満月の子編
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「わたし達を助けてくれたのデュークかもしれませんね」
館を出て直ぐにエステルがそう呟き、私達はエステルへと視線を向ける
「どうだろうな」
「・・・わたし、お礼を言ってきます」
「やめとけ。そう言うのガラじゃねぇだろ、あいつも」
「そうでしょうか・・・」
「ああ。多分な」
「それにもしデュークが助けてくれてたのなら、私達が此処に来た事に驚かないと思うけど」
「それもそうだね」
引き返そうとしていたエステルにユーリがそう声を掛け私も言葉を続けるとアスラも頷いた
「あいつの言ってた満月の子って、凛々の明星の妹だよな」
「ええ・・・。ユーリ、知っていたんです?」
「前にリアが話してくれたんだ」
「地上満つる黄金の光放つ女神、君の名は満月の子」
「兄、凛々の明星は空より我等を見る」
「君は地上に残り、賢母なる大地を未来永劫見守る」
「それ、何か意味あるの?」
ユーリの言葉の後に私、兄さん、アスラが言葉を続けるとレイヴンが疑問を振った
「解りません。でも、ただの伝承ではないのかもしれません」
「地上に残り、大地を見守る、ね」
「大地を見守るって言うのはこの世界を支配するって事?」
「じゃあ、皇帝になる人って事? エステルが満月の子なら、それで辻褄が合わない?」
「だとすると、代々の皇帝はみんなフェローに狙われるわな」
「そんな話は聞いた事ないです」
「うーん・・・」
「今はこれからどうするかを決めた方が良いんじゃない?」
唸っているカロルを見てジュディスがそう言うとリタが口を開いた
「あたしはこの街に残る。調べたい事があるから」
「調べたい事です?」
「橙明の核晶・・・聖核の事とか色々。正確には此処に居るあいつに聞きたい事があるの。あんた等が帰るのならあたしは此処でお別れね」
「え!」
「そう・・・残念。砂漠一人で大変だと思うけど頑張って」
「う・・・そっか・・・砂漠越えないとダメなんだった」
「調べもんの間ぐらい俺等もいて良いんでない? 聖核の事は俺も興味あるし」
「そうだな。また砂漠ならちゃんと準備もした方が良いし、出発は明日にするか。リタ、一日あれば良いだろ?」
「ええ。十分よ。あ、ありがと・・・一応礼言っとく」
「はは。どういたしまして。じゃあ明日の朝、街の出口集合な」
「うん、解った」
47.理想郷の夜
夜、私は夜風に当たる為に見晴台に来ていた
此処最近、色々な事があり考える暇もなければ次から次に謎が増えていく
そして今いるこの街、ヨームゲンもその謎の一つではある
何処となく不思議な感覚があるのはアスラも兄さんも感じていた
けど、その感覚は嫌なものじゃなく何処か懐かしさがある
まるで、故郷にいる時のような感覚だった
私は小さく息を吸って伸びをして手摺りに寄り掛かり、海を眺めているとふと人の気配を感じた
振り返るとそこにはデュークがいた
「・・・デューク」
「こんな時間に散歩か?」
「デュークこそ・・・」
デュークは無言で歩いて来て私の隣に立って海を眺めだした
「ねえ、昼間『此処は悠久の平穏が約束された街』って言ったよね。あれってどういう意味?」
「そのままの意味だ。この街は悠久そのものだ」
「悠久そのものって・・・じゃあやっぱりこの街は・・・」
「それはお前自身が感じているのではないか?」
その答えに私はこの街の違和感が解けた
何処となく故郷に似ていたと感じたのは存在しないもの
つまり別空間にあるからだった
「だからこの違和感は私と兄さんとアスラしか気付いてなかったのね」
「あの魔導士の娘達も少しは気付いてはいるが、はっきりと分かっているのはお前達言霊使いだけだろう」
「・・・前にも聞いたけど、デュークは私達・・言霊使いの事、何処まで知ってるの?」
「少なくともお前よりかは知っている」
「・・・私より?」
デュークの言葉に私は疑問を抱いた
どう見てもデュークは普通の人間だ
帝国の偉い人でもなければクリティア族でもない
けど、纏っている空気はユーリ達とは何処か違う雰囲気を纏い人を寄せ付けないものがあった
言霊使いの事を知っているのは限られた人のみ
そして何より、言霊使いの正統系統者の跡取りでもある私より知っている事・・・
「それって・・・一体・・・」
何? と聞こうとしてデュークを見ると、赤い瞳がじっと私を見ていた
その目は何処か寂しげだった
「・・・デューク?」
私の呼びかけにゆっくりと視線を外し言葉を続ける
「お前はまだ自分の力に付いて知らない事がある」
「・・・聞いても答えてはくれないわよね」
「・・・・・」
デュークは私を見て少し考えて言葉を続ける
「私が言える事はお前は周りに注意を払う事だ。それから・・・」
そう言うとデュークは先程よりも真剣な表情をして私を見た
「あまり満月の子と居ない方が良い」
「・・・え?」
満月の子、つまりエステルの事だ
「・・・それって、エステルの事、よね・・・どうし・・」
「言霊使いの力が不安定になった事はないか?」
「不安定・・・?」
不意にそう言われ考えると、一つだけ思い当たる事があった
「ヘリオードの魔導器がエアルの暴走で可笑しくなった時・・・かな。エアルが爆発した時に壁を作ったんだけど、その後に立ち眩みがして・・・」
「・・・やはりそうか」
「え?」
「あの時、お前と会った時に少し違和感を感じたのはその所為だったのか」
「・・・・」
あの時、それはエアルの暴走が収まった夜にデュークと会った時だった
その時デュークと会ったのはまだ二回目だったのに、ユーリ達も感じていなかった違和感にデュークは気が付いていた・・・
(やっぱり、デュークって只人じゃない・・・)
そう思っているともう一つ思い当たる事があった
「・・・そういえば、ダングレストでフェローがエステルに『忌まわしき毒』って言った時に変に心臓が脈打ったの・・・」
「!?」
その言葉を聞いてデュークは眉を細めて私を見た
「・・・これも何か関係があるの?」
「・・・・・」
デュークは考えるような顔をしていた
「・・・・デューク?」
私はデュークの顔を除き込むとようやく私に気が付き「いや・・・」と言って顔を逸らした
「満月の子もだが、エアルクレーネにも近付かない方が良い」
「エアルクレーネって、ケーブ・モックやカドスの喉笛にあったあのエアルの源水よね・・・?」
「あれは人に害を及ぼす。いや、人だけではない。魔物や植物にも影響を与える。特に力のある者は影響を受けやすい」
力のある者・・・つまり私や兄さん、言霊使いの事だろうか?
「今はまだ大丈夫のようだが、自分の身を案じるならその方が良い」
そう言うとデュークは踵を返し立ち去って行った
「あ! ・・・行っちゃった」
私はデュークが立ち去って行った場所を見て呟いた
「・・・今はまだ大丈夫・・・? 身を案じるって・・・」
また謎が増えてしまったが、その言葉はいつも以上に頭に残った言葉だった
*
「やっぱり此処にいた」
「・・・ユーリ」
デュークが立ち去った後も私はぼーっと海を眺めていると不意にユーリの声が聞こえゆっくりと振り返った
「やっぱりって・・・もしかして探してた?」
「まあな。宿に戻ったらリアだけいなかったからな。で、此処だろうと思って着てみたらいたってワケだ」
以前ユーリに「良く港や海の近くにいる」と言われた事を思い出しているとユーリは私の隣に並んだ
「もうみんな寝ちゃった?」
「エステルとカロルとおっさんはな。リタは昼間から実験に入ってるし、ジュディはいつもみたいにふらふらとどっか行ってる」
「兄さんとアスラは?」
「何か古い文献読んでたな」
「文献?」
「ああ。宿の人に借りて読んでたぞ」
兄さんとアスラはこの街の事に気が付いている
だからこの街の歴史や千年前からの出来事、そしてこの街がどうなったを調べているのだろう
「で、リアは何してたんだ?」
「夜風に当たりに来てそれからずっと此処にいたの」
何故かデュークと居た事、話した事が言えず、そのまま話を進めた
「ずっと、って・・・どんくらいだ?」
「えーっと・・・1時間位?」
はっきりとは分からないが此処に来てデュークと話をした後、少し考え事をしながら海を眺めているといつの間にか時間が経っていて、正確な時間までは分からなかった
そう思っていると急に頬に暖かいものが触れた
それはユーリの手だった
「・・・そりゃ1時間もいりゃ冷えるわな」
途端、急に肩を抱かれそのまま引き寄せられ、すっぽりとユーリの腕の中に埋まった
「・・・ユーリ?」
「こんだけ冷えてたら風邪引くぞ」
ぎゅっと抱きしめられユーリの体温が伝わってきた
「・・・暖かい」
「風邪引いて寝込むなよ。そうなったらエステルが一番心配して、リタ辺りが煩いぞ」
「ふふ、そうだね。でもアルフとライラが両親の帰りを待ってるんだもん。早く会わせてあげたいから風邪は引かないよ」
「そうだな」
「あの子達の笑顔も見たいしね」
「ま、その前に砂漠を越えなきゃだけどな」
「・・・嫌な事言わないでよ・・・ι」
実際、この街が砂漠の中にあるのだから越えないとマンタイクには戻れないのだけど、多少暑さに慣れたとはいえ、暑さがニガテな私にとってはちょっとツライかも・・・ι
「行き掛けみたいに無言になるなよ。またおっさんが騒ぎ出すからな」
「ぜ、善処します・・・・ι」
私の反応を見てユーリは笑ってゆっくりと私から離れた
「さてと、じゃあそろそろ帰るか」
「うん。ありがとユーリ、お陰で暖かくなったよ」
「・・・っ」
ニッコリと笑って言うとユーリは固まってしまい、私は首を傾げた
「・・・ユーリ?」
「・・・・・」
「ユーリ~~ぃ」
私はユーリの顔の前で手をひらひらとさせると、急にユーリがその手を掴んだ
「・・・ユーリ?」
ユーリを見ると真剣な顔をしてじっと私を見ていて一瞬ドキっとした
「「・・・・・・」」
無言で見つめ合う状態になってしまい、この状況をどうしたら良いものかと思っているとユーリの顔が少し私に近付いた
が、途中で止まり横に小さく頭を振った
「・・・ユーリ、どうかした?」
「・・・いや、何でもねぇ。行くぞ」
「う、うん・・・」
言うとユーリは小さく溜息を吐きそのまま私の手を引いて歩き出したが、その顔は何処かバツの悪そうな複雑な顔だった
続く
あとがき
やっと完成した
此処はデュークとの会話をメインで書いて終わるつもりだったのに、ページ数が足りなくて急遽ユーリとの会話を入れたんですけどそれでも足りなくて・・・
此処で甘いの入れるか、入れまいか悩みました
だって次の展開の事を考えるとね・・・ι
そういう訳なのでこんな形になりました(笑)
デュークは言霊使いの事、リアちゃんより知っているみたいですし、何より気になる事言ってましたしね・・・謎の多い人だ(笑)
さて、次回はマンタイクに戻る所と戻った所から始まります
いよいよあのシーンです・・・
リアちゃんにとってはツライかもです・・・
今まで以上に長くなると思うので先に言っておきます
では、また次回!
下書き:2008.12.16
完成:2009.07.16
館を出て直ぐにエステルがそう呟き、私達はエステルへと視線を向ける
「どうだろうな」
「・・・わたし、お礼を言ってきます」
「やめとけ。そう言うのガラじゃねぇだろ、あいつも」
「そうでしょうか・・・」
「ああ。多分な」
「それにもしデュークが助けてくれてたのなら、私達が此処に来た事に驚かないと思うけど」
「それもそうだね」
引き返そうとしていたエステルにユーリがそう声を掛け私も言葉を続けるとアスラも頷いた
「あいつの言ってた満月の子って、凛々の明星の妹だよな」
「ええ・・・。ユーリ、知っていたんです?」
「前にリアが話してくれたんだ」
「地上満つる黄金の光放つ女神、君の名は満月の子」
「兄、凛々の明星は空より我等を見る」
「君は地上に残り、賢母なる大地を未来永劫見守る」
「それ、何か意味あるの?」
ユーリの言葉の後に私、兄さん、アスラが言葉を続けるとレイヴンが疑問を振った
「解りません。でも、ただの伝承ではないのかもしれません」
「地上に残り、大地を見守る、ね」
「大地を見守るって言うのはこの世界を支配するって事?」
「じゃあ、皇帝になる人って事? エステルが満月の子なら、それで辻褄が合わない?」
「だとすると、代々の皇帝はみんなフェローに狙われるわな」
「そんな話は聞いた事ないです」
「うーん・・・」
「今はこれからどうするかを決めた方が良いんじゃない?」
唸っているカロルを見てジュディスがそう言うとリタが口を開いた
「あたしはこの街に残る。調べたい事があるから」
「調べたい事です?」
「橙明の核晶・・・聖核の事とか色々。正確には此処に居るあいつに聞きたい事があるの。あんた等が帰るのならあたしは此処でお別れね」
「え!」
「そう・・・残念。砂漠一人で大変だと思うけど頑張って」
「う・・・そっか・・・砂漠越えないとダメなんだった」
「調べもんの間ぐらい俺等もいて良いんでない? 聖核の事は俺も興味あるし」
「そうだな。また砂漠ならちゃんと準備もした方が良いし、出発は明日にするか。リタ、一日あれば良いだろ?」
「ええ。十分よ。あ、ありがと・・・一応礼言っとく」
「はは。どういたしまして。じゃあ明日の朝、街の出口集合な」
「うん、解った」
47.理想郷の夜
夜、私は夜風に当たる為に見晴台に来ていた
此処最近、色々な事があり考える暇もなければ次から次に謎が増えていく
そして今いるこの街、ヨームゲンもその謎の一つではある
何処となく不思議な感覚があるのはアスラも兄さんも感じていた
けど、その感覚は嫌なものじゃなく何処か懐かしさがある
まるで、故郷にいる時のような感覚だった
私は小さく息を吸って伸びをして手摺りに寄り掛かり、海を眺めているとふと人の気配を感じた
振り返るとそこにはデュークがいた
「・・・デューク」
「こんな時間に散歩か?」
「デュークこそ・・・」
デュークは無言で歩いて来て私の隣に立って海を眺めだした
「ねえ、昼間『此処は悠久の平穏が約束された街』って言ったよね。あれってどういう意味?」
「そのままの意味だ。この街は悠久そのものだ」
「悠久そのものって・・・じゃあやっぱりこの街は・・・」
「それはお前自身が感じているのではないか?」
その答えに私はこの街の違和感が解けた
何処となく故郷に似ていたと感じたのは存在しないもの
つまり別空間にあるからだった
「だからこの違和感は私と兄さんとアスラしか気付いてなかったのね」
「あの魔導士の娘達も少しは気付いてはいるが、はっきりと分かっているのはお前達言霊使いだけだろう」
「・・・前にも聞いたけど、デュークは私達・・言霊使いの事、何処まで知ってるの?」
「少なくともお前よりかは知っている」
「・・・私より?」
デュークの言葉に私は疑問を抱いた
どう見てもデュークは普通の人間だ
帝国の偉い人でもなければクリティア族でもない
けど、纏っている空気はユーリ達とは何処か違う雰囲気を纏い人を寄せ付けないものがあった
言霊使いの事を知っているのは限られた人のみ
そして何より、言霊使いの正統系統者の跡取りでもある私より知っている事・・・
「それって・・・一体・・・」
何? と聞こうとしてデュークを見ると、赤い瞳がじっと私を見ていた
その目は何処か寂しげだった
「・・・デューク?」
私の呼びかけにゆっくりと視線を外し言葉を続ける
「お前はまだ自分の力に付いて知らない事がある」
「・・・聞いても答えてはくれないわよね」
「・・・・・」
デュークは私を見て少し考えて言葉を続ける
「私が言える事はお前は周りに注意を払う事だ。それから・・・」
そう言うとデュークは先程よりも真剣な表情をして私を見た
「あまり満月の子と居ない方が良い」
「・・・え?」
満月の子、つまりエステルの事だ
「・・・それって、エステルの事、よね・・・どうし・・」
「言霊使いの力が不安定になった事はないか?」
「不安定・・・?」
不意にそう言われ考えると、一つだけ思い当たる事があった
「ヘリオードの魔導器がエアルの暴走で可笑しくなった時・・・かな。エアルが爆発した時に壁を作ったんだけど、その後に立ち眩みがして・・・」
「・・・やはりそうか」
「え?」
「あの時、お前と会った時に少し違和感を感じたのはその所為だったのか」
「・・・・」
あの時、それはエアルの暴走が収まった夜にデュークと会った時だった
その時デュークと会ったのはまだ二回目だったのに、ユーリ達も感じていなかった違和感にデュークは気が付いていた・・・
(やっぱり、デュークって只人じゃない・・・)
そう思っているともう一つ思い当たる事があった
「・・・そういえば、ダングレストでフェローがエステルに『忌まわしき毒』って言った時に変に心臓が脈打ったの・・・」
「!?」
その言葉を聞いてデュークは眉を細めて私を見た
「・・・これも何か関係があるの?」
「・・・・・」
デュークは考えるような顔をしていた
「・・・・デューク?」
私はデュークの顔を除き込むとようやく私に気が付き「いや・・・」と言って顔を逸らした
「満月の子もだが、エアルクレーネにも近付かない方が良い」
「エアルクレーネって、ケーブ・モックやカドスの喉笛にあったあのエアルの源水よね・・・?」
「あれは人に害を及ぼす。いや、人だけではない。魔物や植物にも影響を与える。特に力のある者は影響を受けやすい」
力のある者・・・つまり私や兄さん、言霊使いの事だろうか?
「今はまだ大丈夫のようだが、自分の身を案じるならその方が良い」
そう言うとデュークは踵を返し立ち去って行った
「あ! ・・・行っちゃった」
私はデュークが立ち去って行った場所を見て呟いた
「・・・今はまだ大丈夫・・・? 身を案じるって・・・」
また謎が増えてしまったが、その言葉はいつも以上に頭に残った言葉だった
*
「やっぱり此処にいた」
「・・・ユーリ」
デュークが立ち去った後も私はぼーっと海を眺めていると不意にユーリの声が聞こえゆっくりと振り返った
「やっぱりって・・・もしかして探してた?」
「まあな。宿に戻ったらリアだけいなかったからな。で、此処だろうと思って着てみたらいたってワケだ」
以前ユーリに「良く港や海の近くにいる」と言われた事を思い出しているとユーリは私の隣に並んだ
「もうみんな寝ちゃった?」
「エステルとカロルとおっさんはな。リタは昼間から実験に入ってるし、ジュディはいつもみたいにふらふらとどっか行ってる」
「兄さんとアスラは?」
「何か古い文献読んでたな」
「文献?」
「ああ。宿の人に借りて読んでたぞ」
兄さんとアスラはこの街の事に気が付いている
だからこの街の歴史や千年前からの出来事、そしてこの街がどうなったを調べているのだろう
「で、リアは何してたんだ?」
「夜風に当たりに来てそれからずっと此処にいたの」
何故かデュークと居た事、話した事が言えず、そのまま話を進めた
「ずっと、って・・・どんくらいだ?」
「えーっと・・・1時間位?」
はっきりとは分からないが此処に来てデュークと話をした後、少し考え事をしながら海を眺めているといつの間にか時間が経っていて、正確な時間までは分からなかった
そう思っていると急に頬に暖かいものが触れた
それはユーリの手だった
「・・・そりゃ1時間もいりゃ冷えるわな」
途端、急に肩を抱かれそのまま引き寄せられ、すっぽりとユーリの腕の中に埋まった
「・・・ユーリ?」
「こんだけ冷えてたら風邪引くぞ」
ぎゅっと抱きしめられユーリの体温が伝わってきた
「・・・暖かい」
「風邪引いて寝込むなよ。そうなったらエステルが一番心配して、リタ辺りが煩いぞ」
「ふふ、そうだね。でもアルフとライラが両親の帰りを待ってるんだもん。早く会わせてあげたいから風邪は引かないよ」
「そうだな」
「あの子達の笑顔も見たいしね」
「ま、その前に砂漠を越えなきゃだけどな」
「・・・嫌な事言わないでよ・・・ι」
実際、この街が砂漠の中にあるのだから越えないとマンタイクには戻れないのだけど、多少暑さに慣れたとはいえ、暑さがニガテな私にとってはちょっとツライかも・・・ι
「行き掛けみたいに無言になるなよ。またおっさんが騒ぎ出すからな」
「ぜ、善処します・・・・ι」
私の反応を見てユーリは笑ってゆっくりと私から離れた
「さてと、じゃあそろそろ帰るか」
「うん。ありがとユーリ、お陰で暖かくなったよ」
「・・・っ」
ニッコリと笑って言うとユーリは固まってしまい、私は首を傾げた
「・・・ユーリ?」
「・・・・・」
「ユーリ~~ぃ」
私はユーリの顔の前で手をひらひらとさせると、急にユーリがその手を掴んだ
「・・・ユーリ?」
ユーリを見ると真剣な顔をしてじっと私を見ていて一瞬ドキっとした
「「・・・・・・」」
無言で見つめ合う状態になってしまい、この状況をどうしたら良いものかと思っているとユーリの顔が少し私に近付いた
が、途中で止まり横に小さく頭を振った
「・・・ユーリ、どうかした?」
「・・・いや、何でもねぇ。行くぞ」
「う、うん・・・」
言うとユーリは小さく溜息を吐きそのまま私の手を引いて歩き出したが、その顔は何処かバツの悪そうな複雑な顔だった
続く
あとがき
やっと完成した
此処はデュークとの会話をメインで書いて終わるつもりだったのに、ページ数が足りなくて急遽ユーリとの会話を入れたんですけどそれでも足りなくて・・・
此処で甘いの入れるか、入れまいか悩みました
だって次の展開の事を考えるとね・・・ι
そういう訳なのでこんな形になりました(笑)
デュークは言霊使いの事、リアちゃんより知っているみたいですし、何より気になる事言ってましたしね・・・謎の多い人だ(笑)
さて、次回はマンタイクに戻る所と戻った所から始まります
いよいよあのシーンです・・・
リアちゃんにとってはツライかもです・・・
今まで以上に長くなると思うので先に言っておきます
では、また次回!
下書き:2008.12.16
完成:2009.07.16