の闇を鋭く斬り裂き、仇名す者を微塵に砕く!!」
ユーリはフレンの隙を見て、そのまま飛び込む
「漸毅狼影陣ッ!!」
「ぐあっ!」
ユーリの大技が見事にヒットし、フレンは地面に倒れそれを見るとユーリもゆっくりと地面に倒れ、二人は大の字になって荒い息を吐き呼吸を整えていた
「剣でも・・・負けてしまったな」
「はっはっは。ざまぁ見ろ」
「・・・腕を上げたな、ユーリ」
「・・・お前もな。昔のままのお前だったら楽勝だったはずなんだがな」
「・・・昔、剣に誓ったっけ。人々の笑顔の為に戦うのだと」
フレンは剣を見つめながら言う
「ああ、例え歩む道が違っても」
「背負うものが違っても」
「賛辞を受けても、罵られても・・・」
「騎士もギルドもそれは変わらない。そうだね?」
ユーリも剣を掲げ見つめる
「オレ達は互いに手の届かない所がある」
「だから僕達は一人ではない」
「「・・・・・」」
そしてお互い無言で剣を重ねた
「フッ」「ハッ」
「「はははははは」」
そしてお互いに小さく笑い、声を出して笑い出し、そんな二人の嬉しそうな顔を見て私も自然と微笑んでいた
「やっぱりあの二人はああでなくちゃね」
「うん。ユーリとフレン、やっぱり親友、よね」
「ワン」
そしてゆっくりと二人の元へ向か出す
「二人共お疲れ様」
「リア。アスラにラピードも」
「お前等いつから・・・」
「じっとしてて、今治すから」
身体を起こそうとしていた二人にそう声を掛けるとユーリとフレンは小さく笑ってまた横になった
「・・・もしかして見てたのかい?」
「うん、ずっとね」
「ずっと、って事は最初からか?」
「うん」
「・・・参ったなぁ」
「お陰でイイもん見れたけどな」
「「「セイ!」」」「兄さん!」
フレンが照れくさそうに言っていると突然兄さんの声が聞こえ振り向くと、いつの間にか私達の後ろに兄さんが立っていた
「兄さん、いつの間に・・・」
「つか、見れたって事はセイも見てたのか?」
「ああ。お前等、ホント腕上げたな」
兄さんはいつも以上に優しい声で言うとユーリとフレンは嬉しそうに笑っていた
子供の頃からずっと私達の面倒を見ていた兄さんにしてみれば、ユーリとフレンの成長振りは本当に嬉しかったのだろう
それはアスラも同じだったのか、アスラも笑っていて私にもそれが伝わって自然と微笑んでいた
「はい、これで大丈夫」
「ありがとう、リア」
「サンキュ」
二人の傷もなくなった所で私は手を止めた
けど、ユーリとフレンが起き上がる気配はなかった
「? きゃあ!」
まだ何処か痛むのかと思って見ていると、急に腕を引っ張られユーリとフレンの間に倒れた
「・・・ユーリ、急に引っ張らないで」
幸い、芝生があったから怪我はなかったけど・・・
「リア、怪我はないかい?」
「うん、大丈夫」
「見てみろよ」
フレンに返事を返しているとユーリが空を見ながらそう言い、私も地面に寝転んで空を眺めると、綺麗な夕空が広がっていた
「綺麗・・・」
その言葉を聞くと兄さんも地面に寝転んで空を眺めだした
「なんかガキん時みたいだな」
「ああ。いつもこの位の時間まで遊んでたっけ」
「あの頃、凄く一生懸命遊んでたね」
「そうだな」
そう言って私達は昔を思い出しながら夕空を眺めた
あの頃はこんな風に四人一緒にいる事が当たり前で、毎日夕空になるまで夢中で遊んでいた
大人になって会う機会も減り、会ってもゆっくり出来なかったし、最近は色々とあって忘れていたけど、こんな風に地面に寝転んだりして空を眺めていた事もあったな
それを思い出し小さく笑うと、ユーリとフレンと兄さんも小さく笑って、また夕空を眺めだした
「・・・良い親友、だね」
「ワン・・・」
地面に寝転んで夕空を眺めているリア達を見て、アスラはラピードだけに聞こえる声でそう言い、その言葉にラピードも同意してリア達を見ていた
続く
あとがき
終わったぁぁ~~~!
やっと完成した!
此処は本当に好きな所なのでかなり悩んで納得いくまで書きました!
最後はギャグで終わらせようかな、とか思ったけどしんみりとした空気で終わらせました
本当にユーリとフレンは良い親友ですよね
本音を言える、本気で戦える、信頼しきってる、お互いの事をちゃんと解っている親友ってなかなかいませんからね
流石、制作者達も認める相思相愛な二人!w
因みに、此処もアビスのルークVSアッシュ戦の時みたいに曲とセリフが聞きたいが為に、フィールド逃げ回ってた一人ですww(だって神曲だし、ミッション解除もあったけどさ・・・ι)
此処の回は語り出すと長くなるのでこの辺で終わらせよう(笑)
さて、次回は決戦前夜の話しになります
会話メインになるから頑張って書こう・・・
では!
下書き:2009.01.18
完成:2009.08.18