水道魔導器奪還編
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クオイの森で出会った少年、カロルと一緒に私達はフレンがいるであろうと思われる花の街ハルルに向かった
だが、そこには前に立ち寄った時とは違った光景が広がっていた
04.エステルの力
「此処が花の街ハルルなんですよね?」
「うん、そうだよ」
「この街、結界ないのか?」
ユーリは辺りを見回し結界魔導器がない事に気が付きエステルもきょろきょろと回りを見た
だがこの街に立ち寄った事のあるリアは疑問に思い結界魔導器である樹を見た
「・・・もしかして、もう時期?」
「でもまだちょっと早いんじゃ・・・」
リアとアスラはハルルの樹を見て疑問を浮かべていた
「リアとアスラは知ってるみたいだね。二人は初めて?」
「はい」
「そっか。だったら、ハルルの樹の結界魔導器も知らないんだ」
「樹の結界?」
何の事だと首を傾げていると、不意にエステルが口を開いた
「魔導器の中には植物と融合し、有機的特性を身に付ける事で進化をするものがある、です。その代表が花の街ハルルの結界魔導器だと本で読みました」
「・・・博識だな。で、その自慢の結界はどうしちまったんだ?」
周りを見ると幾人かの人が怪我をしたまま苦しそうに地べたに座り込んでいる
集団でこれだけの重軽傷者が出ると言う事は原因は一つ
魔物が街に入り込んで来たからだ
「役に立ってねえみたいだけど」
「毎年、満開の季節が近付くと一時的に結界が弱くなるんだよ」
「丁度今の季節がそうなんだけど・・・今年はちょっと早いかな」
「そうなんだ。そこを魔物に襲われて・・・」
「結界魔導器がやられたのか?」
「うん。魔物はやっつけたけど、樹が徐々に枯れ初めてるんだ」
カロルが説明していると、不意に誰かが横切った
その人影をカロルは瞬時に目で追い、どうしたのかとエステルが聞くとカロルは慌ててその人影を追って走り去って言った
「あ、カロル!」
「・・・行っちゃった。誰か知り合いでも居たのかな?」
「さあな。とりあえず此処にいるはずのフレンを・・・って」
「またいないし」
ユーリがエステルに声を掛けようとし振り返ったが、肝心のエステルがいなかった
何処に行ったのかと目で探すと、怪我をしたのであろうハルルの街の人々の元へ駆けて行ったらしい
「大人しくしとけってまだ分かってないらしいな。それにフレンはいいのかよ」
「目の前の事が放って置けないタイプなんでしょ」
「ユーリと一緒で」
「オレかよ」
エステルの様子を少し離れた所で見ているとエステルは次々に治癒術を掛けていった
だが、リアはハルルの樹が気になるのか度々樹を見ていた
「気になんのか?」
「え? うん、ちょっとね」
リア自身も何が気になっているのか解らないが何故かハルルの樹が気になって仕方がなかった
「そんなに気になるんなら行ってても良いぜ」
「うん、じゃあ後で合流するね」
「ああ」
リアはアスラと一緒にハルルの樹に続く坂道を登り出した
前に来た時は満開に咲いており、街中にはハルルの花が舞っていてハルルの樹は何処から見てもとても綺麗だった
だが今は一つも花は付いていない
開花の前にしても蕾すらないのが気になった
近くで見るとカロルが言っていた通り、ハルルの樹は徐々に枯れ始めていた
「これじゃ結界魔導器の役目も出来ないか・・・」
「うん。でも、この樹が枯れるって事は何か原因があるはずなのよね」
「確かに魔物が襲って来た位じゃ枯れないはずだし・・・」
今まで結界魔導器が弱くなり魔物が襲って来たという話しは何度か聞いた事があったが今回みたいにハルルの樹が枯れるという事はなかったのだ
「お嬢さん、一体何をなさっているのですか?」
そんな事を考えていると一人の老人がリアに声を掛けた
「こんにちは。今、樹が枯れた原因を調べていたんです」
リアがそういうと老人が眉を下げながら言った
「難しいと思いますよ。フレン様にも原因までは解らなかったようですから」
「フレン? フレン、此処に居たんですか?」
「ええ。結界を直す魔導士を探すと言って旅立たれましたが」
「そうですか・・・あれ?」
そんな話しをしてふとある場所に目線が止まった
「リア、どうしたの?」
「・・・アスラ、これ」
「これって!」
リアの言う方に目線をやるとアスラも気付いたようだった
「どうかしましたか?」「・・・何やってんの?」
老人の声と共に別の声が聞こえ顔を上げるとそこにはカロルがいた
「あ、カロル」
「ねえカロル。樹が枯れた原因ってもしかしてこれ?」
「そうだよ」
「どう言う事です?」
リアは真剣な表情で聞くとカロルは頷き老人は疑問符を浮かべた
「土を良く見て下さい。此処だけ変色していますよね?」
確かに良く地面を見てみると不自然に土の色が変わっているのが解る
その後にカロルが言葉を続ける
「それ、街を襲った魔物の血を土が吸っちゃってるんだ。その血が毒になってハルルの樹を枯らしてるの」
「なんと! 魔物の血が・・・。そうだったのですか」
老人は驚きながら納得しているとアスラは樹と土を見ながら答えた
「後はこれをどうするかだけど・・・」
「治す方法なら知ってるよ・・・」
「何と、本当ですか!!」
カロルの言葉に老人はまた驚きカロルを見た
「うん、でも誰も信じてくれな・・・「パナシーアボトル、でしょ」
カロルの言葉に被せるようにアスラが答えるとカロルは驚き勢い良く顔を上げた
「! 知ってたの!!」
「まあ一応みんなより長く生きてるしね・・・。で、カロルはパナシーアボトル持ってるの?」
「ううん。店に行ったけど売り切れなんだ。だからエッグベアを・・・」
「成る程ね。じゃあこれ使って」
リアはそう言い荷物の中からパナシーアボトルを取り出しカロルに渡した
「え! 良いの!?」
「ええ、樹が治るなら喜んで協力するわ」
笑顔で言うとカロルは嬉しそうな顔をした
「ありがとう、リア!」
「では、早速村長に伝えてきます」
「私も行きます」
「ボクも!」
老人と一緒に坂を下りていると途中でユーリとエステルと会い、そのまま全員で村長の家に行き樹が枯れた原因と治す方法も話した
話しを終えると樹の所まで移動した
移動すると樹が治ると聞きつけた街の人達が集まっていた
「じゃあカロル、お願いね」
「うん!」
カロルは樹の根本まで走って行った
「カロル、誰かにハルルの花を見せたかったんですよね?」
「多分な。ま、手遅れでなきゃいいけど」
「そうね」「きっと大丈夫だよ」
そう笑い合っていると、いくよー! とカロルの声が聞こえて、パナシーアボトルの中身を樹の根元に掛けた
その直後、薄紫色の光が発せられて、幻想的な雰囲気を作り出す
「お願いします。結界よ、ハルルの樹よ、蘇ってくだされ」
村長が祈るように呟いたのを聞いて、この樹がハルルの街の人にとってどれだけ大切なものなのか伝わってきた
皆一様に不安げにハルルの樹を見上げ、その枝から花が咲く事を祈る
暫くパナシーアボトルを掛けた時に発した光が辺りを包んでいたが、不意にその光が消えた
どうなったんだろうか、と聞く前に村長がそんな・・・と何とも言えない声で呟いた
「うそ、量が足りなかったの? それともこの方法じゃ・・・」
「いや、そんなはずは・・・」
カロルもアスラも信じられない、と言うように樹を見上げる
「もう一度、パナシーアボトルを!」
「ごめんね、エステル。あれで最後だったの」
「そんな、そんなのって・・・」
リアも申し訳なさそうに答えるとエステルも酷くショックな様子で、ハルルの樹を見上げていた
かける言葉も見つからない
一同が皆同様に心配そうな顔をして静まり返ったままのハルルの気を見つめていた
本当にこのまま枯れてしまうのだろうか
いや、それではあまりにも酷すぎる
そう思ったリアは樹に近付き手を伸ばすと後ろにいたエステルから祈るように「・・・お願い」と聞こえ、リアも祈った
すると、足元から光の粒が現れリアとエステルの周りを取り囲んだ
それはふわふわと雪のように舞って、辺り一面に広がる
(何・・・?)
「咲いて」
リアはエステルの方を見ると突然今まで見た事もないような光が爆発した
それはハルルの樹に収束したかと思うと、ぱっと突然消え去った
夜の闇が戻ったハルルだったが、何か薄い光を放つものがひらりひらりと宙に舞っている
そして空には結界が見え、リアは小さく呟いた
「樹が・・・蘇った?」
そして其処にいた誰もがその美しい光景に息を呑み、一連の事を起したエステルに視線が集まる
「す、凄い・・・」
「こ、こんな事が・・・」
「今のは治癒術なのか・・・」
「これは夢だろ・・・」
「ありえない・・・でも・・・」
街の人が口々にそう言ったが、真相を語る前にエステルが呼吸を荒げながら地面に膝をついた
「お姉ちゃん! スゴい! 凄いよ!」
「ありがとね! ハルルの樹を元気にしてくれて!」
「有り難う御座います。これでまだこの街もやっていけます・・・」
次々にお礼を言う人がエステルの前に現れて、エステルは動揺気味だ
「わ、わたし、今何を・・・?」
「エステル、覚えてないの?」
「えっと・・・」
エステルに近付きながら尋ねたが、どうにも曖昧な言葉しか出てこない
「・・・すげえな、エステル。立てるか?」
「は、はい。大丈夫です」
エステルは何とか一人で立ち上がり自分がした事を確かめるように辺りを見回した
自分がやったなんて信じられない、そんな顔だった
「・・・・」
だが、アスラはエステルの様子を訝しげに見ていた
「アスラ?」
「・・・いや、何でもないよ」
「そう・・・」
アスラはリアを見ると曖昧な返事を返した
(あの力、まさか・・・)
アスラの疑問とは別にリアはリアでエステルの力に疑問を抱き始めていた
すると何処からか観察されている気配を感じるとラピードも反応しユーリ達に教えた
「あの人達、お城で会った・・・」
「住民を巻き込むと面倒だ。見つかる前に一旦離れよう」
「え? なになに? どうしたの急に!」
「とりあえず街の入り口まで行こう」
「そうしましょ。カロル行くよ」
「え? う、うん」
それから直ぐにリア達はアスピオに向けて出発したのだった
続く
あとがき
ハルルの所まで来ました
一応補足ですが、エステルが力使った所ですが実はリアちゃんも樹に触れた瞬間に力使ってたりします(笑)
本人と周りは気付いてないけどちゃんとアスラが気づいてます
はい、次はいよいよリタっちの登場です
そろそろスキットも書かなきゃな・・・
では~
2008.11.04
だが、そこには前に立ち寄った時とは違った光景が広がっていた
04.エステルの力
「此処が花の街ハルルなんですよね?」
「うん、そうだよ」
「この街、結界ないのか?」
ユーリは辺りを見回し結界魔導器がない事に気が付きエステルもきょろきょろと回りを見た
だがこの街に立ち寄った事のあるリアは疑問に思い結界魔導器である樹を見た
「・・・もしかして、もう時期?」
「でもまだちょっと早いんじゃ・・・」
リアとアスラはハルルの樹を見て疑問を浮かべていた
「リアとアスラは知ってるみたいだね。二人は初めて?」
「はい」
「そっか。だったら、ハルルの樹の結界魔導器も知らないんだ」
「樹の結界?」
何の事だと首を傾げていると、不意にエステルが口を開いた
「魔導器の中には植物と融合し、有機的特性を身に付ける事で進化をするものがある、です。その代表が花の街ハルルの結界魔導器だと本で読みました」
「・・・博識だな。で、その自慢の結界はどうしちまったんだ?」
周りを見ると幾人かの人が怪我をしたまま苦しそうに地べたに座り込んでいる
集団でこれだけの重軽傷者が出ると言う事は原因は一つ
魔物が街に入り込んで来たからだ
「役に立ってねえみたいだけど」
「毎年、満開の季節が近付くと一時的に結界が弱くなるんだよ」
「丁度今の季節がそうなんだけど・・・今年はちょっと早いかな」
「そうなんだ。そこを魔物に襲われて・・・」
「結界魔導器がやられたのか?」
「うん。魔物はやっつけたけど、樹が徐々に枯れ初めてるんだ」
カロルが説明していると、不意に誰かが横切った
その人影をカロルは瞬時に目で追い、どうしたのかとエステルが聞くとカロルは慌ててその人影を追って走り去って言った
「あ、カロル!」
「・・・行っちゃった。誰か知り合いでも居たのかな?」
「さあな。とりあえず此処にいるはずのフレンを・・・って」
「またいないし」
ユーリがエステルに声を掛けようとし振り返ったが、肝心のエステルがいなかった
何処に行ったのかと目で探すと、怪我をしたのであろうハルルの街の人々の元へ駆けて行ったらしい
「大人しくしとけってまだ分かってないらしいな。それにフレンはいいのかよ」
「目の前の事が放って置けないタイプなんでしょ」
「ユーリと一緒で」
「オレかよ」
エステルの様子を少し離れた所で見ているとエステルは次々に治癒術を掛けていった
だが、リアはハルルの樹が気になるのか度々樹を見ていた
「気になんのか?」
「え? うん、ちょっとね」
リア自身も何が気になっているのか解らないが何故かハルルの樹が気になって仕方がなかった
「そんなに気になるんなら行ってても良いぜ」
「うん、じゃあ後で合流するね」
「ああ」
リアはアスラと一緒にハルルの樹に続く坂道を登り出した
前に来た時は満開に咲いており、街中にはハルルの花が舞っていてハルルの樹は何処から見てもとても綺麗だった
だが今は一つも花は付いていない
開花の前にしても蕾すらないのが気になった
近くで見るとカロルが言っていた通り、ハルルの樹は徐々に枯れ始めていた
「これじゃ結界魔導器の役目も出来ないか・・・」
「うん。でも、この樹が枯れるって事は何か原因があるはずなのよね」
「確かに魔物が襲って来た位じゃ枯れないはずだし・・・」
今まで結界魔導器が弱くなり魔物が襲って来たという話しは何度か聞いた事があったが今回みたいにハルルの樹が枯れるという事はなかったのだ
「お嬢さん、一体何をなさっているのですか?」
そんな事を考えていると一人の老人がリアに声を掛けた
「こんにちは。今、樹が枯れた原因を調べていたんです」
リアがそういうと老人が眉を下げながら言った
「難しいと思いますよ。フレン様にも原因までは解らなかったようですから」
「フレン? フレン、此処に居たんですか?」
「ええ。結界を直す魔導士を探すと言って旅立たれましたが」
「そうですか・・・あれ?」
そんな話しをしてふとある場所に目線が止まった
「リア、どうしたの?」
「・・・アスラ、これ」
「これって!」
リアの言う方に目線をやるとアスラも気付いたようだった
「どうかしましたか?」「・・・何やってんの?」
老人の声と共に別の声が聞こえ顔を上げるとそこにはカロルがいた
「あ、カロル」
「ねえカロル。樹が枯れた原因ってもしかしてこれ?」
「そうだよ」
「どう言う事です?」
リアは真剣な表情で聞くとカロルは頷き老人は疑問符を浮かべた
「土を良く見て下さい。此処だけ変色していますよね?」
確かに良く地面を見てみると不自然に土の色が変わっているのが解る
その後にカロルが言葉を続ける
「それ、街を襲った魔物の血を土が吸っちゃってるんだ。その血が毒になってハルルの樹を枯らしてるの」
「なんと! 魔物の血が・・・。そうだったのですか」
老人は驚きながら納得しているとアスラは樹と土を見ながら答えた
「後はこれをどうするかだけど・・・」
「治す方法なら知ってるよ・・・」
「何と、本当ですか!!」
カロルの言葉に老人はまた驚きカロルを見た
「うん、でも誰も信じてくれな・・・「パナシーアボトル、でしょ」
カロルの言葉に被せるようにアスラが答えるとカロルは驚き勢い良く顔を上げた
「! 知ってたの!!」
「まあ一応みんなより長く生きてるしね・・・。で、カロルはパナシーアボトル持ってるの?」
「ううん。店に行ったけど売り切れなんだ。だからエッグベアを・・・」
「成る程ね。じゃあこれ使って」
リアはそう言い荷物の中からパナシーアボトルを取り出しカロルに渡した
「え! 良いの!?」
「ええ、樹が治るなら喜んで協力するわ」
笑顔で言うとカロルは嬉しそうな顔をした
「ありがとう、リア!」
「では、早速村長に伝えてきます」
「私も行きます」
「ボクも!」
老人と一緒に坂を下りていると途中でユーリとエステルと会い、そのまま全員で村長の家に行き樹が枯れた原因と治す方法も話した
話しを終えると樹の所まで移動した
移動すると樹が治ると聞きつけた街の人達が集まっていた
「じゃあカロル、お願いね」
「うん!」
カロルは樹の根本まで走って行った
「カロル、誰かにハルルの花を見せたかったんですよね?」
「多分な。ま、手遅れでなきゃいいけど」
「そうね」「きっと大丈夫だよ」
そう笑い合っていると、いくよー! とカロルの声が聞こえて、パナシーアボトルの中身を樹の根元に掛けた
その直後、薄紫色の光が発せられて、幻想的な雰囲気を作り出す
「お願いします。結界よ、ハルルの樹よ、蘇ってくだされ」
村長が祈るように呟いたのを聞いて、この樹がハルルの街の人にとってどれだけ大切なものなのか伝わってきた
皆一様に不安げにハルルの樹を見上げ、その枝から花が咲く事を祈る
暫くパナシーアボトルを掛けた時に発した光が辺りを包んでいたが、不意にその光が消えた
どうなったんだろうか、と聞く前に村長がそんな・・・と何とも言えない声で呟いた
「うそ、量が足りなかったの? それともこの方法じゃ・・・」
「いや、そんなはずは・・・」
カロルもアスラも信じられない、と言うように樹を見上げる
「もう一度、パナシーアボトルを!」
「ごめんね、エステル。あれで最後だったの」
「そんな、そんなのって・・・」
リアも申し訳なさそうに答えるとエステルも酷くショックな様子で、ハルルの樹を見上げていた
かける言葉も見つからない
一同が皆同様に心配そうな顔をして静まり返ったままのハルルの気を見つめていた
本当にこのまま枯れてしまうのだろうか
いや、それではあまりにも酷すぎる
そう思ったリアは樹に近付き手を伸ばすと後ろにいたエステルから祈るように「・・・お願い」と聞こえ、リアも祈った
すると、足元から光の粒が現れリアとエステルの周りを取り囲んだ
それはふわふわと雪のように舞って、辺り一面に広がる
(何・・・?)
「咲いて」
リアはエステルの方を見ると突然今まで見た事もないような光が爆発した
それはハルルの樹に収束したかと思うと、ぱっと突然消え去った
夜の闇が戻ったハルルだったが、何か薄い光を放つものがひらりひらりと宙に舞っている
そして空には結界が見え、リアは小さく呟いた
「樹が・・・蘇った?」
そして其処にいた誰もがその美しい光景に息を呑み、一連の事を起したエステルに視線が集まる
「す、凄い・・・」
「こ、こんな事が・・・」
「今のは治癒術なのか・・・」
「これは夢だろ・・・」
「ありえない・・・でも・・・」
街の人が口々にそう言ったが、真相を語る前にエステルが呼吸を荒げながら地面に膝をついた
「お姉ちゃん! スゴい! 凄いよ!」
「ありがとね! ハルルの樹を元気にしてくれて!」
「有り難う御座います。これでまだこの街もやっていけます・・・」
次々にお礼を言う人がエステルの前に現れて、エステルは動揺気味だ
「わ、わたし、今何を・・・?」
「エステル、覚えてないの?」
「えっと・・・」
エステルに近付きながら尋ねたが、どうにも曖昧な言葉しか出てこない
「・・・すげえな、エステル。立てるか?」
「は、はい。大丈夫です」
エステルは何とか一人で立ち上がり自分がした事を確かめるように辺りを見回した
自分がやったなんて信じられない、そんな顔だった
「・・・・」
だが、アスラはエステルの様子を訝しげに見ていた
「アスラ?」
「・・・いや、何でもないよ」
「そう・・・」
アスラはリアを見ると曖昧な返事を返した
(あの力、まさか・・・)
アスラの疑問とは別にリアはリアでエステルの力に疑問を抱き始めていた
すると何処からか観察されている気配を感じるとラピードも反応しユーリ達に教えた
「あの人達、お城で会った・・・」
「住民を巻き込むと面倒だ。見つかる前に一旦離れよう」
「え? なになに? どうしたの急に!」
「とりあえず街の入り口まで行こう」
「そうしましょ。カロル行くよ」
「え? う、うん」
それから直ぐにリア達はアスピオに向けて出発したのだった
続く
あとがき
ハルルの所まで来ました
一応補足ですが、エステルが力使った所ですが実はリアちゃんも樹に触れた瞬間に力使ってたりします(笑)
本人と周りは気付いてないけどちゃんとアスラが気づいてます
はい、次はいよいよリタっちの登場です
そろそろスキットも書かなきゃな・・・
では~
2008.11.04