ケーブ・モック大森林にエアルの調査に来た私達は大森林に用があったレイヴンと会い、一緒に奥地まで向かう事になった




24．深い森




「それにしても此処マジで大森林っつーよりジャングルだな」

「進むに連れて険しくなってきてますしね」

「同じ景色で飽きそうだな」

「森林浴にはもってこいの場所じゃない」

「こんな湿気が多い所で森林浴はちょっとヤだな」

「全くよ。さっさと調査済ませて出たいわね」

「調査？」

「ええ。此処のエアルの・・・」

「うわぁあああぁあぁあっ・・・・！ あっち行け！ 触るな！ 近付くな！」

カロルの悲痛な叫び声が聞こえ、私達は慌てて後ろを振り返ると飛んで来たカブトムシのような魔物をカロルがやたらめったらに剣を振り回して追い払っている所だった

別に魔物はこっちを攻撃しようと思っている訳ではないらしく、そのままぶーんと羽音を立てて飛び去ってしまったのだが、カロルは目を瞑っていたのでそれが見えずいつまでも剣を振り回している

「カロル、カロル、大丈夫ですよ、もうあっち行っちゃいましたから」

「・・・へ？ は、ははは、なーんだ・・・さ、先を急ご」

エステルに言われ、カロルはようやく魔物が去った事に気付くと何事もなかったかのように歩き出そうとしてはいたのだが、どうも動きがぎこちない

「・・・いつものカロル先生と少し様子が違うな」

「何が？ いつものダメガキっぷりじゃない」

「ちょっと違うんだよな。いつものあの反応なら腰抜かすか、逃げてるぜ」

「ああ・・・そう言えば、そうですね」

やはりみんなカロルのぎこちなさや行動を疑問に思っていた

あの反応から見て虫嫌いだと言う事が一目で解る

「カロル虫にが「うはぁっ！ 虫だ、虫の大群だぁっ！」

「！」

「うわぁあっ、来るな、来るな・・・！！」

カロルに声を掛けようとしていると突然レイヴンが大きな声を上げ、その声に慌ててカロルが再び剣を振り回し始めた

もうそれは必死に

そしてそれを見かねたリタがレイヴンに、しゅーっと何かを吹きかけ、直にスプレーを受けたレイヴンは目にきたらしく、慌てて目を擦っていた

「虫の大群追い払う為に、薬かけてやったんでしょ」

「へ、嘘・・・」

レイヴンの嘘を真に受けた純粋なカロルはきょとんと目を丸めていた

「カロル・・・虫、ダメなんですね・・・」

「そ、そんなことないって・・・」

「何取り繕う必要あんのよ、今更。これ、持ってなさいよ。アスピオ製劇虫水溶液。人には向けないように」

リタはそう言ってレイヴンに向けて噴射したスプレーを手渡した

「俺様、人扱いされてないのね・・・とほほ。 ・・・ん？」

レイヴンはがっくりと肩を落とした後、何故かじっと私を見ていた

それに釣られてかエステル達も私に視線を向ける

「？」

「・・・そろそろ離してやったらどうだ？」

「え？」

みんなの視線を疑問に持っていると、兄さんが溜息を吐きながらユーリの手を指指した

私は無意識のうちにユーリの服の袖を掴んでいた

しかもかなり強く・・・

「！ ご、ごめん、ユーリ」

私は慌てて手を離し少しユーリから離れた

「そういやリアも虫苦手だったな」

「そうなんです？」

「カロル程じゃないけど、大群はちょっと・・・」

「ちょっと意外ね」

「役得ね、青年」

エステルとリタそう話しているとレイヴンがユーリにぐっと親指を立てエステルはニコニコとしていた

「それにしても、カロルのあの驚きよう、ちょっとないわね」

「誰にだって、怖いもののひとつやふたつあるでしょ！？」

「あたしにはそんなものない」

「ウソついちゃイヤよ、天才魔導士少女。おっさんだってコワイものあんだから」

「なんだ、おっさんのコワイものって」

「おっさんは美女がこわい！」

「何それ！？」

「騙された、とかか？」

「あー良くあるパターンか」

「ちょっ！ 納得しないでくれる！？ そうじゃなくて」

「で？ リタの怖いものはなんなんだ？」

兄さんは何事もなかったように話を逸らすとレイヴンはまたガクリと肩を落とした

「リタ、正直になった方が良いぞ。いざという時、守ってやれるだろ？」

「だーれが、あんたなんかに。自分の身は自分で守るっての」

「こういうのに限って、結構コワイもんがあんだよな」

「ぐっ・・・つーん、だ」

そう言ってリタはそっぽを向いてしまった

「ユーリとセイは怖いものないんです？」

「怖いものか・・・」

「一応フレンだな。キレた時のあいつは怖ぇぞ。怒鳴らないし手も上げねえけど、無言で圧力かけてくるからな」

「・・・だな」

ユーリの言葉に兄さんが深々と頷いた

確かにノール港でフレンが私とユーリを呼び止めた時は、エステル達がいたからいつものように怒れなくて真顔だったけど、それが逆に怖かったのを思い出し私も苦笑したι

「ねえ、あれ見て！！」

すると突然カロルが大きな声を出して森の最深部を指さした

そこからエアルが異常な程に出ていた

「これ、ヘリオードの街で見たのと同じ現象ね。あの時よりエアルが弱いけど間違いないわ・・・」

エアルの暴走かと思っていると突然後ろからドスンと音が聞こえ振り返ると巨大な蠍のような魔物がいた

「あの魔物もダングレストを襲ったのと様子が似てます！」

「来やがったぞ！」

私達は一斉に武器を構え、ユーリとラピードが先に攻撃を仕掛けた

ユーリとラピードの攻撃が当たり、私と兄さんも続こうとしていると魔物が素早く動き尾を振りかざし反撃をした

「っと！！」

ユーリは上手く受け身を取り地面に着地した

「あの魔物、意外とスピードあるな」

「下手に近付いたらあの尻尾で反撃されちゃうよ」

「エアルの影響で更に攻撃力が上がってるしね」

「なら、おっさんに任せなさい」

レイヴンはそう言って弓を構え魔物の足に狙いを定め矢を放った

「お見事！」

「今のうちに行くぜ！」

「ああ」「「うん」」「了解」「ワン」

レイヴンが放った矢が当たり相手に隙が出来、一斉に攻撃を仕掛けた


「木も、魔物も、絶対あのエアルの所為だ！」

「ま、また来た！」

無事に襲って来た魔物を倒したと思っていると、同じ魔物が数匹現れ私達の周りを取り囲みユーリとレイヴンが背中合わせになる

「ああ、此処で死んじまうのか。さよなら、世界中の俺のファン」

「世界一の軽薄男、此処に眠るって墓に彫っといてやるからな」

「そんな事言わずに一緒に生き残ろうぜ、とか言えないの・・・！？」

魔物が寄って来ていると、突然銀髪の男性が私達の前に現れ持っていた剣を翳すと、円陣が開き眩い光が放たれた

光が消えると、エアルの暴走が治まり魔物も消えていた

「・・・誰？」

「「デューク・・・」」

私とレイヴンの声が重なり、ユーリ達は私達を一瞥し直ぐにデュークに視線を戻した

だが、デュークは相変わらず何も言わずそのまま立ち去ろうとしたが急にリタがデュークを呼び止めた

「その剣は何っ！？ 見せて！」

リタはデュークが持っている剣をじっと見つめた

「今、一体何をしたの？ エアルを斬るって言うか・・・。ううん、そんな事無理だけど」

「知ってどうする？」

「そりゃ勿論・・・いや・・・それがあれば、魔導器の暴走を止められるかと思って・・・。前にも魔導器の暴走を見たの。エアルが暴れて、どうする事も出来なくて・・・」

「それはひずみ、当然の現象だ」

「ひず・・・み・・・？」

「あ、あの、危ない所を有り難う御座いました」

エステルはデュークの前に行き深くお辞儀をしてお礼を言った

「エアルクレーネには近付くな」

「え・・・？」

「エアルクレーネって何？ 此処の事？」

「世界に点在するエアルの源泉。それがエアルクレーネ」

「エアルの・・・源泉・・・」

「あんた、一体・・・こんな場所だ。散歩道って事もないよな？」

「・・・・・」

「ま、お陰で助かったけど。ありがとな」

「有り難う」

ユーリと私の言葉を聞くとデュークはそのまま立ち去って行った

「・・・まさか、あの力が『リゾマータの公式』」

「「・・・・・」」

兄さんとアスラはリタの言葉になのか、それとも先程立ち去ったデュークと先程の剣の事なのか、何かを気にした顔をしていた

「・・・此処だけ調べても良く分からないわ。他のも見てみないと」

「他のか・・・。さっきの人、世界中にこういうのがあるって言ってたね」

「言ってたねぇ」「ああ」「うん」

「それを探し出してもっと検証してみないと確かな事は何も分かんない」

「・・・じゃあ、もう此処で調べる事はないんです？」

「んじゃ、ダングレストに戻ってドンに会おうぜ」



続く



あとがき


ふおぁ～～、やっと書き終わった

あ、どうも遥嘩です

最初のふおぁ～～は、気にしないで下さい

何となく気持ちがそうなってただけなんで（笑）

えっと今回ですが、うん、まあ此処も書くのムズイですよねι

とりあえず最初の方はエアルクレーネまで向かう間話し欲しいなと思って書いてみました

だって、ケーブ・モックってむちゃくちゃ広い（長い）んだもん（やった人なら解る事）

じゃ、次は帰り際とダングレスト戻るまでかな？

では～




下書き：2008.12.04

完成：2009.05.08