影法師にラブコール!(krk)※抜け番あり
DREAM
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「うおー!優姫が関わってるとは思えねー料理だ!」
炊事当番によっておおよその下ごしらえを終えていたので、後から来た私は仕上げを任された。兄貴との二人暮らしで身につけた料理の腕前、とくとご覧あれ!と取り掛かったらみんなに「人は見かけによらない」と称された。何気に失礼である。
そして、完成した夕飯(和風仕立て)を食堂で披露すると、まず葉山先輩が第一声をあげた。こちらも何気に失礼である。
「私のイメージどうなってんすか?!えっ、もしかして私料理出来ないイメージ?!」
「待て待て。美味いかどうかが肝心だろ。よっし、ここは主将にいってもらおうぜ」
「それ毒味的な?!」
根武谷先輩も失礼である。というか、私のイメージェ…。
そして、根武谷先輩に指名された赤司は、とくに表情を変えないまま、いただきますと手を合わせた。いざ…お味は…!!
パクリ
「……」
「せ、征ちゃん…どう…?」
実渕先輩が不安そうに尋ねる。咀嚼し飲み込んだ赤司は、顔を上げて私を見た。
「……優姫」
「はい!!」
「明日もよろしく頼むよ」
珍しい赤司の言葉に、一瞬間をおき、私は渾身のガッツポーズを決めてみせた。
「よっしゃーっ!!赤司から三ツ星いただきましたーっ!!」
「三ツ星は出してなかっただろ」
「まゆゆーっ!食べて食べてーっ!」
「はいはい」
安心して食べ始めたバスケ部に満足しながら、私もテーブルについて早速食べることにした。ううん、やっぱり和食は最高だー!
「いやー、中学上がる前から両親いなくて、兄貴と二人暮らしでさー!兄貴は先生として働いてたから、必然的に私が食事当番だったんだよね!休日は兄貴にめちゃくちゃしごかれて、気がつけば色々作れるようになってて………あれ?!みんな空気暗くなってない?!なんで?!」
私の話を聞いたバスケ部員達が、突然暗い空気を作り始めたではないか。なぜだ。私おかしなこと言った?!あれ?!
あたふたしている私に、実渕先輩が申し訳なさそうにしていた。
「ごめんなさいね、優姫ちゃん。小太郎と永吉が無神経なこと言って…」
「え?!何のことですか?!」
「両親いなかったから、大変だったのよね…」
両親いなかった……あっ!!
「ごごごめんなさい!紛らわしい言い方しました!!死んでない死んでない!お父さんもお母さんも生きてるめっちゃ生きてるっす!」
「あ、あらっ?!そうなの?!」
「えっとですね、お父さんがカメラマンで、お母さんは自宅で出来る情報関係の仕事してまして。海外出張で数日暮らした場所が気に入っちゃって移住しちゃったんです」
「優姫ちゃんやお兄さんはついて行かなかったの?」
「はい。私小学校の時に腐女子になってたんすよ…」
「察したわ…」
そう、日本のサブカルと離れたくなくて駄々をこねたのだ。そんな私に、兄貴は「俺が面倒を見るから、残らせてほしい」と頼んでくれた。良いお兄ちゃんである。八割は帝王だけど。
「そういえば優姫ちゃんのお兄さんがいたんですってね!征ちゃんと黛さんは見たのよね?どんなひとだった?」
「ああ、背の高い人だったね」
「メガネ属性。彼女いそう」
「いやあれ鈍感だからいないよ。まぁ女性には優しいからモテるんだけどね…帝王だけど。帝王だけど。大事なことだから二回言った」
「そんなに?!そういえばパラソルのポールを突き刺したって聞いたわね…」
「なあなあ兄貴さんのすごいエピソードとかねーの?!」
兄貴の話かぁ。何があるだろうか。基本的には無表情、たまに極悪顏。口調も硬めで、おおよそのことは何でもできる。というか出来すぎる。あと謎のコミュニティがある。東京では兄貴の名前を知らない者はいないんじゃないかってくらい有名。
そこまで考えて、改めてなんて帝王なんだろうかと思わず遠い目をしてしまった。
「あ、じゃあこの間の話しますね。GWに東京帰った時に一緒に街歩いてたら変なのに絡まれたんです。輩が私に手を伸ばした時、兄貴はその手を捻り上げて『俺の妹に手を出そうとしたことを後悔させてやる。貴様ら全員、社会的に殺してやろう』って…。兄貴の手には、いつ手に入れたのか全くわかんないんだけど、輩達のプロフィールが書かれた紙の写メだった…」
「……」
「……」
「すっげ、マジ帝王じゃん」
「小太郎!シッ!」
葉山先輩の率直な感想に実渕先輩が咎めるけれど。そうです、うちの兄貴は帝王なのです。
引き続き遠い目をしていたら、真後ろにいた赤司が何やら顎に手を当てていた。
「優姫、ちなみにお兄さんの下の名前は?」
「へ?聡流だけど」
「聡流…中学の頃聞いた覚えがあるな。たしか近隣の不良高校に単独で乗り込んで壊滅させたとか」
「ぎゃあああああ!!」
「銀行強盗が彼の言葉だけで平伏したとか」
「いやあああああ!!」
「他にももごもご」
赤司の口を両手で塞いで喚くも、周囲は「kwsk」と言った顔で私達の方を見てくる。やめてくれ、やめてくれ。兄貴の悪評とはオサラバしたのだ。むしろそのために私は京都までやってきたのだ。なのに葉山先輩なんてキラキラした目で私を見るんですか?!
「何それめっちゃ気になる!赤司他には?!おい優姫ー!赤司放せよー!」
「嫌です放しません!!兄貴のとんでもエピソードは今後小出しにしていくので、それで勘弁してください!!」
「そんなにあるの?!すごいお兄さんなのね…」
「お前んちラノベ一家なの?」
まゆゆのツッコミのタイミングで、私は赤司に両手を掴まれた後「頭が高い」とヘッドロックをされたのだった。
「飲み物、買おう」
初日の疲れからか、ふと夜中に目が覚めた私は財布を持って静かに廊下に出た。静まり返る廊下を歩きながら、今日は色々あったなぁと振り返る。主に兄貴だ。まさか桐皇学園もうちと同じ所に合宿にくるなんて、予想外だった。
(兄貴の名前から離れるために京都まで来たんだけどなぁ)
京都でも結局兄貴の名前は消えることはなく、今もこうして兄貴の名前の下で生きている。私は、あの水瓶聡流の妹。帝王の妹。
「…あー…ネガティブだー私の根暗ー」
「夜中にぶつくさ独り言言ってんなよ。怪しいぞ」
ほぎゃあ、と悲鳴を上げそうになるが、どうにか喉の奥に押し込める。自販機の側のベンチに座って項垂れる私に声をかけてきたのは、まゆゆだ。
「おお…愛しのまゆゆ…」
「なんだそのテンション。つーか、お前ってとことんラノベみたいなことしてんな」
ホワッツ?ラノベみたいなことしてたっけ?
まゆゆが自販機でジュースを買うのを眺めながら、首を傾げてみる。うむ、何も思い浮かばない。
「で、何でネガティブになってんだよ」
隣に座らず、立ったままでまゆゆがそう核心をついてきた。思わず肩がびくりと揺れるが、なんとかいつも通りに笑ってみせる。
「兄貴の名前がでかいなーって物思いに耽ってたんだよー。ほら、兄貴って赤司も知ってるくらいだし、東京だと有名だったりしてさ!どこ行っても兄貴の名前を耳にするってやばくない?!兄貴マジ帝王!」
「そうか」
「京都来てもやっぱり兄貴の名前がついてくるし、兄貴の存在感ほんとやばいわー!」
「ああ」
私の大きな独り言に、まゆゆは素っ気ない相槌を打つ。第三者が聞けば冷たく感じる返答だけど、私にはそれでよかった。それだけで、なんだか気持ちが楽になった。そっか、私は誰かに聞いてほしかったのか。ただ、愚痴りたかったのか。それはそうだ、だって、いくら名前に振り回されても、私は兄貴のことが嫌いなわけじゃないんだから。
まゆゆと一緒にいると、不安がなくなっていく。まゆゆ、まゆゆ。やっぱり好きだなぁ。ねえ、まゆゆ。
「あーーーーまゆゆはどうしてまゆゆなのーーー…」
「そもそもまゆゆじゃねーよ。俺はアイドルかよ」
「まゆゆと赤司でユニット組んでアイドルやろうよ。ユニット名、俺の赤司がこんなに可愛い略して俺赤」
「ラノベのタイトルパクんな。あと毎回俺とあいつをくっつけようとすんな」
「まゆゆが丁寧にツッコミ入れてくれる…優しすぎか…」
「つーか、もう俺は寝る。お前も早く寝ろよ、優姫」
「おうよ!」
私ね、まゆゆに名前を呼ばれるのが、こんなに嬉しいものだったなんて知らなかったよ。
炊事当番によっておおよその下ごしらえを終えていたので、後から来た私は仕上げを任された。兄貴との二人暮らしで身につけた料理の腕前、とくとご覧あれ!と取り掛かったらみんなに「人は見かけによらない」と称された。何気に失礼である。
そして、完成した夕飯(和風仕立て)を食堂で披露すると、まず葉山先輩が第一声をあげた。こちらも何気に失礼である。
「私のイメージどうなってんすか?!えっ、もしかして私料理出来ないイメージ?!」
「待て待て。美味いかどうかが肝心だろ。よっし、ここは主将にいってもらおうぜ」
「それ毒味的な?!」
根武谷先輩も失礼である。というか、私のイメージェ…。
そして、根武谷先輩に指名された赤司は、とくに表情を変えないまま、いただきますと手を合わせた。いざ…お味は…!!
パクリ
「……」
「せ、征ちゃん…どう…?」
実渕先輩が不安そうに尋ねる。咀嚼し飲み込んだ赤司は、顔を上げて私を見た。
「……優姫」
「はい!!」
「明日もよろしく頼むよ」
珍しい赤司の言葉に、一瞬間をおき、私は渾身のガッツポーズを決めてみせた。
「よっしゃーっ!!赤司から三ツ星いただきましたーっ!!」
「三ツ星は出してなかっただろ」
「まゆゆーっ!食べて食べてーっ!」
「はいはい」
安心して食べ始めたバスケ部に満足しながら、私もテーブルについて早速食べることにした。ううん、やっぱり和食は最高だー!
「いやー、中学上がる前から両親いなくて、兄貴と二人暮らしでさー!兄貴は先生として働いてたから、必然的に私が食事当番だったんだよね!休日は兄貴にめちゃくちゃしごかれて、気がつけば色々作れるようになってて………あれ?!みんな空気暗くなってない?!なんで?!」
私の話を聞いたバスケ部員達が、突然暗い空気を作り始めたではないか。なぜだ。私おかしなこと言った?!あれ?!
あたふたしている私に、実渕先輩が申し訳なさそうにしていた。
「ごめんなさいね、優姫ちゃん。小太郎と永吉が無神経なこと言って…」
「え?!何のことですか?!」
「両親いなかったから、大変だったのよね…」
両親いなかった……あっ!!
「ごごごめんなさい!紛らわしい言い方しました!!死んでない死んでない!お父さんもお母さんも生きてるめっちゃ生きてるっす!」
「あ、あらっ?!そうなの?!」
「えっとですね、お父さんがカメラマンで、お母さんは自宅で出来る情報関係の仕事してまして。海外出張で数日暮らした場所が気に入っちゃって移住しちゃったんです」
「優姫ちゃんやお兄さんはついて行かなかったの?」
「はい。私小学校の時に腐女子になってたんすよ…」
「察したわ…」
そう、日本のサブカルと離れたくなくて駄々をこねたのだ。そんな私に、兄貴は「俺が面倒を見るから、残らせてほしい」と頼んでくれた。良いお兄ちゃんである。八割は帝王だけど。
「そういえば優姫ちゃんのお兄さんがいたんですってね!征ちゃんと黛さんは見たのよね?どんなひとだった?」
「ああ、背の高い人だったね」
「メガネ属性。彼女いそう」
「いやあれ鈍感だからいないよ。まぁ女性には優しいからモテるんだけどね…帝王だけど。帝王だけど。大事なことだから二回言った」
「そんなに?!そういえばパラソルのポールを突き刺したって聞いたわね…」
「なあなあ兄貴さんのすごいエピソードとかねーの?!」
兄貴の話かぁ。何があるだろうか。基本的には無表情、たまに極悪顏。口調も硬めで、おおよそのことは何でもできる。というか出来すぎる。あと謎のコミュニティがある。東京では兄貴の名前を知らない者はいないんじゃないかってくらい有名。
そこまで考えて、改めてなんて帝王なんだろうかと思わず遠い目をしてしまった。
「あ、じゃあこの間の話しますね。GWに東京帰った時に一緒に街歩いてたら変なのに絡まれたんです。輩が私に手を伸ばした時、兄貴はその手を捻り上げて『俺の妹に手を出そうとしたことを後悔させてやる。貴様ら全員、社会的に殺してやろう』って…。兄貴の手には、いつ手に入れたのか全くわかんないんだけど、輩達のプロフィールが書かれた紙の写メだった…」
「……」
「……」
「すっげ、マジ帝王じゃん」
「小太郎!シッ!」
葉山先輩の率直な感想に実渕先輩が咎めるけれど。そうです、うちの兄貴は帝王なのです。
引き続き遠い目をしていたら、真後ろにいた赤司が何やら顎に手を当てていた。
「優姫、ちなみにお兄さんの下の名前は?」
「へ?聡流だけど」
「聡流…中学の頃聞いた覚えがあるな。たしか近隣の不良高校に単独で乗り込んで壊滅させたとか」
「ぎゃあああああ!!」
「銀行強盗が彼の言葉だけで平伏したとか」
「いやあああああ!!」
「他にももごもご」
赤司の口を両手で塞いで喚くも、周囲は「kwsk」と言った顔で私達の方を見てくる。やめてくれ、やめてくれ。兄貴の悪評とはオサラバしたのだ。むしろそのために私は京都までやってきたのだ。なのに葉山先輩なんてキラキラした目で私を見るんですか?!
「何それめっちゃ気になる!赤司他には?!おい優姫ー!赤司放せよー!」
「嫌です放しません!!兄貴のとんでもエピソードは今後小出しにしていくので、それで勘弁してください!!」
「そんなにあるの?!すごいお兄さんなのね…」
「お前んちラノベ一家なの?」
まゆゆのツッコミのタイミングで、私は赤司に両手を掴まれた後「頭が高い」とヘッドロックをされたのだった。
「飲み物、買おう」
初日の疲れからか、ふと夜中に目が覚めた私は財布を持って静かに廊下に出た。静まり返る廊下を歩きながら、今日は色々あったなぁと振り返る。主に兄貴だ。まさか桐皇学園もうちと同じ所に合宿にくるなんて、予想外だった。
(兄貴の名前から離れるために京都まで来たんだけどなぁ)
京都でも結局兄貴の名前は消えることはなく、今もこうして兄貴の名前の下で生きている。私は、あの水瓶聡流の妹。帝王の妹。
「…あー…ネガティブだー私の根暗ー」
「夜中にぶつくさ独り言言ってんなよ。怪しいぞ」
ほぎゃあ、と悲鳴を上げそうになるが、どうにか喉の奥に押し込める。自販機の側のベンチに座って項垂れる私に声をかけてきたのは、まゆゆだ。
「おお…愛しのまゆゆ…」
「なんだそのテンション。つーか、お前ってとことんラノベみたいなことしてんな」
ホワッツ?ラノベみたいなことしてたっけ?
まゆゆが自販機でジュースを買うのを眺めながら、首を傾げてみる。うむ、何も思い浮かばない。
「で、何でネガティブになってんだよ」
隣に座らず、立ったままでまゆゆがそう核心をついてきた。思わず肩がびくりと揺れるが、なんとかいつも通りに笑ってみせる。
「兄貴の名前がでかいなーって物思いに耽ってたんだよー。ほら、兄貴って赤司も知ってるくらいだし、東京だと有名だったりしてさ!どこ行っても兄貴の名前を耳にするってやばくない?!兄貴マジ帝王!」
「そうか」
「京都来てもやっぱり兄貴の名前がついてくるし、兄貴の存在感ほんとやばいわー!」
「ああ」
私の大きな独り言に、まゆゆは素っ気ない相槌を打つ。第三者が聞けば冷たく感じる返答だけど、私にはそれでよかった。それだけで、なんだか気持ちが楽になった。そっか、私は誰かに聞いてほしかったのか。ただ、愚痴りたかったのか。それはそうだ、だって、いくら名前に振り回されても、私は兄貴のことが嫌いなわけじゃないんだから。
まゆゆと一緒にいると、不安がなくなっていく。まゆゆ、まゆゆ。やっぱり好きだなぁ。ねえ、まゆゆ。
「あーーーーまゆゆはどうしてまゆゆなのーーー…」
「そもそもまゆゆじゃねーよ。俺はアイドルかよ」
「まゆゆと赤司でユニット組んでアイドルやろうよ。ユニット名、俺の赤司がこんなに可愛い略して俺赤」
「ラノベのタイトルパクんな。あと毎回俺とあいつをくっつけようとすんな」
「まゆゆが丁寧にツッコミ入れてくれる…優しすぎか…」
「つーか、もう俺は寝る。お前も早く寝ろよ、優姫」
「おうよ!」
私ね、まゆゆに名前を呼ばれるのが、こんなに嬉しいものだったなんて知らなかったよ。