星喰み編
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「良かったね、エステル!」
エステルの力がウンディーネの力で制御出来安定した
それによってエステルは自由の身になり、力を自由に使えるようになった
そしてエアルクレーネから離れ、ゾフェル氷刃海の入り口に向かいながら、みんなそれぞれに感動の声を上げていた瞬間 だった
ドオオオン
急に地響きが聞こえ、地面が揺れた
「な、なに、今の!?」
「あの方角は確か・・・」
「ザウデの方角ね」
するとザウデの方角から大量にエアルが放たれ、エアルが空を貫き世界を守っていた結界に当たった
「っ・・・!」
「リア!?」
その途端、身体に痛みが走り私は膝を着きそうになったが隣にいた兄さんが支えてくれた
「結界に当たったから、リアの稀な力が反応してるんだ」
「大丈夫か?」
「う・・・うん・・・」
空は紫の闇のようなものに覆われその間からドス黒く、気持ちの悪い“モノ”星喰みが異常な程溢れ出て来た
「星喰みが・・・まさかザウデが停止した・・・?」
「あちゃー、どっか下手なとこいじりでもしたのかね」
「あれが本当の災厄・・・」
「成る程世界を喰いかねねえな」
「あんなの、どうしたら良いんだろう」
「それもだけど、こんなんじゃいつかホントにリアちゃんが持たなくなるぜ」
その言葉に皆口を紡んでしまう
確かに傷が癒え、力が戻ったとは言え、こんな事が続けばいつか本当に壊れてしまうかもしれない
「・・・・」
ユーリは私をじっと見て何か思い出した顔をしてリタを見た
「なあリタ、あの星喰みってのはエアルから生まれたってデュークが言ってたんだが」
「え?」
「精霊はエアルを物質に換えるってんならもし十分な精霊がいたら、星喰みもどうにか出来ないか?」
「分からない。そんなの分からない。でも・・・やってみる価値はあると思う」
「それでリアの力を使わなくて済むならやってみようよ!」
「やりましょう、ユーリ!」
「決まりだな」
「バウル!?」「フキ?」
ユーリ達の返事を聞いているとジュディスとアスラが同時に言った
どうやらお互いに何か連絡が来たようだ
「・・・そう、分かったわ。ありがとう。星喰みの眷属が街を襲っているらしいわ」
「やっぱりそっちも同じ連絡なんだね」
「そうみたいね」
「それでその襲われてる街ってのは」
「ノードポリカだよ」「ノードポリカよ」
「!」
「やれやれ聞いちまったら、放っとく訳にいかねえな。リア、動けるか?」
「うん、大丈夫」
「そっか。でも無理すんなよ」
「うん、ありがとう」
「良し、急ぐぞ!」
ユーリの掛け声と共に私達は急いでノードポリカに向かい出した
81.言霊
「見て! 街に取り付いてる!」
「あの黒いの・・・前にコゴール砂漠で見たやつか!」
ノードポリカの近くに来るとコゴール砂漠で見たあの水色のエイのような生き物がノードポリカの結界の近くにいた
「前のはフェローの幻だったけど今度のは本物よ、気を付けて」
「結界のエアルを食べようとしてるみたいです!」
「星喰みはエアルに引き寄せられる・・・?」
「こいつはなかなかやばそうねえ」
「ちっと面倒だが二手に別れた方が早そうだな」
「うん、もう街の中に何匹か入ってるみたいだし」
「そうだな。じゃあ二手に別れるぞ」
「うん」
「行くぞ!」
その言葉と同時に私達は一斉に別れ、あのエイのような生き物に向かって行った
数分後、無事に外にいたのを倒し終え私達は急いで街の中に入ると、街と闘技場を繋ぐ道の所に数人の戦士の殿堂がいるのを見つける
だが、その前にはあの生き物がいた
「退くな! 此処で食い止めるんだ!」
後退る男にナッツさんがそう叫び、今にも攻撃を仕掛けそうだった生き物にリタと兄さんがファイアーボール当てるとその生き物は姿を消した
「おーお、ものものしいねえ」
「あ、あんた達は・・・!」
ナッツさんは私達の姿を確認するととても驚いた顔をしていた
「どうやら今の奴で最後みたいだったな」
「うん。もう他の気配はしないよ」
「皆さん、ご無事ですか?」
「ああ」
ナッツさんを含む戦士の殿堂はほっと安堵の息を吐いた
街を見る限り、前に闘技場で魔物が逃げた時みたいに街に被害はなかったが、やっぱり怪我人は出たようで私とエステルは傷を治す事にし、ナッツさんが闘技場へと案内してくれた
怪我人の手当を終えた後、私達はベリウスの私室に案内された
「またあんた達に助けられたな」
「この街だけ襲われるなんてほんと運が悪いよね」
「運じゃないわ」
そう声が聞こえ振り向くとリタがこの部屋に入ってきた所だった
「リタ、何処に行ってたんです?」
「此処の結界魔導器見てきたの。出力が上げられてたわ。だからあの化け物が引き寄せられたみたいね。通常の出力に戻させてもらったわよ」
「万が一に備えてたんだが・・・裏目になってしまったんだな。自分は住民の様子を見に行く。あんた達は好きなだけゆっくりしてってくれ」
「ありがたいがオレ達も・・・」
「ユーリ、ちょっとだけ良いかな?」
「どうしたんだ?」
ユーリの言葉を遮るように、少しだけ遠慮がちに言うとユーリもエステル達も疑問符を出して私を見た
「ドンとの約束、果たしたいの」
「ドンとの約束?」
「ベリウスや、此処で亡くなった人達の魂の鎮め・・・出来ればナッツさんも一緒に来て貰えませんか?」
「俺からも頼む」
私の言葉に兄さんも同意し、アスラも小さく頷いた
「分かった。ドンとの約束なら果たさないとな」
「ベリウス様や皆の為なら」
ユーリは私達の言いたい事が直ぐに分かり頷くと、ナッツさんも同意してくれた
「ありがとう。じゃあ準備するからちょっと待ってて」
そう言って私と兄さんはみんなと別れ、正装に着替えた
着替え終わるとユーリ達がいる闘技場へと向かった
闘技場に着くと私と兄さんはアイコンタクトをして、目を閉じて息を吸って歌い出した
―――終止符 と 告げる冷たい雨
遠い日々へ馳せる思い
歌い出すと同時にユーリ達は目を瞑り、私と兄さんの歌に耳を澄ませる
天上 を仰ぐ度 紡げない未来に
君が幸せであれと最期まで願う
地の果ての影に留まりながら
鉛の空を想うのだろう
私達は更に意識を集中して言霊を乗せて歌い続ける
夜を算 え 夢を観て 黎明の聖刻 を迎え
限りある生命 よ 魂よ
永遠 に眠れ ―――
歌い終えると、闘技場に漂っていた不思議に暖かかった空気がゆっくりとなくなって行き静けさを取り戻し、皆ゆっくりと目を開いた
「いつ聞いても悲しい歌だね」
「でも、何処か温かさがあります」
「ありがとう。なんだか気が軽くなったようだ」
それは心の重荷や悲しみなどがさっきの歌に乗ったからだろう
「いえ。これが私達の仕事ですから」
「仕事・・・?」
「俺達は言霊使いだ」
「言霊・・・そうか、あんた達が」
ナッツさんはそこで言葉を切って小さく笑った
話しを聞いてみると、ベリウスが言霊使いの事を話した事があり、存在していると聞いた事があったらしい
だから言霊使いの事も直ぐに受け入れたのだろう
「これで此処も大丈夫だね」
「うん」
アスラは周りの空気を感じ、異常がない事を確かめると私と兄さんを見た
「じゃあ、俺達はもう行くわ」
「そうか。あんた達ならいつでも歓迎する、また寄ってくれ」
「サンキュ」
兄さんの言葉にみんな頷いてナッツさんに挨拶をして私達は闘技場を後にした
「ナッツさん、頑張ってたね」
闘技場を出るとカロルが嬉しそうな顔して、ユーリに話しを振った
「ああ、ベリウス亡き後、上手く纏めてるみたいだな」
「ウンディーネと会わせてあげたいです。きっと喜びます」
「今は止めとけ。けど、全部ケリが付いた時には驚かせてやろうぜ」
「はい」
「にしても、あの化け物・・・戦士の殿堂の手練れが太刀打ち出来てなかったな。どうも解せないねぇ」
「ボク等は倒せたのにね」
「何か違いがあるとしたら・・・」
「精霊、かしらね?」
「星喰みはエアルに近いってんなら精霊の力が影響した可能性はあるわね」
「それじゃ後三体揃えばもっと対抗出来るって事か?」
「どうだろう・・・エアルを抑えるだけなら、属性揃えば十分だろうけど相手はあの星喰みだから、何とも言えないわ」
「うーむ、聖核だってそこら辺に転がってるもんじゃないしなあ」
「始祖の隷長も、もう数少ないみたいですし・・・」
確かに属性が揃えば何とかなるかもしれない
けど、それで数が足りないとなると・・・
「・・・なあ、世界に存在する魔導器って相当な数だよな」
思いに耽っていると、何か考えていたユーリが急に口を開いた
「そうだな。魔導器は俺達の生活に欠かせないものだからな」
「魔刻って聖核のカケラで出来てるって事だよな」
「うん、そうだよ」
「だったら、もし精霊四体で足りないんなら、世界中の魔刻を精霊に変えたら良いんじゃないか?」
「無茶な事言うわね。大体どうやってやるのよ」
「仮に方法が分かっても、魔導器の一つ一つを回るのかしら? 星喰みは待ってくれないと思うけれど」
「どうにかしてくれるよな? 専門家さん」
「・・・簡単に言わないでよね」
「・・・もしユーリの言った方法が実現したとして・・・そしたら魔導器は全部使えなくなっちゃわない?」
「魔刻が無くなる訳だからそうなるわな」
「どんな世の中になってしまうんでしょう?」
「結界によって約束されていた安全はなくなり・・・」
「魔導器に賄われてた生活に必要な機能が失われて、相当不便な生活になるでしょうね」
「武醒魔導器も駄目になるんだよね、うーん・・・」
「嫌がる人は大勢いるでしょうね・・・」
「ああ。それでもやらなきゃ・・・世界はあいつのもんだ。オレはやるべきだと思う。たとえ仲間以外の誰にも理解されなかったとしても」
ユーリは途中で言葉を切って空を、空にいる星喰みを見てそう言い、その言葉の後少しだけ沈黙が流れた
みんな、迷っているんだろう
実際に魔導器が無くなると生活が厳しくなるし、安全性も無くなり、更に今みたいに戦う事も難しくなる
生活の一部と化した物が無くなると言うのはやっぱり不便ではあるから余計に考えてしまう
「ま、とにかくまずは四属性の精霊を生み出そうぜ。先の事はそれからまた考えようじゃないの」
「だな」
少しだけ重くなった沈黙をレイヴンが破り、ユーリは苦笑して答え、私達もその考えはひとまず置いておく事にした
「バウルが始祖の隷長のいる場所を知ってるんだよね?」
「ああ。船に戻って聞いてみよう」
続く
あとがき
戦闘書こうと思ったけど、・・・気力がなかった(おいι)
やっぱまたちょっとだけスランプ入ったぽい?ι
うーん・・・とりあえず今回は久々の本業やりました
此処はやっぱ弔いも含めてね
さて、次回からいよいよ精霊化に入ります
では
下書き:2009.01.03
完成:2009.08.16
エステルの力がウンディーネの力で制御出来安定した
それによってエステルは自由の身になり、力を自由に使えるようになった
そしてエアルクレーネから離れ、ゾフェル氷刃海の入り口に向かいながら、みんなそれぞれに感動の声を上げていた
ドオオオン
急に地響きが聞こえ、地面が揺れた
「な、なに、今の!?」
「あの方角は確か・・・」
「ザウデの方角ね」
するとザウデの方角から大量にエアルが放たれ、エアルが空を貫き世界を守っていた結界に当たった
「っ・・・!」
「リア!?」
その途端、身体に痛みが走り私は膝を着きそうになったが隣にいた兄さんが支えてくれた
「結界に当たったから、リアの稀な力が反応してるんだ」
「大丈夫か?」
「う・・・うん・・・」
空は紫の闇のようなものに覆われその間からドス黒く、気持ちの悪い“モノ”星喰みが異常な程溢れ出て来た
「星喰みが・・・まさかザウデが停止した・・・?」
「あちゃー、どっか下手なとこいじりでもしたのかね」
「あれが本当の災厄・・・」
「成る程世界を喰いかねねえな」
「あんなの、どうしたら良いんだろう」
「それもだけど、こんなんじゃいつかホントにリアちゃんが持たなくなるぜ」
その言葉に皆口を紡んでしまう
確かに傷が癒え、力が戻ったとは言え、こんな事が続けばいつか本当に壊れてしまうかもしれない
「・・・・」
ユーリは私をじっと見て何か思い出した顔をしてリタを見た
「なあリタ、あの星喰みってのはエアルから生まれたってデュークが言ってたんだが」
「え?」
「精霊はエアルを物質に換えるってんならもし十分な精霊がいたら、星喰みもどうにか出来ないか?」
「分からない。そんなの分からない。でも・・・やってみる価値はあると思う」
「それでリアの力を使わなくて済むならやってみようよ!」
「やりましょう、ユーリ!」
「決まりだな」
「バウル!?」「フキ?」
ユーリ達の返事を聞いているとジュディスとアスラが同時に言った
どうやらお互いに何か連絡が来たようだ
「・・・そう、分かったわ。ありがとう。星喰みの眷属が街を襲っているらしいわ」
「やっぱりそっちも同じ連絡なんだね」
「そうみたいね」
「それでその襲われてる街ってのは」
「ノードポリカだよ」「ノードポリカよ」
「!」
「やれやれ聞いちまったら、放っとく訳にいかねえな。リア、動けるか?」
「うん、大丈夫」
「そっか。でも無理すんなよ」
「うん、ありがとう」
「良し、急ぐぞ!」
ユーリの掛け声と共に私達は急いでノードポリカに向かい出した
81.言霊
「見て! 街に取り付いてる!」
「あの黒いの・・・前にコゴール砂漠で見たやつか!」
ノードポリカの近くに来るとコゴール砂漠で見たあの水色のエイのような生き物がノードポリカの結界の近くにいた
「前のはフェローの幻だったけど今度のは本物よ、気を付けて」
「結界のエアルを食べようとしてるみたいです!」
「星喰みはエアルに引き寄せられる・・・?」
「こいつはなかなかやばそうねえ」
「ちっと面倒だが二手に別れた方が早そうだな」
「うん、もう街の中に何匹か入ってるみたいだし」
「そうだな。じゃあ二手に別れるぞ」
「うん」
「行くぞ!」
その言葉と同時に私達は一斉に別れ、あのエイのような生き物に向かって行った
数分後、無事に外にいたのを倒し終え私達は急いで街の中に入ると、街と闘技場を繋ぐ道の所に数人の戦士の殿堂がいるのを見つける
だが、その前にはあの生き物がいた
「退くな! 此処で食い止めるんだ!」
後退る男にナッツさんがそう叫び、今にも攻撃を仕掛けそうだった生き物にリタと兄さんがファイアーボール当てるとその生き物は姿を消した
「おーお、ものものしいねえ」
「あ、あんた達は・・・!」
ナッツさんは私達の姿を確認するととても驚いた顔をしていた
「どうやら今の奴で最後みたいだったな」
「うん。もう他の気配はしないよ」
「皆さん、ご無事ですか?」
「ああ」
ナッツさんを含む戦士の殿堂はほっと安堵の息を吐いた
街を見る限り、前に闘技場で魔物が逃げた時みたいに街に被害はなかったが、やっぱり怪我人は出たようで私とエステルは傷を治す事にし、ナッツさんが闘技場へと案内してくれた
怪我人の手当を終えた後、私達はベリウスの私室に案内された
「またあんた達に助けられたな」
「この街だけ襲われるなんてほんと運が悪いよね」
「運じゃないわ」
そう声が聞こえ振り向くとリタがこの部屋に入ってきた所だった
「リタ、何処に行ってたんです?」
「此処の結界魔導器見てきたの。出力が上げられてたわ。だからあの化け物が引き寄せられたみたいね。通常の出力に戻させてもらったわよ」
「万が一に備えてたんだが・・・裏目になってしまったんだな。自分は住民の様子を見に行く。あんた達は好きなだけゆっくりしてってくれ」
「ありがたいがオレ達も・・・」
「ユーリ、ちょっとだけ良いかな?」
「どうしたんだ?」
ユーリの言葉を遮るように、少しだけ遠慮がちに言うとユーリもエステル達も疑問符を出して私を見た
「ドンとの約束、果たしたいの」
「ドンとの約束?」
「ベリウスや、此処で亡くなった人達の魂の鎮め・・・出来ればナッツさんも一緒に来て貰えませんか?」
「俺からも頼む」
私の言葉に兄さんも同意し、アスラも小さく頷いた
「分かった。ドンとの約束なら果たさないとな」
「ベリウス様や皆の為なら」
ユーリは私達の言いたい事が直ぐに分かり頷くと、ナッツさんも同意してくれた
「ありがとう。じゃあ準備するからちょっと待ってて」
そう言って私と兄さんはみんなと別れ、正装に着替えた
着替え終わるとユーリ達がいる闘技場へと向かった
闘技場に着くと私と兄さんはアイコンタクトをして、目を閉じて息を吸って歌い出した
―――
遠い日々へ馳せる思い
歌い出すと同時にユーリ達は目を瞑り、私と兄さんの歌に耳を澄ませる
君が幸せであれと最期まで願う
地の果ての影に留まりながら
鉛の空を想うのだろう
私達は更に意識を集中して言霊を乗せて歌い続ける
夜を
限りある
歌い終えると、闘技場に漂っていた不思議に暖かかった空気がゆっくりとなくなって行き静けさを取り戻し、皆ゆっくりと目を開いた
「いつ聞いても悲しい歌だね」
「でも、何処か温かさがあります」
「ありがとう。なんだか気が軽くなったようだ」
それは心の重荷や悲しみなどがさっきの歌に乗ったからだろう
「いえ。これが私達の仕事ですから」
「仕事・・・?」
「俺達は言霊使いだ」
「言霊・・・そうか、あんた達が」
ナッツさんはそこで言葉を切って小さく笑った
話しを聞いてみると、ベリウスが言霊使いの事を話した事があり、存在していると聞いた事があったらしい
だから言霊使いの事も直ぐに受け入れたのだろう
「これで此処も大丈夫だね」
「うん」
アスラは周りの空気を感じ、異常がない事を確かめると私と兄さんを見た
「じゃあ、俺達はもう行くわ」
「そうか。あんた達ならいつでも歓迎する、また寄ってくれ」
「サンキュ」
兄さんの言葉にみんな頷いてナッツさんに挨拶をして私達は闘技場を後にした
「ナッツさん、頑張ってたね」
闘技場を出るとカロルが嬉しそうな顔して、ユーリに話しを振った
「ああ、ベリウス亡き後、上手く纏めてるみたいだな」
「ウンディーネと会わせてあげたいです。きっと喜びます」
「今は止めとけ。けど、全部ケリが付いた時には驚かせてやろうぜ」
「はい」
「にしても、あの化け物・・・戦士の殿堂の手練れが太刀打ち出来てなかったな。どうも解せないねぇ」
「ボク等は倒せたのにね」
「何か違いがあるとしたら・・・」
「精霊、かしらね?」
「星喰みはエアルに近いってんなら精霊の力が影響した可能性はあるわね」
「それじゃ後三体揃えばもっと対抗出来るって事か?」
「どうだろう・・・エアルを抑えるだけなら、属性揃えば十分だろうけど相手はあの星喰みだから、何とも言えないわ」
「うーむ、聖核だってそこら辺に転がってるもんじゃないしなあ」
「始祖の隷長も、もう数少ないみたいですし・・・」
確かに属性が揃えば何とかなるかもしれない
けど、それで数が足りないとなると・・・
「・・・なあ、世界に存在する魔導器って相当な数だよな」
思いに耽っていると、何か考えていたユーリが急に口を開いた
「そうだな。魔導器は俺達の生活に欠かせないものだからな」
「魔刻って聖核のカケラで出来てるって事だよな」
「うん、そうだよ」
「だったら、もし精霊四体で足りないんなら、世界中の魔刻を精霊に変えたら良いんじゃないか?」
「無茶な事言うわね。大体どうやってやるのよ」
「仮に方法が分かっても、魔導器の一つ一つを回るのかしら? 星喰みは待ってくれないと思うけれど」
「どうにかしてくれるよな? 専門家さん」
「・・・簡単に言わないでよね」
「・・・もしユーリの言った方法が実現したとして・・・そしたら魔導器は全部使えなくなっちゃわない?」
「魔刻が無くなる訳だからそうなるわな」
「どんな世の中になってしまうんでしょう?」
「結界によって約束されていた安全はなくなり・・・」
「魔導器に賄われてた生活に必要な機能が失われて、相当不便な生活になるでしょうね」
「武醒魔導器も駄目になるんだよね、うーん・・・」
「嫌がる人は大勢いるでしょうね・・・」
「ああ。それでもやらなきゃ・・・世界はあいつのもんだ。オレはやるべきだと思う。たとえ仲間以外の誰にも理解されなかったとしても」
ユーリは途中で言葉を切って空を、空にいる星喰みを見てそう言い、その言葉の後少しだけ沈黙が流れた
みんな、迷っているんだろう
実際に魔導器が無くなると生活が厳しくなるし、安全性も無くなり、更に今みたいに戦う事も難しくなる
生活の一部と化した物が無くなると言うのはやっぱり不便ではあるから余計に考えてしまう
「ま、とにかくまずは四属性の精霊を生み出そうぜ。先の事はそれからまた考えようじゃないの」
「だな」
少しだけ重くなった沈黙をレイヴンが破り、ユーリは苦笑して答え、私達もその考えはひとまず置いておく事にした
「バウルが始祖の隷長のいる場所を知ってるんだよね?」
「ああ。船に戻って聞いてみよう」
続く
あとがき
戦闘書こうと思ったけど、・・・気力がなかった(おいι)
やっぱまたちょっとだけスランプ入ったぽい?ι
うーん・・・とりあえず今回は久々の本業やりました
此処はやっぱ弔いも含めてね
さて、次回からいよいよ精霊化に入ります
では
下書き:2009.01.03
完成:2009.08.16