救出編
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封印結界を解き、更に奥に進み最深部らしき所に近づくに連れ、人の声が聞こえる
「あの声は、アレクセイ!」
「どうやらあこそが最深部のようね」
「あこそにエステルが!!」
「急ぐぞ!!」
「「うん!」」「「ええ」」「ワン!」
更に走る速度を上げてユーリ達は最深部へと足を踏み入れた
65.シュヴァーン・オルトレイン
「エステル、無事か!」
「エステル!」
「また君達か。どこまでも分をわきまえない連中だな」
「ユーリ! みんな!」
「エステル、今助けてあげる!」
「ふん。お前達に姫は救えぬ。救えるのはこの私だけ」
「ぶざけろ!」
「道具は使われてこそ、その本懐を遂げるのだよ。世界の毒も正しく使えば、それは得難い福音となる。それが出来るのは私だけだ」
そう言うとアレクセイはエステルの方を向いて、また言葉を続ける
「姫、私と来なさい。私がいなければ、貴女の力は・・・」
「きゃあああ!」
アレクセイはそう言って聖核をエステルの方に向けるとエステルの力に反応して、その衝撃がエステルに当り、エステルは苦しそうに悲鳴を上げた
「やめなさい、アレクセイ! あっ!」
ジュディがエステルの元に向かうとしていると、赤い光が発せられオレ達の動きを止めた
「ジュディス!」
「ぐ・・・あ・・・」
「アスタル!」
更にその光はアレクセイの近くで横たわっているアスタルに当り悲鳴を上げる
「ははは、何が始祖の隷長か。何が世界の支配者か」
「やめろ!! エステルを放せ!」
「死んだか。あっけなかった」
「っ!」
「そんな・・・」
アレクセイはオレの言葉を聞き流し、アスタルへと近付いて行く
アスラとジュディは顔を歪めアスタルを見て、エステルもショックを受けた顔をしていた
「思ったより小ぶりだな。まあ使い道はいくらでもある」
アレクセイはそう言って聖核になったアスタルの聖核を拾い、懐に入れた
「貴様・・・」
「そうだ、せっかく来たのだ。諸君も洗礼を受けるが良い。姫が手ずから刺激したエアルのな」
そう言うとアレクセイはオレ達の近くに移動して、また聖核を高く掲げるとまた赤い光が放たれオレ達はその場から動けなくなった
「うわあああ!」
「ううっ!」
「っ!」
「いや! もうやめて!!」
カロルとリタが苦しそうに悲鳴を上げると、エステルも叫んでいた
「く・・・っだらぁ!」
オレは力を振り絞って宙の戒典を取り出し、それを宙に掲げる
途端、エアルの乱れは消え、正常な空気に戻った
「なんだと? 何故貴様がその剣を持っている? デュークはどうした?」
アレクセイは目を細めてオレが持っている宙の戒典に目をやる
「あいつならこの剣寄越してどっかいっちまったぜ。てめえなんぞに用はないそうだ」
「・・・皮肉なものだな。長年追い求めた物が不要になった途端、転がり込んでくるとは」
「・・・不要?」
「そう、満月の子と聖核、そしてあの娘と我が知識があればもはや宙の戒典など不要」
「あの娘って・・・もしかして」
「リアの事!」
それには此処にいた全員が反応しエステルも驚いてアレクセイを見た
「てめえ、リアを何処にやった!」
「彼女は此処にはいない。別の所にいる。此処には姫の力が必要だったからな」
「もう一度聞くぜ。リアは何処だ?」
オレは剣を握り直し、さっきよりも低いトーンで言ってアレクセイを睨み付けた
「そうだな・・・君にとっても彼女にとっても大事な場所の近く、とだけ言っておこうか」
「オレとリアにとって大事な場所の近く・・・?」
その言葉にオレは疑問を持っているとリタがエステルを返せと叫んでいるのが聞こえ、視線を前へと戻した
「ふん。姫がそれを望まれるかな?」
「エステル!?」
「・・・・・」
「エステル! どうしたのよ、エステル!」
「・・・分からない」
「何言ってんだよ!」
「一緒にいたらわたし、みんなを傷つけてしまう。でも・・・一緒いたい! わたし、どうしたら良いのか解らない!」
「四の五の言うな! 来い! エステル! わかんねぇ事はみんなで考えりゃ良いんだ!」
「ユーリ・・・!」
オレはそこで言葉を切り、走り出すとカロル達も走り出したが、直ぐにさっきの光で弾き飛ばされてしまう
「ぐぁ!」「うぅ!」「きゃ!」「う!」
「もう・・・イヤ・・・」
「いかんな、ローウェル君。ご婦人のエスコートとしてはいささか強引過ぎやしないかね。紳士的ではないな」
「生憎、紳士と無縁の下町育ちでな。行儀と諦めの悪さは勘弁してくれ」
「今となってはその剣は邪魔以外の何物でもない。此処で消えてもらう」
アレクセイはそう言うとエステルを連れて、出口へと向かいだした
後を追おうとしていると、入れ違いで何人もの騎士がオレ達の前に現れた
「あんた達、そこをどきなさい!」
リタがそう叫んでいると、騎士達は入り口の方を向き、敬礼をしていてオレ達も視線をそっちに向ける
すると、一人の男が入って来た
男は騎士達の前に止まり、何か命じると騎士達は出口の方へ走っていき、男はオレ達の前で止まった
「あいつは!?」
「確か隊長のシュヴァーン、だったな。いつも部下に任せきりで顔見せなかったクセに、どういう風の吹き回しだ?」
「ワンワンワン!」
「どうした、ラピード」
途端、ラピードがシュヴァーンを見て鳴いた
が、その声は警戒した声ではなく、何か懐かしんでいるような声だった
「・・・やはり犬の鼻は誤魔化せんか」
「!?」
「・・・この声・・・まさか・・・レイヴン?」
オレ達はその声を聞いて一瞬耳を疑った
だがシュヴァーンが顔を上げてオレ達を見た時、今度はその目を疑った
「冗談・・・って訳じゃなさそうね」
「ギルドユニオンの幹部が騎士団の隊長!?」
「成る程な、そう言う事かよ」
「そんな! だってドンは・・・ねえレイヴン!」
「俺の任務はお前達とお喋りする事ではない」
「レイヴン・・・!」
「こっちは急いでるんだ。通してくれない」
「それとも本気でやり合うつもりか?」
オレとアスラの問いに、シュヴァーンは剣を抜いて答えた
「バッカやろうが!」
オレはその答えに苛立ってそう答えた
「帝国騎士団隊長主席、シュヴァーン・オルトレイン、・・・参る」
シュヴァーンはそのままオレ達に斬り掛かって来る
「悪ぃけど、おっさんだからって手加減しねえぜ!」
「全力でお手合わせ頂けて光栄だな!」
「レイヴン、何で・・・何でなの?」
「何度でも言おう。俺はレイヴンなどという人間ではない!」
「あんたなんて・・・大っ嫌いよっ!!」
「ふっ・・・。嫌われたものだな」
反撃しながら、リタはいつも以上に大きな声でそう叫ぶ
「貴方と戦わなきゃいけないなんて、悲しい宿命ね」
「俺も悲しいよ。貴女のような美しい方と戦わなければいけないとは」
「いつもその調子でやってくれよ!」
「いつもとは、どのいつもの事だ!?」
「ボク・・・レイヴンの事好きだったんだよ・・・」
「・・・残念だったな。・・・此処にその本人がいなくて」
「絶対に許さないわ・・・許してたまるか・・・」
「・・・敵対する者に・・・許されるものはない!」
「貴方・・・まさか此処で死ぬつもりなのかしら?」
「戦場では何時だって死ぬ覚悟・・・。故に、手は抜かぬ!」
更に戦力を上げてオレ達に向かってくる
こっちは四人と二匹、この人数で相手してるにも関わらず、息一つ上がっていない
流石は帝国騎士団隊長主席というやつだ
けど、この状況がいつまでも続かせる訳にはいかねえ
エステルの事もだが、何よりリアの事が心配だ
さっきのアレクセイの言い草だとリアもあの野郎の計画に必要みたいだしな
「戦闘中に考え事とは余裕なものだな」
互いに剣を交わらせ、跳ね除け数歩下がる
「生憎と、こっちは考えなきゃいけねえ事が山程あんだよ」
「ふん。満月の子・・・いや、言霊使いの娘の方か」
オレはそこで一旦言葉を切って、シュヴァーンを見据える
「やっぱエステルとリアを攫ったの、あんたなのか?」
「そうだ」
「なんで!!」
「それが俺の任務だったからだ」
「でも何でリアまで?」
「そこまでは知らぬ。必要だから連れてこいと命じられただけだ」
「満月の子に、聖核・・・そして言霊使い・・・宙の戒典が不要・・・」
シュヴァーンの言葉を聞き、小さくアスラが何か呟いていた
「さて、お喋りは此処までだ」
剣を翳し、更にさっきまでとは違う力を感じ、オレ達は警戒を強め相手を始めた
キイィィン
剣の混じり合う音、魔術が発動してぶつかり合う音がもう何度も響いている
かなりの時間こうして戦り合っていると、流石にお互いに体力が落ちてくる
オレ達は荒い息を整えていると、息を整えたシュヴァーンがオレに向かって来て剣を振るう
互いに剣を交わらせ跳ね返していると、シュヴァーンが急に剣を降ろした
そしてその隙を見てオレは一撃を入れる
「ぐぅっ」
「なっ!」
だが、オレは斬った所を見て思わず声を出してしまった
「っ!」
それには後ろにいたアスラ達も驚いていた
「ふ・・・今の一撃でもまだ死なないとは・・・因果な体だ・・・」
「な、何よ、これ、魔導器・・・胸に埋め込んであるの!?」
シュヴァーンの心臓近く、いや、心臓には魔導器が埋め込まれていた
「・・・心臓だよ。魔導器が代わりを果たしてる」
「・・・自前のは10年前に失くした」
「10年前って・・・人魔戦争?」
「あの戦争で俺は死んだはずだった。だが、アレクセイがこれで生き返らせた」
「・・・なら、それもヘルメス式と言う事? 何故バウルは気付かなかったの・・・?」
シュヴァーンは少し視線を逸らして口を開く
「多分、こいつがエアルの代わりに俺の生命力で動いてるからだろう」
「・・・生命力で動く魔導器、そんな・・・」
その途端、大きな揺れがした
「何?」
揺れが収まると、オレ達が来た出口が今の揺れで落ちてきた天井の破片で埋められてしまった
「閉じ込められたわ」
「・・・アレクセイだな。生き埋めにするつもりだ」
「おいおい、あんたがいるのにかよ」
「今や不要になったその剣でさえ始末出来れば良い。そう言う事だろう」
「それでエステル使ってデュークを誘き寄せたって訳か。つくづくえげつない野郎だぜ」
おっさんは黙ってその場に座り込んでいた
「ちょっと、おっさん! 何でそんなに落ち着いてんのよ!」
その様子を見たリタがおっさんを見て叫んだ
「俺にとってはようやく訪れた終わりだ」
「初めから・・・此処を生きて出るつもりがなかったのね」
おっさんはジュディの問いに答えず、俯いたままだった
「一人で勝手に終わった気になってんじゃねぇ!」
オレはその態度に腹を立て、おっさんの所に行き、おっさんの肩を揺らしながら怒鳴った
「オレ達との旅が全部芝居だったとしてもだ、ドンが死んだ時の怒り、あれも演技だってのか? 最後までケツ持つのがギルド流・・・ドンの遺志じゃねぇのか! 最後までしゃんと生きやがれ!」
「・・・ホント、容赦ねえあんちゃんだねえ」
おっさんはオレの言葉を聞くと小さく笑い立ち上がり、カロルがオレ達の側に駆けつけた
そしておっさんはオレ達を見ると小さく頷き、出口の方に弓を構え、矢を放つと大きな爆発が起き、岩が粉々に砕けた
出口が開き、一歩踏み出すとまた振動がし、天井が落ちてきそうになっていた
「く! 間に合わねぇ」
オレが言うと同時に天井はオレ達の上に落ちてきた
だが、いつまで経っても衝撃が来ないと思い振り返ると、おっさんが頭から血を流しながらその岩を支えていた
「レイヴン!?」
「ちょっと! 生命力の落ちてるあんたが今魔導器でそんな事したら!」
「長くは保たない・・・早く脱出しろ」
「おっさん!」「レイヴン!」
「アレクセイは帝都に向かった。そこで計画を最終段階に進めるつもりだ。多分、リアちゃんもそこにいる」
「!」
「後は・・・お前達次第だ」
「レイヴン! レイヴン!!」
「・・・行くぞ、カロル」
「でも!」
「行くんだ!」
「・・・・・」
オレはそう叫ぶとリタとジュディとラピードと先に出口へと向かった
カロルはレイヴンを見た後、急いで出口へと走り出しアスラもその場を離れた
「ふっ。ガラにもなかったか、な・・・」
ユーリ達がいなくなったのを確認すると、レイヴンはそう小さく呟き、
その後は瓦礫が崩れ落ちる音が神殿内に響いた
最深部からだいぶ離れた所でオレ達は一旦足を止め、カロルが地面に両手と膝を着いて泣き出し、リタも今にも泣きそうな顔をしていた
「うぅぅ・・・レイヴン・・・」
「バカよ・・・やっぱり仲間だったんじゃない・・・バカ・・・バカぁ!!」
リタは悔しそうにそう叫ぶと、後ろを向いていたジュディが振り返ってリタとカロルを見ていた
「ぐずぐずすんな! リアとエステル助けるんだろうが! とっとと走れ!」
オレの言葉にリタとカロルはまた走り出した
「損な役回りね、ユーリ」
「・・・別に。実際ぐずぐずしてられねぇだろ」
「・・・だね。行こう」
オレとアスラはそう答えるとそのまま走り出し、遅れてジュディも走り出した
*
外に出るともうヘラクレスの姿は何処にもなかった
「ヘラクレスがいない!?」
「レイヴンが言った通り、ザーフィアスに向かったんだろうな」
「アレクセイが言ってたユーリとリアにとって大事な場所って、ザーフィアスの事だったんだね」
「ただ、その後に近く、と言っていたわ」
「それが何処か把握出来ないと・・・」
「ユ、ユーリ・ローウェル!? 何故、此処にいる!?」
みんなと話していると、入り口の方から聞き覚えのある声が聞こえ、オレ達は一斉に顔を向けた
「ルブラン!? それに、デコとボコもか」
「デコと言うなであ~る!」「ボコじゃないのだ!」
「ばかも~ん! そんな事言っている場合か!」
いつものお決まり台詞を言うとルブランがデコとボコを怒鳴り、踵を返してオレ達の方に歩いて来た
「我等がシュヴァーン隊長を見なかったか?」
シュヴァーン、という言葉にカロルは顔を俯けてしまう
「単身、騎士団長閣下と共に行動されたきり、まるで連絡がつかんのだ。どうも最近の団長閣下は何をお考えなのか・・・親衛隊は何も教えてくれんし。あちこちあたってみて、やっとヘラクレスの事を聞いて此処まで来たんだが・・・」
「アレクセイは帝都に向かった。ヘラクレスでな」
「なんと、入れ違いか!? それでシュヴァーン隊長は・・・」
その言葉に今度はリタが顔を俯けて握り拳を作っていた
「レ・・・シュヴァーンはボク達を助けてくれたんだ」
カロルは小さな声で答える
「おお、そうか! で、今はヘラクレスか?」
「・・・神殿の中よ。一番奥」
ジュディが静かに答えるとまた神殿の中から大きな振動が響いて、オレ達がいるこの場所にもその振動は響いた
その揺れにカロルとリタも顔を上げ、神殿を見た
「「「・・・・」」」
揺れが収まるとカロルとリタはまた俯いた
「え・・・?」
「ちょ・・・お・・・」
「・・・まさか、おい、そうなのか、そんな!」
ルブラン達は信じられないと言う顔をして固まった
だが、ルブランだけは言葉を続ける
「どういう事なんだ。答えろ、答えんか、ユーリ・ローウェル!!」
「アレクセイの所為であたし達死にそうになったのよ! それを助けてくれたのがあんた等のシュヴァーンよ!」
リタはそう言ってまた顔を逸らす
「アレクセイは帝国にも内緒でなんかヤバイ事をしようとしているらしい。オレ達はそれを止めに行く。あんた等も騎士の端くれなら頼むから邪魔しないでくれ」
オレはそう告げながら、ルブラン達の横を通り過ぎた
「・・・そんな・・・何がどうして・・・」
ルブランはそのまま膝を着いてそう呟いているのが聞こえた
続く
あとがき
重い・・・切ない・・・
この回はそれしか言いようがないですね・・・
実際ゲームやってた時も凹んでましたもん・・・
・・・やべ、マジでテンション上がんねぇや・・・
ちょっと気分転換してから続き書こう・・・
2009.08.03
「あの声は、アレクセイ!」
「どうやらあこそが最深部のようね」
「あこそにエステルが!!」
「急ぐぞ!!」
「「うん!」」「「ええ」」「ワン!」
更に走る速度を上げてユーリ達は最深部へと足を踏み入れた
65.シュヴァーン・オルトレイン
「エステル、無事か!」
「エステル!」
「また君達か。どこまでも分をわきまえない連中だな」
「ユーリ! みんな!」
「エステル、今助けてあげる!」
「ふん。お前達に姫は救えぬ。救えるのはこの私だけ」
「ぶざけろ!」
「道具は使われてこそ、その本懐を遂げるのだよ。世界の毒も正しく使えば、それは得難い福音となる。それが出来るのは私だけだ」
そう言うとアレクセイはエステルの方を向いて、また言葉を続ける
「姫、私と来なさい。私がいなければ、貴女の力は・・・」
「きゃあああ!」
アレクセイはそう言って聖核をエステルの方に向けるとエステルの力に反応して、その衝撃がエステルに当り、エステルは苦しそうに悲鳴を上げた
「やめなさい、アレクセイ! あっ!」
ジュディがエステルの元に向かうとしていると、赤い光が発せられオレ達の動きを止めた
「ジュディス!」
「ぐ・・・あ・・・」
「アスタル!」
更にその光はアレクセイの近くで横たわっているアスタルに当り悲鳴を上げる
「ははは、何が始祖の隷長か。何が世界の支配者か」
「やめろ!! エステルを放せ!」
「死んだか。あっけなかった」
「っ!」
「そんな・・・」
アレクセイはオレの言葉を聞き流し、アスタルへと近付いて行く
アスラとジュディは顔を歪めアスタルを見て、エステルもショックを受けた顔をしていた
「思ったより小ぶりだな。まあ使い道はいくらでもある」
アレクセイはそう言って聖核になったアスタルの聖核を拾い、懐に入れた
「貴様・・・」
「そうだ、せっかく来たのだ。諸君も洗礼を受けるが良い。姫が手ずから刺激したエアルのな」
そう言うとアレクセイはオレ達の近くに移動して、また聖核を高く掲げるとまた赤い光が放たれオレ達はその場から動けなくなった
「うわあああ!」
「ううっ!」
「っ!」
「いや! もうやめて!!」
カロルとリタが苦しそうに悲鳴を上げると、エステルも叫んでいた
「く・・・っだらぁ!」
オレは力を振り絞って宙の戒典を取り出し、それを宙に掲げる
途端、エアルの乱れは消え、正常な空気に戻った
「なんだと? 何故貴様がその剣を持っている? デュークはどうした?」
アレクセイは目を細めてオレが持っている宙の戒典に目をやる
「あいつならこの剣寄越してどっかいっちまったぜ。てめえなんぞに用はないそうだ」
「・・・皮肉なものだな。長年追い求めた物が不要になった途端、転がり込んでくるとは」
「・・・不要?」
「そう、満月の子と聖核、そしてあの娘と我が知識があればもはや宙の戒典など不要」
「あの娘って・・・もしかして」
「リアの事!」
それには此処にいた全員が反応しエステルも驚いてアレクセイを見た
「てめえ、リアを何処にやった!」
「彼女は此処にはいない。別の所にいる。此処には姫の力が必要だったからな」
「もう一度聞くぜ。リアは何処だ?」
オレは剣を握り直し、さっきよりも低いトーンで言ってアレクセイを睨み付けた
「そうだな・・・君にとっても彼女にとっても大事な場所の近く、とだけ言っておこうか」
「オレとリアにとって大事な場所の近く・・・?」
その言葉にオレは疑問を持っているとリタがエステルを返せと叫んでいるのが聞こえ、視線を前へと戻した
「ふん。姫がそれを望まれるかな?」
「エステル!?」
「・・・・・」
「エステル! どうしたのよ、エステル!」
「・・・分からない」
「何言ってんだよ!」
「一緒にいたらわたし、みんなを傷つけてしまう。でも・・・一緒いたい! わたし、どうしたら良いのか解らない!」
「四の五の言うな! 来い! エステル! わかんねぇ事はみんなで考えりゃ良いんだ!」
「ユーリ・・・!」
オレはそこで言葉を切り、走り出すとカロル達も走り出したが、直ぐにさっきの光で弾き飛ばされてしまう
「ぐぁ!」「うぅ!」「きゃ!」「う!」
「もう・・・イヤ・・・」
「いかんな、ローウェル君。ご婦人のエスコートとしてはいささか強引過ぎやしないかね。紳士的ではないな」
「生憎、紳士と無縁の下町育ちでな。行儀と諦めの悪さは勘弁してくれ」
「今となってはその剣は邪魔以外の何物でもない。此処で消えてもらう」
アレクセイはそう言うとエステルを連れて、出口へと向かいだした
後を追おうとしていると、入れ違いで何人もの騎士がオレ達の前に現れた
「あんた達、そこをどきなさい!」
リタがそう叫んでいると、騎士達は入り口の方を向き、敬礼をしていてオレ達も視線をそっちに向ける
すると、一人の男が入って来た
男は騎士達の前に止まり、何か命じると騎士達は出口の方へ走っていき、男はオレ達の前で止まった
「あいつは!?」
「確か隊長のシュヴァーン、だったな。いつも部下に任せきりで顔見せなかったクセに、どういう風の吹き回しだ?」
「ワンワンワン!」
「どうした、ラピード」
途端、ラピードがシュヴァーンを見て鳴いた
が、その声は警戒した声ではなく、何か懐かしんでいるような声だった
「・・・やはり犬の鼻は誤魔化せんか」
「!?」
「・・・この声・・・まさか・・・レイヴン?」
オレ達はその声を聞いて一瞬耳を疑った
だがシュヴァーンが顔を上げてオレ達を見た時、今度はその目を疑った
「冗談・・・って訳じゃなさそうね」
「ギルドユニオンの幹部が騎士団の隊長!?」
「成る程な、そう言う事かよ」
「そんな! だってドンは・・・ねえレイヴン!」
「俺の任務はお前達とお喋りする事ではない」
「レイヴン・・・!」
「こっちは急いでるんだ。通してくれない」
「それとも本気でやり合うつもりか?」
オレとアスラの問いに、シュヴァーンは剣を抜いて答えた
「バッカやろうが!」
オレはその答えに苛立ってそう答えた
「帝国騎士団隊長主席、シュヴァーン・オルトレイン、・・・参る」
シュヴァーンはそのままオレ達に斬り掛かって来る
「悪ぃけど、おっさんだからって手加減しねえぜ!」
「全力でお手合わせ頂けて光栄だな!」
「レイヴン、何で・・・何でなの?」
「何度でも言おう。俺はレイヴンなどという人間ではない!」
「あんたなんて・・・大っ嫌いよっ!!」
「ふっ・・・。嫌われたものだな」
反撃しながら、リタはいつも以上に大きな声でそう叫ぶ
「貴方と戦わなきゃいけないなんて、悲しい宿命ね」
「俺も悲しいよ。貴女のような美しい方と戦わなければいけないとは」
「いつもその調子でやってくれよ!」
「いつもとは、どのいつもの事だ!?」
「ボク・・・レイヴンの事好きだったんだよ・・・」
「・・・残念だったな。・・・此処にその本人がいなくて」
「絶対に許さないわ・・・許してたまるか・・・」
「・・・敵対する者に・・・許されるものはない!」
「貴方・・・まさか此処で死ぬつもりなのかしら?」
「戦場では何時だって死ぬ覚悟・・・。故に、手は抜かぬ!」
更に戦力を上げてオレ達に向かってくる
こっちは四人と二匹、この人数で相手してるにも関わらず、息一つ上がっていない
流石は帝国騎士団隊長主席というやつだ
けど、この状況がいつまでも続かせる訳にはいかねえ
エステルの事もだが、何よりリアの事が心配だ
さっきのアレクセイの言い草だとリアもあの野郎の計画に必要みたいだしな
「戦闘中に考え事とは余裕なものだな」
互いに剣を交わらせ、跳ね除け数歩下がる
「生憎と、こっちは考えなきゃいけねえ事が山程あんだよ」
「ふん。満月の子・・・いや、言霊使いの娘の方か」
オレはそこで一旦言葉を切って、シュヴァーンを見据える
「やっぱエステルとリアを攫ったの、あんたなのか?」
「そうだ」
「なんで!!」
「それが俺の任務だったからだ」
「でも何でリアまで?」
「そこまでは知らぬ。必要だから連れてこいと命じられただけだ」
「満月の子に、聖核・・・そして言霊使い・・・宙の戒典が不要・・・」
シュヴァーンの言葉を聞き、小さくアスラが何か呟いていた
「さて、お喋りは此処までだ」
剣を翳し、更にさっきまでとは違う力を感じ、オレ達は警戒を強め相手を始めた
キイィィン
剣の混じり合う音、魔術が発動してぶつかり合う音がもう何度も響いている
かなりの時間こうして戦り合っていると、流石にお互いに体力が落ちてくる
オレ達は荒い息を整えていると、息を整えたシュヴァーンがオレに向かって来て剣を振るう
互いに剣を交わらせ跳ね返していると、シュヴァーンが急に剣を降ろした
そしてその隙を見てオレは一撃を入れる
「ぐぅっ」
「なっ!」
だが、オレは斬った所を見て思わず声を出してしまった
「っ!」
それには後ろにいたアスラ達も驚いていた
「ふ・・・今の一撃でもまだ死なないとは・・・因果な体だ・・・」
「な、何よ、これ、魔導器・・・胸に埋め込んであるの!?」
シュヴァーンの心臓近く、いや、心臓には魔導器が埋め込まれていた
「・・・心臓だよ。魔導器が代わりを果たしてる」
「・・・自前のは10年前に失くした」
「10年前って・・・人魔戦争?」
「あの戦争で俺は死んだはずだった。だが、アレクセイがこれで生き返らせた」
「・・・なら、それもヘルメス式と言う事? 何故バウルは気付かなかったの・・・?」
シュヴァーンは少し視線を逸らして口を開く
「多分、こいつがエアルの代わりに俺の生命力で動いてるからだろう」
「・・・生命力で動く魔導器、そんな・・・」
その途端、大きな揺れがした
「何?」
揺れが収まると、オレ達が来た出口が今の揺れで落ちてきた天井の破片で埋められてしまった
「閉じ込められたわ」
「・・・アレクセイだな。生き埋めにするつもりだ」
「おいおい、あんたがいるのにかよ」
「今や不要になったその剣でさえ始末出来れば良い。そう言う事だろう」
「それでエステル使ってデュークを誘き寄せたって訳か。つくづくえげつない野郎だぜ」
おっさんは黙ってその場に座り込んでいた
「ちょっと、おっさん! 何でそんなに落ち着いてんのよ!」
その様子を見たリタがおっさんを見て叫んだ
「俺にとってはようやく訪れた終わりだ」
「初めから・・・此処を生きて出るつもりがなかったのね」
おっさんはジュディの問いに答えず、俯いたままだった
「一人で勝手に終わった気になってんじゃねぇ!」
オレはその態度に腹を立て、おっさんの所に行き、おっさんの肩を揺らしながら怒鳴った
「オレ達との旅が全部芝居だったとしてもだ、ドンが死んだ時の怒り、あれも演技だってのか? 最後までケツ持つのがギルド流・・・ドンの遺志じゃねぇのか! 最後までしゃんと生きやがれ!」
「・・・ホント、容赦ねえあんちゃんだねえ」
おっさんはオレの言葉を聞くと小さく笑い立ち上がり、カロルがオレ達の側に駆けつけた
そしておっさんはオレ達を見ると小さく頷き、出口の方に弓を構え、矢を放つと大きな爆発が起き、岩が粉々に砕けた
出口が開き、一歩踏み出すとまた振動がし、天井が落ちてきそうになっていた
「く! 間に合わねぇ」
オレが言うと同時に天井はオレ達の上に落ちてきた
だが、いつまで経っても衝撃が来ないと思い振り返ると、おっさんが頭から血を流しながらその岩を支えていた
「レイヴン!?」
「ちょっと! 生命力の落ちてるあんたが今魔導器でそんな事したら!」
「長くは保たない・・・早く脱出しろ」
「おっさん!」「レイヴン!」
「アレクセイは帝都に向かった。そこで計画を最終段階に進めるつもりだ。多分、リアちゃんもそこにいる」
「!」
「後は・・・お前達次第だ」
「レイヴン! レイヴン!!」
「・・・行くぞ、カロル」
「でも!」
「行くんだ!」
「・・・・・」
オレはそう叫ぶとリタとジュディとラピードと先に出口へと向かった
カロルはレイヴンを見た後、急いで出口へと走り出しアスラもその場を離れた
「ふっ。ガラにもなかったか、な・・・」
ユーリ達がいなくなったのを確認すると、レイヴンはそう小さく呟き、
その後は瓦礫が崩れ落ちる音が神殿内に響いた
最深部からだいぶ離れた所でオレ達は一旦足を止め、カロルが地面に両手と膝を着いて泣き出し、リタも今にも泣きそうな顔をしていた
「うぅぅ・・・レイヴン・・・」
「バカよ・・・やっぱり仲間だったんじゃない・・・バカ・・・バカぁ!!」
リタは悔しそうにそう叫ぶと、後ろを向いていたジュディが振り返ってリタとカロルを見ていた
「ぐずぐずすんな! リアとエステル助けるんだろうが! とっとと走れ!」
オレの言葉にリタとカロルはまた走り出した
「損な役回りね、ユーリ」
「・・・別に。実際ぐずぐずしてられねぇだろ」
「・・・だね。行こう」
オレとアスラはそう答えるとそのまま走り出し、遅れてジュディも走り出した
*
外に出るともうヘラクレスの姿は何処にもなかった
「ヘラクレスがいない!?」
「レイヴンが言った通り、ザーフィアスに向かったんだろうな」
「アレクセイが言ってたユーリとリアにとって大事な場所って、ザーフィアスの事だったんだね」
「ただ、その後に近く、と言っていたわ」
「それが何処か把握出来ないと・・・」
「ユ、ユーリ・ローウェル!? 何故、此処にいる!?」
みんなと話していると、入り口の方から聞き覚えのある声が聞こえ、オレ達は一斉に顔を向けた
「ルブラン!? それに、デコとボコもか」
「デコと言うなであ~る!」「ボコじゃないのだ!」
「ばかも~ん! そんな事言っている場合か!」
いつものお決まり台詞を言うとルブランがデコとボコを怒鳴り、踵を返してオレ達の方に歩いて来た
「我等がシュヴァーン隊長を見なかったか?」
シュヴァーン、という言葉にカロルは顔を俯けてしまう
「単身、騎士団長閣下と共に行動されたきり、まるで連絡がつかんのだ。どうも最近の団長閣下は何をお考えなのか・・・親衛隊は何も教えてくれんし。あちこちあたってみて、やっとヘラクレスの事を聞いて此処まで来たんだが・・・」
「アレクセイは帝都に向かった。ヘラクレスでな」
「なんと、入れ違いか!? それでシュヴァーン隊長は・・・」
その言葉に今度はリタが顔を俯けて握り拳を作っていた
「レ・・・シュヴァーンはボク達を助けてくれたんだ」
カロルは小さな声で答える
「おお、そうか! で、今はヘラクレスか?」
「・・・神殿の中よ。一番奥」
ジュディが静かに答えるとまた神殿の中から大きな振動が響いて、オレ達がいるこの場所にもその振動は響いた
その揺れにカロルとリタも顔を上げ、神殿を見た
「「「・・・・」」」
揺れが収まるとカロルとリタはまた俯いた
「え・・・?」
「ちょ・・・お・・・」
「・・・まさか、おい、そうなのか、そんな!」
ルブラン達は信じられないと言う顔をして固まった
だが、ルブランだけは言葉を続ける
「どういう事なんだ。答えろ、答えんか、ユーリ・ローウェル!!」
「アレクセイの所為であたし達死にそうになったのよ! それを助けてくれたのがあんた等のシュヴァーンよ!」
リタはそう言ってまた顔を逸らす
「アレクセイは帝国にも内緒でなんかヤバイ事をしようとしているらしい。オレ達はそれを止めに行く。あんた等も騎士の端くれなら頼むから邪魔しないでくれ」
オレはそう告げながら、ルブラン達の横を通り過ぎた
「・・・そんな・・・何がどうして・・・」
ルブランはそのまま膝を着いてそう呟いているのが聞こえた
続く
あとがき
重い・・・切ない・・・
この回はそれしか言いようがないですね・・・
実際ゲームやってた時も凹んでましたもん・・・
・・・やべ、マジでテンション上がんねぇや・・・
ちょっと気分転換してから続き書こう・・・
2009.08.03