水道魔導器奪還編
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翌日、私は兄さんと一緒に宿のロビーでユーリ達が来るのを待っていた
「ユーリと会うのも久しぶりだな」
「兄さんもう2年近く帝都離れてるからね」
「そんなに経つか・・・」
「ボク等は良く会ってるからそんな気がしないんじゃない」
「そうかもな」
そう話していると廊下から見慣れた人物達がやって来た
12.幸せなひととき
「ユーリ、おはよう」
「よおユーリ、久しぶりだな」
「セイ!!」
ユーリは兄さんの姿を見て驚き、カロルとリタは誰? と呟いていた
「ラピードも元気そうだな」
「ワン!」
兄さんは屈んでラピードの頭を撫でてやるとラピードは気持ちよさそうに目を細めた
「セイ、お前いつ来たんだ?」
「仕事で此処に留まってたら偶然フレンと会ってな。それで暫くフレンの手伝いをしてたら、昨日フレンがリアを連れて来たんだ」
「元々此処で合流する事になってたんだけどね」
「成る程な・・・」
そう言うとユーリは昨日のフレンの行動を思い出し納得したようだった
「ね、ねぇ、ユーリ。この人誰?」
「・・・だとさ」
カロルは控えめにユーリに聞くとユーリは軽い口調で兄さんに振った
「俺はセイ・ルーティア。妹とアスラが世話になってるな」
「ルーティアって事は・・・リアのお兄さん!?」
「ああ」
「あんた妹だったんだ」
「ええ」
「リアってお姉さん気質だから妹に見えないんだよね」
と、話しているとエステルが泊まっている部屋のドアが開いた
「おはようございます」
「おはよう、エステル」
昨日の疲れがまだ残っているかと思ったけどエステルはいつも通りの優しい笑顔で私達を迎えてくれた
「用事は済んだのか?」
「はい。どうぞ中へ」
エステルにそう言われ部屋に入るとフレンはソファに腰掛けて紅茶を飲んでいるようだった
ユーリは壁に寄りかかり部屋の中を眺める
「そっちのヒミツのお話も?」
「此処までの事情は聞いた。賞金首になった理由もね」
フレンはそう言って立ち上がると、改めてユーリに向き合った
「まずは礼を言っておく。彼女を護ってくれて有り難う」
「あ、わたしからも有り難う御座いました」
「なに、魔刻ドロボウ探すついでだよ」
「問題はそっちの方だな」
「ん?」
「どんな事情があれ、公務の妨害、脱獄、不法侵入を帝国の法は認めていない」
フレンは相変わらず厳しい表情
ユーリはその視線を真っ直ぐ受け止めつつも、まだ余裕そうな顔だった
「ご、ごめんなさい。全部話してしまいました」
「ごめんね、ユーリ」
「仕方ねえなあ。やった事は本当だし」
私は肩を竦め、エステルは申し訳無さそうに謝るとユーリは気にするなと言う視線を送ってくれた
「では、それ相応の処罰を受けてもらうが、良いね?」
「ああ」
「一応僕が法廷に申し開きをするつもりだ。ユーリにはその上で然るべき処罰は受けてもらう。僕も出来る限りの事はする」
「・・・ま、処罰されんのはオレだけだ。お前等は安心しとけ」
二人はそう言って私とエステルを安心させる様に優しく笑った
ただ、問題は此処からだ
「でも、その前にやる事あるからさ、ちょっと待ってくれよ」
「下町の魔刻を取り戻すのが先決と言いたいのだろ?」
ユーリが頷いた時、ノックが聞こえソディアさんとウィチル君が入って来た
そしてウィチル君はリタの顔を見てぎょっとした
「何故リタがいるんですか!! 貴女、帝国の協力要請を断ったそうじゃないですか? 帝国直属の魔導士が、義務付けられている仕事を放棄して良いんですか?」
彼はキッとリタを睨み付けるが、リタはきょとんとした顔でウィチル君の顔をまじまじと見つめた
「誰?」
「・・・誰だっけ?」
「お約束なパターンだね」
ユーリとリタの言葉にアスラがツッコんでいるとウィチル君は少しショックを受けた様子でぷいっとそっぽを向いた
「・・・ふん、良いですけどね。僕も貴女になんて全然まったく興味ありませんし」
そしてウィチル君の隣にいたソディアさんがキッとユーリを睨み付けた
「こいつ・・・! 賞金首のっ!!」
そしてそのまま腰から剣を引き抜き、ユーリに突き付けた
「ソディア! 待て・・・! 彼は私の友人だ」
「なっ! 賞金首ですよ!」
「事情は昨日、エステリーゼ様とリアに確認した。確かに軽い罪は犯したが、手配書を出されたのは濡れ衣だ。後日、帝都に連れ帰り私が申し開きをする。その上で受けるべき罰は受けてもらう」
そこまで聞いてようやくソディアさんは剣を納め、フレンが二人の紹介をした後、ソディアさんとウィチル君は報告を始めた
このカプワ・ノールの大雨はラゴウ執政官の屋敷に運び込まれたという魔導器を使っている可能性があるとの事
そして街の人が漁に出られないよう天候を操作し、それでも出港する船があれば攻撃する
更にはリブガロという魔物を捕まえて来る事で税金を免除する、などと無茶苦茶な事を言って街の住人で遊んでいるという
私達情報屋の間でもこのカプワ・ノールの酷い噂は絶えなかった
調べても良い噂は何一つない程だ
そして昨日見たあの夫婦があんなにも追い詰められていた理由がこれでようやく分かった
「・・・何か疲れたな。一旦部屋に戻るか」
気が付いたら結構時間が経っていて昨日の疲れもある所為か、皆少し草臥れた顔をしていた
ユーリがそう提案すると手持ち無沙汰にしていたリタとカロルも同意し部屋を出る
私達も退出しようとした時、ちょっと待ったとフレンが呼び止めた
振り返るとフレンは真顔で眉間に皺も寄っていなかったが、それが逆に怖かった
「これから二人には話がある」
「・・・リアも道連れか」
「道連れって・・・ι」
「とりあえず場所を変えよう」
「じゃあ俺とリアの部屋で良いか?」
「ああ。じゃあ行こう」
そう言って私達は私と兄さんが泊まっている部屋に移動した
部屋に着くとユーリ達はソファに腰掛け私は三人に紅茶を出してユーリの隣に座った
そしてフレンは大きく溜め息を吐いて眉間に皺を寄せて私とユーリを見た
「・・・確かに僕はユーリが結界の外に出た事は祝福したい気持ちでいっぱいだ」
「なら花束でも贈ってくれよ」
「だが・・・」
「フレン、昨日話した通りだからあんまりユーリを責めないであげて」
「・・・リアはユーリに甘いな」
「お前もリアには甘いぞ」
「ユーリ、お前も人の事言えないぞ」
「・・・・・」
「ふふっ」
フレンとユーリの言葉に兄さんがすかさずツッコむと二人は何とも言えない顔をし、私は二人の反応が面白くて笑ってしまった
「でもこうやってみんな揃うのホント久しぶりだよね」
「そうだな。俺もリアも帝都離れっぱなしだしな」
「フレンも任務で帝都離れてるからね」
「此処まで長く離れたのは今回が初めてだけどね」
「下町のみんなは元気か」
「ああ。みんな相変わらずだ」
それから私達は暫くの間、昔や今の事など他愛のない話しを間に含みながら話した
本当に私達幼馴染みが揃ったのは久しぶりで、懐かしい雰囲気に私は下町にいるような気分になった
それは私だけなく、ユーリもフレンも兄さんもアスラも思った事だろう
この時間が何時までも続けば良いと思うけど現実はそうは行かない
だけど、一時でもこの幸せな時間を過ごせた事が本当に嬉しかった
おまけ
リアがお茶とお菓子を取りに行くと言って席を外している時の会話 ――
「そういや聞き忘れてたが・・・」
「ん?」
「お前等、リアに告ったのか?」
「ぶっ!!」「っ!!」
セイはニヤニヤしながら聞くと、ユーリとフレンは飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった
「セイ、いきなり何を言い出すんだ!」
「危うく吹き出す所だったぜ・・・」
「・・・その様子じゃ、まだなんだな」
「「ぅ・・・」」
「あいつ、こういう事に関してはかなり鈍いからな」
「人のは気付くの早いんだけどね・・・」
「鈍いにも程があると思うけどな・・・」
「ああ・・・」
これには此処に居る誰もが思った事だった
「・・・あれ? 何か雰囲気暗いけど、どうかした?」
きょとんとして三人と一匹を見ているリアにユーリとフレンははぁ・・・と大きな溜息を吐いた
「くくっ。まぁ、精々頑張れよ」
「「ああ・・・」」
「え? え? 何?」
「気にしないで。こっちの事だから・・・ι」
「?」
セイは面白そうに笑い、ユーリとフレンはまた落ち込み、リアは一人蚊帳の外で疑問符を出していたのだった
続く
あとがき
あ~~、やっぱおまけは書くの楽しい!w
むしろ今回はこれが書きたくて書いたようなもんですから!!(言い切った(笑))
本編の方はシリアスだけど最後はほのぼので終わらせてみました
ただ単に幼馴染み組の会話を書きたかったんですよ(笑)
さて、次からはまたシリアスに戻ります
では
2008.11.07
「ユーリと会うのも久しぶりだな」
「兄さんもう2年近く帝都離れてるからね」
「そんなに経つか・・・」
「ボク等は良く会ってるからそんな気がしないんじゃない」
「そうかもな」
そう話していると廊下から見慣れた人物達がやって来た
12.幸せなひととき
「ユーリ、おはよう」
「よおユーリ、久しぶりだな」
「セイ!!」
ユーリは兄さんの姿を見て驚き、カロルとリタは誰? と呟いていた
「ラピードも元気そうだな」
「ワン!」
兄さんは屈んでラピードの頭を撫でてやるとラピードは気持ちよさそうに目を細めた
「セイ、お前いつ来たんだ?」
「仕事で此処に留まってたら偶然フレンと会ってな。それで暫くフレンの手伝いをしてたら、昨日フレンがリアを連れて来たんだ」
「元々此処で合流する事になってたんだけどね」
「成る程な・・・」
そう言うとユーリは昨日のフレンの行動を思い出し納得したようだった
「ね、ねぇ、ユーリ。この人誰?」
「・・・だとさ」
カロルは控えめにユーリに聞くとユーリは軽い口調で兄さんに振った
「俺はセイ・ルーティア。妹とアスラが世話になってるな」
「ルーティアって事は・・・リアのお兄さん!?」
「ああ」
「あんた妹だったんだ」
「ええ」
「リアってお姉さん気質だから妹に見えないんだよね」
と、話しているとエステルが泊まっている部屋のドアが開いた
「おはようございます」
「おはよう、エステル」
昨日の疲れがまだ残っているかと思ったけどエステルはいつも通りの優しい笑顔で私達を迎えてくれた
「用事は済んだのか?」
「はい。どうぞ中へ」
エステルにそう言われ部屋に入るとフレンはソファに腰掛けて紅茶を飲んでいるようだった
ユーリは壁に寄りかかり部屋の中を眺める
「そっちのヒミツのお話も?」
「此処までの事情は聞いた。賞金首になった理由もね」
フレンはそう言って立ち上がると、改めてユーリに向き合った
「まずは礼を言っておく。彼女を護ってくれて有り難う」
「あ、わたしからも有り難う御座いました」
「なに、魔刻ドロボウ探すついでだよ」
「問題はそっちの方だな」
「ん?」
「どんな事情があれ、公務の妨害、脱獄、不法侵入を帝国の法は認めていない」
フレンは相変わらず厳しい表情
ユーリはその視線を真っ直ぐ受け止めつつも、まだ余裕そうな顔だった
「ご、ごめんなさい。全部話してしまいました」
「ごめんね、ユーリ」
「仕方ねえなあ。やった事は本当だし」
私は肩を竦め、エステルは申し訳無さそうに謝るとユーリは気にするなと言う視線を送ってくれた
「では、それ相応の処罰を受けてもらうが、良いね?」
「ああ」
「一応僕が法廷に申し開きをするつもりだ。ユーリにはその上で然るべき処罰は受けてもらう。僕も出来る限りの事はする」
「・・・ま、処罰されんのはオレだけだ。お前等は安心しとけ」
二人はそう言って私とエステルを安心させる様に優しく笑った
ただ、問題は此処からだ
「でも、その前にやる事あるからさ、ちょっと待ってくれよ」
「下町の魔刻を取り戻すのが先決と言いたいのだろ?」
ユーリが頷いた時、ノックが聞こえソディアさんとウィチル君が入って来た
そしてウィチル君はリタの顔を見てぎょっとした
「何故リタがいるんですか!! 貴女、帝国の協力要請を断ったそうじゃないですか? 帝国直属の魔導士が、義務付けられている仕事を放棄して良いんですか?」
彼はキッとリタを睨み付けるが、リタはきょとんとした顔でウィチル君の顔をまじまじと見つめた
「誰?」
「・・・誰だっけ?」
「お約束なパターンだね」
ユーリとリタの言葉にアスラがツッコんでいるとウィチル君は少しショックを受けた様子でぷいっとそっぽを向いた
「・・・ふん、良いですけどね。僕も貴女になんて全然まったく興味ありませんし」
そしてウィチル君の隣にいたソディアさんがキッとユーリを睨み付けた
「こいつ・・・! 賞金首のっ!!」
そしてそのまま腰から剣を引き抜き、ユーリに突き付けた
「ソディア! 待て・・・! 彼は私の友人だ」
「なっ! 賞金首ですよ!」
「事情は昨日、エステリーゼ様とリアに確認した。確かに軽い罪は犯したが、手配書を出されたのは濡れ衣だ。後日、帝都に連れ帰り私が申し開きをする。その上で受けるべき罰は受けてもらう」
そこまで聞いてようやくソディアさんは剣を納め、フレンが二人の紹介をした後、ソディアさんとウィチル君は報告を始めた
このカプワ・ノールの大雨はラゴウ執政官の屋敷に運び込まれたという魔導器を使っている可能性があるとの事
そして街の人が漁に出られないよう天候を操作し、それでも出港する船があれば攻撃する
更にはリブガロという魔物を捕まえて来る事で税金を免除する、などと無茶苦茶な事を言って街の住人で遊んでいるという
私達情報屋の間でもこのカプワ・ノールの酷い噂は絶えなかった
調べても良い噂は何一つない程だ
そして昨日見たあの夫婦があんなにも追い詰められていた理由がこれでようやく分かった
「・・・何か疲れたな。一旦部屋に戻るか」
気が付いたら結構時間が経っていて昨日の疲れもある所為か、皆少し草臥れた顔をしていた
ユーリがそう提案すると手持ち無沙汰にしていたリタとカロルも同意し部屋を出る
私達も退出しようとした時、ちょっと待ったとフレンが呼び止めた
振り返るとフレンは真顔で眉間に皺も寄っていなかったが、それが逆に怖かった
「これから二人には話がある」
「・・・リアも道連れか」
「道連れって・・・ι」
「とりあえず場所を変えよう」
「じゃあ俺とリアの部屋で良いか?」
「ああ。じゃあ行こう」
そう言って私達は私と兄さんが泊まっている部屋に移動した
部屋に着くとユーリ達はソファに腰掛け私は三人に紅茶を出してユーリの隣に座った
そしてフレンは大きく溜め息を吐いて眉間に皺を寄せて私とユーリを見た
「・・・確かに僕はユーリが結界の外に出た事は祝福したい気持ちでいっぱいだ」
「なら花束でも贈ってくれよ」
「だが・・・」
「フレン、昨日話した通りだからあんまりユーリを責めないであげて」
「・・・リアはユーリに甘いな」
「お前もリアには甘いぞ」
「ユーリ、お前も人の事言えないぞ」
「・・・・・」
「ふふっ」
フレンとユーリの言葉に兄さんがすかさずツッコむと二人は何とも言えない顔をし、私は二人の反応が面白くて笑ってしまった
「でもこうやってみんな揃うのホント久しぶりだよね」
「そうだな。俺もリアも帝都離れっぱなしだしな」
「フレンも任務で帝都離れてるからね」
「此処まで長く離れたのは今回が初めてだけどね」
「下町のみんなは元気か」
「ああ。みんな相変わらずだ」
それから私達は暫くの間、昔や今の事など他愛のない話しを間に含みながら話した
本当に私達幼馴染みが揃ったのは久しぶりで、懐かしい雰囲気に私は下町にいるような気分になった
それは私だけなく、ユーリもフレンも兄さんもアスラも思った事だろう
この時間が何時までも続けば良いと思うけど現実はそうは行かない
だけど、一時でもこの幸せな時間を過ごせた事が本当に嬉しかった
おまけ
リアがお茶とお菓子を取りに行くと言って席を外している時の会話 ――
「そういや聞き忘れてたが・・・」
「ん?」
「お前等、リアに告ったのか?」
「ぶっ!!」「っ!!」
セイはニヤニヤしながら聞くと、ユーリとフレンは飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった
「セイ、いきなり何を言い出すんだ!」
「危うく吹き出す所だったぜ・・・」
「・・・その様子じゃ、まだなんだな」
「「ぅ・・・」」
「あいつ、こういう事に関してはかなり鈍いからな」
「人のは気付くの早いんだけどね・・・」
「鈍いにも程があると思うけどな・・・」
「ああ・・・」
これには此処に居る誰もが思った事だった
「・・・あれ? 何か雰囲気暗いけど、どうかした?」
きょとんとして三人と一匹を見ているリアにユーリとフレンははぁ・・・と大きな溜息を吐いた
「くくっ。まぁ、精々頑張れよ」
「「ああ・・・」」
「え? え? 何?」
「気にしないで。こっちの事だから・・・ι」
「?」
セイは面白そうに笑い、ユーリとフレンはまた落ち込み、リアは一人蚊帳の外で疑問符を出していたのだった
続く
あとがき
あ~~、やっぱおまけは書くの楽しい!w
むしろ今回はこれが書きたくて書いたようなもんですから!!(言い切った(笑))
本編の方はシリアスだけど最後はほのぼので終わらせてみました
ただ単に幼馴染み組の会話を書きたかったんですよ(笑)
さて、次からはまたシリアスに戻ります
では
2008.11.07