水道魔導器奪還編
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「ちょっとあんた、あのレイヴンってのをあたしの前に連れて来なさいよ!」
リタは思いっきりユーリを睨みおまけに指まで指して叫んだ
「はあ? 何だよ急に」
「急にじゃないわよ! この状況を作ったのはあのレイヴンとか言う男の所為でしょうが!!」
リタの言う通り今私達は予想外の場所にいた
14.接触
レイヴンの後を追って私達は屋敷の裏側まで走って行った
しかしそこで手違いが起こり、レイヴンは上の階へ行ってしまい、私達は下の地下室らしき所へ来てしまった
直ぐに上の階へ上がろうとリタがエレベーターの装置を見たのだがどうやら一方通行だったらしく、仕方なくこの地下から上の階へ行く事になった
そして現在に至る
「だって、あんた知り合いなんでしょ?」
「だから、別に知り合いじゃねぇって」
「どうだか。だいたい会ったのが牢屋ってのが胡散臭すぎるのよ!」
「・・・その点は否定出来ないな」
私の背後ではユーリとリタの攻防戦が繰り広げられていてエステルとカロルは苦笑いでその様子を見ていた
私はというと兄さんと地下の事を話していた
「此処が、例の場所?」
「ああ。間違いないだろうな・・・」
周りを見渡せば、そこには魔物がいて辺りには人の骨のようなモノが沢山転がっていて異臭が漂っていた
「ぅ・・・」
「エステル、大丈夫?」
「は、はい・・・」
そしてユーリ達もそれに目を止め、カロルが顔を強張らせた
「こ、こんな所に魔物・・・?」
皆、目の前の光景に嫌気がさしていると何処からか男の子のすすり泣く声が聞こえた
「・・・子供の声?」
私達はその声の方に体を向け、エステルが声の方に向って走って行く
「えっぐ・・えっぐ・・・・。パパ・・ママ・・・」
「だいじょうぶだよ。何があったのか、話せる?」
「・・・こわいおじさんに連れてこられて、パパとママがぜいきんをはらえないからって・・・」
「ねえもしかしてこの子、さっきの人達の・・・」
「でしょうね。ボク、お名前は?」
「・・・ポリー」
「ポリーね。もう大丈夫よ」
私はそう言ってポリーの頭を優しく撫でて微笑んだ
「・・・ねえ、此処にある骨ってもしかして」
「ああ、此処にある骨はみんなも予想出来てる通り人間の骨だ」
「しかも税金を払えなかった人の、ね」
「っ!」
「どういう事?」
「さっきポリーも言ってたでしょ。役人に此処に連れてこられたって」
「じゃあ、やっぱり此処の魔物達が・・・?」
「ああ。払えなかったら最後は魔物の餌として、な・・・」
その言葉を聞いて皆それぞれ複雑な顔をした
「成る程な。良い趣味してやがるぜ・・・」
「・・・なんて酷い事」
「・・・ヒドイ」
「ホントにやりたい放題なのね・・・」
「パパ・・ママ・・・帰りたいよ・・・」
私達が話しているとポリーがそう言って頬に涙を垂らした
「大丈夫よ。私達がお父さんとお母さんの所に連れて行ってあげるからね」
「・・・ホント?」
「うん。だから安心して」
私はポリーに目線が合うように座り頭を優しく撫でてやりながら微笑んだ
私の言葉を聞いてポリーは安心して大きく頷いた
そして私達はポリーと一緒にこの地下室を進む事にした
*
暫く進むと、私達は上へと続く階段のある部屋に到着した
しかしそこには鉄格子があり私達はその前で立ち止まる
すると丁度良いタイミングで鉄格子の向こうに一人の男が私達の前に現れた
「はて、これはどうした事か。おいしい餌が増えていますね」
「・・・ラゴウ」
「・・・コイツが」
「ああ」
私とアスラと兄さんが小声で話しているとユーリが一歩前に出てラゴウを睨んだ
「あんたがラゴウさん? 随分と胸糞悪い趣味をお持ちじゃねぇか」
「趣味? ああ、地下室の事ですか。これは私のような高雅な者にしか理解出来ない楽しみなのですよ。評議会の小心な老人共ときたら退屈な駆け引きばかりで、私を楽しませてくれませんからね」
「これが、高雅な楽しみ?」
「こんなヒドイ事が?」
「その退屈を和らげる為に関係のない人達を使って紛らわすってワケか」
「ホント、随分と良い趣味してるわ」
「それが出来るのは私のような選ばれた人間の特権というものでしょう」
「まさか、ただそれだけの理由でこんな事を・・・?」
「それを楽しんで高みの見物って訳ね・・・」
「・・・マジで虫唾が走るな」
ラゴウの言葉を聞いて私達は更に嫌気がさした
「さて・・・リブガロを連れ帰って来るとしますか。これだけ獲物が増えたなら、面白い見世物になります。ま、それまで生きてれば、ですが」
「リブガロなら探しても無駄だぜ。オレ等がやっちまったから」
「・・・なんですって?」
「聞こえなかったか? オレ等が倒したって言ったんだよ」
「くっ・・。なんという事を・・・」
「飼ってるなら解るように鈴でも付けときゃ良かったんだ」
「まぁ、良いでしょう。金さえ積めば直ぐに手に入ります」
ラゴウのその発言にユーリの後ろにいたエステルが前に乗り出す
「ラゴウ! それでも貴方は帝国に仕える人間ですか!!」
「! 貴方様は・・・まさか・・・!?」
エステルの姿を見たラゴウは目を見開いて顔を強張らせた
その隙にユーリと兄さんは剣を抜いて目の前の鉄格子を破り、その衝撃でラゴウは後ろに倒れた
「き、貴様等! な、何をするのですか! 誰か! この者達を捕らえなさい!」
叫ぶとラゴウは上の階に続く階段を駆け上がって行き、私達もそれを追って一気に階段を駆け上がった
階段を上がって行くとそこには巨大な魔導器があった
どうやらこれが天候を操っているという魔導器らしい
リタは魔導器を見つけると急に走り出して魔導器の近くまで走って行き調べ始め、ぶつぶつ言いながら魔導器のシステムをいじる
それを下で見ながら私とアスラと兄さんはその魔導器の全体を見渡していた
「・・・おい、これって」
「・・・うん。この感じ、間違いないよ」
「これは・・・」
「・・・どうかしたのか?」
私達が小さく呟いていると近くにいたユーリが私達の様子に気付いて声を掛けた
「ううん。何でもない・・・」
私はそこで言葉を切り有事 を始めたカロルに目を向けた
カロルは近くにあった柱にハンマーをぶつけ、部屋を壊し始め魔導器を調べていたリタが痺れを切らし部屋全体に魔術を放った
「あ~っ!! もうっ!!」
「あ~、リタがキレた」
リタが憂さ晴らしに魔術を発動していると騒ぎに気が付いたラゴウが数人の傭兵を引き連れて部屋に入って来た
「こいつ等、5大ギルドの1つ、紅の絆傭兵団だよ」
カロルは傭兵を見て直ぐに紅の絆傭兵団だと解った
流石はギルドの人間だと思っていると傭兵達は武器を構えてユーリ達を襲って来た
ユーリとエステルとカロルと兄さんは応戦し、私はポリーを連れて傭兵達から逃げていると、フレンが騒ぎを聞きつけこの部屋に入って来た
「執政官。何事かは存じ上げませんが、事態の対処に協力いたします」
「・・ちっ。仕事熱心な騎士ですね」
ガシャン!!
ラゴウはフレンに背を向けて言い放つと、突然この部屋の窓が割れ、そこから竜使いが現れた
「なっ!?」
「あれは!?」
「うわぁっ・・! あ、あれって・・竜使い?」
各々別々の反応を示しながら竜使いを見上げた
その間にフレンとソディアさんとウィチル君は竜に攻撃を加える
しかし竜は三人の攻撃を交わして魔導器の傍に近付くと持っている槍でそれを壊す
「ちょっと!! 何してくれてんのよ!? 魔導器を壊すなんて!」
それを見たリタが声を荒げて魔導器を壊して逃げ出そうとしている竜使いを狙い落とそうと魔術を発動したが竜使いはそれを綺麗に避け、竜使いは乗っている魔物に火を吐かせてそのまま窓から出て行ってしまった
「待て! こら!!」
リタはそれを見ると直ぐに外へと駆け出して行き、私達もその後に続いた
外に出るとやはり竜使いはもういなかったが竜使いがあの魔導器を壊してくれたお陰で雨は上がり、天気は良くなっていた
ほっと一安心しているとラゴウが船に乗っている姿が見え、私達はポリーと別れそのまま船を追い駆け船に飛び乗った
無事に船の甲板に着くとリタは近くにあった箱の中を見た
「これ、魔導器の魔刻じゃない!」
その言葉に私達は箱の中を見ると、そこにはかなりの数の魔刻だった
「何でこんなに沢山魔刻だけ?」
「知らないわよ。研究所にだってこんなに数揃わないってのに!」
「まさか、これって魔刻ドロボウと関係が?」
「かもな」
「けど、黒幕は隻眼の大男でしょ? ラゴウとは一致しないよ」
「だとすると、他にも黒幕がいるって事だな。此処に下町の魔刻、混ざってねえか?」
「残念だけど、それほど大型の魔刻はないわ」
すると、ラピードが物陰に向かって唸りだした
「・・・敵さんの登場みだいだよ」
周りを見るとぞろぞろと傭兵が集まって来た
「紅の絆傭兵団の登場ってか」
その言葉を合図に紅の絆傭兵団は斬り掛かって来たが、ユーリと兄さんが一瞬で隙を突き男達を気絶させた
「さて・・・」
ユーリとカロルと兄さんは目の前の扉に近付きユーリは左、兄さんは右に行き、カロルが鍵を開けていた
「どきやがれぇっ!!」
「うわっ!!」
すると突然扉の向こうから怒鳴り声が聞こえカロルが飛ばされ私達の前に倒れた
何事かと思い前を見ると大柄の男が私達を見下したような目で見ていた
「はんっ、ラゴウの腰抜けはこんなガキから逃げてんのか」
「隻眼の大男・・・あんたか。人使って魔刻盗ませてるのは」
「そうかもしれねぇな」
「紅の絆傭兵団の首領、バルボス、で間違いなさそうだな」
ユーリと兄さんは剣を抜き男に突き付た
「ほお。そこまで知ってるとはな」
バルボスは大剣を抜きユーリと兄さんに斬り掛かったが、二人はそれを軽々と避け私達の前へ降り立った
「良い動きだ。その肝っ玉も良い。ワシの腕も疼くねえ・・・。うちのギルドにも欲しい所だ」
「そりゃ光栄だね」
「だが、野心の強い目はいけねえ。ギルドの調和を崩しやがる。惜しいな・・・」
「バルボス、さっさとこいつ等を始末しなさい!」
避難用の船がある所でラゴウがバルボスに声を掛けた
「金の分は働いた。それに直ぐ騎士が来る。追い付かれては面倒だ。小僧ども! 次に会った時は容赦せん!」
バルボスはそう言って避難用の船に乗り込みラゴウが何か言っていたが諦め新たな傭兵を呼び、船の縄を切ってそのまま逃げて行った
それを横目で見て目の前に視線を戻すと柱の影から一人の男が出て来た
「誰を殺らせてくれるんだ・・・?」
男は嫌な目付きと雰囲気で私達を見ていた
「貴方はお城で!」
「どうも縁があるみたいだな」
エステルとユーリが驚いていると突然船が揺れだした
どうやら逃げたラゴウとバルボスがこの船を攻撃しているらしい
「刃がうずくぅ・・・殺らせろ・・・殺らせろぉっ!」
男はそう言ってユーリに斬り掛かってきたがユーリは素早く避けるが、男の攻撃が船の駆動魔導器に当たってしまい駆動魔導器が爆発した
「うぉっと・・・お手柔らかに頼むぜ」
男は振り返り、ユーリの言葉など聞こえていないようで遠慮無く攻撃して来た
「っと! どうやら聞こえてないみだいだぜ」
「こういう奴には何言っても無駄だよ」
「こうなったら全力でやるしかないんじゃない?」
「その方が早く片付きそうよ」
「だな。じゃあ遠慮無しで行くぜ!」
「はい!」「うん!」「ワンっ!」
それぞれ返事をするといつものポジションに入るが、男はスピード型らしくことごとく避けられ詠唱の邪魔をされてしまう
このメンバーの中でスピード型と言えば私とラピード、スピード型に近いのは兄さんとアスラだ
これをうまく活かせばこちらが有利だ
その考えは兄さんとアスラにも伝わり二人は頷きアスラは元の姿に戻りエステルとリタの詠唱を邪魔されないように守り、兄さんと私はユーリとカロルとラピードの援護に向かった
「そろそろ終わらせようか」
「うん!」
その連携が見事に取れ私達が押すようになり私と兄さんは合図を交わすと男を挟むようにし剣を構えた
「「冥王降魔陣」」
「ぐぅあぁぁ!!」
「ユーリ!」
「任せろ!」
見事な連携が取れ最後にユーリの一撃が綺麗に決まり男はそのまま倒れ込み片膝を付いた
「ぐぅあああっ・・・・・!! 痛ぇ」
「勝負あったな」
「・・・オ、オレが退いた・・・ふ、ふふふ、アハハハハっ!!」
男は立ち上がり不適に笑った
「貴様、強いな! 強い! 強い! 覚えた覚えたぞ、ユーリ、ユーリ!! お前を殺すぞユーリ!! 切り刻んでやる、幾重にも! 動くな、じっとしてろよ・・・・!!」
男はユーリを見て高らかに不適に笑い、そのまま船の揺れで海へと落ちて行った
その様子を見ていると徐々に視界が低くなっていくのが解った
「え? なに? 沈むの・・・!?」
「まああれだけ派手に暴れたらな」
「感心してる場合じゃないでしょう!」
「ひとまず逃げないと」
「海へ逃げろ・・・!」
「・・・げほっ、げほっ・・・。誰かいるんですか?」
そう話していると突然扉の奥から男の人の声が聞こえ、ユーリはその声が聞こえた扉の中へ入って行った
「ユーリ!」
「エステリーゼ! ダメ!」
「ユーリなら大丈夫だから」
「あいつなら心配ない」
「でも・・・でも・・・!」
「ごちゃごちゃ言ってないで、飛び込むの!」
「みんな、早く!」
「ワン!」
心配そうな顔をしてユーリを追い駆けようとしていたエステルを何とか引き止め私達は海へと飛び込み暫く船が沈むのをじっと見ていた
「みんな、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
「こっちも」
「わたしは・・・でも、ユーリが・・・」
「・・・・・」
少しの沈黙が流れるがそれはアスラの言葉によって消された
「・・・来るよ」
「・・・え?」
その途端、海の中からユーリの姿が見えた
「ユーリ・・・! 良かった・・・!」
「ひー、しょっぺーな。だいぶ飲んじまった」
エステルは泣きそうな顔をしていたが直ぐにユーリが連れている人物に目が止まった
「その子、一体誰なの?」
「ヨーデル・・・!」
「「「!」」」
エステルの言葉に私達が驚いているとカロルが船を発見し救助を求める為に大きな声を出していた
船が近付いて来ると甲板から聞き慣れた声が聞こえた
「どうやら無事みたいだな」
「あの声は、フレン!」
一同は助かったと安心しているとフレンがユーリが抱えている青年に目が止まり、一瞬驚いた顔をし、ソディアさんや部下の人達に声を掛け直ぐに私達を引き上げてくれた
続く
あとがき
やぁ~~~と終わったぁ~~~~!!!
そして久々に長い!!(笑)
ホントはもっとザギ戦を長く書いてリアちゃんとセイ兄の兄妹力を見せようと思ってたんだけど気力と能力と文才がなかったのでこれだけで・・・ι(オイι)
次はトリム港でのお話です
ゲーム進行で書いてますので夢なのに夢っぽくないって言うツッコミはなしでお願いします(-_-;)
ではまた
2008.11.18
リタは思いっきりユーリを睨みおまけに指まで指して叫んだ
「はあ? 何だよ急に」
「急にじゃないわよ! この状況を作ったのはあのレイヴンとか言う男の所為でしょうが!!」
リタの言う通り今私達は予想外の場所にいた
14.接触
レイヴンの後を追って私達は屋敷の裏側まで走って行った
しかしそこで手違いが起こり、レイヴンは上の階へ行ってしまい、私達は下の地下室らしき所へ来てしまった
直ぐに上の階へ上がろうとリタがエレベーターの装置を見たのだがどうやら一方通行だったらしく、仕方なくこの地下から上の階へ行く事になった
そして現在に至る
「だって、あんた知り合いなんでしょ?」
「だから、別に知り合いじゃねぇって」
「どうだか。だいたい会ったのが牢屋ってのが胡散臭すぎるのよ!」
「・・・その点は否定出来ないな」
私の背後ではユーリとリタの攻防戦が繰り広げられていてエステルとカロルは苦笑いでその様子を見ていた
私はというと兄さんと地下の事を話していた
「此処が、例の場所?」
「ああ。間違いないだろうな・・・」
周りを見渡せば、そこには魔物がいて辺りには人の骨のようなモノが沢山転がっていて異臭が漂っていた
「ぅ・・・」
「エステル、大丈夫?」
「は、はい・・・」
そしてユーリ達もそれに目を止め、カロルが顔を強張らせた
「こ、こんな所に魔物・・・?」
皆、目の前の光景に嫌気がさしていると何処からか男の子のすすり泣く声が聞こえた
「・・・子供の声?」
私達はその声の方に体を向け、エステルが声の方に向って走って行く
「えっぐ・・えっぐ・・・・。パパ・・ママ・・・」
「だいじょうぶだよ。何があったのか、話せる?」
「・・・こわいおじさんに連れてこられて、パパとママがぜいきんをはらえないからって・・・」
「ねえもしかしてこの子、さっきの人達の・・・」
「でしょうね。ボク、お名前は?」
「・・・ポリー」
「ポリーね。もう大丈夫よ」
私はそう言ってポリーの頭を優しく撫でて微笑んだ
「・・・ねえ、此処にある骨ってもしかして」
「ああ、此処にある骨はみんなも予想出来てる通り人間の骨だ」
「しかも税金を払えなかった人の、ね」
「っ!」
「どういう事?」
「さっきポリーも言ってたでしょ。役人に此処に連れてこられたって」
「じゃあ、やっぱり此処の魔物達が・・・?」
「ああ。払えなかったら最後は魔物の餌として、な・・・」
その言葉を聞いて皆それぞれ複雑な顔をした
「成る程な。良い趣味してやがるぜ・・・」
「・・・なんて酷い事」
「・・・ヒドイ」
「ホントにやりたい放題なのね・・・」
「パパ・・ママ・・・帰りたいよ・・・」
私達が話しているとポリーがそう言って頬に涙を垂らした
「大丈夫よ。私達がお父さんとお母さんの所に連れて行ってあげるからね」
「・・・ホント?」
「うん。だから安心して」
私はポリーに目線が合うように座り頭を優しく撫でてやりながら微笑んだ
私の言葉を聞いてポリーは安心して大きく頷いた
そして私達はポリーと一緒にこの地下室を進む事にした
*
暫く進むと、私達は上へと続く階段のある部屋に到着した
しかしそこには鉄格子があり私達はその前で立ち止まる
すると丁度良いタイミングで鉄格子の向こうに一人の男が私達の前に現れた
「はて、これはどうした事か。おいしい餌が増えていますね」
「・・・ラゴウ」
「・・・コイツが」
「ああ」
私とアスラと兄さんが小声で話しているとユーリが一歩前に出てラゴウを睨んだ
「あんたがラゴウさん? 随分と胸糞悪い趣味をお持ちじゃねぇか」
「趣味? ああ、地下室の事ですか。これは私のような高雅な者にしか理解出来ない楽しみなのですよ。評議会の小心な老人共ときたら退屈な駆け引きばかりで、私を楽しませてくれませんからね」
「これが、高雅な楽しみ?」
「こんなヒドイ事が?」
「その退屈を和らげる為に関係のない人達を使って紛らわすってワケか」
「ホント、随分と良い趣味してるわ」
「それが出来るのは私のような選ばれた人間の特権というものでしょう」
「まさか、ただそれだけの理由でこんな事を・・・?」
「それを楽しんで高みの見物って訳ね・・・」
「・・・マジで虫唾が走るな」
ラゴウの言葉を聞いて私達は更に嫌気がさした
「さて・・・リブガロを連れ帰って来るとしますか。これだけ獲物が増えたなら、面白い見世物になります。ま、それまで生きてれば、ですが」
「リブガロなら探しても無駄だぜ。オレ等がやっちまったから」
「・・・なんですって?」
「聞こえなかったか? オレ等が倒したって言ったんだよ」
「くっ・・。なんという事を・・・」
「飼ってるなら解るように鈴でも付けときゃ良かったんだ」
「まぁ、良いでしょう。金さえ積めば直ぐに手に入ります」
ラゴウのその発言にユーリの後ろにいたエステルが前に乗り出す
「ラゴウ! それでも貴方は帝国に仕える人間ですか!!」
「! 貴方様は・・・まさか・・・!?」
エステルの姿を見たラゴウは目を見開いて顔を強張らせた
その隙にユーリと兄さんは剣を抜いて目の前の鉄格子を破り、その衝撃でラゴウは後ろに倒れた
「き、貴様等! な、何をするのですか! 誰か! この者達を捕らえなさい!」
叫ぶとラゴウは上の階に続く階段を駆け上がって行き、私達もそれを追って一気に階段を駆け上がった
階段を上がって行くとそこには巨大な魔導器があった
どうやらこれが天候を操っているという魔導器らしい
リタは魔導器を見つけると急に走り出して魔導器の近くまで走って行き調べ始め、ぶつぶつ言いながら魔導器のシステムをいじる
それを下で見ながら私とアスラと兄さんはその魔導器の全体を見渡していた
「・・・おい、これって」
「・・・うん。この感じ、間違いないよ」
「これは・・・」
「・・・どうかしたのか?」
私達が小さく呟いていると近くにいたユーリが私達の様子に気付いて声を掛けた
「ううん。何でもない・・・」
私はそこで言葉を切り
カロルは近くにあった柱にハンマーをぶつけ、部屋を壊し始め魔導器を調べていたリタが痺れを切らし部屋全体に魔術を放った
「あ~っ!! もうっ!!」
「あ~、リタがキレた」
リタが憂さ晴らしに魔術を発動していると騒ぎに気が付いたラゴウが数人の傭兵を引き連れて部屋に入って来た
「こいつ等、5大ギルドの1つ、紅の絆傭兵団だよ」
カロルは傭兵を見て直ぐに紅の絆傭兵団だと解った
流石はギルドの人間だと思っていると傭兵達は武器を構えてユーリ達を襲って来た
ユーリとエステルとカロルと兄さんは応戦し、私はポリーを連れて傭兵達から逃げていると、フレンが騒ぎを聞きつけこの部屋に入って来た
「執政官。何事かは存じ上げませんが、事態の対処に協力いたします」
「・・ちっ。仕事熱心な騎士ですね」
ガシャン!!
ラゴウはフレンに背を向けて言い放つと、突然この部屋の窓が割れ、そこから竜使いが現れた
「なっ!?」
「あれは!?」
「うわぁっ・・! あ、あれって・・竜使い?」
各々別々の反応を示しながら竜使いを見上げた
その間にフレンとソディアさんとウィチル君は竜に攻撃を加える
しかし竜は三人の攻撃を交わして魔導器の傍に近付くと持っている槍でそれを壊す
「ちょっと!! 何してくれてんのよ!? 魔導器を壊すなんて!」
それを見たリタが声を荒げて魔導器を壊して逃げ出そうとしている竜使いを狙い落とそうと魔術を発動したが竜使いはそれを綺麗に避け、竜使いは乗っている魔物に火を吐かせてそのまま窓から出て行ってしまった
「待て! こら!!」
リタはそれを見ると直ぐに外へと駆け出して行き、私達もその後に続いた
外に出るとやはり竜使いはもういなかったが竜使いがあの魔導器を壊してくれたお陰で雨は上がり、天気は良くなっていた
ほっと一安心しているとラゴウが船に乗っている姿が見え、私達はポリーと別れそのまま船を追い駆け船に飛び乗った
無事に船の甲板に着くとリタは近くにあった箱の中を見た
「これ、魔導器の魔刻じゃない!」
その言葉に私達は箱の中を見ると、そこにはかなりの数の魔刻だった
「何でこんなに沢山魔刻だけ?」
「知らないわよ。研究所にだってこんなに数揃わないってのに!」
「まさか、これって魔刻ドロボウと関係が?」
「かもな」
「けど、黒幕は隻眼の大男でしょ? ラゴウとは一致しないよ」
「だとすると、他にも黒幕がいるって事だな。此処に下町の魔刻、混ざってねえか?」
「残念だけど、それほど大型の魔刻はないわ」
すると、ラピードが物陰に向かって唸りだした
「・・・敵さんの登場みだいだよ」
周りを見るとぞろぞろと傭兵が集まって来た
「紅の絆傭兵団の登場ってか」
その言葉を合図に紅の絆傭兵団は斬り掛かって来たが、ユーリと兄さんが一瞬で隙を突き男達を気絶させた
「さて・・・」
ユーリとカロルと兄さんは目の前の扉に近付きユーリは左、兄さんは右に行き、カロルが鍵を開けていた
「どきやがれぇっ!!」
「うわっ!!」
すると突然扉の向こうから怒鳴り声が聞こえカロルが飛ばされ私達の前に倒れた
何事かと思い前を見ると大柄の男が私達を見下したような目で見ていた
「はんっ、ラゴウの腰抜けはこんなガキから逃げてんのか」
「隻眼の大男・・・あんたか。人使って魔刻盗ませてるのは」
「そうかもしれねぇな」
「紅の絆傭兵団の首領、バルボス、で間違いなさそうだな」
ユーリと兄さんは剣を抜き男に突き付た
「ほお。そこまで知ってるとはな」
バルボスは大剣を抜きユーリと兄さんに斬り掛かったが、二人はそれを軽々と避け私達の前へ降り立った
「良い動きだ。その肝っ玉も良い。ワシの腕も疼くねえ・・・。うちのギルドにも欲しい所だ」
「そりゃ光栄だね」
「だが、野心の強い目はいけねえ。ギルドの調和を崩しやがる。惜しいな・・・」
「バルボス、さっさとこいつ等を始末しなさい!」
避難用の船がある所でラゴウがバルボスに声を掛けた
「金の分は働いた。それに直ぐ騎士が来る。追い付かれては面倒だ。小僧ども! 次に会った時は容赦せん!」
バルボスはそう言って避難用の船に乗り込みラゴウが何か言っていたが諦め新たな傭兵を呼び、船の縄を切ってそのまま逃げて行った
それを横目で見て目の前に視線を戻すと柱の影から一人の男が出て来た
「誰を殺らせてくれるんだ・・・?」
男は嫌な目付きと雰囲気で私達を見ていた
「貴方はお城で!」
「どうも縁があるみたいだな」
エステルとユーリが驚いていると突然船が揺れだした
どうやら逃げたラゴウとバルボスがこの船を攻撃しているらしい
「刃がうずくぅ・・・殺らせろ・・・殺らせろぉっ!」
男はそう言ってユーリに斬り掛かってきたがユーリは素早く避けるが、男の攻撃が船の駆動魔導器に当たってしまい駆動魔導器が爆発した
「うぉっと・・・お手柔らかに頼むぜ」
男は振り返り、ユーリの言葉など聞こえていないようで遠慮無く攻撃して来た
「っと! どうやら聞こえてないみだいだぜ」
「こういう奴には何言っても無駄だよ」
「こうなったら全力でやるしかないんじゃない?」
「その方が早く片付きそうよ」
「だな。じゃあ遠慮無しで行くぜ!」
「はい!」「うん!」「ワンっ!」
それぞれ返事をするといつものポジションに入るが、男はスピード型らしくことごとく避けられ詠唱の邪魔をされてしまう
このメンバーの中でスピード型と言えば私とラピード、スピード型に近いのは兄さんとアスラだ
これをうまく活かせばこちらが有利だ
その考えは兄さんとアスラにも伝わり二人は頷きアスラは元の姿に戻りエステルとリタの詠唱を邪魔されないように守り、兄さんと私はユーリとカロルとラピードの援護に向かった
「そろそろ終わらせようか」
「うん!」
その連携が見事に取れ私達が押すようになり私と兄さんは合図を交わすと男を挟むようにし剣を構えた
「「冥王降魔陣」」
「ぐぅあぁぁ!!」
「ユーリ!」
「任せろ!」
見事な連携が取れ最後にユーリの一撃が綺麗に決まり男はそのまま倒れ込み片膝を付いた
「ぐぅあああっ・・・・・!! 痛ぇ」
「勝負あったな」
「・・・オ、オレが退いた・・・ふ、ふふふ、アハハハハっ!!」
男は立ち上がり不適に笑った
「貴様、強いな! 強い! 強い! 覚えた覚えたぞ、ユーリ、ユーリ!! お前を殺すぞユーリ!! 切り刻んでやる、幾重にも! 動くな、じっとしてろよ・・・・!!」
男はユーリを見て高らかに不適に笑い、そのまま船の揺れで海へと落ちて行った
その様子を見ていると徐々に視界が低くなっていくのが解った
「え? なに? 沈むの・・・!?」
「まああれだけ派手に暴れたらな」
「感心してる場合じゃないでしょう!」
「ひとまず逃げないと」
「海へ逃げろ・・・!」
「・・・げほっ、げほっ・・・。誰かいるんですか?」
そう話していると突然扉の奥から男の人の声が聞こえ、ユーリはその声が聞こえた扉の中へ入って行った
「ユーリ!」
「エステリーゼ! ダメ!」
「ユーリなら大丈夫だから」
「あいつなら心配ない」
「でも・・・でも・・・!」
「ごちゃごちゃ言ってないで、飛び込むの!」
「みんな、早く!」
「ワン!」
心配そうな顔をしてユーリを追い駆けようとしていたエステルを何とか引き止め私達は海へと飛び込み暫く船が沈むのをじっと見ていた
「みんな、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
「こっちも」
「わたしは・・・でも、ユーリが・・・」
「・・・・・」
少しの沈黙が流れるがそれはアスラの言葉によって消された
「・・・来るよ」
「・・・え?」
その途端、海の中からユーリの姿が見えた
「ユーリ・・・! 良かった・・・!」
「ひー、しょっぺーな。だいぶ飲んじまった」
エステルは泣きそうな顔をしていたが直ぐにユーリが連れている人物に目が止まった
「その子、一体誰なの?」
「ヨーデル・・・!」
「「「!」」」
エステルの言葉に私達が驚いているとカロルが船を発見し救助を求める為に大きな声を出していた
船が近付いて来ると甲板から聞き慣れた声が聞こえた
「どうやら無事みたいだな」
「あの声は、フレン!」
一同は助かったと安心しているとフレンがユーリが抱えている青年に目が止まり、一瞬驚いた顔をし、ソディアさんや部下の人達に声を掛け直ぐに私達を引き上げてくれた
続く
あとがき
やぁ~~~と終わったぁ~~~~!!!
そして久々に長い!!(笑)
ホントはもっとザギ戦を長く書いてリアちゃんとセイ兄の兄妹力を見せようと思ってたんだけど気力と能力と文才がなかったのでこれだけで・・・ι(オイι)
次はトリム港でのお話です
ゲーム進行で書いてますので夢なのに夢っぽくないって言うツッコミはなしでお願いします(-_-;)
ではまた
2008.11.18