影法師にラブコール!(krk)※抜け番あり
DREAM
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「えっ、明日男バスのIH予選の応援に行くの?…赤司くんの応援?」
「赤司も応援しますけどメインはまゆゆですからね?」
女バスの主将さんとたまたま水場で遭遇して、勧誘を断りながら話の流れで応援に行くんだと言うとほう、と探るような目で見られた。主将さんは未だに私と赤司の関係を勘ぐっているらしい。解せぬ。ていうか、彼氏にするなら断然まゆゆで……あれ、私今なに想像して…。
「おい」
「ふひゃおうっ?!!」
突然背後から声をかけられて、私は廊下で大声を上げてしまった。周りの人達がめっちゃ見てくる。恥ずかしい。振り返ると、私に声をかけたのはまゆゆだった。
「ま、ままままゆゆっ?!!」
「驚きすぎだろ。昼食、今日も屋上来る気か?」
「行くよーっ!えっ今日は行っちゃダメ?!」
「いや、今日はバスケ部で集まって食堂に行くことになった。お前も来るなら食堂の方に来いよ、って言いたかっただけだ」
そうだったのか。聞いてなかったらそのままお弁当持って屋上に向かってた。良かった良かった。…あれ?私まゆゆと連絡先交換してるから、メールで送ってもらえたんじゃ?
「まゆゆ、そのことメールで送ってくれても大丈夫だったよ?私まゆゆからのメールなら是が非でも見るし」
「あー、俺もそう思ったけど、お前の姿見たらつい声かけちまった。それだけ」
じゃーな、とまゆゆは去っていった。残された私を見て、隣にいた主将さんはニヤニヤと笑う。
「なるほどね。水瓶さん、本当に黛くんのこと好きなのね」
本当にとはどういう意味だ。と、顔を真っ赤にしてしゃがみ込んで動悸のする胸を押さえる私には言う余裕もなかった。
昼休憩の時間になると、私は赤司について行き食堂へ向かった。既に先輩方は席を確保していて、こっちこっちと手招きをしてくれている。後輩が席取りしなきゃいけないのに、申し訳ない。しかも私の分の席まで取っておいてくれているようだ。
「黛さんから聞いて、優姫ちゃんの席取っておいたわよ!座って座って!」
「ありがとうございます実渕先輩!まゆゆの隣いただきます!!うへへーまゆゆの隣ー!」
「はいはい」
まゆゆが呆れた顔をしてるけど私のテンションはクライマックス!まゆゆと初めての学食ヒャッホー!!
「それにしても赤司すげーなー!お前が食堂来た瞬間話し声途絶えたもんな」
すでに半分は食べ終えていた葉山先輩が、赤司を見てニヤニヤと笑った。今はもう食堂は賑やかさを取り戻しつつあるけど、たしかにあの謎の静寂は隣にいた私も気まずかった。赤司、恐るべし。そういえば赤司はこの間の生徒会選挙で異例の一年生徒会長となりました。ハイスペックすぎかよーーー。
リアル二次元キャラの存在に感嘆していたら、赤司の隣に座っていた根武谷先輩が牛丼を頬張りながら「そういえば」と切り出した。
「赤司って二年の間でも人気あるよな。クールで素敵だとよ」
「クールでww素敵wwwっていひゃいいひゃい赤司頬が千切れる冗談抜きで千切れるからああ!!」
「征ちゃんって優姫ちゃんには紳士じゃないわよねえ」
「僕は無駄な労力は使わない主義でね」
「無駄!私への紳士対応は無駄な労力!!よろしいならば戦争だ!!」
「よそでやれ」
うわーん!まゆゆ冷たい!でもそこがイイ!
まゆゆのツンツンににやけている間に、実渕先輩が隣の赤司に話しかけていた。
「そういえば、征ちゃん。夏合宿のスケジュールはもう決まってるの?」
「ああ、もうホテルは期間中貸し切ってあるよ」
夏合宿?!ホテル?!貸切?!
とんでもない爆弾に私は思わずガタッと立ち上がる。隣でまゆゆが「座ってろ」ととても良い返しをくれた。ありがとうまゆゆ。しかし座ってはいられない。
「夏合宿私も参加できる?!」
「トレーナーだからね」
「やったあああ合宿うううう!!あっ私の部屋は当然まゆゆと」
「一緒にするわけがないだろう」
「あいたたた手首曲がる手首曲がる!!」
「あーあ、残念だったな」
「ぶん殴るぞ根武谷」
「あら過激ね」
「あっ、なら夜こっそり優姫の部屋に忍び込んだら?ほらあれ、夜這…あいたぁ!!」
赤司に手首を掴まれて捻られている最中、何やら話をしていた葉山先輩がまゆゆに頭を叩かれていた。何があったか詳しく!詳しく!!
洛山男子バスケ部、IH予選突破。
祝勝会も盛大に行い、待ちに待った夏休みが始まった。学校が用意してくれたバスで合宿先まで向かうことはや数時間。
到着した先は、見渡す限り海、海、海!そう、合宿先は海の近くのスポーツ施設だったのです!
思わず走り出しそうになった私に足をかけ転ばせた赤司は、猫を捕まえるかのごとく私の襟首を掴んでそのまま歩き始めた。
「練習は午後三時から行う。それまでは各自荷物を置いて体を休めるか、動く気力のある者は施設の見学をしていてくれ」
「りょーかーい!なあ永ちゃん、ジムあるっぽいから見に行こうぜ!」
「お、いいな」
「アタシは征ちゃんとメニューについて話をしようかしら」
「ああ、頼むよ玲央」
「すみませんそろそろ首締まる…離してください…しぬ…」
ホテルに到着し、各々割り当てられた部屋へ荷物を運びに向かい出す頃、やっと解放してもらえた。ぐたっ、とロビーのソファに項垂れたら、赤司に謎の紙を渡された。なんぞこれ。
「お前の練習メニュー表だ。今回の合宿ではほぼメインに組み込んである。潰れるなよ」
「鬼か!鬼なのか赤司は!!メインったって私何すりゃきいのさ?!」
「今後IH、WCと障害になるのはキセキ獲得校だ。そのために、真太郎と同一プレイヤーの素質があるお前を練習相手として、まずは真太郎対策を行う」
「真太郎…ああ、緑間くんね。…みどっちでいいか」
「また適当なあだ名つけたな」
まゆゆの言葉に赤司は呆れ顔で頷いて、それからもう一つとまた紙を渡された。なんぞこれ。
「…不躾な質問なんだが」
「ほい?」
「包丁の存在は知ってるか?」
「そんな質問初めてされたんだけど。…あ、なるほど、ホテル貸し切る代わりに食事は各自で作るんだね。人数めっちゃ多!いや作れるけど、手料理にトラウマがあるの?」
「少し、ね。出来るのなら良いんだ。出来るのなら…丸ごと鍋に突っ込んだりしないのなら良いんだ」
「その話詳しく」
珍しく遠い目をした赤司から事情を聞いてみると、どうやら中学の時のマネージャーの女の子の料理が壊滅的にダメだったらしい。チームメイトの何人かは倒れたのだとか。それってキセキの世代だよね?キセキの世代を倒す(料理)とか何者なの…。
キセキのマネージャーに思いを馳せながら、合宿1日目が始まった。まずは浜辺でランニング。トレーナーの私も男子について同じように走る。体力はある方だと自負していたが、レギュラー陣にはまだまだ到底及ばないことがわかり、軽く凹んだ。
「私、もっと、頑張る」
「喋ると体力減るぞ」
「まゆゆ、服を、脱げ」
「ダメだこいつ早くなんとかしないと。…っておい!前見ろ!」
あまりの暑さと疲れで目を回していたら、目の前にいた人物に気づかず顔面からぶつかってしまった。鼻を打った。痛い。
「おい、大丈夫か」
「ひゃい、すみません」
「こらーーー!!青峰くーーん!!」
「げ」
ぶつかった相手に謝っていたら、どこからか女の子の怒る声と砂浜をかける足音が聞こえてそちらに目線を移す。おお、美少女だ。水着の上にパーカーを羽織っているが、胸がものすごく強調されている。巨乳美少女だ。
ん?青峰?最近どこかで聞いたような。
「練習サボって女の子のナンパ?!」
「してねーよ!ぶつかっただけだ!」
「あっ、そうそう。ぶつかっただけ。ていうかナンパとか生まれてこの方されたことないから」
泣いてないし。これは心の汗だし。と言いながら内心凹む。ナンパとか、一回くらいされてみたいわ。ちくしょうめ。
青峰と呼ばれたガングロは私をじっと見て、それからああ、と納得したように頷いた。
「胸はそこそこあるのに、なんか普通だしな」
「なんか!!普通!!失礼すぎか!!」
「胸はあるんだから誇れよ」
と、視線が胸に向かったところで、ふと私の前に大きな背中が。悲しみに打ちひしがれながら見上げると、まゆゆが私の前に立ち、青峰と向かい合っていた。
「彼女連れでナンパすんな」
「彼女じゃないです!!」
まゆゆの言葉に否定の声をあげた美少女の顔は真っ赤だ。ほほう、青春ですなぁ。によによ。
「やあ、大輝、さつき。相変わらず元気そうだね」
「げぇ、赤司」
「赤司くん!久しぶりだね」
騒ぎに気づいたのか、赤司もやってきた。他の部員達はぞろぞろと施設の方は向かっていくので、インターバルに入ったようだ。
って、赤司と知り合い?青峰大輝…青峰…あっこの間部室の掃除してる時に見つけた月バスキセキの世代特集で見た!!
「キセキの世代の青峰!」
「あ?知ってんのか?」
「そんでこちらは敏腕マネージャー桃井様!!」
「おいなんでさつきには様ついてんだ」
「赤司くんがいるってことは、もしかして洛山もここに合宿に来てるの?」
「ああ、そこのスポーツ施設を借りてるんだ。彼女は部のトレーナーをしている。優姫」
ほら、自己紹介しろよと言わんばかりにニッコリ微笑まれ、赤司の態度にこのやろうと思いながらも青峰と桃井様に挨拶をすることにした。
「洛山一年、ワケあってトレーナー!な水瓶優姫です!いやー、キセキの世代の一人とそのマネージャーに会えるなんてめっちゃ嬉しいー!」
「私は桐皇学園のバスケ部マネージャーの桃井さつきです。優姫ちゃんって呼んでもいい?」
「やたー!!私もさつきちゃんって呼ぶー!!美少女と友達になったよまゆゆ!!」
「俺に振るな」
「それから、こっちは青峰大輝。よく部活サボるからすっごく困ってるの!今日も先生がいなかったら合宿来なかったもんね」
「あのセンコー、マジで何なんだよ…」
そっかそっか、青峰は怖い先生に脅されて合宿来てるのか。ふむふむ。…ん?桐皇学園って言った?ん?桐皇学園って、ものすごく聞き覚えあるなあ私。
「大輝に言うことを聞かせられる先生がいるなんて驚きだな。どんな先生なんだい?」
「えっとね…あ、今こっちに向かって来てる人!先生ー!青峰くん捕まえましたー!」
赤司が尋ねたタイミングで、ちょうど青峰とさつきちゃんの後ろからやってきた桐皇の怖い先生。黒のワイシャツに、黒のズボン、メガネをかけた背の高い男の人。クッソ暑そうな格好で、とてもカタギには見えないけど何故かモデルのようにも見えるスタイルの良さ。
うん、あれ、うちの兄貴だ。
「まさかこんなところで会うとは思わなかった。…なあ、優姫?」
「ぴぎゃーーーー!!!」
本当に私と血が繋がってるのかって不思議に思うくらい整った顔立ちに、相変わらずの美声の兄貴は私を見て微笑んだ。アレは、怒ってる時の微笑みだ。背中に帝王オーラが見える。思わず悲鳴をあげて、全力で走り出すが。
ドスッ
「……」
「人の顔を見て悲鳴をあげた上に逃げ出すとは、いい度胸だな」
俺と少し話をしようか、と兄貴は再度ニコリと微笑む。詰んだ。ていうかなんでここにいるのさ。ああ、桐皇学園バスケ部の合宿だからか。いやいや兄貴、保健室の先生じゃん。来ちゃダメじゃん。
そう、うちの兄貴は桐皇学園の保健室の先生をしているのだ。
今、BGMはドナドナが流れているに違いない。私は道を遮るように兄貴が私の前に突き立てたビーチパラソルのポールを見ながら心で涙を流した。
「赤司も応援しますけどメインはまゆゆですからね?」
女バスの主将さんとたまたま水場で遭遇して、勧誘を断りながら話の流れで応援に行くんだと言うとほう、と探るような目で見られた。主将さんは未だに私と赤司の関係を勘ぐっているらしい。解せぬ。ていうか、彼氏にするなら断然まゆゆで……あれ、私今なに想像して…。
「おい」
「ふひゃおうっ?!!」
突然背後から声をかけられて、私は廊下で大声を上げてしまった。周りの人達がめっちゃ見てくる。恥ずかしい。振り返ると、私に声をかけたのはまゆゆだった。
「ま、ままままゆゆっ?!!」
「驚きすぎだろ。昼食、今日も屋上来る気か?」
「行くよーっ!えっ今日は行っちゃダメ?!」
「いや、今日はバスケ部で集まって食堂に行くことになった。お前も来るなら食堂の方に来いよ、って言いたかっただけだ」
そうだったのか。聞いてなかったらそのままお弁当持って屋上に向かってた。良かった良かった。…あれ?私まゆゆと連絡先交換してるから、メールで送ってもらえたんじゃ?
「まゆゆ、そのことメールで送ってくれても大丈夫だったよ?私まゆゆからのメールなら是が非でも見るし」
「あー、俺もそう思ったけど、お前の姿見たらつい声かけちまった。それだけ」
じゃーな、とまゆゆは去っていった。残された私を見て、隣にいた主将さんはニヤニヤと笑う。
「なるほどね。水瓶さん、本当に黛くんのこと好きなのね」
本当にとはどういう意味だ。と、顔を真っ赤にしてしゃがみ込んで動悸のする胸を押さえる私には言う余裕もなかった。
昼休憩の時間になると、私は赤司について行き食堂へ向かった。既に先輩方は席を確保していて、こっちこっちと手招きをしてくれている。後輩が席取りしなきゃいけないのに、申し訳ない。しかも私の分の席まで取っておいてくれているようだ。
「黛さんから聞いて、優姫ちゃんの席取っておいたわよ!座って座って!」
「ありがとうございます実渕先輩!まゆゆの隣いただきます!!うへへーまゆゆの隣ー!」
「はいはい」
まゆゆが呆れた顔をしてるけど私のテンションはクライマックス!まゆゆと初めての学食ヒャッホー!!
「それにしても赤司すげーなー!お前が食堂来た瞬間話し声途絶えたもんな」
すでに半分は食べ終えていた葉山先輩が、赤司を見てニヤニヤと笑った。今はもう食堂は賑やかさを取り戻しつつあるけど、たしかにあの謎の静寂は隣にいた私も気まずかった。赤司、恐るべし。そういえば赤司はこの間の生徒会選挙で異例の一年生徒会長となりました。ハイスペックすぎかよーーー。
リアル二次元キャラの存在に感嘆していたら、赤司の隣に座っていた根武谷先輩が牛丼を頬張りながら「そういえば」と切り出した。
「赤司って二年の間でも人気あるよな。クールで素敵だとよ」
「クールでww素敵wwwっていひゃいいひゃい赤司頬が千切れる冗談抜きで千切れるからああ!!」
「征ちゃんって優姫ちゃんには紳士じゃないわよねえ」
「僕は無駄な労力は使わない主義でね」
「無駄!私への紳士対応は無駄な労力!!よろしいならば戦争だ!!」
「よそでやれ」
うわーん!まゆゆ冷たい!でもそこがイイ!
まゆゆのツンツンににやけている間に、実渕先輩が隣の赤司に話しかけていた。
「そういえば、征ちゃん。夏合宿のスケジュールはもう決まってるの?」
「ああ、もうホテルは期間中貸し切ってあるよ」
夏合宿?!ホテル?!貸切?!
とんでもない爆弾に私は思わずガタッと立ち上がる。隣でまゆゆが「座ってろ」ととても良い返しをくれた。ありがとうまゆゆ。しかし座ってはいられない。
「夏合宿私も参加できる?!」
「トレーナーだからね」
「やったあああ合宿うううう!!あっ私の部屋は当然まゆゆと」
「一緒にするわけがないだろう」
「あいたたた手首曲がる手首曲がる!!」
「あーあ、残念だったな」
「ぶん殴るぞ根武谷」
「あら過激ね」
「あっ、なら夜こっそり優姫の部屋に忍び込んだら?ほらあれ、夜這…あいたぁ!!」
赤司に手首を掴まれて捻られている最中、何やら話をしていた葉山先輩がまゆゆに頭を叩かれていた。何があったか詳しく!詳しく!!
洛山男子バスケ部、IH予選突破。
祝勝会も盛大に行い、待ちに待った夏休みが始まった。学校が用意してくれたバスで合宿先まで向かうことはや数時間。
到着した先は、見渡す限り海、海、海!そう、合宿先は海の近くのスポーツ施設だったのです!
思わず走り出しそうになった私に足をかけ転ばせた赤司は、猫を捕まえるかのごとく私の襟首を掴んでそのまま歩き始めた。
「練習は午後三時から行う。それまでは各自荷物を置いて体を休めるか、動く気力のある者は施設の見学をしていてくれ」
「りょーかーい!なあ永ちゃん、ジムあるっぽいから見に行こうぜ!」
「お、いいな」
「アタシは征ちゃんとメニューについて話をしようかしら」
「ああ、頼むよ玲央」
「すみませんそろそろ首締まる…離してください…しぬ…」
ホテルに到着し、各々割り当てられた部屋へ荷物を運びに向かい出す頃、やっと解放してもらえた。ぐたっ、とロビーのソファに項垂れたら、赤司に謎の紙を渡された。なんぞこれ。
「お前の練習メニュー表だ。今回の合宿ではほぼメインに組み込んである。潰れるなよ」
「鬼か!鬼なのか赤司は!!メインったって私何すりゃきいのさ?!」
「今後IH、WCと障害になるのはキセキ獲得校だ。そのために、真太郎と同一プレイヤーの素質があるお前を練習相手として、まずは真太郎対策を行う」
「真太郎…ああ、緑間くんね。…みどっちでいいか」
「また適当なあだ名つけたな」
まゆゆの言葉に赤司は呆れ顔で頷いて、それからもう一つとまた紙を渡された。なんぞこれ。
「…不躾な質問なんだが」
「ほい?」
「包丁の存在は知ってるか?」
「そんな質問初めてされたんだけど。…あ、なるほど、ホテル貸し切る代わりに食事は各自で作るんだね。人数めっちゃ多!いや作れるけど、手料理にトラウマがあるの?」
「少し、ね。出来るのなら良いんだ。出来るのなら…丸ごと鍋に突っ込んだりしないのなら良いんだ」
「その話詳しく」
珍しく遠い目をした赤司から事情を聞いてみると、どうやら中学の時のマネージャーの女の子の料理が壊滅的にダメだったらしい。チームメイトの何人かは倒れたのだとか。それってキセキの世代だよね?キセキの世代を倒す(料理)とか何者なの…。
キセキのマネージャーに思いを馳せながら、合宿1日目が始まった。まずは浜辺でランニング。トレーナーの私も男子について同じように走る。体力はある方だと自負していたが、レギュラー陣にはまだまだ到底及ばないことがわかり、軽く凹んだ。
「私、もっと、頑張る」
「喋ると体力減るぞ」
「まゆゆ、服を、脱げ」
「ダメだこいつ早くなんとかしないと。…っておい!前見ろ!」
あまりの暑さと疲れで目を回していたら、目の前にいた人物に気づかず顔面からぶつかってしまった。鼻を打った。痛い。
「おい、大丈夫か」
「ひゃい、すみません」
「こらーーー!!青峰くーーん!!」
「げ」
ぶつかった相手に謝っていたら、どこからか女の子の怒る声と砂浜をかける足音が聞こえてそちらに目線を移す。おお、美少女だ。水着の上にパーカーを羽織っているが、胸がものすごく強調されている。巨乳美少女だ。
ん?青峰?最近どこかで聞いたような。
「練習サボって女の子のナンパ?!」
「してねーよ!ぶつかっただけだ!」
「あっ、そうそう。ぶつかっただけ。ていうかナンパとか生まれてこの方されたことないから」
泣いてないし。これは心の汗だし。と言いながら内心凹む。ナンパとか、一回くらいされてみたいわ。ちくしょうめ。
青峰と呼ばれたガングロは私をじっと見て、それからああ、と納得したように頷いた。
「胸はそこそこあるのに、なんか普通だしな」
「なんか!!普通!!失礼すぎか!!」
「胸はあるんだから誇れよ」
と、視線が胸に向かったところで、ふと私の前に大きな背中が。悲しみに打ちひしがれながら見上げると、まゆゆが私の前に立ち、青峰と向かい合っていた。
「彼女連れでナンパすんな」
「彼女じゃないです!!」
まゆゆの言葉に否定の声をあげた美少女の顔は真っ赤だ。ほほう、青春ですなぁ。によによ。
「やあ、大輝、さつき。相変わらず元気そうだね」
「げぇ、赤司」
「赤司くん!久しぶりだね」
騒ぎに気づいたのか、赤司もやってきた。他の部員達はぞろぞろと施設の方は向かっていくので、インターバルに入ったようだ。
って、赤司と知り合い?青峰大輝…青峰…あっこの間部室の掃除してる時に見つけた月バスキセキの世代特集で見た!!
「キセキの世代の青峰!」
「あ?知ってんのか?」
「そんでこちらは敏腕マネージャー桃井様!!」
「おいなんでさつきには様ついてんだ」
「赤司くんがいるってことは、もしかして洛山もここに合宿に来てるの?」
「ああ、そこのスポーツ施設を借りてるんだ。彼女は部のトレーナーをしている。優姫」
ほら、自己紹介しろよと言わんばかりにニッコリ微笑まれ、赤司の態度にこのやろうと思いながらも青峰と桃井様に挨拶をすることにした。
「洛山一年、ワケあってトレーナー!な水瓶優姫です!いやー、キセキの世代の一人とそのマネージャーに会えるなんてめっちゃ嬉しいー!」
「私は桐皇学園のバスケ部マネージャーの桃井さつきです。優姫ちゃんって呼んでもいい?」
「やたー!!私もさつきちゃんって呼ぶー!!美少女と友達になったよまゆゆ!!」
「俺に振るな」
「それから、こっちは青峰大輝。よく部活サボるからすっごく困ってるの!今日も先生がいなかったら合宿来なかったもんね」
「あのセンコー、マジで何なんだよ…」
そっかそっか、青峰は怖い先生に脅されて合宿来てるのか。ふむふむ。…ん?桐皇学園って言った?ん?桐皇学園って、ものすごく聞き覚えあるなあ私。
「大輝に言うことを聞かせられる先生がいるなんて驚きだな。どんな先生なんだい?」
「えっとね…あ、今こっちに向かって来てる人!先生ー!青峰くん捕まえましたー!」
赤司が尋ねたタイミングで、ちょうど青峰とさつきちゃんの後ろからやってきた桐皇の怖い先生。黒のワイシャツに、黒のズボン、メガネをかけた背の高い男の人。クッソ暑そうな格好で、とてもカタギには見えないけど何故かモデルのようにも見えるスタイルの良さ。
うん、あれ、うちの兄貴だ。
「まさかこんなところで会うとは思わなかった。…なあ、優姫?」
「ぴぎゃーーーー!!!」
本当に私と血が繋がってるのかって不思議に思うくらい整った顔立ちに、相変わらずの美声の兄貴は私を見て微笑んだ。アレは、怒ってる時の微笑みだ。背中に帝王オーラが見える。思わず悲鳴をあげて、全力で走り出すが。
ドスッ
「……」
「人の顔を見て悲鳴をあげた上に逃げ出すとは、いい度胸だな」
俺と少し話をしようか、と兄貴は再度ニコリと微笑む。詰んだ。ていうかなんでここにいるのさ。ああ、桐皇学園バスケ部の合宿だからか。いやいや兄貴、保健室の先生じゃん。来ちゃダメじゃん。
そう、うちの兄貴は桐皇学園の保健室の先生をしているのだ。
今、BGMはドナドナが流れているに違いない。私は道を遮るように兄貴が私の前に突き立てたビーチパラソルのポールを見ながら心で涙を流した。