星喰み編
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「分かったあ!!」
アスピオに着いた私達はリタの家に向かおうとしていると何処からか大きな声が響いてきた
そしてその声の主は勢い良く階段を駆け下りて来た
「「「「・・・・・」」」」
私達はその声の主を横目で見ていると最初に我に返ったエステルが目の前を走って行った人物に声を掛ける
「あ、リタ、ユーリとリアが・・・」
が、そんな事はお構いなしと言わんばかり・・と言うかエステルの声すら聞こえていない様子だった
「研究以外、何も目に入らなくなってるって感じね」
「初めて会った時みたいね・・・」
「・・・あれじゃ変人扱いされんのも無理ないな」
「凄く嬉しそうでした。きっと何か発見があったんですよ」
「そりゃ期待したいとこだな。行ってみようぜ」
78.暗転する未来へ
リタの家に着くと、リタは本棚の前で本を拡げてぶつぶつと何か言っていた
「ふんふん・・・やっぱりそうか。力場の安定係数の算出も十分可能ね。つまり・・・」
「リタ?」
リタは本を置き、本棚の近くに置いてある机の前に行きまたぶつぶつ言っていた
「・・・の応用で基幹術式もいけそう。変換効率はクリアね。非拡散の安定した循環構造体がこれで・・・」
「おい、リタ!」
「なに!? 邪魔しないでくれる? って、え!?」
リタはユーリの呼び掛けに振り向き、私とユーリを見て固まった
「ちょっ、あんた達・・・どうやって・・・って言うか」
「よう」
「久しぶり、で、良いのかな?」
リタは私とユーリのやり取りをじっと見ていて、暫くして首を横に振り、腰に手を当て私とユーリを見て怒鳴った
「この忙しい時に何処行ってたのよ! だいたいあんだけ探して見つからなかったのに・・・」
「いやまあ悪かったよ」
「あんたも無事なら無事だったってさっさと知らせなさいよ!」
「ご、ごめんなさい・・・」
リタの迫力に負けてしまい素直に謝ってしまう
「・・・たく、まあ良いわ。それどころじゃないし。エステルに大事な話があるの」
「エステルに?」
「・・・エアルを抑制する方法が見つかったかもしれないの」
「本当!? 凄いです、リタ!」
「ザウデを調べて色んな事が分かったんだけど、そこで使われてた技術を応用したらいけるかもって。ただ・・・」
「それがエステルの・・・満月の子の力と関係してる、と言う事かしら?」
リタは頷き、言葉を続ける
「エアルに干渉して自在に術式の組み換えを行う必要がある・・・エステルにしか出来ない事なの」
「デュークに宙の戒典、返さなきゃ良かったか」
「デュークに会ったんです?」
「ええ。デュークが私達を助けてくれたみたい」
「剣を回収する為って言ってたけどな」
「あの剣と満月の子は違う。多分、代わりにはならないわ」
「けれど、前にエステルに施した抑制術式・・・あれは満月の子の力を抑える為のものでしょう?」
「うん。だからもしこの理論でエアルを制御するのなら、エステルの抑制術式を解除しなければならない」
「つまり・・・上手くいけばエアルは制御出来るが、下手すりゃエアルはより乱れて世界は星喰みのものになる。そう言う事か」
「大胆な計画ね」
「きっと上手くいく。だからエステル、あたしを信じて力を貸して」
「・・・・」
その言葉にエステルは一瞬黙ってしまう
「怖いのかしら?」
「ううん。嬉しいんです。まだ自分の力が役に立つかもしれないなんて」
エステルは首を横に振って、嬉しそうに笑ってリタを見た
「リタ、わたしに出来る事なら何でも言って下さい」
「で、具体的にはどうするんだ?」
「まだ完全な方法まで出来上がってないの。もうちょっと時間を頂戴」
「んじゃあ、リタが考えてる間にオレ達はカロル達迎えに行くか」
「ええ」
「あたしも行く。資料なら全部頭に入ってるし考え纏まったら説明するわ」
「じゃあ、行きましょ」
そして踵を返して、街の出口へと向かい出し、私はリタの隣に並んだ
「リタ」
「ん、なに?」
「心配かけてごめんね」
「なっ、そりゃ、仲間なんだから当然でしょ///」
リタはそう言って頬を赤らめて少し視線を逸らし、私はその行動が可愛くてつい笑ってしまった
「それより、あんた傷だらけじゃない」
「え、あ、うん」
「エステルに治して貰わなかったの?」
「これだけ力が不安定だと、ね・・・」
「あ、そっか・・・ごめん」
リタは私の言いたい事が分かり、バツが悪そうな顔をした
「でも故郷に帰れば直ぐに治るから」
「なら良いけど・・・無理だけはしないのよ」
「うん、ありがとう」
私はにこりと笑うとリタはまた頬を赤くしていた
*
ダングレストに着くと私達はカロルとレイヴンがいるであろうユニオンに向かい出した
「ちくしょう、どうせオレなんか!」
だが向かう途中で金髪の男性が私達の横をすり抜けた
「あれは・・・確かドンの孫のハリー・・・だっけか」
「あーっ!!」
何処かへ走って行ったハリーの事を話していると突然、男の子の驚く声が聞こえ私達は後ろを見た
そこにはレイヴンと今にも泣きそうな顔をしたカロルがいた
「ユーリ!! リア!!」
カロルは私とユーリの元へ走って来ると顔を俯けた
「・・・ヒドイよ。無事だったんなら一言くらい・・・」
そして顔を上げるが、やはり今にも泣きそうな顔だった
「心配かけたな」
「心配かけてごめんね、カロル」
私はカロルの頭を撫でてあげる
「でもオレ達は戻って来たぜ」
そして後ろでその様子を見ていたレイヴンがゆっくりと歩いて来た
「おたくも良いしぶとさねぇ。ちゃっかりリアちゃんまで連れ帰って来て。流石、俺様の見込んだ男」
レイヴンは私を見てそう言うとユーリは苦笑した
「今、ハリー見かけたけど、何か遭ったのか?」
「それがちょっとばかし上手くなくてねえ。今ユニオンは船頭不在だからねぇ」
「中核となるものがいないと纏まらない・・・と言うワケ?」
その言葉にカロルは頷き、リタは何か閃いたようだった
「中核! ・・・そっか!」
「な、なになに?」
「分かったわ。聖核よ。あれ使えば上手くいくわ。つまり、エアルを安定係数が変化し続けていってもそれを結びつけ・・・」
「あーまてまてまて、どうせ理解出来ないから説明はパスな」
「ま、まぁ良いわ。とにかく、ドンに渡した聖核があったはずよね?」
「ベリウスの聖核、蒼穹の水玉・・・」
カロルとレイヴンは蚊帳の外になっていてお互いに顔を見合わせるが、直ぐにエステルが説明をする
「リタがエアルを抑制する方法を見つけたんです」
「ほんとに!? すごい!」
「ドンが亡くなった後、蒼穹の水玉がどうなったか知ってるか?」
「さあなぁ。それこそハリーなら知ってっかもな。丁度良いわ。やっこさん連れ戻すとこだったんだ。ユニオンの本部行ってってよ。直ぐ戻るからさ」
そう言ってレイヴンはハリーが走って行った方へ歩いて行った
*
レイヴンに言われ私達はユニオンの本部に来た
だが、中は妙な雰囲気に包まれていた
普段なら見る事のないギルドの人達も集まってはいるが、やっぱり船頭がいない為纏まりがなくバラバラになってしまっている
「誰もドンの後釜に座りたくなのよ。なんせあのドンの後だからねえ」
「・・・・」
確かに彼ほどギルドの鑑だと思わせる気迫、迫力といったものはどうやっても出てこない
ドンの凄さは私も勿論ユーリ達も知っている
それは此処にいる人達も同じだ
あまり人に惚れ込む事のないユーリですら惹かれた人で、誰しも憧れの的だ
その人の後を継ぐ、と言うものはかなりの重みを背負う事になる
「ほれ、しゃんとしなって」
レイヴンは隣にいるハリーにそう言うがハリーは顔を逸らして言う
「オレはじいさんを死に追いやった張本人だ。そんな奴がドンみたいになれる訳がねえだろ」
「誰もあのじいさんみたくなれるなんて言ってねえでしょうが。跡目会議くらいちゃんと出とけって言ってんの」
ハリーの立場を考えれば気持ちは解らなくはない
偉大な人の孫、というものは周りから変に期待されてしまうもの
それは言霊使いの正統後継者である私が一番良く解ってる
私も正統後継者であり、稀な力の持ち主で言霊使いの姫、と言われている程だから・・・
けど・・・
「ねえあんた、ドンの聖核を譲って欲しいんだけど」
「リタ、いきなりそんな直球・・・」
「・・・あれはドンの跡目継いだ奴のもんだ。よそ者にはやれねえよ」
「何よそれ。それじゃ何時その跡目が決まるのよ」
「知らねえよ。オレに聞かないでくれ」
いい加減痺れを切らしたリタがハリーに言うがハリーは言うだけ言って私達から離れ、近くの壁に寄り掛り腕を組んで黙ってしまった
「ったくしょうがねえな。ユニオンがしっかりしなきゃ誰がこの街を守るってんだよ」
ユーリの言う通り、このまま纏まりがなくなるのはギルドにとってもドンにとってもこの街の人にとっても安心出来ない
「ああ? そりゃ俺達に決まってらあな」
ユーリの言葉にあるギルドの男が名乗りを上げる
「俺達とはどの俺達だね。あのザウデとやらに手下を送り込んだのも、君のギルド暁の雲 だろう」
「ユニオンが帝国の風下に立った事は一度もねえんだ。黙ってみてられるか!」
「迂闊だったと言っているのだよ。ユニオンの敵対行為と帝国に受け取られかねん」
「そん時ゃ、一戦やるまでだ」
「それで誰が率いるんだね。暁の雲の長である君か? ドンが聞いたら大笑いするだろうよ」
「天を射る矢のてめえこそ、名乗りを上げたらどうなんだ。きっと人望のなさがはっきりするだろうぜ」
「アホくさ。この世の終わりまでやってろ。仲間内でやりあって自滅ってのはやめてくれよ。全っ然笑えねぇから」
ユーリのその言葉に此処に居たギルドの人間が一斉に振り向きユーリを睨み付けた
だがそれを止めるかのようにカロルが前に出た
「仲間に助けてもらえば良い、仲間を守れば応えてくれる。ドンが最後にボクに言ったんだ」
「カロル・・・」
「何だぁ? このガキ」
一人の男がカロルを嘗め回すように見ていると、ユーリとリタとレイヴンがカロルの後ろに立ち、私とエステルとジュディスとラピードもその男の方に顔を向ける
男はそれだけの威圧で押されてしまい少し後退る
「ボクは一人じゃ何にも出来ないけど仲間がいてくれる。仲間が支えてくれるから何だって出来る。今だってちゃんと支えてくれてる。何でユニオンがそれじゃ駄目なのさ!?」
「少年の言う通り、ギルドってのは互いに助け合うのが身上だったよなあ。無理に偉大な頭を戴かなくてもやりようはあるんでないの?」
「これからはてめぇ等の足で歩けとドンは言った。歩き方くらい分かんだろ? それこそガキじゃねぇんだ」
「・・・・・」
ユーリ達の言葉にその場にいた誰もが黙り込んでしまう
「簡単に言うが、しかし・・・」
「行こうぜ。これ以上、此処にいても何もねえ」
そう言ってユーリは歩き出し、私も無言で歩き出した
「え、ちょっとあんた達、ねえ!」
後ろからリタの声が聞こえ、私は出口近くに来ると足を止めた
「・・・今のユニオンを見たら、きっとドンは悲しむと思うな」
「・・・・・」
私は振り返らず静かにそう告げて、少し前で私を待つユーリの所に歩いて行った
「・・・ちょっと、どうすんのよ、聖核は!」
広場まで戻って来た私達は後ろからリタの声と複数の足音が聞こえ足を止めた
「あんな連中に付き合ってる暇あったら他の手考えた方がマシだ」
「他にって、そんな簡単なもんじゃないでしょうに・・・。!」
リタはユーリの前に来てそう言っていると、何かに気が付き、私達の後ろを見た
それにつられて私達も後ろを見ると、ハリーがこちらに向かって歩いて来るのが見えた
「・・・ほらよ」
そう言ってハリーはユーリに蒼穹の水玉を渡した
「こいつは・・・くれんのか?」
「馬鹿言え、こいつは盗まれるんだ」
「え?」
ハリーはそう言ってユーリを見るとユーリは小さく笑って答えた
「・・・恩に着るぜ」
「他の連中に気取られる前に、さっさと行っちまいな」
「どういう風の吹き回しよ?」
「さあな。けど、子供に説教されっぱなしってのもなんだかシャクだからな」
ハリーはそう言って踵を返してユニオンへ戻って行った
「あいつも、少しは変わったかね」
「そうだと思う」
レイヴンの言葉に私も同意した
ハリーの顔は何処か吹っ切れた顔をしていたからだった
「これで聖核も手に入った訳だけど、次はどうするのかしら?」
「ゾフェル氷刃海に行きたいんだけど、でもその前に行く所があるでしょ」
「行く所?」
「まだ全員揃ってないでしょ?」
「そっか! セイとアスラの所に行くんだね」
「それにリアはまだ完全に傷が癒えていませんしね。戻れば自然に治ると言っていましたし」
「そうだな。じゃあセイとアスラの所行って、リアの傷を癒しに行くか。リア、案内頼むな」
「ええ。じゃあ行きましょう」
蒼穹の水玉を無事に手に入れた私達はそのままダングレストの出口を目指して行った
続く
あとがき
リタ、カロル、レイヴンとも再会~!!
で、リタっちのデレっぽさを書いてみた(笑)
だってリタっち書きやすいんだもん(笑)
カロル先生は最初の所本当に可愛いですw
でもユニオンでは凛々しかった、本当にカロル先生は良い首領になるよ!
レイヴンもレイヴンで何か吹っ切れた感じでちょっと爽やか?になってる感じだったしね
タイトルはユニオンの状況を思ってこれで
さて、次回はいよいよあの謎の多かったリアちゃん達、言霊使いの故郷に向かいます
セイ兄とアスラとも合流なるか?
それでは!
下書き:2008.12.29
完成:2009.08.13
アスピオに着いた私達はリタの家に向かおうとしていると何処からか大きな声が響いてきた
そしてその声の主は勢い良く階段を駆け下りて来た
「「「「・・・・・」」」」
私達はその声の主を横目で見ていると最初に我に返ったエステルが目の前を走って行った人物に声を掛ける
「あ、リタ、ユーリとリアが・・・」
が、そんな事はお構いなしと言わんばかり・・と言うかエステルの声すら聞こえていない様子だった
「研究以外、何も目に入らなくなってるって感じね」
「初めて会った時みたいね・・・」
「・・・あれじゃ変人扱いされんのも無理ないな」
「凄く嬉しそうでした。きっと何か発見があったんですよ」
「そりゃ期待したいとこだな。行ってみようぜ」
78.暗転する未来へ
リタの家に着くと、リタは本棚の前で本を拡げてぶつぶつと何か言っていた
「ふんふん・・・やっぱりそうか。力場の安定係数の算出も十分可能ね。つまり・・・」
「リタ?」
リタは本を置き、本棚の近くに置いてある机の前に行きまたぶつぶつ言っていた
「・・・の応用で基幹術式もいけそう。変換効率はクリアね。非拡散の安定した循環構造体がこれで・・・」
「おい、リタ!」
「なに!? 邪魔しないでくれる? って、え!?」
リタはユーリの呼び掛けに振り向き、私とユーリを見て固まった
「ちょっ、あんた達・・・どうやって・・・って言うか」
「よう」
「久しぶり、で、良いのかな?」
リタは私とユーリのやり取りをじっと見ていて、暫くして首を横に振り、腰に手を当て私とユーリを見て怒鳴った
「この忙しい時に何処行ってたのよ! だいたいあんだけ探して見つからなかったのに・・・」
「いやまあ悪かったよ」
「あんたも無事なら無事だったってさっさと知らせなさいよ!」
「ご、ごめんなさい・・・」
リタの迫力に負けてしまい素直に謝ってしまう
「・・・たく、まあ良いわ。それどころじゃないし。エステルに大事な話があるの」
「エステルに?」
「・・・エアルを抑制する方法が見つかったかもしれないの」
「本当!? 凄いです、リタ!」
「ザウデを調べて色んな事が分かったんだけど、そこで使われてた技術を応用したらいけるかもって。ただ・・・」
「それがエステルの・・・満月の子の力と関係してる、と言う事かしら?」
リタは頷き、言葉を続ける
「エアルに干渉して自在に術式の組み換えを行う必要がある・・・エステルにしか出来ない事なの」
「デュークに宙の戒典、返さなきゃ良かったか」
「デュークに会ったんです?」
「ええ。デュークが私達を助けてくれたみたい」
「剣を回収する為って言ってたけどな」
「あの剣と満月の子は違う。多分、代わりにはならないわ」
「けれど、前にエステルに施した抑制術式・・・あれは満月の子の力を抑える為のものでしょう?」
「うん。だからもしこの理論でエアルを制御するのなら、エステルの抑制術式を解除しなければならない」
「つまり・・・上手くいけばエアルは制御出来るが、下手すりゃエアルはより乱れて世界は星喰みのものになる。そう言う事か」
「大胆な計画ね」
「きっと上手くいく。だからエステル、あたしを信じて力を貸して」
「・・・・」
その言葉にエステルは一瞬黙ってしまう
「怖いのかしら?」
「ううん。嬉しいんです。まだ自分の力が役に立つかもしれないなんて」
エステルは首を横に振って、嬉しそうに笑ってリタを見た
「リタ、わたしに出来る事なら何でも言って下さい」
「で、具体的にはどうするんだ?」
「まだ完全な方法まで出来上がってないの。もうちょっと時間を頂戴」
「んじゃあ、リタが考えてる間にオレ達はカロル達迎えに行くか」
「ええ」
「あたしも行く。資料なら全部頭に入ってるし考え纏まったら説明するわ」
「じゃあ、行きましょ」
そして踵を返して、街の出口へと向かい出し、私はリタの隣に並んだ
「リタ」
「ん、なに?」
「心配かけてごめんね」
「なっ、そりゃ、仲間なんだから当然でしょ///」
リタはそう言って頬を赤らめて少し視線を逸らし、私はその行動が可愛くてつい笑ってしまった
「それより、あんた傷だらけじゃない」
「え、あ、うん」
「エステルに治して貰わなかったの?」
「これだけ力が不安定だと、ね・・・」
「あ、そっか・・・ごめん」
リタは私の言いたい事が分かり、バツが悪そうな顔をした
「でも故郷に帰れば直ぐに治るから」
「なら良いけど・・・無理だけはしないのよ」
「うん、ありがとう」
私はにこりと笑うとリタはまた頬を赤くしていた
*
ダングレストに着くと私達はカロルとレイヴンがいるであろうユニオンに向かい出した
「ちくしょう、どうせオレなんか!」
だが向かう途中で金髪の男性が私達の横をすり抜けた
「あれは・・・確かドンの孫のハリー・・・だっけか」
「あーっ!!」
何処かへ走って行ったハリーの事を話していると突然、男の子の驚く声が聞こえ私達は後ろを見た
そこにはレイヴンと今にも泣きそうな顔をしたカロルがいた
「ユーリ!! リア!!」
カロルは私とユーリの元へ走って来ると顔を俯けた
「・・・ヒドイよ。無事だったんなら一言くらい・・・」
そして顔を上げるが、やはり今にも泣きそうな顔だった
「心配かけたな」
「心配かけてごめんね、カロル」
私はカロルの頭を撫でてあげる
「でもオレ達は戻って来たぜ」
そして後ろでその様子を見ていたレイヴンがゆっくりと歩いて来た
「おたくも良いしぶとさねぇ。ちゃっかりリアちゃんまで連れ帰って来て。流石、俺様の見込んだ男」
レイヴンは私を見てそう言うとユーリは苦笑した
「今、ハリー見かけたけど、何か遭ったのか?」
「それがちょっとばかし上手くなくてねえ。今ユニオンは船頭不在だからねぇ」
「中核となるものがいないと纏まらない・・・と言うワケ?」
その言葉にカロルは頷き、リタは何か閃いたようだった
「中核! ・・・そっか!」
「な、なになに?」
「分かったわ。聖核よ。あれ使えば上手くいくわ。つまり、エアルを安定係数が変化し続けていってもそれを結びつけ・・・」
「あーまてまてまて、どうせ理解出来ないから説明はパスな」
「ま、まぁ良いわ。とにかく、ドンに渡した聖核があったはずよね?」
「ベリウスの聖核、蒼穹の水玉・・・」
カロルとレイヴンは蚊帳の外になっていてお互いに顔を見合わせるが、直ぐにエステルが説明をする
「リタがエアルを抑制する方法を見つけたんです」
「ほんとに!? すごい!」
「ドンが亡くなった後、蒼穹の水玉がどうなったか知ってるか?」
「さあなぁ。それこそハリーなら知ってっかもな。丁度良いわ。やっこさん連れ戻すとこだったんだ。ユニオンの本部行ってってよ。直ぐ戻るからさ」
そう言ってレイヴンはハリーが走って行った方へ歩いて行った
*
レイヴンに言われ私達はユニオンの本部に来た
だが、中は妙な雰囲気に包まれていた
普段なら見る事のないギルドの人達も集まってはいるが、やっぱり船頭がいない為纏まりがなくバラバラになってしまっている
「誰もドンの後釜に座りたくなのよ。なんせあのドンの後だからねえ」
「・・・・」
確かに彼ほどギルドの鑑だと思わせる気迫、迫力といったものはどうやっても出てこない
ドンの凄さは私も勿論ユーリ達も知っている
それは此処にいる人達も同じだ
あまり人に惚れ込む事のないユーリですら惹かれた人で、誰しも憧れの的だ
その人の後を継ぐ、と言うものはかなりの重みを背負う事になる
「ほれ、しゃんとしなって」
レイヴンは隣にいるハリーにそう言うがハリーは顔を逸らして言う
「オレはじいさんを死に追いやった張本人だ。そんな奴がドンみたいになれる訳がねえだろ」
「誰もあのじいさんみたくなれるなんて言ってねえでしょうが。跡目会議くらいちゃんと出とけって言ってんの」
ハリーの立場を考えれば気持ちは解らなくはない
偉大な人の孫、というものは周りから変に期待されてしまうもの
それは言霊使いの正統後継者である私が一番良く解ってる
私も正統後継者であり、稀な力の持ち主で言霊使いの姫、と言われている程だから・・・
けど・・・
「ねえあんた、ドンの聖核を譲って欲しいんだけど」
「リタ、いきなりそんな直球・・・」
「・・・あれはドンの跡目継いだ奴のもんだ。よそ者にはやれねえよ」
「何よそれ。それじゃ何時その跡目が決まるのよ」
「知らねえよ。オレに聞かないでくれ」
いい加減痺れを切らしたリタがハリーに言うがハリーは言うだけ言って私達から離れ、近くの壁に寄り掛り腕を組んで黙ってしまった
「ったくしょうがねえな。ユニオンがしっかりしなきゃ誰がこの街を守るってんだよ」
ユーリの言う通り、このまま纏まりがなくなるのはギルドにとってもドンにとってもこの街の人にとっても安心出来ない
「ああ? そりゃ俺達に決まってらあな」
ユーリの言葉にあるギルドの男が名乗りを上げる
「俺達とはどの俺達だね。あのザウデとやらに手下を送り込んだのも、君のギルド
「ユニオンが帝国の風下に立った事は一度もねえんだ。黙ってみてられるか!」
「迂闊だったと言っているのだよ。ユニオンの敵対行為と帝国に受け取られかねん」
「そん時ゃ、一戦やるまでだ」
「それで誰が率いるんだね。暁の雲の長である君か? ドンが聞いたら大笑いするだろうよ」
「天を射る矢のてめえこそ、名乗りを上げたらどうなんだ。きっと人望のなさがはっきりするだろうぜ」
「アホくさ。この世の終わりまでやってろ。仲間内でやりあって自滅ってのはやめてくれよ。全っ然笑えねぇから」
ユーリのその言葉に此処に居たギルドの人間が一斉に振り向きユーリを睨み付けた
だがそれを止めるかのようにカロルが前に出た
「仲間に助けてもらえば良い、仲間を守れば応えてくれる。ドンが最後にボクに言ったんだ」
「カロル・・・」
「何だぁ? このガキ」
一人の男がカロルを嘗め回すように見ていると、ユーリとリタとレイヴンがカロルの後ろに立ち、私とエステルとジュディスとラピードもその男の方に顔を向ける
男はそれだけの威圧で押されてしまい少し後退る
「ボクは一人じゃ何にも出来ないけど仲間がいてくれる。仲間が支えてくれるから何だって出来る。今だってちゃんと支えてくれてる。何でユニオンがそれじゃ駄目なのさ!?」
「少年の言う通り、ギルドってのは互いに助け合うのが身上だったよなあ。無理に偉大な頭を戴かなくてもやりようはあるんでないの?」
「これからはてめぇ等の足で歩けとドンは言った。歩き方くらい分かんだろ? それこそガキじゃねぇんだ」
「・・・・・」
ユーリ達の言葉にその場にいた誰もが黙り込んでしまう
「簡単に言うが、しかし・・・」
「行こうぜ。これ以上、此処にいても何もねえ」
そう言ってユーリは歩き出し、私も無言で歩き出した
「え、ちょっとあんた達、ねえ!」
後ろからリタの声が聞こえ、私は出口近くに来ると足を止めた
「・・・今のユニオンを見たら、きっとドンは悲しむと思うな」
「・・・・・」
私は振り返らず静かにそう告げて、少し前で私を待つユーリの所に歩いて行った
「・・・ちょっと、どうすんのよ、聖核は!」
広場まで戻って来た私達は後ろからリタの声と複数の足音が聞こえ足を止めた
「あんな連中に付き合ってる暇あったら他の手考えた方がマシだ」
「他にって、そんな簡単なもんじゃないでしょうに・・・。!」
リタはユーリの前に来てそう言っていると、何かに気が付き、私達の後ろを見た
それにつられて私達も後ろを見ると、ハリーがこちらに向かって歩いて来るのが見えた
「・・・ほらよ」
そう言ってハリーはユーリに蒼穹の水玉を渡した
「こいつは・・・くれんのか?」
「馬鹿言え、こいつは盗まれるんだ」
「え?」
ハリーはそう言ってユーリを見るとユーリは小さく笑って答えた
「・・・恩に着るぜ」
「他の連中に気取られる前に、さっさと行っちまいな」
「どういう風の吹き回しよ?」
「さあな。けど、子供に説教されっぱなしってのもなんだかシャクだからな」
ハリーはそう言って踵を返してユニオンへ戻って行った
「あいつも、少しは変わったかね」
「そうだと思う」
レイヴンの言葉に私も同意した
ハリーの顔は何処か吹っ切れた顔をしていたからだった
「これで聖核も手に入った訳だけど、次はどうするのかしら?」
「ゾフェル氷刃海に行きたいんだけど、でもその前に行く所があるでしょ」
「行く所?」
「まだ全員揃ってないでしょ?」
「そっか! セイとアスラの所に行くんだね」
「それにリアはまだ完全に傷が癒えていませんしね。戻れば自然に治ると言っていましたし」
「そうだな。じゃあセイとアスラの所行って、リアの傷を癒しに行くか。リア、案内頼むな」
「ええ。じゃあ行きましょう」
蒼穹の水玉を無事に手に入れた私達はそのままダングレストの出口を目指して行った
続く
あとがき
リタ、カロル、レイヴンとも再会~!!
で、リタっちのデレっぽさを書いてみた(笑)
だってリタっち書きやすいんだもん(笑)
カロル先生は最初の所本当に可愛いですw
でもユニオンでは凛々しかった、本当にカロル先生は良い首領になるよ!
レイヴンもレイヴンで何か吹っ切れた感じでちょっと爽やか?になってる感じだったしね
タイトルはユニオンの状況を思ってこれで
さて、次回はいよいよあの謎の多かったリアちゃん達、言霊使いの故郷に向かいます
セイ兄とアスラとも合流なるか?
それでは!
下書き:2008.12.29
完成:2009.08.13