満月の子編
夢主名変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ヘリオードに着いた私達は入って直ぐに足を止めた
まだ昼間だと言うのにあまりにも閑散としていたからだ
それはユーリ達も感じたのか辺りを見渡しだした
「なんだか・・・以前より閑散としてません?」
「ああ、なんか人が少なくなった気がする」
「まだ昼、だよね?」
「今日はお休みなんじゃないかしら?」
「それにしても少なすぎない?」
皆、それぞれ思っている事を言うが一考に答えが出ない
どうやらカロル達はこの街で起こっている事を知らないようだった
「・・・思ってた以上、じゃない?」
「だな。こりゃ早めに片付けねえとマズイかもな」
「うん・・・。じゃあユーリ、私達仕事に行ってくるね」
「え? もう行くの?」
「急ぎの仕事なんだ」
「じゃあわたし達は宿を取っておきますね」
「ああ、頼む」
「じゃあまた後で」
そう言って私達はユーリ達と別れ、住民失踪の調査へと向かった
33.色仕掛け作戦
ユーリ達と別れた後、私達は直ぐに調査を始めた
住民失踪の話しは少し前から出ている話だったから騎士団にも話しが届いてるだろうと思っていた
けど、やっぱり聞く耳持たぬ、と言った所だった
フレンのような騎士ばかりが騎士団にいるはずもないのは重々承知だったが、この状況を放っておくのは如何なものかと思い思わず溜息を吐いてしまった
「・・・完全に呆れてるな」
「そりゃ呆れたくもなるけどね」
「まあな・・・」
「ねえ、パパ、ボクたちキゾクになれるってホント!?」
「?」
突然男の子の声が聞こえ私達は足を止め、声の聞こえた方へ目を向ける
そこには5~6歳位の男の子を連れた親子がいた
この街に着いたばかりなのか、父親と母親は荷物を持って男の子と手を繋いでいた
男の子は嬉しそうな顔をして父親を見ていると、父親は微笑んで答えた
「ああ、この街が完成すれば、貴族として此処に住めるんだよ」
父親がそう答えると男の子はまた嬉しそうな顔して喜び、母親も嬉しそうな顔をして歩いて行った
「・・・貴族になれる? どう言う事?」
「おや、お嬢さんは知らんのかい?」
突然第三者の声が聞こえ私達は振り返ると、体格の良い男性がいた
「知らないって何をだ?」
「さっきの親子も言ってただろ。この街が完成すれば貴族になれるって」
「でも、それでどうして貴族になれるんですか?」
普通、貴族の位は帝国に対する功績を挙げ、皇帝陛下の信認を得る事の出来た者に与えられないはず
けど、今はその皇帝がいない為、貴族になる、と言う事が矛盾している
そう思っていると男性が私と兄さんを交互に見て声を掛けた
「あんた達、旅の人かい?」
「ええ、そうです」
「なら知らない訳だ」
男性はそう言うと街を見ながら話を始めた
「この街にいる連中の大半は貴族になりたくて頑張って働いてる奴ばっかりなんだよ」
「あんたもその一人なのか?」
「ああ。この街の現執政官代行が街が完成すれば貴族として迎えるってな」
「その現執政官代行ってのは誰がやってるんだ?」
「確か、キュモールって言う騎士団の奴・・・だったかな」
「!」「キュモール!」
その名前に私達は驚きを見せた
が、これで辻褄が合った
キュモールならこんなデタラメな事を言って連れて来た人達を無理矢理働かせているのだろうと想像が付く
「・・・成る程、な。ありがとな教えてくれて」
「良いって事よ。じゃ、俺はこれで」
男性はそう言って私達に手を振って足下に置いてあった荷物を持って歩いて行った
「・・・キュモール、ね」
「あのバカが考えそうな事だな」
「そりゃ騎士団が何もしない訳か」
「フレンがこの区域の担当だったら違ったんだろうけどね」
「キュモールのように貴族の立場を使って名誉の為にやっているような奴は、民衆の事なんてこれっぽっちも考えた事無いだろうしな」
「その点、何処か抜けてるシュヴァーン隊のあの三人は良くやってると思うよ」
確かにルブランとアデコールとボッコスは騎士団と言う割には何処か抜けていて、他の騎士団達とは違う感じがする
今の騎士団にはフレンのような人が必要なのは間違いない
でも、彼等のような騎士も中には必要なのかもしれないと思ってくすりと笑った
「さてと、じゃあこの街で一番怪しいあそこに行ってみるか」
兄さんはそう言って広場の魔導器から少し離れた所にある労働者キャンプへと続く昇降機がある方へ歩き出した
労働者キャンプは部外者以外立ち入り禁止と言われている
この時点で怪しいと思うのも当然だ
「あれ?」
そう思いながら労働者キャンプへ向かっているとそこには見張りをしている騎士とユーリがいた
ユーリは騎士と数言話すとその場を離れて行き、私達もその後を追った
「ユーリ!」
「ん? リア、セイ」
「あら、お帰りなさい」
ユーリの後を追うと広場の魔導器の影に宿屋に行ったはずのエステルとカロル、ジュディスにラピードが隠れていた
「お前等、こんな所で何やってんだ?」
「え、えっと、ちょっと人探しを・・・」
「人探し?」
「あ、実は・・・」
そう言うとカロルは私達と別れた後の話をしてくれた
あの後ユーリ達は魔導器の様子を見に行って何も異常がないと安心していると、以前ノール港で助けたポリーとケラスさんと会ったようだったが、エステルがティグルさんがいない事に気が付き、訪ねるとティグルさんは三日前から行方知れずになっているらしい
心当たりがないかと訪ねるとないと答えたが、こちらも貴族になりに来たと言ったらしい
ユーリ達もこれがキュモールが言った事だと言う事はケラスさんから聞いたようだった
「・・・それで事情を聞いて、エステルが一緒に報酬を払うって事でギルドの仕事で人探しって訳か」
「はい」
「じゃあ目的も一緒って事だね」
「も、って事はリア達も?」
「ええ、私達も住民失踪の調査を本格的にやって欲しいって依頼があってね」
「それで急いで調べてたのね」
ジュディスの言葉に私とアスラは頷くと兄さんがユーリ達を見た
「目的が一緒ならこっからは一緒で良いな」
「ああ。キュモールがバカやってんなら、一発殴って止めねえとな」
「一発じゃすまねぇ気もするけどな」
「あら、じゃあ私も雑ざって良いかしら?」
「ちょっ、三人とも物騒な事言わないでよι こ、行動は慎重にね」
若干怯えて私の後ろに隠れるカロルに解ってると答えるユーリ達だった
「でも、どうやって通ります?」
「やはり強制突破が単純で効果が高いと思うけれど」
「それは禁止だよ! とにかく見張りを連れ出せば良いんだよ」
「どうやってです?」
カロルはちらりと私、エステル、ジュディスを見ると俯いて答えた
「・・・色仕掛け、とか?」
「確かに、男には効果覿面だな」
「だね。じゃあ誰にする?」
「そうだな・・・」
カロルの意外な言葉に驚きつつ話しを聞いていると、何故か一斉に私に視線が集まった
「・・・・え、もしかして・・・私?」
私が確認する様にみんなを見ると一斉に頷いた
「決まり、だな」
「え、ちょっと、ユーリ!?」
「リア、頑張って下さい!」
「え?」
「仕事だと思ってやれ」
「ええ!?」
「リアなら大丈夫だよ」
「カロルまで・・・ι」
「じゃ、素敵なお召し物を探しにお店に行きましょ」
「・・・ジュディス、楽しんでない?」
「ええ、楽しんでるわ♡」
ニッコリと笑顔で返され私は小さく溜息を吐き、肩を落として歩き出した
「なんで、私・・・ι」
「リアには最強の武器があるからだと思うよ」
「・・・最強の武器?」
「・・・もしかして気付いてない?」
「昔からな・・・」
カロルとセイは小声で話し若干呆れながらリア達の後に続いた
ショップに着くと直ぐにエステルとジュディスが服を選び出し、服が決まるとリアはその服に着替える為に更衣室へと移動した
「リア、どんな格好で出てくるんだろうね」
「さあな」
「あれ? ユーリが一番喜んでるだろうって思ったのに」
(喜んでない訳じゃないけどな)
「本人見てないからじゃねえの?」
「あ、そっか」
「・・・セイ、お前な・・・」
余計な事を・・・と視線を送るが、セイは気にした様子もなく本に目線を戻していた
つかカロル、お前も納得するな
「でもあの格好のリアを見たら固まるんじゃない?」
「そうですね。あれが一番似合ってましたし。わたしも早く見たいです♡」
「・・・一体どんなの選んだの?」
「うふふ、それは見てからのお楽しみよ♡」
同姓のエステルとジュディが此処まで楽しみで早く見たいって・・・しかもハート付き
・・・ホント、どんなの選んだんだよι
「・・・着替えたよ」
リアはそう言って更衣室の扉を開け、おずおずとオレ達の前に出て来た
「お、やっと出て来・・・」
が、一瞬にしてその場の空気が変わり、エステルは凄く嬉しそうな顔をして、ジュディは満足そうに微笑んでいたが、オレ達男組は固まってしまった
「リア、すっごく似合ってます!!」
「あ、ありがとエステル///」
「これなら効果あり、ね♡」
「て言うか、もう既に効果覿面みたいだよ」
オレはアスラが言っていた通りリアを見て固まってしまった
否、オレだけじゃなくセイもカロルもラピードも
確かに作戦は色仕掛け作戦だ
けど、いくら作戦の為とはいえ、これは流石にヤバ過ぎるだろ///
カロルなんか、顔赤くして俯いてるし
まあカロルには刺激が強すぎるか・・・
そう思っているとリアがオレの顔を覗き込んだ
「あ、あの・・・ユーリ?」
「え? あ、な、何だ?」
オレは急な事に驚くがなるべく平常心を保ち・・・顔、赤くねえよな? と自分に問いながらリアを見る
「・・・似合ってる?」
っ///、その格好で小首を傾げて聞くのは反則だろ///
「ああ、似合ってるぜ」
「そ、そっか///」
オレがそう言うとリアは顔を赤くしてニッコリとしたジュディとエステルに連れられて歩き出した
「・・・複雑な顔してる」
「そりゃなるでしょ、二人は」
カロルの言葉に隣にいるセイを見るとセイも複雑な顔をしていた
まあ妹があの格好で男に色仕掛け、だから機嫌も悪くなるわな
オレの場合、好きな女が他の男に色仕掛け、だからな
作戦、とはいえやっぱ複雑だ・・・
「ユーリ、セイ、作戦が終わるまでの辛抱だからι」
「「ああ・・・」」
そんなオレ達を見かねたアスラが呆れながら釘を刺した
*
先程の見張りの騎士を惹き付ける為、私は騎士の近くに来た
ユーリ達は先程と同じく、物陰に隠れ様子を窺っていた
私は深呼吸すると予定通りの作戦に入った
「あの、すいません・・・」
「ん? ちょっ!!」
騎士は私の姿を見るなり動揺して固まってしまった
何か、数分前にも同じ光景を見たような・・・ι
と思いつつ演技を続ける
「どうかしましたか?」
私は小首を傾げると騎士はまた動揺したが私は気にせず演技を続ける
「あの、私・・・貴方にどうしてもお話したい事があるんです」
「わ、私に、ですか?」
「はい・・・あの、こちらに来て貰えませんか?」
「で、ですが、わ、私は今仕事の「ダメ、ですか?」
私は憂い帯びた顔をすると騎士はまた動揺した
「い、いえ、決してそう言う訳では!!」
その様子をこっそり結界魔導器の影から見ていたユーリ達は順調に作戦が進んでいる事にほっと胸を撫で下ろしていた
「流石リアね」
「効果覿面ですね」
「・・・此処にも効果来てるけどね」
「「「・・・・」」」
男性陣は黙ったままリアと騎士の様子を見ていた
「じゃあ、来て貰えますか?」
私はニッコリと微笑むと騎士は物凄く動揺して頷いた
「ええ、も、勿論ですとも!!」
私はニッコリと微笑んだまま騎士が着いてくるのを確認するとそのままユーリ達がいる方へ歩き出した
タイミングを計ったかの様に歩いて行くと、直ぐにユーリと兄さんがその騎士を殴り倒した
・・・かなり凄い音がしたけどι
「・・・結局はこうなるんだねι」
「こうでもしないとオレの気が治まら・・・リアが危ないだろ」
「ああ・・・そうだな」
「・・・二人共~、何気に本音出てるよι」
「はぁ~・・・ι」
「リア、お疲れ様です」
「お疲れ様」
私は大きな溜息を吐くとエステルが私に駆け寄り、ジュディスが上着を掛けてくれた
「ありがと、二人共。ユーリも兄さんもありがと。じゃあ着替えてくるね」
「「ラピード、アスラ、リアの護衛頼んだぞ」」
「了解」「ワン!」
少しドスの聞いた声だったような気がしたが、私はラピードとアスラと一緒にショップへと向かって行った
続く
あとがき
みんな大好き、色仕掛け! の回でした!
いやぁ~此処は書いてて楽しかった!
いつも以上にユーリのキャラが崩れてるけど(笑)
でも此処はこうなるよねぇ~w
最初はかなり真面目な話しだったのに色仕掛けで遊んじゃいました(笑)
まあでもこれからシリアスになってくるから遊べる所は遊ばないとね・・・
此処はオリジナルで書く予定ではなかったんですけど、書いてるうちにオリジナルでいった方が繋げるなと思ったのでオリジナルにしました
リアちゃんがどんな格好をしていたかはみなさんの想像にお任せしますw(俺の文才やイラストじゃ表現出来なのでι)
さ、次はいよいよ労働者キャンプに乗り込みます!
あ、でもその前にあの子に会うか!
では、お楽しみにぃ~!!
下書き:2008.12.11
完成:2009.07.04
まだ昼間だと言うのにあまりにも閑散としていたからだ
それはユーリ達も感じたのか辺りを見渡しだした
「なんだか・・・以前より閑散としてません?」
「ああ、なんか人が少なくなった気がする」
「まだ昼、だよね?」
「今日はお休みなんじゃないかしら?」
「それにしても少なすぎない?」
皆、それぞれ思っている事を言うが一考に答えが出ない
どうやらカロル達はこの街で起こっている事を知らないようだった
「・・・思ってた以上、じゃない?」
「だな。こりゃ早めに片付けねえとマズイかもな」
「うん・・・。じゃあユーリ、私達仕事に行ってくるね」
「え? もう行くの?」
「急ぎの仕事なんだ」
「じゃあわたし達は宿を取っておきますね」
「ああ、頼む」
「じゃあまた後で」
そう言って私達はユーリ達と別れ、住民失踪の調査へと向かった
33.色仕掛け作戦
ユーリ達と別れた後、私達は直ぐに調査を始めた
住民失踪の話しは少し前から出ている話だったから騎士団にも話しが届いてるだろうと思っていた
けど、やっぱり聞く耳持たぬ、と言った所だった
フレンのような騎士ばかりが騎士団にいるはずもないのは重々承知だったが、この状況を放っておくのは如何なものかと思い思わず溜息を吐いてしまった
「・・・完全に呆れてるな」
「そりゃ呆れたくもなるけどね」
「まあな・・・」
「ねえ、パパ、ボクたちキゾクになれるってホント!?」
「?」
突然男の子の声が聞こえ私達は足を止め、声の聞こえた方へ目を向ける
そこには5~6歳位の男の子を連れた親子がいた
この街に着いたばかりなのか、父親と母親は荷物を持って男の子と手を繋いでいた
男の子は嬉しそうな顔をして父親を見ていると、父親は微笑んで答えた
「ああ、この街が完成すれば、貴族として此処に住めるんだよ」
父親がそう答えると男の子はまた嬉しそうな顔して喜び、母親も嬉しそうな顔をして歩いて行った
「・・・貴族になれる? どう言う事?」
「おや、お嬢さんは知らんのかい?」
突然第三者の声が聞こえ私達は振り返ると、体格の良い男性がいた
「知らないって何をだ?」
「さっきの親子も言ってただろ。この街が完成すれば貴族になれるって」
「でも、それでどうして貴族になれるんですか?」
普通、貴族の位は帝国に対する功績を挙げ、皇帝陛下の信認を得る事の出来た者に与えられないはず
けど、今はその皇帝がいない為、貴族になる、と言う事が矛盾している
そう思っていると男性が私と兄さんを交互に見て声を掛けた
「あんた達、旅の人かい?」
「ええ、そうです」
「なら知らない訳だ」
男性はそう言うと街を見ながら話を始めた
「この街にいる連中の大半は貴族になりたくて頑張って働いてる奴ばっかりなんだよ」
「あんたもその一人なのか?」
「ああ。この街の現執政官代行が街が完成すれば貴族として迎えるってな」
「その現執政官代行ってのは誰がやってるんだ?」
「確か、キュモールって言う騎士団の奴・・・だったかな」
「!」「キュモール!」
その名前に私達は驚きを見せた
が、これで辻褄が合った
キュモールならこんなデタラメな事を言って連れて来た人達を無理矢理働かせているのだろうと想像が付く
「・・・成る程、な。ありがとな教えてくれて」
「良いって事よ。じゃ、俺はこれで」
男性はそう言って私達に手を振って足下に置いてあった荷物を持って歩いて行った
「・・・キュモール、ね」
「あのバカが考えそうな事だな」
「そりゃ騎士団が何もしない訳か」
「フレンがこの区域の担当だったら違ったんだろうけどね」
「キュモールのように貴族の立場を使って名誉の為にやっているような奴は、民衆の事なんてこれっぽっちも考えた事無いだろうしな」
「その点、何処か抜けてるシュヴァーン隊のあの三人は良くやってると思うよ」
確かにルブランとアデコールとボッコスは騎士団と言う割には何処か抜けていて、他の騎士団達とは違う感じがする
今の騎士団にはフレンのような人が必要なのは間違いない
でも、彼等のような騎士も中には必要なのかもしれないと思ってくすりと笑った
「さてと、じゃあこの街で一番怪しいあそこに行ってみるか」
兄さんはそう言って広場の魔導器から少し離れた所にある労働者キャンプへと続く昇降機がある方へ歩き出した
労働者キャンプは部外者以外立ち入り禁止と言われている
この時点で怪しいと思うのも当然だ
「あれ?」
そう思いながら労働者キャンプへ向かっているとそこには見張りをしている騎士とユーリがいた
ユーリは騎士と数言話すとその場を離れて行き、私達もその後を追った
「ユーリ!」
「ん? リア、セイ」
「あら、お帰りなさい」
ユーリの後を追うと広場の魔導器の影に宿屋に行ったはずのエステルとカロル、ジュディスにラピードが隠れていた
「お前等、こんな所で何やってんだ?」
「え、えっと、ちょっと人探しを・・・」
「人探し?」
「あ、実は・・・」
そう言うとカロルは私達と別れた後の話をしてくれた
あの後ユーリ達は魔導器の様子を見に行って何も異常がないと安心していると、以前ノール港で助けたポリーとケラスさんと会ったようだったが、エステルがティグルさんがいない事に気が付き、訪ねるとティグルさんは三日前から行方知れずになっているらしい
心当たりがないかと訪ねるとないと答えたが、こちらも貴族になりに来たと言ったらしい
ユーリ達もこれがキュモールが言った事だと言う事はケラスさんから聞いたようだった
「・・・それで事情を聞いて、エステルが一緒に報酬を払うって事でギルドの仕事で人探しって訳か」
「はい」
「じゃあ目的も一緒って事だね」
「も、って事はリア達も?」
「ええ、私達も住民失踪の調査を本格的にやって欲しいって依頼があってね」
「それで急いで調べてたのね」
ジュディスの言葉に私とアスラは頷くと兄さんがユーリ達を見た
「目的が一緒ならこっからは一緒で良いな」
「ああ。キュモールがバカやってんなら、一発殴って止めねえとな」
「一発じゃすまねぇ気もするけどな」
「あら、じゃあ私も雑ざって良いかしら?」
「ちょっ、三人とも物騒な事言わないでよι こ、行動は慎重にね」
若干怯えて私の後ろに隠れるカロルに解ってると答えるユーリ達だった
「でも、どうやって通ります?」
「やはり強制突破が単純で効果が高いと思うけれど」
「それは禁止だよ! とにかく見張りを連れ出せば良いんだよ」
「どうやってです?」
カロルはちらりと私、エステル、ジュディスを見ると俯いて答えた
「・・・色仕掛け、とか?」
「確かに、男には効果覿面だな」
「だね。じゃあ誰にする?」
「そうだな・・・」
カロルの意外な言葉に驚きつつ話しを聞いていると、何故か一斉に私に視線が集まった
「・・・・え、もしかして・・・私?」
私が確認する様にみんなを見ると一斉に頷いた
「決まり、だな」
「え、ちょっと、ユーリ!?」
「リア、頑張って下さい!」
「え?」
「仕事だと思ってやれ」
「ええ!?」
「リアなら大丈夫だよ」
「カロルまで・・・ι」
「じゃ、素敵なお召し物を探しにお店に行きましょ」
「・・・ジュディス、楽しんでない?」
「ええ、楽しんでるわ♡」
ニッコリと笑顔で返され私は小さく溜息を吐き、肩を落として歩き出した
「なんで、私・・・ι」
「リアには最強の武器があるからだと思うよ」
「・・・最強の武器?」
「・・・もしかして気付いてない?」
「昔からな・・・」
カロルとセイは小声で話し若干呆れながらリア達の後に続いた
ショップに着くと直ぐにエステルとジュディスが服を選び出し、服が決まるとリアはその服に着替える為に更衣室へと移動した
「リア、どんな格好で出てくるんだろうね」
「さあな」
「あれ? ユーリが一番喜んでるだろうって思ったのに」
(喜んでない訳じゃないけどな)
「本人見てないからじゃねえの?」
「あ、そっか」
「・・・セイ、お前な・・・」
余計な事を・・・と視線を送るが、セイは気にした様子もなく本に目線を戻していた
つかカロル、お前も納得するな
「でもあの格好のリアを見たら固まるんじゃない?」
「そうですね。あれが一番似合ってましたし。わたしも早く見たいです♡」
「・・・一体どんなの選んだの?」
「うふふ、それは見てからのお楽しみよ♡」
同姓のエステルとジュディが此処まで楽しみで早く見たいって・・・しかもハート付き
・・・ホント、どんなの選んだんだよι
「・・・着替えたよ」
リアはそう言って更衣室の扉を開け、おずおずとオレ達の前に出て来た
「お、やっと出て来・・・」
が、一瞬にしてその場の空気が変わり、エステルは凄く嬉しそうな顔をして、ジュディは満足そうに微笑んでいたが、オレ達男組は固まってしまった
「リア、すっごく似合ってます!!」
「あ、ありがとエステル///」
「これなら効果あり、ね♡」
「て言うか、もう既に効果覿面みたいだよ」
オレはアスラが言っていた通りリアを見て固まってしまった
否、オレだけじゃなくセイもカロルもラピードも
確かに作戦は色仕掛け作戦だ
けど、いくら作戦の為とはいえ、これは流石にヤバ過ぎるだろ///
カロルなんか、顔赤くして俯いてるし
まあカロルには刺激が強すぎるか・・・
そう思っているとリアがオレの顔を覗き込んだ
「あ、あの・・・ユーリ?」
「え? あ、な、何だ?」
オレは急な事に驚くがなるべく平常心を保ち・・・顔、赤くねえよな? と自分に問いながらリアを見る
「・・・似合ってる?」
っ///、その格好で小首を傾げて聞くのは反則だろ///
「ああ、似合ってるぜ」
「そ、そっか///」
オレがそう言うとリアは顔を赤くしてニッコリとしたジュディとエステルに連れられて歩き出した
「・・・複雑な顔してる」
「そりゃなるでしょ、二人は」
カロルの言葉に隣にいるセイを見るとセイも複雑な顔をしていた
まあ妹があの格好で男に色仕掛け、だから機嫌も悪くなるわな
オレの場合、好きな女が他の男に色仕掛け、だからな
作戦、とはいえやっぱ複雑だ・・・
「ユーリ、セイ、作戦が終わるまでの辛抱だからι」
「「ああ・・・」」
そんなオレ達を見かねたアスラが呆れながら釘を刺した
*
先程の見張りの騎士を惹き付ける為、私は騎士の近くに来た
ユーリ達は先程と同じく、物陰に隠れ様子を窺っていた
私は深呼吸すると予定通りの作戦に入った
「あの、すいません・・・」
「ん? ちょっ!!」
騎士は私の姿を見るなり動揺して固まってしまった
何か、数分前にも同じ光景を見たような・・・ι
と思いつつ演技を続ける
「どうかしましたか?」
私は小首を傾げると騎士はまた動揺したが私は気にせず演技を続ける
「あの、私・・・貴方にどうしてもお話したい事があるんです」
「わ、私に、ですか?」
「はい・・・あの、こちらに来て貰えませんか?」
「で、ですが、わ、私は今仕事の「ダメ、ですか?」
私は憂い帯びた顔をすると騎士はまた動揺した
「い、いえ、決してそう言う訳では!!」
その様子をこっそり結界魔導器の影から見ていたユーリ達は順調に作戦が進んでいる事にほっと胸を撫で下ろしていた
「流石リアね」
「効果覿面ですね」
「・・・此処にも効果来てるけどね」
「「「・・・・」」」
男性陣は黙ったままリアと騎士の様子を見ていた
「じゃあ、来て貰えますか?」
私はニッコリと微笑むと騎士は物凄く動揺して頷いた
「ええ、も、勿論ですとも!!」
私はニッコリと微笑んだまま騎士が着いてくるのを確認するとそのままユーリ達がいる方へ歩き出した
タイミングを計ったかの様に歩いて行くと、直ぐにユーリと兄さんがその騎士を殴り倒した
・・・かなり凄い音がしたけどι
「・・・結局はこうなるんだねι」
「こうでもしないとオレの気が治まら・・・リアが危ないだろ」
「ああ・・・そうだな」
「・・・二人共~、何気に本音出てるよι」
「はぁ~・・・ι」
「リア、お疲れ様です」
「お疲れ様」
私は大きな溜息を吐くとエステルが私に駆け寄り、ジュディスが上着を掛けてくれた
「ありがと、二人共。ユーリも兄さんもありがと。じゃあ着替えてくるね」
「「ラピード、アスラ、リアの護衛頼んだぞ」」
「了解」「ワン!」
少しドスの聞いた声だったような気がしたが、私はラピードとアスラと一緒にショップへと向かって行った
続く
あとがき
みんな大好き、色仕掛け! の回でした!
いやぁ~此処は書いてて楽しかった!
いつも以上にユーリのキャラが崩れてるけど(笑)
でも此処はこうなるよねぇ~w
最初はかなり真面目な話しだったのに色仕掛けで遊んじゃいました(笑)
まあでもこれからシリアスになってくるから遊べる所は遊ばないとね・・・
此処はオリジナルで書く予定ではなかったんですけど、書いてるうちにオリジナルでいった方が繋げるなと思ったのでオリジナルにしました
リアちゃんがどんな格好をしていたかはみなさんの想像にお任せしますw(俺の文才やイラストじゃ表現出来なのでι)
さ、次はいよいよ労働者キャンプに乗り込みます!
あ、でもその前にあの子に会うか!
では、お楽しみにぃ~!!
下書き:2008.12.11
完成:2009.07.04