星喰み編
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今まで自分の力を此処まで引き出された事はなかった
子供の頃に修行をしている時にちょっと力を引き出された事はあったけど、今回みたいに力を引き出され、自分の力じゃないものが一緒になって力が発動したりした事はなかった
76.You like it.
「・・っ・・・」
痛みで目が覚め私はゆっくりと瞼を開き、少しずつ感覚が戻り景色が見えだす
私は何処かの部屋のベッドに寝かされているようだった
「・・・・此処、は・・?」
ゆっくりと身体を起こし、辺りを見た
其処は何処か懐かしく見覚えのある部屋に、窓から見えるこの景色
「・・・ザーフィアス?」
そしてこの位置から見えるザーフィアスの光景、それは紛れもなく私やユーリ、フレン、兄さんが育ったザーフィアスの下町だった
と、言う事は此処は、この部屋は間違いなく
「ユーリの部屋・・・」
「気が付いたようだな」
「! デューク!?」
ふと声が聞こえそちらに視線を向けると、部屋の入り口にデュークがいた
デュークの姿を見てベッドから立ち上がろうとすると、身体に痛みが走った
「っ!」
「あまり無理をしない方が良い」
デュークはそう言いながらゆっくりとこちらに歩いて来る
「・・・貴方が助けてくれたの?」
「・・・・・」
デュークは無言だったが彼の目を見れば直ぐに解った
「助けてくれて有り難う」
どうやって助けてくれたのかは解らないけど、デュークが助けてくれなければあのまま命を落としていたと思う
「私、どれ位寝てたの?」
「10日程だ」
「10日・・・」
10日って・・・一週間近く!?
あれからもうそんなに経ったんだ・・・
その間ずっと眠っていたんだ・・・
あの後、みんなはどうしたんだろう?
私とユーリを探したりしていたのだろうか?
「・・・ユーリは?」
この場にあの時一緒に海に落ちたユーリの姿が見えない事に気が付く
「隣の部屋にいる。まだ目を覚ましていないが」
デュークは隣の部屋を見て言い、私はゆっくりとベッドから降りて隣の部屋に向かい出した
隣の部屋に移動すると、ベッドに寝かされているユーリの姿を見つけほっと安堵の息を吐き、そのままユーリの所に歩いて行く
側に行くと少しだけ荒い息を吐いていた
それはあの腹部の怪我が原因だろうけど・・・
普段だったら直ぐに怪我を癒す事が出来る
けど、御剣の階梯やザウデであれだけ力を使われた所為で殆ど力が残っていない
「・・・・」
私はベッドの近くに置いてある椅子に座りじっとユーリを見ていると、デュークが私の隣に移動した
「・・・何も出来ないってツライね」
私の言葉にデュークは疑問を抱いてちらりと私を見た
「普段なら直ぐにでも傷を治せるのに、こんな時に力がないと何も出来ない。エステルが癒したくてもそれが出来ない気持ち、今なら解るな」
「・・・そうだな。何も出来ないのは辛い事だな」
デュークはそう言って少し遠い目をした
けど、その目はやっぱり何処か寂しそうだった
もしかしたらデュークも今の私と同じように何も出来ないでいた事が遭ったのかもしれない・・・
そう思ってデュークを見ているとデュークは私の視線に気付いた
「どうした?」
「あ、ううん。・・・あの、ごめんなさい」
突然謝った事にデュークは疑問を抱いた
「ずっと気を付けろ、って言ってくれてたのに・・・」
「それはお前の意志でやった事ではないだろう」
「でも、警告を無視した訳じゃないけど、結果的に利用されちゃったし・・・だから謝っておきたかったの・・・」
「そうか・・・」
そう答えるとデュークは何も言わなくなった
けどデュークには私の言葉はしっかりと届いていた
そして少しだけ沈黙が流れ、デュークは私にスッと一冊の本を差し出した
「・・・これは?」
「先代の満月の子等について書いてある物だ」
私はその本を受け取ると、デュークは踵を返した
「その者の側にいるのは構わないが、あまり無理をしない事だ」
「・・・デューク」
私がこのままユーリの側を離れないと悟ったのか、デュークはこの本を渡して踵を返して部屋を出て行った
「・・・ありがとう」
*
「うっ・・・はあ・・・はあ・・・」
オレはゆっくりと瞼を開けると、今は夜なのか辺りは暗かった
此処が何処なのかと思って辺りを見渡す
「オレの部屋・・・か? なんで・・・」
オレはゆっくりと身体を起こそうとするが、足下に何か重みを感じた
「・・・リア?」
そこにいたのはザウデで救出したリアだった
リアを見ると本を開いたまま小さな寝息を立て気持ちよさそうに寝ていた
「・・・ったく。風邪引くぞ」
オレは毛布を掛けてやりリアの頭を撫でているとリアが読んでいたで本に目が止まった
「ん・・・満月の子?」
オレはその本を取りリアを起こさないようにベッドに浅く座り直した
「・・・古代の指導者達は生得の特殊な力を持っていた。彼等は満月の子と呼ばれた・・・ザウデは彼等の命と力で世界を結界で包み込み、星喰みの脅威から救った・・・」
そこまで読み上げると扉が開く音が聞こえた
「目が覚めたか」
「デューク・・・そうか、あんたが助けてくれたのか」
「助けたのはその娘だ」
「・・・力、使ったのか?」
「お前を助ける為にな。途中で意識を失ったようだが」
デュークはそう言うと部屋の奥へ進み、ベッドに立て掛けられていた宙の戒典を手に取った
「・・・でも、此処までオレ達を運んだのはあんただろ?」
デュークは黙ったまま宙の戒典を見つめた
「・・・この剣を海に失う訳にはいかなかったからな」
「・・・まあ良いさ、それでも礼を言わせてもらう」
オレがそうぽつりと呟くが、デュークは返事をしない
そしてオレはまた本に目を向ける
「アレクセイはリアとエステルが対となる鍵だと言った。けどこの本には言霊使いの事は書かれてない。・・・ザウデ不落宮は満月の子の命で動いてたのか?」
「・・・星喰みを招いた原因は人間であり、彼等はその指導者であったという。それは彼等の償い・・・だったのだろう」
デュークの赤い瞳がオレを見つめ、オレもじっとそれを見つめるとデュークはまた口を開いた
「そしてわずかに生き残った満月の子が始祖の隷長と後の世界のあり方を取り決めた。今の皇帝家が、その末裔だ」
「・・・それが帝国の起こりって訳か。だからザウデの鍵ともなるその剣が皇帝の証になるんだな。でも、何でそれでリアが鍵になるんだ?」
「言霊使いは満月の子と相応の力を持ち、言霊使いは魂を鎮める力を持っている。稀な力を持った言霊使いの力は星喰みを抑える力でもある。そしてその娘は一族の中でも一番稀な力を持っている」
「成る程な。その稀な力を持っているリアが皇帝と対になる鍵って事か?」
そう問うと、デュークは小さく頷いた
「・・・稀な力を持った言霊使いは生き残った満月の子等との対話の時、星喰みを抑える為に、対となる始祖の隷長側の鍵になる事を誓ったのだ」
「たとえ皇帝側の鍵が手に入ったとしても、言霊使いの稀な力を持った奴がそう簡単に生まれる事はない。それに言霊使いは存在しないものと言われてる。だから始祖の隷長側の鍵は手に入らない、からか」
デュークはまた頷きそのまま窓の外の星空を見上げた
「エアルを用いる限り星喰みには対抗出来ない。あれは、エアルから生まれたものなのだから」
「・・・あんたもあの星喰みを止めるつもりだった。だからエアルクレーネを鎮めて回ってた、違うか?」
「そうだ」
「なんで帝国やギルドに協力を求めなかったんだ? そうすればアレクセイを止める事だって出来たかもしれねぇ」
「私は始祖の隷長に身を寄せた。人間と関わり合うつもりはない。それに人間達は決して纏まりはしないだろう」
「ならどうしようってんだ? 星喰みは古代文明だって手に負えなかったんだろ」
「方法はある」
デュークはまた黙って歩き出し、出口へ向かい出した
「あんた、人間嫌いみたいだけど、オレ達だって人間だぜ? 何で宙の戒典を貸してくれた? 何で協力してくれたんだよ」
「お前達が敢えて始祖の隷長と対話を試みた。そしてその娘・・・」
デュークはリアを一瞥して直ぐに視線を戻した
「・・・いや、」
「リアに関係してる事なら話して貰うぜ」
「・・・・」
デュークはそこで言葉を切ったが、オレが目を細めて言うとデュークはゆっくりと口を開く
「その娘の力、星喰みを抑える力はまだ働いている」
「!」
「今は一時的に治まっているが、いつ発動するか解らない」
「止める方法はあるのか?」
「それ以上の事は私より式神達にでも聞く方が良いだろう」
立ち去ろうとして扉の前で足を止め小さく言う
「私は世界を、我が友が愛したテルカ・リュミレースを守る」
決意の篭った声でその場を断ち切ってしまうとデュークは出て行った
「どういう・・・うぐっ」
オレは立ち上がりデュークを引き止めようとしたが、腹部の痛みに妨害をされ、声を漏らしてベッドに尻餅を付いてしまう
「・・・ユーリ・・・?」
その震動で目を覚ましたのかリアがゆっくりと顔を上げる
「悪ぃ、起こしちまったか?」
「・・・・・」
オレはリアの方に顔を向けるとリアはオレをじっと見ていた
「・・・リア?」
名前を呼ぶと、リアの目に涙が浮かび上がりそして急にオレに抱きついて来た
「ユーリっ!!」
「っと! おい、リア・・・?」
オレは急な事に少し戸惑ってしまうが、抱きついて来たリアが小さく震えていた
「・・・良かった。ユーリが目を覚ましてくれて・・・本当に・・・」
リアは本当に不安だったのか暫くオレに抱きついたままだった
「・・・ああ。オレもリアが無事で良かった。・・・おかえり、リア」
「うん・・・ただいま、ユーリ」
オレはリアが落ち着くまでリアを抱きしめていた
「落ち着いたか?」
「うん・・・」
あれから暫くしてリアは落ち着いて、オレ達はベッドに腰掛けていた
リアを見ると所々に傷が残っていた
「ケガ、大丈夫か?」
「うん。ユーリこそ大丈夫、その傷・・・」
リアはオレの腹部を見る
他の怪我はそんなに目立たないがこればっかりは目立ってしまう
リアもあの場にいたんだから心配すんのも当然か
「・・・ごめんね。普段だったら直ぐに癒せるのに・・・」
「気にすんなよ。それより助けてくれてありがとな」
「・・・デュークから聞いたの?」
「ああ。力使わせちまって悪かったな」
「ううん、ユーリが無事だから気にしてないよ」
リアはそう言って笑う
(相変わらずその優しい笑顔はオレを救ってくれるな)
「ユーリ、どうしかした?」
オレは小さく笑っているとリアが首を傾げて聞いてきたがオレは「いや、」と小さく笑ったまま腹部を押さえた
「・・・これほど恨まれてたとはな」
「・・・きっと」
「ん?」
オレは腹部を押さえながら言うとリアが小さく呟いた
「きっと、ソディアさんはフレンの事が好きなんだよ」
「?」
「憧れの人でもあり、異性としても好きなんだよ。フレン、私達の前でしか気を緩めないから、それが羨ましかったんだと思う。傍にいても仲間として見て貰ってはいても、私達の前で見せるような気の緩め方をしない。ユーリや私や兄さんと会ってる時のフレンはやっぱり楽しそうな顔をしてる。特にソディアさんはユーリと話してる時のフレンばっかり見てるから、だからそれが嫉妬になって、気持ちが抑えられなくなって、あんな事になったんだと思う・・・」
リアは複雑な表情をしてそう言った
確かにリアの言う事は合ってるだろう
ま、オレの意見はとりあえず置いといて、だ
「そういやまだあの返事聞いてなかったな」
「あの返事?」
「ザウデで言った事だ」
「ザウデで・・・!!///」
リアはそれで思い出したのか顔を赤くした
「で、どうなんだ?」
「えっと、あの・・・」
「オレは本気だぜ」
「・・・・」
オレは真剣な表情をして言うとリアは少しだけ黙った
「・・・本当の所言うとね、最初は凄く吃驚した」
俯けていた顔をゆっくりと上げ、言葉を続ける
「けど、凄く嬉しかった。でも、あの時は気持ちの整理が出来てなかったけど、ユーリが刺されてザウデから落ちた時、凄く焦ったし、今も起きるまでずっと不安だった。このまま目を覚まさないんじゃないか、もうユーリと一緒にいなれない、あの安心感がなくなるんじゃないかって・・・ずっと・・・」
リアは表情を変えながら話し、ギュっと手を握った
「それで気付いたの。これだけ不安になるって事はユーリの事、凄く大事に思ってる。それは幼馴染みとか仲間とはもっと違うもの・・・ユーリの事、好きなんだ、って・・・」
そしてリアはオレを見てニッコリと笑って答えた
「私も、ユーリの事、大好きだよ」
その言葉を聞きオレはリアを抱きしめ、その反動でオレ達はベッドの上に倒れる
「・・・やっぱりユーリに抱きしめられると安心する」
「ならいつでもこうしてやるぜ」
「うん・・・」
リアはそう言って微笑んでオレの背中に手を回した
そしてオレ達は互いに見つめ合い、ゆっくりとリアの唇に自分のものを落とした
「んっ・・・」
リアもそれを受け入れ目を瞑り、互いの存在を確かめるように深く口付け強く抱きしめた
おまけ
「・・・ねえ、ユーリ」
「ん? 何だ?」
「あの、いつになったら離してくれるの?」
今私とユーリはベッドに横になっている
けど、何故かユーリは私を抱きしめたまま寝る体制に入っている
「別に離す気ねえし」
「でも寝づらいじゃない・・?」
「抱き枕だよ」
「だっ、抱き枕って///」
私が顔を赤くしているとユーリは満足そうに小さく笑って私を抱きしめる腕の力を少し強め、寝息を立て始めた
「えっ、ちょ、ちょっと・・・」
言うにも言えない状態になってしまいじっとユーリを見て
「・・・もう、しょうがないな」
私は苦笑して諦めるように小さく息を吐き、ユーリの腕の中で眠りについた
続く
あとがき
新章一発目から甘いです!!(笑)
やっと出来上がりました!
もうホント此処はどう書くか悩んだんですよ
プロットでは冒頭はデュークと話す事は決まってたけど、その後のユーリとの会話がねι
でも結局は両方悩んだりι(笑)
因みに、約一週間近くってのは目安ですι
本編の方でもどれくらい、って語られてないからι
まあとにかくリアちゃんもやっとユーリに気持ちを伝え、ようやく両思いになれました
甘いの書けない俺だけど前回と今回はホント頑張ったよ!!
そして最後のおまけ、実はこれが一番書きたかったりw(またかよ(笑))
えーと、はしょった部分はあるけど、それは次回です!
冒頭であの子達が出て来ます!
それでは!
You like it.(貴方が、好きです)
下書き:2008.12.29
完成:2009.08.13
子供の頃に修行をしている時にちょっと力を引き出された事はあったけど、今回みたいに力を引き出され、自分の力じゃないものが一緒になって力が発動したりした事はなかった
76.You like it.
「・・っ・・・」
痛みで目が覚め私はゆっくりと瞼を開き、少しずつ感覚が戻り景色が見えだす
私は何処かの部屋のベッドに寝かされているようだった
「・・・・此処、は・・?」
ゆっくりと身体を起こし、辺りを見た
其処は何処か懐かしく見覚えのある部屋に、窓から見えるこの景色
「・・・ザーフィアス?」
そしてこの位置から見えるザーフィアスの光景、それは紛れもなく私やユーリ、フレン、兄さんが育ったザーフィアスの下町だった
と、言う事は此処は、この部屋は間違いなく
「ユーリの部屋・・・」
「気が付いたようだな」
「! デューク!?」
ふと声が聞こえそちらに視線を向けると、部屋の入り口にデュークがいた
デュークの姿を見てベッドから立ち上がろうとすると、身体に痛みが走った
「っ!」
「あまり無理をしない方が良い」
デュークはそう言いながらゆっくりとこちらに歩いて来る
「・・・貴方が助けてくれたの?」
「・・・・・」
デュークは無言だったが彼の目を見れば直ぐに解った
「助けてくれて有り難う」
どうやって助けてくれたのかは解らないけど、デュークが助けてくれなければあのまま命を落としていたと思う
「私、どれ位寝てたの?」
「10日程だ」
「10日・・・」
10日って・・・一週間近く!?
あれからもうそんなに経ったんだ・・・
その間ずっと眠っていたんだ・・・
あの後、みんなはどうしたんだろう?
私とユーリを探したりしていたのだろうか?
「・・・ユーリは?」
この場にあの時一緒に海に落ちたユーリの姿が見えない事に気が付く
「隣の部屋にいる。まだ目を覚ましていないが」
デュークは隣の部屋を見て言い、私はゆっくりとベッドから降りて隣の部屋に向かい出した
隣の部屋に移動すると、ベッドに寝かされているユーリの姿を見つけほっと安堵の息を吐き、そのままユーリの所に歩いて行く
側に行くと少しだけ荒い息を吐いていた
それはあの腹部の怪我が原因だろうけど・・・
普段だったら直ぐに怪我を癒す事が出来る
けど、御剣の階梯やザウデであれだけ力を使われた所為で殆ど力が残っていない
「・・・・」
私はベッドの近くに置いてある椅子に座りじっとユーリを見ていると、デュークが私の隣に移動した
「・・・何も出来ないってツライね」
私の言葉にデュークは疑問を抱いてちらりと私を見た
「普段なら直ぐにでも傷を治せるのに、こんな時に力がないと何も出来ない。エステルが癒したくてもそれが出来ない気持ち、今なら解るな」
「・・・そうだな。何も出来ないのは辛い事だな」
デュークはそう言って少し遠い目をした
けど、その目はやっぱり何処か寂しそうだった
もしかしたらデュークも今の私と同じように何も出来ないでいた事が遭ったのかもしれない・・・
そう思ってデュークを見ているとデュークは私の視線に気付いた
「どうした?」
「あ、ううん。・・・あの、ごめんなさい」
突然謝った事にデュークは疑問を抱いた
「ずっと気を付けろ、って言ってくれてたのに・・・」
「それはお前の意志でやった事ではないだろう」
「でも、警告を無視した訳じゃないけど、結果的に利用されちゃったし・・・だから謝っておきたかったの・・・」
「そうか・・・」
そう答えるとデュークは何も言わなくなった
けどデュークには私の言葉はしっかりと届いていた
そして少しだけ沈黙が流れ、デュークは私にスッと一冊の本を差し出した
「・・・これは?」
「先代の満月の子等について書いてある物だ」
私はその本を受け取ると、デュークは踵を返した
「その者の側にいるのは構わないが、あまり無理をしない事だ」
「・・・デューク」
私がこのままユーリの側を離れないと悟ったのか、デュークはこの本を渡して踵を返して部屋を出て行った
「・・・ありがとう」
*
「うっ・・・はあ・・・はあ・・・」
オレはゆっくりと瞼を開けると、今は夜なのか辺りは暗かった
此処が何処なのかと思って辺りを見渡す
「オレの部屋・・・か? なんで・・・」
オレはゆっくりと身体を起こそうとするが、足下に何か重みを感じた
「・・・リア?」
そこにいたのはザウデで救出したリアだった
リアを見ると本を開いたまま小さな寝息を立て気持ちよさそうに寝ていた
「・・・ったく。風邪引くぞ」
オレは毛布を掛けてやりリアの頭を撫でているとリアが読んでいたで本に目が止まった
「ん・・・満月の子?」
オレはその本を取りリアを起こさないようにベッドに浅く座り直した
「・・・古代の指導者達は生得の特殊な力を持っていた。彼等は満月の子と呼ばれた・・・ザウデは彼等の命と力で世界を結界で包み込み、星喰みの脅威から救った・・・」
そこまで読み上げると扉が開く音が聞こえた
「目が覚めたか」
「デューク・・・そうか、あんたが助けてくれたのか」
「助けたのはその娘だ」
「・・・力、使ったのか?」
「お前を助ける為にな。途中で意識を失ったようだが」
デュークはそう言うと部屋の奥へ進み、ベッドに立て掛けられていた宙の戒典を手に取った
「・・・でも、此処までオレ達を運んだのはあんただろ?」
デュークは黙ったまま宙の戒典を見つめた
「・・・この剣を海に失う訳にはいかなかったからな」
「・・・まあ良いさ、それでも礼を言わせてもらう」
オレがそうぽつりと呟くが、デュークは返事をしない
そしてオレはまた本に目を向ける
「アレクセイはリアとエステルが対となる鍵だと言った。けどこの本には言霊使いの事は書かれてない。・・・ザウデ不落宮は満月の子の命で動いてたのか?」
「・・・星喰みを招いた原因は人間であり、彼等はその指導者であったという。それは彼等の償い・・・だったのだろう」
デュークの赤い瞳がオレを見つめ、オレもじっとそれを見つめるとデュークはまた口を開いた
「そしてわずかに生き残った満月の子が始祖の隷長と後の世界のあり方を取り決めた。今の皇帝家が、その末裔だ」
「・・・それが帝国の起こりって訳か。だからザウデの鍵ともなるその剣が皇帝の証になるんだな。でも、何でそれでリアが鍵になるんだ?」
「言霊使いは満月の子と相応の力を持ち、言霊使いは魂を鎮める力を持っている。稀な力を持った言霊使いの力は星喰みを抑える力でもある。そしてその娘は一族の中でも一番稀な力を持っている」
「成る程な。その稀な力を持っているリアが皇帝と対になる鍵って事か?」
そう問うと、デュークは小さく頷いた
「・・・稀な力を持った言霊使いは生き残った満月の子等との対話の時、星喰みを抑える為に、対となる始祖の隷長側の鍵になる事を誓ったのだ」
「たとえ皇帝側の鍵が手に入ったとしても、言霊使いの稀な力を持った奴がそう簡単に生まれる事はない。それに言霊使いは存在しないものと言われてる。だから始祖の隷長側の鍵は手に入らない、からか」
デュークはまた頷きそのまま窓の外の星空を見上げた
「エアルを用いる限り星喰みには対抗出来ない。あれは、エアルから生まれたものなのだから」
「・・・あんたもあの星喰みを止めるつもりだった。だからエアルクレーネを鎮めて回ってた、違うか?」
「そうだ」
「なんで帝国やギルドに協力を求めなかったんだ? そうすればアレクセイを止める事だって出来たかもしれねぇ」
「私は始祖の隷長に身を寄せた。人間と関わり合うつもりはない。それに人間達は決して纏まりはしないだろう」
「ならどうしようってんだ? 星喰みは古代文明だって手に負えなかったんだろ」
「方法はある」
デュークはまた黙って歩き出し、出口へ向かい出した
「あんた、人間嫌いみたいだけど、オレ達だって人間だぜ? 何で宙の戒典を貸してくれた? 何で協力してくれたんだよ」
「お前達が敢えて始祖の隷長と対話を試みた。そしてその娘・・・」
デュークはリアを一瞥して直ぐに視線を戻した
「・・・いや、」
「リアに関係してる事なら話して貰うぜ」
「・・・・」
デュークはそこで言葉を切ったが、オレが目を細めて言うとデュークはゆっくりと口を開く
「その娘の力、星喰みを抑える力はまだ働いている」
「!」
「今は一時的に治まっているが、いつ発動するか解らない」
「止める方法はあるのか?」
「それ以上の事は私より式神達にでも聞く方が良いだろう」
立ち去ろうとして扉の前で足を止め小さく言う
「私は世界を、我が友が愛したテルカ・リュミレースを守る」
決意の篭った声でその場を断ち切ってしまうとデュークは出て行った
「どういう・・・うぐっ」
オレは立ち上がりデュークを引き止めようとしたが、腹部の痛みに妨害をされ、声を漏らしてベッドに尻餅を付いてしまう
「・・・ユーリ・・・?」
その震動で目を覚ましたのかリアがゆっくりと顔を上げる
「悪ぃ、起こしちまったか?」
「・・・・・」
オレはリアの方に顔を向けるとリアはオレをじっと見ていた
「・・・リア?」
名前を呼ぶと、リアの目に涙が浮かび上がりそして急にオレに抱きついて来た
「ユーリっ!!」
「っと! おい、リア・・・?」
オレは急な事に少し戸惑ってしまうが、抱きついて来たリアが小さく震えていた
「・・・良かった。ユーリが目を覚ましてくれて・・・本当に・・・」
リアは本当に不安だったのか暫くオレに抱きついたままだった
「・・・ああ。オレもリアが無事で良かった。・・・おかえり、リア」
「うん・・・ただいま、ユーリ」
オレはリアが落ち着くまでリアを抱きしめていた
「落ち着いたか?」
「うん・・・」
あれから暫くしてリアは落ち着いて、オレ達はベッドに腰掛けていた
リアを見ると所々に傷が残っていた
「ケガ、大丈夫か?」
「うん。ユーリこそ大丈夫、その傷・・・」
リアはオレの腹部を見る
他の怪我はそんなに目立たないがこればっかりは目立ってしまう
リアもあの場にいたんだから心配すんのも当然か
「・・・ごめんね。普段だったら直ぐに癒せるのに・・・」
「気にすんなよ。それより助けてくれてありがとな」
「・・・デュークから聞いたの?」
「ああ。力使わせちまって悪かったな」
「ううん、ユーリが無事だから気にしてないよ」
リアはそう言って笑う
(相変わらずその優しい笑顔はオレを救ってくれるな)
「ユーリ、どうしかした?」
オレは小さく笑っているとリアが首を傾げて聞いてきたがオレは「いや、」と小さく笑ったまま腹部を押さえた
「・・・これほど恨まれてたとはな」
「・・・きっと」
「ん?」
オレは腹部を押さえながら言うとリアが小さく呟いた
「きっと、ソディアさんはフレンの事が好きなんだよ」
「?」
「憧れの人でもあり、異性としても好きなんだよ。フレン、私達の前でしか気を緩めないから、それが羨ましかったんだと思う。傍にいても仲間として見て貰ってはいても、私達の前で見せるような気の緩め方をしない。ユーリや私や兄さんと会ってる時のフレンはやっぱり楽しそうな顔をしてる。特にソディアさんはユーリと話してる時のフレンばっかり見てるから、だからそれが嫉妬になって、気持ちが抑えられなくなって、あんな事になったんだと思う・・・」
リアは複雑な表情をしてそう言った
確かにリアの言う事は合ってるだろう
ま、オレの意見はとりあえず置いといて、だ
「そういやまだあの返事聞いてなかったな」
「あの返事?」
「ザウデで言った事だ」
「ザウデで・・・!!///」
リアはそれで思い出したのか顔を赤くした
「で、どうなんだ?」
「えっと、あの・・・」
「オレは本気だぜ」
「・・・・」
オレは真剣な表情をして言うとリアは少しだけ黙った
「・・・本当の所言うとね、最初は凄く吃驚した」
俯けていた顔をゆっくりと上げ、言葉を続ける
「けど、凄く嬉しかった。でも、あの時は気持ちの整理が出来てなかったけど、ユーリが刺されてザウデから落ちた時、凄く焦ったし、今も起きるまでずっと不安だった。このまま目を覚まさないんじゃないか、もうユーリと一緒にいなれない、あの安心感がなくなるんじゃないかって・・・ずっと・・・」
リアは表情を変えながら話し、ギュっと手を握った
「それで気付いたの。これだけ不安になるって事はユーリの事、凄く大事に思ってる。それは幼馴染みとか仲間とはもっと違うもの・・・ユーリの事、好きなんだ、って・・・」
そしてリアはオレを見てニッコリと笑って答えた
「私も、ユーリの事、大好きだよ」
その言葉を聞きオレはリアを抱きしめ、その反動でオレ達はベッドの上に倒れる
「・・・やっぱりユーリに抱きしめられると安心する」
「ならいつでもこうしてやるぜ」
「うん・・・」
リアはそう言って微笑んでオレの背中に手を回した
そしてオレ達は互いに見つめ合い、ゆっくりとリアの唇に自分のものを落とした
「んっ・・・」
リアもそれを受け入れ目を瞑り、互いの存在を確かめるように深く口付け強く抱きしめた
おまけ
「・・・ねえ、ユーリ」
「ん? 何だ?」
「あの、いつになったら離してくれるの?」
今私とユーリはベッドに横になっている
けど、何故かユーリは私を抱きしめたまま寝る体制に入っている
「別に離す気ねえし」
「でも寝づらいじゃない・・?」
「抱き枕だよ」
「だっ、抱き枕って///」
私が顔を赤くしているとユーリは満足そうに小さく笑って私を抱きしめる腕の力を少し強め、寝息を立て始めた
「えっ、ちょ、ちょっと・・・」
言うにも言えない状態になってしまいじっとユーリを見て
「・・・もう、しょうがないな」
私は苦笑して諦めるように小さく息を吐き、ユーリの腕の中で眠りについた
続く
あとがき
新章一発目から甘いです!!(笑)
やっと出来上がりました!
もうホント此処はどう書くか悩んだんですよ
プロットでは冒頭はデュークと話す事は決まってたけど、その後のユーリとの会話がねι
でも結局は両方悩んだりι(笑)
因みに、約一週間近くってのは目安ですι
本編の方でもどれくらい、って語られてないからι
まあとにかくリアちゃんもやっとユーリに気持ちを伝え、ようやく両思いになれました
甘いの書けない俺だけど前回と今回はホント頑張ったよ!!
そして最後のおまけ、実はこれが一番書きたかったりw(またかよ(笑))
えーと、はしょった部分はあるけど、それは次回です!
冒頭であの子達が出て来ます!
それでは!
You like it.(貴方が、好きです)
下書き:2008.12.29
完成:2009.08.13