満月の子編
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頂上へと辿り着いた私達は各々別の場所に行き、辺りの様子を伺った
「此処がクリティア族の街・・・?」
「街と言うより、街の跡ね」
辿り着いた場所は元、クリティア族が住んでいた街
リタの言う通り、此処は完全に街の跡だった
辺りには民家だったと思われるものが幾つもあったが、屋根も壁も粉々に砕けていて、街の外にも破片が散らばっている
街の少し奥には湖があるが、その近くの山は先程同様削られていた
「ジュディスは此処に何しに来たんだろう・・・?」
「故郷を懐かしんで・・・って訳でもなさそうだな」
ユーリ達が辺りを見回していると、レイヴンに近くにいたラピードが突然呻りだした
「グルルル」
その様子に気が付き、振り返ると同時に二人の男が飛ばされてきてドサッと音を立て、ユーリとカロルの前に倒れた
「魔狩りの剣!」
カロルがいち早く男達の正体に気付き声を上げていると、騒ぎを聞きつけたエステルとリタがこちらに戻って来ていたがエステルが一点を見て驚いて声を出した
「ジュディス!」
「貴方達・・・」
エステルが見ている方を見ると、壊れた民家の横から槍を持ったジュディスが出て来た
お互いに驚いていると魔狩りの剣達は起き上がって腹ただしい顔をしてジュディスを見た
「くそっ!」
「ティソンさんとナンに知らせろ!」
「お前等! うちのモンに手ぇ出すんじゃねぇよ」
ユーリの言葉に驚いてジュディスはユーリを見た
「掟に反しているならケジメはオレ等でつける。引っ込んでな!」
「我々は奥に行って魔物を狩りたいだけだ!」
「邪魔をするな!」
「邪魔してんのはてめぇ等だっての!」
その声にみんな反応して声の主を見ると私達と反対側、山道の方に兄さんがいた
「セイ!」
「みんな手出すなよ。今のあいつ、本気 だからな」
「え?」
その言葉に皆ユーリを見ると、そこにはいつもと雰囲気が違うユーリの姿があった
「消えとけ。ホントに一戦やらかすか?」
ユーリの雰囲気に圧倒され、魔狩りの剣達は逃げて行った
「ジュディス・・・セイ・・・」
「追って来たのね、私を」
「ああ。ギルドのケジメをつける為にな」
「ジュディス。全部話して欲しいんだよ」
「何故魔導器を壊したのか。聖核の事、始祖の隷長の事、フェローとの関係。知ってること全部ね。リア、セイ、アスラ! 勿論あんた達もよ!」
リタはジュディスを見た後、睨むようにして私と兄さんとアスラを見た
「事と次第によっちゃジュディやリア達でも許す訳にはいかない」
その言葉にエステル達は驚きユーリを見る
「「「・・・・」」」
「不義には罰を・・・だったかしらね」
ジュディスは私達に視線を送り、私達も顔を見合わせ、直ぐに頷いた
「・・・そうね。それが良い事なのか正直解らないけど。あなた達はもう此処まで来てしまったのだから。来て」
ジュディスはそう言って歩き出し、エステル、リタ、レイヴン、兄さんと続いたが、ユーリとカロルとラピードが着いてきていない事に気が付き私は足を止めユーリ達を見た
「ユーリ・・・ジュディスやリア達でも許さないって・・・」
「・・・ドンの覚悟を見てまだまだ甘かった事を思い知らされた。討たなきゃいけないヤツは討つ。例えそれが仲間でも始祖の隷長でも、友でも」
「フレンやフェローでもって事?」
「・・・ああ。それがオレの選んだ道だ」
「でもリアは・・・」
「・・・・」
カロルの言葉にユーリは少しだけ黙ってしまう
そしてラピードと一緒に静かに歩き出し、こちらに向かって来るのが見え私はユーリが追いつく前に踵を返してジュディス達の後を追った
55.真実を知る者達
街の後から少し離れた坂道を登りきると、広くなっている所に着いた
そこには先に登ったジュディス、エステル、リタ、レイヴン、兄さんがいて私の後ろから遅れてユーリ、ラピード、カロルが登って来た
全員いる事を確認すると私と兄さんとアスラはジュディスの近くに移動し、ジュディスはユーリ達に向き合った
「此処が人魔戦争の戦場だった事はもう知ってる?」
「ああ、アスラとおっさんに聞いた」
「人魔戦争・・・あの戦争の発端はある魔導器だったの」
「なんですって!」
「その魔導器は発掘されたものじゃなく、テムザの街で開発された新しい技術で作られたもの。ヘルメス式魔導器」
「ヘルメス式・・・」
「初めて聞いたわ・・・それに新しく作られたって・・・」
「ヘルメス式魔導器は従来のものよりもエアルを効率良く活動に変換して魔導器技術になる・・・はずだった」
「何か問題が遭ったんだな」
「ヘルメス式の術式を施された魔導器はエアルを大量に消費するの」
「消費されたエアルを補う為に各地のエアルクレーネは活動を強め、異常にエアルを放出し始めた」
「そんなの人間どころか全ての生き物が生きていけなくなるわ!」
「ケーブ・モックやカドスの喉笛で見たアレか。そりゃやばいわな」
「人よりも先にヘルメス式魔導器の危険性に気付いた始祖の隷長はヘルメス式魔導器を破壊し始めた」
「それがやがて大きな戦いとなり人魔戦争へと発展した・・・」
「じゃあ、始祖の隷長は世界の為に人と戦ったの?!」
「どうして始祖の隷長は人に伝えなかったんです?! その魔導器は危険だって!」
「互いに有無を言わずに滅ぼしゃ良いってなもんよ。元々相容れない者同士、そこまでする義理は無かった。そんなとこかねぇ。あるいは何か他にも訳があったのか。だけど、この話がジュディスちゃんやリアちゃんやセイに何の関係があるのよ」
ユーリ達は一斉に私達を見ると、ジュディスが静かに告げる
「テムザの街が戦争で滅んで、ヘルメス式魔導器の技術は失われたはずだった・・・」
「まさか! そのヘルメス式がまだ稼働してる?!」
「ああ、俺達も何度か見てるはずだぜ」
「ラゴウの館、エフミドの丘、ガスファロスト。そして・・・」
「フィエルティア号の駆動魔導器か・・・」
「それじゃあ、ジュディスは始祖の隷長に替わって魔導器を壊して・・・」
「でも、リアとセイは? 壊したりしてないよね?」
カロルは疑問符を出して私と兄さんとアスラを見るとユーリ達も見た
「私達はこの事実や始祖の隷長の存在を知ってるだけ」
「それも情報で?」
「いや、昔ジュディスから聞いた事だ」
「昔って、ジュディスと知り合いだったんですか?」
「ええ。さっき此処に来た事あるって言ったでしょ。その時にジュディスと会って」
「それからも何度か会ってお互いの事話してたからね」
「だからその事実を俺達は知ってたんだよ」
「なら! 言えば良かったじゃない!」
ずっと黙っていたリタが急に叫び、私達はリタを見るとリタは私、アスラ、兄さん、ジュディスを睨み付けた
「どうして話さなかったのよ! あんた達で世界を救ってるつもり? バカじゃないの?!」
「「「「・・・・」」」」
その言葉にジュディスは少し寂しそうな顔をして黙ってしまい、私も兄さんもアスラも黙ってしまう
暫く沈黙が流れる・・・
誰一人言葉を発さずいると、突然岩陰が光り出し岩陰を見るとその岩陰には結界が貼ってあった
「な、何?」
「バウル!」
(セイ、リア! 魔狩りの剣が来るぞ!)
「フキ!?」
「みんな気を付けろ!」
その途端、ティソンとナンが私達の前に現れ私達は一斉に結界の前に移動した
「ナン!」
「どうやら獲物はそこにいるようだな」
「行かせないわ」
「人でありながら魔物を守るなんて理解出来ない!」
「手下共に聞かなかったか? うちのモンに手ぇ出すなっつったろ?」
「い、いくらナン達でもギルドの仲間を傷つけるのは許さない!」
「まだ話の途中なのよ! 邪魔すんな!」
「熱いのは専門外なんだがなぁ」
「貴方達・・・」
ユーリ達の言葉にジュディスは少し驚いてユーリ達を見る
「魔狩りの剣が何故人に危害を加えるんですか!」
「魔物に与するものを、人とは呼ばんだろう」
「カロル、魔狩りの剣の理念も忘れたの? 邪魔しないで」
「魔物は悪・・・。魔狩りの剣はその悪を狩る者・・・。でも! 始祖の隷長は悪じゃない! 世界の為に・・・」
「雇われて見境無くなってるんだろ。狙いは聖核のクセにカッコつけてんじゃねぇよ」
「ふん。話にならんなぁ。どうしても邪魔立てするのなら・・・」
「仕方ありませんね」
皆、一斉に武器を構え、私も剣を構えようとしているとジュディスが止める
「リア、セイ、アスラ。貴方達はバウルの方へ行って」
「でも・・・」
「あの結界を通り抜けられるのは言霊使いである貴方達だけでしょ?」
ジュディスにニッコリと良い笑顔で言われ、私は剣を鞘に収めた
「解った・・・じゃあ先に行ってるね」
「あんま無理すんなよ!」
「ええ」
「行かせない!」
「お前等の相手はオレ達だ!」
ユーリの言葉を合図に私達は一斉に行動した
結界の中に入るとバウルがとても苦しそうに横たわっていた
「・・・バウル」
「成長しようとしているんだね」
バウルは今新たな始祖の隷長になる為に成長しようとしている最中だった
「ああ、もう少しだ」
兄さんがフキと一緒に先に此処に来たのは、バウルの成長期間が今だという事を知っていて、更に魔狩りの剣がバウルを狙っているという情報が入り、ジュディスの加勢に来ていたからだった
「みんな外で頑張ってる。だからお前も頑張れ」
「バウル、頑張って・・・」
私と兄さんはバウルに声を掛けじっと見守っていた
暫くすると外が静かになり、とジュディスがユーリ達を連れて結界の中に入って来た
「・・・みんな」
エステルが怪我をしているバウルに治癒術を掛けようとするがジュディスがそれを止める
「貴方にとってわたしの力は毒なんですよね・・・」
「傷を癒せるってのがエステルの力じゃないぜ」
「え?」
「ベリウスの言葉・・・覚えてない?」
ユーリとリタにそう言われエステルはベリウスの言葉を思い出し小さく呟いた
「慈しむ心・・・」
「バウルにも伝わっているわ。きっと・・・。貴女の気持ち」
「ええ」
ジュディスの言葉に私も頷くとエステルは私とジュディスを交互に見ると、突然バウルが一声鳴き、眩い光が放たれた
そしてその光が消えた瞬間、バウルは宙に浮かんでいた
バウルの姿は前より更に大きくなっていて見た感じ大きなクジラのような姿だった
「おほー」
「凄い・・・」
「頑張ったわね。バウル」
「新たな始祖の隷長の誕生、だな」
「うん」
「どうやら相棒はもう大丈夫のようだな」
「ええ。ありがとう、バウルを守ってくれて・・・私だけだときっと守りきれなかったわ。セイもフキも駆け着けて来てくれてありがとう」
「仲間だもん。当たり前だよ!」
「ああ」
カロルの言葉に兄さんもフキも笑って同意しているとバウルが私達の近くに降りて来た
私は優しくバウルを撫でてあげているとエステルもバウルに近付いてそっと触れると、バウルは瞬きをした
「言ったでしょう? ちゃんと伝わってるって」
エステルはそのままバウルを撫でているとバウルは気持ちよさそうに目を細めた
「ふふ」
バウルの様子を見てエステルは嬉しそうに笑い私達も微笑んでいるとジュディスが真剣な表情をしてエステルを見た
「フェローにも伝わるかもしれない。会う? フェローに」
「決めるのはエステルだ」
ジュディスとユーリの言葉にエステルに視線が集まる
エステルは一呼吸置いて真剣な表情をして私達を見た
「・・・会います。それがわたしの旅の目的だから」
「良いの? 殺されちゃうかもしれないのよ」
「はい。わたしも覚悟を決めなきゃ・・・」
「そろそろ魔狩り剣の増援が来そうよ。ややこしくなる前に移動した方が良いんじゃない?」
レイヴンはちらりと後ろを見て言うと微かに人の気配が近づいてきていた
「でも下りる道一つしかないよ。鉢合わせちゃう」
「乗って。とりあえずフィエルティア号まで飛ぶわ。話の続きはそこで、ね」
そう言ってジュディスはバウルの背に乗り、私と兄さんもその後に続き、ユーリ達は顔を見合わせた後、バウルの背中に乗った
私達が背中に乗ったのを確認すると、バウルはゆっくりと浮上してフィエルティア号へと向かいだした
続く
あとがき
ようやく真実を知る事が出来ましたね
けど、まだ謎は多いままですがね・・・
それは次回解る事かな?
にしても、今回は冒頭のユーリがめちゃカッコイイです
でもリアちゃん達の事許さないって言ってたのが・・・
カロルも心配してましたけど、どうなるんでしょうね
因みに、次で満月の子編が終わります
頑張って書くぞ!
では!!
下書き:2008.12.18
完成:2009.07.23
「此処がクリティア族の街・・・?」
「街と言うより、街の跡ね」
辿り着いた場所は元、クリティア族が住んでいた街
リタの言う通り、此処は完全に街の跡だった
辺りには民家だったと思われるものが幾つもあったが、屋根も壁も粉々に砕けていて、街の外にも破片が散らばっている
街の少し奥には湖があるが、その近くの山は先程同様削られていた
「ジュディスは此処に何しに来たんだろう・・・?」
「故郷を懐かしんで・・・って訳でもなさそうだな」
ユーリ達が辺りを見回していると、レイヴンに近くにいたラピードが突然呻りだした
「グルルル」
その様子に気が付き、振り返ると同時に二人の男が飛ばされてきてドサッと音を立て、ユーリとカロルの前に倒れた
「魔狩りの剣!」
カロルがいち早く男達の正体に気付き声を上げていると、騒ぎを聞きつけたエステルとリタがこちらに戻って来ていたがエステルが一点を見て驚いて声を出した
「ジュディス!」
「貴方達・・・」
エステルが見ている方を見ると、壊れた民家の横から槍を持ったジュディスが出て来た
お互いに驚いていると魔狩りの剣達は起き上がって腹ただしい顔をしてジュディスを見た
「くそっ!」
「ティソンさんとナンに知らせろ!」
「お前等! うちのモンに手ぇ出すんじゃねぇよ」
ユーリの言葉に驚いてジュディスはユーリを見た
「掟に反しているならケジメはオレ等でつける。引っ込んでな!」
「我々は奥に行って魔物を狩りたいだけだ!」
「邪魔をするな!」
「邪魔してんのはてめぇ等だっての!」
その声にみんな反応して声の主を見ると私達と反対側、山道の方に兄さんがいた
「セイ!」
「みんな手出すなよ。今のあいつ、
「え?」
その言葉に皆ユーリを見ると、そこにはいつもと雰囲気が違うユーリの姿があった
「消えとけ。ホントに一戦やらかすか?」
ユーリの雰囲気に圧倒され、魔狩りの剣達は逃げて行った
「ジュディス・・・セイ・・・」
「追って来たのね、私を」
「ああ。ギルドのケジメをつける為にな」
「ジュディス。全部話して欲しいんだよ」
「何故魔導器を壊したのか。聖核の事、始祖の隷長の事、フェローとの関係。知ってること全部ね。リア、セイ、アスラ! 勿論あんた達もよ!」
リタはジュディスを見た後、睨むようにして私と兄さんとアスラを見た
「事と次第によっちゃジュディやリア達でも許す訳にはいかない」
その言葉にエステル達は驚きユーリを見る
「「「・・・・」」」
「不義には罰を・・・だったかしらね」
ジュディスは私達に視線を送り、私達も顔を見合わせ、直ぐに頷いた
「・・・そうね。それが良い事なのか正直解らないけど。あなた達はもう此処まで来てしまったのだから。来て」
ジュディスはそう言って歩き出し、エステル、リタ、レイヴン、兄さんと続いたが、ユーリとカロルとラピードが着いてきていない事に気が付き私は足を止めユーリ達を見た
「ユーリ・・・ジュディスやリア達でも許さないって・・・」
「・・・ドンの覚悟を見てまだまだ甘かった事を思い知らされた。討たなきゃいけないヤツは討つ。例えそれが仲間でも始祖の隷長でも、友でも」
「フレンやフェローでもって事?」
「・・・ああ。それがオレの選んだ道だ」
「でもリアは・・・」
「・・・・」
カロルの言葉にユーリは少しだけ黙ってしまう
そしてラピードと一緒に静かに歩き出し、こちらに向かって来るのが見え私はユーリが追いつく前に踵を返してジュディス達の後を追った
55.真実を知る者達
街の後から少し離れた坂道を登りきると、広くなっている所に着いた
そこには先に登ったジュディス、エステル、リタ、レイヴン、兄さんがいて私の後ろから遅れてユーリ、ラピード、カロルが登って来た
全員いる事を確認すると私と兄さんとアスラはジュディスの近くに移動し、ジュディスはユーリ達に向き合った
「此処が人魔戦争の戦場だった事はもう知ってる?」
「ああ、アスラとおっさんに聞いた」
「人魔戦争・・・あの戦争の発端はある魔導器だったの」
「なんですって!」
「その魔導器は発掘されたものじゃなく、テムザの街で開発された新しい技術で作られたもの。ヘルメス式魔導器」
「ヘルメス式・・・」
「初めて聞いたわ・・・それに新しく作られたって・・・」
「ヘルメス式魔導器は従来のものよりもエアルを効率良く活動に変換して魔導器技術になる・・・はずだった」
「何か問題が遭ったんだな」
「ヘルメス式の術式を施された魔導器はエアルを大量に消費するの」
「消費されたエアルを補う為に各地のエアルクレーネは活動を強め、異常にエアルを放出し始めた」
「そんなの人間どころか全ての生き物が生きていけなくなるわ!」
「ケーブ・モックやカドスの喉笛で見たアレか。そりゃやばいわな」
「人よりも先にヘルメス式魔導器の危険性に気付いた始祖の隷長はヘルメス式魔導器を破壊し始めた」
「それがやがて大きな戦いとなり人魔戦争へと発展した・・・」
「じゃあ、始祖の隷長は世界の為に人と戦ったの?!」
「どうして始祖の隷長は人に伝えなかったんです?! その魔導器は危険だって!」
「互いに有無を言わずに滅ぼしゃ良いってなもんよ。元々相容れない者同士、そこまでする義理は無かった。そんなとこかねぇ。あるいは何か他にも訳があったのか。だけど、この話がジュディスちゃんやリアちゃんやセイに何の関係があるのよ」
ユーリ達は一斉に私達を見ると、ジュディスが静かに告げる
「テムザの街が戦争で滅んで、ヘルメス式魔導器の技術は失われたはずだった・・・」
「まさか! そのヘルメス式がまだ稼働してる?!」
「ああ、俺達も何度か見てるはずだぜ」
「ラゴウの館、エフミドの丘、ガスファロスト。そして・・・」
「フィエルティア号の駆動魔導器か・・・」
「それじゃあ、ジュディスは始祖の隷長に替わって魔導器を壊して・・・」
「でも、リアとセイは? 壊したりしてないよね?」
カロルは疑問符を出して私と兄さんとアスラを見るとユーリ達も見た
「私達はこの事実や始祖の隷長の存在を知ってるだけ」
「それも情報で?」
「いや、昔ジュディスから聞いた事だ」
「昔って、ジュディスと知り合いだったんですか?」
「ええ。さっき此処に来た事あるって言ったでしょ。その時にジュディスと会って」
「それからも何度か会ってお互いの事話してたからね」
「だからその事実を俺達は知ってたんだよ」
「なら! 言えば良かったじゃない!」
ずっと黙っていたリタが急に叫び、私達はリタを見るとリタは私、アスラ、兄さん、ジュディスを睨み付けた
「どうして話さなかったのよ! あんた達で世界を救ってるつもり? バカじゃないの?!」
「「「「・・・・」」」」
その言葉にジュディスは少し寂しそうな顔をして黙ってしまい、私も兄さんもアスラも黙ってしまう
暫く沈黙が流れる・・・
誰一人言葉を発さずいると、突然岩陰が光り出し岩陰を見るとその岩陰には結界が貼ってあった
「な、何?」
「バウル!」
(セイ、リア! 魔狩りの剣が来るぞ!)
「フキ!?」
「みんな気を付けろ!」
その途端、ティソンとナンが私達の前に現れ私達は一斉に結界の前に移動した
「ナン!」
「どうやら獲物はそこにいるようだな」
「行かせないわ」
「人でありながら魔物を守るなんて理解出来ない!」
「手下共に聞かなかったか? うちのモンに手ぇ出すなっつったろ?」
「い、いくらナン達でもギルドの仲間を傷つけるのは許さない!」
「まだ話の途中なのよ! 邪魔すんな!」
「熱いのは専門外なんだがなぁ」
「貴方達・・・」
ユーリ達の言葉にジュディスは少し驚いてユーリ達を見る
「魔狩りの剣が何故人に危害を加えるんですか!」
「魔物に与するものを、人とは呼ばんだろう」
「カロル、魔狩りの剣の理念も忘れたの? 邪魔しないで」
「魔物は悪・・・。魔狩りの剣はその悪を狩る者・・・。でも! 始祖の隷長は悪じゃない! 世界の為に・・・」
「雇われて見境無くなってるんだろ。狙いは聖核のクセにカッコつけてんじゃねぇよ」
「ふん。話にならんなぁ。どうしても邪魔立てするのなら・・・」
「仕方ありませんね」
皆、一斉に武器を構え、私も剣を構えようとしているとジュディスが止める
「リア、セイ、アスラ。貴方達はバウルの方へ行って」
「でも・・・」
「あの結界を通り抜けられるのは言霊使いである貴方達だけでしょ?」
ジュディスにニッコリと良い笑顔で言われ、私は剣を鞘に収めた
「解った・・・じゃあ先に行ってるね」
「あんま無理すんなよ!」
「ええ」
「行かせない!」
「お前等の相手はオレ達だ!」
ユーリの言葉を合図に私達は一斉に行動した
結界の中に入るとバウルがとても苦しそうに横たわっていた
「・・・バウル」
「成長しようとしているんだね」
バウルは今新たな始祖の隷長になる為に成長しようとしている最中だった
「ああ、もう少しだ」
兄さんがフキと一緒に先に此処に来たのは、バウルの成長期間が今だという事を知っていて、更に魔狩りの剣がバウルを狙っているという情報が入り、ジュディスの加勢に来ていたからだった
「みんな外で頑張ってる。だからお前も頑張れ」
「バウル、頑張って・・・」
私と兄さんはバウルに声を掛けじっと見守っていた
暫くすると外が静かになり、とジュディスがユーリ達を連れて結界の中に入って来た
「・・・みんな」
エステルが怪我をしているバウルに治癒術を掛けようとするがジュディスがそれを止める
「貴方にとってわたしの力は毒なんですよね・・・」
「傷を癒せるってのがエステルの力じゃないぜ」
「え?」
「ベリウスの言葉・・・覚えてない?」
ユーリとリタにそう言われエステルはベリウスの言葉を思い出し小さく呟いた
「慈しむ心・・・」
「バウルにも伝わっているわ。きっと・・・。貴女の気持ち」
「ええ」
ジュディスの言葉に私も頷くとエステルは私とジュディスを交互に見ると、突然バウルが一声鳴き、眩い光が放たれた
そしてその光が消えた瞬間、バウルは宙に浮かんでいた
バウルの姿は前より更に大きくなっていて見た感じ大きなクジラのような姿だった
「おほー」
「凄い・・・」
「頑張ったわね。バウル」
「新たな始祖の隷長の誕生、だな」
「うん」
「どうやら相棒はもう大丈夫のようだな」
「ええ。ありがとう、バウルを守ってくれて・・・私だけだときっと守りきれなかったわ。セイもフキも駆け着けて来てくれてありがとう」
「仲間だもん。当たり前だよ!」
「ああ」
カロルの言葉に兄さんもフキも笑って同意しているとバウルが私達の近くに降りて来た
私は優しくバウルを撫でてあげているとエステルもバウルに近付いてそっと触れると、バウルは瞬きをした
「言ったでしょう? ちゃんと伝わってるって」
エステルはそのままバウルを撫でているとバウルは気持ちよさそうに目を細めた
「ふふ」
バウルの様子を見てエステルは嬉しそうに笑い私達も微笑んでいるとジュディスが真剣な表情をしてエステルを見た
「フェローにも伝わるかもしれない。会う? フェローに」
「決めるのはエステルだ」
ジュディスとユーリの言葉にエステルに視線が集まる
エステルは一呼吸置いて真剣な表情をして私達を見た
「・・・会います。それがわたしの旅の目的だから」
「良いの? 殺されちゃうかもしれないのよ」
「はい。わたしも覚悟を決めなきゃ・・・」
「そろそろ魔狩り剣の増援が来そうよ。ややこしくなる前に移動した方が良いんじゃない?」
レイヴンはちらりと後ろを見て言うと微かに人の気配が近づいてきていた
「でも下りる道一つしかないよ。鉢合わせちゃう」
「乗って。とりあえずフィエルティア号まで飛ぶわ。話の続きはそこで、ね」
そう言ってジュディスはバウルの背に乗り、私と兄さんもその後に続き、ユーリ達は顔を見合わせた後、バウルの背中に乗った
私達が背中に乗ったのを確認すると、バウルはゆっくりと浮上してフィエルティア号へと向かいだした
続く
あとがき
ようやく真実を知る事が出来ましたね
けど、まだ謎は多いままですがね・・・
それは次回解る事かな?
にしても、今回は冒頭のユーリがめちゃカッコイイです
でもリアちゃん達の事許さないって言ってたのが・・・
カロルも心配してましたけど、どうなるんでしょうね
因みに、次で満月の子編が終わります
頑張って書くぞ!
では!!
下書き:2008.12.18
完成:2009.07.23