満月の子編
夢主名変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
色仕掛け作戦の服から私服に着替えてユーリ達の所へ戻ってくるとユーリに目が止まった
「あ、リア、おかえり」
「・・・ユーリ、その格好」
「これか? ちょっと借りてるだけだ」
それは何処か懐かしさのある騎士の格好だった
騎士の格好はさっき気絶させた騎士から借りたようだった
「ユーリってやっぱり騎士の格好似合わないね」
「まだ騎士団にいた時に着てたやつの方が合ってんな」
「オレはどっちもどっちだと思うけどな・・・」
「おい! 何こんな所で油売ってるんだ!」
突然、男の叫ぶ声が聞こえたと思ったら一人の騎士がユーリの所へ走って来て来た
「お? どうした?」
急に大声で話し掛けられたというのに、ユーリは少しも動じる事なく答える
そんな彼とは裏腹に、騎士の方は何故だか慌てている様子だった
「詰め所が大変な事になってるんだぞ!」
「何だ、大変な事って」
「捕まえてた魔導士が暴れてんだ。ほら、早く来い!」
「了解っ! ちょっくら行ってくるわ」
「え? ユーリ?」
あれよあれよという間にユーリは現役騎士の後を着いて行ってしまって、エステルとカロルはぽかんとその背を見つめていた
「・・・行っちゃいましたね」
「どうかしたの、リア?」
「・・・さっきの捕まえた魔導士って言うのが気になって」
「しかも暴れてるって言ってたし・・・」
「まさかとは思うが・・・」
私とアスラと兄さんはそう言ってある人物を思い浮かべる
「・・・様子、見に行った方が良かったかな?」
そう話していると詰め所から物凄い音が聞こえた
「な、何!?」
「詰め所の方からです!」
また尋常じゃない音が聞こえ詰め所を見て顔を見合わせる
「また暴れてるのかしら?」
「かもな」
「とりあえず行ってみよう」
「ユーリ、無事だと良いけど」
34.解放
「リタ・・・?」
「エステル、それにあんた達・・・何で此処に?」
詰め所に入ると予想通りの人物、リタがいた
エステルとリタはお互いに驚いていて、私達は辺りを見ると数名の騎士が倒れているのが目に入った
「また派手に暴れたなι」
「まあ事情は外で聞くって事で良いんじゃない?」
「そうね。此処にいたら捕まるでしょうしね」
「とりあえず外に行きましょ」
早々に施設から引き上げた後、詰め所からだいぶ離れた所まで移動し、ユーリはさっさといつもの服に着替えてしまった(エステルは残念そうだったけどι)
リタは自信の身の丈程もある、塀に凭れ掛ってふーっと長めに息を吐き出した
「落ち着きました?」
「ええ・・・」
「それでリタはどうしてこんな所に?」
「此処の魔導器が気になったから調査の前に見ておこうと思って寄ったの」
「で、余計な事に首を突っ込んだと。面倒な性格してんな」
「ユーリも変わんないと思うけど・・・」
「一体、何に首を突っ込んだんですか?」
「夜中こっそりと労働者キャンプに魔導器が運び込まれてたのよ。その時点でもう怪しいでしょ?」
「それでまさか、こそこそ調べ回ってて捕まったって訳か」
リタは首を横に振りユーリを見た
「違うわ、忍び込んだのよ」
「・・・どっちも一緒じゃ」
「・・・で、捕まったんだ」
「だって、怪しい使い方されようとしてる魔導器ほっとけなかったから。そしたら、街の人が騎士に脅されて無理矢理働かされててさ」
「「「「「「「!」」」」」」」
その言葉にユーリ達は驚き、私と兄さんとアスラは顔を見合わせ小さく頷いた
「じゃあティグルさんもそこで働かされてるんだろうね」
「だろうな」
「こんなの絶対に許せません」
「それで、お前が見た魔導器ってのは?」
「兵装魔導器 だった。かき集めて戦う準備してるみたいよ」
「まさか・・・またダングレストを攻めるつもりなんじゃ!?」
「でも、どうして? 友好協定が結ばれるって言うのに・・・」
「キュモールの奴だろ。きっとギルドとの約束なんて屁とも思ってないぜ」
「ユーリの知ってる人なの?」
「お前も前に一度会ってるだろ、カルボクラムで」
カロルは少し記憶を巡らせて答えた
「ああ、あのちょっと気持ち悪い喋り方する人だね」
「しかも性格はかなり悪いしな・・・」
「ああ・・・」
「あんた達が言うんだから相当ね・・・」
リタもあの時にキュモールを見ているが、兄さんとユーリの言葉に呆れ混じりな顔をした
「此処で話し込むのも良いけれど、そこまで解っているのなら行動に移した方が良いんじゃないかしら?」
「私もジュディスの意見に賛成。これ以上被害を増やさない為にも」
「うん、そうだね。ティグルさんや街の達を助け出さなきゃね」
「後、強制労働を止める事と集めている魔導器を回収する事」
「じゃあ回収の為にアスピオの魔導士に連絡を・・・」
「此処にいるだろ、アスピオの天才魔導士さんが」
兄さんはそう言ってリタを見ると私達もリタを見る
「行くんだろ」
「当たり前でしょ」
「慎重に、一つずつ片付けて行けば良いから」
「そう言う事だ」
「は、はい・・・」
「それじゃあ、当初の予定通り、下へ行こう」
「「「ええ」」」「はい」「「うん」」「ああ」「ワン」
労働者キャンプに続く昇降機に乗り込もうとしていると宿屋の方から人が歩いて来るのが見え私達は結界魔導器の影に隠れた
歩いて来た人物はキュモールともう一人、前髪を垂らした男がいた
ただ、彼はキュモールのように鎧を着ていないので騎士ではないようだ
「おぉ、マイロード。コゴール砂漠にゴーしなくて本当にダイジョウブですか?」
「ふん、アレクセイの命令になんて耳を貸す必要はないね。僕はこの金と武器を使って、全てを手に入れるのだから」
「その時が来たら、ミーが率いる海凶の爪の仕事、誉めてほしいですよ」
「ああ、解っているよ、イエガー」
(イエガー? あの人があの海凶の爪の首領・・・)
「ミーが売ったウェポン使って、ユニオンにアタックね!」
「ふん、ユニオンなんて僕の眼中にはないな」
「ドンを侮ってはノンノン。敵はワンダホーなナイスガイ。それをリメンバーですヨ~」
「おや、ドンを尊敬しているような口振りだね」
「尊敬はしていマース。バット、海凶の爪の仕事は別デスヨ」
「ふふっ・・・僕はそんな君のそう言う所が好きさ。でも心配ない、僕は騎士団長になる男だよ? ユニオン監視しろってアレクセイもバカだよね。そのくせ友好協定だって?」
キュモールはそう言って昇降機に乗り込みその後にイエガーも続いたが、イエガーは私達の方をちらりと見て答えた
「イエー! オフコース!」
そして昇降機のボタンを押してゆっくりと下に降りだした
「僕ならユニオンなんてさっさと潰しちゃうよ、君達から買った武器で! 僕がユニオンなんかに、躓くはずがないんだ!」
「フフフ、イエースイエース・・・」
下に降りて行くにつれ聞こえた言葉は此処までだった
私達はキュモールとイエガーが見えなくなったと同時に魔導器の影から出て来た
「あのトロロヘアー、こっちを見て笑ったわよ」
「キュモールのバカはともかく、あいつは明らかにオレ達の事気付いてたな」
「あたし達をバカにして・・・!」
「本当にくだらない事しか考えないな、あのバカ共」
呆れて言葉も出ない、と言いたいようで、皆眉間に皺が寄っていた
「とりあえず、この下に閉じ込められている人達がいるんだな」
「ええ」
「みんな解放してやろうぜ、あのバカ共から」
ユーリの言葉に私達は一斉に頷き、昇降機に乗って労働者キャンプへと向かった
労働者キャンプに着いた私達は周りを見た
そこはあまりにも殺風景で多少は小屋があるものの、人が住む環境とはいえなかった
更に沢山のテントが張られている事に唖然としながら更に奥へと進んで行った
奥の方に一際大きなテントがあり、テントに近付くと幾人かの気配を感じて、足を止め物陰に身を潜めた
テントの向こうにはイエガーとあの赤眼の一団がいた
「あいつ等・・・」
「キュモールが赤眼の連中の新しい依頼人って事みたいだな」
暫くイエガー達の様子を窺っているとイエガーは赤眼達の何か指示を出し、赤眼達は何処かへ行ってしまった
様子を見る限り、イエガーはあの赤眼達の首領らしい
そして赤眼達は海凶の爪の一員のようだ
私達はそれを確認すると私達は少し移動してまた物陰に隠れイエガーが歩いて行った方に目を向けた
すると一人の男性が胸を押さえて苦しそうにそのまま倒れてしまった
「サボっていないで働け! この下民が!」
「う、うう・・・」
キュモールはお構いなしに怒鳴りつけた
だが、私達は倒れた人物がティグルさんだと直ぐに気が付いた
「お金ならいくらでもあげる。ほら働け、働けよっ!」
「・・・・・」
ユーリはその言葉が限界だったのか、カロルの制止の言葉も聞かずにキュモール達の方に向かって歩き出し近くにあった石を拾いキュモールに向かって投げた
ごっ、と鈍い音がして見事にキュモールに命中しキュモールの額には少し血が滲む
「流石ユーリ、お見事」
「だ、誰っ!」
だが、血が滲んだ云々よりも、それが何処から、誰から石を投げられたかの方がよほど無駄にプライドの高い彼にとって重要事項だったらしい
キュモールは辺りを見回し、石を投げた人物を探すとユーリが石を上下に投げているのを見つけた
「ユーリ・ローウェル! どうして此処に!?」
そしてエステルがユーリの後ろから現れるとキュモールは一気に表情を変えた
「ひ、姫様も・・・!」
「貴方のような人に、騎士を名乗る資格はありません! 力で帝国の威信を示すようなやり方は間違っています。その武器を今直ぐ捨てなさい。騙して連れて来た人達も直ぐに解放するのです!」
強気な言葉で真っ直ぐと、その目に迷いは全くない
王族の威厳というやつだろうか、この小さな体の何処からこんな威圧感が出るのだろうと思うくらいの迫力がある
しかし、それも王族なんて屁とも思っていない連中には何の意味もない
キュモールはエステルの言葉に多少深いそうに表情を歪めたものの、直ぐにあの腹の立つ高慢ちきな態度で開き直った
「世間知らずの姫様には消えてもらった方が楽かもね。理想ばっかり語って胸糞悪いんだよ!」
「騎士団長になろうなんて、妄想してるヤツが何言ってやがる」
「あ、貴方は・・・」
ユーリとエステルの声を聞き、ティグルさんは顔を上げ私達を見た
「もう大丈夫ですよ」
「イエガー! やっちゃいなよ!」
「イエス、マイロード」
キュモールの言葉を聞くとイエガーは長銃を取り出し赤眼達に合図を出した
「ユーに恨みはありませんが、これもビジネスでーす」
その合図と共に赤眼達は一斉に私達に向かって来て、私達も武器を構えた
*
「たあああぁ!!」
「ぐあっ!!」
「てえい!!」
「ぐおっ!!」
「はあぁ!!」
「もういっちょ!!」
赤眼達の数も減りユーリと兄さんが連携を取り、イエガーに攻撃を仕掛けるが、イエガーは長銃で攻撃を受け止める
「なかなかストロングですね」
「キュモール様! フレン隊です!」
途端、一人の騎士が慌ててキュモールの元へ走って来た
「フレンが・・・!」
「どうやらこの騒ぎを聞きつけてきたみいだね」
「さっさと追い返しなさい!」
「ダメです、下を調べさせろと押しきられそうです!」
「下町育ちの恥知らずめ・・・!」
「ゴーシュ、ドロワット」
「はい、イエガー様」
「やっと出番ですよ~」
すると急に女の子二人がイエガーの前に現れたと思った途端、黄色い髪の女の子が地面に煙玉を投げ、辺りは白い煙で覆われた
「さあ、こちらへ」
「逃げろや、逃げろ~! すたこら逃げろ~!」
「今度会ったらただじゃおかないからね!」
「お決まりの捨て台詞ね」
「負け台詞でもあるけどね」
煙が晴れると既にキュモール達の姿はなく、エステルが今にもキュモール達を追い駆けそうな勢いだった
「早く追わないと!」
「待って! 今のボク等の仕事はティグルさんを助け出す事なんだよ!」
「でも・・・」
「あんた達の仕事とか良く分かんないけど追うの? 追わないの?」
すると急に騎士達が走り出し、武器を構え後ろを見てみるとフレンが見えた
「大人しくしろ! そこまでだ!」
「お、良いとこに来た」
「ユーリか・・・!?」
フレンは私達を見て驚いた顔をしていた
ユーリはティグルさんに立てるかどうか聞いてティグルさんは立ち上がりユーリを見た
「悪いが最後まで面倒見れなくなった。自分で帰ってくれ。嫁さんとガキによろしくな」
「あ、有り難う御座いました」
ティグルさんはユーリにお礼を言うとフレンの方に向かって歩き出した
「追うのね?」
「ああ、もう此処はフレンが片付けるだろうしな。カロル、それで良いだろ?」
「そうだね。エステルが今にも行っちゃいそうだもん」
「すみません」
「もう! 追う事になったんならさっさと行こ!」
「はい」
エステルは返事を返すとそのまま走り出しその後にリタ、カロル、ジュディス、ラピード、兄さん、アスラと続いた
「待て、ユーリ! リア!」
私も行こうとしているとフレンが私とユーリを呼び止める声が聞こえた
「此処の後始末は任せた!」
「よろしくね、フレン!」
私とユーリはそう言い残しエステル達の後を追った
「・・・ダメ、これ以上は気配を感じないよ」
アスラにキュモール達の気配を追ってもらいどんどん道を進んで行ったが、途中で気配が消えてしまった
「結局逃がしちゃったみたいね」
「此処はどの辺りなんだろう?」
「・・・トルビキアの中央部の森ね。トリム港は此処から東になると思うわ」
「ヘリオードに戻るよりこのまま港行った方が良さそうだな」
「え? キュモールはどうするんです!? 放っておくんですか?」
その判断にエステルだけが猛反対だった
「フェローに会うと言うのが貴方の旅の目的だと思っていたけど」
「そ、それは・・・」
「貴方のだだっ子に付き合うギルドだったかしら? 凛々の明星は」
「・・・ご、ごめんなさい。わたしそんなつもりじゃ・・・」
「ま、落ち着けってこった。それにフレンが来たろ。あいつに任せときゃ、間違いないさ」
「ちょっと、フェローって何? 凛々の明星? 説明して」
「そうそう、説明してほしいわ」
一人蚊帳の外なリタは疑問を浮かべていると何処からか声が聞こえ、見るといつの間にかレイヴンが私達の横にいた
「ちょ、ちょっと、何よあんた!?」
「何だよ、天才魔導士少女。もう忘れちゃったの? レイヴン様だよ」
「何よあんた」
リタは更に強調するように言い、レイヴンを睨んだ
「だから、レイヴン様・・・」
レイヴンはバツが悪そうに額に手を置き後ろを向いた
「・・・んとに。怖いガキんちょだよ・・・」
「んで? 何してんだよ」
「お前さん達が元気すぎるからおっさんこんなとこまで来るハメになっちまったのよ」
「どういう事?」
「ま、トリム港の宿にでも行ってとりあえず落ち着こうや。そこでちゃんと話すからさ。おっさん腹減って・・・」
「いつまでも此処に居てもしゃあねぇしな、とりあえずトリム港へってのはオレも賛成だ」
「では、トリム港かしら。それで良いわね?」
「はい、構いません。ごめんなさい、我儘言って」
エステルは薄紅色の髪を揺らしながら、小さく頭を下げた
「じゃ、行くか」
ユーリの合図と共に私達はトリム港へと向かって歩き出した
続く
あとがき
ようやくまたパーティ全員揃いましたね
最後のリタっちとレイヴンのやりとりが何回見ても好きだなw
さ、次々っと・・・(短っ!?)
下書き:2008.12.11
完成:2009.07.04
「あ、リア、おかえり」
「・・・ユーリ、その格好」
「これか? ちょっと借りてるだけだ」
それは何処か懐かしさのある騎士の格好だった
騎士の格好はさっき気絶させた騎士から借りたようだった
「ユーリってやっぱり騎士の格好似合わないね」
「まだ騎士団にいた時に着てたやつの方が合ってんな」
「オレはどっちもどっちだと思うけどな・・・」
「おい! 何こんな所で油売ってるんだ!」
突然、男の叫ぶ声が聞こえたと思ったら一人の騎士がユーリの所へ走って来て来た
「お? どうした?」
急に大声で話し掛けられたというのに、ユーリは少しも動じる事なく答える
そんな彼とは裏腹に、騎士の方は何故だか慌てている様子だった
「詰め所が大変な事になってるんだぞ!」
「何だ、大変な事って」
「捕まえてた魔導士が暴れてんだ。ほら、早く来い!」
「了解っ! ちょっくら行ってくるわ」
「え? ユーリ?」
あれよあれよという間にユーリは現役騎士の後を着いて行ってしまって、エステルとカロルはぽかんとその背を見つめていた
「・・・行っちゃいましたね」
「どうかしたの、リア?」
「・・・さっきの捕まえた魔導士って言うのが気になって」
「しかも暴れてるって言ってたし・・・」
「まさかとは思うが・・・」
私とアスラと兄さんはそう言ってある人物を思い浮かべる
「・・・様子、見に行った方が良かったかな?」
そう話していると詰め所から物凄い音が聞こえた
「な、何!?」
「詰め所の方からです!」
また尋常じゃない音が聞こえ詰め所を見て顔を見合わせる
「また暴れてるのかしら?」
「かもな」
「とりあえず行ってみよう」
「ユーリ、無事だと良いけど」
34.解放
「リタ・・・?」
「エステル、それにあんた達・・・何で此処に?」
詰め所に入ると予想通りの人物、リタがいた
エステルとリタはお互いに驚いていて、私達は辺りを見ると数名の騎士が倒れているのが目に入った
「また派手に暴れたなι」
「まあ事情は外で聞くって事で良いんじゃない?」
「そうね。此処にいたら捕まるでしょうしね」
「とりあえず外に行きましょ」
早々に施設から引き上げた後、詰め所からだいぶ離れた所まで移動し、ユーリはさっさといつもの服に着替えてしまった(エステルは残念そうだったけどι)
リタは自信の身の丈程もある、塀に凭れ掛ってふーっと長めに息を吐き出した
「落ち着きました?」
「ええ・・・」
「それでリタはどうしてこんな所に?」
「此処の魔導器が気になったから調査の前に見ておこうと思って寄ったの」
「で、余計な事に首を突っ込んだと。面倒な性格してんな」
「ユーリも変わんないと思うけど・・・」
「一体、何に首を突っ込んだんですか?」
「夜中こっそりと労働者キャンプに魔導器が運び込まれてたのよ。その時点でもう怪しいでしょ?」
「それでまさか、こそこそ調べ回ってて捕まったって訳か」
リタは首を横に振りユーリを見た
「違うわ、忍び込んだのよ」
「・・・どっちも一緒じゃ」
「・・・で、捕まったんだ」
「だって、怪しい使い方されようとしてる魔導器ほっとけなかったから。そしたら、街の人が騎士に脅されて無理矢理働かされててさ」
「「「「「「「!」」」」」」」
その言葉にユーリ達は驚き、私と兄さんとアスラは顔を見合わせ小さく頷いた
「じゃあティグルさんもそこで働かされてるんだろうね」
「だろうな」
「こんなの絶対に許せません」
「それで、お前が見た魔導器ってのは?」
「
「まさか・・・またダングレストを攻めるつもりなんじゃ!?」
「でも、どうして? 友好協定が結ばれるって言うのに・・・」
「キュモールの奴だろ。きっとギルドとの約束なんて屁とも思ってないぜ」
「ユーリの知ってる人なの?」
「お前も前に一度会ってるだろ、カルボクラムで」
カロルは少し記憶を巡らせて答えた
「ああ、あのちょっと気持ち悪い喋り方する人だね」
「しかも性格はかなり悪いしな・・・」
「ああ・・・」
「あんた達が言うんだから相当ね・・・」
リタもあの時にキュモールを見ているが、兄さんとユーリの言葉に呆れ混じりな顔をした
「此処で話し込むのも良いけれど、そこまで解っているのなら行動に移した方が良いんじゃないかしら?」
「私もジュディスの意見に賛成。これ以上被害を増やさない為にも」
「うん、そうだね。ティグルさんや街の達を助け出さなきゃね」
「後、強制労働を止める事と集めている魔導器を回収する事」
「じゃあ回収の為にアスピオの魔導士に連絡を・・・」
「此処にいるだろ、アスピオの天才魔導士さんが」
兄さんはそう言ってリタを見ると私達もリタを見る
「行くんだろ」
「当たり前でしょ」
「慎重に、一つずつ片付けて行けば良いから」
「そう言う事だ」
「は、はい・・・」
「それじゃあ、当初の予定通り、下へ行こう」
「「「ええ」」」「はい」「「うん」」「ああ」「ワン」
労働者キャンプに続く昇降機に乗り込もうとしていると宿屋の方から人が歩いて来るのが見え私達は結界魔導器の影に隠れた
歩いて来た人物はキュモールともう一人、前髪を垂らした男がいた
ただ、彼はキュモールのように鎧を着ていないので騎士ではないようだ
「おぉ、マイロード。コゴール砂漠にゴーしなくて本当にダイジョウブですか?」
「ふん、アレクセイの命令になんて耳を貸す必要はないね。僕はこの金と武器を使って、全てを手に入れるのだから」
「その時が来たら、ミーが率いる海凶の爪の仕事、誉めてほしいですよ」
「ああ、解っているよ、イエガー」
(イエガー? あの人があの海凶の爪の首領・・・)
「ミーが売ったウェポン使って、ユニオンにアタックね!」
「ふん、ユニオンなんて僕の眼中にはないな」
「ドンを侮ってはノンノン。敵はワンダホーなナイスガイ。それをリメンバーですヨ~」
「おや、ドンを尊敬しているような口振りだね」
「尊敬はしていマース。バット、海凶の爪の仕事は別デスヨ」
「ふふっ・・・僕はそんな君のそう言う所が好きさ。でも心配ない、僕は騎士団長になる男だよ? ユニオン監視しろってアレクセイもバカだよね。そのくせ友好協定だって?」
キュモールはそう言って昇降機に乗り込みその後にイエガーも続いたが、イエガーは私達の方をちらりと見て答えた
「イエー! オフコース!」
そして昇降機のボタンを押してゆっくりと下に降りだした
「僕ならユニオンなんてさっさと潰しちゃうよ、君達から買った武器で! 僕がユニオンなんかに、躓くはずがないんだ!」
「フフフ、イエースイエース・・・」
下に降りて行くにつれ聞こえた言葉は此処までだった
私達はキュモールとイエガーが見えなくなったと同時に魔導器の影から出て来た
「あのトロロヘアー、こっちを見て笑ったわよ」
「キュモールのバカはともかく、あいつは明らかにオレ達の事気付いてたな」
「あたし達をバカにして・・・!」
「本当にくだらない事しか考えないな、あのバカ共」
呆れて言葉も出ない、と言いたいようで、皆眉間に皺が寄っていた
「とりあえず、この下に閉じ込められている人達がいるんだな」
「ええ」
「みんな解放してやろうぜ、あのバカ共から」
ユーリの言葉に私達は一斉に頷き、昇降機に乗って労働者キャンプへと向かった
労働者キャンプに着いた私達は周りを見た
そこはあまりにも殺風景で多少は小屋があるものの、人が住む環境とはいえなかった
更に沢山のテントが張られている事に唖然としながら更に奥へと進んで行った
奥の方に一際大きなテントがあり、テントに近付くと幾人かの気配を感じて、足を止め物陰に身を潜めた
テントの向こうにはイエガーとあの赤眼の一団がいた
「あいつ等・・・」
「キュモールが赤眼の連中の新しい依頼人って事みたいだな」
暫くイエガー達の様子を窺っているとイエガーは赤眼達の何か指示を出し、赤眼達は何処かへ行ってしまった
様子を見る限り、イエガーはあの赤眼達の首領らしい
そして赤眼達は海凶の爪の一員のようだ
私達はそれを確認すると私達は少し移動してまた物陰に隠れイエガーが歩いて行った方に目を向けた
すると一人の男性が胸を押さえて苦しそうにそのまま倒れてしまった
「サボっていないで働け! この下民が!」
「う、うう・・・」
キュモールはお構いなしに怒鳴りつけた
だが、私達は倒れた人物がティグルさんだと直ぐに気が付いた
「お金ならいくらでもあげる。ほら働け、働けよっ!」
「・・・・・」
ユーリはその言葉が限界だったのか、カロルの制止の言葉も聞かずにキュモール達の方に向かって歩き出し近くにあった石を拾いキュモールに向かって投げた
ごっ、と鈍い音がして見事にキュモールに命中しキュモールの額には少し血が滲む
「流石ユーリ、お見事」
「だ、誰っ!」
だが、血が滲んだ云々よりも、それが何処から、誰から石を投げられたかの方がよほど無駄にプライドの高い彼にとって重要事項だったらしい
キュモールは辺りを見回し、石を投げた人物を探すとユーリが石を上下に投げているのを見つけた
「ユーリ・ローウェル! どうして此処に!?」
そしてエステルがユーリの後ろから現れるとキュモールは一気に表情を変えた
「ひ、姫様も・・・!」
「貴方のような人に、騎士を名乗る資格はありません! 力で帝国の威信を示すようなやり方は間違っています。その武器を今直ぐ捨てなさい。騙して連れて来た人達も直ぐに解放するのです!」
強気な言葉で真っ直ぐと、その目に迷いは全くない
王族の威厳というやつだろうか、この小さな体の何処からこんな威圧感が出るのだろうと思うくらいの迫力がある
しかし、それも王族なんて屁とも思っていない連中には何の意味もない
キュモールはエステルの言葉に多少深いそうに表情を歪めたものの、直ぐにあの腹の立つ高慢ちきな態度で開き直った
「世間知らずの姫様には消えてもらった方が楽かもね。理想ばっかり語って胸糞悪いんだよ!」
「騎士団長になろうなんて、妄想してるヤツが何言ってやがる」
「あ、貴方は・・・」
ユーリとエステルの声を聞き、ティグルさんは顔を上げ私達を見た
「もう大丈夫ですよ」
「イエガー! やっちゃいなよ!」
「イエス、マイロード」
キュモールの言葉を聞くとイエガーは長銃を取り出し赤眼達に合図を出した
「ユーに恨みはありませんが、これもビジネスでーす」
その合図と共に赤眼達は一斉に私達に向かって来て、私達も武器を構えた
*
「たあああぁ!!」
「ぐあっ!!」
「てえい!!」
「ぐおっ!!」
「はあぁ!!」
「もういっちょ!!」
赤眼達の数も減りユーリと兄さんが連携を取り、イエガーに攻撃を仕掛けるが、イエガーは長銃で攻撃を受け止める
「なかなかストロングですね」
「キュモール様! フレン隊です!」
途端、一人の騎士が慌ててキュモールの元へ走って来た
「フレンが・・・!」
「どうやらこの騒ぎを聞きつけてきたみいだね」
「さっさと追い返しなさい!」
「ダメです、下を調べさせろと押しきられそうです!」
「下町育ちの恥知らずめ・・・!」
「ゴーシュ、ドロワット」
「はい、イエガー様」
「やっと出番ですよ~」
すると急に女の子二人がイエガーの前に現れたと思った途端、黄色い髪の女の子が地面に煙玉を投げ、辺りは白い煙で覆われた
「さあ、こちらへ」
「逃げろや、逃げろ~! すたこら逃げろ~!」
「今度会ったらただじゃおかないからね!」
「お決まりの捨て台詞ね」
「負け台詞でもあるけどね」
煙が晴れると既にキュモール達の姿はなく、エステルが今にもキュモール達を追い駆けそうな勢いだった
「早く追わないと!」
「待って! 今のボク等の仕事はティグルさんを助け出す事なんだよ!」
「でも・・・」
「あんた達の仕事とか良く分かんないけど追うの? 追わないの?」
すると急に騎士達が走り出し、武器を構え後ろを見てみるとフレンが見えた
「大人しくしろ! そこまでだ!」
「お、良いとこに来た」
「ユーリか・・・!?」
フレンは私達を見て驚いた顔をしていた
ユーリはティグルさんに立てるかどうか聞いてティグルさんは立ち上がりユーリを見た
「悪いが最後まで面倒見れなくなった。自分で帰ってくれ。嫁さんとガキによろしくな」
「あ、有り難う御座いました」
ティグルさんはユーリにお礼を言うとフレンの方に向かって歩き出した
「追うのね?」
「ああ、もう此処はフレンが片付けるだろうしな。カロル、それで良いだろ?」
「そうだね。エステルが今にも行っちゃいそうだもん」
「すみません」
「もう! 追う事になったんならさっさと行こ!」
「はい」
エステルは返事を返すとそのまま走り出しその後にリタ、カロル、ジュディス、ラピード、兄さん、アスラと続いた
「待て、ユーリ! リア!」
私も行こうとしているとフレンが私とユーリを呼び止める声が聞こえた
「此処の後始末は任せた!」
「よろしくね、フレン!」
私とユーリはそう言い残しエステル達の後を追った
「・・・ダメ、これ以上は気配を感じないよ」
アスラにキュモール達の気配を追ってもらいどんどん道を進んで行ったが、途中で気配が消えてしまった
「結局逃がしちゃったみたいね」
「此処はどの辺りなんだろう?」
「・・・トルビキアの中央部の森ね。トリム港は此処から東になると思うわ」
「ヘリオードに戻るよりこのまま港行った方が良さそうだな」
「え? キュモールはどうするんです!? 放っておくんですか?」
その判断にエステルだけが猛反対だった
「フェローに会うと言うのが貴方の旅の目的だと思っていたけど」
「そ、それは・・・」
「貴方のだだっ子に付き合うギルドだったかしら? 凛々の明星は」
「・・・ご、ごめんなさい。わたしそんなつもりじゃ・・・」
「ま、落ち着けってこった。それにフレンが来たろ。あいつに任せときゃ、間違いないさ」
「ちょっと、フェローって何? 凛々の明星? 説明して」
「そうそう、説明してほしいわ」
一人蚊帳の外なリタは疑問を浮かべていると何処からか声が聞こえ、見るといつの間にかレイヴンが私達の横にいた
「ちょ、ちょっと、何よあんた!?」
「何だよ、天才魔導士少女。もう忘れちゃったの? レイヴン様だよ」
「何よあんた」
リタは更に強調するように言い、レイヴンを睨んだ
「だから、レイヴン様・・・」
レイヴンはバツが悪そうに額に手を置き後ろを向いた
「・・・んとに。怖いガキんちょだよ・・・」
「んで? 何してんだよ」
「お前さん達が元気すぎるからおっさんこんなとこまで来るハメになっちまったのよ」
「どういう事?」
「ま、トリム港の宿にでも行ってとりあえず落ち着こうや。そこでちゃんと話すからさ。おっさん腹減って・・・」
「いつまでも此処に居てもしゃあねぇしな、とりあえずトリム港へってのはオレも賛成だ」
「では、トリム港かしら。それで良いわね?」
「はい、構いません。ごめんなさい、我儘言って」
エステルは薄紅色の髪を揺らしながら、小さく頭を下げた
「じゃ、行くか」
ユーリの合図と共に私達はトリム港へと向かって歩き出した
続く
あとがき
ようやくまたパーティ全員揃いましたね
最後のリタっちとレイヴンのやりとりが何回見ても好きだなw
さ、次々っと・・・(短っ!?)
下書き:2008.12.11
完成:2009.07.04