満月の子編
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アーセルム号のマストが折れ、来た道が塞がってしまいフィエルティア号で待機していた兄さん、エステル、カロル、リタ、レイヴンが出口を探すべくアーセルム号に乗り込んだ
見張りは兄さんの式神で相棒であるフキがやってくれているので安心出来る
そして私達は兄さん達と合流出来そうな所へと向かい出したのだった
38.橙明の核晶
暫く歩いているとまた扉が見え私達はその部屋に入ると反対側の扉が開いた
「兄さん!」
「お、やっと見つけた」
「良かった、無事だったんですね!」
「お前等もな」
エステルは私達の姿を見るとこちらに走って来た
「みんなも無事で何よりだよ」
「ジュディスちゃんこそ無事で何よりよ」
「あら、心配してくれてありがとう」
「あ、あたしは・・・べ、別に」
リタはそう言って顔を赤くするが、直ぐに安堵の息を吐いていた
「ね、ねぇ、こんな所、早く出ようよ」
みんな安心はするもののカロルは恐怖に耐えきれなくなったのか焦りだした
キイィィ
バタン
「え?」
が、急に兄さん達が入って来た扉が閉じた
「ウ、ウソでしょ・・・!?」
私達はその出来事に固まった
「きっとこの船の悪霊達が、私達を仲間入りさせようと船底で相談してるんです・・・」
「へ、変な想像しないでよ・・・!」
「あ、ありえねぇって」
「そう言う気配はないんだけどね・・・」
「ただ、何かあるのは間違いなさそうだな」
「此処までご丁寧にやるくらいだしね」
「確かにな。ま、それもだがそこがダメなら別の出口を探すまでだ」
「そうね、行きましょう」
このメンバーの中で冷静を保てているメンバーの言葉に皆頷いて歩き出した
「やっぱりみんな一緒だと心強いですね」
「こういう時に実感するなあ、協力する事の大切さをさ」
「ま、まあ、そうね。ガキんちょにしては良い事言うじゃない」
暫く歩いているとエステルがニッコリとして話しを振るとカロルもリタも同意した
確かに少人数でこんな所にいるよりかは大人数で居た方が気持ちも和らぐものだ
「協力らしい事は一切やってないけどな」
「うふっ、まあ良いじゃない。一緒にいて怖さが和らぐなら」
「そうね」
「ぎゃー! あそこに亡霊の影が!」
「きゃあぁぁ!」「いやああっ!」「ぎゃあああ!」
ジュディスと一緒に微笑んでいると急にレイヴンが大きな声を出し、その言葉にエステルとカロルとリタが驚いて私の後ろに隠れた
「あ、悪い、わんこの影だったみたい」
「ワン、ワン!」
「あ、あんた、殺すわ。今すぐ殺してあんたを亡霊にしてあげる!」
「リ、リタ、落ち着いて下さい!」「リタ、落ち着いて!」
リタは私の後ろから出ると詠唱を始め、それを私の後ろに隠れていたエステルとカロルが止めようとしていた
「・・・良い反応とオチだったねぇ~」
「何やってんだか・・・」
「怖がってる割には元気だな、あいつ等」
その様子をアスラは面白そうに見ていてユーリと兄さんは呆れながら見ていた
すると上の階へと続く階段が見えた
「お、この上から出られそうじゃないか?」
今までだったら途中で途切れていて上るに上れないと言ったものだったが、この階段だけは上る事が出来た
上ったその部屋は一室だけ造りの違う場所にたどり着いた
鏡の縁も今までで一番豪華で広い空間なので、多分此処は船長室だったのだろう
「ひぃっ・・・・!」
部屋の奥に進んで行くと突然カロルが悲鳴を上げた
その理由は部屋の中央にある机に覆い被さるようにして骸骨が横たわっていたからだった
そしてその隣には日誌らしきものが見え私とユーリと兄さんはその日誌に向かって歩き出した
「アスール歴232年、ブルエールの月13?」
「アスール歴もブルエールの月も帝国が出来る前の暦ですね」
「千年以上も昔、か・・・」
「そんなに?」
私はその日誌に目を戻し、読み始めた
「船が漂流して40と5日、水も食料も等に尽きた。船員も次々と飢えに倒れる。しかし私は逝けない。ヨームゲンの街に、橙明の核晶 を届けなくては・・・魔物を退ける力を持つ橙明の核晶があれば、街は助かる。橙明の核晶を例の紅の小箱に収めた。ユイファンに貰った大切な箱だ。彼女にももう少しで会える。みんなも救える」
「結局、この人は此処で亡くなったって事か」
「・・・・・」
船にしては大きな作りでかなり古い型の船、船内もかなり変わった作りでアーセルム号という文字も今私達が使っているものとは少し違うものだった
千年も前からあるならこんなにボロボロになるほどだ、とそれで納得がいった
しかしエステルだけは何処か違う事を考えているようだった
「ボク、ヨームゲンなんて街、聞いた事ないなぁ・・・」
「これがほんとに千年前の記憶なら街だって残ってるかどうか」
「アスラ、聞いた事ない?」
「・・・確か砂漠の近くにそんな名前の街があったような気がするけど・・・」
「あるんですか!?」
アスラの言葉にエステルは反応するがアスラは考え込んで答える
「今はどうか解らないよ。その区域ってあんまり行かないし・・・」
「ま、そうだよな。 ・・・橙明の核晶ってのは?」
「あたしは知らないけど・・・どう?」
リタもまたアスラに振るが、直ぐには答えようとしなかった
「・・・魔物を退ける力、としか言いようがない・・・かな」
「知ってるの!?」
今度はリタが食いつくが、アスラは首を横に振る
「詳しくは知らないよ。けど、そう言う物があるって言うのしか・・・」
「結界みたいなものじゃないかしら?」
「そんな感じだと思う」
そう言うとリタはそう・・・と言って引き下がった
此処までアスラが言葉を濁して言いたくない、と言うのも珍しい
あまり触れたくない事なのかもしれない・・・
「その辺にないか?」
「紅の小箱って言ってたよな? 多分、これじゃないか?」
兄さんは骸骨が大事そうに抱えている紅の箱を指した
「・・・大事そうに抱えてる」
「これが橙明の核晶かな?」
「日誌に書かれてた通りなら、これがそうだろうな」
「お、おっさん、取ってよ・・・!」
「イ、イヤだっての。何言い出すのよ、まったくこの若人は」
「はい」
ジュディスは構わず箱を取った
その箱には腕の骨がくっついていたが・・・
「うひゃぁ」
レイヴンは驚きながらもその箱を受け取り、ジュディスは残った腕の骨を持っていた
「ジュディスちゃん、大胆だねぇ」
「呪われちゃうかしら」
ジュディスは笑顔で腕の骨を持ちながら言った
「後で何とかした方が良いかもな」
「うん・・・」
「あれ、開かないぞ・・・」
レイヴンは箱を開けようとしていると急にカロルが怯えた声を出した
「あ、あ、あ、あ、あれ・・・」
「ん・・・うぉっ!」
何事かと思いカロルが指指す方を見ると、大きな鏡に無数の霊の魔物が映っていた
「逆のようね」
「何が!?」
「魔物を引き寄せてるって事」
「生きてる者に反応して集まって来るからね」
「怖い事言わないで!!」
「実際本当の事だしな。ほら、お前達は下がってろ」
「え? で、でも来ますよ!?」
「良いから。此処はリア達に任せとけって」
ユーリの制止の言葉を聞くとエステル達は大人しくなり私達の様子をじっと見ていた
「さてと、じゃあ久々に本業の方やるか」
「そうだね。まあこれくらいなら全然時間掛からないし」
「カウフマンさん達も待ってる事だし、ぱっと終わらせちゃお!」
「ああ」「了解」
兄さんとアスラの返事を聞くと私達は四方に分かれ、呪文を唱えながら円陣を描くように移動して敵を引きつけ、呪文が終わりに近付き敵を円陣の真ん中に集めた
そして呪文を唱え終わり、私達は剣を振り翳した
「「はああぁぁぁ!!」」
その途端、集まっていた魔物が一気に消えた
「す、凄い!!」
「何だありゃ!?」
「あんな技、初めて見ました」
「あれが・・・あの子達の力・・・」
皆、それぞれ違った驚きを見せていた
それはユーリも同じだった
兄さん達と合流する前に見ているとはいえ、これはその時とはかなり力ややり方が違うから驚くもの当然かもしれない
が、ジュディスだけはいつも通りだった
「もう大丈夫よ」
ユーリ達は私の言葉を聞き鏡を見ると魔物の姿は見えなくなっていた
「はぁ~、勘弁してよ、もう」
「じゃあ返してあげる? あの人に」
「返した方が良いって!」
「あの・・・わたし、その橙明の核晶をヨームゲンに届けてあげたいです」
「何言い出すのよ!」
「橙明の核晶届けをギルドの仕事に加えてもらえないでしょうか?」
ユーリと兄さんをちらりと見るとやっぱりな、という顔をしていた
そうなるだろうな、と私もアスラも思ってはいたけど
「だめだよ。エステル。基本的にボク達みたいなちっちゃなギルドは一つの仕事を完了するまで次の仕事は受けないんだ」
「一つ一つしっかり仕事していくのがギルドの信用に繋がるからなぁ」
「あら? またその娘の宛もない話でギルドが右往左往するの?」
「ちょっと! あんた、他に言い方があるんじゃないの!?」
「リタ待って・・・ごめんなさい、ジュディス。でも、この人の思いを届けてあげたい・・・。待っている人に」
「待ってる人っつっても千年も前の話なんだよなあ」
「アスラの話しを聞く限り、街もあるか分かんないみたいだし・・・」
「・・・・・」
困っているエステルを見かねてリタが「あたしが探す」と名乗りを上げた
「リタ・・・」
「フェロー探しとエステルの護衛、あんた達はあんた達の仕事やりゃ良いでしょ。あたしは勝手にやる」
「リタ、私も手伝う」
「俺も手伝うぜ」
「リア、セイ・・・」
急に名乗りを上げた私達に驚いてみんな私達を見た
「ちょっ、何言って・・・」
「その街を知ってるって言う情報はアスラが持ってるんだぜ? だったら知ってる奴がいた方が良いと思うけどな」
「それにボク等がいた方が何かと便利だと思うけどな・・・」
その言葉の意味を理解したのは数秒後だった
「・・・なら、良いけど」
「じゃ、ボクも付き合うよ!」
「暇なら、オレも付き合っても良いぜ」
「ちょ、ちょっとあんた達は仕事やってりゃ良いのよ!」
ユーリとカロルの言葉にリタはまた声を荒わげた
「どうせオレ達に着いてくんだろ。だったら仕事外として少し手伝う分にゃ、問題ない」
「・・・ま、ユーリならそう言うと思ってたけどね」
「ああ」
ユーリの言葉に私と兄さんとアスラは小さく笑った
「有り難う御座います」
「若人は元気があって良いねぇ・・・ん?」
エステルはお辞儀をしてお礼を言うとレイヴンが窓の外を見て怪訝そうな顔をした
「どうかした?」
「外に何か煙みたいのが・・・」
レイヴンのその言葉に私達は彼が体を向けている方へ顔を向ける
すると、発煙筒が登ってくるのが見えた
「お、トクナガの発煙筒かもな。駆動魔導器、直ったか?」
「戻ってみようよ」
「そんな事言っても、来た道戻れなくなっちゃってるわよ」
「あそこの扉は?」
「さっきボクが試したけど開かな「開いたぞ」
兄さんはカロルの言葉の前に動き扉を開けていた
「え? 何で? さっきは開かなかったのに・・・」
カロルは少し怯えながら言うがフォローを入れる
「きっと、この方が透明の刻晶を誰かに渡したくて、わたし達を呼んだんじゃないでしょうか」
エステルの言葉に私達は骸骨と紅い箱を交互に見る
「・・・うん、そうだと思う」
私もエステルの言った事に同感して微笑んだ
実際に言霊使いの仕事をしているとこういう事があるのは珍しい事じゃないから
「そうだな。とりあえず開いたんだ。行ってみようぜ」
「出口かもしれませんしね」
そしてエステル達は歩き出したが私は骸骨の所まで戻り、懐から一枚の札を出し目を閉じて念じ、その札を机の上に置いてユーリ達の後を追った
続く
あとがき
専門業発動!!(笑)
言霊使いの仕事をさくっとやってみました
ホントにさくっとで終わったけどね(笑)
でもこういう力があるんだから使わないと損でしょ!(これ前回も言ったけど(笑))
因みに最後の札ですが、あれは追悼みたなものと思って下さい
では!
下書き:2008.12.13
完成:2009.07.05
見張りは兄さんの式神で相棒であるフキがやってくれているので安心出来る
そして私達は兄さん達と合流出来そうな所へと向かい出したのだった
38.
暫く歩いているとまた扉が見え私達はその部屋に入ると反対側の扉が開いた
「兄さん!」
「お、やっと見つけた」
「良かった、無事だったんですね!」
「お前等もな」
エステルは私達の姿を見るとこちらに走って来た
「みんなも無事で何よりだよ」
「ジュディスちゃんこそ無事で何よりよ」
「あら、心配してくれてありがとう」
「あ、あたしは・・・べ、別に」
リタはそう言って顔を赤くするが、直ぐに安堵の息を吐いていた
「ね、ねぇ、こんな所、早く出ようよ」
みんな安心はするもののカロルは恐怖に耐えきれなくなったのか焦りだした
キイィィ
バタン
「え?」
が、急に兄さん達が入って来た扉が閉じた
「ウ、ウソでしょ・・・!?」
私達はその出来事に固まった
「きっとこの船の悪霊達が、私達を仲間入りさせようと船底で相談してるんです・・・」
「へ、変な想像しないでよ・・・!」
「あ、ありえねぇって」
「そう言う気配はないんだけどね・・・」
「ただ、何かあるのは間違いなさそうだな」
「此処までご丁寧にやるくらいだしね」
「確かにな。ま、それもだがそこがダメなら別の出口を探すまでだ」
「そうね、行きましょう」
このメンバーの中で冷静を保てているメンバーの言葉に皆頷いて歩き出した
「やっぱりみんな一緒だと心強いですね」
「こういう時に実感するなあ、協力する事の大切さをさ」
「ま、まあ、そうね。ガキんちょにしては良い事言うじゃない」
暫く歩いているとエステルがニッコリとして話しを振るとカロルもリタも同意した
確かに少人数でこんな所にいるよりかは大人数で居た方が気持ちも和らぐものだ
「協力らしい事は一切やってないけどな」
「うふっ、まあ良いじゃない。一緒にいて怖さが和らぐなら」
「そうね」
「ぎゃー! あそこに亡霊の影が!」
「きゃあぁぁ!」「いやああっ!」「ぎゃあああ!」
ジュディスと一緒に微笑んでいると急にレイヴンが大きな声を出し、その言葉にエステルとカロルとリタが驚いて私の後ろに隠れた
「あ、悪い、わんこの影だったみたい」
「ワン、ワン!」
「あ、あんた、殺すわ。今すぐ殺してあんたを亡霊にしてあげる!」
「リ、リタ、落ち着いて下さい!」「リタ、落ち着いて!」
リタは私の後ろから出ると詠唱を始め、それを私の後ろに隠れていたエステルとカロルが止めようとしていた
「・・・良い反応とオチだったねぇ~」
「何やってんだか・・・」
「怖がってる割には元気だな、あいつ等」
その様子をアスラは面白そうに見ていてユーリと兄さんは呆れながら見ていた
すると上の階へと続く階段が見えた
「お、この上から出られそうじゃないか?」
今までだったら途中で途切れていて上るに上れないと言ったものだったが、この階段だけは上る事が出来た
上ったその部屋は一室だけ造りの違う場所にたどり着いた
鏡の縁も今までで一番豪華で広い空間なので、多分此処は船長室だったのだろう
「ひぃっ・・・・!」
部屋の奥に進んで行くと突然カロルが悲鳴を上げた
その理由は部屋の中央にある机に覆い被さるようにして骸骨が横たわっていたからだった
そしてその隣には日誌らしきものが見え私とユーリと兄さんはその日誌に向かって歩き出した
「アスール歴232年、ブルエールの月13?」
「アスール歴もブルエールの月も帝国が出来る前の暦ですね」
「千年以上も昔、か・・・」
「そんなに?」
私はその日誌に目を戻し、読み始めた
「船が漂流して40と5日、水も食料も等に尽きた。船員も次々と飢えに倒れる。しかし私は逝けない。ヨームゲンの街に、
「結局、この人は此処で亡くなったって事か」
「・・・・・」
船にしては大きな作りでかなり古い型の船、船内もかなり変わった作りでアーセルム号という文字も今私達が使っているものとは少し違うものだった
千年も前からあるならこんなにボロボロになるほどだ、とそれで納得がいった
しかしエステルだけは何処か違う事を考えているようだった
「ボク、ヨームゲンなんて街、聞いた事ないなぁ・・・」
「これがほんとに千年前の記憶なら街だって残ってるかどうか」
「アスラ、聞いた事ない?」
「・・・確か砂漠の近くにそんな名前の街があったような気がするけど・・・」
「あるんですか!?」
アスラの言葉にエステルは反応するがアスラは考え込んで答える
「今はどうか解らないよ。その区域ってあんまり行かないし・・・」
「ま、そうだよな。 ・・・橙明の核晶ってのは?」
「あたしは知らないけど・・・どう?」
リタもまたアスラに振るが、直ぐには答えようとしなかった
「・・・魔物を退ける力、としか言いようがない・・・かな」
「知ってるの!?」
今度はリタが食いつくが、アスラは首を横に振る
「詳しくは知らないよ。けど、そう言う物があるって言うのしか・・・」
「結界みたいなものじゃないかしら?」
「そんな感じだと思う」
そう言うとリタはそう・・・と言って引き下がった
此処までアスラが言葉を濁して言いたくない、と言うのも珍しい
あまり触れたくない事なのかもしれない・・・
「その辺にないか?」
「紅の小箱って言ってたよな? 多分、これじゃないか?」
兄さんは骸骨が大事そうに抱えている紅の箱を指した
「・・・大事そうに抱えてる」
「これが橙明の核晶かな?」
「日誌に書かれてた通りなら、これがそうだろうな」
「お、おっさん、取ってよ・・・!」
「イ、イヤだっての。何言い出すのよ、まったくこの若人は」
「はい」
ジュディスは構わず箱を取った
その箱には腕の骨がくっついていたが・・・
「うひゃぁ」
レイヴンは驚きながらもその箱を受け取り、ジュディスは残った腕の骨を持っていた
「ジュディスちゃん、大胆だねぇ」
「呪われちゃうかしら」
ジュディスは笑顔で腕の骨を持ちながら言った
「後で何とかした方が良いかもな」
「うん・・・」
「あれ、開かないぞ・・・」
レイヴンは箱を開けようとしていると急にカロルが怯えた声を出した
「あ、あ、あ、あ、あれ・・・」
「ん・・・うぉっ!」
何事かと思いカロルが指指す方を見ると、大きな鏡に無数の霊の魔物が映っていた
「逆のようね」
「何が!?」
「魔物を引き寄せてるって事」
「生きてる者に反応して集まって来るからね」
「怖い事言わないで!!」
「実際本当の事だしな。ほら、お前達は下がってろ」
「え? で、でも来ますよ!?」
「良いから。此処はリア達に任せとけって」
ユーリの制止の言葉を聞くとエステル達は大人しくなり私達の様子をじっと見ていた
「さてと、じゃあ久々に本業の方やるか」
「そうだね。まあこれくらいなら全然時間掛からないし」
「カウフマンさん達も待ってる事だし、ぱっと終わらせちゃお!」
「ああ」「了解」
兄さんとアスラの返事を聞くと私達は四方に分かれ、呪文を唱えながら円陣を描くように移動して敵を引きつけ、呪文が終わりに近付き敵を円陣の真ん中に集めた
そして呪文を唱え終わり、私達は剣を振り翳した
「「はああぁぁぁ!!」」
その途端、集まっていた魔物が一気に消えた
「す、凄い!!」
「何だありゃ!?」
「あんな技、初めて見ました」
「あれが・・・あの子達の力・・・」
皆、それぞれ違った驚きを見せていた
それはユーリも同じだった
兄さん達と合流する前に見ているとはいえ、これはその時とはかなり力ややり方が違うから驚くもの当然かもしれない
が、ジュディスだけはいつも通りだった
「もう大丈夫よ」
ユーリ達は私の言葉を聞き鏡を見ると魔物の姿は見えなくなっていた
「はぁ~、勘弁してよ、もう」
「じゃあ返してあげる? あの人に」
「返した方が良いって!」
「あの・・・わたし、その橙明の核晶をヨームゲンに届けてあげたいです」
「何言い出すのよ!」
「橙明の核晶届けをギルドの仕事に加えてもらえないでしょうか?」
ユーリと兄さんをちらりと見るとやっぱりな、という顔をしていた
そうなるだろうな、と私もアスラも思ってはいたけど
「だめだよ。エステル。基本的にボク達みたいなちっちゃなギルドは一つの仕事を完了するまで次の仕事は受けないんだ」
「一つ一つしっかり仕事していくのがギルドの信用に繋がるからなぁ」
「あら? またその娘の宛もない話でギルドが右往左往するの?」
「ちょっと! あんた、他に言い方があるんじゃないの!?」
「リタ待って・・・ごめんなさい、ジュディス。でも、この人の思いを届けてあげたい・・・。待っている人に」
「待ってる人っつっても千年も前の話なんだよなあ」
「アスラの話しを聞く限り、街もあるか分かんないみたいだし・・・」
「・・・・・」
困っているエステルを見かねてリタが「あたしが探す」と名乗りを上げた
「リタ・・・」
「フェロー探しとエステルの護衛、あんた達はあんた達の仕事やりゃ良いでしょ。あたしは勝手にやる」
「リタ、私も手伝う」
「俺も手伝うぜ」
「リア、セイ・・・」
急に名乗りを上げた私達に驚いてみんな私達を見た
「ちょっ、何言って・・・」
「その街を知ってるって言う情報はアスラが持ってるんだぜ? だったら知ってる奴がいた方が良いと思うけどな」
「それにボク等がいた方が何かと便利だと思うけどな・・・」
その言葉の意味を理解したのは数秒後だった
「・・・なら、良いけど」
「じゃ、ボクも付き合うよ!」
「暇なら、オレも付き合っても良いぜ」
「ちょ、ちょっとあんた達は仕事やってりゃ良いのよ!」
ユーリとカロルの言葉にリタはまた声を荒わげた
「どうせオレ達に着いてくんだろ。だったら仕事外として少し手伝う分にゃ、問題ない」
「・・・ま、ユーリならそう言うと思ってたけどね」
「ああ」
ユーリの言葉に私と兄さんとアスラは小さく笑った
「有り難う御座います」
「若人は元気があって良いねぇ・・・ん?」
エステルはお辞儀をしてお礼を言うとレイヴンが窓の外を見て怪訝そうな顔をした
「どうかした?」
「外に何か煙みたいのが・・・」
レイヴンのその言葉に私達は彼が体を向けている方へ顔を向ける
すると、発煙筒が登ってくるのが見えた
「お、トクナガの発煙筒かもな。駆動魔導器、直ったか?」
「戻ってみようよ」
「そんな事言っても、来た道戻れなくなっちゃってるわよ」
「あそこの扉は?」
「さっきボクが試したけど開かな「開いたぞ」
兄さんはカロルの言葉の前に動き扉を開けていた
「え? 何で? さっきは開かなかったのに・・・」
カロルは少し怯えながら言うがフォローを入れる
「きっと、この方が透明の刻晶を誰かに渡したくて、わたし達を呼んだんじゃないでしょうか」
エステルの言葉に私達は骸骨と紅い箱を交互に見る
「・・・うん、そうだと思う」
私もエステルの言った事に同感して微笑んだ
実際に言霊使いの仕事をしているとこういう事があるのは珍しい事じゃないから
「そうだな。とりあえず開いたんだ。行ってみようぜ」
「出口かもしれませんしね」
そしてエステル達は歩き出したが私は骸骨の所まで戻り、懐から一枚の札を出し目を閉じて念じ、その札を机の上に置いてユーリ達の後を追った
続く
あとがき
専門業発動!!(笑)
言霊使いの仕事をさくっとやってみました
ホントにさくっとで終わったけどね(笑)
でもこういう力があるんだから使わないと損でしょ!(これ前回も言ったけど(笑))
因みに最後の札ですが、あれは追悼みたなものと思って下さい
では!
下書き:2008.12.13
完成:2009.07.05