満月の子編
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宿を後にして私達は港へ向かいだした
その途中、見覚えのある人物が前から歩いて来た
「あれ、ヨーデル・・・」
「あ・・・皆さん、またお会いしましたね」
「時期皇帝候補殿が、こんなとこで何やってんだ?」
「ドンと友好協定締結に関するやり取りを行っています」
「うまくいってます?」
「それが・・・順調とはいえません」
「だろうなぁ。ヘラクレスってデカ物の所為で、ユニオンは反帝国ブーム再燃中でしょ」
ヘラクレスと言えば、アレクセイが止むを得ないと言って使用していた巨大兵器のようなものだ
その威力は予想以上のものだった
ユニオン側も存在を知らなかったとなれば、対等な立場の友好協定を結ぶなんて反対する声も上がるだろう
「その影響で帝国側でも友好協定に疑問の声が上がっています」
「ドンが帝国に提示した条件は対等な立場での協定だったしな」
「あんなのがあったら、対等とは言えないわね」
「ええ・・・事前にヘラクレスの事を知っていれば止められたのですが・・・」
「次の皇帝候補が、何も知らなかったのかよ」
「ええ、今私には騎士団の指揮権限がありません」
「騎士団は、皇帝にのみその行動をゆだね、報告の義務を持つ、です」
「なら、話は簡単だ。皇帝になればいい」
「・・それは・・・私がそのつもりでも、今は帝位を継承出来ないんです」
「何でよ?」
「帝位継承には宙の威典と言う帝国の至宝が必要なのです。ところが宙の威典は十年前の人魔戦争の頃から行方不明で・・・」
「ふーん、次の皇帝が決まらないのはそう言う裏事情があったのね」
「・・・だからラゴウは宙の威典を欲しがってたのか・・・」
「何、ユーリ?」
「いや・・・」
「それにしても皇帝候補が道ばたへもへも歩いてて良いの?」
「今、ヘリオードに向かう所なんです」
「此処よりダングレストに近いからなぁ。その方がやり取りしやすいわな」
「ええ」
「ヨーデル様、参りましょう」
「すみませんが、此処で失礼します」
ヨーデル様は一礼すると、護衛の人と一緒に歩いて行った
「・・・・・」
エステルを見ると何処か申し訳ない、と言った顔をしていた
確かにエステルの立場を考えればそうなってしまうかもしれない
けど今はエステル自身がやると決めた事をやるべきだと思い、私はエステルに微笑むとエステルも微笑み返し、再び港へと向かって歩き出した
36.船と幽霊船?
港で船を調達しようとしていると反対側の港から男性の声が聞こえた
「あんなに沢山、勘弁してくれ~!」
「命がいくらあっても足りねえよ!」
「何が遭ったんだ?」
「待ちなさい! 金の分は仕事しろ! しないなら返せ~~~っ!!」
私達はその声の方に視線を向けると、見覚えのある女性が逃げている男二人に向かって叫んでいた
「あの人、確かデイドン砦で」
「ああ、あん時の・・・」
「し、知り合いなの?」
「いや、前に一度だけ。お前こそ知り合い?」
「知り合いって・・・5大ギルドの一つ、幸福の市場の社長だよ」
「つまり、ユニオンの重鎮よ」
「ふーん・・・」
「良い事思い付いた・・・!」
「どうした、カロル」
「あの人なら海渡る船出してくれるかもしれないよ」
「なら行ってみましょ」
皆カロルの提案に乗るが、どうにも先程の男達の事が気になった
「・・・一筋縄ではいかない気がするのは俺だけか?」
「いや、ボクもそう思う」
「さっきの男達が逃げて行ったくらいだからな」
「何かあるって思ってた方が良いわね、これは」
「そうだね」
上から兄さん、アスラ、ユーリ、レイヴン、私が各々思っている事を口にして、カロル達の後を追った
「あら、貴方はユーリ・ローウェル君。良い所で会ったわ」
「手配書の効果ってすげえんだな」
あの手配書で良くユーリだと解ったものだι と思っているとカウフマンさんはユーリを見た
「ねえ、貴方にピッタリの仕事があるんだけど」
「って事は荒仕事か」
「察しの良い子は好きよ。聞いてるかもしれないけど、この季節、魚人の群れが船の積荷を襲うんで大変なの」
「あれ? それっていつも他のギルドに護衛を頼んでるんじゃ・・・」
「それがいつもお願いしてる傭兵団の首領が亡くなったらしくて今使えないのよ。他の傭兵団は骨なしばかり。私としては頭の痛い話しね」
「その傭兵団はなんて所・・・ですか?」
カロルが恐る恐る聞くと、返ってきたのは「紅の絆傭兵団」と言う名前だった
予想通りの言葉にリタを先頭に皆にユーリを見た
「誰かさんが潰しちゃったから」
「みんな、同罪だろ・・・」
小声で話すとユーリは踵を返して歩き出そうとしていた
「生憎と今、取り込み中でね。他を当たってくれ、じゃあな」
「え、ユーリ! 船の事お願いするんでしょ?」
「あら、船って?」
「オレ達もギルド作ったんだよ」
「凛々の明星って言うんです!」
その言葉を聞くとカウフマンさんはニッコリとしてユーリとカロルを見た
「素敵、それじゃ商売のお話しましょうか。相互利益は商売の基本、お互いの為になるわ」
「悪いが仕事の最中でな。他の仕事は請けられねえ」
「それなら商売じゃなくて、ギルド同士の協力って事でどう? それならギルドの信頼には反しなくってよ。うちと仲良くしておくと、色々お得よ~?」
他の依頼を受けている間は無理だと切り捨てようとするが、ギルド同士の協力はどうかと進められて思い止まる
5大ギルドである幸福の市場と仲良くなっていれば色々と今後プラスになるだろう
「あ・・・うー、えと」
その事を考えカロルは言い淀んでしまうが、直ぐにユーリが返事を返した
「分かったよ、けどオレ達はノードポリカに行きたいんだ。遠回りはごめんだぜ」
「構わないわ、魚人が出るのは此処の近海だもの。こちらとしては余所の港に行けさえすればそれで良いの。そしたらそこからいくらでも船を手配出来るから」
流石5大ギルド、ユニオンの運営に携わっている幸福の市場
そこまで手配出来るとは、相当顔も広い
「契約成立、かしら?」
「何か、良いように言いくるめられた気がする」
「流石天下の幸福の市場、商売上手ってとこだねえ」
「良いんじゃない? これでデズエール大陸に渡れる訳だし」
「もう一つ良い話しをつけてあげる」
「良い話し? 何それ?」
「もし無事にノードポリカに辿り着いたら、使った船を進呈するわ」
「ほ、ほんとにッ!?」
「ボロ船だけど、破格の条件には違いないわね」
「でしょ、でしょ?」
「どうだかな。魚人ってのがそれだけ厄介だって話だろ」
「そこはご想像にお任せするわ」
ユーリとカロルは顔を見合わせ、直ぐにカウフマンさんを見た
「しょうがねぇな」
「素敵! 契約成立ね。さ、話は纏まったんだから、仕事してもらうわよ!」
言うや異な、カウフマンさんはニッコリとして船に乗り、私達もその後を追い船に乗り込むと碇を上げて出港した
そしてカウフマンさんは船頭の所に行くと直ぐに船頭の紹介をしてくれた
「この船が貴方達の船になるフィエルティア号。そして彼が『幸福の市場』傘下、海船ギルド『ウミネコの詩』のトクナガよ。フィエルティア号の専属操船士ね」
「トクナガです。よろしく、お願いします」
「急ぎじゃないけど重要な商談だったから本当助かったわ」
「積荷はなんなんです?」
「それは、秘密よ」
「やばいもんじゃねえだろうな?」
「安心して、その辺の線引きはしてるから。でも、良かったわ。これなら海凶の爪に遅れを取らなくて済みそう」
「海凶の爪? ・・・この前のイエガーって奴か・・・有名なのか?」
「兵器魔導器を専門に商売してるギルドよ。最近、うちと客の取り合いになってるのよね。もし海が渡れなかったらまた大口の取引先を奪われる所だったわ」
「兵器魔導器なんてそう簡単に手に入れられるもんでも無いのに何処から仕入れるのか不思議ですよね」
「帝国か・・・それともまた別口でしてるのか・・・」
海に出て魚人が出る場所に着くと、船に飛び出して来た魚人の群れに武器を構えた
最近成長したのだろうか、早めに一掃するとその場に手を叩く音が聞こえてきた
「流石ね、私の目に間違いは無かったわ」
「とほほ・・・凛々の明星はおっさんもこき使うのね。聖核探したりと、色々やる事があるのに・・・」
「聖核って前にノール港で探してたアレか」
「そうそう」
「それってお伽話でしょ。あたしも前に研究したけど、理論では実証されないって解ったわ」
「ま、お伽話だって言われてるのはおっさん知ってるよ」
「どうしてそんな物を探すんです?」
「そりゃ・・・ドンに言われたからね」
ユーリの言う通りレイヴンはノール港で聖核を探していた
その時も思ったのだが聖核と言う言葉を何処かで聞いた事があった
リタの言う通りお伽話でなのか、それとも他の所でなのか・・・
けど気になるのは何故ドンが実物しているかも解らない聖核を探しているかだった
「どうした?」
隣にいた兄さんが考え込んでいる私を見て声を掛けると私も兄さんの方を向いた
「ドンが実物するかも解らない聖核を探してるって言うのがちょっと引っかかって・・・」
「確かにな。けど魔刻の凄い版って聞けば探すのも解らなくはないけどな」
「うん・・・でも、本当にそれだけなのかな・・・?」
何か引っかかる感じがして私は小声で呟いた
最後の言葉は小声だったから兄さんやユーリ達には聞こえていないようだった
それから暫く船に揺られていると急に霧が深くなってきた
「霧が深くなってきたわよ、なんだか」
「不気味・・・」
「こういう霧ってのは大体、何か良くない事の前触れだって言うわな」
「言うねぇ」
「や、やめてよ~」
「余計な事言うと、それがほんとになっちまうぜ」
「あっ! 前、前!」
突然目の前に船のような影が現れたと思ったら徐々にこの船に接近して来だした
「これは・・・ぶつかるわね」
「「うぉおっと!」」「「きゃぁああっ!」」「いやぁあっ!」「「うわぁああっ!」」「うほほほぉー!」「わふぅーーん!!」
ぶつかると言った瞬間、フィエルティア号はその船にぶつかった
「何・・・!?」
カウフマンさんはその騒ぎを聞きつけ甲板にやってきてぶつかった船をまじまじと見た
「古い船ね。見た事ない型だわ・・・」
「アーセルム号・・・って、読むのかしら」
「そうみたいだね・・・」
ガタン!!
「ひゃっ・・・!」
すると急にアーセルム号の足場が降りてきた
「人影は見当たらないのに・・・」
「ま、まるで・・・呼んでるみたい」
「バ、バカな事言わないで! フィエルティア号出して!」
「駆動魔導器 が動きません!」
「え?」
その言葉に私達は一瞬固まってトクナガさんを見た
そしてリタは急いで魔導器を見に行った
「一体、どうなってるのよ」
「原因は・・・こいつかもな」
ユーリの言葉につられ私達もアーセルム号を見る
「うひひひ、お化けの呪いってか?」
「そんな事・・・」
「ないとは言い切れないよ」
「ちょっと、変な事言わないでよ!!」
「そうですよ!」
「入ってみない? 面白そうよ。こう言うの好きだわ、私」
「何言ってんの・・・!」
「原因分かんないしな、行くしかないだろ」
「ちょっと、フィエルティア号をほって行くつもり!?」
「んじゃ、探索に出るヤツと見張りで別れるのはどうだ?」
「良いと思うわ」
ユーリの提案にジュディスが賛成し私も頷いた
「決まりだな。じゃ、行くのはオレと、ラピードは行くよな」
「ワフッ」
「・・・後は「あ、あたし行かないわよ!」
リタはユーリの言葉を遮って叫んだ
「分かったよ、じゃあリタは見張りな。他は・・・」
ユーリは私とアスラと兄さんを見た
「後は、専門家が欲しいな」
「・・・専門家?」
ユーリの言葉にカロルは首を傾げたがアスラは気にせず私に話し掛ける
「じゃあ行った方が良いよね?」
「そうね。じゃあ私が行くわ」
「ええ! リア行くの!?」
「ええ」
私の言葉にカロルだけじゃなくエステルもリタもレイヴンも驚いた
「だって、危ないじゃないですか!」
「そ、そうよ。何があるか解らないのよ!」
「大丈夫よ、ユーリもラピードもアスラもいるんだし」
心配そうに言う三人に私は苦笑しながら答えリタに小声で言った
「それにユーリの言う専門家がいた方が良いでしょ?」
「そ、そうだけど・・・」
「「?」」
リタは何か言いたそうだったが、押し黙り、その様子を事情の知らないエステルとカロルは顔を見合わせ疑問符を出した
「そう言う事だから、私も行くわ」
「度胸あるねぇ~、リアちゃん・・・」
私がニッコリと答えるとレイヴンが苦笑しながら言った
「じゃ、リアとアスラは決定だな。セイはどうする?」
「俺は残ってるよ。何か遭った時に連絡取れるようにな」
「外からでも調べられるしね」
「そう言う事だ」
「分かった。じゃあこっちは頼むな」
「ああ。俺の代わりに、行きたがってるジュディスに」
「あら、嬉しい」
兄さんはジュディスにちらりと視線を送るとジュディスは嬉しそうに私の所に来た
「何で楽しそうなのよ、あんた達・・・」
「ホントだよ・・・」
「しかもリアは平然としてますし・・・」
「おっさんには無理だわ・・・」
エステル達は探索班の私達の楽しそうな反応を見て唖然としていた
「じゃあ、メンバーも決まった事だし行くか」
「「ええ」」「うん」「ワン!」
「皆さん、お気を付けて。駆動魔導器が直ったら発煙筒で連絡しますね」
「サンキュ」
「じゃあ、行って来ます」
そして私とユーリとアスラとラピードとジュディスはアーセルム号の中へ入って行った
続く
あとがき
やっとアーセルム号に着きました!
此処は絶対に専門家であるリアちゃんは連れ居て行こうと思ってたので!
この後の事を考えてセイ兄は残しました
まあ恐がりだけ残すのも可哀想ってのもあったので(笑)
下書き:2008.12.13
完成:2009.07.05
その途中、見覚えのある人物が前から歩いて来た
「あれ、ヨーデル・・・」
「あ・・・皆さん、またお会いしましたね」
「時期皇帝候補殿が、こんなとこで何やってんだ?」
「ドンと友好協定締結に関するやり取りを行っています」
「うまくいってます?」
「それが・・・順調とはいえません」
「だろうなぁ。ヘラクレスってデカ物の所為で、ユニオンは反帝国ブーム再燃中でしょ」
ヘラクレスと言えば、アレクセイが止むを得ないと言って使用していた巨大兵器のようなものだ
その威力は予想以上のものだった
ユニオン側も存在を知らなかったとなれば、対等な立場の友好協定を結ぶなんて反対する声も上がるだろう
「その影響で帝国側でも友好協定に疑問の声が上がっています」
「ドンが帝国に提示した条件は対等な立場での協定だったしな」
「あんなのがあったら、対等とは言えないわね」
「ええ・・・事前にヘラクレスの事を知っていれば止められたのですが・・・」
「次の皇帝候補が、何も知らなかったのかよ」
「ええ、今私には騎士団の指揮権限がありません」
「騎士団は、皇帝にのみその行動をゆだね、報告の義務を持つ、です」
「なら、話は簡単だ。皇帝になればいい」
「・・それは・・・私がそのつもりでも、今は帝位を継承出来ないんです」
「何でよ?」
「帝位継承には宙の威典と言う帝国の至宝が必要なのです。ところが宙の威典は十年前の人魔戦争の頃から行方不明で・・・」
「ふーん、次の皇帝が決まらないのはそう言う裏事情があったのね」
「・・・だからラゴウは宙の威典を欲しがってたのか・・・」
「何、ユーリ?」
「いや・・・」
「それにしても皇帝候補が道ばたへもへも歩いてて良いの?」
「今、ヘリオードに向かう所なんです」
「此処よりダングレストに近いからなぁ。その方がやり取りしやすいわな」
「ええ」
「ヨーデル様、参りましょう」
「すみませんが、此処で失礼します」
ヨーデル様は一礼すると、護衛の人と一緒に歩いて行った
「・・・・・」
エステルを見ると何処か申し訳ない、と言った顔をしていた
確かにエステルの立場を考えればそうなってしまうかもしれない
けど今はエステル自身がやると決めた事をやるべきだと思い、私はエステルに微笑むとエステルも微笑み返し、再び港へと向かって歩き出した
36.船と幽霊船?
港で船を調達しようとしていると反対側の港から男性の声が聞こえた
「あんなに沢山、勘弁してくれ~!」
「命がいくらあっても足りねえよ!」
「何が遭ったんだ?」
「待ちなさい! 金の分は仕事しろ! しないなら返せ~~~っ!!」
私達はその声の方に視線を向けると、見覚えのある女性が逃げている男二人に向かって叫んでいた
「あの人、確かデイドン砦で」
「ああ、あん時の・・・」
「し、知り合いなの?」
「いや、前に一度だけ。お前こそ知り合い?」
「知り合いって・・・5大ギルドの一つ、幸福の市場の社長だよ」
「つまり、ユニオンの重鎮よ」
「ふーん・・・」
「良い事思い付いた・・・!」
「どうした、カロル」
「あの人なら海渡る船出してくれるかもしれないよ」
「なら行ってみましょ」
皆カロルの提案に乗るが、どうにも先程の男達の事が気になった
「・・・一筋縄ではいかない気がするのは俺だけか?」
「いや、ボクもそう思う」
「さっきの男達が逃げて行ったくらいだからな」
「何かあるって思ってた方が良いわね、これは」
「そうだね」
上から兄さん、アスラ、ユーリ、レイヴン、私が各々思っている事を口にして、カロル達の後を追った
「あら、貴方はユーリ・ローウェル君。良い所で会ったわ」
「手配書の効果ってすげえんだな」
あの手配書で良くユーリだと解ったものだι と思っているとカウフマンさんはユーリを見た
「ねえ、貴方にピッタリの仕事があるんだけど」
「って事は荒仕事か」
「察しの良い子は好きよ。聞いてるかもしれないけど、この季節、魚人の群れが船の積荷を襲うんで大変なの」
「あれ? それっていつも他のギルドに護衛を頼んでるんじゃ・・・」
「それがいつもお願いしてる傭兵団の首領が亡くなったらしくて今使えないのよ。他の傭兵団は骨なしばかり。私としては頭の痛い話しね」
「その傭兵団はなんて所・・・ですか?」
カロルが恐る恐る聞くと、返ってきたのは「紅の絆傭兵団」と言う名前だった
予想通りの言葉にリタを先頭に皆にユーリを見た
「誰かさんが潰しちゃったから」
「みんな、同罪だろ・・・」
小声で話すとユーリは踵を返して歩き出そうとしていた
「生憎と今、取り込み中でね。他を当たってくれ、じゃあな」
「え、ユーリ! 船の事お願いするんでしょ?」
「あら、船って?」
「オレ達もギルド作ったんだよ」
「凛々の明星って言うんです!」
その言葉を聞くとカウフマンさんはニッコリとしてユーリとカロルを見た
「素敵、それじゃ商売のお話しましょうか。相互利益は商売の基本、お互いの為になるわ」
「悪いが仕事の最中でな。他の仕事は請けられねえ」
「それなら商売じゃなくて、ギルド同士の協力って事でどう? それならギルドの信頼には反しなくってよ。うちと仲良くしておくと、色々お得よ~?」
他の依頼を受けている間は無理だと切り捨てようとするが、ギルド同士の協力はどうかと進められて思い止まる
5大ギルドである幸福の市場と仲良くなっていれば色々と今後プラスになるだろう
「あ・・・うー、えと」
その事を考えカロルは言い淀んでしまうが、直ぐにユーリが返事を返した
「分かったよ、けどオレ達はノードポリカに行きたいんだ。遠回りはごめんだぜ」
「構わないわ、魚人が出るのは此処の近海だもの。こちらとしては余所の港に行けさえすればそれで良いの。そしたらそこからいくらでも船を手配出来るから」
流石5大ギルド、ユニオンの運営に携わっている幸福の市場
そこまで手配出来るとは、相当顔も広い
「契約成立、かしら?」
「何か、良いように言いくるめられた気がする」
「流石天下の幸福の市場、商売上手ってとこだねえ」
「良いんじゃない? これでデズエール大陸に渡れる訳だし」
「もう一つ良い話しをつけてあげる」
「良い話し? 何それ?」
「もし無事にノードポリカに辿り着いたら、使った船を進呈するわ」
「ほ、ほんとにッ!?」
「ボロ船だけど、破格の条件には違いないわね」
「でしょ、でしょ?」
「どうだかな。魚人ってのがそれだけ厄介だって話だろ」
「そこはご想像にお任せするわ」
ユーリとカロルは顔を見合わせ、直ぐにカウフマンさんを見た
「しょうがねぇな」
「素敵! 契約成立ね。さ、話は纏まったんだから、仕事してもらうわよ!」
言うや異な、カウフマンさんはニッコリとして船に乗り、私達もその後を追い船に乗り込むと碇を上げて出港した
そしてカウフマンさんは船頭の所に行くと直ぐに船頭の紹介をしてくれた
「この船が貴方達の船になるフィエルティア号。そして彼が『幸福の市場』傘下、海船ギルド『ウミネコの詩』のトクナガよ。フィエルティア号の専属操船士ね」
「トクナガです。よろしく、お願いします」
「急ぎじゃないけど重要な商談だったから本当助かったわ」
「積荷はなんなんです?」
「それは、秘密よ」
「やばいもんじゃねえだろうな?」
「安心して、その辺の線引きはしてるから。でも、良かったわ。これなら海凶の爪に遅れを取らなくて済みそう」
「海凶の爪? ・・・この前のイエガーって奴か・・・有名なのか?」
「兵器魔導器を専門に商売してるギルドよ。最近、うちと客の取り合いになってるのよね。もし海が渡れなかったらまた大口の取引先を奪われる所だったわ」
「兵器魔導器なんてそう簡単に手に入れられるもんでも無いのに何処から仕入れるのか不思議ですよね」
「帝国か・・・それともまた別口でしてるのか・・・」
海に出て魚人が出る場所に着くと、船に飛び出して来た魚人の群れに武器を構えた
最近成長したのだろうか、早めに一掃するとその場に手を叩く音が聞こえてきた
「流石ね、私の目に間違いは無かったわ」
「とほほ・・・凛々の明星はおっさんもこき使うのね。聖核探したりと、色々やる事があるのに・・・」
「聖核って前にノール港で探してたアレか」
「そうそう」
「それってお伽話でしょ。あたしも前に研究したけど、理論では実証されないって解ったわ」
「ま、お伽話だって言われてるのはおっさん知ってるよ」
「どうしてそんな物を探すんです?」
「そりゃ・・・ドンに言われたからね」
ユーリの言う通りレイヴンはノール港で聖核を探していた
その時も思ったのだが聖核と言う言葉を何処かで聞いた事があった
リタの言う通りお伽話でなのか、それとも他の所でなのか・・・
けど気になるのは何故ドンが実物しているかも解らない聖核を探しているかだった
「どうした?」
隣にいた兄さんが考え込んでいる私を見て声を掛けると私も兄さんの方を向いた
「ドンが実物するかも解らない聖核を探してるって言うのがちょっと引っかかって・・・」
「確かにな。けど魔刻の凄い版って聞けば探すのも解らなくはないけどな」
「うん・・・でも、本当にそれだけなのかな・・・?」
何か引っかかる感じがして私は小声で呟いた
最後の言葉は小声だったから兄さんやユーリ達には聞こえていないようだった
それから暫く船に揺られていると急に霧が深くなってきた
「霧が深くなってきたわよ、なんだか」
「不気味・・・」
「こういう霧ってのは大体、何か良くない事の前触れだって言うわな」
「言うねぇ」
「や、やめてよ~」
「余計な事言うと、それがほんとになっちまうぜ」
「あっ! 前、前!」
突然目の前に船のような影が現れたと思ったら徐々にこの船に接近して来だした
「これは・・・ぶつかるわね」
「「うぉおっと!」」「「きゃぁああっ!」」「いやぁあっ!」「「うわぁああっ!」」「うほほほぉー!」「わふぅーーん!!」
ぶつかると言った瞬間、フィエルティア号はその船にぶつかった
「何・・・!?」
カウフマンさんはその騒ぎを聞きつけ甲板にやってきてぶつかった船をまじまじと見た
「古い船ね。見た事ない型だわ・・・」
「アーセルム号・・・って、読むのかしら」
「そうみたいだね・・・」
ガタン!!
「ひゃっ・・・!」
すると急にアーセルム号の足場が降りてきた
「人影は見当たらないのに・・・」
「ま、まるで・・・呼んでるみたい」
「バ、バカな事言わないで! フィエルティア号出して!」
「
「え?」
その言葉に私達は一瞬固まってトクナガさんを見た
そしてリタは急いで魔導器を見に行った
「一体、どうなってるのよ」
「原因は・・・こいつかもな」
ユーリの言葉につられ私達もアーセルム号を見る
「うひひひ、お化けの呪いってか?」
「そんな事・・・」
「ないとは言い切れないよ」
「ちょっと、変な事言わないでよ!!」
「そうですよ!」
「入ってみない? 面白そうよ。こう言うの好きだわ、私」
「何言ってんの・・・!」
「原因分かんないしな、行くしかないだろ」
「ちょっと、フィエルティア号をほって行くつもり!?」
「んじゃ、探索に出るヤツと見張りで別れるのはどうだ?」
「良いと思うわ」
ユーリの提案にジュディスが賛成し私も頷いた
「決まりだな。じゃ、行くのはオレと、ラピードは行くよな」
「ワフッ」
「・・・後は「あ、あたし行かないわよ!」
リタはユーリの言葉を遮って叫んだ
「分かったよ、じゃあリタは見張りな。他は・・・」
ユーリは私とアスラと兄さんを見た
「後は、専門家が欲しいな」
「・・・専門家?」
ユーリの言葉にカロルは首を傾げたがアスラは気にせず私に話し掛ける
「じゃあ行った方が良いよね?」
「そうね。じゃあ私が行くわ」
「ええ! リア行くの!?」
「ええ」
私の言葉にカロルだけじゃなくエステルもリタもレイヴンも驚いた
「だって、危ないじゃないですか!」
「そ、そうよ。何があるか解らないのよ!」
「大丈夫よ、ユーリもラピードもアスラもいるんだし」
心配そうに言う三人に私は苦笑しながら答えリタに小声で言った
「それにユーリの言う専門家がいた方が良いでしょ?」
「そ、そうだけど・・・」
「「?」」
リタは何か言いたそうだったが、押し黙り、その様子を事情の知らないエステルとカロルは顔を見合わせ疑問符を出した
「そう言う事だから、私も行くわ」
「度胸あるねぇ~、リアちゃん・・・」
私がニッコリと答えるとレイヴンが苦笑しながら言った
「じゃ、リアとアスラは決定だな。セイはどうする?」
「俺は残ってるよ。何か遭った時に連絡取れるようにな」
「外からでも調べられるしね」
「そう言う事だ」
「分かった。じゃあこっちは頼むな」
「ああ。俺の代わりに、行きたがってるジュディスに」
「あら、嬉しい」
兄さんはジュディスにちらりと視線を送るとジュディスは嬉しそうに私の所に来た
「何で楽しそうなのよ、あんた達・・・」
「ホントだよ・・・」
「しかもリアは平然としてますし・・・」
「おっさんには無理だわ・・・」
エステル達は探索班の私達の楽しそうな反応を見て唖然としていた
「じゃあ、メンバーも決まった事だし行くか」
「「ええ」」「うん」「ワン!」
「皆さん、お気を付けて。駆動魔導器が直ったら発煙筒で連絡しますね」
「サンキュ」
「じゃあ、行って来ます」
そして私とユーリとアスラとラピードとジュディスはアーセルム号の中へ入って行った
続く
あとがき
やっとアーセルム号に着きました!
此処は絶対に専門家であるリアちゃんは連れ居て行こうと思ってたので!
この後の事を考えてセイ兄は残しました
まあ恐がりだけ残すのも可哀想ってのもあったので(笑)
下書き:2008.12.13
完成:2009.07.05