星喰み編
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リアと合流した後、オレ達は街の出口に向かった
リアは見送りに来たイサキや神将達と挨拶をして、リアとセイが歩いて来るのが見えオレ達も歩き出した
「あ、ユーリ」
「ん?」
が、数歩進んだ所でイサキがオレを呼ぶ声が聞こえ、セイとイサキ、神将達がいる方へと向かった
「何だ?」
「リアの事だけど」
「絶対に無茶させないのよ!」
イサキが言葉を続けるより先に、タイリンがオレにそう言った
「はあ? 何だよいきなり」
「だってリアの彼氏なんでしょ」
ユイカの言葉に何で知ってんだ? と思ってると隣にいたアスラがぼそりと言った
「力取り戻してる時に言ってたよ」
「まあリアの態度見てたら解るけどな」
アスラの言葉にゲツレイが頭の後ろで腕を組んで言う
「まあセイもアスラもフキもいるし大丈夫とは思うけど一応な」
「ああ見えて結構無茶するからな」
「念の為、伝えて置いた方が良いと思ったので」
「呼び止めてしまって申し訳ありません」
上からケンク、リンコウ、ナセア、ハクスイが言う
「まあそう言う事だから一応覚えとけ」
「じゃないと後が怖いわよ?」
フキとセンキの言葉に神将達の目と空気が一瞬変わった気がした
「こいつ等怒らせると怖いから覚えとけ」
「ああ、解ったよ」
「あの、姫・・じゃなかった、リアの事よろしくお願いします」
セイの言葉にオレは苦笑しているとミズハがオレの前に来てぺこりと頭を下げて言い、オレはああと返事を返した
「ではお気を付けて」
カムイの言葉にオレとセイ、アスラ、フキはリア達がいる方へ歩き出した
「どうかしたの?」
リアはその様子を見ていたのかオレが歩いてくるとそう尋ねた
「何でもねえよ」
オレは苦笑してリアの頭を撫でて歩いて行き、少し遅れてリアとセイが歩いて来ていた
80.精霊
「あああ寒い寒い寒い。それにしても寒い寒い寒い」
「おっさん、余計寒くなるからやめろ」
「だって寒いじゃない」
故郷を出た私達はゾフェル氷刃海にやって来た
ユーリ達は以前、帝都に戻る時に此処を通った事があるらしいけど、私とエステルと兄さんは此処に来るのは初めてだった
噂では聞いた事はあったけど、何て言うかまさに『読んで字の如し』・・・って言う感じな所よね・・・
「んで、エアルクレーネでどうしようってんだ?」
「エネルギー体で構成されたエアル変換機を作るの」
「変換・・・機?」
「エアルを効率良く物質化する事で総量を減らすのが狙いなんだけど、その為には変換機自体がエアルと物質の両方に近いエネルギーなのが理想なの」
「そのエネルギーって、エアルとどう違うんだ?」
「属性分化したエアルは段階的に物質に移行して安定する。その途中の段階で固定してそれで変換機術式を構築しようって訳」
「エアルでも物質でもないって事?」
「エアルより物質に近い、でも物質にはなってない状態。あたし等はマナって呼んでる」
「マナ・・・」
「本当はもっと長ったらしい名前だけどね。ただ安定してるって言っても物質よりは不安定だから核になるものが必要なの」
「そこで聖核か」
「それと十分なエアルとそれの術式を組み替えるエステルの力」
「わたしが抑制術式なしで力を使うと、エアルが乱れ、溢れ出してしまうけど・・・」
「けど、何もしないであいつをほっとくなんて出来ない。それに・・・」
「それに?」
ユーリはそこで言葉を切って私を見た
「まだリアの力が星喰みを抑えてんのには代りねえんだ」
「これは俺達の考えなんだが、もしかしたらその方法を上手く利用出来ればリアの方も何とか出来るかもしれねぇんだ」
「ホントに!」
兄さんの言葉に私を含む全員が驚いた
「ただやっぱり満月の子とは違うから時間はかかるけどね」
「そうでしょうね。でも上手くいけば可能だと思うわ」
「どっちも賭、ね」
「ええ。でも大丈夫よ。理論に間違いはないんだから」
「私は立場上、止めるべきなんだけど・・・リアもエステルも助かるのなら私もその賭に乗るわ」
「決まりね。じゃあエアルクレーネに行こ」
「しかしエアル変換機ねえ、よくまあ思い付くもんだ。流石天才魔導少女リタっちだ。うんうん」
「・・・手掛かりがあったからよ」
「そういやザウデを調べたって言ってたよな」
「あれ、あんだけの規模なのにエアルでは動いてなかった。世界全体を守る為の結界魔導器なのにね」
「結界魔導器!? そっか星喰みから守ってたんだ」
「アレクセイは兵器だと思ってたみたいだけど、とんでもない間違いだった訳ね」
結界魔導器、だからザウデにいた時に違和感を感じたのか
「けど星喰みはエアルの暴走が原因だよな? 成る程、だからエアル以外の力の結界なのか」
「でも星喰みを抑えていたのはリアの、言霊使いの力なんですよね?」
「そう。でも他にもあったのよ」
「他に・・・?」
「・・・満月の子、かしら?」
「正確には満月の子から分離した力ね。あの巨大魔刻の中で半永久術式としてザウデを動かし続けた。多分、彼等の命と引き換えに」
「満月の子等は命燃え果つ・・・」
「ミョルゾの言い伝えはそう言う意味だったのね」
「デュークの話じゃ、自発的にやったらしいぜ。世界を救う為に」
「うん・・・あの本にもそう書いてあった」
私はあの時デュークに渡された本の内容を思い出しそう言った
「世界の為に犠牲になって・・・ずっと守っててくれたんですね」
「そして、その星喰みを抑える為に稀な力を持った言霊使いが対の鍵となった、か・・・」
「対となる鍵だから存在を禁忌としていた、か」
「実際言霊使いの故郷は別次元にあるから、存在しない者って言われても可笑しくはないけどね」
「そう思うと、満月の子も言霊使いも長い間世界を守り続けてきたのね」
「そうですね」
お互いに同じ立場である私とエステルは少し俯いてそう言っていると、頭の上にユーリの手が乗り、顔を上げると優しく笑っていて私も自然と微笑み返していた
「ま、とりあえず早いとこ行こうぜ」
「うん」
そう言って私とユーリは歩き出した
*
「またあの魔物出て来たりしないよね?」
エアルクレーネにやって来た私達だったが、カロルが辺りをきょろきょろ見て不安そうにしていた
「出て来たら、カロルがまた退治してくれんでしょ?」
「うう・・・意地悪・・・」
リタは蒼穹の水玉をエアルクレーネの近くに浮かび上がらせエステルに声を掛け、エステルが前に来ると術式のモニターを開いた
「今から抑制術式を解除するわ。そしたら、エステルに反応してエアルが放出される。エステルはエアルの術式をよりマナに近い安定した術式に再構成してほしいの」
「え、と・・・良く分かりません・・・」
「うーん、そうね・・・此処は水の属性が強いから流れる水をイメージしてエアルの流れに身を任せれば良いわ。エアル物質化の理論は魔術と同じようなものだから、エステルがエアルをマナに近い形に再構成してくれればあたしでも蒼穹の水玉にエアルを導けるようになるはず」
「ボク達に何か出来る事ない?」
「ないわ。寝てて」
「こんな所で寝たら凍死するっつーの」
「俺等はあると思うぞ」
「え?」
テンポ良く進んでいた会話だったが、兄さんの言葉でそのテンポは止まり、ユーリが兄さんをじっと見て答えた
「言霊使いの力、か?」
「ああ。俺等は聖核になった始祖の隷長の声を聞く事が出来る」
「そんな事出来るの?」
「実際に私はベリウスとアスタルの声を聞いた。そして、あの時使われてた他の聖核になった始祖の隷長の声もね・・・」
その言葉を聞いて皆黙ってしまった
あの時はただでさえ力を使われていたのに更にそんな事が遭ったなんて・・・
誰よりも一番傷ついていたのはリアなのだろうと誰もが思っていた
リタは一瞬黙ったが、直ぐに私と兄さんを見て言う
「分かったわ。じゃああんた達は蒼穹の水玉の声を聞いて、エアルの流れを感じて」
「ええ」「ああ」
「ボクはその流れをリタに送れば良いんだね」
「ええ」
「リタ、私達にも出来る事はあるでしょう? ザウデで見つけた変換技術を使えば良いのよ」
ジュディスの言葉に私達はリタを見たがリタは驚いた顔をして言葉を発した
「あれは! 命をエアルの代用にするものでしょ! そんなの使える訳ないじゃない」
「でも失敗したら激流となったエアルに飲み込まれて私達は全滅。そうでしょ?」
「命懸けなのはみんな同じって事だ。手伝わせろよ」
ユーリの言葉にリタは押し黙り私達を見て少し考えた後目を閉じた
「・・・分かった。あたしが蒼穹の水玉にエアルを導くのに、あんた等の生命力を使う。そうすればエステルはあたしにエアルを干渉されないで流れを掌握出来ると思うから」
「よっし。じゃあみんな、いっちょ気合い入れようぜ」
「「ええ」」「ああ」「はい!」「「うん!」」「あい!」「ワン!」
私達の返事を聞くとリタは前に出てエステルに合図を送った
「いい? リア、エステル、セイ、アスラ。いくわよ」
「ええ」「ああ」「いいよ」「お願いします」
「みんなはこっち来て」
ユーリ達はエアルクレーネの正面とリタの後ろに行く
リタはそれを確認すると術式を開いた
「あたしの術式に同調して。そう・・・良いわよ」
「うっぐ」
ユーリの苦しそうな声が聞こえる
それにつられ、カロル、ジュディス、レイヴン、ラピードも辛そうな表情を見せていた
だが今は自分達のやる事をやらなければならない
私は更に集中し、蒼穹の水玉に語り掛けた
(・・・お願い、ベリウス・・・蒼穹の水玉・・・私達に力を貸して・・・)
その声に応えるかのように蒼穹の水玉の周りにエアルが集まりだした
「蒼穹の水玉にエアルが集まっている・・・術式はうまく働いてる。力場も安定してる・・・いける!」
「ん・・・く・・・」
エステルが苦しそうに声を上げると蒼穹の水玉が光り出した
「きゃあ!?」
「なんだ!」
「まさか、失敗なの?」
「違う! ちゃんと制御出来てる、でもこれは・・・!? 聖核を形作る術式!? 勝手に組み上がって再構成してる・・・?」
蒼穹の水玉を見ると異常な程の光を発し、そして蒼穹の水玉の周りに水が集まると先程の光とは違う光を発した
そしてその光が消えると一人の女性が姿を現した
「・・・妾は・・・」
「まさか・・・ベリウス!?」
「ジュディスか。ベリウス、そう妾は・・・いや違う。かつてベリウスであった。しかしもはや違う」
その声はまさしくベリウスだった
けど、始祖の隷長 とはまた違う雰囲気がある
「どういう事だ?」
「まさか、聖核に宿っていたベリウスの意思が・・・? 凄い・・・」
「すべての水が妾に従うのが分かる。妾は水を統べる者」
「なんか分からんけど、これ成功なの?」
「せ、成功って言うかそれ以上の結果・・・まさか意思を宿すなんて」
リタは彼女を見つめながら驚きの声を上げる
「人間よ、妾は何であろう? もはや始祖の隷長でもなければベリウスでもない妾は。そなた等が妾を生み出した。どうか名を与えて欲しい」
「物質の精髄を司る存在・・・精霊なんてどうだ?」
「して我が名は」
「ざぶざぶ水色クイー・・・」
カロルはそこで言葉を切り私達を見たが、誰一人言葉を発する事なく冷たい風がカロルに当たり、カロルはガクリと肩を落とした
そして私は彼女を見てある名前を思いついた
「ウンディーネ」
「古代の言葉で水を統べる者、と言う意味ですね」
私の言葉に一斉に視線が集まり、その意味をエステルがみんなに伝える
「成る程な、確かにピッタリだな」
「ウンディーネ・・・では妾は今より精霊ウンディーネ。おお・・・力が漲る・・・そなた等が妾の為に多くエアルを集めてくれたからじゃ・・・」
「・・・がんばったもんね・・・」
「ウンディーネ! オレ達は世界のエアルを抑えたい。力を貸して欲しい」
ユーリの言葉にウンディーネは深く頷いた
「承知しよう、だが妾だけでは足りぬ」
「え?」
「他の属性を統べる者がいなければ無理って事でしょ?」
「左様。それはそなた等式神とて同じ事じゃな」
「物質の基本元素、地水火風・・・」
「ウンディーネは水だから、最低でも後三体か・・・」
「アスラ達式神の力を借りるってのは無理なの?」
「ボク等は始祖の隷長とは別の存在だから出来ないんだよ」
「じゃあやっぱり始祖の隷長をなんとかするしかないって事?」
「素直に精霊になってくれると良いけど・・・」
「もう存在している始祖の隷長も数少ないわ。フェロー、グシオス・・・」
「後、バウルだね」
「バウルはだめ。まだ聖核を生成するほどのエアルを処理していないわ。それに、私が認められそうにない」
ジュディスにとっては相棒であり、親友であるバウルだもの
そう簡単に認められる訳ないもんね
「ウンディーネ、心当たりはないのか?」
「輝ける森エレアルーミン、世界の根たるレレウィーゼ。場所はそなたの友バウルが知っておろう」
兄さんがウンディーネに尋ねると、ウンディーネは目を閉じてそう答えた後、姿を消した
「消えちゃった!」
「いえ、・・・います。感じます」
エステルの言う通り、ウンディーネは私達の側にいる
その感覚はアスラ達式神が姿を消して側にいる時と同じ感覚だった
「エアルクレーネも落ち着いたよう・・・エステルの力を抑制してないのに」
「え!」
「ウンディーネがエステルの力を制御してるんだよ」
リタはアスラの言葉を聞くとモニターを開き確認した
「ホントだ・・・。制御出来てる・・・」
「じゃあ、エステルは本当に自由になったの?」
「ええ・・・ええ!」
「エステル、良かったな」
「なんだか不思議な成り行きになってきたねえ」
「確かに想像もしてなかった事ばかりだ。けど光が見えてきたじゃねぇか」
「ああ。上手くいけばリアの方も何とか出来るかもな」
「ええ」
みんなそれぞれに感動の声を上げていた
続く
あとがき
なんつー中途半端な所で続けてんでしょうね(笑)
でも話し的にキリが良かったのでねι
今回は冒頭で神将一人一人の会話頑張ったよ(笑)
この子達もまたいずれ出したいなw
そして久々のカロル先生のネーミングセンス(笑)
ナイスです(笑)
次回はこれの後を書いた後、リアちゃんとセイ兄が本業やります
それでは~!
下書き:2009.01.02
完成:2009.08.15
リアは見送りに来たイサキや神将達と挨拶をして、リアとセイが歩いて来るのが見えオレ達も歩き出した
「あ、ユーリ」
「ん?」
が、数歩進んだ所でイサキがオレを呼ぶ声が聞こえ、セイとイサキ、神将達がいる方へと向かった
「何だ?」
「リアの事だけど」
「絶対に無茶させないのよ!」
イサキが言葉を続けるより先に、タイリンがオレにそう言った
「はあ? 何だよいきなり」
「だってリアの彼氏なんでしょ」
ユイカの言葉に何で知ってんだ? と思ってると隣にいたアスラがぼそりと言った
「力取り戻してる時に言ってたよ」
「まあリアの態度見てたら解るけどな」
アスラの言葉にゲツレイが頭の後ろで腕を組んで言う
「まあセイもアスラもフキもいるし大丈夫とは思うけど一応な」
「ああ見えて結構無茶するからな」
「念の為、伝えて置いた方が良いと思ったので」
「呼び止めてしまって申し訳ありません」
上からケンク、リンコウ、ナセア、ハクスイが言う
「まあそう言う事だから一応覚えとけ」
「じゃないと後が怖いわよ?」
フキとセンキの言葉に神将達の目と空気が一瞬変わった気がした
「こいつ等怒らせると怖いから覚えとけ」
「ああ、解ったよ」
「あの、姫・・じゃなかった、リアの事よろしくお願いします」
セイの言葉にオレは苦笑しているとミズハがオレの前に来てぺこりと頭を下げて言い、オレはああと返事を返した
「ではお気を付けて」
カムイの言葉にオレとセイ、アスラ、フキはリア達がいる方へ歩き出した
「どうかしたの?」
リアはその様子を見ていたのかオレが歩いてくるとそう尋ねた
「何でもねえよ」
オレは苦笑してリアの頭を撫でて歩いて行き、少し遅れてリアとセイが歩いて来ていた
80.精霊
「あああ寒い寒い寒い。それにしても寒い寒い寒い」
「おっさん、余計寒くなるからやめろ」
「だって寒いじゃない」
故郷を出た私達はゾフェル氷刃海にやって来た
ユーリ達は以前、帝都に戻る時に此処を通った事があるらしいけど、私とエステルと兄さんは此処に来るのは初めてだった
噂では聞いた事はあったけど、何て言うかまさに『読んで字の如し』・・・って言う感じな所よね・・・
「んで、エアルクレーネでどうしようってんだ?」
「エネルギー体で構成されたエアル変換機を作るの」
「変換・・・機?」
「エアルを効率良く物質化する事で総量を減らすのが狙いなんだけど、その為には変換機自体がエアルと物質の両方に近いエネルギーなのが理想なの」
「そのエネルギーって、エアルとどう違うんだ?」
「属性分化したエアルは段階的に物質に移行して安定する。その途中の段階で固定してそれで変換機術式を構築しようって訳」
「エアルでも物質でもないって事?」
「エアルより物質に近い、でも物質にはなってない状態。あたし等はマナって呼んでる」
「マナ・・・」
「本当はもっと長ったらしい名前だけどね。ただ安定してるって言っても物質よりは不安定だから核になるものが必要なの」
「そこで聖核か」
「それと十分なエアルとそれの術式を組み替えるエステルの力」
「わたしが抑制術式なしで力を使うと、エアルが乱れ、溢れ出してしまうけど・・・」
「けど、何もしないであいつをほっとくなんて出来ない。それに・・・」
「それに?」
ユーリはそこで言葉を切って私を見た
「まだリアの力が星喰みを抑えてんのには代りねえんだ」
「これは俺達の考えなんだが、もしかしたらその方法を上手く利用出来ればリアの方も何とか出来るかもしれねぇんだ」
「ホントに!」
兄さんの言葉に私を含む全員が驚いた
「ただやっぱり満月の子とは違うから時間はかかるけどね」
「そうでしょうね。でも上手くいけば可能だと思うわ」
「どっちも賭、ね」
「ええ。でも大丈夫よ。理論に間違いはないんだから」
「私は立場上、止めるべきなんだけど・・・リアもエステルも助かるのなら私もその賭に乗るわ」
「決まりね。じゃあエアルクレーネに行こ」
「しかしエアル変換機ねえ、よくまあ思い付くもんだ。流石天才魔導少女リタっちだ。うんうん」
「・・・手掛かりがあったからよ」
「そういやザウデを調べたって言ってたよな」
「あれ、あんだけの規模なのにエアルでは動いてなかった。世界全体を守る為の結界魔導器なのにね」
「結界魔導器!? そっか星喰みから守ってたんだ」
「アレクセイは兵器だと思ってたみたいだけど、とんでもない間違いだった訳ね」
結界魔導器、だからザウデにいた時に違和感を感じたのか
「けど星喰みはエアルの暴走が原因だよな? 成る程、だからエアル以外の力の結界なのか」
「でも星喰みを抑えていたのはリアの、言霊使いの力なんですよね?」
「そう。でも他にもあったのよ」
「他に・・・?」
「・・・満月の子、かしら?」
「正確には満月の子から分離した力ね。あの巨大魔刻の中で半永久術式としてザウデを動かし続けた。多分、彼等の命と引き換えに」
「満月の子等は命燃え果つ・・・」
「ミョルゾの言い伝えはそう言う意味だったのね」
「デュークの話じゃ、自発的にやったらしいぜ。世界を救う為に」
「うん・・・あの本にもそう書いてあった」
私はあの時デュークに渡された本の内容を思い出しそう言った
「世界の為に犠牲になって・・・ずっと守っててくれたんですね」
「そして、その星喰みを抑える為に稀な力を持った言霊使いが対の鍵となった、か・・・」
「対となる鍵だから存在を禁忌としていた、か」
「実際言霊使いの故郷は別次元にあるから、存在しない者って言われても可笑しくはないけどね」
「そう思うと、満月の子も言霊使いも長い間世界を守り続けてきたのね」
「そうですね」
お互いに同じ立場である私とエステルは少し俯いてそう言っていると、頭の上にユーリの手が乗り、顔を上げると優しく笑っていて私も自然と微笑み返していた
「ま、とりあえず早いとこ行こうぜ」
「うん」
そう言って私とユーリは歩き出した
*
「またあの魔物出て来たりしないよね?」
エアルクレーネにやって来た私達だったが、カロルが辺りをきょろきょろ見て不安そうにしていた
「出て来たら、カロルがまた退治してくれんでしょ?」
「うう・・・意地悪・・・」
リタは蒼穹の水玉をエアルクレーネの近くに浮かび上がらせエステルに声を掛け、エステルが前に来ると術式のモニターを開いた
「今から抑制術式を解除するわ。そしたら、エステルに反応してエアルが放出される。エステルはエアルの術式をよりマナに近い安定した術式に再構成してほしいの」
「え、と・・・良く分かりません・・・」
「うーん、そうね・・・此処は水の属性が強いから流れる水をイメージしてエアルの流れに身を任せれば良いわ。エアル物質化の理論は魔術と同じようなものだから、エステルがエアルをマナに近い形に再構成してくれればあたしでも蒼穹の水玉にエアルを導けるようになるはず」
「ボク達に何か出来る事ない?」
「ないわ。寝てて」
「こんな所で寝たら凍死するっつーの」
「俺等はあると思うぞ」
「え?」
テンポ良く進んでいた会話だったが、兄さんの言葉でそのテンポは止まり、ユーリが兄さんをじっと見て答えた
「言霊使いの力、か?」
「ああ。俺等は聖核になった始祖の隷長の声を聞く事が出来る」
「そんな事出来るの?」
「実際に私はベリウスとアスタルの声を聞いた。そして、あの時使われてた他の聖核になった始祖の隷長の声もね・・・」
その言葉を聞いて皆黙ってしまった
あの時はただでさえ力を使われていたのに更にそんな事が遭ったなんて・・・
誰よりも一番傷ついていたのはリアなのだろうと誰もが思っていた
リタは一瞬黙ったが、直ぐに私と兄さんを見て言う
「分かったわ。じゃああんた達は蒼穹の水玉の声を聞いて、エアルの流れを感じて」
「ええ」「ああ」
「ボクはその流れをリタに送れば良いんだね」
「ええ」
「リタ、私達にも出来る事はあるでしょう? ザウデで見つけた変換技術を使えば良いのよ」
ジュディスの言葉に私達はリタを見たがリタは驚いた顔をして言葉を発した
「あれは! 命をエアルの代用にするものでしょ! そんなの使える訳ないじゃない」
「でも失敗したら激流となったエアルに飲み込まれて私達は全滅。そうでしょ?」
「命懸けなのはみんな同じって事だ。手伝わせろよ」
ユーリの言葉にリタは押し黙り私達を見て少し考えた後目を閉じた
「・・・分かった。あたしが蒼穹の水玉にエアルを導くのに、あんた等の生命力を使う。そうすればエステルはあたしにエアルを干渉されないで流れを掌握出来ると思うから」
「よっし。じゃあみんな、いっちょ気合い入れようぜ」
「「ええ」」「ああ」「はい!」「「うん!」」「あい!」「ワン!」
私達の返事を聞くとリタは前に出てエステルに合図を送った
「いい? リア、エステル、セイ、アスラ。いくわよ」
「ええ」「ああ」「いいよ」「お願いします」
「みんなはこっち来て」
ユーリ達はエアルクレーネの正面とリタの後ろに行く
リタはそれを確認すると術式を開いた
「あたしの術式に同調して。そう・・・良いわよ」
「うっぐ」
ユーリの苦しそうな声が聞こえる
それにつられ、カロル、ジュディス、レイヴン、ラピードも辛そうな表情を見せていた
だが今は自分達のやる事をやらなければならない
私は更に集中し、蒼穹の水玉に語り掛けた
(・・・お願い、ベリウス・・・蒼穹の水玉・・・私達に力を貸して・・・)
その声に応えるかのように蒼穹の水玉の周りにエアルが集まりだした
「蒼穹の水玉にエアルが集まっている・・・術式はうまく働いてる。力場も安定してる・・・いける!」
「ん・・・く・・・」
エステルが苦しそうに声を上げると蒼穹の水玉が光り出した
「きゃあ!?」
「なんだ!」
「まさか、失敗なの?」
「違う! ちゃんと制御出来てる、でもこれは・・・!? 聖核を形作る術式!? 勝手に組み上がって再構成してる・・・?」
蒼穹の水玉を見ると異常な程の光を発し、そして蒼穹の水玉の周りに水が集まると先程の光とは違う光を発した
そしてその光が消えると一人の女性が姿を現した
「・・・妾は・・・」
「まさか・・・ベリウス!?」
「ジュディスか。ベリウス、そう妾は・・・いや違う。かつてベリウスであった。しかしもはや違う」
その声はまさしくベリウスだった
けど、
「どういう事だ?」
「まさか、聖核に宿っていたベリウスの意思が・・・? 凄い・・・」
「すべての水が妾に従うのが分かる。妾は水を統べる者」
「なんか分からんけど、これ成功なの?」
「せ、成功って言うかそれ以上の結果・・・まさか意思を宿すなんて」
リタは彼女を見つめながら驚きの声を上げる
「人間よ、妾は何であろう? もはや始祖の隷長でもなければベリウスでもない妾は。そなた等が妾を生み出した。どうか名を与えて欲しい」
「物質の精髄を司る存在・・・精霊なんてどうだ?」
「して我が名は」
「ざぶざぶ水色クイー・・・」
カロルはそこで言葉を切り私達を見たが、誰一人言葉を発する事なく冷たい風がカロルに当たり、カロルはガクリと肩を落とした
そして私は彼女を見てある名前を思いついた
「ウンディーネ」
「古代の言葉で水を統べる者、と言う意味ですね」
私の言葉に一斉に視線が集まり、その意味をエステルがみんなに伝える
「成る程な、確かにピッタリだな」
「ウンディーネ・・・では妾は今より精霊ウンディーネ。おお・・・力が漲る・・・そなた等が妾の為に多くエアルを集めてくれたからじゃ・・・」
「・・・がんばったもんね・・・」
「ウンディーネ! オレ達は世界のエアルを抑えたい。力を貸して欲しい」
ユーリの言葉にウンディーネは深く頷いた
「承知しよう、だが妾だけでは足りぬ」
「え?」
「他の属性を統べる者がいなければ無理って事でしょ?」
「左様。それはそなた等式神とて同じ事じゃな」
「物質の基本元素、地水火風・・・」
「ウンディーネは水だから、最低でも後三体か・・・」
「アスラ達式神の力を借りるってのは無理なの?」
「ボク等は始祖の隷長とは別の存在だから出来ないんだよ」
「じゃあやっぱり始祖の隷長をなんとかするしかないって事?」
「素直に精霊になってくれると良いけど・・・」
「もう存在している始祖の隷長も数少ないわ。フェロー、グシオス・・・」
「後、バウルだね」
「バウルはだめ。まだ聖核を生成するほどのエアルを処理していないわ。それに、私が認められそうにない」
ジュディスにとっては相棒であり、親友であるバウルだもの
そう簡単に認められる訳ないもんね
「ウンディーネ、心当たりはないのか?」
「輝ける森エレアルーミン、世界の根たるレレウィーゼ。場所はそなたの友バウルが知っておろう」
兄さんがウンディーネに尋ねると、ウンディーネは目を閉じてそう答えた後、姿を消した
「消えちゃった!」
「いえ、・・・います。感じます」
エステルの言う通り、ウンディーネは私達の側にいる
その感覚はアスラ達式神が姿を消して側にいる時と同じ感覚だった
「エアルクレーネも落ち着いたよう・・・エステルの力を抑制してないのに」
「え!」
「ウンディーネがエステルの力を制御してるんだよ」
リタはアスラの言葉を聞くとモニターを開き確認した
「ホントだ・・・。制御出来てる・・・」
「じゃあ、エステルは本当に自由になったの?」
「ええ・・・ええ!」
「エステル、良かったな」
「なんだか不思議な成り行きになってきたねえ」
「確かに想像もしてなかった事ばかりだ。けど光が見えてきたじゃねぇか」
「ああ。上手くいけばリアの方も何とか出来るかもな」
「ええ」
みんなそれぞれに感動の声を上げていた
続く
あとがき
なんつー中途半端な所で続けてんでしょうね(笑)
でも話し的にキリが良かったのでねι
今回は冒頭で神将一人一人の会話頑張ったよ(笑)
この子達もまたいずれ出したいなw
そして久々のカロル先生のネーミングセンス(笑)
ナイスです(笑)
次回はこれの後を書いた後、リアちゃんとセイ兄が本業やります
それでは~!
下書き:2009.01.02
完成:2009.08.15