満月の子編
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翌朝、私達はフェローと砂漠の情報を集める為、街へと向かいだした
外は晴天で気持ちの良い潮風が吹いていた
「今日も良い天気ですね」
「ええ、潮風が気持ち良いわ」
「たまにはこういう目覚めも良いもんだな」
「そうだね。ね、リア」
「え、あ、うん。そうね」
急にカロルに話しを振られカロルの方に顔を向けようとしているとユーリと目が合って、曖昧な返事を返してしまった
昨日の事がある所為か、まともにユーリを見れなかった
(・・・変な逸らし方、してない・・よね?)
そう思っていると私の行動を可笑しく思ったのかリタが口を開こうとした時だった
「おめぇが先に手を出したんだろうが!」
「はあ? 何言ってんだ!」
突然男の怒声が聞こえ私達は足を止めた
何事かと思い船着場の方を見ると男の人が二人、言い争っていた
「お、お二人共、や、やめて下さい。こんな街中では、み、皆さんにご迷惑が・・・」
二人の間に入って喧嘩を止めようとしていたのは、昨日カウフマンさんと話していたラーギィさんだった
「外野はすっこんでろ!」
しかし彼の言葉に二人は聞き耳を立てずに、男は手に持っていたナイフを止めに入ったラーギィさんに振り翳そうとするとユーリが割り込みそのナイフを受け止めた
「物騒なもん振り回すなよ」
「なんだ、お前!」
もう一人の男がユーリに剣先を向けると直ぐさまジュディスが槍でその剣を払い除けた
「なっ!」
「私が悪いのなら後で謝るわ。貴方方が悪いのだとは思うけれど」
男は驚いてジュディスを見るとジュディスはニッコリとして言い男達は舌打ちをしてさっさとその場を離れて行き、野次馬だった人達もほっと息を吐いてその場を離れ私達はラーギィさんに駆け寄った
「ラーギィさん、大丈夫ですか?」
「あ、こ、これは、ご、ご親切にどうも。あ、貴方方は、た、確か、カウフマンさんと一緒におられた・・・」
「ギルド、凛々の明星だよ!」
「ちゃっかり宣伝してるし」
「ふふっ、良いじゃない」
「ケンカを止めたいんならまずは腕っ節つけな」
「あ、はい、すいません。ど、どうも・・・」
するとラーギィさんは何か思い付いた様な顔をして私達を見た
「あ、あの、皆さんを見込んで、お願いしたい事が、ありまして・・・」
「遺講の門のお願いなら放っておけないね」
「ま、内容にもよるな。何だ? お願いって」
「こ、此処で話すのはちょっと・・・と、闘技場まで、来て下さい。そ、そこでお話します」
ラーギィさんはそう言って闘技場の方に向かって行った
「人に聞かれたくない話か・・・。なんかヤバそうだねぇ」
「でも、遺跡の門に顔が通れば、ギルドでの名も上がるし・・・」
「欲張ると一つ一つが疎かになるわよ。今の私達の仕事は・・・」
「フェロー探索とエステルの護衛だからな」
「そうだね・・・うん、気を付ける」
「でも、話聞いてから受けるかどうか決めても遅くないんじゃない?」
「そうだな・・・」
「しょうもない話だったら、断るわよ。あたし達、それどころじゃないんだから」
「とりあえず闘技場に行ってみるか。話だけでも聞きに」
「そうだね。行ってみよう」
ユーリとアスラの言葉に私達は踵を返して闘技場へと向かった
40.曖昧
話を聞きに行くと、やはり人には聞かれたくないのか場所を変える事になった
多分此処は遺講の門が遺跡発掘で使用している洞窟だろう
「受けるかどうかはまだ決めてないぜ。話を聞いてからだ」
「じ、実は、戦士の殿堂を、の、乗っ取ろうとしている男を倒して頂きたいんです」
「乗っ取り・・・!? この街を!?」
「いきなり物騒な話ね、それ」
「でも、なんであんたがそれを止めようとしてんの? 別のギルドの事だし放っとけば良いじゃない」
「パ、戦士の殿堂には、と、闘技場遺跡の調査を、させてもらっていまして」
「そっか、そういやこの街すっごく古いんだよね」
「も、もし別の人間が上に立って、こ、この街との縁が切れたら、始祖の隷長 に申し訳ないです」
「始祖の隷長って何?」
聞いた事の無い名前に皆、疑問符を出す
一部を除いては・・・
「あ、すみません・・・ご、ご存知ないですか。こ、この街を作った古い一族で、我がギルドとこの街の渡りをつけてくれたと聞いています」
「ふーん、古い一族・・・ね」
「それって・・・クリティア族の事?」
カロルはジュディスを見るが、ジュディスは小さく首を傾げた
「んで、どこの誰なのよ、その物騒なヤツって」
「と、闘技場のチャンピオンです」
「はあ? 何、それ?」
「や、奴は大会に参加し、正面から戦士の殿堂に挑んで来たそうです。そ、そして、大会で勝ち続け、ベリウスに急接近しているのです。と、とても危険な奴です。ベリウスの近くからは排除しなければ・・・」
「そりゃ、戦士の殿堂も追い出すに追い出せないわ」
「で、早い話がオレ達に大会に出てそいつに勝てって話なんだな」
「え、ええ。きょ、恐縮です」
「回りくどい・・・そいつの目的って本当に闘技場の乗っ取りな訳?」
「もも、勿論、おお、男の背後には海凶の爪がいるんです!」
「!」
海凶の爪、と言う言葉に私達は驚いて顔を見合わせた
「海凶の爪はこの闘技場を資金源にしてギ、ギルド制圧を・・・!」
「キュモールの野郎辺りが考えてそうな話だな・・・」
「まさか・・・」
「キュモールと海凶の爪は繋がってる。さて、藪を突いたら何が出るか・・・」
「どちらにせよ、海凶の爪が関わっているなら止めないと! 帝国とギルドの関係が悪化するばかりです」
「フェローはどうするの? こんなのじゃいつ会える事か」
「で、でも・・・」
「貴方、本当にやりたい事ってなんなの?」
「本当にやりたい事・・・」
言い淀むエステルにジュディスが鋭い目をしてエステルを見据える
仲間同士の言い争い、と感じたのかラーギィさんが恐る恐る聞いてきた
「あ、あの、すみません。難しいでしょうか?」
「難しくは無いわ」
「え?」
「やるんでしょう? 話を聞いてしまったし」
「う、うん、ギルドとしても放って置けない話、かもしれないし・・・」
「んじゃ、誰が出るわけ?」
「エステルやリタ、レイヴンにはお願い出来ないよ。これは遺講の門に対して凛々の明星が受ける話だもん」
「だから俺等も無理って事だな」
「うん」
「俺等は俺等の仕事やってるから心配すんな」
「それじゃあ・・・」
カロルはユーリとジュディスを交互に見ると先に口を開いたのはユーリだった
「悪ぃけど、ジュディと何処かでぶつかるのは勘弁だな」
「あら? 私はやっても良かったのに残念。今回は大人しくしてるわ」
「首領が出るまでもない。オレで良いだろ?」
「あ、う、うん・・・」
「あの・・・お、お引き受け、下さるので・・・」
「ああ、チャンピオン倒しゃギルドの名も上がるしな。オレ達にとっても悪い話じゃない」
「うん、そうだね・・・」
「では、じゅ、準備が出来たら、う、受付で、手続きして下さい」
ラーギィさんはそう言って立ち去って行った
「・・・さてと、じゃあ俺達は仕事に行くか」
兄さんは小さく溜息を吐くと踵を返し出口へと向かって歩き出そうとしていた
「え? 仕事ってどういう事?」
昨日そんな事を話していなかったのにと言う顔をして一同は兄さんを見て、ユーリは私とアスラを見た
「リアとアスラも行くのか?」
「うん・・・」
「随分と急じゃない。何か遭ったの?」
リタのその質問に兄さんはちらりと私とアスラを見てまた小さく息を吐いてユーリ達に向き合って話を始めた
「・・・さっきの話しが怪しすぎるんだよ」
「今の話が?」
「ええ。私達みたいな情報屋だったらそう言う裏事情ありな事って絶対に耳に入って来るのに・・・」
「あいつが嘘付いてるって事?」
「その可能性がないとは言い切れない。それにもしもその噂が本当なら嫌な事にもなりかねないからな・・・」
確かにその噂が本当ならラーギィさんが言っていた通り、この街で仕事や生活をしている人達の生活や安全にも関わってくる事だ
だからこの話しを聞いた途端、兄さんの表情が変わって仕事に行くと言ったのだった
「だからユーリ達は闘技場の方で調べて。ボク達は内部から調べてみるから」
「解った。みんなもそれで良いな?」
そう言うとみんな納得して頷いた
「けど、無茶だけはするなよ」
「お前が言うか、それ」
「ほどほどにね」
そう言って私達はそれぞれの仕事へと向かって行った
ユーリ達と別れた後、私とアスラと兄さんは各々情報収集をする為に各場所に別れた
この広い闘技場でどう情報を集めるか考え、最初に浮かんだのは現チャンピオンの事を調べる事だった
けど、今日はいつも以上に身が入らない
それは昨日の事が頭から離れないからだった
だから兄さんが仕事の話しを振った時は助かったと思った
あのままユーリと一緒にいたら、それこそさっき以上に変に顔を逸らしたり、曖昧な返事を返してしまうかもしれないからだった
そう思い控え室が並ぶ方へ向かっていると、ある一室に目が止まった
そこには何故か帝国騎士団がいた
(なんでこんな所に騎士団が?)
そう思っているとその部屋から一人の人物が出て来た
「フレン!?」
「リア!?」
その声に反応しフレンは私を見て驚いた顔をした
「何で此処に?」
「それはこっちの台詞だよ。ユーリと一緒じゃないのかい?」
ユーリの名前に少し反応してしまうが、とりあえず今の状況を話した
「ユーリも私も今仕事中。それで別行動してるとこ」
「そうか。ギルド始めたんだったね」
「うん、順調に仕事こなしてるよ」
そう言うとフレンは歩き出し私も隣に並んだ
「ユーリなら直ぐにこなしそうだしな」
「フレンは任務で此処にいるの?」
「ああ。詳しくは話せないんだけどね・・・ところでリア」
「ん? 何?」
フレンはさっきの部屋から少し離れた突き当たりに来ると足を止めた
「・・・ユーリと何か遭ったのかい?」
「・・・え?」
フレンの言葉に私は驚いてフレンを見ると心配そうな顔をして私を見ていた
「僕の気のせいかもしれないけど、ちょっと様子が可笑しかったから」
流石は幼馴染み、と言うべきなのか、少しの違いでも気付いてしまう
私は小さく息を吐いて話し出した
「・・・実は昨日の晩、港でユーリにギルドの名前の由来を話したの。で、暫く話しをして海を眺めててそろそろ帰ろうかと思ってると・・・ユーリが私の手の甲に・・・キス、して・・・///」
それ以上は言えず、顔を赤くして手を胸の前に持って来て手の甲を押さえて俯いてしまった
するとフレンが手を伸ばしてきて、左手の上に重ねていた右手を取って片膝を付いて、ニコリとして私を見た
「・・・こんな風に?」
途端、右手の甲にキスを落とした
「っ/// フ、フレン///!?」
私は驚いて顔を赤くすると、フレンはくすりと笑って立ち上がった
「リア、顔赤いよ?」
「フレンの所為でしょっ///!」
私の反応にフレンはまた面白そうに笑った
「・・・フレン、ユーリみたいに意地悪になったね」
「そうかな?」
「そうだよ・・・」
「じゃあ意地悪になった事にしておくよ」
「フレン隊長」
そう話していると一人の騎士がフレンの所へ走って来た
「お話中、失礼します。そろそろお時間です」
「そうか、ありがとう」
「では、失礼します」
騎士は一礼すると、持ち場へと戻って行った
「ごめん。そろそろ行かないと」
「ううん。こっちこそ呼び止めてごめんね」
「いや、久しぶりにリアと話せて良かったよ」
「私もフレンと話せて良かった」
ニッコリと笑ってフレンを見ていると急にフレンが私の頬に触れ、ゆっくりと顔を近付け、そのまま私の唇に自分のそれを重ね、触れるだけのキスを私に送る
「・・・っ!」
暫くして唇が離れると、フレンは数歩歩きこちらを振り返った
「じゃあまたね、お姫様」
ニッコリとしてフレンは言うとそのまま歩いて行った
「・・・・・///」
私は顔を赤く染め唇を手で押さえ暫くフレンが歩いて行った方を見ていた
「あ、リア此処にいたんだ」
聞き覚えのある声が聞こえたと思ったらアスラが私の方へと向かって来た
「そろそろ準決勝始まる・・・って、どうしたの?」
ボーッと廊下を見ているアスラが私に声を掛け私はゆっくりと口を開いた
「・・・アスラ」
「なに?」
「・・・フレンがユーリみたいに意地悪になっちゃった」
「え・・・?」
さっきのフレンの行動を思い出していると昨日の晩、ユーリにも同じ事をされたのを思い出しまた顔を赤くして唇を手で押さえた
「っ~~///」
「・・・リア、本当に大丈夫ι」
「・・・多分・・・///」
それ以上何も言わなくなった私にアスラは疑問符を出して私を見ていたのだった
続く
あとがき
あっはっは! また遊んじゃいました!
ユーリと来たら次はフレンでしょ!vv って事でフレンの方書いてみました
でもストックで考えてたものと全然違う物になってしまった(笑)
まあ楽しく書けたからいっか☆
それにしてもリアちゃん愛されてますねw(ニヤニヤw)
それではまた次回!
下書き:2008.12.15
完成:2009.07.06
外は晴天で気持ちの良い潮風が吹いていた
「今日も良い天気ですね」
「ええ、潮風が気持ち良いわ」
「たまにはこういう目覚めも良いもんだな」
「そうだね。ね、リア」
「え、あ、うん。そうね」
急にカロルに話しを振られカロルの方に顔を向けようとしているとユーリと目が合って、曖昧な返事を返してしまった
昨日の事がある所為か、まともにユーリを見れなかった
(・・・変な逸らし方、してない・・よね?)
そう思っていると私の行動を可笑しく思ったのかリタが口を開こうとした時だった
「おめぇが先に手を出したんだろうが!」
「はあ? 何言ってんだ!」
突然男の怒声が聞こえ私達は足を止めた
何事かと思い船着場の方を見ると男の人が二人、言い争っていた
「お、お二人共、や、やめて下さい。こんな街中では、み、皆さんにご迷惑が・・・」
二人の間に入って喧嘩を止めようとしていたのは、昨日カウフマンさんと話していたラーギィさんだった
「外野はすっこんでろ!」
しかし彼の言葉に二人は聞き耳を立てずに、男は手に持っていたナイフを止めに入ったラーギィさんに振り翳そうとするとユーリが割り込みそのナイフを受け止めた
「物騒なもん振り回すなよ」
「なんだ、お前!」
もう一人の男がユーリに剣先を向けると直ぐさまジュディスが槍でその剣を払い除けた
「なっ!」
「私が悪いのなら後で謝るわ。貴方方が悪いのだとは思うけれど」
男は驚いてジュディスを見るとジュディスはニッコリとして言い男達は舌打ちをしてさっさとその場を離れて行き、野次馬だった人達もほっと息を吐いてその場を離れ私達はラーギィさんに駆け寄った
「ラーギィさん、大丈夫ですか?」
「あ、こ、これは、ご、ご親切にどうも。あ、貴方方は、た、確か、カウフマンさんと一緒におられた・・・」
「ギルド、凛々の明星だよ!」
「ちゃっかり宣伝してるし」
「ふふっ、良いじゃない」
「ケンカを止めたいんならまずは腕っ節つけな」
「あ、はい、すいません。ど、どうも・・・」
するとラーギィさんは何か思い付いた様な顔をして私達を見た
「あ、あの、皆さんを見込んで、お願いしたい事が、ありまして・・・」
「遺講の門のお願いなら放っておけないね」
「ま、内容にもよるな。何だ? お願いって」
「こ、此処で話すのはちょっと・・・と、闘技場まで、来て下さい。そ、そこでお話します」
ラーギィさんはそう言って闘技場の方に向かって行った
「人に聞かれたくない話か・・・。なんかヤバそうだねぇ」
「でも、遺跡の門に顔が通れば、ギルドでの名も上がるし・・・」
「欲張ると一つ一つが疎かになるわよ。今の私達の仕事は・・・」
「フェロー探索とエステルの護衛だからな」
「そうだね・・・うん、気を付ける」
「でも、話聞いてから受けるかどうか決めても遅くないんじゃない?」
「そうだな・・・」
「しょうもない話だったら、断るわよ。あたし達、それどころじゃないんだから」
「とりあえず闘技場に行ってみるか。話だけでも聞きに」
「そうだね。行ってみよう」
ユーリとアスラの言葉に私達は踵を返して闘技場へと向かった
40.曖昧
話を聞きに行くと、やはり人には聞かれたくないのか場所を変える事になった
多分此処は遺講の門が遺跡発掘で使用している洞窟だろう
「受けるかどうかはまだ決めてないぜ。話を聞いてからだ」
「じ、実は、戦士の殿堂を、の、乗っ取ろうとしている男を倒して頂きたいんです」
「乗っ取り・・・!? この街を!?」
「いきなり物騒な話ね、それ」
「でも、なんであんたがそれを止めようとしてんの? 別のギルドの事だし放っとけば良いじゃない」
「パ、戦士の殿堂には、と、闘技場遺跡の調査を、させてもらっていまして」
「そっか、そういやこの街すっごく古いんだよね」
「も、もし別の人間が上に立って、こ、この街との縁が切れたら、
「始祖の隷長って何?」
聞いた事の無い名前に皆、疑問符を出す
一部を除いては・・・
「あ、すみません・・・ご、ご存知ないですか。こ、この街を作った古い一族で、我がギルドとこの街の渡りをつけてくれたと聞いています」
「ふーん、古い一族・・・ね」
「それって・・・クリティア族の事?」
カロルはジュディスを見るが、ジュディスは小さく首を傾げた
「んで、どこの誰なのよ、その物騒なヤツって」
「と、闘技場のチャンピオンです」
「はあ? 何、それ?」
「や、奴は大会に参加し、正面から戦士の殿堂に挑んで来たそうです。そ、そして、大会で勝ち続け、ベリウスに急接近しているのです。と、とても危険な奴です。ベリウスの近くからは排除しなければ・・・」
「そりゃ、戦士の殿堂も追い出すに追い出せないわ」
「で、早い話がオレ達に大会に出てそいつに勝てって話なんだな」
「え、ええ。きょ、恐縮です」
「回りくどい・・・そいつの目的って本当に闘技場の乗っ取りな訳?」
「もも、勿論、おお、男の背後には海凶の爪がいるんです!」
「!」
海凶の爪、と言う言葉に私達は驚いて顔を見合わせた
「海凶の爪はこの闘技場を資金源にしてギ、ギルド制圧を・・・!」
「キュモールの野郎辺りが考えてそうな話だな・・・」
「まさか・・・」
「キュモールと海凶の爪は繋がってる。さて、藪を突いたら何が出るか・・・」
「どちらにせよ、海凶の爪が関わっているなら止めないと! 帝国とギルドの関係が悪化するばかりです」
「フェローはどうするの? こんなのじゃいつ会える事か」
「で、でも・・・」
「貴方、本当にやりたい事ってなんなの?」
「本当にやりたい事・・・」
言い淀むエステルにジュディスが鋭い目をしてエステルを見据える
仲間同士の言い争い、と感じたのかラーギィさんが恐る恐る聞いてきた
「あ、あの、すみません。難しいでしょうか?」
「難しくは無いわ」
「え?」
「やるんでしょう? 話を聞いてしまったし」
「う、うん、ギルドとしても放って置けない話、かもしれないし・・・」
「んじゃ、誰が出るわけ?」
「エステルやリタ、レイヴンにはお願い出来ないよ。これは遺講の門に対して凛々の明星が受ける話だもん」
「だから俺等も無理って事だな」
「うん」
「俺等は俺等の仕事やってるから心配すんな」
「それじゃあ・・・」
カロルはユーリとジュディスを交互に見ると先に口を開いたのはユーリだった
「悪ぃけど、ジュディと何処かでぶつかるのは勘弁だな」
「あら? 私はやっても良かったのに残念。今回は大人しくしてるわ」
「首領が出るまでもない。オレで良いだろ?」
「あ、う、うん・・・」
「あの・・・お、お引き受け、下さるので・・・」
「ああ、チャンピオン倒しゃギルドの名も上がるしな。オレ達にとっても悪い話じゃない」
「うん、そうだね・・・」
「では、じゅ、準備が出来たら、う、受付で、手続きして下さい」
ラーギィさんはそう言って立ち去って行った
「・・・さてと、じゃあ俺達は仕事に行くか」
兄さんは小さく溜息を吐くと踵を返し出口へと向かって歩き出そうとしていた
「え? 仕事ってどういう事?」
昨日そんな事を話していなかったのにと言う顔をして一同は兄さんを見て、ユーリは私とアスラを見た
「リアとアスラも行くのか?」
「うん・・・」
「随分と急じゃない。何か遭ったの?」
リタのその質問に兄さんはちらりと私とアスラを見てまた小さく息を吐いてユーリ達に向き合って話を始めた
「・・・さっきの話しが怪しすぎるんだよ」
「今の話が?」
「ええ。私達みたいな情報屋だったらそう言う裏事情ありな事って絶対に耳に入って来るのに・・・」
「あいつが嘘付いてるって事?」
「その可能性がないとは言い切れない。それにもしもその噂が本当なら嫌な事にもなりかねないからな・・・」
確かにその噂が本当ならラーギィさんが言っていた通り、この街で仕事や生活をしている人達の生活や安全にも関わってくる事だ
だからこの話しを聞いた途端、兄さんの表情が変わって仕事に行くと言ったのだった
「だからユーリ達は闘技場の方で調べて。ボク達は内部から調べてみるから」
「解った。みんなもそれで良いな?」
そう言うとみんな納得して頷いた
「けど、無茶だけはするなよ」
「お前が言うか、それ」
「ほどほどにね」
そう言って私達はそれぞれの仕事へと向かって行った
ユーリ達と別れた後、私とアスラと兄さんは各々情報収集をする為に各場所に別れた
この広い闘技場でどう情報を集めるか考え、最初に浮かんだのは現チャンピオンの事を調べる事だった
けど、今日はいつも以上に身が入らない
それは昨日の事が頭から離れないからだった
だから兄さんが仕事の話しを振った時は助かったと思った
あのままユーリと一緒にいたら、それこそさっき以上に変に顔を逸らしたり、曖昧な返事を返してしまうかもしれないからだった
そう思い控え室が並ぶ方へ向かっていると、ある一室に目が止まった
そこには何故か帝国騎士団がいた
(なんでこんな所に騎士団が?)
そう思っているとその部屋から一人の人物が出て来た
「フレン!?」
「リア!?」
その声に反応しフレンは私を見て驚いた顔をした
「何で此処に?」
「それはこっちの台詞だよ。ユーリと一緒じゃないのかい?」
ユーリの名前に少し反応してしまうが、とりあえず今の状況を話した
「ユーリも私も今仕事中。それで別行動してるとこ」
「そうか。ギルド始めたんだったね」
「うん、順調に仕事こなしてるよ」
そう言うとフレンは歩き出し私も隣に並んだ
「ユーリなら直ぐにこなしそうだしな」
「フレンは任務で此処にいるの?」
「ああ。詳しくは話せないんだけどね・・・ところでリア」
「ん? 何?」
フレンはさっきの部屋から少し離れた突き当たりに来ると足を止めた
「・・・ユーリと何か遭ったのかい?」
「・・・え?」
フレンの言葉に私は驚いてフレンを見ると心配そうな顔をして私を見ていた
「僕の気のせいかもしれないけど、ちょっと様子が可笑しかったから」
流石は幼馴染み、と言うべきなのか、少しの違いでも気付いてしまう
私は小さく息を吐いて話し出した
「・・・実は昨日の晩、港でユーリにギルドの名前の由来を話したの。で、暫く話しをして海を眺めててそろそろ帰ろうかと思ってると・・・ユーリが私の手の甲に・・・キス、して・・・///」
それ以上は言えず、顔を赤くして手を胸の前に持って来て手の甲を押さえて俯いてしまった
するとフレンが手を伸ばしてきて、左手の上に重ねていた右手を取って片膝を付いて、ニコリとして私を見た
「・・・こんな風に?」
途端、右手の甲にキスを落とした
「っ/// フ、フレン///!?」
私は驚いて顔を赤くすると、フレンはくすりと笑って立ち上がった
「リア、顔赤いよ?」
「フレンの所為でしょっ///!」
私の反応にフレンはまた面白そうに笑った
「・・・フレン、ユーリみたいに意地悪になったね」
「そうかな?」
「そうだよ・・・」
「じゃあ意地悪になった事にしておくよ」
「フレン隊長」
そう話していると一人の騎士がフレンの所へ走って来た
「お話中、失礼します。そろそろお時間です」
「そうか、ありがとう」
「では、失礼します」
騎士は一礼すると、持ち場へと戻って行った
「ごめん。そろそろ行かないと」
「ううん。こっちこそ呼び止めてごめんね」
「いや、久しぶりにリアと話せて良かったよ」
「私もフレンと話せて良かった」
ニッコリと笑ってフレンを見ていると急にフレンが私の頬に触れ、ゆっくりと顔を近付け、そのまま私の唇に自分のそれを重ね、触れるだけのキスを私に送る
「・・・っ!」
暫くして唇が離れると、フレンは数歩歩きこちらを振り返った
「じゃあまたね、お姫様」
ニッコリとしてフレンは言うとそのまま歩いて行った
「・・・・・///」
私は顔を赤く染め唇を手で押さえ暫くフレンが歩いて行った方を見ていた
「あ、リア此処にいたんだ」
聞き覚えのある声が聞こえたと思ったらアスラが私の方へと向かって来た
「そろそろ準決勝始まる・・・って、どうしたの?」
ボーッと廊下を見ているアスラが私に声を掛け私はゆっくりと口を開いた
「・・・アスラ」
「なに?」
「・・・フレンがユーリみたいに意地悪になっちゃった」
「え・・・?」
さっきのフレンの行動を思い出していると昨日の晩、ユーリにも同じ事をされたのを思い出しまた顔を赤くして唇を手で押さえた
「っ~~///」
「・・・リア、本当に大丈夫ι」
「・・・多分・・・///」
それ以上何も言わなくなった私にアスラは疑問符を出して私を見ていたのだった
続く
あとがき
あっはっは! また遊んじゃいました!
ユーリと来たら次はフレンでしょ!vv って事でフレンの方書いてみました
でもストックで考えてたものと全然違う物になってしまった(笑)
まあ楽しく書けたからいっか☆
それにしてもリアちゃん愛されてますねw(ニヤニヤw)
それではまた次回!
下書き:2008.12.15
完成:2009.07.06