水道魔導器奪還編
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「で、執政官の屋敷の調査はどう?」
ユーリとフレンと話しを終え二人が部屋を出て気配がなくなった所でさっきまでのほのぼのとした空気とは違う空気が流れ出した
13.真相と潜入
「ああ、順調だ。けど、ちょっと厄介だな」
「厄介?」
「お前達もこの街に来た時に見ただろ、あの光景・・・」
あの光景とはあの夫婦の様な光景の事だろう
「うん・・・。噂では聞いてたけどあそこまで酷いとは思ってなかった」
「あれはまだ良い方だぜ」
「・・・え?」
「その言い草じゃ何か掴んだんだね」
アスラの言葉に兄さんは少し間を置き小さく息を吐いて話し出した
「・・・執政官に雇われてる役人だが、あいつ等ギルドの人間だ」
「「!」」
兄さんの言葉を聞いて私とアスラは驚いた
帝国とギルドは基本的に対立している・・・
確かに今の帝国ではギルド無しでは生活が成り立たない部分もあり、その存在をある程度は黙認しているとはいえ、何故このような事にギルドが・・・?
「そう言えば、魔刻泥棒を捕まえた時に『バルボス』って言ってたよね」
「『顔の右に傷のある、隻眼でバカに体格の良い大男』・・・って」
「・・・やっぱりそうか」
私とアスラの言葉を聞いて兄さんは何か確信したようだった
「そのギルドってのがあの傭兵ギルドの『紅の絆傭兵団 』なんだよ」
「「紅の絆傭兵団!?」」
紅の絆傭兵団と聞いてやっと線が繋がった気がした
あの時は色々あって気付かなかったけどバルボスは紅の絆傭兵団の首領だ
そして傭兵を雇っている執政官
ただ雇うだけなら5大ギルドの紅の絆傭兵団じゃなくても良いはず
「・・・何か裏がありそうね」
「流石、リアは気付くのが早くて助かるね」
「もしかして『リブガロ』?」
「ああ。リブガロの話しは有名だからはしょるが、問題は此処からだ。飼ってるのはそれだけじゃねえんだ」
「他にも何か飼ってるの?」
「ああ・・・。税金を払えない人の子供や人を屋敷の地下に連れて来て税金を払えなかったら連れて来られた人は飼っている魔物の餌にしてるんだ」
「「!」」
「・・・マジで虫唾が走るぜ」
兄さんはそう言って拳に力を入れて顔を顰め、その言葉にアスラも頷いた
多分この話を聞いたらユーリもフレンも同じ事を思うだろう
特にユーリは守るべきモノの為なら必死で頑張るとても真っ直ぐな人、それで自分が傷つく事を厭わないから無茶をする
それが私達を不安にさせる
だからこういう仕事の話しは極力ユーリやフレンがいない所でしている
私達も二人に心配させない為に・・・
「ラゴウとバルボスが何で手を組んでるかはまだ調べてる所だ」
「屋敷の方には行ったの?」
「ああ。だが取りつく島もないって感じだな、あれは」
「じゃあフレン達が行っても無駄って事?」
部屋から立ち去る時にフレンが屋敷に行ってみると言っていた事を思い出す
「ああ。どうせ変な言い分や挑発されたりするのがオチだろ」
「献上品が無いと無理って事だね」
「だろうな。献上品のリブガロの角でもあれば取り次いでくれるかもしれないが・・・と、ユーリ達が戻って来たぞ」
窓の外を見ると何処かへ出掛けていたと思われるユーリ達の姿が見えた
「とりあえず話しはまた後でって事でお迎えと行くか」
「だね。フレン達も戻って来てるみたいだし」
「じゃあ私、タオル持ってくるね」
*
「ユーリ!」
ロビーでユーリ達を発見してユーリに声を掛けると、ユーリも私に気が付いたのか片手を挙げてこちらに歩いてくる
「お帰り。随分泥だらけだけど何処行ってたの?」
私はそう言ってユーリにタオルを渡すとサンキュと言って受け取り、兄さんはエステル達に渡していた
「リブガロの角を取りに行ってたんだ」
「リブガロの角を?」
「ああ。ま、もう手元にはねえけどな」
話しを聞くとリブガロの角を取って街に戻って来たらティグルさんがリブガロの角を狩りに行こうとしていたらしい
そしてその角をティグルさん達に渡して宿に戻って来たらしい
「・・・そっか」
私はその話を聞いてやっぱりユーリだなと思って微笑んだ
「なに微笑んでんだよ」
「ううん。何でもない」
「それより、そっちの話しは終わったのか?」
「うん。大体は」
「曖昧な返事だな」
「まあまだ問題だらけなんだけど」
兄さんと一緒にいたアスラがエステル達と一緒にやって来た
「わたし達これからフレンの所に行くんですけど、リアも行くんですよね?」
ユーリと話している時に兄さんがフレンの所に行くと言ったのだろう
「ええ。執政官と会えたのか気になってて」
「そっか。じゃあ行くか」
「うん」
私の返事を聞いてフレンのいる部屋に向かった
フレンの部屋に入るとソディアさんとウィチル君が何やらフレンと話し合っていた
「相変わらず辛気臭い顔してんな」
「色々考える事が多いんだ。君と違って」
「ふーん・・・」
「また無茶をして賞金額を上げて来たんじゃないだろうね?」
「・・・・。執政官のとこに行かなかったのか?」
ユーリと一緒に行っていなかった私とアスラと兄さんは何だ、今の間は・・・と思いつつ話しを聞ていた
「行った。魔導器研究所から調査執行書を取り寄せてね」
「それで中に入って調べたんだな」
「いや・・・。執政官にはあっさり拒否された」
「なんで!?」
フレンの言った事にカロルは驚いていたが私達はやっぱりね、と思っていた
「魔導器が本当にあると思うのなら正面から乗り込んでみたまえ、と安い挑発までくれましたよ」
「私達にその権限がないから馬鹿にしているんだ!」
「でも、そりゃそいつの言う通りなんじゃねぇの?」
「何だと!?」
ソディアさんは悔しそうに言うとユーリがさらりと答えた
「ユーリ、どっちの味方なのさ」
「敵味方の問題じゃねぇ。自信があんなら乗り込めよ」
「いや。これは罠だ」
「罠?」
「ラゴウは執政官の失態を噴出して評議会の権力強化を狙っている。今下手に踏み込んでも証拠は隠蔽され、しらを切られるだろう」
ユーリとフレン、二人の意見にどちらも賛成だ
だがラゴウの地位を考えると少し考えてしまう
フレンの言う通り、ラゴウも評議会の人間
騎士団も評議会も帝国を支える重要な組織
騎士団に所属しているフレンにとっては下手に動けないだろう
「とにかく、ただの執政官様って訳じゃないって事か。で、次の手考えてあんのか?」
「・・・・・・」
ユーリの言葉にフレンは黙ってしまう
「なんだよ。打つ手なしか?」
「・・・中で騒ぎでも起これば、騎士団の有事特権が優先され、突入出来るんですけどね」
中で騒ぎでも起きれば・・・か
その言葉を聞いてユーリは小さく笑みを浮かべた
「成る程。屋敷に泥棒でも入ってボヤ騒ぎでも起これば良いんだな」
「ユーリ、しつこいようだけど・・・」
「無茶するな。だろ?」
心配そうな顔をしてユーリを見るフレンにユーリはいつもの笑みを浮かべるが、フレンはまだ納得した顔をしていない
「大丈夫よ、フレン。ユーリが無茶しないように私達が見てるから」
「保護者が付いてるから安心しろ」
「君達にも言える事だ、リア、セイ。君達もユーリと同じように目を離すと直ぐ無茶をするからね」
「俺もかよι」
「人の事言えないな、リア、セイ」
「・・・・・」
「返す言葉なし、だね」
まさか言い返されるとは思っていなかったので私と兄さんは複雑な顔をした
*
フレンと話しを終えた後、私達はラゴウのいる屋敷へ向って歩き出した
「帝国がデカイ顔してるのは、この街も似たようなもんなんだな」
宿屋を出て屋敷に向って歩いている途中、ユーリがポツリと呟いた
直ぐ近くを歩いていた私、アスラ、兄さん、ラピードは揃ってユーリの方へと顔を向ける
「最初は下町の魔刻の事しか頭に無かったか?」
「ああ・・・」
「クゥーン・・・」
「ま、お前の性格を考えるとそうだろうな。けど、これだけ帝国がデカイ顔してるのは此処だけだぜ」
「そうなのか?」
「うん。特に此処イリキア大陸は帝都があるから余計に、ね」
「隣のトルビキア大陸みたいに大きなギルドの拠点がある訳でもないから、帝国の思いのままなんだよ」
「その例の1つがラゴウって訳だ」
「成る程な・・・」
そう話している内に屋敷に到着した
屋敷はこの街の中でも一際大きなもので、門前には傭兵がいて腰には剣を拵えている
私達は傭兵達に見つからないように屋敷から少し離れた所にある壁の影に隠れる
「何度見てもおっきな屋敷だね。評議会の役人ってそんなに偉いの?」
「偉いからこんな大きな屋敷に住んでるんじゃない」
「評議会は皇帝を政治面で補佐する機関であり、貴族の有力者により構成されている、です」
「言わば皇帝の代理人って訳だ」
「へえ、そうなんだ」
「って、何であんたまで居るのよ!」
リタは兄さんを見て傭兵達に聞こえない程の声で叫んだ
「言ったろ、保護者が付いてるからって」
「あれホンキだったんだι」
「情報屋の俺等がいた方が何かと良いと思うけどな」
「それはそうですけど、フレン達の方は良いんです?」
「ああ。あっちは手伝いだからな。それより」
「どうやって入るか、だろ?」
「裏口はどうです?」
「残念。外壁に囲まれてて、あそこを通らにゃ入れんのよね」
エステルの提案に私達以外の人物が口を挟む
その声に反応して私達は一斉に振り向く
するとそこにいたのはボサボサヘアーの男性で私とアスラは「あ」と呟いた
「・・っ!?」
「こんな所で叫んじゃうと見つかっちゃうよ、お嬢さん」
「えっと、失礼ですが・・・どちら様です?」
「な~に。そっちのカッコいいお兄ちゃんとお兄さんと可憐なお嬢さんとちょっとした仲なのよ。な?」
言いながら男性は私とユーリと兄さんの顔を見ながエステルから離れる
「あんた達知り合いなの?」
「「「いや、違うから」」」
男性はユーリと兄さんとアスラの違うと言う言葉を聞いて少しガクリとした
「おいおい。ヒドイじゃないの。お城の牢屋で仲良くしたじゃない、ユーリ・ローウェル君よぉ。それにそちらのお二人さんにはいつもお世話になってるじゃない」
「ん? 名乗った覚えはねえぞ」
すると男性は懐から手配書を取り出してそれをひらひらと私達に見せた
「ユーリは有名人だからね。で、おじさん名前は?」
「そっちのお兄さんとお嬢さんが知ってるわよ。ね?」
「知らねえ」
「ひどっ・・・!!」
兄さんがきっぱりと言うと男性は本当にショックだったのか肩をガクンと落とした
「ホントにショック受けたみたいだぞι」
「ヘコんじゃったみたいだよι」
「あ、あの、大丈夫ですかι」
「言うわねぇ、あんたの兄貴」
「あはははι」
「セイ、やり過ぎι」
それぞれの感想を述べていると男性は顔を上げた
「ん~・・・。じゃあ、しょうがない。とりあえずレイヴンで」
と、凄く投げやりに言った
「とりあえずって・・・どんだけふざけた奴なのよ」
「んじゃ、レイヴンさん。達者で暮らせよ」
「つれない事言わないの。屋敷に入りたいんでしょ? ま、おっさんに任せときなって」
そう言うとレイヴンはユーリ達から離れて屋敷の門の前まで走って行った
「行っちゃったね」
「止めなくて良いの、あれ?」
「良いんじゃねえの。つかユーリ、お前ホントにレイヴンと牢屋で会ってたんだな」
「ああ、まあな」
「そう言えばさっきお二人にお世話になってるって言ってましたけど、あれってどういう意味です?」
「ああ、あれはいつも情報を貰いに行ってるって事よ」
「ふ~ん、そうなんだ。・・・って、ねえ、何かこっちに来るけど・・・」
「え?」
皆カロルの言葉を聞いて門の方を見るとレイヴンの横をすり抜け傭兵達が私達の方に向かって来ていた
レイヴンを見ると口パクで後は任せた! と言ってそのまま裏口の方へ走って行った
すると隣にいたリタがギュッと拳を握り締め怒りに満ちた声を発した
「あたしはこういう風に利用されるのが大嫌なのよ~~!!」
リタは叫ぶと同時に走ってくる傭兵達にファイアーボールをぶっ放した
「あ~ぁ、やっちゃった」
「どうすんの、これ?」
アスラとカロルが呆れて倒れた傭兵達を見ているとユーリは気にするなと言う目をして歩き出した
「今のうちに行くぞ」
「え、でも・・・」
「どのみち乗り込むんだ。その手間が省けたと思えば良い」
「ほら、行くぞ」
そして私達はそのままレイヴンを追って屋敷に向って走って行った
続く
あとがき
あい。10日ぶりの最新です
とりあえず此処まで書けた・・・
うん、やっとシリアスに入ったよ
まぁ次回もシリアスだけどね
次でトリム港行くかな?
最近あとがきが短くなったな(笑)
では~
2008.11.17
ユーリとフレンと話しを終え二人が部屋を出て気配がなくなった所でさっきまでのほのぼのとした空気とは違う空気が流れ出した
13.真相と潜入
「ああ、順調だ。けど、ちょっと厄介だな」
「厄介?」
「お前達もこの街に来た時に見ただろ、あの光景・・・」
あの光景とはあの夫婦の様な光景の事だろう
「うん・・・。噂では聞いてたけどあそこまで酷いとは思ってなかった」
「あれはまだ良い方だぜ」
「・・・え?」
「その言い草じゃ何か掴んだんだね」
アスラの言葉に兄さんは少し間を置き小さく息を吐いて話し出した
「・・・執政官に雇われてる役人だが、あいつ等ギルドの人間だ」
「「!」」
兄さんの言葉を聞いて私とアスラは驚いた
帝国とギルドは基本的に対立している・・・
確かに今の帝国ではギルド無しでは生活が成り立たない部分もあり、その存在をある程度は黙認しているとはいえ、何故このような事にギルドが・・・?
「そう言えば、魔刻泥棒を捕まえた時に『バルボス』って言ってたよね」
「『顔の右に傷のある、隻眼でバカに体格の良い大男』・・・って」
「・・・やっぱりそうか」
私とアスラの言葉を聞いて兄さんは何か確信したようだった
「そのギルドってのがあの傭兵ギルドの『
「「紅の絆傭兵団!?」」
紅の絆傭兵団と聞いてやっと線が繋がった気がした
あの時は色々あって気付かなかったけどバルボスは紅の絆傭兵団の首領だ
そして傭兵を雇っている執政官
ただ雇うだけなら5大ギルドの紅の絆傭兵団じゃなくても良いはず
「・・・何か裏がありそうね」
「流石、リアは気付くのが早くて助かるね」
「もしかして『リブガロ』?」
「ああ。リブガロの話しは有名だからはしょるが、問題は此処からだ。飼ってるのはそれだけじゃねえんだ」
「他にも何か飼ってるの?」
「ああ・・・。税金を払えない人の子供や人を屋敷の地下に連れて来て税金を払えなかったら連れて来られた人は飼っている魔物の餌にしてるんだ」
「「!」」
「・・・マジで虫唾が走るぜ」
兄さんはそう言って拳に力を入れて顔を顰め、その言葉にアスラも頷いた
多分この話を聞いたらユーリもフレンも同じ事を思うだろう
特にユーリは守るべきモノの為なら必死で頑張るとても真っ直ぐな人、それで自分が傷つく事を厭わないから無茶をする
それが私達を不安にさせる
だからこういう仕事の話しは極力ユーリやフレンがいない所でしている
私達も二人に心配させない為に・・・
「ラゴウとバルボスが何で手を組んでるかはまだ調べてる所だ」
「屋敷の方には行ったの?」
「ああ。だが取りつく島もないって感じだな、あれは」
「じゃあフレン達が行っても無駄って事?」
部屋から立ち去る時にフレンが屋敷に行ってみると言っていた事を思い出す
「ああ。どうせ変な言い分や挑発されたりするのがオチだろ」
「献上品が無いと無理って事だね」
「だろうな。献上品のリブガロの角でもあれば取り次いでくれるかもしれないが・・・と、ユーリ達が戻って来たぞ」
窓の外を見ると何処かへ出掛けていたと思われるユーリ達の姿が見えた
「とりあえず話しはまた後でって事でお迎えと行くか」
「だね。フレン達も戻って来てるみたいだし」
「じゃあ私、タオル持ってくるね」
*
「ユーリ!」
ロビーでユーリ達を発見してユーリに声を掛けると、ユーリも私に気が付いたのか片手を挙げてこちらに歩いてくる
「お帰り。随分泥だらけだけど何処行ってたの?」
私はそう言ってユーリにタオルを渡すとサンキュと言って受け取り、兄さんはエステル達に渡していた
「リブガロの角を取りに行ってたんだ」
「リブガロの角を?」
「ああ。ま、もう手元にはねえけどな」
話しを聞くとリブガロの角を取って街に戻って来たらティグルさんがリブガロの角を狩りに行こうとしていたらしい
そしてその角をティグルさん達に渡して宿に戻って来たらしい
「・・・そっか」
私はその話を聞いてやっぱりユーリだなと思って微笑んだ
「なに微笑んでんだよ」
「ううん。何でもない」
「それより、そっちの話しは終わったのか?」
「うん。大体は」
「曖昧な返事だな」
「まあまだ問題だらけなんだけど」
兄さんと一緒にいたアスラがエステル達と一緒にやって来た
「わたし達これからフレンの所に行くんですけど、リアも行くんですよね?」
ユーリと話している時に兄さんがフレンの所に行くと言ったのだろう
「ええ。執政官と会えたのか気になってて」
「そっか。じゃあ行くか」
「うん」
私の返事を聞いてフレンのいる部屋に向かった
フレンの部屋に入るとソディアさんとウィチル君が何やらフレンと話し合っていた
「相変わらず辛気臭い顔してんな」
「色々考える事が多いんだ。君と違って」
「ふーん・・・」
「また無茶をして賞金額を上げて来たんじゃないだろうね?」
「・・・・。執政官のとこに行かなかったのか?」
ユーリと一緒に行っていなかった私とアスラと兄さんは何だ、今の間は・・・と思いつつ話しを聞ていた
「行った。魔導器研究所から調査執行書を取り寄せてね」
「それで中に入って調べたんだな」
「いや・・・。執政官にはあっさり拒否された」
「なんで!?」
フレンの言った事にカロルは驚いていたが私達はやっぱりね、と思っていた
「魔導器が本当にあると思うのなら正面から乗り込んでみたまえ、と安い挑発までくれましたよ」
「私達にその権限がないから馬鹿にしているんだ!」
「でも、そりゃそいつの言う通りなんじゃねぇの?」
「何だと!?」
ソディアさんは悔しそうに言うとユーリがさらりと答えた
「ユーリ、どっちの味方なのさ」
「敵味方の問題じゃねぇ。自信があんなら乗り込めよ」
「いや。これは罠だ」
「罠?」
「ラゴウは執政官の失態を噴出して評議会の権力強化を狙っている。今下手に踏み込んでも証拠は隠蔽され、しらを切られるだろう」
ユーリとフレン、二人の意見にどちらも賛成だ
だがラゴウの地位を考えると少し考えてしまう
フレンの言う通り、ラゴウも評議会の人間
騎士団も評議会も帝国を支える重要な組織
騎士団に所属しているフレンにとっては下手に動けないだろう
「とにかく、ただの執政官様って訳じゃないって事か。で、次の手考えてあんのか?」
「・・・・・・」
ユーリの言葉にフレンは黙ってしまう
「なんだよ。打つ手なしか?」
「・・・中で騒ぎでも起これば、騎士団の有事特権が優先され、突入出来るんですけどね」
中で騒ぎでも起きれば・・・か
その言葉を聞いてユーリは小さく笑みを浮かべた
「成る程。屋敷に泥棒でも入ってボヤ騒ぎでも起これば良いんだな」
「ユーリ、しつこいようだけど・・・」
「無茶するな。だろ?」
心配そうな顔をしてユーリを見るフレンにユーリはいつもの笑みを浮かべるが、フレンはまだ納得した顔をしていない
「大丈夫よ、フレン。ユーリが無茶しないように私達が見てるから」
「保護者が付いてるから安心しろ」
「君達にも言える事だ、リア、セイ。君達もユーリと同じように目を離すと直ぐ無茶をするからね」
「俺もかよι」
「人の事言えないな、リア、セイ」
「・・・・・」
「返す言葉なし、だね」
まさか言い返されるとは思っていなかったので私と兄さんは複雑な顔をした
*
フレンと話しを終えた後、私達はラゴウのいる屋敷へ向って歩き出した
「帝国がデカイ顔してるのは、この街も似たようなもんなんだな」
宿屋を出て屋敷に向って歩いている途中、ユーリがポツリと呟いた
直ぐ近くを歩いていた私、アスラ、兄さん、ラピードは揃ってユーリの方へと顔を向ける
「最初は下町の魔刻の事しか頭に無かったか?」
「ああ・・・」
「クゥーン・・・」
「ま、お前の性格を考えるとそうだろうな。けど、これだけ帝国がデカイ顔してるのは此処だけだぜ」
「そうなのか?」
「うん。特に此処イリキア大陸は帝都があるから余計に、ね」
「隣のトルビキア大陸みたいに大きなギルドの拠点がある訳でもないから、帝国の思いのままなんだよ」
「その例の1つがラゴウって訳だ」
「成る程な・・・」
そう話している内に屋敷に到着した
屋敷はこの街の中でも一際大きなもので、門前には傭兵がいて腰には剣を拵えている
私達は傭兵達に見つからないように屋敷から少し離れた所にある壁の影に隠れる
「何度見てもおっきな屋敷だね。評議会の役人ってそんなに偉いの?」
「偉いからこんな大きな屋敷に住んでるんじゃない」
「評議会は皇帝を政治面で補佐する機関であり、貴族の有力者により構成されている、です」
「言わば皇帝の代理人って訳だ」
「へえ、そうなんだ」
「って、何であんたまで居るのよ!」
リタは兄さんを見て傭兵達に聞こえない程の声で叫んだ
「言ったろ、保護者が付いてるからって」
「あれホンキだったんだι」
「情報屋の俺等がいた方が何かと良いと思うけどな」
「それはそうですけど、フレン達の方は良いんです?」
「ああ。あっちは手伝いだからな。それより」
「どうやって入るか、だろ?」
「裏口はどうです?」
「残念。外壁に囲まれてて、あそこを通らにゃ入れんのよね」
エステルの提案に私達以外の人物が口を挟む
その声に反応して私達は一斉に振り向く
するとそこにいたのはボサボサヘアーの男性で私とアスラは「あ」と呟いた
「・・っ!?」
「こんな所で叫んじゃうと見つかっちゃうよ、お嬢さん」
「えっと、失礼ですが・・・どちら様です?」
「な~に。そっちのカッコいいお兄ちゃんとお兄さんと可憐なお嬢さんとちょっとした仲なのよ。な?」
言いながら男性は私とユーリと兄さんの顔を見ながエステルから離れる
「あんた達知り合いなの?」
「「「いや、違うから」」」
男性はユーリと兄さんとアスラの違うと言う言葉を聞いて少しガクリとした
「おいおい。ヒドイじゃないの。お城の牢屋で仲良くしたじゃない、ユーリ・ローウェル君よぉ。それにそちらのお二人さんにはいつもお世話になってるじゃない」
「ん? 名乗った覚えはねえぞ」
すると男性は懐から手配書を取り出してそれをひらひらと私達に見せた
「ユーリは有名人だからね。で、おじさん名前は?」
「そっちのお兄さんとお嬢さんが知ってるわよ。ね?」
「知らねえ」
「ひどっ・・・!!」
兄さんがきっぱりと言うと男性は本当にショックだったのか肩をガクンと落とした
「ホントにショック受けたみたいだぞι」
「ヘコんじゃったみたいだよι」
「あ、あの、大丈夫ですかι」
「言うわねぇ、あんたの兄貴」
「あはははι」
「セイ、やり過ぎι」
それぞれの感想を述べていると男性は顔を上げた
「ん~・・・。じゃあ、しょうがない。とりあえずレイヴンで」
と、凄く投げやりに言った
「とりあえずって・・・どんだけふざけた奴なのよ」
「んじゃ、レイヴンさん。達者で暮らせよ」
「つれない事言わないの。屋敷に入りたいんでしょ? ま、おっさんに任せときなって」
そう言うとレイヴンはユーリ達から離れて屋敷の門の前まで走って行った
「行っちゃったね」
「止めなくて良いの、あれ?」
「良いんじゃねえの。つかユーリ、お前ホントにレイヴンと牢屋で会ってたんだな」
「ああ、まあな」
「そう言えばさっきお二人にお世話になってるって言ってましたけど、あれってどういう意味です?」
「ああ、あれはいつも情報を貰いに行ってるって事よ」
「ふ~ん、そうなんだ。・・・って、ねえ、何かこっちに来るけど・・・」
「え?」
皆カロルの言葉を聞いて門の方を見るとレイヴンの横をすり抜け傭兵達が私達の方に向かって来ていた
レイヴンを見ると口パクで後は任せた! と言ってそのまま裏口の方へ走って行った
すると隣にいたリタがギュッと拳を握り締め怒りに満ちた声を発した
「あたしはこういう風に利用されるのが大嫌なのよ~~!!」
リタは叫ぶと同時に走ってくる傭兵達にファイアーボールをぶっ放した
「あ~ぁ、やっちゃった」
「どうすんの、これ?」
アスラとカロルが呆れて倒れた傭兵達を見ているとユーリは気にするなと言う目をして歩き出した
「今のうちに行くぞ」
「え、でも・・・」
「どのみち乗り込むんだ。その手間が省けたと思えば良い」
「ほら、行くぞ」
そして私達はそのままレイヴンを追って屋敷に向って走って行った
続く
あとがき
あい。10日ぶりの最新です
とりあえず此処まで書けた・・・
うん、やっとシリアスに入ったよ
まぁ次回もシリアスだけどね
次でトリム港行くかな?
最近あとがきが短くなったな(笑)
では~
2008.11.17