星喰み編
夢主名変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
クロームとの戦いも終わり、無事に精霊化を済ませ、彼女は『時に凪ぎ、時に荒ぶ風を統べる者』として転生した
今はまだ眠っている為、デュークの事など聞きたい事が聞けないのでとりあえず、頂上に向かう事にした
86.秘めた想いを刻んで
「ふぃ~、やっと半分ってとこ?」
「せめて気流が安定してればバウルに来て貰えるのだけど」
中腹まで戻って来ると私達は足を止めた
登りになるとやっぱり体力を使うから少し疲れてしまう
そう思っていると私達の前に風が吹いて精霊が現れた
「・・・知覚が・・・これが精霊になるという事・・・。こんなにも多くの事が隠されていたとは・・・」
「目覚めたんだな、えっと・・・」
「貴方は・・・クロームと呼ばれた方が良いかしら?」
「いえ・・・私はもう始祖の隷長のクロームではありません。新たな名を受けるべきでしょう」
「なら・・・シルフって名前はどうです? 風を紡ぐ者、って意味です」
「シルフ・・・ではそれを我が名としましょう」
「それじゃ改めてよろしく、風の精霊シルフ」
「ええ」
「・・・シルフ、デュークが何故人間を嫌うのか教えてくんねえか」
「・・・解りました」
シルフはそう言って私達を見て話を始めた
「・・・人魔戦争は知っていますね。始祖の隷長には人間と共に生きる道を選ぶ者と、人間を拒む者がいました。人魔戦争は古代の禁を破った人間と人間を拒む始祖の隷長戦いでした」
「で、戦いはデュークと言う英雄の活躍により人間は勝利し納め、人魔戦争は終結した」
そう答えたのは兄さんの隣にいたレイヴンだった
「デュークが英雄?」
「そうだったんですか・・・」
「帝国が隠してた真相の一つってやつよ」
「だからレイヴンはデュークの事知ってたんだ」
「まあね」
「あの戦争は人間の力だけで勝利を掴んだのではないのです。共存を唱える始祖の隷長の長、エルシフルが人間と共に戦い人間に勝利をもたらしたのです」
エルシフル、その言葉に聞き覚えがあった
それは以前フェローが聖核になる前にぽつりと呟いた言葉だった
けど、その名前を聞くと何故か心臓が脈を打つ
「マジかよ・・・そんな話、俺も知らなかったぜ・・・けんども・・・この話がデュークの人間不信にどう繋がるってのよ?」
「エルシフルはデュークの友でした。デュークはエルシフルと共に人を拒むものの長と戦い倒したのです。しかし戦争が終結した時、エルシフルの力を恐れた帝国は傷ついたエルシフルを襲い、命を奪ったのです。静観するとデュークに約束したにもかからわず」
「そんな・・・」
「・・・・」
「成る程な・・・。人間を信じられなくなる訳だ」
「戦争の陰でそんな事が遭ったのね」
「・・・あいつがどんなにキツい裏切りになってたとしても、全ての人間の命を犠牲にする権利なんてねえよ」
「デュークより先に星喰みを滅ぼさなければ、結局人間は滅びる事になるでしょう。急ぎなさい。気流を抑えました。これでバウルも此処まで来る事が出来るでしょう」
「ありがとう、シルフ」
「精霊化は順調だけど・・・」
「ああ、デュークも何かやばそげ」
「・・・そうだな」
その返事を聞くとシルフは姿を消し、ジュディスがバウルを呼んでくれて船に乗り込んだ
「ついに四属性の精霊が揃ったね」
「ああ、後は・・・」
「世界中の魔導器の魔刻を精霊に転生させる、ですね」
「・・・そうね。四精霊の力だけで星喰みを抑えられればその必要はないんだけど」
「中途半端で挑める相手じゃないでしょーよ。万全を期すべきよね。失敗できねぇもの」
「解ってるけど・・・」
「精霊を生み出すというだけでもテルカ・リュミレースのあり方を変えてしまっている、世界の為とはいえ、ね」
「確かにわたし達の判断だけで世界の人々の生活すら変えてしまうのは問題だと思います」
「そうかもだね・・・」
「オレ達がやろうとしてる事を理解して貰わなきゃやってる事はアレクセイと変わらねぇのかもしれねぇ。けど、理解を求めてる時間もねぇ」
「でも帝国騎士団やギルドのみんなにちゃんと話しておく事は出来るんじゃないかな」
「それで私達のやり方を否定されてしまったら、私達はホントに人々に仇なす大悪党よ?」
「・・・・」
その言葉に少しだけ沈黙が流れる
確かにそうだ
けど、世界が無くなる事や人々がいなくなるのはもっとイヤだ
「・・・オレはこのまま世界が破滅しちまうのは我慢出来ねぇ」
そう思っていると最初に口を開いたのはユーリだった
「デュークがやろうとしてる事で世界が救われても普通に暮らしてる奴等が消えちまっちゃ意味がねぇ。だからオレは大悪党と言われても魔導器を捨てて星喰みを倒したい」
「じゃないと、リアも安心して暮らせねえからな」
「ぁ・・・」
そう言えばそうだった
此処の所、精霊化の事で頭が一杯だったし、力が抑えられているから忘れていたけど、私の稀な力はまだ星喰みに反応しているのだった
「・・・もしかして忘れてた?」
「・・・ちょっとだけι」
アスラは小声で私に聞き、その問いに苦笑して私も小声で返すとユーリと兄さんはみんなを見据えた
「みんな、どうする? 降りるなら今だぜ」
「俺様は着いてくぜ。なんせ、俺の命は凛々の明星のもんだしな」
「私も。フェローやベリウスが託してくれた気持ちがあるもの。それに・・・中途半端は好きじゃないわ」
「やらないと後悔するってのを知っちゃったし、此処でやめても後悔するし」
「うん。ボクも後悔したくない」
「はい。自分で選択した事ならどんな結界になっても受け入れられる・・・この旅で学んだ事です」
「それに・・・世界のみんなも分かってくれる。変わっていく世界を受け入れられない程弱くないよ!」
「みんなが笑って暮らす為の事だし、そう信じたい」
「俺達も星喰みとはケリ付けなきゃなんねえしな」
「だから私達も着いて行くよ。みんなの気持ちを叶える為にも、世界を救う為にも、ね」
「ワンワン! ワォン!」
私の言葉にラピードも同意し、ユーリは笑って私達を見た
「解った。みんな、最後まで一緒に行こう」
「じゃあ準備が全部出来たら、ヨーデル殿下やユニオンの人達に話をしに行こう」
「んで、後準備しなきゃいけないものってなんなのよ?」
「あたしに任せて。ちょっと色々要るからどっか適当な街に寄りたいんだけど」
「じゃ、ノール港はどう? イリキアの端っこだし」
「それに港だから色々揃ってると思うしね」
「エフミドの丘が通れなくなってからどうなったか気にもなるしな。そうしよう」
そうしてノール港に着くまでの間、みんな自由に過ごしていた
エステルとリタとカロルは四大精霊が揃った事を話していたけど、途中でリタのスイッチが入ってしまい、その話は断念という事になったようだった
その様子を苦笑しながら見ていると、レイヴンと話しを終えたユーリが私の所に歩いて来た
「なんだ、またリタスイッチ入ったのか?」
「ふふ、そうみたい」
ユーリもエステル達に目を向けるとリタの様子を見て少し呆れつつ苦笑して、私に視線を戻した
「疲れてないか? 此処んとこ戦っては歌っての繰り返し、だっただろ?」
「うん。大丈夫だよ。ユーリこそ大丈夫?」
「ああ。ま、大丈夫なら良いけど、無理だけはすんなよ。じゃないとどっかの式神達が五月蠅いからな」
ユーリは苦笑してそう言い、それが誰の事を言っているのか直ぐに分かり私も小さく笑った
「うん、そうだね。あ、そういえば」
「ん?」
「クロームが聖核になる前に、ユーリに何か言ってなかった?」
私のその言葉にユーリは一瞬だけきょとんとした
「リアには聞こえてなかったのか?」
「え? うん・・・」
あの時、クロームはユーリに何か訴え掛けている気がした・・・
そう言うとユーリは少しだけ考えて何でもないと答えた
(聞こえてなかったんなら、黙っとくか)
ユーリはクロームの言葉をリアには言わず、自分の胸に秘めておく事にした
続く
あとがき
シルフから話しを聞き、ノール港に向かう所で続きました
それにしても、デュークの過去、確かにあんな事があれば人間不信にもなりますよね
まあ人間不信はそうそう治るもんじゃないしね・・・(俺もそうだし)
次回はノール港に入ってからの話しです
あの人達と絡みますよぉ
では!
下書き:2009.01.14
完成:2009.08.18
今はまだ眠っている為、デュークの事など聞きたい事が聞けないのでとりあえず、頂上に向かう事にした
86.秘めた想いを刻んで
「ふぃ~、やっと半分ってとこ?」
「せめて気流が安定してればバウルに来て貰えるのだけど」
中腹まで戻って来ると私達は足を止めた
登りになるとやっぱり体力を使うから少し疲れてしまう
そう思っていると私達の前に風が吹いて精霊が現れた
「・・・知覚が・・・これが精霊になるという事・・・。こんなにも多くの事が隠されていたとは・・・」
「目覚めたんだな、えっと・・・」
「貴方は・・・クロームと呼ばれた方が良いかしら?」
「いえ・・・私はもう始祖の隷長のクロームではありません。新たな名を受けるべきでしょう」
「なら・・・シルフって名前はどうです? 風を紡ぐ者、って意味です」
「シルフ・・・ではそれを我が名としましょう」
「それじゃ改めてよろしく、風の精霊シルフ」
「ええ」
「・・・シルフ、デュークが何故人間を嫌うのか教えてくんねえか」
「・・・解りました」
シルフはそう言って私達を見て話を始めた
「・・・人魔戦争は知っていますね。始祖の隷長には人間と共に生きる道を選ぶ者と、人間を拒む者がいました。人魔戦争は古代の禁を破った人間と人間を拒む始祖の隷長戦いでした」
「で、戦いはデュークと言う英雄の活躍により人間は勝利し納め、人魔戦争は終結した」
そう答えたのは兄さんの隣にいたレイヴンだった
「デュークが英雄?」
「そうだったんですか・・・」
「帝国が隠してた真相の一つってやつよ」
「だからレイヴンはデュークの事知ってたんだ」
「まあね」
「あの戦争は人間の力だけで勝利を掴んだのではないのです。共存を唱える始祖の隷長の長、エルシフルが人間と共に戦い人間に勝利をもたらしたのです」
エルシフル、その言葉に聞き覚えがあった
それは以前フェローが聖核になる前にぽつりと呟いた言葉だった
けど、その名前を聞くと何故か心臓が脈を打つ
「マジかよ・・・そんな話、俺も知らなかったぜ・・・けんども・・・この話がデュークの人間不信にどう繋がるってのよ?」
「エルシフルはデュークの友でした。デュークはエルシフルと共に人を拒むものの長と戦い倒したのです。しかし戦争が終結した時、エルシフルの力を恐れた帝国は傷ついたエルシフルを襲い、命を奪ったのです。静観するとデュークに約束したにもかからわず」
「そんな・・・」
「・・・・」
「成る程な・・・。人間を信じられなくなる訳だ」
「戦争の陰でそんな事が遭ったのね」
「・・・あいつがどんなにキツい裏切りになってたとしても、全ての人間の命を犠牲にする権利なんてねえよ」
「デュークより先に星喰みを滅ぼさなければ、結局人間は滅びる事になるでしょう。急ぎなさい。気流を抑えました。これでバウルも此処まで来る事が出来るでしょう」
「ありがとう、シルフ」
「精霊化は順調だけど・・・」
「ああ、デュークも何かやばそげ」
「・・・そうだな」
その返事を聞くとシルフは姿を消し、ジュディスがバウルを呼んでくれて船に乗り込んだ
「ついに四属性の精霊が揃ったね」
「ああ、後は・・・」
「世界中の魔導器の魔刻を精霊に転生させる、ですね」
「・・・そうね。四精霊の力だけで星喰みを抑えられればその必要はないんだけど」
「中途半端で挑める相手じゃないでしょーよ。万全を期すべきよね。失敗できねぇもの」
「解ってるけど・・・」
「精霊を生み出すというだけでもテルカ・リュミレースのあり方を変えてしまっている、世界の為とはいえ、ね」
「確かにわたし達の判断だけで世界の人々の生活すら変えてしまうのは問題だと思います」
「そうかもだね・・・」
「オレ達がやろうとしてる事を理解して貰わなきゃやってる事はアレクセイと変わらねぇのかもしれねぇ。けど、理解を求めてる時間もねぇ」
「でも帝国騎士団やギルドのみんなにちゃんと話しておく事は出来るんじゃないかな」
「それで私達のやり方を否定されてしまったら、私達はホントに人々に仇なす大悪党よ?」
「・・・・」
その言葉に少しだけ沈黙が流れる
確かにそうだ
けど、世界が無くなる事や人々がいなくなるのはもっとイヤだ
「・・・オレはこのまま世界が破滅しちまうのは我慢出来ねぇ」
そう思っていると最初に口を開いたのはユーリだった
「デュークがやろうとしてる事で世界が救われても普通に暮らしてる奴等が消えちまっちゃ意味がねぇ。だからオレは大悪党と言われても魔導器を捨てて星喰みを倒したい」
「じゃないと、リアも安心して暮らせねえからな」
「ぁ・・・」
そう言えばそうだった
此処の所、精霊化の事で頭が一杯だったし、力が抑えられているから忘れていたけど、私の稀な力はまだ星喰みに反応しているのだった
「・・・もしかして忘れてた?」
「・・・ちょっとだけι」
アスラは小声で私に聞き、その問いに苦笑して私も小声で返すとユーリと兄さんはみんなを見据えた
「みんな、どうする? 降りるなら今だぜ」
「俺様は着いてくぜ。なんせ、俺の命は凛々の明星のもんだしな」
「私も。フェローやベリウスが託してくれた気持ちがあるもの。それに・・・中途半端は好きじゃないわ」
「やらないと後悔するってのを知っちゃったし、此処でやめても後悔するし」
「うん。ボクも後悔したくない」
「はい。自分で選択した事ならどんな結界になっても受け入れられる・・・この旅で学んだ事です」
「それに・・・世界のみんなも分かってくれる。変わっていく世界を受け入れられない程弱くないよ!」
「みんなが笑って暮らす為の事だし、そう信じたい」
「俺達も星喰みとはケリ付けなきゃなんねえしな」
「だから私達も着いて行くよ。みんなの気持ちを叶える為にも、世界を救う為にも、ね」
「ワンワン! ワォン!」
私の言葉にラピードも同意し、ユーリは笑って私達を見た
「解った。みんな、最後まで一緒に行こう」
「じゃあ準備が全部出来たら、ヨーデル殿下やユニオンの人達に話をしに行こう」
「んで、後準備しなきゃいけないものってなんなのよ?」
「あたしに任せて。ちょっと色々要るからどっか適当な街に寄りたいんだけど」
「じゃ、ノール港はどう? イリキアの端っこだし」
「それに港だから色々揃ってると思うしね」
「エフミドの丘が通れなくなってからどうなったか気にもなるしな。そうしよう」
そうしてノール港に着くまでの間、みんな自由に過ごしていた
エステルとリタとカロルは四大精霊が揃った事を話していたけど、途中でリタのスイッチが入ってしまい、その話は断念という事になったようだった
その様子を苦笑しながら見ていると、レイヴンと話しを終えたユーリが私の所に歩いて来た
「なんだ、またリタスイッチ入ったのか?」
「ふふ、そうみたい」
ユーリもエステル達に目を向けるとリタの様子を見て少し呆れつつ苦笑して、私に視線を戻した
「疲れてないか? 此処んとこ戦っては歌っての繰り返し、だっただろ?」
「うん。大丈夫だよ。ユーリこそ大丈夫?」
「ああ。ま、大丈夫なら良いけど、無理だけはすんなよ。じゃないとどっかの式神達が五月蠅いからな」
ユーリは苦笑してそう言い、それが誰の事を言っているのか直ぐに分かり私も小さく笑った
「うん、そうだね。あ、そういえば」
「ん?」
「クロームが聖核になる前に、ユーリに何か言ってなかった?」
私のその言葉にユーリは一瞬だけきょとんとした
「リアには聞こえてなかったのか?」
「え? うん・・・」
あの時、クロームはユーリに何か訴え掛けている気がした・・・
そう言うとユーリは少しだけ考えて何でもないと答えた
(聞こえてなかったんなら、黙っとくか)
ユーリはクロームの言葉をリアには言わず、自分の胸に秘めておく事にした
続く
あとがき
シルフから話しを聞き、ノール港に向かう所で続きました
それにしても、デュークの過去、確かにあんな事があれば人間不信にもなりますよね
まあ人間不信はそうそう治るもんじゃないしね・・・(俺もそうだし)
次回はノール港に入ってからの話しです
あの人達と絡みますよぉ
では!
下書き:2009.01.14
完成:2009.08.18