影法師にラブコール!(krk)※抜け番あり
DREAM
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今日は洛山高校の入学式だ。
私、水瓶優姫は今日から洛山高校一年生である。
元々東京に住んでいた私が、何故京都の学校へと進学を決めたのかというと。
もちろん理由は、我が兄にある。
《優姫のお兄さん、桐皇で先生やってるんでしょ?!じゃあ、やっぱ進学先は桐皇よね!》
《あんなに素敵なお兄さんがいるなんて羨ましいー!》
《そういえば、関東の高校で優姫のこと話題になってるんだって》
《あの水瓶の妹が、どこに進学するのか!ってね!》
『そんな珍獣扱いイヤだーーーーー!!!』
半泣きで兄貴を猛説得し、どうにかこうにか近過ぎず遠過ぎない京都の洛山高校への進学の許可を得た。大変だった。兄貴はどんな伝を使ったのか洛山の新入生と在学生を全て調べ上げ、これなら大丈夫だろうと謎のファイルを机に並べられた時はどうしようかと思った。わりとマジで。
ともあれ、私はなんとかこの高校へ進学することができた。入学式を終えたら部活探しだ。
「わっ」
「!」
うふふ、とにやけながら歩いていたら、前にいた人とぶつかってしまった。バサリとその人が手にしていたであろう本が落ちる。しまった、初日からやらかした。
「ごっごめんなさい!本が………」
拾った本は、ラノベでした。
しかも、これ読んだことある。めっちゃ面白かった。りんごちゃん可愛かった。
「…いや、気にするな」
そして、とても良い声。顔を上げると、そこには儚い系イケメンがいました。頭の中でファンファーレが鳴っている。
あ、運命だ。これは、この出会いは、運命の出会いだ。直感でそう思った。
ラノベを読んでて、イケメンで、良い声で。
「好きです結婚してください」
「何言ってんだこいつ」
そして、なんて素晴らしいツッコミなんだろう!!
「次、水瓶」
入学式も終わり、各クラスにて自己紹介が行われた。先生に指名され、私はスクッと立ち上がって元気良く挨拶をする。第一印象は大事だ。
「水瓶優姫です!中学では剣道部に入ってたので、高校でも入ろうと思ってます!」
「ん?水瓶、うちの剣道部は部員数足りてなくて去年廃部したぞ?」
「なんですと?!!えっ私聞いてないんですけど!!えっマジで?!」
「他の部活探せよー。それじゃ次ー」
「次行かないで先生!!詳しく!その辺かなり重要だから詳しく!!」
「次は、赤司だな」
「私の話聞きましょーよ先生!!」
ちょっとクラスメイトたちよ、笑い事じゃないのだけど!!ああもう、次の赤司くん立ち上がって挨拶する気満々だよ!!
しぶしぶ席に座り、あとで職員室に行こうと唸っていたら、赤司くんの挨拶が始まった。そこでやっと、私は赤司くんの姿を見た。
「赤司征十郎です。部活はバスケ部です。よろしくお願いします」
おお、これはなんという、美少年。赤髪がキラキラしている。声も良い。あ、お気づきかと思うが私はわりと声フェチだ。
あれ、そういえば新入生代表挨拶してなかったか?眠たすぎてうろ覚えだ。ごめんよ赤司くん。
隣の席の赤司くんは綺麗なお辞儀をして、着席した。その無駄のない動きにクラスメイト全員、何故か先生まで見惚れていた。
なお、私はといえば内心、
(受け…うん、受けだ…)
などと思っている腐女子であった。
自己紹介が終わり、教科書配布も終われば後は部活動の勧誘の時間だ。外を歩けば部活動勧誘がはじまる。が、私はまず職員室へと向かった。
「先生ー!剣道部廃部ってマジですか?!」
「水瓶、うるさい」
「すみません!」
先生にペコッと優しめなハリセンをくらい、素直に謝る。それから先生に剣道部の話を聞いた。ふむふむ、つまり。
「去年部員数がとうとう規定ライン以下になってな。剣道部は廃部になったんだ。それを知った他校の先生が校長に掛け合ってくれたんだが、人数がいないことには部活動として成り立たないからなあ」
「年末に来校された眼鏡の先生ですよね!すっごくかっこ良かった!」
「たしか東京の学校だったか。他校だというのに、あんなに教育熱心な先生がいるなんて…教師の鑑だな」
(兄貴だーーー!!それうちの兄貴だーーー!!)
どんだけ過保護なん…でも、私のためにそこまでしてくれたんだね…あとで電話してお礼を言っておこう…。
「あっ!」
「げっ」
「今げって言った?!!」
仕方ないので部活見学をしようと体育館へに向かっていたら、朝出会った儚い系イケメンと遭遇した。あの後何故か姿を見失うという不思議現象があり、名前を聞きそびれた…と落ち込んだけれど、また出会うなんて!肩から大きな鞄を下げている。アレは運動部の荷物だ。
「初めまして!私、一年の水瓶優姫っていいます!名前を教えてください!」
「知らない奴に名前を教えるわけにはいかないので」
「名乗ったよね?!私今名乗ったよね?!」
教えてー教えてー!と服を引っ張って抗議したら、物凄く嫌そうなオーラを出しながらボソリと名乗ってくれた。
「…三年、黛千尋」
「先輩だった!!!」
「何年生だと思ってたんだお前」
「いや、二年かな、なんて…。あっまゆゆはラノベ好きなの?!」
「今年の一年は先輩敬うって言葉知らねーのか」
「私もラノベ好きなんだ!!ちなみに私のオススメは天国に涙はエトセトラなんだけど、まゆゆ知ってる?」
黛千尋さん、もとい今ピンときたあだ名、まゆゆは私がオススメしたラノベ作品名を聞いて、雰囲気を和らげた。それから、フッと笑う。
あ、綺麗な笑顔だ。ふとそう思った。
「全巻読破済みだ」
「!!や、やっと仲間が…話ができる仲間が…!!」
「っておい、仲間認定するな」
「私、ずっと話の合う仲間が欲しかったんです!!まゆゆ、私と友達になってください!!」
バッと手を出して、握手を求める。握手してくれなくてもいい、話が合う仲間、友達が出来れば、それだけで嬉しい。中学までの友達だって、大切な友達だけど、なぜか、黛さん、まゆゆとは仲良くなりたかった。友達になりたかったんだ。
「…ダメ、ですか、やっぱり」
一向に握手が返ってこない。顔を上げるのが怖くて、俯いたまま、ボソボソと聞いてみる。あれ、もしかして、朝みたいにまたどこかへ行ってしまったんだろうか。そう思ったら、ますます顔を上げられない。
「…いや、なんていうか…」
ポフ、と頭に、手が乗った。ポフ、ポフ。
「面と向かって友達になってほしいなんて言われたの初めてだから、むず痒い」
「えっと…」
「うるさくしないなら、まあ友達とやらになってもいいぞ」
じゃあな、とまゆゆは最後に私の頭をくしゃりと撫でて、歩いて行ってしまった。残された私は、撫でられた頭を押さえて、呆然としたままその後ろ姿を見つめていた。
兄貴が私を撫でた時と違う、あの優しい手は、瞳は、すごく、ドキドキする。顔が熱い。あれ、おかしいな。風邪でも引いたんだろうか。
「あれ、あれ?」
発熱の原因がわからないまま、私はしばらくその場に立ち尽くしていた。