水道魔導器奪還編
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「エアルの異常で魔導器が暴走、そのせいで魔物が凶暴化・・・。それがあいつの言うひずみと関係あるなら、この場所だけじゃすまないのかも」
「さっきからぶつぶつと・・・」
すると急に地響きが聞こえだした
「うわっ、何!? また魔物の襲撃?」
「とりあえず、木の隅に隠れて!!」
地響きがこちらに向かって来ている事に気付き私達は木の隅に隠れた
「リア、カロル、頭上げんなよ!」
木の隅に隠れたと同時にユーリからそう言われ私とカロルはそのまま屈んでいた
恐らくエアルの暴走が収まったので暴走していた魔物達が住処に戻って来たのだろう
暫くして振動が収まり私達は立ち上がると入り口にドン達が傷だらけになって座っている姿が見えた
私達はゆっくりドンに近付くとドンは私達に気付きこちらに視線を向けた
「・・・てめえらが何かしたのか?」
「何かって何だ?」
「暴れまくってた魔物が突然大人しくなって逃げやがった。何ぃやった?」
「・・・ユーリ、あれです。エアルの暴走が止まったから・・・」
「ボク達がエアルの暴走を止めたから、魔物も大人しくなったんです!」
カロルは嬉しそうにドンに言うが、暴走を止めたのはデュークだ
デュークが持っていたあの剣がエアルの暴走を止めたのだ
「エアルの暴走? ほぉ・・・」
「何、おじいさん、あんた何か知ってんの!?」
「いやな、ベリウスって俺の古い友達がそんな話しをしてた事があってな」
「・・・ドンが南のベリウスと友達って本当だったんだ・・・」
「何よ、そのベリウスって言うの」
「ノードポリカで闘技場の首領をしてる人だよ」
「ノードポリカ・・・」
「ん? そこにいるのは情報屋のルーティア兄妹か?」
「「え?」」
ドンの言葉に驚きユーリ達は私と兄さんとアスラを見た
「お久しぶりです、ドン」
「え? 何、二人共ドンと知り合いなの!?」
「ええ」
「珍しいな、てめえ等が一緒ってのは」
「まあ色々遭ってな」
「ふん、相変わらずな奴だな。で? エアルの暴走がどうしたって?」
ドンがそう尋ねると、カロルは嬉しそうにドンに駆け寄った
「本当大変だったんです! 凄く沢山、強い魔物が次から次へと、でも・・・!」
「坊主、そう言う事はな、ひっそり胸に秘めておくもんだ」
「へ・・・?」
「誰かに認めてもらう為にやってんじゃねえ、街や部下を守る為にやってるんだからな」
「ご、ごめんなさい・・・」
流石ギルドの元締め、言う事が違う
カロルはしょんぼりと肩を落として謝ったが、きっとドンの言葉の意味はちゃんと伝わっているはずだ
エステルはドンと共に魔物退治にやって来た人達が怪我をしているのを見るとそのまま彼等のの元へと向かい、治癒を始めた
それを興味深そうに見ていたドンだったが、突然私達の方を向いて、ある一点に視線を止めた
「・・・ん? そこにいるのはレイヴンじゃねえか。何、隠れてんだ!」
「ちっ」
「さっさと出て来たら?」
「はいはいっと・・・」
レイヴンとアスラに言われレイヴンは渋々草陰から出てきてドンの前で止まった
「うちのもんが、他人様のとこで迷惑かけてんじゃあるめえな?」
「迷惑って何よ? 此処の魔物大人しくさせるのに頑張ったのよ、主に俺が」
「え!? レイヴンって、天を射る矢の一員なの!?」
「そういや言ってなかったな」
「本人が言わなかったから言うのも何だと思ってね」
「二人共知ってたの!?」
「そりゃ、知り合いだしね」
これには流石のユーリも驚いていた
商売上の知り合いとは言っていたが天を射る矢だと言う事は話してなかったからだった
ドンとレイヴンに目を戻すと、ドンは容赦なく持っていた剣の柄でレイヴンの鳩尾の辺りを殴ると、痛さのあまりレイヴンはユーリの後ろに逃げ隠れた
「いてっ、じいさん、それ反則・・・! 反則だから・・・!」
「うるせぃっ!」
「ドン・ホワイトホース」
「何だ?」
そんなやり取り聴いてる暇なんてない、と言ったようにユーリは前に進み出ると、近くで見ると更に迫力満点のドンに怯みもせず交渉する
「会ったばっかで失礼だけど、あんたに折り入って話しがある」
「ドン、お話中すみません」
ユーリの言葉に返事する前に、ドンの仲間の男性がドンに耳打ちするとエステルの治癒を受けた仲間達に目を向けた
「ん、解った。野郎共、引き上げだ。すまねぇな、急用でダングレストに戻らなにゃならねえ。ユニオンを尋ねてくれりゃあ優先して話しを聞くからそれで勘弁してくれ」
「いや、約束してもらえるならそれで構わねえよ」
「ふん、俺相手に物応じなしか。てめぇら、良いギルドになれるぜ」
ドンはそう笑うと、仲間を引き連れ一足先に森を出て行ってしまった
「ギルド、ね」
「作るん、でしょ?」
「そん時が来たらな」
その言葉にカロルは嬉しそうに目を輝かせる
「で、どうよ? やっと俺様の偉大さが伝わったかね?」
「偉大なのはレイヴンじゃないんじゃない?」
「何よ、直ぐにケチ付けるんだから」
「さ、ダングレストに戻ってドンに会ったらバルボス探しの続きだ」
「リタ、ユーリの用事が終わったら私達はアレクセイに報告へ・・・。リタ?」
「・・・あ、何?」
「ユーリの用事を済ませましたらアレクセイに報告行き・・・どうかしましたか?」
「な、何でもない。ほら、戻るわよ!」
25.偽り
ダングレストに戻って来た私達はドンに会う為にユニオンに向かった
「よぉ、てめぇら、帰って来たか」
部屋に入るとドンが私達に気付きこちらを見ると、ドンの前にいた人物も振り返り私達を見た
「・・・ユーリ、それにリアとセイも」
「何だ、てめぇら知り合いか?」
レイヴンはそのまま歩いていきドンの隣に控えた
「はい、古い友人で・・・」
「そこの情報屋の兄妹ともか?」
「はい。ドンもユーリ達と面識があったのですね」
「魔物の襲撃騒ぎの件と、そこの兄妹とは情報関係でな」
「そう言う繋がりだったんだ」
「で? 用件は何だ?」
「いや・・・」
フレンはちらりとこちらの様子を伺っていた
あまり聞かれたくない事なのだろう
「オレ等は紅の絆傭兵団のバルボスって奴の話を聞きに来たんだよ。魔刻ドロボウの一件、裏にいるのは奴みたいなんでな」
「成る程、やはりそっちもバルボス絡みか」
「・・・って事は、お前も?」
フレンは頷くとドンに向き合う
「ユニオンと紅の絆傭兵団の盟約破棄のお願いに参りました。バルボス以下、かのギルドは各地で魔導器を悪用し、社会を混乱させています。ご助力頂けるなら、共に紅の絆傭兵団の打倒を果たしたいと思っております」
「・・・成る程、バルボスか。確かに最近の奴の行動は少しばかり目に余るな。ギルドとして、けじめはつけにゃあならねえ」
「貴方の力視力のお陰で、昨今、帝国とギルドの武力闘争は収まっています。ですが、バルボスを野放しにすれば両者の関係に再び亀裂が生じるかもしれません」
「そいつは面白くねえな」
「バルボスは、今止めるべきです」
「協力ってからには俺等と帝国の立場は対等だよな?」
「はい」
「ふんっ、そう言う事なら帝国との共同戦線も悪いもんじゃあねえ」
「では・・・」
「ああ、此処は手を結んで事を運んだ方が得策だ。おいっ、ベリウスにも連絡しておけ。いざとなったらノードポリカにも協力してもらうってな」
フレンはその言葉を聴いてほっと一安心したようで、先程よりも表情は柔らかかった
帝国の使いで来たとはいえ、相手は敵の総大将のようなものだ
「何か大事になってきたね・・・」
「こちらにヨーデル殿下より書状を預かって参りました」
カロルの言葉に小さく頷いているとフレンが一歩前に出てドンに渡し、ドンはその手紙を読みレイヴンに渡した
「ほぉ、時期皇帝候補の密書か。 ・・・・読んで聞かせてやれ」
レイヴンは手紙に目を通すと、その内容を読み始める
「『ドン・ホワイトホースの首を差し出せば、バルボスの件に関しユニオンの責任は不問とす』」
「何ですって・・・!?」
「なっ!?」「!?」
「うわはっはっは! これは笑える話しだ」
レイヴンは持っていた手紙をフレンに渡すとフレンはその手紙を読み握りしめた
「・・・何だ、これは・・・」
フレンは信じられないといった様子で書状の内容を読み返した
自身が伝えられていた内容とは全く違う中身の書状を
本当にショックを受け手紙を持っている手が震えていた
「どうやら、騎士殿と殿下のお考えは天と地ほど違うようだな」
「これは何かの間違いです! ヨーデル殿下がそのような事を」
「おい、お客人を特別室にご案内しろ!」
「ドン・ホワイトホース。聞いて下さい! これは何者かの罠です!」
フレンは何とか誤解を解こうと必死に講義するものの、ドンの命令に逆らう訳もなくドンの傍に控えていた男二人に腕を掴んで何処かに連れて行ってしまった
「フレン・・・!」
「エステル!」
フレンの元へ駆け出そうとしていたエステルを止めるとエステルは私とユーリを見た
「早まるなって。下手に動けば、余計フレンを危険にさらす事になるぜ」
「・・・・・」
ドンは立ち上がると、その場にいた全員に向かって声を張り上げる
「帝国との全面戦争だ! 総力を挙げて、帝都に攻め上る! 客人は見せしめに奴等の目の前で八つ裂きだ! 二度と舐めた口聞かせるな!!」
そう言ってドンは歩き出し、その後ろにレイヴンと天を射る矢のメンバーが続いて行く
「た、大変な事になっちゃった!」
「お陰であたし等の用件、忘れられちゃったわよ」
「ドンも話し所じゃねえな」
「わたし、帝都に戻って本当の事を確かめます!」
「早まるなって言ったろ。ちょっと様子を見ようぜ」
「わ・・・解りました」
「でもこのままじゃマズいぜ」
「全面戦争って事にもなりかねないね」
「それもだけど、フレンの身が一番危ないわ」
「・・・フレンどうなっちゃうの?」
カロルは心配そうな顔をして私を見るとエステルも同じく私を見た
「少なくとも無事、とは言えない」
「宣戦布告な手紙持って来たからな」
「・・・・」
「ヨーデルがあのような書状をフレンに預けたなんてわたしには信じられません。きっと、何かの間違いです」
「あたしらもヨーデル殿下には会ってるしね。確かにそういう性格には見えなかったけど」
「でも、現にドンの首を差し出せって、書状に書かれてたんだよ?」
「となると、ヨーデルとフレンの行動を邪魔したい連中の仕業ってとこだな」
「一体誰が・・・?」
「さあな・・・」
「けど、こっちにこんな手紙が来てるって事はもしかしたら帝国の方にも似たような手紙が行ってる可能性もあると思うわ」
「あり得なくはないわね」
「・・・考えてても仕方ねえ。とりあえず外出るぞ」
私達はそこで言葉を切り、ユニオンを後にした
*
広場まで戻って来るとユーリがユニオンに財布と落としたと言ってユニオンに戻って行った
「・・・ありゃフレンの様子見に行ったな」
「だね。で、ボク等はどうする?」
「とりあえず、状況確認じゃない」
「だな。後は各自やりたい事やれば良い」
「リアはユーリの後追い駆けるんでしょ?」
「うん。また無茶してるだろうし」
「俺はドンんとこ行って様子見てくるわ」
「ボクはエステル達の所にいた方が良いよね」
「あいつ等も無茶するからな。頼んだぞ」
「りょーかい」
「二人共~、何してるの~!」
いつまで経っても来ない私達にカロルが声を掛け私達の所に戻って来た
「どうかしたんです?」
「悪ぃけど、先に宿に向かってくれ」
「は? 何よ、いきなり」
「これから仕事なのよ」
「仕事って、こんな時に?」
「こんな時だからこそだよ」
「あんま長く話し込んでる時間はないから、俺達はもう行くな」
「うん、じゃあみんなまた後で」
「え? ちょ、ちょっと!」
私達はそう言い残し、エステル達の言葉を遮り各々の目的の為に散らばった
*
街の状況確認をした後、私は直ぐにユニオンに向かった
今頃はユーリとフレンが話しをしているだろうと思い、特別室 に向かう扉を開けようとするとその扉が開いた
「リア!」
「フレン、見張りがいないからってあんまり大きな声出さない方が良いよ」
「・・・どうして此処に?」
「ユーリと一緒で様子を見に来たの」
「そうか・・・」
「・・・フレン」
「?」
フレンは扉から出て来て私の横を通り過ぎようとしたが私の声に反応し振り返った
「書状、取り戻しに行くんでしょ?」
「!」
その言葉を聞いてフレンは驚いた顔をした
ユニオンに来る前に情報を集めた時、魔物騒ぎの時に騎士団があの赤眼達に襲われた所を見たと言う人がいた
多分、書状がすり替えられたのはその時だろう
そして見張りがいない所を見ると、ユーリや私がフレンの元に来る事をドンは予想してたのだろう
「ユーリ、フレンの代わりに中にいるんでしょ?」
「・・・ああ。もし僕が戻って来なかったら代わりに死んでくれっと伝えてある」
「・・・そっか。でも・・・」
私はそこで一旦言葉を切りフレンに向き合った
「私はフレンがユーリを見捨てるなんて思ってない。フレンは本物の書状を取り戻して来るって信じてる」
私はニッコリとしてフレンを見るとフレンはまた驚いた顔をしたが直ぐに苦笑して私を見た
「・・・リアには敵わないな」
「本当の事言っただけよ」
「・・・ホント、敵わないな」
「? フレン、何か言った?」
「いや。それより、案内任せても良いかい?」
「うん、じゃあ着いて来て」
そうして私とフレンはユニオンを出て街の外を目指した
「ユーリ!」
フレンを街の外まで送りユニオンまで戻って来ると、丁度ユーリがユニオンから出て来た所だった
「よ、フレンの案内と情報収集お疲れさん」
「・・・ドンから聞いたの?」
「ああ、リアとセイとアスラが情報収集、エステルが怪我人の手当で駆けずり回ってるって」
「そっか。 ・・・それにしても」
私はドン達に目を向けるとユーリもつられてドン達を見た
「あのじじい、バカ誘き出す為にマジで戦争するつもりか?」
(リア!)
すると突然テレパスでアスラの声が聞こえた
「アスラ? どうしたの?」
(紅の絆傭兵団の居場所見つけたよ!)
「ホント! それでバルボスは?」
(いるよ、おまけにラゴウも)
「好都合じゃない」
(うん、今そっちにエステルとカロルが向かってる所。セイにも連絡は行ってるから合流したら来て!)
「解ったわ」
「アスラから連絡か?」
「うん、紅の絆傭兵団の居場所見つけたって」
「流石。ドンの狙い通りだな・・・それで何が好都合なんだ?」
「それは着いてからのお楽しみで良いんじゃないか?」
突然第三者の声が聞こえ私とユーリは振り返ると兄さんがこちらにやって来ていた
「エステルとカロルが待ってる、行こうぜ」
続く
あとがき
段々架橋に入って来た感じですね
後何話かで、水道魔導器編終わるしね(先に言っちゃったよ(笑))
そして今回はタイトルに行くまで長かった!
あそこがキリが良かったからあそこにタイトルを入れてみた
場面転換で使うのもありか・・・とか思っちゃいました
さ、次回は気合い入れて書きます!
では!
下書き:2008.12.04
完成:2009.05.08
「さっきからぶつぶつと・・・」
すると急に地響きが聞こえだした
「うわっ、何!? また魔物の襲撃?」
「とりあえず、木の隅に隠れて!!」
地響きがこちらに向かって来ている事に気付き私達は木の隅に隠れた
「リア、カロル、頭上げんなよ!」
木の隅に隠れたと同時にユーリからそう言われ私とカロルはそのまま屈んでいた
恐らくエアルの暴走が収まったので暴走していた魔物達が住処に戻って来たのだろう
暫くして振動が収まり私達は立ち上がると入り口にドン達が傷だらけになって座っている姿が見えた
私達はゆっくりドンに近付くとドンは私達に気付きこちらに視線を向けた
「・・・てめえらが何かしたのか?」
「何かって何だ?」
「暴れまくってた魔物が突然大人しくなって逃げやがった。何ぃやった?」
「・・・ユーリ、あれです。エアルの暴走が止まったから・・・」
「ボク達がエアルの暴走を止めたから、魔物も大人しくなったんです!」
カロルは嬉しそうにドンに言うが、暴走を止めたのはデュークだ
デュークが持っていたあの剣がエアルの暴走を止めたのだ
「エアルの暴走? ほぉ・・・」
「何、おじいさん、あんた何か知ってんの!?」
「いやな、ベリウスって俺の古い友達がそんな話しをしてた事があってな」
「・・・ドンが南のベリウスと友達って本当だったんだ・・・」
「何よ、そのベリウスって言うの」
「ノードポリカで闘技場の首領をしてる人だよ」
「ノードポリカ・・・」
「ん? そこにいるのは情報屋のルーティア兄妹か?」
「「え?」」
ドンの言葉に驚きユーリ達は私と兄さんとアスラを見た
「お久しぶりです、ドン」
「え? 何、二人共ドンと知り合いなの!?」
「ええ」
「珍しいな、てめえ等が一緒ってのは」
「まあ色々遭ってな」
「ふん、相変わらずな奴だな。で? エアルの暴走がどうしたって?」
ドンがそう尋ねると、カロルは嬉しそうにドンに駆け寄った
「本当大変だったんです! 凄く沢山、強い魔物が次から次へと、でも・・・!」
「坊主、そう言う事はな、ひっそり胸に秘めておくもんだ」
「へ・・・?」
「誰かに認めてもらう為にやってんじゃねえ、街や部下を守る為にやってるんだからな」
「ご、ごめんなさい・・・」
流石ギルドの元締め、言う事が違う
カロルはしょんぼりと肩を落として謝ったが、きっとドンの言葉の意味はちゃんと伝わっているはずだ
エステルはドンと共に魔物退治にやって来た人達が怪我をしているのを見るとそのまま彼等のの元へと向かい、治癒を始めた
それを興味深そうに見ていたドンだったが、突然私達の方を向いて、ある一点に視線を止めた
「・・・ん? そこにいるのはレイヴンじゃねえか。何、隠れてんだ!」
「ちっ」
「さっさと出て来たら?」
「はいはいっと・・・」
レイヴンとアスラに言われレイヴンは渋々草陰から出てきてドンの前で止まった
「うちのもんが、他人様のとこで迷惑かけてんじゃあるめえな?」
「迷惑って何よ? 此処の魔物大人しくさせるのに頑張ったのよ、主に俺が」
「え!? レイヴンって、天を射る矢の一員なの!?」
「そういや言ってなかったな」
「本人が言わなかったから言うのも何だと思ってね」
「二人共知ってたの!?」
「そりゃ、知り合いだしね」
これには流石のユーリも驚いていた
商売上の知り合いとは言っていたが天を射る矢だと言う事は話してなかったからだった
ドンとレイヴンに目を戻すと、ドンは容赦なく持っていた剣の柄でレイヴンの鳩尾の辺りを殴ると、痛さのあまりレイヴンはユーリの後ろに逃げ隠れた
「いてっ、じいさん、それ反則・・・! 反則だから・・・!」
「うるせぃっ!」
「ドン・ホワイトホース」
「何だ?」
そんなやり取り聴いてる暇なんてない、と言ったようにユーリは前に進み出ると、近くで見ると更に迫力満点のドンに怯みもせず交渉する
「会ったばっかで失礼だけど、あんたに折り入って話しがある」
「ドン、お話中すみません」
ユーリの言葉に返事する前に、ドンの仲間の男性がドンに耳打ちするとエステルの治癒を受けた仲間達に目を向けた
「ん、解った。野郎共、引き上げだ。すまねぇな、急用でダングレストに戻らなにゃならねえ。ユニオンを尋ねてくれりゃあ優先して話しを聞くからそれで勘弁してくれ」
「いや、約束してもらえるならそれで構わねえよ」
「ふん、俺相手に物応じなしか。てめぇら、良いギルドになれるぜ」
ドンはそう笑うと、仲間を引き連れ一足先に森を出て行ってしまった
「ギルド、ね」
「作るん、でしょ?」
「そん時が来たらな」
その言葉にカロルは嬉しそうに目を輝かせる
「で、どうよ? やっと俺様の偉大さが伝わったかね?」
「偉大なのはレイヴンじゃないんじゃない?」
「何よ、直ぐにケチ付けるんだから」
「さ、ダングレストに戻ってドンに会ったらバルボス探しの続きだ」
「リタ、ユーリの用事が終わったら私達はアレクセイに報告へ・・・。リタ?」
「・・・あ、何?」
「ユーリの用事を済ませましたらアレクセイに報告行き・・・どうかしましたか?」
「な、何でもない。ほら、戻るわよ!」
25.偽り
ダングレストに戻って来た私達はドンに会う為にユニオンに向かった
「よぉ、てめぇら、帰って来たか」
部屋に入るとドンが私達に気付きこちらを見ると、ドンの前にいた人物も振り返り私達を見た
「・・・ユーリ、それにリアとセイも」
「何だ、てめぇら知り合いか?」
レイヴンはそのまま歩いていきドンの隣に控えた
「はい、古い友人で・・・」
「そこの情報屋の兄妹ともか?」
「はい。ドンもユーリ達と面識があったのですね」
「魔物の襲撃騒ぎの件と、そこの兄妹とは情報関係でな」
「そう言う繋がりだったんだ」
「で? 用件は何だ?」
「いや・・・」
フレンはちらりとこちらの様子を伺っていた
あまり聞かれたくない事なのだろう
「オレ等は紅の絆傭兵団のバルボスって奴の話を聞きに来たんだよ。魔刻ドロボウの一件、裏にいるのは奴みたいなんでな」
「成る程、やはりそっちもバルボス絡みか」
「・・・って事は、お前も?」
フレンは頷くとドンに向き合う
「ユニオンと紅の絆傭兵団の盟約破棄のお願いに参りました。バルボス以下、かのギルドは各地で魔導器を悪用し、社会を混乱させています。ご助力頂けるなら、共に紅の絆傭兵団の打倒を果たしたいと思っております」
「・・・成る程、バルボスか。確かに最近の奴の行動は少しばかり目に余るな。ギルドとして、けじめはつけにゃあならねえ」
「貴方の力視力のお陰で、昨今、帝国とギルドの武力闘争は収まっています。ですが、バルボスを野放しにすれば両者の関係に再び亀裂が生じるかもしれません」
「そいつは面白くねえな」
「バルボスは、今止めるべきです」
「協力ってからには俺等と帝国の立場は対等だよな?」
「はい」
「ふんっ、そう言う事なら帝国との共同戦線も悪いもんじゃあねえ」
「では・・・」
「ああ、此処は手を結んで事を運んだ方が得策だ。おいっ、ベリウスにも連絡しておけ。いざとなったらノードポリカにも協力してもらうってな」
フレンはその言葉を聴いてほっと一安心したようで、先程よりも表情は柔らかかった
帝国の使いで来たとはいえ、相手は敵の総大将のようなものだ
「何か大事になってきたね・・・」
「こちらにヨーデル殿下より書状を預かって参りました」
カロルの言葉に小さく頷いているとフレンが一歩前に出てドンに渡し、ドンはその手紙を読みレイヴンに渡した
「ほぉ、時期皇帝候補の密書か。 ・・・・読んで聞かせてやれ」
レイヴンは手紙に目を通すと、その内容を読み始める
「『ドン・ホワイトホースの首を差し出せば、バルボスの件に関しユニオンの責任は不問とす』」
「何ですって・・・!?」
「なっ!?」「!?」
「うわはっはっは! これは笑える話しだ」
レイヴンは持っていた手紙をフレンに渡すとフレンはその手紙を読み握りしめた
「・・・何だ、これは・・・」
フレンは信じられないといった様子で書状の内容を読み返した
自身が伝えられていた内容とは全く違う中身の書状を
本当にショックを受け手紙を持っている手が震えていた
「どうやら、騎士殿と殿下のお考えは天と地ほど違うようだな」
「これは何かの間違いです! ヨーデル殿下がそのような事を」
「おい、お客人を特別室にご案内しろ!」
「ドン・ホワイトホース。聞いて下さい! これは何者かの罠です!」
フレンは何とか誤解を解こうと必死に講義するものの、ドンの命令に逆らう訳もなくドンの傍に控えていた男二人に腕を掴んで何処かに連れて行ってしまった
「フレン・・・!」
「エステル!」
フレンの元へ駆け出そうとしていたエステルを止めるとエステルは私とユーリを見た
「早まるなって。下手に動けば、余計フレンを危険にさらす事になるぜ」
「・・・・・」
ドンは立ち上がると、その場にいた全員に向かって声を張り上げる
「帝国との全面戦争だ! 総力を挙げて、帝都に攻め上る! 客人は見せしめに奴等の目の前で八つ裂きだ! 二度と舐めた口聞かせるな!!」
そう言ってドンは歩き出し、その後ろにレイヴンと天を射る矢のメンバーが続いて行く
「た、大変な事になっちゃった!」
「お陰であたし等の用件、忘れられちゃったわよ」
「ドンも話し所じゃねえな」
「わたし、帝都に戻って本当の事を確かめます!」
「早まるなって言ったろ。ちょっと様子を見ようぜ」
「わ・・・解りました」
「でもこのままじゃマズいぜ」
「全面戦争って事にもなりかねないね」
「それもだけど、フレンの身が一番危ないわ」
「・・・フレンどうなっちゃうの?」
カロルは心配そうな顔をして私を見るとエステルも同じく私を見た
「少なくとも無事、とは言えない」
「宣戦布告な手紙持って来たからな」
「・・・・」
「ヨーデルがあのような書状をフレンに預けたなんてわたしには信じられません。きっと、何かの間違いです」
「あたしらもヨーデル殿下には会ってるしね。確かにそういう性格には見えなかったけど」
「でも、現にドンの首を差し出せって、書状に書かれてたんだよ?」
「となると、ヨーデルとフレンの行動を邪魔したい連中の仕業ってとこだな」
「一体誰が・・・?」
「さあな・・・」
「けど、こっちにこんな手紙が来てるって事はもしかしたら帝国の方にも似たような手紙が行ってる可能性もあると思うわ」
「あり得なくはないわね」
「・・・考えてても仕方ねえ。とりあえず外出るぞ」
私達はそこで言葉を切り、ユニオンを後にした
*
広場まで戻って来るとユーリがユニオンに財布と落としたと言ってユニオンに戻って行った
「・・・ありゃフレンの様子見に行ったな」
「だね。で、ボク等はどうする?」
「とりあえず、状況確認じゃない」
「だな。後は各自やりたい事やれば良い」
「リアはユーリの後追い駆けるんでしょ?」
「うん。また無茶してるだろうし」
「俺はドンんとこ行って様子見てくるわ」
「ボクはエステル達の所にいた方が良いよね」
「あいつ等も無茶するからな。頼んだぞ」
「りょーかい」
「二人共~、何してるの~!」
いつまで経っても来ない私達にカロルが声を掛け私達の所に戻って来た
「どうかしたんです?」
「悪ぃけど、先に宿に向かってくれ」
「は? 何よ、いきなり」
「これから仕事なのよ」
「仕事って、こんな時に?」
「こんな時だからこそだよ」
「あんま長く話し込んでる時間はないから、俺達はもう行くな」
「うん、じゃあみんなまた後で」
「え? ちょ、ちょっと!」
私達はそう言い残し、エステル達の言葉を遮り各々の目的の為に散らばった
*
街の状況確認をした後、私は直ぐにユニオンに向かった
今頃はユーリとフレンが話しをしているだろうと思い、
「リア!」
「フレン、見張りがいないからってあんまり大きな声出さない方が良いよ」
「・・・どうして此処に?」
「ユーリと一緒で様子を見に来たの」
「そうか・・・」
「・・・フレン」
「?」
フレンは扉から出て来て私の横を通り過ぎようとしたが私の声に反応し振り返った
「書状、取り戻しに行くんでしょ?」
「!」
その言葉を聞いてフレンは驚いた顔をした
ユニオンに来る前に情報を集めた時、魔物騒ぎの時に騎士団があの赤眼達に襲われた所を見たと言う人がいた
多分、書状がすり替えられたのはその時だろう
そして見張りがいない所を見ると、ユーリや私がフレンの元に来る事をドンは予想してたのだろう
「ユーリ、フレンの代わりに中にいるんでしょ?」
「・・・ああ。もし僕が戻って来なかったら代わりに死んでくれっと伝えてある」
「・・・そっか。でも・・・」
私はそこで一旦言葉を切りフレンに向き合った
「私はフレンがユーリを見捨てるなんて思ってない。フレンは本物の書状を取り戻して来るって信じてる」
私はニッコリとしてフレンを見るとフレンはまた驚いた顔をしたが直ぐに苦笑して私を見た
「・・・リアには敵わないな」
「本当の事言っただけよ」
「・・・ホント、敵わないな」
「? フレン、何か言った?」
「いや。それより、案内任せても良いかい?」
「うん、じゃあ着いて来て」
そうして私とフレンはユニオンを出て街の外を目指した
「ユーリ!」
フレンを街の外まで送りユニオンまで戻って来ると、丁度ユーリがユニオンから出て来た所だった
「よ、フレンの案内と情報収集お疲れさん」
「・・・ドンから聞いたの?」
「ああ、リアとセイとアスラが情報収集、エステルが怪我人の手当で駆けずり回ってるって」
「そっか。 ・・・それにしても」
私はドン達に目を向けるとユーリもつられてドン達を見た
「あのじじい、バカ誘き出す為にマジで戦争するつもりか?」
(リア!)
すると突然テレパスでアスラの声が聞こえた
「アスラ? どうしたの?」
(紅の絆傭兵団の居場所見つけたよ!)
「ホント! それでバルボスは?」
(いるよ、おまけにラゴウも)
「好都合じゃない」
(うん、今そっちにエステルとカロルが向かってる所。セイにも連絡は行ってるから合流したら来て!)
「解ったわ」
「アスラから連絡か?」
「うん、紅の絆傭兵団の居場所見つけたって」
「流石。ドンの狙い通りだな・・・それで何が好都合なんだ?」
「それは着いてからのお楽しみで良いんじゃないか?」
突然第三者の声が聞こえ私とユーリは振り返ると兄さんがこちらにやって来ていた
「エステルとカロルが待ってる、行こうぜ」
続く
あとがき
段々架橋に入って来た感じですね
後何話かで、水道魔導器編終わるしね(先に言っちゃったよ(笑))
そして今回はタイトルに行くまで長かった!
あそこがキリが良かったからあそこにタイトルを入れてみた
場面転換で使うのもありか・・・とか思っちゃいました
さ、次回は気合い入れて書きます!
では!
下書き:2008.12.04
完成:2009.05.08