満月の子編
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ダングレストを出た私達はフィエルティア号に乗ってカロルが来るのを待っていた
その間は誰一人言葉を発さず、ただじっと・・・
「待って~!!」
すると突然浜の方から男の子の声が聞こえ、私達は一斉に振り向くと、カロルが走って来て船に飛び乗って私達の前に降りた
「カロル!」
「・・・待って! はあ・・・はあ・・・はあ・・・はあ・・・ボクも一緒に行く・・・」
カロルは一息付き、ユーリの元へ向かって行き、真剣な表情をしてユーリを見た
「ドンの伝えたかった事、ちゃんと解ってないかもしれないけど・・・凛々の明星はボクの、ボク達のギルドだから・・・ボクも一緒に行きたいんだ!」
「カロル・・・」
「此処で逃げたら・・・仲間を放っておいたらもう戻れない気がする・・・だから! ボクも行く! 一緒に連れてって!」
「カロル先生が首領なんだ。一緒に行くのは当たり前だろ」
「ユーリ。ありがとう! でも、もう首領って言わないで」
「ん?」
「ボクは・・・まだ首領って言われるような事何もしてない・・・。ユーリにちゃんと首領って認めてもらえるまで首領って呼ばれて恥ずかしくなくなるまで、ボクは首領じゃなくて同じ凛々の明星の一員として頑張る!」
「・・・解った。カロル。頑張れよ」
「うん!」
「ほんとギルドって面倒。アツ過ぎ。バカっぽい」
「んむんむ、青春よのう」
「うわっ! お、おっさん・・・?!」
「若いって素晴らしいねぇ」
レイヴンはリタや私達の驚きを気にせず私達の前に来てそう告げるとユーリがレイヴンを見て言う
「おっさん、何してんだよ」
「えー、リアちゃんは良くて、おっさんは此処にいちゃだめなの?」
「だって、ドンが亡くなった後で大変って・・・」
「んー。色々と面倒だから逃げて来ちゃった」
「ドンに世話になったんでしょ。悲しくないの?」
「ああ、悲しくて悲しくて、喉が渇く位に泣いてもう一滴も涙は出ない」
「全然、そんな風には見えないけど」
レイヴンの泣きの演技にリタが突っ込んでいるとユーリが苦笑してレイヴンを見た
「流石のおっさんもドンの最後の言葉は無視出来ないって事だろ」
「ん、んな訳ないってーの。言っただろ、俺には重荷だって。あっちはあっちで、後に残った奴等がきっちりやってくれるって」
「ま、そう言う事にしておいてやるよ」
「ったく。最近の若人は怖いわ」
「じゃ、デズエール大陸に出発ですね」
「え? 何でデズエールなの?」
「良いカンしてんじゃないの。察しの通りテムザ山はコゴール砂漠の北にある。あそこにゃ、確かクリティア族の街があったしな」
「なんで、そんな事知ってるのよ」
「少年少女の倍以上生きてると人生、色々とあるのよ」
「なにそれ」
「ほれ、行くなら行こうや」
「コゴールの北って、船で回りこめるかな?」
「大丈夫よ、一カ所だけ船が着ける所があるから。少し歩きになっちゃうけど、そこからテムザ山に行けるわ」
「そう言う事らしい。じゃあ行くか」
「「「うん」」」「はい!」「ええ」「おう!」「ワン!」
54.人魔戦争跡地
「到着~。此処がテムザ山よ」
「案内したのリアでしょ・・・」
「言わせてくれても良いじゃないのよぉ~」
「ワン!」
テムザ山に到着した私達は入り口で足を止めるとラピードが何かに気付き一声吠え、地面を見ていた
そこには人の足跡と思われるものが幾つも残っていた
「これ、人の足跡だよね? 随分沢山あるな」
「魔狩りの剣、でしょうか?」
「騎士団かもな」
「え? どうして騎士団が?」
「騎士団も聖核を探してた。魔狩りの剣が聖核を探して此処に来てるなら騎士団も来てるかもしれない」
「何故みんな聖核を手に入れようとするんでしょう?」
「結局ドンには聞けなかったし・・・あんた達も詳しくは知らないみたいだし・・・」
「「・・・・」」
リタは私とアスラをちらりと見る
本当は聖核が何なのか知っている
けど、それはまだ話すべき事じゃない
「ジュディが全部話してくれたら何か解るかもしれないな」
そんな私とアスラを察してなのか、ユーリはそう言うと先にラピードと一緒に上に行ったカロルが驚いた声を出して私達を呼んだ
「ねえ! ちょっと来てよ! 此処、何か凄いよ!」
私達はカロルとラピードがいる所まで移動すると、凄い光景が目に入った
そこは山が所々削れていて、大きな穴が幾つも開いていて草木もあまり生えていなかった
「何よこれ、山が削れてる・・・」
「此処で一体何が・・・」
「こんなんでホントに街なんてあるのかな・・・」
「十年前には確かにあったんだがなぁ。今はどうか分かんないわ」
「十年前? そんな前の話なのか。その時は何でこんなとこに来たんだ?」
「そりゃ・・・」
キュウゥゥーン・・・
「あの声、バカドラ!?」
「みんな急ごう!」
「あ、おい!」
私はバウルの弱々しくなっている声を聞き、そのまま走り出し、ユーリ達も急いで私の後を追った
先程よりも更に進んだ所に来ると私は足を止め、後ろから追いついてきたユーリ達も足を止め周りの光景を見て呆然としていた
「近くで見ると、より酷いな」
「どう見ても自然現象じゃないわね」
「何かが爆発した後みたい・・・」
「爆発って・・・。こんな事出来る魔物なんているの?」
「ああ。その魔物なら、とっくに退治されたから」
さらりと答えたのはレイヴンだった
「退治されたって、どういう事です?」
「此処が人魔戦争の戦場だったって事だよ」
「え! そうなの?」
「流石アスラ、物識りだねぇ~」
「一応レイヴンより長く生きてるしね・・・」
「と言う事は・・・此処で人と始祖の隷長が戦ったんですね・・・。戦いは人の勝利で終わったが、戦地に赴いた者に生存者は殆どおらず・・・その戦争の真実は闇に包まれている・・・。公文書にも詳しい事は書かれていません」
「じゃあ、この有様は始祖の隷長の仕業って事か・・・すさまじいわね」
「でも、此処が戦場だったって話、聞いた事無いぜ」
「色々、情報操作されてんのよ。帝国にね。知られたくない事が一杯あったんじゃない?」
「魔物が人間相手に戦争って可笑しいと思ってたけど・・・」
「その魔物と言うのが始祖の隷長だと言う事も知られたくない事実だった・・・」
「アスラは解るけど、レイヴン、随分詳しいね」
「俺様もアスラと一緒で少年少女の倍の人生生きてるのよ。ほんとに色々あんのよ」
そう言うとレイヴンは少しだけ遠い目をした
「歴史の勉強はもう良いだろ。オレ達はジュディを探しに来たんだ」
「先程の魔物の声・・・ジュディス達、もう追い詰められているのかも」
「あのバカドラは、あたしがぶん殴るんだから。先を越させないわ」
「ああ」
「急ぎましょう!」
エステルの言葉に私は頷きまた先頭を歩き始め、ユーリ達も歩き出した
*
「人魔戦争って、本当に凄かったんだろうね。山が削れて穴ぼこだらけになるなんて、考えられないよ」
「戦争って言うより、こんだけの力を持った始祖の隷長がいるって事がとんでもねえぜ」
「そんな力を持ったヤツと戦争して人間が大負けしなかったってのが謎よ。それこそ考えられない」
「そうですね・・・人魔戦争はわたし達の知らない大きな秘密が隠されているのかもしれません」
「・・・・」
大きな秘密、確かにそうだろう
昔、此処に来た時はそこまで詳しくはなかったけど、今はその大きな秘密を知っている
だから帝国が事実を隠そうとしたのも解るような気がした
「・・・・」
そう思っていると隣にいるユーリが何か考えている顔をしていた
「ユーリ、どうしたの?」
「いや、ジュディが前に言ってた。『バウルが戦争から救ってくれた』ってな・・・それって人魔戦争の事だったのかなって」
「じゃあもしかしてあの女って人魔戦争の時にバカドラと一緒に帝国と戦ったの?」
リタの言葉にユーリはちらりと私を見た
この中でジュディスと知り合いなのは私とアスラだけだ
その事を知ってるのはユーリだけだから、私を見たのだろう
「そこまでは解らないけど・・・」
けど、そこまで聞いた事が無かったから小声で答えるとレイヴンに視線を向けた
「どうなんだ? レイヴン? 人魔戦争に参加してたんだろ」
「へ? 何で?」
「色々詳しいのは当事者だからだろ」
「そうなの? でも、生き残った人、殆どいないんでしょ?」
「ああ、流石の俺様もあん時は死ぬかと思ったね。あ~、あん時、死んでりゃもうちっと楽だったのになあ」
「死んでりゃって、あんた・・・」
レイヴンはいつもの様に軽い口調で言うとリタは若干呆れた顔をしていたが、少しだけその言葉に重みがあったように感じた
「それで、戦争中にジュディスに会ったりしました?」
「いやいや、いくら俺様でも10歳にもならない女の子は守備範囲外よ」
「アホか・・・」
「まー、あのバウルってのも見かけなかった気がするし、どっかに逃げてたんじゃない?」
「戦争の相手はやっぱり始祖の隷長だったのか?」
「そうなるんだろうなぁ。当時はとんでもない魔物としか思ってなかったけども」
「でもホントにレイヴン、戦争に行ってたんだね。凄いね、そんなの騎士団だけかと思ってたよ」
「・・・大人の事情ってヤツさ」
カロルの嬉しそうな声にレイヴンは少しだけ、遠い目をして頭を掻きながら言った
「・・・・?」
その様子を疑問に思って見ているとレイヴンが私の視線に気付き、そういや・・・と言って私を見た
「さっきから気になってたんだけど、リアちゃん此処の道に詳しいわよね」
「そういえばそうですね」
「ずっと先頭歩いてるもんね」
ふとレイヴンがそう言うと、エステルとカロルも同意して私を見てつられてユーリもリタもラピードも私を見た
「此処に来た事あんのか?」
「まあ一応・・・」
「じゃああの女とバカドラの居場所知ってんじゃ・・・」
リタの言葉に私とアスラはアイコンタクトを取るとアスラが口を開いた
「・・・今は時間がないんだ。急ごう」
「え、ちょっ!」
「今はまだ話せないの」
そう言って私は静かに歩き出した
「時間がない? まだ話せない?」
「どういう事でしょう?」
「やっぱりリアとアスラは何か知ってるのよ」
「そんな感じね。じゃなきゃあんなに急がないと思うしね」
此処に来てからのリアとアスラは何処か焦っている感じがしていた
それは少しだけだが、ユーリ達にも伝わっていた
「・・・とにかく、今はリアとアスラを追い駆けようぜ」
ユーリはそう言って歩き出しラピードも後に続き、エステル達は少し息を整えてその後を追った
(今はまだ話せない。けど、兄さんとジュディスと合流したら話さなきゃいけないだろう。人魔戦争の事、そして、ジュディスとバウルがどうして魔導器を壊していたかを・・・)
続く
あとがき
またプロットと違う所&内容で終わった(笑)
まあ此処は書くの難しい所ではありますけどねι
次回は遂に頂上に到着します
無事にジュディスとセイ兄と会う事が出来るのか!?
次回をお楽しみに!
下書き:2008.12.19
完成:2009.07.23
その間は誰一人言葉を発さず、ただじっと・・・
「待って~!!」
すると突然浜の方から男の子の声が聞こえ、私達は一斉に振り向くと、カロルが走って来て船に飛び乗って私達の前に降りた
「カロル!」
「・・・待って! はあ・・・はあ・・・はあ・・・はあ・・・ボクも一緒に行く・・・」
カロルは一息付き、ユーリの元へ向かって行き、真剣な表情をしてユーリを見た
「ドンの伝えたかった事、ちゃんと解ってないかもしれないけど・・・凛々の明星はボクの、ボク達のギルドだから・・・ボクも一緒に行きたいんだ!」
「カロル・・・」
「此処で逃げたら・・・仲間を放っておいたらもう戻れない気がする・・・だから! ボクも行く! 一緒に連れてって!」
「カロル先生が首領なんだ。一緒に行くのは当たり前だろ」
「ユーリ。ありがとう! でも、もう首領って言わないで」
「ん?」
「ボクは・・・まだ首領って言われるような事何もしてない・・・。ユーリにちゃんと首領って認めてもらえるまで首領って呼ばれて恥ずかしくなくなるまで、ボクは首領じゃなくて同じ凛々の明星の一員として頑張る!」
「・・・解った。カロル。頑張れよ」
「うん!」
「ほんとギルドって面倒。アツ過ぎ。バカっぽい」
「んむんむ、青春よのう」
「うわっ! お、おっさん・・・?!」
「若いって素晴らしいねぇ」
レイヴンはリタや私達の驚きを気にせず私達の前に来てそう告げるとユーリがレイヴンを見て言う
「おっさん、何してんだよ」
「えー、リアちゃんは良くて、おっさんは此処にいちゃだめなの?」
「だって、ドンが亡くなった後で大変って・・・」
「んー。色々と面倒だから逃げて来ちゃった」
「ドンに世話になったんでしょ。悲しくないの?」
「ああ、悲しくて悲しくて、喉が渇く位に泣いてもう一滴も涙は出ない」
「全然、そんな風には見えないけど」
レイヴンの泣きの演技にリタが突っ込んでいるとユーリが苦笑してレイヴンを見た
「流石のおっさんもドンの最後の言葉は無視出来ないって事だろ」
「ん、んな訳ないってーの。言っただろ、俺には重荷だって。あっちはあっちで、後に残った奴等がきっちりやってくれるって」
「ま、そう言う事にしておいてやるよ」
「ったく。最近の若人は怖いわ」
「じゃ、デズエール大陸に出発ですね」
「え? 何でデズエールなの?」
「良いカンしてんじゃないの。察しの通りテムザ山はコゴール砂漠の北にある。あそこにゃ、確かクリティア族の街があったしな」
「なんで、そんな事知ってるのよ」
「少年少女の倍以上生きてると人生、色々とあるのよ」
「なにそれ」
「ほれ、行くなら行こうや」
「コゴールの北って、船で回りこめるかな?」
「大丈夫よ、一カ所だけ船が着ける所があるから。少し歩きになっちゃうけど、そこからテムザ山に行けるわ」
「そう言う事らしい。じゃあ行くか」
「「「うん」」」「はい!」「ええ」「おう!」「ワン!」
54.人魔戦争跡地
「到着~。此処がテムザ山よ」
「案内したのリアでしょ・・・」
「言わせてくれても良いじゃないのよぉ~」
「ワン!」
テムザ山に到着した私達は入り口で足を止めるとラピードが何かに気付き一声吠え、地面を見ていた
そこには人の足跡と思われるものが幾つも残っていた
「これ、人の足跡だよね? 随分沢山あるな」
「魔狩りの剣、でしょうか?」
「騎士団かもな」
「え? どうして騎士団が?」
「騎士団も聖核を探してた。魔狩りの剣が聖核を探して此処に来てるなら騎士団も来てるかもしれない」
「何故みんな聖核を手に入れようとするんでしょう?」
「結局ドンには聞けなかったし・・・あんた達も詳しくは知らないみたいだし・・・」
「「・・・・」」
リタは私とアスラをちらりと見る
本当は聖核が何なのか知っている
けど、それはまだ話すべき事じゃない
「ジュディが全部話してくれたら何か解るかもしれないな」
そんな私とアスラを察してなのか、ユーリはそう言うと先にラピードと一緒に上に行ったカロルが驚いた声を出して私達を呼んだ
「ねえ! ちょっと来てよ! 此処、何か凄いよ!」
私達はカロルとラピードがいる所まで移動すると、凄い光景が目に入った
そこは山が所々削れていて、大きな穴が幾つも開いていて草木もあまり生えていなかった
「何よこれ、山が削れてる・・・」
「此処で一体何が・・・」
「こんなんでホントに街なんてあるのかな・・・」
「十年前には確かにあったんだがなぁ。今はどうか分かんないわ」
「十年前? そんな前の話なのか。その時は何でこんなとこに来たんだ?」
「そりゃ・・・」
キュウゥゥーン・・・
「あの声、バカドラ!?」
「みんな急ごう!」
「あ、おい!」
私はバウルの弱々しくなっている声を聞き、そのまま走り出し、ユーリ達も急いで私の後を追った
先程よりも更に進んだ所に来ると私は足を止め、後ろから追いついてきたユーリ達も足を止め周りの光景を見て呆然としていた
「近くで見ると、より酷いな」
「どう見ても自然現象じゃないわね」
「何かが爆発した後みたい・・・」
「爆発って・・・。こんな事出来る魔物なんているの?」
「ああ。その魔物なら、とっくに退治されたから」
さらりと答えたのはレイヴンだった
「退治されたって、どういう事です?」
「此処が人魔戦争の戦場だったって事だよ」
「え! そうなの?」
「流石アスラ、物識りだねぇ~」
「一応レイヴンより長く生きてるしね・・・」
「と言う事は・・・此処で人と始祖の隷長が戦ったんですね・・・。戦いは人の勝利で終わったが、戦地に赴いた者に生存者は殆どおらず・・・その戦争の真実は闇に包まれている・・・。公文書にも詳しい事は書かれていません」
「じゃあ、この有様は始祖の隷長の仕業って事か・・・すさまじいわね」
「でも、此処が戦場だったって話、聞いた事無いぜ」
「色々、情報操作されてんのよ。帝国にね。知られたくない事が一杯あったんじゃない?」
「魔物が人間相手に戦争って可笑しいと思ってたけど・・・」
「その魔物と言うのが始祖の隷長だと言う事も知られたくない事実だった・・・」
「アスラは解るけど、レイヴン、随分詳しいね」
「俺様もアスラと一緒で少年少女の倍の人生生きてるのよ。ほんとに色々あんのよ」
そう言うとレイヴンは少しだけ遠い目をした
「歴史の勉強はもう良いだろ。オレ達はジュディを探しに来たんだ」
「先程の魔物の声・・・ジュディス達、もう追い詰められているのかも」
「あのバカドラは、あたしがぶん殴るんだから。先を越させないわ」
「ああ」
「急ぎましょう!」
エステルの言葉に私は頷きまた先頭を歩き始め、ユーリ達も歩き出した
*
「人魔戦争って、本当に凄かったんだろうね。山が削れて穴ぼこだらけになるなんて、考えられないよ」
「戦争って言うより、こんだけの力を持った始祖の隷長がいるって事がとんでもねえぜ」
「そんな力を持ったヤツと戦争して人間が大負けしなかったってのが謎よ。それこそ考えられない」
「そうですね・・・人魔戦争はわたし達の知らない大きな秘密が隠されているのかもしれません」
「・・・・」
大きな秘密、確かにそうだろう
昔、此処に来た時はそこまで詳しくはなかったけど、今はその大きな秘密を知っている
だから帝国が事実を隠そうとしたのも解るような気がした
「・・・・」
そう思っていると隣にいるユーリが何か考えている顔をしていた
「ユーリ、どうしたの?」
「いや、ジュディが前に言ってた。『バウルが戦争から救ってくれた』ってな・・・それって人魔戦争の事だったのかなって」
「じゃあもしかしてあの女って人魔戦争の時にバカドラと一緒に帝国と戦ったの?」
リタの言葉にユーリはちらりと私を見た
この中でジュディスと知り合いなのは私とアスラだけだ
その事を知ってるのはユーリだけだから、私を見たのだろう
「そこまでは解らないけど・・・」
けど、そこまで聞いた事が無かったから小声で答えるとレイヴンに視線を向けた
「どうなんだ? レイヴン? 人魔戦争に参加してたんだろ」
「へ? 何で?」
「色々詳しいのは当事者だからだろ」
「そうなの? でも、生き残った人、殆どいないんでしょ?」
「ああ、流石の俺様もあん時は死ぬかと思ったね。あ~、あん時、死んでりゃもうちっと楽だったのになあ」
「死んでりゃって、あんた・・・」
レイヴンはいつもの様に軽い口調で言うとリタは若干呆れた顔をしていたが、少しだけその言葉に重みがあったように感じた
「それで、戦争中にジュディスに会ったりしました?」
「いやいや、いくら俺様でも10歳にもならない女の子は守備範囲外よ」
「アホか・・・」
「まー、あのバウルってのも見かけなかった気がするし、どっかに逃げてたんじゃない?」
「戦争の相手はやっぱり始祖の隷長だったのか?」
「そうなるんだろうなぁ。当時はとんでもない魔物としか思ってなかったけども」
「でもホントにレイヴン、戦争に行ってたんだね。凄いね、そんなの騎士団だけかと思ってたよ」
「・・・大人の事情ってヤツさ」
カロルの嬉しそうな声にレイヴンは少しだけ、遠い目をして頭を掻きながら言った
「・・・・?」
その様子を疑問に思って見ているとレイヴンが私の視線に気付き、そういや・・・と言って私を見た
「さっきから気になってたんだけど、リアちゃん此処の道に詳しいわよね」
「そういえばそうですね」
「ずっと先頭歩いてるもんね」
ふとレイヴンがそう言うと、エステルとカロルも同意して私を見てつられてユーリもリタもラピードも私を見た
「此処に来た事あんのか?」
「まあ一応・・・」
「じゃああの女とバカドラの居場所知ってんじゃ・・・」
リタの言葉に私とアスラはアイコンタクトを取るとアスラが口を開いた
「・・・今は時間がないんだ。急ごう」
「え、ちょっ!」
「今はまだ話せないの」
そう言って私は静かに歩き出した
「時間がない? まだ話せない?」
「どういう事でしょう?」
「やっぱりリアとアスラは何か知ってるのよ」
「そんな感じね。じゃなきゃあんなに急がないと思うしね」
此処に来てからのリアとアスラは何処か焦っている感じがしていた
それは少しだけだが、ユーリ達にも伝わっていた
「・・・とにかく、今はリアとアスラを追い駆けようぜ」
ユーリはそう言って歩き出しラピードも後に続き、エステル達は少し息を整えてその後を追った
(今はまだ話せない。けど、兄さんとジュディスと合流したら話さなきゃいけないだろう。人魔戦争の事、そして、ジュディスとバウルがどうして魔導器を壊していたかを・・・)
続く
あとがき
またプロットと違う所&内容で終わった(笑)
まあ此処は書くの難しい所ではありますけどねι
次回は遂に頂上に到着します
無事にジュディスとセイ兄と会う事が出来るのか!?
次回をお楽しみに!
下書き:2008.12.19
完成:2009.07.23