影法師にラブコール!(krk)※抜け番あり
DREAM
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激しい戦いが終わり、まゆゆのためのパーティーも盛大にはしゃいで。
そして年末年始は部活動はお休みで、私は自室のベッドでごろごろとしていた。
というのも、本当はこの冬休みを兄貴のところへ戻ろうと思っていたら、どうやら桐皇学園男子バスケ部と初詣に行くことになったらしく、珍しく申し訳なさげに連絡を貰ったからだ。どこか他人に無関心な兄貴が誰かと過ごすというのが嬉しくて、大手を振って了承したのだけど、問題は私の方にあった。
予定が、何もない。冬だから寒くて布団から出るのも億劫だし、応援だけだった私ですらめちゃくちゃ疲労していることを考えると、試合に出ていたみんなはもっと疲労困憊しているはずだ。せっかくの部活休み、ゆっくり休みたいはず。
けど、私だってできれば洛山バスケ部のみんなと初詣に行きたいと思っている。そんなみんなを誘って良いものか悶々としていた。
「というわけで、どうしたらいいと思う?」
「ふざけんなよ。バスケしようって言ってたやつが、最初にかけた電話の内容がそんなつまんねーことだとか、マジふざけんな。しね。本気でしね」
罵倒しつつも、電話を切らないで聞いてくれた灰崎は、もしや良い奴だったりするのだろうか。
携帯を確認したらちゃっかり登録されていた灰崎のアドレスに、この悶々とした感情を吐露すべく電話をかけたら出てくれたから、全部話したら罵倒された。それから、深い深い溜息が電話の向こうから聞こえる。
「つーか、誘いたきゃ誘えよ。どうせ思いつきでべらべら喋るタイプだろ、てめえ」
「ぐはっ…」
「そんで周りが苦労してるんだろーなァ。簡単に想像できるわ。赤司の苦労も目に見えるわ」
「ぐぬう…」
知り合って間もない灰崎に、そこまで見抜かれるとか!と携帯を握りしめて唸っていたら、また深い溜息が聞こえた。
「だから、今更気にする必要ねえだろ。馬鹿か?」
「!ショーゴくん…」
「その呼び方はやめろっつってんだろ!!」
ものすごく雑な言葉だったけど、今の私の背中を押すには十分な言葉だった。よしっと覚悟を決めて、私は相談に乗ってくれた灰崎にお礼を言う。
「灰崎、ありがとね」
「お礼とかきもちわりい」
「でも氷室さんとアレックスさんにしたことは許してないし、早めに謝罪してよね。あと虹村さんとのなれ初めと発展とその他諸々聞きたい…ってあーっ!!電話切った!!」
さて、気を取り直して。
とりあえず、電話で頼むと向こうが断りにくいだろうから、メールで一斉送信してみよう。誰か一人くらい、誘いに乗ってくれれば嬉しいけど。
「えーと…明日、一緒に初詣に行きませんか。暇で死にそうです、と。あ、送信しちゃった。最後の暇で~のくだりいらなかったかも…」
ベッドで仰向けになって、メールの送信が終わった携帯を見つめる。とりあえず、まゆゆと赤司と葉山先輩と実渕先輩と根武谷先輩と樋口先輩に送ってみたんだけど、どうかな。返事、いつ返ってくるかな。
期待と不安でまた悶々としそうになって、「そうだ!!編み物しよう!!」と気持ちを落ち着かせるために毛糸と編み針を持ってきて、黙々と編んでいく。裁縫が苦手な兄と違って、わりと得意な私は気がつけばひよこを作っていた。せっかくなので、まゆゆみたいなひよこにしよう。目は死んでて、ラノベも持たせて…よし完璧だ!
ふと、携帯を見たら光っていた。どうやら返事をもらっていたらしい。ドキドキしながらメール受信画面を開く。すると、なんと全員から返事が返ってきていた。おお、みんな速い。まずは一番最初に返ってきてる葉山先輩から見てみよう。
『いいぜ!オレも超暇!!遊びに行きたい!!』
「葉山先輩…!!全くの同感です!!」
次に届いていたのは、実渕先輩。
『私もみんなで行きたいって思っていたところよ。ぜひ一緒に行きましょう♪あと私もショッピング行こう思ってたらお店閉まってて暇になったところなの…』
「oh…それは残念でしたね、実渕先輩…」
次は、というか実渕先輩とほぼ同タイミングで返信をくれていたのは根武谷先輩。
『おー、いいぜ。暇?なら一緒に筋トレするか?』
「根武谷先輩、暇だと筋トレしてるんですか?!」
そして樋口先輩からの返信は残念ながら家族と旅行に出るから、というお断りの内容だった。文中でものすごく申し訳なさそうだったから、逆にこっちの方が申し訳ない気持ちになった。ほんとに気にしないでくださいね樋口先輩!お土産楽しみにしてます!
それから最後は赤司とまゆゆからだ。
『構わないよ。ちょうどオレも実家に戻る予定がなくなったところなんだ。それから、暇、と言ったね。つまり、冬休みの課題はすべて終わっている、ということかな?』
「ひえ…っ」
あ、赤司のメールは見なかったことにしよう!!よしまゆゆのメールだ!
『別に構わない』
「そっけない!!さすがまゆゆそっけない!!そこに痺れる憧れるう!!」
でも、これでみんなと初詣の約束ができた。嬉しいなあと思っていたら、着信が入った。にやけながら相手も確認しないで電話に出る。
「はーい!」
『冬休みの課題』
「ひえっ」
『どうやら、終わっていないようだね。冬休みは残り一週間。課題はどこまで終わっているんだい?』
おそらくにこりと笑っているのだろう。電話の向こうから聞こえる赤司の声に、おそるおそる進捗を告げる。
「…ぜ、全部…ひとつも手をつけてません…」
『なるほど』
ふふっと小さく笑う声がして、それから今度は怒気を含んだ声が私を呼ぶ。
『水瓶、課題を全て鞄にまとめて、あと着替えも用意してオレの家まで来るんだ。できるね?』
「ひゃい…」
勉強合宿パート2の始まりのようです。もう一人の赤司もこっちの赤司も言い方のニュアンスが微妙に違うだけでほとんど変わらないじゃないか、と、同じく赤司の家に集合をかけられていたまゆゆ達に嘆くのだった。
「またなのか。またお前は課題を一つも手をつけてねーのか」
「だって!!部活終わったら死んでたから!!ていうかなんでみんな毎回要領いいの?!もう誰も信じられない!!」
赤司の部屋で、課題を詰め込んだ鞄を赤司に渡し、死刑宣告を待っている私にまゆゆが呆れたような眼差しを向けてくる。
前の赤司のように鞄の中身を全部ぶちまけられはしなかったけれど、ノートを出しては真っ白なそれに一つ一つ溜息を吐かれるほうが精神的にはくるものがあった。そして全ての真っ白のノートを並べて、「水瓶」と呼ばれる。
「夏休みと違って休みが少ないから、課題も少なくなっている。なのに、これは量とかそういうのはもう一切関係がない。やる気がなさすぎる。補習を受けると部活動に支障が出るときちんと理解しているかい?」
「う……ごめんなさい」
「本当に反省しているかどうかは、課題の消化ではなく休み明けのテストの点で見せてもらうよ」
えっ、と顔を上げたら、赤司はいつものごとく綺麗に微笑む。背後に般若を背負って。
「全教科80点以下になったら、ペナルティを設ける。泣いて喚いて許しを請うくらいの重い罰則だ。それじゃあ、課題をやろうか?」
「全力で真面目にやらせていただきますううううううう!!!」
葉山先輩が「前の赤司より厳しくね?」と呟き、実渕先輩達が遠い目をしているのが司会の端に見えた。
時刻は夜の11時。やっと課題を三分の一終わらせることができて、私はぐったりと机にへばりついた。
「しぬ。私、もっと計画的に課題できるようにがんばる…しぬ…」
「生きろ」
ポフ、とまゆゆに頭を撫でられる。そうだ、と私は鞄の中を探って、持ってきたものをまゆゆの前に出した。案の定まゆゆはきょとんとしてそれを見ていた。
「なんだそれ」
「ひよこのまゆゆ!気を落ち着かせるために編み物してたらひよこができたから、まゆゆ風にアレンジしました!ちゃんとラノベも持ってるんだよ!」
「あー、もー、なんなのこいつー」
「ちょっ黛サンやめてオレの首しめるのやめてぐへえっ!!」
手のひらの上に乗せたまゆゆひよこを見せたら、なぜかまゆゆが葉山先輩にヘッドロックをし始めた。どうしたのだろうか。これ、出来栄えには自信があったのだけど。
首を傾げていたら、赤司がまゆゆひよこを手に取り、ほう、と笑った。
「すごくよく出来てるね。黛にそっくりだ」
「優姫ちゃん上手ねえ!私征ちゃんひよこ作ってほしいわ!」
「良いですよー!あっせっかくなんでみんなのひよこ作りますよ!赤司とー、根武谷先輩とー、葉山先輩、実渕先輩、樋口先輩のも!」
それから。
「今寝ちゃってる赤司の分も!」
そう言ったら、赤司は一瞬驚いた顔をして、それからもう一度嬉しそうに笑った。
それから課題を切り上げた私達は、初詣のために神社へ向かった。やはりというか、とんでもなく混んでいた。これ、見失ったら背の低い私ははぐれてしまうやつだ。
ようやくたどり着いた神前で、お賽銭を入れて鈴を鳴らす。みんなで並んで拝んで、それから戻る時に葉山先輩が「何お願いした?!」とみんなに聞いた。
「馬鹿ねえ。こういうのは言わない方がいいのよ」
「えー!あっでも優姫のはなんとなくわかるよ!今年も萌えがたくさんありますように!とかだろ?」
「なぜわかったんですか?!葉山先輩はエスパーだったんですか?!ちょ、みんな溜息つくのやめて?!」
そして帰り道。人にぶつかりながらも、流れを切り裂くように先頭を歩いてくれている根武谷先輩に必死についていくけど、なんだか人が増えたみたいで帰りの方が上手く歩けなくなっている。隣にいた葉山先輩が、大丈夫?と声をかけてくれた。
「なっ、なんとか、大丈夫、ですっ!」
「はぐれたら見つけんの大変だし、オレの服掴む?」
「えっ、いいんですか」
「うん!オッケーオッケー!ってわけで、はい!」
どこでもどうぞ!と葉山先輩が身体を向けるので、少し照れるな、って思いながら手を伸ばしたら、その手をぐいっと掴まれて身体の向きを反転させられた。目の前には、まゆゆの身体。手は、まゆゆに握りしめられていた。
「これならはぐれねーだろ」
「あっはい」
思わずそんな返事しか出来なかったけど、つないだ手にドキドキしてしまっただけなんだ。ああどうか、きっと真っ赤になっている私の顔を見ないで欲しい。
ねえまゆゆ、もうすぐ卒業だね。私ね、今年も萌えが沢山ありますようにって願ったけど、神様に欲張ってごめんなさいって謝ってから、もう一つお願いしたんだ。
まゆゆと、これからも一緒にいたいです、って、お願いしたんだよ。
それが友達としてなのか、そうじゃないのか。
この感情に名前をつける日が、近づいてきている気がした。
そして年末年始は部活動はお休みで、私は自室のベッドでごろごろとしていた。
というのも、本当はこの冬休みを兄貴のところへ戻ろうと思っていたら、どうやら桐皇学園男子バスケ部と初詣に行くことになったらしく、珍しく申し訳なさげに連絡を貰ったからだ。どこか他人に無関心な兄貴が誰かと過ごすというのが嬉しくて、大手を振って了承したのだけど、問題は私の方にあった。
予定が、何もない。冬だから寒くて布団から出るのも億劫だし、応援だけだった私ですらめちゃくちゃ疲労していることを考えると、試合に出ていたみんなはもっと疲労困憊しているはずだ。せっかくの部活休み、ゆっくり休みたいはず。
けど、私だってできれば洛山バスケ部のみんなと初詣に行きたいと思っている。そんなみんなを誘って良いものか悶々としていた。
「というわけで、どうしたらいいと思う?」
「ふざけんなよ。バスケしようって言ってたやつが、最初にかけた電話の内容がそんなつまんねーことだとか、マジふざけんな。しね。本気でしね」
罵倒しつつも、電話を切らないで聞いてくれた灰崎は、もしや良い奴だったりするのだろうか。
携帯を確認したらちゃっかり登録されていた灰崎のアドレスに、この悶々とした感情を吐露すべく電話をかけたら出てくれたから、全部話したら罵倒された。それから、深い深い溜息が電話の向こうから聞こえる。
「つーか、誘いたきゃ誘えよ。どうせ思いつきでべらべら喋るタイプだろ、てめえ」
「ぐはっ…」
「そんで周りが苦労してるんだろーなァ。簡単に想像できるわ。赤司の苦労も目に見えるわ」
「ぐぬう…」
知り合って間もない灰崎に、そこまで見抜かれるとか!と携帯を握りしめて唸っていたら、また深い溜息が聞こえた。
「だから、今更気にする必要ねえだろ。馬鹿か?」
「!ショーゴくん…」
「その呼び方はやめろっつってんだろ!!」
ものすごく雑な言葉だったけど、今の私の背中を押すには十分な言葉だった。よしっと覚悟を決めて、私は相談に乗ってくれた灰崎にお礼を言う。
「灰崎、ありがとね」
「お礼とかきもちわりい」
「でも氷室さんとアレックスさんにしたことは許してないし、早めに謝罪してよね。あと虹村さんとのなれ初めと発展とその他諸々聞きたい…ってあーっ!!電話切った!!」
さて、気を取り直して。
とりあえず、電話で頼むと向こうが断りにくいだろうから、メールで一斉送信してみよう。誰か一人くらい、誘いに乗ってくれれば嬉しいけど。
「えーと…明日、一緒に初詣に行きませんか。暇で死にそうです、と。あ、送信しちゃった。最後の暇で~のくだりいらなかったかも…」
ベッドで仰向けになって、メールの送信が終わった携帯を見つめる。とりあえず、まゆゆと赤司と葉山先輩と実渕先輩と根武谷先輩と樋口先輩に送ってみたんだけど、どうかな。返事、いつ返ってくるかな。
期待と不安でまた悶々としそうになって、「そうだ!!編み物しよう!!」と気持ちを落ち着かせるために毛糸と編み針を持ってきて、黙々と編んでいく。裁縫が苦手な兄と違って、わりと得意な私は気がつけばひよこを作っていた。せっかくなので、まゆゆみたいなひよこにしよう。目は死んでて、ラノベも持たせて…よし完璧だ!
ふと、携帯を見たら光っていた。どうやら返事をもらっていたらしい。ドキドキしながらメール受信画面を開く。すると、なんと全員から返事が返ってきていた。おお、みんな速い。まずは一番最初に返ってきてる葉山先輩から見てみよう。
『いいぜ!オレも超暇!!遊びに行きたい!!』
「葉山先輩…!!全くの同感です!!」
次に届いていたのは、実渕先輩。
『私もみんなで行きたいって思っていたところよ。ぜひ一緒に行きましょう♪あと私もショッピング行こう思ってたらお店閉まってて暇になったところなの…』
「oh…それは残念でしたね、実渕先輩…」
次は、というか実渕先輩とほぼ同タイミングで返信をくれていたのは根武谷先輩。
『おー、いいぜ。暇?なら一緒に筋トレするか?』
「根武谷先輩、暇だと筋トレしてるんですか?!」
そして樋口先輩からの返信は残念ながら家族と旅行に出るから、というお断りの内容だった。文中でものすごく申し訳なさそうだったから、逆にこっちの方が申し訳ない気持ちになった。ほんとに気にしないでくださいね樋口先輩!お土産楽しみにしてます!
それから最後は赤司とまゆゆからだ。
『構わないよ。ちょうどオレも実家に戻る予定がなくなったところなんだ。それから、暇、と言ったね。つまり、冬休みの課題はすべて終わっている、ということかな?』
「ひえ…っ」
あ、赤司のメールは見なかったことにしよう!!よしまゆゆのメールだ!
『別に構わない』
「そっけない!!さすがまゆゆそっけない!!そこに痺れる憧れるう!!」
でも、これでみんなと初詣の約束ができた。嬉しいなあと思っていたら、着信が入った。にやけながら相手も確認しないで電話に出る。
「はーい!」
『冬休みの課題』
「ひえっ」
『どうやら、終わっていないようだね。冬休みは残り一週間。課題はどこまで終わっているんだい?』
おそらくにこりと笑っているのだろう。電話の向こうから聞こえる赤司の声に、おそるおそる進捗を告げる。
「…ぜ、全部…ひとつも手をつけてません…」
『なるほど』
ふふっと小さく笑う声がして、それから今度は怒気を含んだ声が私を呼ぶ。
『水瓶、課題を全て鞄にまとめて、あと着替えも用意してオレの家まで来るんだ。できるね?』
「ひゃい…」
勉強合宿パート2の始まりのようです。もう一人の赤司もこっちの赤司も言い方のニュアンスが微妙に違うだけでほとんど変わらないじゃないか、と、同じく赤司の家に集合をかけられていたまゆゆ達に嘆くのだった。
「またなのか。またお前は課題を一つも手をつけてねーのか」
「だって!!部活終わったら死んでたから!!ていうかなんでみんな毎回要領いいの?!もう誰も信じられない!!」
赤司の部屋で、課題を詰め込んだ鞄を赤司に渡し、死刑宣告を待っている私にまゆゆが呆れたような眼差しを向けてくる。
前の赤司のように鞄の中身を全部ぶちまけられはしなかったけれど、ノートを出しては真っ白なそれに一つ一つ溜息を吐かれるほうが精神的にはくるものがあった。そして全ての真っ白のノートを並べて、「水瓶」と呼ばれる。
「夏休みと違って休みが少ないから、課題も少なくなっている。なのに、これは量とかそういうのはもう一切関係がない。やる気がなさすぎる。補習を受けると部活動に支障が出るときちんと理解しているかい?」
「う……ごめんなさい」
「本当に反省しているかどうかは、課題の消化ではなく休み明けのテストの点で見せてもらうよ」
えっ、と顔を上げたら、赤司はいつものごとく綺麗に微笑む。背後に般若を背負って。
「全教科80点以下になったら、ペナルティを設ける。泣いて喚いて許しを請うくらいの重い罰則だ。それじゃあ、課題をやろうか?」
「全力で真面目にやらせていただきますううううううう!!!」
葉山先輩が「前の赤司より厳しくね?」と呟き、実渕先輩達が遠い目をしているのが司会の端に見えた。
時刻は夜の11時。やっと課題を三分の一終わらせることができて、私はぐったりと机にへばりついた。
「しぬ。私、もっと計画的に課題できるようにがんばる…しぬ…」
「生きろ」
ポフ、とまゆゆに頭を撫でられる。そうだ、と私は鞄の中を探って、持ってきたものをまゆゆの前に出した。案の定まゆゆはきょとんとしてそれを見ていた。
「なんだそれ」
「ひよこのまゆゆ!気を落ち着かせるために編み物してたらひよこができたから、まゆゆ風にアレンジしました!ちゃんとラノベも持ってるんだよ!」
「あー、もー、なんなのこいつー」
「ちょっ黛サンやめてオレの首しめるのやめてぐへえっ!!」
手のひらの上に乗せたまゆゆひよこを見せたら、なぜかまゆゆが葉山先輩にヘッドロックをし始めた。どうしたのだろうか。これ、出来栄えには自信があったのだけど。
首を傾げていたら、赤司がまゆゆひよこを手に取り、ほう、と笑った。
「すごくよく出来てるね。黛にそっくりだ」
「優姫ちゃん上手ねえ!私征ちゃんひよこ作ってほしいわ!」
「良いですよー!あっせっかくなんでみんなのひよこ作りますよ!赤司とー、根武谷先輩とー、葉山先輩、実渕先輩、樋口先輩のも!」
それから。
「今寝ちゃってる赤司の分も!」
そう言ったら、赤司は一瞬驚いた顔をして、それからもう一度嬉しそうに笑った。
それから課題を切り上げた私達は、初詣のために神社へ向かった。やはりというか、とんでもなく混んでいた。これ、見失ったら背の低い私ははぐれてしまうやつだ。
ようやくたどり着いた神前で、お賽銭を入れて鈴を鳴らす。みんなで並んで拝んで、それから戻る時に葉山先輩が「何お願いした?!」とみんなに聞いた。
「馬鹿ねえ。こういうのは言わない方がいいのよ」
「えー!あっでも優姫のはなんとなくわかるよ!今年も萌えがたくさんありますように!とかだろ?」
「なぜわかったんですか?!葉山先輩はエスパーだったんですか?!ちょ、みんな溜息つくのやめて?!」
そして帰り道。人にぶつかりながらも、流れを切り裂くように先頭を歩いてくれている根武谷先輩に必死についていくけど、なんだか人が増えたみたいで帰りの方が上手く歩けなくなっている。隣にいた葉山先輩が、大丈夫?と声をかけてくれた。
「なっ、なんとか、大丈夫、ですっ!」
「はぐれたら見つけんの大変だし、オレの服掴む?」
「えっ、いいんですか」
「うん!オッケーオッケー!ってわけで、はい!」
どこでもどうぞ!と葉山先輩が身体を向けるので、少し照れるな、って思いながら手を伸ばしたら、その手をぐいっと掴まれて身体の向きを反転させられた。目の前には、まゆゆの身体。手は、まゆゆに握りしめられていた。
「これならはぐれねーだろ」
「あっはい」
思わずそんな返事しか出来なかったけど、つないだ手にドキドキしてしまっただけなんだ。ああどうか、きっと真っ赤になっている私の顔を見ないで欲しい。
ねえまゆゆ、もうすぐ卒業だね。私ね、今年も萌えが沢山ありますようにって願ったけど、神様に欲張ってごめんなさいって謝ってから、もう一つお願いしたんだ。
まゆゆと、これからも一緒にいたいです、って、お願いしたんだよ。
それが友達としてなのか、そうじゃないのか。
この感情に名前をつける日が、近づいてきている気がした。