満月の子編
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ベリウスの私室を後にした私達は急いで階段を駆け下りていた
「ノードポリカに用があるのは騎士団だと思ってたんだけどな」
「まさか魔狩りの剣が出てくるとは、正直予想外よね」
「どうして、魔狩りの剣のみんなが・・・」
「事情は知らねえが、ベリウスに用があるのは間違いなさそうだったな」
「もしかして騎士団、いえ、フレンの狙いもベリウスなのでしょうか」
「詳しい事は会って聞けば解る。とにかく今はこの騒動をどうにかするぞ」
「っ! 大丈夫ですか!」
開け放たれた扉を抜けると、そこにはケガをして倒れている人が大勢いた
「酷い・・・。これをナンが・・・?」
私は近くにいた男性に駆け寄るとカロルのショックを受けたような声が聞こえユーリも駆け寄ってくる
「大丈夫か?」
「・・・ナッツ様が・・・闘技場の方を守る為に・・・魔狩りの剣と戦って・・・お願いします・・・助けて・・・」
「い、今、わたしが・・・」
エステルが駆け寄ろうとして私とユーリは無言で首を横に振る
「もう少し、早ければ・・・」
「悔やんでる時ではないでしょ」
「ナッツって人を助けなきゃ・・・!」
「ああ・・・この上か」
「行くぞ」
兄さんは闘技場へと続く扉を勢い良く開けた
51.落花
「闘技場は現在、魔狩りの剣が制圧した! 速やかに退去せよ!」
闘技場に入って直ぐに聞こえたのは、魔狩りの剣の女の子、ナンの声だった
「ナン! もうやめてよ!」
「カロル? 何で此処に・・・」
ナンは振り返りカロルと私達を見ると怪訝そうな顔をした
「ギルド同士の抗争はユニオンじゃ厳禁でしょ!」
「何言ってんの! これはユニオンから直々に依頼された仕事なんだから!」
「何だと?」
すると、ナンの後ろから金髪の青年が出て来た
「お前・・・ハリー!?」
「あいつ・・・ダングレストで会ったユニオンの奴?」
「ああ、ドンの孫のハリーだ」
「ドンの孫・・・?」
「ちょっと、何がどうなってるのよ?」
「お前もドンに命令されたろ? 聖核を探せって」
「ああ、でも聖核とこの騒ぎ、何の関係があるってんだ?」
「ジュディス! どうしたの・・・あ、あの人!」
「ナッツさん・・・!」
「行くぞ!」
ジュディスが走って行く方に目を向けると、魔狩りの剣に囲まれているナッツさんが見え、私達もその後を追った
「ええい! こっちの話、終わってねぇってのに・・・!」
「待て! 退去しろと言っているだろう!」
「レイブンもいるんだ。あいつ等は味方だろ。ほっとけ」
「後一人じゃ物足んねぇだろ? オレ等が相手してやるよ」
ユーリはナッツさんの周りを囲んでいる魔狩りの剣にそう言うと一気にこちらを向いた
「貴様等もベリウスの配下か!」
「ボ、ボク等は凛々の明星だ!」
「何か知らねぇが、魔物に味方する奴は死ね!」
「遅い!」
魔狩りの剣達が一歩踏み出した瞬間、私、ユーリ、兄さん、ジュディス、アスラ、ラピードが即座に攻撃を仕掛け、その後にレイヴンも矢を放ちリタの魔術が発動した
「ぐわあぁっ!」
魔狩りの剣達はそのまま倒れてしまい、気絶しているのを確認するとエステルは急いでナッツさんに駆け寄り、治癒術を掛けてあげた
「・・・うう」
「何とか間に合ったようね」
「あんた治癒術師だったんだな。お陰で命拾いしたよ」
途端、ガシャンと言う音と共に上からベリウスとクリント、そして窓だった硝子の破片が落ちて来た
「うわっ!」
「ベリウス様!」
ベリウスを見るとかなりの傷を負っていたが命に別状はないようだった
「ナッツ、無事のようだの。まだやるか、人間共!」
「・・・この・・・悪の根源・・・め・・・」
「あいつが悪の根源? んな訳ねぇだろ。良く見てみやがれ!」
「魔物は悪と決まっている・・・! ゆえに、狩る・・・! 魔狩りの剣が、我々が・・・!」
クリントはそう言ってそのまま倒れる
「この石頭共!」
「この・・・魔物風情がぁ・・・!」
走り出そうとしているティソンをジュディスが止める
それを見ていると、突然ベリウスが苦しそうに息を吐きだした
「ベリウス様!」
「直ぐに治します!」
エステルは直ぐにベリウスに近付き、治癒術を掛け始めた
「ならぬ、そなたの力は・・・」
「だめ!」「「エステル、ダメ!」」「待て、エステル!」
私、アスラ、兄さん、ジュディスが叫ぶ
何故だか解らないけど、私はそう叫んだ
次の瞬間、眩い金色の光がベリウスを包んだ
「ぐぁああああっっっ!」
「・・・遅かった・・・」
「わたしのせい・・・?」
「あのまま暴れられると闘技場が崩れっちまうぜ!」
「戦 って止めるしかないのか!?」
「そ、そんなぁ!」
「わたし・・・」
「このままじゃマズいよ・・・」
「ああ。一か八かやってみるか。リア、止めるぞ!」
「う、うん!」
突然兄さんに呼ばれ私は急いで兄さんとアスラの元に向かい、動きを止める術を唱え始めた
だが、何故だかそれが全然効かなかった
それどころか言霊使いの力が不安定になり出し、私と兄さんはその場に崩れそうになった
「「っ!」」
「リア、セイ、大丈夫か!?」
崩れそうになっていた私をユーリが支え、元の姿に戻ったアスラが兄さんを支えた
「ああ、俺達はな」
兄さんはそう言ってベリウスに目を戻し私達もベリウスに目を戻した
「ベリウス様! お気を確かに! ベリウス様!!」
「やっぱ戦って止めるしかねぇ!」
「でも、こんなの相手に手加減なんて出来ないわよ! こっちがやられちゃうわ!」
「そんなのって・・・!」
「ベリウス・・・」
「エステル、しっかり!」
「ええ・・・」
「来るぜ!」
私達は暫くベリウスと戦っていた
けど、ベリウスは力の制御が出来ないのか先程よりも更に暴れて私達に襲い掛かって来る
意外にスピードがあり、まともに攻撃も出来なければ詠唱も出来ない
「くっそ。このままじゃこっちが不利だぜ」
「かと言って、あっちのスピードで追いつける魔術なんてしれたもんでしょ」
「大技出すのは無理よ」
「今の所追い着けてるのラピードだけだし」
「けど、このままじゃラピードの体力も落ちるわ」
「・・・しょうがねぇ。リア!」
「うん!」
兄さんの合図と共に私達は駆け出し、ベリウスの懐に飛び込んだ
「ちょ、あぶな・・・」
「くらいな!「「ディバイン・ジャッジメント!!」」
途端、無数の光が空から降り注いだ
「ぐあああああぁぁぁぁぁ!!」
その光はベリウスに当り、ベリウスは悲鳴を上げた
「今の・・・」
「無詠唱だったわよね・・・」
「ええ・・・」
「それもかなりの大技・・・」
カロル、レイヴン、エステル、ジュディスが驚きの声を上げる
ユーリもリタも驚いて二人の前に降り立った私と兄さんとアスラをじっと見ていた
「あんた達、今・・・」
そう呟いているとベリウスの動きが止まり、荒い息を上げだした
「お、収まった・・・」
「ベリウス様!!」
するとベリウスの身体が光り出し、リタがベリウスを見て声を上げる
「今度は何?」
「こんな結果になるなんて・・・」
「「「・・・・」」」
「ごめんなさい・・・。わたし・・・わたし・・・」
エステルはその場に座り込み、辛い顔をして今にも泣きそうだった
「気に・・・病むでない・・・。そなたは・・・妾を救おうとしてくれたのであろう・・・」
「・・・でも、ごめんなさい。わたし・・・」
「力は己を傲慢にする・・・。だが、そなたは違うじゃな。他者を慈しむ優しき心を・・・大切にするのじゃ・・・フェローに会うが良い・・・。己の運命を確かめたいのであれば・・・」
「フェローに?」
「ナッツ、世話になったのう。この者達を恨むでないぞ・・・」
「ベリウス様!!」
「言霊使い、式神よ。後は頼みましたよ・・・」
「はい・・・」「うん・・・」「ああ・・・」
「ま、待って下さい! だめ、お願いです! 行かないで!」
「ベリウス・・・さようなら・・・」
さらに眩い光が放たれ、光が消えた途端目の前に青く透き通った光を放つ大きめの結晶、聖核が現れた
「妾の魂、蒼穹の水玉 を我が友、ドン・ホワイトホースに」
聖核はエステルの前に降りてきて、エステルはそれを手に取った
(・・・言霊使い、そして姫・・・後は任せましたよ・・・)
(・・・ベリウス・・・)
(ああ、後は任せてくれ・・・)
聖核から私達の心にベリウスの声が聞こえ私と兄さんはそれぞれ返事を返した
エステルはそのまま顔を俯けて床に座りこんでしまった
「ハリーが言ってたのはこういう訳か」
「人間・・・その石を渡せ」
思いに耽っているといつの間にかクリントが荒い息を吐きながらティソンの肩を借りて立っていてエステルの持っている聖核を睨み付けていた
「こいつがてめえ等の狙いか。素直に渡すと思うか?」
「では素直に・・・させるまでの事」
「そこまでだ! 全員、武器を置け!」
闘技場の入り口からソディアさんの声が聞こえその後ろから鎧の男が聞こえ出す
「ちっ、来ちまいやがった」
「貴様・・・闘技場にいる者を、全て捕らえろ!」
「さっさと逃げないと、俺等も捕まっちまうよ?」
「あたし等、捕まるような事何もしてないわよ!」
「きっと何か捕まえる理由こじつけられちゃうに決まってるよ!」
「そうね。逃げた方が良さそう」
「だな。行くぞ」
兄さんの言葉にカロル、リタ、ジュディス、ラピードは走り出し、レイヴンはハリーの方を見ていた
「レイヴンはハリーの方に行きなよ」
「そうするわ」
「ユーリ、エステル早く!」
「ああ!」「はい!」
レイヴンがハリーの所へ行ったのを確認すると私はユーリとエステルに声をかけ二人が来たと同時に走り出した
闘技場の出口に行くと騎士達が出口を塞いでいた
「こりゃ、完全に騎士に制圧されてんな」
「港から海に出るしかないわね」
「港も封鎖されてるんじゃ?」
「カドスの喉笛だって封鎖されてんのよ。だったら一か八か港の包囲網に突っ込むのよ!」
「そっか、海に逃げた方がまだマシだもんね」
「そう言うこった」
「あれ、おっさんは・・・?」
「ハリーの方に行ったよ」
「心配しなくてもレイヴンなら大丈夫よ」
「そうね。呼ばれなくても出て来る人だもの」
「ユーリ・ローウェル、そこまでだ!」
後ろからソディアさんの声が聞こえその隣にはウィチル君もいた
「エステリーゼ様もお戻り下さい。フレン隊長が心配してます」
「・・・わ、わたしは・・・」
「エステルは戻らないわよ!」
リタはエステルの前に出て魔術を発動させるとウィチル君も魔術を発動させ、お互いにファイアーボールを当てその隙に私達は外へ逃げた
港近くまで逃げて来ると、フレンが待ち構えていた
「フレン・・・」
「こっちの考えはお見通しって訳」
「エステリーゼ様と、手に入れた石を渡してくれ」
「何でフレンが聖核の事・・・?」
「騎士団の狙いも、この聖核って訳か」
「魔狩りの剣も欲しがってた・・・」
「渡してくれ」
フレンは静かに告げ、鞘に手を当てる
「フレン!?」
「うそっ、本気?」
その行動に思わず私とカロルは声を出してしまう
「お前、何やってんだよ。街を武力制圧って、冗談が過ぎるぜ。任務だかなんだか知らねえけど、力で全部抑え付けやがって」
「隊長、指示を!」
「それを変える為に、お前は騎士団にいんだろうが。こんな事、オレに言わせるな。お前なら解ってんだろ」
「「「「・・・・」」」」
ユーリの言葉にフレンは少し顔を歪め、兄さんもユーリ同様怒ったような表情をしていて、アスラは私達をじっと見て、私はあの時と同じように複雑な表情をして二人を見ていた
「何とか言えよ。これじゃ、オレ等の嫌いな帝国そのものじゃねえか。ラゴウやキュモールにでもなるつもりか!」
「なら、僕も消すか? ラゴウやキュモールのように君は僕を消すと言うのか?」
「フレン!!」
「え・・・それって・・・?」
「お前が悪党になるならな」
「ユーリ・・・」
フレンの言葉に思わず耐えきれず声を上げると、エステルとカロルは驚いた顔をしてユーリを見た後ゆっくりと私へ顔を向ける
「そいつとの喧嘩なら別のとこでやってくんない? 急いでるんでしょ!?」
「・・・ち」
「行くわよ!」
「・・・フレン・・・」
「・・・・」
リタ達は港へ向かって走り出し、私はフレンを見つめるとフレンはやっぱり複雑な顔をしていた
「・・・リア、ユーリとセイが待ってる。行こう」
「・・・うん・・・」
アスラは静かにそう告げ、私は小さく頷いてフレンの横をすり抜け少し先で私を待っているユーリと兄さんの所へ走って行った
私達は港へ走り、フィエルティア号に乗った
船に乗り込むとユーリと兄さんは錨を上げ、私達の後を追い駆けて来たレイヴンがハリーを連れて船に乗り込むと、それを確認したトクナガさんが直ぐに船を出した
船が出航して暫くすると突然船が大きく揺れた
異常な揺れと感覚に私と兄さんとアスラは直ぐにその原因に気が付いた
「! これ!!」
そう思ってジュディスを見るとジュディスは既に駆動魔導器に向かって行っていた
そして駆動魔導器はエステルが持っている蒼穹の水玉と共鳴し合っていた
「あいつ、まさか」
「何するんです!」
「な、やてめぇ!!」
その途端、エステルとリタの悲鳴と共に何かが爆発する音が聞こえた
その悲鳴と爆発音を聞きつけ、ユーリ達も駆動魔導器の元に集まった
「・・・やっちゃった」
私達はゆっくりと駆動魔導器の方へと歩いて行く
「・・・ジュディス」
「・・・どうして?」
「・・・私の道だから」
空からバウルの鳴き声が聞こえると、バウルはジュディスの方へ向かって来ていた
「ジュディ! 待て!」
「・・・さようなら」
ユーリは直ぐさまジュディスの所へ向かうが、バウルの方が先に辿り着きジュディスはバウルに乗って飛び去って行った
「ジュディス・・・!?」
「なんで、どうしてよ!?」
リタは悔しそうに握り拳を作り俯いていて、エステルとカロルはどうして? と言う顔をして、レイヴンとラピードはバウルが飛び去って行った方をじっと見ていた
「・・・ジュディス」
そう呟いた途端、私は意識が朦朧としてそのまま倒れてしまった
「おい、リア!!」
俺は倒れそうになったリアを受け止めると、俺の声を聞きつけ直ぐさまユーリがリアに駆け寄って来た
「今度はリアか!? おい、大丈夫か?」
ユーリはリアを揺さぶるが全然反応がない
「・・・まずいな」
流石にこれだけ騒いでるとエステル達も集まってくる
「リア!」「リアちゃん!」「ワンワン!」
「わたしが!」
最後に駆け着けて来たエステルが治癒術を掛けようとするが俺はそれを制止し首を横に振った
「・・・一旦、戻った方が良いね」
「そうだな・・・」
アスラと軽く話すと俺はリアを抱え立ち上がり、空を仰ぐと俺の隣にフキが現れ、アスラは元の姿に戻った
「悪ぃな、ユーリ。暫く俺等も抜けるわ」
「セイ?」
ユーリにそう告げると俺はアスラとフキの力で風に包まれた
風が止んだ時にはセイ達の姿は船の上から消えていた
続く
あとがき
はい、かなりシリアスムードですね
ジュディスも去り、リアちゃん倒れちゃいました
ちょっとわかりにくいかもですが、リアちゃんが倒れた後はセイ兄視点です
リアちゃんが倒れた理由は次回に
次回はまたオリジナルに戻ります
下書き:2008.12.18
完成:2009.07.18
「ノードポリカに用があるのは騎士団だと思ってたんだけどな」
「まさか魔狩りの剣が出てくるとは、正直予想外よね」
「どうして、魔狩りの剣のみんなが・・・」
「事情は知らねえが、ベリウスに用があるのは間違いなさそうだったな」
「もしかして騎士団、いえ、フレンの狙いもベリウスなのでしょうか」
「詳しい事は会って聞けば解る。とにかく今はこの騒動をどうにかするぞ」
「っ! 大丈夫ですか!」
開け放たれた扉を抜けると、そこにはケガをして倒れている人が大勢いた
「酷い・・・。これをナンが・・・?」
私は近くにいた男性に駆け寄るとカロルのショックを受けたような声が聞こえユーリも駆け寄ってくる
「大丈夫か?」
「・・・ナッツ様が・・・闘技場の方を守る為に・・・魔狩りの剣と戦って・・・お願いします・・・助けて・・・」
「い、今、わたしが・・・」
エステルが駆け寄ろうとして私とユーリは無言で首を横に振る
「もう少し、早ければ・・・」
「悔やんでる時ではないでしょ」
「ナッツって人を助けなきゃ・・・!」
「ああ・・・この上か」
「行くぞ」
兄さんは闘技場へと続く扉を勢い良く開けた
51.
「闘技場は現在、魔狩りの剣が制圧した! 速やかに退去せよ!」
闘技場に入って直ぐに聞こえたのは、魔狩りの剣の女の子、ナンの声だった
「ナン! もうやめてよ!」
「カロル? 何で此処に・・・」
ナンは振り返りカロルと私達を見ると怪訝そうな顔をした
「ギルド同士の抗争はユニオンじゃ厳禁でしょ!」
「何言ってんの! これはユニオンから直々に依頼された仕事なんだから!」
「何だと?」
すると、ナンの後ろから金髪の青年が出て来た
「お前・・・ハリー!?」
「あいつ・・・ダングレストで会ったユニオンの奴?」
「ああ、ドンの孫のハリーだ」
「ドンの孫・・・?」
「ちょっと、何がどうなってるのよ?」
「お前もドンに命令されたろ? 聖核を探せって」
「ああ、でも聖核とこの騒ぎ、何の関係があるってんだ?」
「ジュディス! どうしたの・・・あ、あの人!」
「ナッツさん・・・!」
「行くぞ!」
ジュディスが走って行く方に目を向けると、魔狩りの剣に囲まれているナッツさんが見え、私達もその後を追った
「ええい! こっちの話、終わってねぇってのに・・・!」
「待て! 退去しろと言っているだろう!」
「レイブンもいるんだ。あいつ等は味方だろ。ほっとけ」
「後一人じゃ物足んねぇだろ? オレ等が相手してやるよ」
ユーリはナッツさんの周りを囲んでいる魔狩りの剣にそう言うと一気にこちらを向いた
「貴様等もベリウスの配下か!」
「ボ、ボク等は凛々の明星だ!」
「何か知らねぇが、魔物に味方する奴は死ね!」
「遅い!」
魔狩りの剣達が一歩踏み出した瞬間、私、ユーリ、兄さん、ジュディス、アスラ、ラピードが即座に攻撃を仕掛け、その後にレイヴンも矢を放ちリタの魔術が発動した
「ぐわあぁっ!」
魔狩りの剣達はそのまま倒れてしまい、気絶しているのを確認するとエステルは急いでナッツさんに駆け寄り、治癒術を掛けてあげた
「・・・うう」
「何とか間に合ったようね」
「あんた治癒術師だったんだな。お陰で命拾いしたよ」
途端、ガシャンと言う音と共に上からベリウスとクリント、そして窓だった硝子の破片が落ちて来た
「うわっ!」
「ベリウス様!」
ベリウスを見るとかなりの傷を負っていたが命に別状はないようだった
「ナッツ、無事のようだの。まだやるか、人間共!」
「・・・この・・・悪の根源・・・め・・・」
「あいつが悪の根源? んな訳ねぇだろ。良く見てみやがれ!」
「魔物は悪と決まっている・・・! ゆえに、狩る・・・! 魔狩りの剣が、我々が・・・!」
クリントはそう言ってそのまま倒れる
「この石頭共!」
「この・・・魔物風情がぁ・・・!」
走り出そうとしているティソンをジュディスが止める
それを見ていると、突然ベリウスが苦しそうに息を吐きだした
「ベリウス様!」
「直ぐに治します!」
エステルは直ぐにベリウスに近付き、治癒術を掛け始めた
「ならぬ、そなたの力は・・・」
「だめ!」「「エステル、ダメ!」」「待て、エステル!」
私、アスラ、兄さん、ジュディスが叫ぶ
何故だか解らないけど、私はそう叫んだ
次の瞬間、眩い金色の光がベリウスを包んだ
「ぐぁああああっっっ!」
「・・・遅かった・・・」
「わたしのせい・・・?」
「あのまま暴れられると闘技場が崩れっちまうぜ!」
「
「そ、そんなぁ!」
「わたし・・・」
「このままじゃマズいよ・・・」
「ああ。一か八かやってみるか。リア、止めるぞ!」
「う、うん!」
突然兄さんに呼ばれ私は急いで兄さんとアスラの元に向かい、動きを止める術を唱え始めた
だが、何故だかそれが全然効かなかった
それどころか言霊使いの力が不安定になり出し、私と兄さんはその場に崩れそうになった
「「っ!」」
「リア、セイ、大丈夫か!?」
崩れそうになっていた私をユーリが支え、元の姿に戻ったアスラが兄さんを支えた
「ああ、俺達はな」
兄さんはそう言ってベリウスに目を戻し私達もベリウスに目を戻した
「ベリウス様! お気を確かに! ベリウス様!!」
「やっぱ戦って止めるしかねぇ!」
「でも、こんなの相手に手加減なんて出来ないわよ! こっちがやられちゃうわ!」
「そんなのって・・・!」
「ベリウス・・・」
「エステル、しっかり!」
「ええ・・・」
「来るぜ!」
私達は暫くベリウスと戦っていた
けど、ベリウスは力の制御が出来ないのか先程よりも更に暴れて私達に襲い掛かって来る
意外にスピードがあり、まともに攻撃も出来なければ詠唱も出来ない
「くっそ。このままじゃこっちが不利だぜ」
「かと言って、あっちのスピードで追いつける魔術なんてしれたもんでしょ」
「大技出すのは無理よ」
「今の所追い着けてるのラピードだけだし」
「けど、このままじゃラピードの体力も落ちるわ」
「・・・しょうがねぇ。リア!」
「うん!」
兄さんの合図と共に私達は駆け出し、ベリウスの懐に飛び込んだ
「ちょ、あぶな・・・」
「くらいな!「「ディバイン・ジャッジメント!!」」
途端、無数の光が空から降り注いだ
「ぐあああああぁぁぁぁぁ!!」
その光はベリウスに当り、ベリウスは悲鳴を上げた
「今の・・・」
「無詠唱だったわよね・・・」
「ええ・・・」
「それもかなりの大技・・・」
カロル、レイヴン、エステル、ジュディスが驚きの声を上げる
ユーリもリタも驚いて二人の前に降り立った私と兄さんとアスラをじっと見ていた
「あんた達、今・・・」
そう呟いているとベリウスの動きが止まり、荒い息を上げだした
「お、収まった・・・」
「ベリウス様!!」
するとベリウスの身体が光り出し、リタがベリウスを見て声を上げる
「今度は何?」
「こんな結果になるなんて・・・」
「「「・・・・」」」
「ごめんなさい・・・。わたし・・・わたし・・・」
エステルはその場に座り込み、辛い顔をして今にも泣きそうだった
「気に・・・病むでない・・・。そなたは・・・妾を救おうとしてくれたのであろう・・・」
「・・・でも、ごめんなさい。わたし・・・」
「力は己を傲慢にする・・・。だが、そなたは違うじゃな。他者を慈しむ優しき心を・・・大切にするのじゃ・・・フェローに会うが良い・・・。己の運命を確かめたいのであれば・・・」
「フェローに?」
「ナッツ、世話になったのう。この者達を恨むでないぞ・・・」
「ベリウス様!!」
「言霊使い、式神よ。後は頼みましたよ・・・」
「はい・・・」「うん・・・」「ああ・・・」
「ま、待って下さい! だめ、お願いです! 行かないで!」
「ベリウス・・・さようなら・・・」
さらに眩い光が放たれ、光が消えた途端目の前に青く透き通った光を放つ大きめの結晶、聖核が現れた
「妾の魂、
聖核はエステルの前に降りてきて、エステルはそれを手に取った
(・・・言霊使い、そして姫・・・後は任せましたよ・・・)
(・・・ベリウス・・・)
(ああ、後は任せてくれ・・・)
聖核から私達の心にベリウスの声が聞こえ私と兄さんはそれぞれ返事を返した
エステルはそのまま顔を俯けて床に座りこんでしまった
「ハリーが言ってたのはこういう訳か」
「人間・・・その石を渡せ」
思いに耽っているといつの間にかクリントが荒い息を吐きながらティソンの肩を借りて立っていてエステルの持っている聖核を睨み付けていた
「こいつがてめえ等の狙いか。素直に渡すと思うか?」
「では素直に・・・させるまでの事」
「そこまでだ! 全員、武器を置け!」
闘技場の入り口からソディアさんの声が聞こえその後ろから鎧の男が聞こえ出す
「ちっ、来ちまいやがった」
「貴様・・・闘技場にいる者を、全て捕らえろ!」
「さっさと逃げないと、俺等も捕まっちまうよ?」
「あたし等、捕まるような事何もしてないわよ!」
「きっと何か捕まえる理由こじつけられちゃうに決まってるよ!」
「そうね。逃げた方が良さそう」
「だな。行くぞ」
兄さんの言葉にカロル、リタ、ジュディス、ラピードは走り出し、レイヴンはハリーの方を見ていた
「レイヴンはハリーの方に行きなよ」
「そうするわ」
「ユーリ、エステル早く!」
「ああ!」「はい!」
レイヴンがハリーの所へ行ったのを確認すると私はユーリとエステルに声をかけ二人が来たと同時に走り出した
闘技場の出口に行くと騎士達が出口を塞いでいた
「こりゃ、完全に騎士に制圧されてんな」
「港から海に出るしかないわね」
「港も封鎖されてるんじゃ?」
「カドスの喉笛だって封鎖されてんのよ。だったら一か八か港の包囲網に突っ込むのよ!」
「そっか、海に逃げた方がまだマシだもんね」
「そう言うこった」
「あれ、おっさんは・・・?」
「ハリーの方に行ったよ」
「心配しなくてもレイヴンなら大丈夫よ」
「そうね。呼ばれなくても出て来る人だもの」
「ユーリ・ローウェル、そこまでだ!」
後ろからソディアさんの声が聞こえその隣にはウィチル君もいた
「エステリーゼ様もお戻り下さい。フレン隊長が心配してます」
「・・・わ、わたしは・・・」
「エステルは戻らないわよ!」
リタはエステルの前に出て魔術を発動させるとウィチル君も魔術を発動させ、お互いにファイアーボールを当てその隙に私達は外へ逃げた
港近くまで逃げて来ると、フレンが待ち構えていた
「フレン・・・」
「こっちの考えはお見通しって訳」
「エステリーゼ様と、手に入れた石を渡してくれ」
「何でフレンが聖核の事・・・?」
「騎士団の狙いも、この聖核って訳か」
「魔狩りの剣も欲しがってた・・・」
「渡してくれ」
フレンは静かに告げ、鞘に手を当てる
「フレン!?」
「うそっ、本気?」
その行動に思わず私とカロルは声を出してしまう
「お前、何やってんだよ。街を武力制圧って、冗談が過ぎるぜ。任務だかなんだか知らねえけど、力で全部抑え付けやがって」
「隊長、指示を!」
「それを変える為に、お前は騎士団にいんだろうが。こんな事、オレに言わせるな。お前なら解ってんだろ」
「「「「・・・・」」」」
ユーリの言葉にフレンは少し顔を歪め、兄さんもユーリ同様怒ったような表情をしていて、アスラは私達をじっと見て、私はあの時と同じように複雑な表情をして二人を見ていた
「何とか言えよ。これじゃ、オレ等の嫌いな帝国そのものじゃねえか。ラゴウやキュモールにでもなるつもりか!」
「なら、僕も消すか? ラゴウやキュモールのように君は僕を消すと言うのか?」
「フレン!!」
「え・・・それって・・・?」
「お前が悪党になるならな」
「ユーリ・・・」
フレンの言葉に思わず耐えきれず声を上げると、エステルとカロルは驚いた顔をしてユーリを見た後ゆっくりと私へ顔を向ける
「そいつとの喧嘩なら別のとこでやってくんない? 急いでるんでしょ!?」
「・・・ち」
「行くわよ!」
「・・・フレン・・・」
「・・・・」
リタ達は港へ向かって走り出し、私はフレンを見つめるとフレンはやっぱり複雑な顔をしていた
「・・・リア、ユーリとセイが待ってる。行こう」
「・・・うん・・・」
アスラは静かにそう告げ、私は小さく頷いてフレンの横をすり抜け少し先で私を待っているユーリと兄さんの所へ走って行った
私達は港へ走り、フィエルティア号に乗った
船に乗り込むとユーリと兄さんは錨を上げ、私達の後を追い駆けて来たレイヴンがハリーを連れて船に乗り込むと、それを確認したトクナガさんが直ぐに船を出した
船が出航して暫くすると突然船が大きく揺れた
異常な揺れと感覚に私と兄さんとアスラは直ぐにその原因に気が付いた
「! これ!!」
そう思ってジュディスを見るとジュディスは既に駆動魔導器に向かって行っていた
そして駆動魔導器はエステルが持っている蒼穹の水玉と共鳴し合っていた
「あいつ、まさか」
「何するんです!」
「な、やてめぇ!!」
その途端、エステルとリタの悲鳴と共に何かが爆発する音が聞こえた
その悲鳴と爆発音を聞きつけ、ユーリ達も駆動魔導器の元に集まった
「・・・やっちゃった」
私達はゆっくりと駆動魔導器の方へと歩いて行く
「・・・ジュディス」
「・・・どうして?」
「・・・私の道だから」
空からバウルの鳴き声が聞こえると、バウルはジュディスの方へ向かって来ていた
「ジュディ! 待て!」
「・・・さようなら」
ユーリは直ぐさまジュディスの所へ向かうが、バウルの方が先に辿り着きジュディスはバウルに乗って飛び去って行った
「ジュディス・・・!?」
「なんで、どうしてよ!?」
リタは悔しそうに握り拳を作り俯いていて、エステルとカロルはどうして? と言う顔をして、レイヴンとラピードはバウルが飛び去って行った方をじっと見ていた
「・・・ジュディス」
そう呟いた途端、私は意識が朦朧としてそのまま倒れてしまった
「おい、リア!!」
俺は倒れそうになったリアを受け止めると、俺の声を聞きつけ直ぐさまユーリがリアに駆け寄って来た
「今度はリアか!? おい、大丈夫か?」
ユーリはリアを揺さぶるが全然反応がない
「・・・まずいな」
流石にこれだけ騒いでるとエステル達も集まってくる
「リア!」「リアちゃん!」「ワンワン!」
「わたしが!」
最後に駆け着けて来たエステルが治癒術を掛けようとするが俺はそれを制止し首を横に振った
「・・・一旦、戻った方が良いね」
「そうだな・・・」
アスラと軽く話すと俺はリアを抱え立ち上がり、空を仰ぐと俺の隣にフキが現れ、アスラは元の姿に戻った
「悪ぃな、ユーリ。暫く俺等も抜けるわ」
「セイ?」
ユーリにそう告げると俺はアスラとフキの力で風に包まれた
風が止んだ時にはセイ達の姿は船の上から消えていた
続く
あとがき
はい、かなりシリアスムードですね
ジュディスも去り、リアちゃん倒れちゃいました
ちょっとわかりにくいかもですが、リアちゃんが倒れた後はセイ兄視点です
リアちゃんが倒れた理由は次回に
次回はまたオリジナルに戻ります
下書き:2008.12.18
完成:2009.07.18