救出編
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「見て! あそこ!」
「ヘラクレス・・・! アレクセイが呼び寄せたのか」
ヒピオニア大陸にあるバクティオン神殿と思われる遺跡の近くに来るとヘラクレスの姿がオレ達の目に入った
そしてヘラクレスから無数の光が放たれ空を飛び回っている馬のような魔物を狙い撃ちしていた
「・・・あれはアスタル!」
「アスタル?」
「始祖の隷長、アスタルの事よ」
アスタルに目を戻すと、遺跡の奥にある山の峰辺りに空いている穴の中に逃げ込んだ
「アレクセイはまだ聖核を狙っているのね」
「逃がされたように見えたけど」
「ああ。あの遺跡に追い込まれたみたいだった」
「どうやらあの遺跡がバクティオンで間違いなさそうね」
「アレクセイ、今度は何を企んでるんだろう」
「アレクセイが何を企んでるのかなんて関係ないわ」
「ああ、オレ達はエステルを助けるだけだ」
「うん。このまま接近するのは危険だから近くに降りて行った方が良いよ」
63.空悋気
「アレクセイ!」
神殿に着くとアレクセイと親衛隊の姿が見え、そして結界の中に閉じ込められたエステルの姿があった
オレは直ぐに剣を抜いて、手に持った
「イエガーめ。雑魚の始末も出来ぬ程腑抜けたか」
「エステルを返せ!」
「エステル、目を覚まして! エステル!」
「よかろう」
そう言うとアレクセイはオレ達の方にエステルを向かせ、手に持っていた聖核でエステルに衝撃みたいなものを与えた
「うあ! あ・・・あああ!!」
エステルは苦しそうに体の向きを変えようとしていると、突然エステルから光が放たれ、それはもろにオレ達に当たり、オレ達はその場に倒れた
「うっ!」「うわぁ!」「きゃ!」「くっ!」「ギャウ!」
「ユーリ! みんな! う・・・あ・・・」
「この通り、何の補助もなしに力を使えば姫の生命力が削られる。諸君も姫の事を思うならこれ以上邪魔をしない事だ。くくく・・・」
「く・・・そ・・・」
オレはそのまま意識を失ってしまった
「ユーリ! ・・・しょうがない・・・」
アスラは急いで元の姿に戻り、前方からやって来る親衛隊達を見て声を発した
「センキ!」
アスラがそう言うと隣に赤い髪のツインテールの女の子が姿を現した
「アレクセイの後を追って!」
「任せといて」
言うや異な、センキは姿を消してアレクセイの後を追った
アスラは左手をユーリ達がいる方に向けると、結界が出来た
「さてと・・・じゃあユーリ達が気が付くまでボクが相手したげるよ」
結界が出来るのを確認すると、アスラは親衛隊の相手を始めた
「相手は一人だ! 行けぇ!!」
数人掛かりで襲い掛かって来たがアスラは軽々とそれを交わし、素手で相手を気絶させていく
「一人だからって油断しない方が良いよ」
アスラの言葉を聞き、親衛隊は更に数を増やして襲い掛かって来るが結果は同じだった
「くそ、こいつは一体・・・」
リーダーらしき男がそう呟く声が聞こえた
先程からアスラは武器も術も一切使わず素手のみで戦っている
それも5人や10人位束になって襲いかかって来ているのに涼しい顔で軽々と交わし、傷一つない
30人程いた親衛隊ももう残りは指で数えられる程しか残っていない
すると後ろからまた鎧の音が聞こえだした
(・・・新手?)
アスラはそう思って振り返ると、それはフレンの副官のソディアとウィチル、そしてフレン隊だった
「そこまでだ! 大人しくしろ!!」
ソディアはそう言うと剣を構え、ウィチルも杖を構えた
「あれ? もしかして助っ人?」
「っ! 何者だ!」
見慣れない人物にソディアは警戒を強め、剣をアスラに向ける
「あーそっか。この姿見た事ないんだった、っね!」
アスラは後ろから襲って来た騎士にそのまま裏鉄を与えて、気絶させた
「助っ人で来て貰って悪いけどっ、もう少しで、終わるからっ、待っててくれない?」
ずっと後ろを向いているアスラ目掛けて親衛隊は襲い掛かるが、結果は先程と同じだった
「助っ人だと?」
「フレンに頼まれて来たんじゃないの?」
「隊長の事知ってる・・・?」
「貴様、何故隊長の事を」
「てえいやぁぁぁ!!」
アスラがソディアとウィチルと話していると後ろからリーダーらしき男が襲い掛かって来た
「っ! あぶな「ちょっと、話しの邪魔だよ」
アスラは小さく息を吐きそのまま体制を低くして男の鳩尾目掛けて拳を振り上げた
「ぐおっっ!!」
男はそれをもろにくらいそのまま倒れてしまった
「さてと、これで全員片付いたね」
アスラは片付けものが片付いた時のように手をパンパンとさせ、ユーリ達の方を見た
ソディア達は反射的に武器を構えた
「そう身構えなくても大丈夫だって。それよりこいつ等捕まえなくて良いの?」
「! 此処にいる親衛隊を捕らえろ!」
アスラは足下に転がっている親衛隊を指さして言うと、ソディアは部下達に指示を出すと、後ろにいた騎士達が辺りにいる親衛隊を捕らえだし、アスラの前にはソディアとウィチルだけが残った
「で、貴方は何処の何方なんです?」
「何度か会った事あるし、さっきも会ったんだけどね」
「何?」
「あーいや。それよりちょっとそこどいてくれない?」
アスラはそう言ってユーリ達の元へ歩いて行きだし、ソディアは剣をアスラに向けたまま少しだけ横に避ける
アスラはユーリ達の前に来ると左手をかざし、ユーリ達の前に張ってあった結界を解いた
「ユーリ、そろそろ起きて」
アスラはユーリの肩を揺さぶるとユーリはゆっくりと瞼を開いた
「う・・・? アスラ・・か?」
ユーリは体を起こしてアスラを見た後、その後ろにいるソディアとウィチルに目が止まる
「あんた、フレンの・・・何で此処に?」
「フレン隊長の命令です。ヘラクレスの動きを知って僕達を向かわせたんです。隊長のご厚意に感謝して欲しいですね」
「・・・親衛隊倒したのボクなんだけどな」
ぼそりと呟いたアスラの言葉に苦笑してユーリは言葉を続ける
「ったく、フレンの奴・・・余計なお世話だっつっとけ」
「隊長はあれから寸刻を惜しんで奔走している。それなのに貴様のザマは何だ。散々大口叩いたくせに」
「お前の隊長と違ってこっちはデキが悪いんだよ。一人を除いてな」
そう言ってユーリはちらりとアスラを見るとアスラはカロル達に声を掛け起こしていた
ウィチルはその一人が誰の事か分かりユーリに疑問を振る
「あの人、貴方方の知り合いなんですか?」
「お前等も何度か会ってるはずだけどな」
「・・・何故、お前なんだ」
「?」
ユーリがウィチルと話していると、急にソディアが先程までと違う声音を発し、ユーリ達はソディアを見た
「何故お前みたいな奴がフレン隊長の友人なんだ! 隊長は私達騎士団の憧れだ。あれこそ帝国騎士の鑑だ。なのに!」
ソディアはそこで少し悲しそうな顔をして言葉を続ける
「お前と一緒だと隊長は隊長でなくなってしまう。今回の事だって・・・」
「それってさ、リアとセイも含まれてたりするの?」
急に振られソディアはユーリからアスラへと視線を向ける
「・・・確かにあの二人といる時の隊長も隊長ではない。けど、お前といる時の方がもっと隊長が隊長ではないんだ!!」
アスラと話すとソディアは直ぐにユーリへと視線を戻す
「くだらねえ。そんな話しならそのリンゴ頭とでもすりゃ良いだろ。オレたちゃあんたの愚痴に付き合ってる暇は無いんだよ」
「り、リンゴ頭ぁ!」
「貴様!!」
「はいはい、そこまで!」
険悪なムードが漂い始めようとしているとアスラが手をパンパンと叩いてユーリとソディアの間に割って入った
「今はお互いにやらなくちゃいけない事があるでしょ。言い争いはやめてくれない?」
「そうね、アスラの言う通りよ」
アスラとジュディスの言葉を聞くとソディアは剣から手を引いて静かに口を開く
「・・・これだけは言っておく。ユーリ・ローウェル、お前は・・・お前の存在は隊長の為にならない!」
ソディアはキッとユーリを睨み付けてそう言うとそのまま出口へと向かって行った
「激しい人ね」
ジュディスが立ち去って行くソディアを見ていると咳払いが聞こえ、前を見るとウィチルはユーリ達を見て口を開いた
「ええと、最後にフレン隊長から伝言です」
「頼んだ」
ウィチルはそう静かに告げ、少し焦った感じで言葉を続ける
「こ、これで僕等の任務は果たしましたからね。後は勝手にして下さい」
「小隊、撤収するぞ! 急いで本隊に戻る」
その言葉を聞きウィチルは走ってソディアの元に行った
「・・・やっと静かになった感じだね」
「ホント。で、何でアスラは元の姿に戻ってんの?」
「あーそれは」
「ったぁ~~」
アスラが説明しようとしているとカロルがまだ痛む所を抑えて座り込んだ
「その前に回復させなきゃだね。ミズハ」
「はい」
アスラの声に応えるように隣に緑のロングヘアーの女の子が現れた
「この子も式神?」
「はい、ミズハと言います。今から皆さんの傷の手当てをしますからじっとしていて下さい」
ミズハはペコリとお辞儀をした後、直ぐに傷の手当てを始めた
ユーリ達の足下に大きな円陣が広がり優しい光と風がユーリ達を包み傷を癒していった
「これで終わりです」
「凄い、あっという間に終わっちゃった」
ユーリ達はさっきまであった傷や痛みがあっという間になくなった事に驚いていた
「わたしなんてまだまだ未熟者ですよ」
「これで!?」
カロルの驚きにミズハが遠慮がちに言うとカロルとリタが驚いていた
「とりあえず、みんなもう大丈夫だな」
「ええ」「ワン!」
「ミズハ、だっけ? 傷癒してくれてサンキュ」
「いえ。それより皆さん、気を付けて下さいね」
「ああ」
「アスラも気を付けてね」
「分かってるよ」
アスラの返事を聞くとミズハは一礼して姿を消した
「さてと、じゃあアレクセイを追おう。急がないとな」
「ええ。あの調子で力を使わされたら、あの子もエアルの乱れも手遅れになってしまうわ」
「あいつ・・・エステルを道具みたいに・・・! 許せない!」
「行こう!」
体力も回復し決意を目に灯したユーリ達は神殿の中へと足を踏み入れた
続く
あとがき
まーたプロットと違う仕上がりになったぞぉ~(笑)
まあユーリ視点で書いてるから仕方ないけど(笑)
とりあえず、今回は神殿に入る前のお話で、アスラの見せ場でしたね
つか、流石アスラ、無傷で30人近くいた親衛隊をあっという間に倒すとは
今回は更にセンキとミズハと言う女の子の神将二人出て来ましたね
まあセンキはそんなに出番なかったけど、アレクセイの後を追ってるから次回登場します
空悋気…勝手に嫉妬すること。
2009.08.03
「ヘラクレス・・・! アレクセイが呼び寄せたのか」
ヒピオニア大陸にあるバクティオン神殿と思われる遺跡の近くに来るとヘラクレスの姿がオレ達の目に入った
そしてヘラクレスから無数の光が放たれ空を飛び回っている馬のような魔物を狙い撃ちしていた
「・・・あれはアスタル!」
「アスタル?」
「始祖の隷長、アスタルの事よ」
アスタルに目を戻すと、遺跡の奥にある山の峰辺りに空いている穴の中に逃げ込んだ
「アレクセイはまだ聖核を狙っているのね」
「逃がされたように見えたけど」
「ああ。あの遺跡に追い込まれたみたいだった」
「どうやらあの遺跡がバクティオンで間違いなさそうね」
「アレクセイ、今度は何を企んでるんだろう」
「アレクセイが何を企んでるのかなんて関係ないわ」
「ああ、オレ達はエステルを助けるだけだ」
「うん。このまま接近するのは危険だから近くに降りて行った方が良いよ」
63.空悋気
「アレクセイ!」
神殿に着くとアレクセイと親衛隊の姿が見え、そして結界の中に閉じ込められたエステルの姿があった
オレは直ぐに剣を抜いて、手に持った
「イエガーめ。雑魚の始末も出来ぬ程腑抜けたか」
「エステルを返せ!」
「エステル、目を覚まして! エステル!」
「よかろう」
そう言うとアレクセイはオレ達の方にエステルを向かせ、手に持っていた聖核でエステルに衝撃みたいなものを与えた
「うあ! あ・・・あああ!!」
エステルは苦しそうに体の向きを変えようとしていると、突然エステルから光が放たれ、それはもろにオレ達に当たり、オレ達はその場に倒れた
「うっ!」「うわぁ!」「きゃ!」「くっ!」「ギャウ!」
「ユーリ! みんな! う・・・あ・・・」
「この通り、何の補助もなしに力を使えば姫の生命力が削られる。諸君も姫の事を思うならこれ以上邪魔をしない事だ。くくく・・・」
「く・・・そ・・・」
オレはそのまま意識を失ってしまった
「ユーリ! ・・・しょうがない・・・」
アスラは急いで元の姿に戻り、前方からやって来る親衛隊達を見て声を発した
「センキ!」
アスラがそう言うと隣に赤い髪のツインテールの女の子が姿を現した
「アレクセイの後を追って!」
「任せといて」
言うや異な、センキは姿を消してアレクセイの後を追った
アスラは左手をユーリ達がいる方に向けると、結界が出来た
「さてと・・・じゃあユーリ達が気が付くまでボクが相手したげるよ」
結界が出来るのを確認すると、アスラは親衛隊の相手を始めた
「相手は一人だ! 行けぇ!!」
数人掛かりで襲い掛かって来たがアスラは軽々とそれを交わし、素手で相手を気絶させていく
「一人だからって油断しない方が良いよ」
アスラの言葉を聞き、親衛隊は更に数を増やして襲い掛かって来るが結果は同じだった
「くそ、こいつは一体・・・」
リーダーらしき男がそう呟く声が聞こえた
先程からアスラは武器も術も一切使わず素手のみで戦っている
それも5人や10人位束になって襲いかかって来ているのに涼しい顔で軽々と交わし、傷一つない
30人程いた親衛隊ももう残りは指で数えられる程しか残っていない
すると後ろからまた鎧の音が聞こえだした
(・・・新手?)
アスラはそう思って振り返ると、それはフレンの副官のソディアとウィチル、そしてフレン隊だった
「そこまでだ! 大人しくしろ!!」
ソディアはそう言うと剣を構え、ウィチルも杖を構えた
「あれ? もしかして助っ人?」
「っ! 何者だ!」
見慣れない人物にソディアは警戒を強め、剣をアスラに向ける
「あーそっか。この姿見た事ないんだった、っね!」
アスラは後ろから襲って来た騎士にそのまま裏鉄を与えて、気絶させた
「助っ人で来て貰って悪いけどっ、もう少しで、終わるからっ、待っててくれない?」
ずっと後ろを向いているアスラ目掛けて親衛隊は襲い掛かるが、結果は先程と同じだった
「助っ人だと?」
「フレンに頼まれて来たんじゃないの?」
「隊長の事知ってる・・・?」
「貴様、何故隊長の事を」
「てえいやぁぁぁ!!」
アスラがソディアとウィチルと話していると後ろからリーダーらしき男が襲い掛かって来た
「っ! あぶな「ちょっと、話しの邪魔だよ」
アスラは小さく息を吐きそのまま体制を低くして男の鳩尾目掛けて拳を振り上げた
「ぐおっっ!!」
男はそれをもろにくらいそのまま倒れてしまった
「さてと、これで全員片付いたね」
アスラは片付けものが片付いた時のように手をパンパンとさせ、ユーリ達の方を見た
ソディア達は反射的に武器を構えた
「そう身構えなくても大丈夫だって。それよりこいつ等捕まえなくて良いの?」
「! 此処にいる親衛隊を捕らえろ!」
アスラは足下に転がっている親衛隊を指さして言うと、ソディアは部下達に指示を出すと、後ろにいた騎士達が辺りにいる親衛隊を捕らえだし、アスラの前にはソディアとウィチルだけが残った
「で、貴方は何処の何方なんです?」
「何度か会った事あるし、さっきも会ったんだけどね」
「何?」
「あーいや。それよりちょっとそこどいてくれない?」
アスラはそう言ってユーリ達の元へ歩いて行きだし、ソディアは剣をアスラに向けたまま少しだけ横に避ける
アスラはユーリ達の前に来ると左手をかざし、ユーリ達の前に張ってあった結界を解いた
「ユーリ、そろそろ起きて」
アスラはユーリの肩を揺さぶるとユーリはゆっくりと瞼を開いた
「う・・・? アスラ・・か?」
ユーリは体を起こしてアスラを見た後、その後ろにいるソディアとウィチルに目が止まる
「あんた、フレンの・・・何で此処に?」
「フレン隊長の命令です。ヘラクレスの動きを知って僕達を向かわせたんです。隊長のご厚意に感謝して欲しいですね」
「・・・親衛隊倒したのボクなんだけどな」
ぼそりと呟いたアスラの言葉に苦笑してユーリは言葉を続ける
「ったく、フレンの奴・・・余計なお世話だっつっとけ」
「隊長はあれから寸刻を惜しんで奔走している。それなのに貴様のザマは何だ。散々大口叩いたくせに」
「お前の隊長と違ってこっちはデキが悪いんだよ。一人を除いてな」
そう言ってユーリはちらりとアスラを見るとアスラはカロル達に声を掛け起こしていた
ウィチルはその一人が誰の事か分かりユーリに疑問を振る
「あの人、貴方方の知り合いなんですか?」
「お前等も何度か会ってるはずだけどな」
「・・・何故、お前なんだ」
「?」
ユーリがウィチルと話していると、急にソディアが先程までと違う声音を発し、ユーリ達はソディアを見た
「何故お前みたいな奴がフレン隊長の友人なんだ! 隊長は私達騎士団の憧れだ。あれこそ帝国騎士の鑑だ。なのに!」
ソディアはそこで少し悲しそうな顔をして言葉を続ける
「お前と一緒だと隊長は隊長でなくなってしまう。今回の事だって・・・」
「それってさ、リアとセイも含まれてたりするの?」
急に振られソディアはユーリからアスラへと視線を向ける
「・・・確かにあの二人といる時の隊長も隊長ではない。けど、お前といる時の方がもっと隊長が隊長ではないんだ!!」
アスラと話すとソディアは直ぐにユーリへと視線を戻す
「くだらねえ。そんな話しならそのリンゴ頭とでもすりゃ良いだろ。オレたちゃあんたの愚痴に付き合ってる暇は無いんだよ」
「り、リンゴ頭ぁ!」
「貴様!!」
「はいはい、そこまで!」
険悪なムードが漂い始めようとしているとアスラが手をパンパンと叩いてユーリとソディアの間に割って入った
「今はお互いにやらなくちゃいけない事があるでしょ。言い争いはやめてくれない?」
「そうね、アスラの言う通りよ」
アスラとジュディスの言葉を聞くとソディアは剣から手を引いて静かに口を開く
「・・・これだけは言っておく。ユーリ・ローウェル、お前は・・・お前の存在は隊長の為にならない!」
ソディアはキッとユーリを睨み付けてそう言うとそのまま出口へと向かって行った
「激しい人ね」
ジュディスが立ち去って行くソディアを見ていると咳払いが聞こえ、前を見るとウィチルはユーリ達を見て口を開いた
「ええと、最後にフレン隊長から伝言です」
「頼んだ」
ウィチルはそう静かに告げ、少し焦った感じで言葉を続ける
「こ、これで僕等の任務は果たしましたからね。後は勝手にして下さい」
「小隊、撤収するぞ! 急いで本隊に戻る」
その言葉を聞きウィチルは走ってソディアの元に行った
「・・・やっと静かになった感じだね」
「ホント。で、何でアスラは元の姿に戻ってんの?」
「あーそれは」
「ったぁ~~」
アスラが説明しようとしているとカロルがまだ痛む所を抑えて座り込んだ
「その前に回復させなきゃだね。ミズハ」
「はい」
アスラの声に応えるように隣に緑のロングヘアーの女の子が現れた
「この子も式神?」
「はい、ミズハと言います。今から皆さんの傷の手当てをしますからじっとしていて下さい」
ミズハはペコリとお辞儀をした後、直ぐに傷の手当てを始めた
ユーリ達の足下に大きな円陣が広がり優しい光と風がユーリ達を包み傷を癒していった
「これで終わりです」
「凄い、あっという間に終わっちゃった」
ユーリ達はさっきまであった傷や痛みがあっという間になくなった事に驚いていた
「わたしなんてまだまだ未熟者ですよ」
「これで!?」
カロルの驚きにミズハが遠慮がちに言うとカロルとリタが驚いていた
「とりあえず、みんなもう大丈夫だな」
「ええ」「ワン!」
「ミズハ、だっけ? 傷癒してくれてサンキュ」
「いえ。それより皆さん、気を付けて下さいね」
「ああ」
「アスラも気を付けてね」
「分かってるよ」
アスラの返事を聞くとミズハは一礼して姿を消した
「さてと、じゃあアレクセイを追おう。急がないとな」
「ええ。あの調子で力を使わされたら、あの子もエアルの乱れも手遅れになってしまうわ」
「あいつ・・・エステルを道具みたいに・・・! 許せない!」
「行こう!」
体力も回復し決意を目に灯したユーリ達は神殿の中へと足を踏み入れた
続く
あとがき
まーたプロットと違う仕上がりになったぞぉ~(笑)
まあユーリ視点で書いてるから仕方ないけど(笑)
とりあえず、今回は神殿に入る前のお話で、アスラの見せ場でしたね
つか、流石アスラ、無傷で30人近くいた親衛隊をあっという間に倒すとは
今回は更にセンキとミズハと言う女の子の神将二人出て来ましたね
まあセンキはそんなに出番なかったけど、アレクセイの後を追ってるから次回登場します
空悋気…勝手に嫉妬すること。
2009.08.03