救出編
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「ユーリ!」
「フレン!」
親衛隊を倒し終えると、フレンの声が聞こえた
「どうやら無事に此処までこれたみたいだな」
フレンの姿を見るとエステルはフレンの前まで駆けつける
「大丈夫でした? 攻撃受けなかったんです?」
「船は離れた位置に泊めました。此処に来たのは我々だけです」
「最小限の犠牲でアレクセイを倒すつもりね」
「決死隊だね」
「賢明よ。下手に大勢で近付いて気付かれたら一巻の終わりってね」
「此処からは我々の務めだ。民間人は下がっていろ」
「相変わらずだな。悪ぃがそりゃ聞けねえ」
「大事な妹の命が掛かってんだからな」
おっさんが言い終わると副官の姉ちゃんが厳しい口調でオレ等に言い、剣を抜こうとするが、フレンが首を横に振って止める
「此処は協力した方が良いに決まってると思うんだけど」
「彼女の言う通りだ。我々のすべき事はアレクセイの打倒」
「それと世界を救う事。そして・・・」
「「「「「リアを助け出す」」」」」
オレ、フレン、セイ、アスラ、フキの声が綺麗に被りその言葉に皆、頷いた
「良し、それじゃ仲良く殴り込むとすっか!」
74.道化師の涙
静かな神殿を思わす建物の中で、水の流れ落ちる音だけが響き渡る
あれ以降お互いに口を開かずにいたが、突然扉の向こうに人の気配を感じた
ザーフィアス城にいた時より力を制御されていないからその気配を感じる事が出来た
そして、その人物達は扉を開き、ゆっくりとこちらに向かって歩いて来た
「・・・ユーリ、フレン、兄さん、みんな・・・」
ユーリを先頭に兄さん、フレン、アスラ、フキ、と並び、その後ろにエステル達がいた
アレクセイはモニターを消し、ユーリ達に向き合った
「揃い踏みだな。遙々こんな海の底へようこそ」
「そこまでです、アレクセイ。これ以上、罪を重ねないで」
「これはエステリーゼ姫、ご機嫌麗しゅう」
アレクセイはエステルを見て紳士のように会釈をする
「その分ではイエガーは役に立たなかったようだな」
「・・・死んだよ」
「!」
ユーリの言葉に私は驚いて目を見開いた
(やっぱりあの時の覚悟は、見間違いじゃなかったんだ・・・)
「最後くらいはと思ったが、とんだ見込み違いだったか」
「そうやって他人の運命を弄んで楽しいかしら?」
ジュディスの言葉にアスラとフキも目を細めていた
「アレクセイ! かつての貴方の理想は・・・何が貴方を変えたんです!」
「お前、まだそんな事」
ユーリの隣でフレンが必死にアレクセイに訴えかけると、ユーリが驚いてフレンを見ていた
「何も変わってなどいない。やり方を変えただけだ。腐敗し閉塞しきった帝国をいや世界を再生させるには、絶対的な力が必要なのだ」
「その為にどれだけ犠牲を出すつもりです」
「今の帝国では手段を選んでいる限り、決して真の革命がその実現を見る事はない。お前なら分かるはずだ」
「・・・・」
アレクセイの言葉にフレンは悔しそうに顔を歪め押し黙ってしまう
「ちょっとちょっと、奴の言葉に呑まれてどうすんのよ」
「・・・どうしてこんな笑顔を奪うようなやり方しか出来なかったんです? 貴方ほどの人ならもっと他に方法が・・・」
「理想の為には敢えて罪人の烙印を背負わねばならぬ時もある。ならば私は喜んでそれを受けよう。私は世界の解放を約束する! 始祖の隷長から、エアルから、ちっぽけな箱庭の帝国から!」
「その為にリアを使うってのか?」
「安心したまえ。言霊使いの姫は力を失うだけだ。命を落とす事はない。彼女の力で世界は生まれ変わるのだ!!」
「世の為だろうが何だろうがそれで誰かを泣かせてりゃ世話ねえぜ。てめえを倒す理由はこれで十分だ!」
ユーリはそう言って剣を鞘から抜き、フレンも兄さんも鞘に手を掛け、アスラ達も身構えた
「やはり君の騎士は優秀だね」
アレクセイはそう言って私を立ち上がらせ自分の方に引き寄せ
「――――」
「っ!」
そして私の耳元で何か呪文のような事を囁いた
途端、身体の力が抜け立っていられなくなり、そのままアレクセイの腕に支えられる
「「リア!?」」
それを見ていたユーリとフレンが叫ぶ声が聞こえた
そしてアレクセイは不敵に笑ってユーリとフレンを見た
「君達騎士は姫君を救う事が出来るかな?」
「っ!?」
そう告げた後アレクセイは更に私を自分の方に引き寄せ、私に触れるだけのキスを落とした
「「「「「「!」」」」」」
その行動に私を含む全員が驚いて息を飲んだ
「っ! アレクセイてめぇ!!」
ユーリは剣を握り直し走り出した
「学習せんな、君も」
「危ない、ユーリ!!」
アレクセイの左奥にある聖核が光り、それに気付いたフレンがユーリの前に飛び出し魔刻から放たれた光に当たる
「うわあっぁぁ!」
「フレンっ!!」
フレンは膝を尽き光が当たった箇所を抑えていた
「フレン、お前・・・!」
「隊長!!」
ユーリはフレンを見ていると急いでソディアさんがフレンの元に駆けつけて来た
何とか急所を外したようで命に別状はないようだ
ほっと安心しているとアレクセイは私を連れたまま先程のモニターを操作すると、足下の床が浮上しだした
「!?」
「ユーリ! アレクセイが逃げる!!」
「ちぃっ!」
ユーリはカロルの言葉を聞いて急いで浮上している場所へ走って飛び乗った
ユーリが着地すると、遅れて兄さん達も着地した
「なあ大将、どうあってもやめる気はねえの?」
最初に口を開いたのはレイヴンだった
「お前までがそんな事を言うのか。何故だ? お前達の誰一人として今の帝国を良いとは思っていないだろうに」
「目的は手段を正当化しねえよ、大将。おらぁこいつ等見てて良く分かった」
「・・・痛みに満ちた貴方のやり方は正しいとは思えません。やり方を変えられないと言うのなら・・・」
「ギルドも帝国も良いとこだってある。それを全部壊してからやり直すなんて、酷すぎるよ」
「強行な手段は必ずそれを許さないものを生む。解るわよね?」
「あんたが作る世界が今よりマシだって保証なんて何処にもないわ!」
「それも人の妹使ってやろうってんだからな!」
「やるんだったらてめえの力でやりやがれ!」
「俺等に取って大事な主である姫は返して貰うぜ!」
「てめえの言い分を認める奴はいねえよ」
エステル、カロル、ジュディス、リタ、兄さん、フキ、アスラ、そしてユーリ、みんなそれぞれ思っている事を口にする
みんなの言葉を聞き、アレクセイは目を閉じ小さく息を吐いた
「どうあっても理解しないのか。変革を恐れる小人ども。だが既に全世界のエアルと鍵は我が掌中にある。勝ち目はないぞ」
アレクセイは剣を抜き、聖核をユーリ達に向ける
その衝撃でみんな倒れてしまう
「みんな!! きゃぁっ!!」
そのエアルは私にも伝わり、私は叫んでしまう
「リアっ・・・」
かろうじてユーリにはそんなに当たらなかったのか、少しだけ顔を歪めて立っていた
アレクセイはユーリの姿を確認すると、口角を上げて笑って口を開く
「ローウェル君、君は彼女の事をとても大事に思っているようだね」
「ったり前だろ!」
「それは騎士としてか、それとも一人の男としてか」
「なもんてめえに話すギリはねえよ」
「だが気持ちはしっかりと伝えるべきだ。姫の事が」
「それ以上はてめえには言わせねえ!!」
ユーリは声を上げて言うとアレクセイは満足そうに笑った
「では、無事に姫君を救い出してみせるんだな」
「ん・・っ・・・!?」
「!?」
アレクセイはそう言ってまた私を自分の方に引き寄せ、今度はさっきよりも深いキスを落とした
「ゃっ・・ぅっ・・ぁっ・・・」
それを必死に振り解こうにも身体の力が入らず、更には酸素も少なくなってきていた
後ろからはかなりの殺気が感じる
ユーリが今まで以上に強い殺気を出していた
そして唇が離れると同時にまた呪文のようなものを唱えられた
「――――――」
「っ!?」
途端、何かのスイッチが入ったかのように心臓が跳ね、身体全体から異常な力を感じ、私は身体を抑えてその場に座り込んだ
「リアっ!?」
必死にユーリが私を呼んでいる声が聞こえるが、それはアレクセイの言葉によって掻き消される
「新世界の幕開けだ。さあ今こそ君の本当の力を発揮させる時だ!」
「きゃああああああああ」
アレクセイの剣に填め込まれている聖核の力を受け、私はまた力とそしてさっきの異常な力を引き出されてしまう
「ああああぁぁぁぁ」
今までに感じた事もない力に思いっきり悲鳴を上げてしまう
そしてザウデの頂上にある巨大な魔刻に私の力とエアルが反応し強い光を放ち始め、私の周りに球体の結界が出来始める
「リア!!」
ユーリは止めようとアレクセイに剣を振るうが、聖核にエアルが溜まりそれをユーリにぶつけようとする
だが、今ユーリが持っている剣はあの『宙の戒典』
お互いにエアルの力の反動を受け、吹き飛ばされる
「うわっ」「ぐあっ」
「ユーリ! うあぅっっっ!!」
それを横目で見ていると更に力が引き出され、また悲鳴を上げる
「っ!! これ以上はまずい! 止めるぞ!!」
何かを感じた兄さんとアスラとフキが急いで呪文を唱え出すが、それよりも早く私の力が発動した
「きゃぁあああああぁぁぁ!!」
力は巨大な魔刻に当たり、凛々の明星のある位置に向かって、私の叫び声と同時に魔核から一筋の光が勢い良く伸びていった
そして凛々の明星を中心に不思議な術式が浮かび上がり空に蜂の巣の様な穴が開き始める
「!?」
予想をしていた光景とは違う状況になりアレクセイは天を見つめたまま、呆然とする
だが事態が収束してくれる訳などない
穴の開いた空をまるで上から力を懸けるように、ドス黒く、気持ちの悪い“何か”が、地面に向かって伸びていく
「な、な、な・・・」
「な、何よ、あれ!?」
カロルとリタが呆然と、空に現れた異物を見つめる
「あれは・・・あれは壁画の・・・」
「・・・世界の災厄」
「・・・星喰み」
「あれが、星喰み・・・」
アスラとフキの言葉に誰もが唖然とした
ドス黒いソレは以前ミョルゾで見た、壁画と同じものだった
ただ、この状況が何故起こってしまったのか、その事の理解が誰一人出来ていなかった
「あれがザウデの力だと!? ・・・そんなはずは・・・まさか・・・」
自分が望んだ結果とは違う災厄の登場に、アレクセイはどうする事も出来ず、頭を抱え込む
「どうなってんだ!? 星喰みって、今のでそんなにエアルを使ったのかよ!?」
「・・・違うよ。災厄はずっと居たんだよ」
静かに言葉を発したアスラに一斉に視線が集まる
「ど、どう言う事?」
「星喰みは打ち砕かれてたんじゃねえ。・・・封じられて遠ざけられてただけなんだ」
思いも寄らぬフキの言葉にその場にいた誰もが驚き目を見開いた
「でも、じゃあリアは・・・?」
「さっきアレクセイがリアに呪文みたいなの言っただろ。あれが『鍵』になったんだよ」
「『鍵』、だと?」
「あの呪文は言霊使いの一番の使い手である姫の中に眠る力を解く為の鍵だったんだよ。それがあの巨大な魔刻と反応して更に力を増した・・・」
「そして、あの封印が解かれた・・・」
「それって、まさか・・・」
「リアの力って星喰みの封印を解く事、だったんですか?」
エステルの問に暫く沈黙が流れ、セイとアスラとフキは悔しそうな顔をして頷いた
「っ!」「そんなっ!」
「俺達言霊使いの本来の力はこんな風に使わなければ何も害はないんだがな・・・」
ツラそうに顔を歪めて言うセイを見てユーリ達は頭上にある魔刻と魔刻の近くにいる球体の術式結界の中にいるリアに目を向ける
リアはいつも以上に力を使われ気を失いぐったりとしていた
「・・・そうだ、それが今、還って来た。古代にもたらすはずだった破滅をひっさげて!よりにもよって、この私の手でか! コレは傑作だ、ハハハハハ!」
魔核がエネルギーの放出に耐え切れなくなり、バチバチと電気を帯びながら煙を上げ始める
それに気付いたエステルが、「危ない!」とその真下にいるユーリを見つめ叫んだ
「我らは災厄の前で踊る虫けらに過ぎなかった。絶対的な死が来る!! 誰も逃れられん!」
自分の信じた先の未来が、こんな結末になるだなんて
アレクセイは最早笑う事しか出来ず、ただ声を高らかに上げ、笑い続けている
ユーリはそんなアレクセイを、険しい表情で睨み付けた
「いい加減、黙っときな」
そうと呟くと風を切るように掻け、アレクセイの胴を上から斜めに大きく斬り付け、よろけるアレクセイに追い討ちを懸けるように、もう一太刀浴びせる
その拍子に巨大な魔刻と聖核の力が弱まり出し、リアを囲んでいた術式結界の力も弱まりだした
アレクセイは切り口からは真っ赤な血が溢れ出し、その勢いでよろよろと数歩後退った
「・・・もっとも愚かな・・・道化・・・それが私とは、な・・・」
何かを悟ったのか、口から血を流しながら彼は穏やかに笑い、その瞳を閉じると、一筋の涙が彼の頬を伝う
そして、自重に耐え切れなくなった魔核が激しい音を立てながら、アレクセイ目掛けて落ちてきた
続く
あとがき
此処で続きます!!
なんつーとこで終わってんだよ!!って自分でも思いました(笑)
いや、でも書いてたらすっごい長くなったので二回に分けましたι
とりあえず、アレクセイとの戦いは一応終わりました
なんだかんだで彼も可哀想ですよね
でもこれも彼なりに自分の正義を貫いた事だったんですよね
つーことで、タイトルはアレクセイにちなんでこれにしてみました
が、まだ事態は解決してません!!
ユーリは? リアちゃんは?
そしてセイ兄やエステル達は?
それは次回!
えー、次回で救出編は終わると思います!
それでは!!
下書き:2008.12.27
完成:2009.08.08
「フレン!」
親衛隊を倒し終えると、フレンの声が聞こえた
「どうやら無事に此処までこれたみたいだな」
フレンの姿を見るとエステルはフレンの前まで駆けつける
「大丈夫でした? 攻撃受けなかったんです?」
「船は離れた位置に泊めました。此処に来たのは我々だけです」
「最小限の犠牲でアレクセイを倒すつもりね」
「決死隊だね」
「賢明よ。下手に大勢で近付いて気付かれたら一巻の終わりってね」
「此処からは我々の務めだ。民間人は下がっていろ」
「相変わらずだな。悪ぃがそりゃ聞けねえ」
「大事な妹の命が掛かってんだからな」
おっさんが言い終わると副官の姉ちゃんが厳しい口調でオレ等に言い、剣を抜こうとするが、フレンが首を横に振って止める
「此処は協力した方が良いに決まってると思うんだけど」
「彼女の言う通りだ。我々のすべき事はアレクセイの打倒」
「それと世界を救う事。そして・・・」
「「「「「リアを助け出す」」」」」
オレ、フレン、セイ、アスラ、フキの声が綺麗に被りその言葉に皆、頷いた
「良し、それじゃ仲良く殴り込むとすっか!」
74.道化師の涙
静かな神殿を思わす建物の中で、水の流れ落ちる音だけが響き渡る
あれ以降お互いに口を開かずにいたが、突然扉の向こうに人の気配を感じた
ザーフィアス城にいた時より力を制御されていないからその気配を感じる事が出来た
そして、その人物達は扉を開き、ゆっくりとこちらに向かって歩いて来た
「・・・ユーリ、フレン、兄さん、みんな・・・」
ユーリを先頭に兄さん、フレン、アスラ、フキ、と並び、その後ろにエステル達がいた
アレクセイはモニターを消し、ユーリ達に向き合った
「揃い踏みだな。遙々こんな海の底へようこそ」
「そこまでです、アレクセイ。これ以上、罪を重ねないで」
「これはエステリーゼ姫、ご機嫌麗しゅう」
アレクセイはエステルを見て紳士のように会釈をする
「その分ではイエガーは役に立たなかったようだな」
「・・・死んだよ」
「!」
ユーリの言葉に私は驚いて目を見開いた
(やっぱりあの時の覚悟は、見間違いじゃなかったんだ・・・)
「最後くらいはと思ったが、とんだ見込み違いだったか」
「そうやって他人の運命を弄んで楽しいかしら?」
ジュディスの言葉にアスラとフキも目を細めていた
「アレクセイ! かつての貴方の理想は・・・何が貴方を変えたんです!」
「お前、まだそんな事」
ユーリの隣でフレンが必死にアレクセイに訴えかけると、ユーリが驚いてフレンを見ていた
「何も変わってなどいない。やり方を変えただけだ。腐敗し閉塞しきった帝国をいや世界を再生させるには、絶対的な力が必要なのだ」
「その為にどれだけ犠牲を出すつもりです」
「今の帝国では手段を選んでいる限り、決して真の革命がその実現を見る事はない。お前なら分かるはずだ」
「・・・・」
アレクセイの言葉にフレンは悔しそうに顔を歪め押し黙ってしまう
「ちょっとちょっと、奴の言葉に呑まれてどうすんのよ」
「・・・どうしてこんな笑顔を奪うようなやり方しか出来なかったんです? 貴方ほどの人ならもっと他に方法が・・・」
「理想の為には敢えて罪人の烙印を背負わねばならぬ時もある。ならば私は喜んでそれを受けよう。私は世界の解放を約束する! 始祖の隷長から、エアルから、ちっぽけな箱庭の帝国から!」
「その為にリアを使うってのか?」
「安心したまえ。言霊使いの姫は力を失うだけだ。命を落とす事はない。彼女の力で世界は生まれ変わるのだ!!」
「世の為だろうが何だろうがそれで誰かを泣かせてりゃ世話ねえぜ。てめえを倒す理由はこれで十分だ!」
ユーリはそう言って剣を鞘から抜き、フレンも兄さんも鞘に手を掛け、アスラ達も身構えた
「やはり君の騎士は優秀だね」
アレクセイはそう言って私を立ち上がらせ自分の方に引き寄せ
「――――」
「っ!」
そして私の耳元で何か呪文のような事を囁いた
途端、身体の力が抜け立っていられなくなり、そのままアレクセイの腕に支えられる
「「リア!?」」
それを見ていたユーリとフレンが叫ぶ声が聞こえた
そしてアレクセイは不敵に笑ってユーリとフレンを見た
「君達騎士は姫君を救う事が出来るかな?」
「っ!?」
そう告げた後アレクセイは更に私を自分の方に引き寄せ、私に触れるだけのキスを落とした
「「「「「「!」」」」」」
その行動に私を含む全員が驚いて息を飲んだ
「っ! アレクセイてめぇ!!」
ユーリは剣を握り直し走り出した
「学習せんな、君も」
「危ない、ユーリ!!」
アレクセイの左奥にある聖核が光り、それに気付いたフレンがユーリの前に飛び出し魔刻から放たれた光に当たる
「うわあっぁぁ!」
「フレンっ!!」
フレンは膝を尽き光が当たった箇所を抑えていた
「フレン、お前・・・!」
「隊長!!」
ユーリはフレンを見ていると急いでソディアさんがフレンの元に駆けつけて来た
何とか急所を外したようで命に別状はないようだ
ほっと安心しているとアレクセイは私を連れたまま先程のモニターを操作すると、足下の床が浮上しだした
「!?」
「ユーリ! アレクセイが逃げる!!」
「ちぃっ!」
ユーリはカロルの言葉を聞いて急いで浮上している場所へ走って飛び乗った
ユーリが着地すると、遅れて兄さん達も着地した
「なあ大将、どうあってもやめる気はねえの?」
最初に口を開いたのはレイヴンだった
「お前までがそんな事を言うのか。何故だ? お前達の誰一人として今の帝国を良いとは思っていないだろうに」
「目的は手段を正当化しねえよ、大将。おらぁこいつ等見てて良く分かった」
「・・・痛みに満ちた貴方のやり方は正しいとは思えません。やり方を変えられないと言うのなら・・・」
「ギルドも帝国も良いとこだってある。それを全部壊してからやり直すなんて、酷すぎるよ」
「強行な手段は必ずそれを許さないものを生む。解るわよね?」
「あんたが作る世界が今よりマシだって保証なんて何処にもないわ!」
「それも人の妹使ってやろうってんだからな!」
「やるんだったらてめえの力でやりやがれ!」
「俺等に取って大事な主である姫は返して貰うぜ!」
「てめえの言い分を認める奴はいねえよ」
エステル、カロル、ジュディス、リタ、兄さん、フキ、アスラ、そしてユーリ、みんなそれぞれ思っている事を口にする
みんなの言葉を聞き、アレクセイは目を閉じ小さく息を吐いた
「どうあっても理解しないのか。変革を恐れる小人ども。だが既に全世界のエアルと鍵は我が掌中にある。勝ち目はないぞ」
アレクセイは剣を抜き、聖核をユーリ達に向ける
その衝撃でみんな倒れてしまう
「みんな!! きゃぁっ!!」
そのエアルは私にも伝わり、私は叫んでしまう
「リアっ・・・」
かろうじてユーリにはそんなに当たらなかったのか、少しだけ顔を歪めて立っていた
アレクセイはユーリの姿を確認すると、口角を上げて笑って口を開く
「ローウェル君、君は彼女の事をとても大事に思っているようだね」
「ったり前だろ!」
「それは騎士としてか、それとも一人の男としてか」
「なもんてめえに話すギリはねえよ」
「だが気持ちはしっかりと伝えるべきだ。姫の事が」
「それ以上はてめえには言わせねえ!!」
ユーリは声を上げて言うとアレクセイは満足そうに笑った
「では、無事に姫君を救い出してみせるんだな」
「ん・・っ・・・!?」
「!?」
アレクセイはそう言ってまた私を自分の方に引き寄せ、今度はさっきよりも深いキスを落とした
「ゃっ・・ぅっ・・ぁっ・・・」
それを必死に振り解こうにも身体の力が入らず、更には酸素も少なくなってきていた
後ろからはかなりの殺気が感じる
ユーリが今まで以上に強い殺気を出していた
そして唇が離れると同時にまた呪文のようなものを唱えられた
「――――――」
「っ!?」
途端、何かのスイッチが入ったかのように心臓が跳ね、身体全体から異常な力を感じ、私は身体を抑えてその場に座り込んだ
「リアっ!?」
必死にユーリが私を呼んでいる声が聞こえるが、それはアレクセイの言葉によって掻き消される
「新世界の幕開けだ。さあ今こそ君の本当の力を発揮させる時だ!」
「きゃああああああああ」
アレクセイの剣に填め込まれている聖核の力を受け、私はまた力とそしてさっきの異常な力を引き出されてしまう
「ああああぁぁぁぁ」
今までに感じた事もない力に思いっきり悲鳴を上げてしまう
そしてザウデの頂上にある巨大な魔刻に私の力とエアルが反応し強い光を放ち始め、私の周りに球体の結界が出来始める
「リア!!」
ユーリは止めようとアレクセイに剣を振るうが、聖核にエアルが溜まりそれをユーリにぶつけようとする
だが、今ユーリが持っている剣はあの『宙の戒典』
お互いにエアルの力の反動を受け、吹き飛ばされる
「うわっ」「ぐあっ」
「ユーリ! うあぅっっっ!!」
それを横目で見ていると更に力が引き出され、また悲鳴を上げる
「っ!! これ以上はまずい! 止めるぞ!!」
何かを感じた兄さんとアスラとフキが急いで呪文を唱え出すが、それよりも早く私の力が発動した
「きゃぁあああああぁぁぁ!!」
力は巨大な魔刻に当たり、凛々の明星のある位置に向かって、私の叫び声と同時に魔核から一筋の光が勢い良く伸びていった
そして凛々の明星を中心に不思議な術式が浮かび上がり空に蜂の巣の様な穴が開き始める
「!?」
予想をしていた光景とは違う状況になりアレクセイは天を見つめたまま、呆然とする
だが事態が収束してくれる訳などない
穴の開いた空をまるで上から力を懸けるように、ドス黒く、気持ちの悪い“何か”が、地面に向かって伸びていく
「な、な、な・・・」
「な、何よ、あれ!?」
カロルとリタが呆然と、空に現れた異物を見つめる
「あれは・・・あれは壁画の・・・」
「・・・世界の災厄」
「・・・星喰み」
「あれが、星喰み・・・」
アスラとフキの言葉に誰もが唖然とした
ドス黒いソレは以前ミョルゾで見た、壁画と同じものだった
ただ、この状況が何故起こってしまったのか、その事の理解が誰一人出来ていなかった
「あれがザウデの力だと!? ・・・そんなはずは・・・まさか・・・」
自分が望んだ結果とは違う災厄の登場に、アレクセイはどうする事も出来ず、頭を抱え込む
「どうなってんだ!? 星喰みって、今のでそんなにエアルを使ったのかよ!?」
「・・・違うよ。災厄はずっと居たんだよ」
静かに言葉を発したアスラに一斉に視線が集まる
「ど、どう言う事?」
「星喰みは打ち砕かれてたんじゃねえ。・・・封じられて遠ざけられてただけなんだ」
思いも寄らぬフキの言葉にその場にいた誰もが驚き目を見開いた
「でも、じゃあリアは・・・?」
「さっきアレクセイがリアに呪文みたいなの言っただろ。あれが『鍵』になったんだよ」
「『鍵』、だと?」
「あの呪文は言霊使いの一番の使い手である姫の中に眠る力を解く為の鍵だったんだよ。それがあの巨大な魔刻と反応して更に力を増した・・・」
「そして、あの封印が解かれた・・・」
「それって、まさか・・・」
「リアの力って星喰みの封印を解く事、だったんですか?」
エステルの問に暫く沈黙が流れ、セイとアスラとフキは悔しそうな顔をして頷いた
「っ!」「そんなっ!」
「俺達言霊使いの本来の力はこんな風に使わなければ何も害はないんだがな・・・」
ツラそうに顔を歪めて言うセイを見てユーリ達は頭上にある魔刻と魔刻の近くにいる球体の術式結界の中にいるリアに目を向ける
リアはいつも以上に力を使われ気を失いぐったりとしていた
「・・・そうだ、それが今、還って来た。古代にもたらすはずだった破滅をひっさげて!よりにもよって、この私の手でか! コレは傑作だ、ハハハハハ!」
魔核がエネルギーの放出に耐え切れなくなり、バチバチと電気を帯びながら煙を上げ始める
それに気付いたエステルが、「危ない!」とその真下にいるユーリを見つめ叫んだ
「我らは災厄の前で踊る虫けらに過ぎなかった。絶対的な死が来る!! 誰も逃れられん!」
自分の信じた先の未来が、こんな結末になるだなんて
アレクセイは最早笑う事しか出来ず、ただ声を高らかに上げ、笑い続けている
ユーリはそんなアレクセイを、険しい表情で睨み付けた
「いい加減、黙っときな」
そうと呟くと風を切るように掻け、アレクセイの胴を上から斜めに大きく斬り付け、よろけるアレクセイに追い討ちを懸けるように、もう一太刀浴びせる
その拍子に巨大な魔刻と聖核の力が弱まり出し、リアを囲んでいた術式結界の力も弱まりだした
アレクセイは切り口からは真っ赤な血が溢れ出し、その勢いでよろよろと数歩後退った
「・・・もっとも愚かな・・・道化・・・それが私とは、な・・・」
何かを悟ったのか、口から血を流しながら彼は穏やかに笑い、その瞳を閉じると、一筋の涙が彼の頬を伝う
そして、自重に耐え切れなくなった魔核が激しい音を立てながら、アレクセイ目掛けて落ちてきた
続く
あとがき
此処で続きます!!
なんつーとこで終わってんだよ!!って自分でも思いました(笑)
いや、でも書いてたらすっごい長くなったので二回に分けましたι
とりあえず、アレクセイとの戦いは一応終わりました
なんだかんだで彼も可哀想ですよね
でもこれも彼なりに自分の正義を貫いた事だったんですよね
つーことで、タイトルはアレクセイにちなんでこれにしてみました
が、まだ事態は解決してません!!
ユーリは? リアちゃんは?
そしてセイ兄やエステル達は?
それは次回!
えー、次回で救出編は終わると思います!
それでは!!
下書き:2008.12.27
完成:2009.08.08