水道魔導器奪還編
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「此処がダングレスト。ボクの故郷だよ」
街に入るとユーリ達は辺りを見渡した
ザーフィアスと同じくらいの広さがあり、まだ街の入り口だと言うのに沢山人がいて帝都とは違った活気に満ちている
「賑やかな所みたいだな」
「そりゃ帝都に次ぐ第二の都市で、ギルドが統治する街だからね」
ただザーフィアスと違うのはそこそこに武器を持ったり、重厚な鎧に身を包んだ人がいる事だ
物騒と言えば物騒ではある
「もっとじめじめした悪党の巣窟だと思ってたよ」
その言葉を聞いてカロルは少しムッとした
「それって、ギルドに対する偏見だよね」
まあ下町の水道魔導器を盗んだ黒幕が住んでる街・・・と聞いたら、そういう考えが頭に浮かぶのも解らないではない
「紅の絆傭兵団の印象が悪い所為ですよ、きっと」
「ボクまで悪党なのかと思ったよ」
「あんたが悪党なら、こいつはどうなるのよ」
「それもそうだ」
リタがユーリを指指して言うとユーリは軽口を言う様に納得した
「ユーリ、認めて良いのι」
「良いんじゃない、本人が認めてるんだし」
「さて、バルボスの事はどっから手つけようか」
「ユニオンに顔を出すのが早くて確実だと思うよ」
「ユニオンとはギルドを束ねる集合組織で、5大ギルドによって運営されている、ですよね?」
「うん、それとこの街の自治もユニオンが取り仕切ってるんだ」
「でも、良いわけ? バルボスの紅の絆傭兵団って5大ギルドの一つでしょ?」
「って事はバルボスに手出したら、ユニオンも敵に回るな」
「・・・それは、ドンに聞いてみないと何とも」
「そのドンってのが、ユニオンの親玉なんだな?」
「うん、5大ギルドの元首『天を射る矢 』を束ねるドン・ホワイトホースだよ」
「んじゃ、そのドンに会うか。カロル、案内頼む」
「ちょっとそんなに簡単に会うって・・・。ボクはあんまり・・・」
「お願いします」
カロルは俯いて悩んでいると兄さんが小さく溜息を吐いた
「ユニオンはこっちだ」
「セイ、知ってんのか?」
「ああ、この街にも情報売りに来てるからな」
「んじゃ、案内頼むわ」
「おう」
ユーリ達は兄さんの後に続いたがカロルは動こうとしなかった
「カロル、行こう?」
「う、うん・・・」
私は複雑な表情をするカロルに優しい声音で声を掛けると渋々カロルは歩き出した
22.急襲
街の中央とも言える広場に来るとカロルがきょろきょろと辺りを見回し、不思議に思ってカロルを見ていると後から来たリタがカロルに声をかけた
「あんた、さっきから何やっての?」
「え、いや・・・」
「ん? そこにいるのはカロルじゃねえか」
すると、近くにいた何処かのギルドの男二人が私達の方を見て近付いて来た
「どの面下げてこの街に戻って来たんだ?」
「な、何だよ、いきなり」
「おや、ナンの姿が見えないな? 遂に見放されちゃったか。あははははっ!」
「ち、違う! いつもしつこいから、ボクがあいつから逃げてるの!」
(これがあるから、ダングレスト行きを最初嫌がったんだな)
(意地張っちゃうのがこの年頃と言うか男と言うか・・・)
ユーリと兄さんは少し顔を見合わせ何か考えていたがそれは私達にも直ぐに解った
「あんた等がこいつ拾った新しいギルドの人? 相手は選んだ方が良いぜ」
「自慢出来るのは、所属したギルドの数だけだし。あ、それ自慢にならねえか」
男達は私達を見ると嫌な笑みを浮かべて完全に虐めっ子の顔になっていた
その言葉と態度に私達は苛立ちを感じ今にもエステルかリタが文句を言いそうな雰囲気だったが先に口を開いたのはユーリだった
「カロルの友達か? 相手は選んだ方が良いぜ?」
「な、何だと!」
「貴方方の品位を疑います!」
エステルはビシっと指を指し言い切り私達も言葉を続ける
「大の大人が子供を苛めてるって言うのも・・・」
「どうかと思うけどね」
「世の中荒んでるな・・・」
「ふざけやがって!」
「あんた達、言うわね。ま、でも同感~」
「言わせておけば・・・」
カーン カーン カーン
「何の音?」
「警鐘?」
男が私達の言葉に腹を立て一歩前に出ようとすると突然警鐘が鳴り響き、何処からか物凄い震動と音が聞こえだした
「やべ・・・また、来やがった・・・」
「行くぞ!」
男達はその警鐘を聞くと直ぐさま走って行った
「警鐘・・・魔物が来たんだ」
「魔物って・・・まさかこの震動、その魔物の足音・・・」
「だとすると、こりゃ大群だな」
「ま、でも心配いらないよ。最近やけに多いけど、此処の結界は丈夫で破られた事もないしね。外の魔物だって、ギルドが撃退・・・」
するといきなりバチッと言う音が聞こえ、結界魔導器の結界が消えた
「・・・って、ええっ!!」
「結界が、消えた・・・?」
「一体どうなってんの! 魔物が来てるのに!」
「ったく、行く場所、行く場所、厄介ごと起こりやがって・・・」
「何か憑いてるのよ、あんた」
「・・・かもな」
「・・・憑いてたらとっくに祓ってるけどね」
「・・・うん」
「・・・あいつの場合、別なんじゃねえの?」
「何か言った?」
「ううん、それより魔物を止めに行かないと!」
「そうですね、行きましょう!」
私と兄さんとアスラが小声で話しているとそれにリタが気付いたが内容までは聞こえていなかった様なので私は上手く誤魔化し、魔物を止めに入り口まで行った
「な、何これ!?」
入り口に着くとそこには異常な程の魔物で溢れかえっていた
綺麗に敷き詰められていた石畳は剥がれ、街灯は捻じ曲げられ砂埃が立ち上っていた
「すげーな、こんだけの魔物どっから湧いてくんだ」
「ちょっと異常だよ・・・!」
「ちょっと所じゃねえぞ、これ!」
「魔物の様子も普段と違いませんか?」
「来るよ!」
「みんな、散らばって!!」
リタの言う通り魔物が私達目掛けて突進して来ているのが見え、私達は一旦避け辺りに散らばり近くにいる魔物を倒し始めた
「気ぃ抜くな! 直ぐ次の来るぞ!」
「こんなに沢山の魔物・・・どうして・・・!」
「あ~、ウザイ! 次から次へと・・・もぉっ!!」
魔術で一掃するものの、魔物はどんどん増える一方で私達だけではとても間に合いそうにない
このまま戦闘が続けば私達も体力を削られ続ける
そうなる前に何とかしないと!
そう思って一歩前に踏み出そうとすると、何かが横を通り過ぎ目の前にいた魔物をあっという間に倒してしまった
「! あれは!」
現れたのは老齢ながらも屈強な身体を持つ男性だった
白髪に厳つい顔には赤いドーランで何か模様が描いてある
ぱっと見、一般人ではない事は明らかだった
「さあ、クソ野郎ども、いくらでも来い。この老いぼれが胸を貸してやる!」
その人物の言葉に応じ、男達は後に続いて行った
「とんでもねえじじいだな。何者だ?」
ユーリも突然現れた老人に驚きを隠せないようだった
それもそのはず、その人物は老体とは思えぬほどの動きで次々と魔物をなぎ払って行っていたからだ
「あれがドンよ」
「あのじじいがね」
ドンが現れた事によって、他のギルドの人達の士気も上がり次々に魔物を倒して行きケガをしていた人達は、エステルに治癒してもらい再び魔物に立ち向かって行く
「やっぱりドンは凄いね」
「うん」
そう感心しながらその様子を見ていると、後ろの方から鎧の音が聞こえた
応援が来たのかと思い振り返ると騎士団がこちらに向かって走って来ていた
そしてその中に見覚えのある顔があった
「フレン!!」
フレンに気が付いたエステルが彼の名を呼ぶが、フレンはそのままドンの方へと向かって行った
「魔物の討伐に協力させて頂く!」
「騎士の坊主はそこで止まれぇ! 騎士に助けられたとあっては俺等の面子がたたねえんだ。すっこんでろ!」
「今は、それどころでは!」
「どいつもこいつも、てめえの意思で帝国抜け出してギルドやってんだ! 今更やべえからって帝国の力借りようなんて恥知らずこの街にはいやしねえよぉ!」
「しかし!」
「そいつがてめえで決めたルールだ。てめえで守らねえで誰が守る」
フレンは言い返そうとするがドンの言葉に押し黙ってしまう
流石ドン、正しく彼こそギルドの鑑だ
「何があっても筋は曲げねえってか・・・。成る程、こいつが本物のギルドか」
それはユーリにも伝わったようで、じっとドンを見ていた
「ちょっとそこの! 案内しなさい」
突然リタの声が聞こえ私は声の聞こえた方を見た
「そこのって、ボクっ!? え、ど、何処へ?」
「結界魔導器を直しに行くんです。このままでは魔物の群れに飲み込まれます!」
成る程、確かにこのまま戦い続けるより結界魔導器を直しに行った方が魔物が街に入って来なくなり事態は収まる
そう理解するとカロルは結界魔導器が設置されている所へエステルとリタを案内を始める
「ユーリ、リア、行くぞ!!」
「今行く! ユーリ、行こう・・・ユーリ?」
私はユーリに声を掛けたがユーリから返事が返って来ない事を不思議に思いユーリを見ると、ユーリはずっとドンを見ていた
ユーリが此処まで他人に惚れ込むのも珍しい
そう思ってユーリを見ているとアスラがユーリの前まで行った
「ユーリ、行くよ」
「ん? ああ」
ようやくこちらに目を戻し、今の状況を把握すると一緒に兄さん達の後を追い駆けた
*
結界魔導器の設置場所に着くと見張りだった男性が倒れていた
エステルが慌てて治癒しようと駆け寄ったものの、彼はもう既に事切れていた
リタはそのまま魔導器の所へと走って行き魔導器を調べだした
「これなら、なんとかなるかも」
「リタ、危ない! 後ろ!!」
直ぐ近くにあの赤目の男達が潜んでいた
それに直ぐさま気付き、私と兄さんとユーリとラピードは掛け出し赤目の攻撃を受け止め弾き返した
「リタ、こっちは私達に任せて早く結界魔導器を!」
「解ったわ!」
「エステルとアスラはリタの防御を頼む!」
「はい!」「了解!」
「カロル、ラピード、そっちは頼んだぞ!」
「うん!」「ワン!」
それぞれに指示が渡ると皆一斉に動き出し、私とユーリと兄さんは結界魔導器のある所から下へと飛び降りた
流石にあの場所じゃ戦い辛い為、相手を引きつけて広い場所まで移動した
「結界魔導器の不調はこいつ等の仕業かよ」
「どう考えてもそうだろうな」
「タイミングが良すぎるもんね」
だが、彼等の目的が全く解らない
何の為に結界魔導器を消したのか
そしてあの魔物達を街に入れて混乱させたのも彼等なのか
解らない事だらけだが、今は結界を復活させるのが第一優先
赤眼の数ももうそんなに残っていなくユーリは赤眼達に一撃を浴びせた
「ぐあっ・・・!!」
「これで片付いたな」
「こっちも大変な騒ぎだね」
そう声が聞こえ振り返るとフレンが数名の部下を連れてこちらに向かって来ていた
「なんだ、ドンの説得はもう諦めたのか?」
「今はやれる事をやるだけだ。それで、結界魔導器の修復は?」
「天才魔導士様次第ってやつだ」
そう言ってユーリはリタを見て私達もリタを見た
私達が戦っている最中もずっと魔導器を操作していたが、此処まで時間が掛かると言う事は他に何か細工がされているだろう
それを確認すると私達はまた向き合い、ユーリが口を開いた
「魔物の襲撃と結界の消失、同時だったのはただの偶然じゃないよな?」
「・・・おそらくは」
「おまえが来たって事は、これも帝国のごたごたと関連ありって訳か」
「解らない。だから確かめに来た」
「・・・それが、あれで、これが、こう!!」
リタがそう言うと、空には先程まで消えていた結界が復活した
「流石リタ!」
リタの後ろでエステルが喜びの声を上げ、結界が治った事に私達もほっと息を吐いた
「よし、外の魔物を一掃する! 外ならギルドも文句を言うまい」
そう言ってフレンは部下を引き連れ掛け出して行った
「さてと、魔物の方はフレンに任せて、俺等はユニオンにバルボスの話しを聞きに行くか」
「そうだな」
「じゃあさっさと行くわよ。もうごたごたはうんざり」
リタはそう言うとさっさとユニオン本部に向かって走り始め、カロルも続いて走って行った
その様子を見ているとエステルがにこりと笑って私達を見た
「フレンの事、信頼してるんですね。やっぱり」
「他が信頼出来ないだけの話だろ。比較の問題ってやつだな」
ユーリの言葉に頷いているとエステルが首を傾げて私達を見た
「時々、ユーリ達の言う事は難しいです」
「そうかもね」
そんなエステルに私達は苦笑して、ユニオンに向かって歩き出した
ユニオンに行くと扉の近くにいた男性が私達に気付き声を掛けて来たので、ユーリがドンに会いたいと軽く話しをするとどうやらドンは街の外にいる魔物を一掃する為に仲間を引き連れ出ているらしい
手詰まりになった私達は先に次の目的地であるケーブ・モック大森林へと向かう事にした
「ケーブ・モック大森林とは、偶然ってあるもんだねぇ」
そしてその様子を一人の男が見ていた事にリア達は気付かなかった
続く
あとがき
お久しぶりです、スランプからだいぶ抜け出せた遥嘩です
やっとまともに小説が書けるようになったので続きを書きました!(今年初の夢です(笑))
下書きはずっとストックしてたので付け足しをしながらやっと完成です
まあ文才がないのでサイト様のように上手くはいかないので、そこはあしからずι
では簡単に本文の感想を
此処は結構好きな所なんですよね
本編でもリアちゃんが言ってましたけど、ユーリが他人に惚れ込むのはホントに珍しい所ですからね
ま、これが後の話しにも繋がってくる所ではあるんですけどね☆
とりあえずケーブ・モックに向かう所までで終わりにしました
ホントこの辺から書くの難しくなって来るんですよねι
一応ストック分はかなり先まで作ってるので後は修正と付け足しを兼ねてアップしていきたいと思っています
あ、そうそう、ヴェスペリア遂にPS3移植&映画化ですね!
おめでと~う!!
しかもPS3版はかなり追加ストーリー&イベント有りだし、新キャラ(パティ)出るし、そして何よりフレンがパーティー入るっぽいじゃん!?
PVのユーリとフレンの協力秘奥義がカッコ良かった!!
映画の方も少し絵がアップされてたけど、騎士団時代の話しらしいですね
てか、ラピードがめっちゃ可愛いんだけど!!
もう両方楽しみです!!
では、次回も頑張って書きます
それでは!!
下書き:2008.12.03
完成:2009.04.30
街に入るとユーリ達は辺りを見渡した
ザーフィアスと同じくらいの広さがあり、まだ街の入り口だと言うのに沢山人がいて帝都とは違った活気に満ちている
「賑やかな所みたいだな」
「そりゃ帝都に次ぐ第二の都市で、ギルドが統治する街だからね」
ただザーフィアスと違うのはそこそこに武器を持ったり、重厚な鎧に身を包んだ人がいる事だ
物騒と言えば物騒ではある
「もっとじめじめした悪党の巣窟だと思ってたよ」
その言葉を聞いてカロルは少しムッとした
「それって、ギルドに対する偏見だよね」
まあ下町の水道魔導器を盗んだ黒幕が住んでる街・・・と聞いたら、そういう考えが頭に浮かぶのも解らないではない
「紅の絆傭兵団の印象が悪い所為ですよ、きっと」
「ボクまで悪党なのかと思ったよ」
「あんたが悪党なら、こいつはどうなるのよ」
「それもそうだ」
リタがユーリを指指して言うとユーリは軽口を言う様に納得した
「ユーリ、認めて良いのι」
「良いんじゃない、本人が認めてるんだし」
「さて、バルボスの事はどっから手つけようか」
「ユニオンに顔を出すのが早くて確実だと思うよ」
「ユニオンとはギルドを束ねる集合組織で、5大ギルドによって運営されている、ですよね?」
「うん、それとこの街の自治もユニオンが取り仕切ってるんだ」
「でも、良いわけ? バルボスの紅の絆傭兵団って5大ギルドの一つでしょ?」
「って事はバルボスに手出したら、ユニオンも敵に回るな」
「・・・それは、ドンに聞いてみないと何とも」
「そのドンってのが、ユニオンの親玉なんだな?」
「うん、5大ギルドの元首『
「んじゃ、そのドンに会うか。カロル、案内頼む」
「ちょっとそんなに簡単に会うって・・・。ボクはあんまり・・・」
「お願いします」
カロルは俯いて悩んでいると兄さんが小さく溜息を吐いた
「ユニオンはこっちだ」
「セイ、知ってんのか?」
「ああ、この街にも情報売りに来てるからな」
「んじゃ、案内頼むわ」
「おう」
ユーリ達は兄さんの後に続いたがカロルは動こうとしなかった
「カロル、行こう?」
「う、うん・・・」
私は複雑な表情をするカロルに優しい声音で声を掛けると渋々カロルは歩き出した
22.急襲
街の中央とも言える広場に来るとカロルがきょろきょろと辺りを見回し、不思議に思ってカロルを見ていると後から来たリタがカロルに声をかけた
「あんた、さっきから何やっての?」
「え、いや・・・」
「ん? そこにいるのはカロルじゃねえか」
すると、近くにいた何処かのギルドの男二人が私達の方を見て近付いて来た
「どの面下げてこの街に戻って来たんだ?」
「な、何だよ、いきなり」
「おや、ナンの姿が見えないな? 遂に見放されちゃったか。あははははっ!」
「ち、違う! いつもしつこいから、ボクがあいつから逃げてるの!」
(これがあるから、ダングレスト行きを最初嫌がったんだな)
(意地張っちゃうのがこの年頃と言うか男と言うか・・・)
ユーリと兄さんは少し顔を見合わせ何か考えていたがそれは私達にも直ぐに解った
「あんた等がこいつ拾った新しいギルドの人? 相手は選んだ方が良いぜ」
「自慢出来るのは、所属したギルドの数だけだし。あ、それ自慢にならねえか」
男達は私達を見ると嫌な笑みを浮かべて完全に虐めっ子の顔になっていた
その言葉と態度に私達は苛立ちを感じ今にもエステルかリタが文句を言いそうな雰囲気だったが先に口を開いたのはユーリだった
「カロルの友達か? 相手は選んだ方が良いぜ?」
「な、何だと!」
「貴方方の品位を疑います!」
エステルはビシっと指を指し言い切り私達も言葉を続ける
「大の大人が子供を苛めてるって言うのも・・・」
「どうかと思うけどね」
「世の中荒んでるな・・・」
「ふざけやがって!」
「あんた達、言うわね。ま、でも同感~」
「言わせておけば・・・」
カーン カーン カーン
「何の音?」
「警鐘?」
男が私達の言葉に腹を立て一歩前に出ようとすると突然警鐘が鳴り響き、何処からか物凄い震動と音が聞こえだした
「やべ・・・また、来やがった・・・」
「行くぞ!」
男達はその警鐘を聞くと直ぐさま走って行った
「警鐘・・・魔物が来たんだ」
「魔物って・・・まさかこの震動、その魔物の足音・・・」
「だとすると、こりゃ大群だな」
「ま、でも心配いらないよ。最近やけに多いけど、此処の結界は丈夫で破られた事もないしね。外の魔物だって、ギルドが撃退・・・」
するといきなりバチッと言う音が聞こえ、結界魔導器の結界が消えた
「・・・って、ええっ!!」
「結界が、消えた・・・?」
「一体どうなってんの! 魔物が来てるのに!」
「ったく、行く場所、行く場所、厄介ごと起こりやがって・・・」
「何か憑いてるのよ、あんた」
「・・・かもな」
「・・・憑いてたらとっくに祓ってるけどね」
「・・・うん」
「・・・あいつの場合、別なんじゃねえの?」
「何か言った?」
「ううん、それより魔物を止めに行かないと!」
「そうですね、行きましょう!」
私と兄さんとアスラが小声で話しているとそれにリタが気付いたが内容までは聞こえていなかった様なので私は上手く誤魔化し、魔物を止めに入り口まで行った
「な、何これ!?」
入り口に着くとそこには異常な程の魔物で溢れかえっていた
綺麗に敷き詰められていた石畳は剥がれ、街灯は捻じ曲げられ砂埃が立ち上っていた
「すげーな、こんだけの魔物どっから湧いてくんだ」
「ちょっと異常だよ・・・!」
「ちょっと所じゃねえぞ、これ!」
「魔物の様子も普段と違いませんか?」
「来るよ!」
「みんな、散らばって!!」
リタの言う通り魔物が私達目掛けて突進して来ているのが見え、私達は一旦避け辺りに散らばり近くにいる魔物を倒し始めた
「気ぃ抜くな! 直ぐ次の来るぞ!」
「こんなに沢山の魔物・・・どうして・・・!」
「あ~、ウザイ! 次から次へと・・・もぉっ!!」
魔術で一掃するものの、魔物はどんどん増える一方で私達だけではとても間に合いそうにない
このまま戦闘が続けば私達も体力を削られ続ける
そうなる前に何とかしないと!
そう思って一歩前に踏み出そうとすると、何かが横を通り過ぎ目の前にいた魔物をあっという間に倒してしまった
「! あれは!」
現れたのは老齢ながらも屈強な身体を持つ男性だった
白髪に厳つい顔には赤いドーランで何か模様が描いてある
ぱっと見、一般人ではない事は明らかだった
「さあ、クソ野郎ども、いくらでも来い。この老いぼれが胸を貸してやる!」
その人物の言葉に応じ、男達は後に続いて行った
「とんでもねえじじいだな。何者だ?」
ユーリも突然現れた老人に驚きを隠せないようだった
それもそのはず、その人物は老体とは思えぬほどの動きで次々と魔物をなぎ払って行っていたからだ
「あれがドンよ」
「あのじじいがね」
ドンが現れた事によって、他のギルドの人達の士気も上がり次々に魔物を倒して行きケガをしていた人達は、エステルに治癒してもらい再び魔物に立ち向かって行く
「やっぱりドンは凄いね」
「うん」
そう感心しながらその様子を見ていると、後ろの方から鎧の音が聞こえた
応援が来たのかと思い振り返ると騎士団がこちらに向かって走って来ていた
そしてその中に見覚えのある顔があった
「フレン!!」
フレンに気が付いたエステルが彼の名を呼ぶが、フレンはそのままドンの方へと向かって行った
「魔物の討伐に協力させて頂く!」
「騎士の坊主はそこで止まれぇ! 騎士に助けられたとあっては俺等の面子がたたねえんだ。すっこんでろ!」
「今は、それどころでは!」
「どいつもこいつも、てめえの意思で帝国抜け出してギルドやってんだ! 今更やべえからって帝国の力借りようなんて恥知らずこの街にはいやしねえよぉ!」
「しかし!」
「そいつがてめえで決めたルールだ。てめえで守らねえで誰が守る」
フレンは言い返そうとするがドンの言葉に押し黙ってしまう
流石ドン、正しく彼こそギルドの鑑だ
「何があっても筋は曲げねえってか・・・。成る程、こいつが本物のギルドか」
それはユーリにも伝わったようで、じっとドンを見ていた
「ちょっとそこの! 案内しなさい」
突然リタの声が聞こえ私は声の聞こえた方を見た
「そこのって、ボクっ!? え、ど、何処へ?」
「結界魔導器を直しに行くんです。このままでは魔物の群れに飲み込まれます!」
成る程、確かにこのまま戦い続けるより結界魔導器を直しに行った方が魔物が街に入って来なくなり事態は収まる
そう理解するとカロルは結界魔導器が設置されている所へエステルとリタを案内を始める
「ユーリ、リア、行くぞ!!」
「今行く! ユーリ、行こう・・・ユーリ?」
私はユーリに声を掛けたがユーリから返事が返って来ない事を不思議に思いユーリを見ると、ユーリはずっとドンを見ていた
ユーリが此処まで他人に惚れ込むのも珍しい
そう思ってユーリを見ているとアスラがユーリの前まで行った
「ユーリ、行くよ」
「ん? ああ」
ようやくこちらに目を戻し、今の状況を把握すると一緒に兄さん達の後を追い駆けた
*
結界魔導器の設置場所に着くと見張りだった男性が倒れていた
エステルが慌てて治癒しようと駆け寄ったものの、彼はもう既に事切れていた
リタはそのまま魔導器の所へと走って行き魔導器を調べだした
「これなら、なんとかなるかも」
「リタ、危ない! 後ろ!!」
直ぐ近くにあの赤目の男達が潜んでいた
それに直ぐさま気付き、私と兄さんとユーリとラピードは掛け出し赤目の攻撃を受け止め弾き返した
「リタ、こっちは私達に任せて早く結界魔導器を!」
「解ったわ!」
「エステルとアスラはリタの防御を頼む!」
「はい!」「了解!」
「カロル、ラピード、そっちは頼んだぞ!」
「うん!」「ワン!」
それぞれに指示が渡ると皆一斉に動き出し、私とユーリと兄さんは結界魔導器のある所から下へと飛び降りた
流石にあの場所じゃ戦い辛い為、相手を引きつけて広い場所まで移動した
「結界魔導器の不調はこいつ等の仕業かよ」
「どう考えてもそうだろうな」
「タイミングが良すぎるもんね」
だが、彼等の目的が全く解らない
何の為に結界魔導器を消したのか
そしてあの魔物達を街に入れて混乱させたのも彼等なのか
解らない事だらけだが、今は結界を復活させるのが第一優先
赤眼の数ももうそんなに残っていなくユーリは赤眼達に一撃を浴びせた
「ぐあっ・・・!!」
「これで片付いたな」
「こっちも大変な騒ぎだね」
そう声が聞こえ振り返るとフレンが数名の部下を連れてこちらに向かって来ていた
「なんだ、ドンの説得はもう諦めたのか?」
「今はやれる事をやるだけだ。それで、結界魔導器の修復は?」
「天才魔導士様次第ってやつだ」
そう言ってユーリはリタを見て私達もリタを見た
私達が戦っている最中もずっと魔導器を操作していたが、此処まで時間が掛かると言う事は他に何か細工がされているだろう
それを確認すると私達はまた向き合い、ユーリが口を開いた
「魔物の襲撃と結界の消失、同時だったのはただの偶然じゃないよな?」
「・・・おそらくは」
「おまえが来たって事は、これも帝国のごたごたと関連ありって訳か」
「解らない。だから確かめに来た」
「・・・それが、あれで、これが、こう!!」
リタがそう言うと、空には先程まで消えていた結界が復活した
「流石リタ!」
リタの後ろでエステルが喜びの声を上げ、結界が治った事に私達もほっと息を吐いた
「よし、外の魔物を一掃する! 外ならギルドも文句を言うまい」
そう言ってフレンは部下を引き連れ掛け出して行った
「さてと、魔物の方はフレンに任せて、俺等はユニオンにバルボスの話しを聞きに行くか」
「そうだな」
「じゃあさっさと行くわよ。もうごたごたはうんざり」
リタはそう言うとさっさとユニオン本部に向かって走り始め、カロルも続いて走って行った
その様子を見ているとエステルがにこりと笑って私達を見た
「フレンの事、信頼してるんですね。やっぱり」
「他が信頼出来ないだけの話だろ。比較の問題ってやつだな」
ユーリの言葉に頷いているとエステルが首を傾げて私達を見た
「時々、ユーリ達の言う事は難しいです」
「そうかもね」
そんなエステルに私達は苦笑して、ユニオンに向かって歩き出した
ユニオンに行くと扉の近くにいた男性が私達に気付き声を掛けて来たので、ユーリがドンに会いたいと軽く話しをするとどうやらドンは街の外にいる魔物を一掃する為に仲間を引き連れ出ているらしい
手詰まりになった私達は先に次の目的地であるケーブ・モック大森林へと向かう事にした
「ケーブ・モック大森林とは、偶然ってあるもんだねぇ」
そしてその様子を一人の男が見ていた事にリア達は気付かなかった
続く
あとがき
お久しぶりです、スランプからだいぶ抜け出せた遥嘩です
やっとまともに小説が書けるようになったので続きを書きました!(今年初の夢です(笑))
下書きはずっとストックしてたので付け足しをしながらやっと完成です
まあ文才がないのでサイト様のように上手くはいかないので、そこはあしからずι
では簡単に本文の感想を
此処は結構好きな所なんですよね
本編でもリアちゃんが言ってましたけど、ユーリが他人に惚れ込むのはホントに珍しい所ですからね
ま、これが後の話しにも繋がってくる所ではあるんですけどね☆
とりあえずケーブ・モックに向かう所までで終わりにしました
ホントこの辺から書くの難しくなって来るんですよねι
一応ストック分はかなり先まで作ってるので後は修正と付け足しを兼ねてアップしていきたいと思っています
あ、そうそう、ヴェスペリア遂にPS3移植&映画化ですね!
おめでと~う!!
しかもPS3版はかなり追加ストーリー&イベント有りだし、新キャラ(パティ)出るし、そして何よりフレンがパーティー入るっぽいじゃん!?
PVのユーリとフレンの協力秘奥義がカッコ良かった!!
映画の方も少し絵がアップされてたけど、騎士団時代の話しらしいですね
てか、ラピードがめっちゃ可愛いんだけど!!
もう両方楽しみです!!
では、次回も頑張って書きます
それでは!!
下書き:2008.12.03
完成:2009.04.30