影法師にアンコール!(krk)※抜け番あり
DREAM
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「ふざけんじゃねえ!マグレだ!マグレに決まってるんだろがッ!!」
そんなシルバーの叫びが聞こえて、赤司に支えられながら一緒に立ち上がる。喜びで流れた涙をごしごしと拭ってシルバー達を見ると、他の面々はともかくシルバーだけが怒りで身体を震わせていた。
「もう一度やりゃあすぐにわかるぜ!!オイ…ッ!!」
「やめろシルバー、みっともねえ」
掴みかかられると思ったのだが、すんでの所でナッシュがシルバーの手を掴んで止めた。これには驚いて、私を庇うように前に出てくれた赤司と一緒に思わずナッシュを見上げてしまった。
「勝負は結果が全てだ。こいつらの方が強かった。…それだけだ」
そう言ってナッシュが目を伏せた。
なんだかふと、去年のウィンターカップの、誠凛に負けた時の青峰の姿が重なって見えた気がした。あの時、かがみんが何か話しかけていたけど、なんて言ってたのだろうか。もしかしたら、これから私が言おうとしていることと同じだったりして、と笑みがこぼれる。
いきなり笑った私を怪訝そうな顔で見る赤司の横を抜けて、ナッシュの前に立った。どこか、喪失感のある顔をしたナッシュ。悔しいと、表情が言っている。なんだかんだ言って、ナッシュだって、バスケが好きなんだと思う。
だからさ。
「次は、正々堂々バスケしようよ。受けて立つからさ」
ニッと笑ってナッシュを見上げたら、一度瞬きをして、それから力なく笑った。初めて見る悪意のない笑顔に少し驚いたけど、うへへっと笑い返してやった。
それから、不意にナッシュが私の手を取って、ぐいっと身体ごと引っ張ってきた。
耳元でリップ音が聞こえてブワッと顔が熱くなる。
「ほぎゃああ?!」
「挨拶だろ、挨拶。今回はオレ達の負けだが、もし……次があれば、次は必ず叩き潰す。覚えておけよ、honey」
「はにー?!いや待てこの!言い逃げ!!ていうか謝罪は?!樋口先輩達や私達に謝罪してから帰国してくれる?!おいこらーっ!!」
ていうか欧米式の挨拶いきなりする?!しかもわりと良い声のリップ音を耳元で大音量で聞かされた私の身にもなってくれる?!不覚にもドキドキするから!!
さっさと帰って行くジャバウォックの面々の後ろ姿を見送っていたら、今度は背後から両肩をがしりと掴まれる。あれ、なんだか黒いオーラが背後から漂ってきているような。
「優姫、今のなにー?ほっぺにチューされたのー?」
「ああ紫原、挨拶の時に本当にキスはしないんだよ。わざとらしいリップ音だったしね。……されていないよな、優姫?」
「ひえええされてないですううう!!敦ちょっと待ってアイアンクローやめて赤司も目を見開くのやめて超怖いんですけど!!」
ギャーッと私が悲鳴を上げている横で、黄瀬くんが「わー!修羅場っスーっ!!」とちょっと楽しそうにしていたので後で説教しようと思います。
「あっ樋口先輩ーっ!!」
祝勝会を練習で使った体育館ですることになり、身支度を整えて会場を出て行く。外では各学校のバスケ部の面々が私達を待っていてくれたようで、みんなそれぞれ勝利を喜び合った。もちろん、私達の学校、洛山高校バスケ部も集まっている。樋口先輩も来てくれていて、私はすぐさま樋口先輩のところへ駆け寄った。
「樋口先輩!やりました!いや私は何もしてないんですけど、赤司達がやってくれました!!」
うん、と頷いて、樋口先輩は私と赤司の頭をそっと撫でてくれた。よくやったと褒めてくれて、撫でられなれてなくて少し照れている赤司と一緒に笑い合う。そうしていたら、笑いながら葉山先輩が飛び込んできた。
「やったな!さすが赤司!!優姫も!!」
「ええ、本当にお疲れさま、二人とも!それから、ねえ征ちゃん。あなたもしかして」
「…ああ、もう一人のオレは、もういない」
そう言われて、驚いたけれど、同時にやっぱりとも思った。ナッシュをも上回る眼で、試合の流れを変えた時、ああ、と思ったのだ。傍若無人で、魔王で、でもとても優しい赤司は、元の人格の赤司に全てを委ねて消えたんじゃないかって。
もう二度と、会えないんだろうなって、なんとなく気付いてた。
「…心配すんな、赤司!黛サンに言われたからな。ちゃんと目に焼き付けたぜ、赤司の試合」
「え?」
「あいつのこと、忘れねえよ。それにオレらが何も言わなくたって、お前が全部受け止めてんだろ、あの赤司の思いを」
根武谷先輩がそう言って、赤司の背中を叩いた。相変わらず加減の知らない根武谷先輩の平手は、赤司の背中を思い切り鳴らして、案の定実渕先輩に怒られている。
そうだ、忘れない。私をバスケ部に入れてくれた赤司のこと、きっとずっと、忘れない。
最後に、私を見つめて微笑んでくれたよね。気付いてたよ。ちゃんと、見てたよ。
涙の滲んだ目をこすって、私も頷いた。
「そうだよ、赤司。もう一人の赤司のことも忘れないし、今の赤司も私達の大事な仲間だから、変な心配しなくてもいいんだよ」
「……そうか。そう、だね」
ポロ、と、赤司が涙を零した。静かに泣いた赤司はきっと、今の自分に自信がなかったのかもしれない。やっぱり、どっちの赤司も優しくて、みんなのことばかり考えている。征ちゃんっ!と実渕先輩が赤司を抱きしめて、頭を撫でている。葉山先輩も同じように抱きついて、根武谷先輩はやれやれと笑っている。樋口先輩は……あれ、樋口先輩?そんな建物の影に手を伸ばして何をしているんです?
「樋口先輩?」
ちょっと待って、と樋口先輩は建物の影から勢いよく何かを引っ張り出してきた。というか、引っ張り出されたのはまゆゆだ。そういえば姿が見えないと思ったら、隠れていたのか。
「まゆゆ!何で隠れてるのさ!!」
「いや隠れるだろ……ああ、そうだ。赤司、試合おめでとう。まあ負けるわけねえと思っていたがな」
「ありがとうございます、黛さん。そうだ、隠れていた黛さんに一言いいですか」
「隠れていたは余計だ。なんだよ」
こそりと、実渕先輩達から離れた赤司は、まゆゆのところへ行き耳打ちをする。口元を手で隠されたので、なんて言っているか聞こえないし見えない。
なになに!まゆあか秘密の会話なの?!詳しく!詳しく!!
「繋ぎ止めておきたいのなら、言葉にしなければすり抜けていくだけだよ。誰かに取られたとしても、何もしなかった者に文句を言う資格はありはしないのだから」
「!赤司、それ」
「オレも同意見だという話です。さっきもナッシュにアプローチされていましたし」
「……あれ、キスはしてねえんだよな」
「してないですよ。そもそもキスは同意の上でするべき行為だと思いますが、黛さんにしては行動できた方だと思うので、そこは何も言わないでおきます」
なんということだ。オレが同意なく優姫にキスをしたことがバレている。もしや、見ていたのか。思わずぐっと息を詰まらせると、赤司はフフッと楽しそうに笑った。こいつめ。
「だから、次は言葉にする番ですよ。オレ達は先に体育館に向かってますから、頑張ってください」
ポン、と背中を押される。すぐに振り返ったが、赤司は祝勝会に行こうと言って実渕達をつれていってしまった。残されたのはオレと、置いてかれてる?!と慌てふためいている優姫の二人。そう、二人きり。ジャバウォックとの戦いは終わり、勝利を収めた今、もう何も気にするものはない。
振り返れば、驚いてこちらを見る優姫と目が合う。
いつから、だとか。どこが、とか。
正直わからない。挙げようと思えばきっと挙げられるけど、今言葉にすべきはたった二文字の、オレの感情。
「……初めて会った時」
「えっ?!急に何の話?!」
「オレに、友達になってくれって言ったよな」
「う、うん」
「それで、オレもなってもいいって返して、友達になった。けど、それを今日で終わりにしたい」
え、と、優姫が悲壮感を漂わせる。徐々に泣きそうに顔を歪ませはじめたので、オレもちょっと意地悪な言い方をしたと反省しつつ、手を差し出した。初めて会った時、友達になってほしいと言ってオレに手を向けてきた優姫のように。
けどオレは、友達のままじゃ、もう嫌なんだ。
こいつの周りにいる、沢山の友達の一人にはなりたくないんだ。
『まゆゆと、出会えてよかった。あの日、私と出会ってくれて、ありがとう』
お前に会えて良かった。
あの日、オレを見つけてくれて、ありがとう。
「優姫、好きだ。ずっと、お前の側にいたい」
お前が嫌がっても、終わりになんかしたくないんだ。
「ずっと、私、言ってた」
絞り出せた言葉は、自分に向けてのものだ。
まゆゆが、友達をやめたいと言って、側にいたいと言ってくれて、好きだと言ってくれた。
キスをされたときから、ずっと、そうだといいなと期待、していた。
だって、私はずっと、まゆゆのことが。
いつからだとか、どこがとか。
いくらでも挙げられるから、全部教えてあげたい。
私はいつだって、まゆゆしか見えていないんだよ。
まゆゆが卒業した時、私がどれだけ寂しかったと思ってるのさ。
ああもう、伝えたい言葉が多すぎてまとまらない。
けど、私も、今度はまゆゆの心に届くように、伝えなきゃ。
「私も、まゆゆのこと、好き、です。ずっと、側にいさせて」
震えながらまゆゆの手を握り返したら、そのまま抱きしめられた。重なった心臓が、お互い爆音を鳴らしていて、まゆゆもクールな顔でこんなにも緊張してたんだって気付いたら可愛く思えて口元がにやけてしまった。
少し身体を離して、顔を見合わせる。うへへ、と笑ったら、笑い方がこえーよと微笑まれた。
そんなシルバーの叫びが聞こえて、赤司に支えられながら一緒に立ち上がる。喜びで流れた涙をごしごしと拭ってシルバー達を見ると、他の面々はともかくシルバーだけが怒りで身体を震わせていた。
「もう一度やりゃあすぐにわかるぜ!!オイ…ッ!!」
「やめろシルバー、みっともねえ」
掴みかかられると思ったのだが、すんでの所でナッシュがシルバーの手を掴んで止めた。これには驚いて、私を庇うように前に出てくれた赤司と一緒に思わずナッシュを見上げてしまった。
「勝負は結果が全てだ。こいつらの方が強かった。…それだけだ」
そう言ってナッシュが目を伏せた。
なんだかふと、去年のウィンターカップの、誠凛に負けた時の青峰の姿が重なって見えた気がした。あの時、かがみんが何か話しかけていたけど、なんて言ってたのだろうか。もしかしたら、これから私が言おうとしていることと同じだったりして、と笑みがこぼれる。
いきなり笑った私を怪訝そうな顔で見る赤司の横を抜けて、ナッシュの前に立った。どこか、喪失感のある顔をしたナッシュ。悔しいと、表情が言っている。なんだかんだ言って、ナッシュだって、バスケが好きなんだと思う。
だからさ。
「次は、正々堂々バスケしようよ。受けて立つからさ」
ニッと笑ってナッシュを見上げたら、一度瞬きをして、それから力なく笑った。初めて見る悪意のない笑顔に少し驚いたけど、うへへっと笑い返してやった。
それから、不意にナッシュが私の手を取って、ぐいっと身体ごと引っ張ってきた。
耳元でリップ音が聞こえてブワッと顔が熱くなる。
「ほぎゃああ?!」
「挨拶だろ、挨拶。今回はオレ達の負けだが、もし……次があれば、次は必ず叩き潰す。覚えておけよ、honey」
「はにー?!いや待てこの!言い逃げ!!ていうか謝罪は?!樋口先輩達や私達に謝罪してから帰国してくれる?!おいこらーっ!!」
ていうか欧米式の挨拶いきなりする?!しかもわりと良い声のリップ音を耳元で大音量で聞かされた私の身にもなってくれる?!不覚にもドキドキするから!!
さっさと帰って行くジャバウォックの面々の後ろ姿を見送っていたら、今度は背後から両肩をがしりと掴まれる。あれ、なんだか黒いオーラが背後から漂ってきているような。
「優姫、今のなにー?ほっぺにチューされたのー?」
「ああ紫原、挨拶の時に本当にキスはしないんだよ。わざとらしいリップ音だったしね。……されていないよな、優姫?」
「ひえええされてないですううう!!敦ちょっと待ってアイアンクローやめて赤司も目を見開くのやめて超怖いんですけど!!」
ギャーッと私が悲鳴を上げている横で、黄瀬くんが「わー!修羅場っスーっ!!」とちょっと楽しそうにしていたので後で説教しようと思います。
「あっ樋口先輩ーっ!!」
祝勝会を練習で使った体育館ですることになり、身支度を整えて会場を出て行く。外では各学校のバスケ部の面々が私達を待っていてくれたようで、みんなそれぞれ勝利を喜び合った。もちろん、私達の学校、洛山高校バスケ部も集まっている。樋口先輩も来てくれていて、私はすぐさま樋口先輩のところへ駆け寄った。
「樋口先輩!やりました!いや私は何もしてないんですけど、赤司達がやってくれました!!」
うん、と頷いて、樋口先輩は私と赤司の頭をそっと撫でてくれた。よくやったと褒めてくれて、撫でられなれてなくて少し照れている赤司と一緒に笑い合う。そうしていたら、笑いながら葉山先輩が飛び込んできた。
「やったな!さすが赤司!!優姫も!!」
「ええ、本当にお疲れさま、二人とも!それから、ねえ征ちゃん。あなたもしかして」
「…ああ、もう一人のオレは、もういない」
そう言われて、驚いたけれど、同時にやっぱりとも思った。ナッシュをも上回る眼で、試合の流れを変えた時、ああ、と思ったのだ。傍若無人で、魔王で、でもとても優しい赤司は、元の人格の赤司に全てを委ねて消えたんじゃないかって。
もう二度と、会えないんだろうなって、なんとなく気付いてた。
「…心配すんな、赤司!黛サンに言われたからな。ちゃんと目に焼き付けたぜ、赤司の試合」
「え?」
「あいつのこと、忘れねえよ。それにオレらが何も言わなくたって、お前が全部受け止めてんだろ、あの赤司の思いを」
根武谷先輩がそう言って、赤司の背中を叩いた。相変わらず加減の知らない根武谷先輩の平手は、赤司の背中を思い切り鳴らして、案の定実渕先輩に怒られている。
そうだ、忘れない。私をバスケ部に入れてくれた赤司のこと、きっとずっと、忘れない。
最後に、私を見つめて微笑んでくれたよね。気付いてたよ。ちゃんと、見てたよ。
涙の滲んだ目をこすって、私も頷いた。
「そうだよ、赤司。もう一人の赤司のことも忘れないし、今の赤司も私達の大事な仲間だから、変な心配しなくてもいいんだよ」
「……そうか。そう、だね」
ポロ、と、赤司が涙を零した。静かに泣いた赤司はきっと、今の自分に自信がなかったのかもしれない。やっぱり、どっちの赤司も優しくて、みんなのことばかり考えている。征ちゃんっ!と実渕先輩が赤司を抱きしめて、頭を撫でている。葉山先輩も同じように抱きついて、根武谷先輩はやれやれと笑っている。樋口先輩は……あれ、樋口先輩?そんな建物の影に手を伸ばして何をしているんです?
「樋口先輩?」
ちょっと待って、と樋口先輩は建物の影から勢いよく何かを引っ張り出してきた。というか、引っ張り出されたのはまゆゆだ。そういえば姿が見えないと思ったら、隠れていたのか。
「まゆゆ!何で隠れてるのさ!!」
「いや隠れるだろ……ああ、そうだ。赤司、試合おめでとう。まあ負けるわけねえと思っていたがな」
「ありがとうございます、黛さん。そうだ、隠れていた黛さんに一言いいですか」
「隠れていたは余計だ。なんだよ」
こそりと、実渕先輩達から離れた赤司は、まゆゆのところへ行き耳打ちをする。口元を手で隠されたので、なんて言っているか聞こえないし見えない。
なになに!まゆあか秘密の会話なの?!詳しく!詳しく!!
「繋ぎ止めておきたいのなら、言葉にしなければすり抜けていくだけだよ。誰かに取られたとしても、何もしなかった者に文句を言う資格はありはしないのだから」
「!赤司、それ」
「オレも同意見だという話です。さっきもナッシュにアプローチされていましたし」
「……あれ、キスはしてねえんだよな」
「してないですよ。そもそもキスは同意の上でするべき行為だと思いますが、黛さんにしては行動できた方だと思うので、そこは何も言わないでおきます」
なんということだ。オレが同意なく優姫にキスをしたことがバレている。もしや、見ていたのか。思わずぐっと息を詰まらせると、赤司はフフッと楽しそうに笑った。こいつめ。
「だから、次は言葉にする番ですよ。オレ達は先に体育館に向かってますから、頑張ってください」
ポン、と背中を押される。すぐに振り返ったが、赤司は祝勝会に行こうと言って実渕達をつれていってしまった。残されたのはオレと、置いてかれてる?!と慌てふためいている優姫の二人。そう、二人きり。ジャバウォックとの戦いは終わり、勝利を収めた今、もう何も気にするものはない。
振り返れば、驚いてこちらを見る優姫と目が合う。
いつから、だとか。どこが、とか。
正直わからない。挙げようと思えばきっと挙げられるけど、今言葉にすべきはたった二文字の、オレの感情。
「……初めて会った時」
「えっ?!急に何の話?!」
「オレに、友達になってくれって言ったよな」
「う、うん」
「それで、オレもなってもいいって返して、友達になった。けど、それを今日で終わりにしたい」
え、と、優姫が悲壮感を漂わせる。徐々に泣きそうに顔を歪ませはじめたので、オレもちょっと意地悪な言い方をしたと反省しつつ、手を差し出した。初めて会った時、友達になってほしいと言ってオレに手を向けてきた優姫のように。
けどオレは、友達のままじゃ、もう嫌なんだ。
こいつの周りにいる、沢山の友達の一人にはなりたくないんだ。
『まゆゆと、出会えてよかった。あの日、私と出会ってくれて、ありがとう』
お前に会えて良かった。
あの日、オレを見つけてくれて、ありがとう。
「優姫、好きだ。ずっと、お前の側にいたい」
お前が嫌がっても、終わりになんかしたくないんだ。
「ずっと、私、言ってた」
絞り出せた言葉は、自分に向けてのものだ。
まゆゆが、友達をやめたいと言って、側にいたいと言ってくれて、好きだと言ってくれた。
キスをされたときから、ずっと、そうだといいなと期待、していた。
だって、私はずっと、まゆゆのことが。
いつからだとか、どこがとか。
いくらでも挙げられるから、全部教えてあげたい。
私はいつだって、まゆゆしか見えていないんだよ。
まゆゆが卒業した時、私がどれだけ寂しかったと思ってるのさ。
ああもう、伝えたい言葉が多すぎてまとまらない。
けど、私も、今度はまゆゆの心に届くように、伝えなきゃ。
「私も、まゆゆのこと、好き、です。ずっと、側にいさせて」
震えながらまゆゆの手を握り返したら、そのまま抱きしめられた。重なった心臓が、お互い爆音を鳴らしていて、まゆゆもクールな顔でこんなにも緊張してたんだって気付いたら可愛く思えて口元がにやけてしまった。
少し身体を離して、顔を見合わせる。うへへ、と笑ったら、笑い方がこえーよと微笑まれた。