影法師にラブコール!(krk)※抜け番あり
DREAM
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「置いてかれたあああああああ!!」
WC出場のため、私達は東京へやってきた。開会式後、試合が始まる。私達はシード校なので、勝ったチームと明日試合をすることになるわけで一日時間がある。
だからまゆゆに、一緒に他校の試合観戦しようって話をしていたのに。のに!
駅で沢山の高校に選手達の行列に揉まれていたら、見事に洛山を見失いました。そして時間的に開会式は終わりました。これ赤司にヘッドロックされてジャーマンスープレックスされちゃう事案発生じゃない?優姫の明日はどっちだ!
などとふざけている場合ではない。早く合流しないとお仕置きがグレードアップする。大慌てで携帯のナビを使いながら会場へと向かっていたら、前方不注意で私は前にいた人に思い切りぶつかってしまった。みんな、歩きスマホだめ絶対。
「あいたたた…」
「わりい!大丈夫か?」
「だいじょ……天使?」
「は?」
すっころんだ私に手を差し伸べてくれたのは、おそらく学校指定のジャージを来た学生だ。けど、ちょうど太陽を背にした彼の周りを、ちょうど鳥が飛んでいき、羽根を落としていった。そんな映画のワンシーンのような状態の彼のことを、天使としか言いようがなくて、ついでに語彙力も消失した。
「あのその、え、天使?」
「いや、オレは天使って名前じゃねーけど」
「はああもうその反応が天使だわああああ!!」
「つーか、そのジャージ、もしかしてWCか?」
「あ」
そうでした!!天使に出会って完全に忘れてたわ!!
口ぶりから察するに彼もWC参加者なのだろう。学校名は、誠凛か。たしか赤司が何か言ってた気がするけど、まあいいや。後で聞こう。
「駅でもみくちゃにされてみんなとはぐれて、遅刻してやばい状況です」
「オレも時差ボケってのしてて、開会式間に合わなかったんだよ。それじゃ一緒に行くか?ナビ使ってたってことは、場所わかんねーんだろ?」
「もう無理天使としか形容する言葉がでてこないお願いします!!」
「変な奴だな」
そういえば、自己紹介をしていなかった。
「私は洛山のトレーナーしてます、一年の水瓶優姫です!」
「オレは誠凛の一年、火神大我だ、です。洛山ってことは、キセキの世代がいるとこだよな?そいつにぶっ倒すって伝えといてくれよ!」
「はーーーバスケ馬鹿な天使とかもーーーーー!!え?ていうか火神くん打倒キセキの世代?つまり、レギュラー?」
「おう!当たってもぜってー負けねえからな!」
「こっちこそ!」
お互いの素性もわかり、ニッと顔を見合わせて笑う。WCに出場する選手で、一年レギュラーということは、かなり手強い相手になるだろう。それでも、うちだって強いんだ。絶対負けないぞ!
「ところで」
「ん?」
「キセキの世代との対戦についてだけど、他のキセキとは戦ったりした?」
「おう!黄瀬だろー、緑間だろー、んで青峰!桐皇には前に負けたんだけどよ、今度は負けねー。青峰はオレが倒す!」
「桐皇?!青峰はって、え、なにそれ、そんなの」
「水瓶?」
「ライバル最高かよおおおおお!!青峰を倒すために燃えるかがみん最高かよおおおお!!青火ですねわかります!!」
じり、じり、と火神大我くん、もといかがみんが後ずさる。おや、かがみん。そんなへっぴり腰で私から逃れられるとでも?
私は両手を構える。そして。
「青峰とのエピソード詳しく聞かせてえええええええ!!」
「ぎゃああああ!!黒子help me!!!」
黒子って誰のことですかそれも詳しく教えてもらおうか!!
走り出したかがみんを追って、私も全力で捕獲体勢をとって走り出した。
「また会えて嬉しいよ。こうやって全員揃うことができたのは実に感慨深いね」
そう言って、赤司君が階段の上から集まった僕達を見下ろした。けど、不思議な感じがした。相手は、あの赤司君だというのに、何故だろう。たしかに緊迫感はあり、緊張もしていて手が少し汗をかいている。なのに、いやな感じが一切しないのだ。中学の頃、何度も感じたいやな感じが、一切なくなっている。これは一体、どういうことなのか。もしかして、昔の赤司君に、戻って…?
「ただ…場違いな人が混じってるね。今僕が話したいのはかつての仲間だけだ。悪いが、君は帰ってもらっていいかな?」
ああ、そんなことはなかった。赤司君は、やはり怖いままだ。
僕の付き添いできた降旗君に命令に近い威圧した言葉を向ける。降旗君はその威圧感に圧倒され、足が竦んでしまっていた。赤司君の機嫌が損ねない内に、どうにか降旗君を逃がそうとしたそのとき。
「黒子ッ!!」
大きな足音と、僕を呼ぶ声がした。あの声は、火神君だ。僕を救ってくれる、唯一の光。
振り返るとその光は、なぜか。
「かがみーん!!最高にキュートだよおおお♪その泣き顔も最高にキュートだよおおお♪」
「黒子後ろ怖いッ!!help me!!」
女子に追われていた。しかも両手を広げて満面の笑みの女子にだ。一体何があったんですか火神君。とりあえず僕の光フォルダに新しい写真が増えましたが。
「火神君大丈夫ですか?!」
「って言いながら助けないんだ!写真撮っちゃうんだ?!」
降旗君がツッコミできる程度には回復したらしい。良かった良かった。
半泣きで僕に助けを求めながら走ってくる火神君を見て、黄瀬君と緑間君と青峰君が「火神(っち)が変態に追われてる…」とハモっていた。仲良いですね。ちなみに紫原君は興味なさげにまいう棒を囓っていた。そして、赤司君は。
あれ、赤司君?なぜ手すりを撫でて具合を確かめているんです?
「テツヤ、少し横にずれてくれ」
「えっ?」
驚愕に目を見開く。あの赤司君が、手すりに足をかけ飛び乗り、そのまま階段下へと滑り落ちていくではないか。どことなく怒りを滲ませながら。
「赤司君?!」
「え?…げっ赤もげふっ!!」
それはとても、綺麗な跳び蹴りでした。
あの女子にはスマートな対応で有名な紳士の赤司君が、何の躊躇いもなく跳び蹴りをした。ひっくり返った女子は、蹴りが掠ったのか直撃したのか、頬を押さえて赤司君を見上げている。
「ぶ、物理攻撃反対……」
「千尋に浮気していたと伝えておくからな」
「うわああああ違うんだああああ私はまゆゆ一筋だよおおおおお!!後生ですから赤司様ああああああ!!」
「せっかく永吉が夕飯はおすすめの牛丼屋に連れて行くと調べていたのにな。残念だな」
「置いていく気満々!!いやあああ私も連れていってえええええ!!」
おや、これは。
「く、黒子。日本の女子っていろいろなんだな」
「いや火神。一部だけだから。しかもあそこまで過激なのなかなかいないから」
「そうなのか?…ってあ!お前が赤司か!」
バスケ馬鹿の火神君は、赤司君達の入り込めないやり取りですら何のその。さっきまで怖がっていたくせに赤司君を見た途端、挑戦的な笑みを浮かべて向かっていった。
名前を呼ばれて、やっとこちらの世界に戻ってきた赤司君は、ああ、と同じように挑戦的な笑みを浮かべる。
「真太郎、そのハサミを貸してくれるかな?前髪が鬱陶しくて少し切りたいと思ってたんだ」
ラッキーアイテムとして持ってきていた緑間君のハサミを借りた赤司君は、それを手に火神君に近寄る。そして。
「会えて嬉しーぜ」
「火神君だったね」
刃が風を切る。何を思ったのか、赤司君がハサミを火神君に思い切り突き刺したのだ。持ち前の反射神経でそれをよけた火神君も、さすがの出来事に驚いている。その表情にご満悦の赤司君は、何事もなかったかのように前髪を切り始めた。
「よく避けたね。今の身のこなしに免じて今回だけは許すよ。ただし次はない。僕が帰れと言ったら帰れ」
ジョキッジョキッ
ピロリン
「この世は勝利がすべてだ。僕は今まであらゆることで負けたことがないし、この先もない。すべてに勝つ僕は。すべて正しい」
ジョキッジョキッ
ピッ
「僕に逆らう奴は、親でも殺す」
ピローン♪
「……」
「はいはい!怒る前にいろいろ言いたいことがあります!!とりあえずかがみんの頬切れたことに関してはどう責任をとるおつもりですか!!ていうか普通に出場停止案件だからね赤司君!!このお馬鹿!!それからいきなり魔王発言も怖いわ!!あとなんで今前髪切った?!」
「……最後の言葉にしては、味気なかったな」
「もしかして私殺される?!いやいやほんと何考えてんの赤司!!ハサミ返しなさい!!」
赤司君の行動を写真を撮った後動画撮影していた彼女は、ひるむことなく赤司君からハサミを奪った。それから持ち主の元へ返しに行く。
「みどっちごめんね!!」
「別にかまわな…今なんて言った?」
それから少しまじまじと見て、「みどっちめっちゃ美人やんけ…」と呟いた。さすがの緑間君も不意打ちだったのか慌てている。少し面白い。
「あ、やっほー青峰!今日も元気に狩られてる?」
「やめろおい。マジでやめろてめえ」
「…あれ、ていうか、今ここ、もしかしてキセキの世代全員集合してる?」
「今頃気づいたのかよ…」
どうやら青峰君と知り合いだったらしい。彼女は青峰君を青ざめさせて、それから僕らをぐるりと見渡した。黄瀬君、緑間君、青峰君、紫原君を見て、最後に赤司君。
「はっ…キセキ赤…あいたたたたた赤司結構入ってる入ってる落ちる落ちる」
「一度落ちた方が僕らの身のためだ」
「ぐえええええごめんなさいでもキセキ赤最高おおおおおぎゃーっ!!」
ぱたり、と赤司君に落とされたらしい彼女が地面に倒れる。ぱんぱんっと手を払って、赤司君は何もなかったように笑った。
「じゃあ僕はそろそろ行くよ。今日のところは挨拶だけだ」
「はあ?!ふざけんなよ赤司!わざわざそれだけのために呼んだのか?!」
「いや…本当は確認するつもりだったけど、みんなの顔を見て必要ないと分かった」
全員の目が鋭くなる。空気が一瞬にして変わる。
「全員、あの時の誓いは忘れてないようだからな」
倒れたままの彼女を脇に抱えて、赤司君はまた階段を上っていく。
「ならばいい。次は戦う時に会おう」
「赤司、ならばいい、とかもう王様やんけ…」
「起きたなら自分で歩け」
「ぎゃいん!!」
落とされた彼女はめげずに、先を歩く赤司君を追いかけていってしまった。
何故だろう。ものすごく威圧感のある言葉とオーラを放っていたのに、あの赤司君に昔のような怖さがない。緩和されている?もしそうだとしたら、原因は…。
「あー…あれかー」
「紫原っち?」
「んー、あの子、赤ちんの友達なんだって」
「いや、それはなんとなく見ればわかったっス…」
「むしろ友達じゃなかったら何なのだよ…」
「いやアレダチっつーより下僕だぞ」
「んで青峰っちはいつ知り合ったんスか?!火神っちも何で追われてたんっスか?!」
きゃんきゃんと吠えている黄瀬君に青峰君がどうでもいいと背を向けて帰って行く。緑間君も紫原君もばらばらになり、黄瀬君は諦めた顔をしていた。
「もーいいっス。それじゃ黒子っち、火神っち、オレも行くっス!」
「はい、それでは」
黄瀬君も去って行き、残されたのは僕と火神君と降旗君。降旗君はようやく呼吸ができると大きく息を吐いた。
「もう二度とこんなとこ来ない…」
「すみません、降旗君」
「いや、黒子のせいじゃないしいいよ。でも、なんかさ」
降旗君は、赤司君と彼女が去っていった方を、ぼんやりと見る。
「最初めちゃくちゃ怖かったのに、あの子来た途端和らいだっつーか…もしかしてあの二人付き合ってんのかな?」
「え」
そんな、赤司君に限って…女子と付き合うとか…。とそこまで考えて、あの様子ではそれはないだろうと結論づける。さすがに恋人に跳び蹴り食らわせるのはDV彼氏もいいとこだ。ただでさえ低評価の赤司君の評価がさらに下がることになる。
けど、降旗君の言いたいことはわかる。火神君も、わかっていると思う。
「なんか、他の奴らより手強そうだな」
「ええ、そうですね」
もし、昔と違って、チームのために戦っていたとしたら、きっととても手強くて、楽しいに違いない。
「ところで、頬は大丈夫ですか?」
「おう。つーか、遅れてわりい」
「いえ、火神君は天使なので許します」
「おいこら黒子」
WC出場のため、私達は東京へやってきた。開会式後、試合が始まる。私達はシード校なので、勝ったチームと明日試合をすることになるわけで一日時間がある。
だからまゆゆに、一緒に他校の試合観戦しようって話をしていたのに。のに!
駅で沢山の高校に選手達の行列に揉まれていたら、見事に洛山を見失いました。そして時間的に開会式は終わりました。これ赤司にヘッドロックされてジャーマンスープレックスされちゃう事案発生じゃない?優姫の明日はどっちだ!
などとふざけている場合ではない。早く合流しないとお仕置きがグレードアップする。大慌てで携帯のナビを使いながら会場へと向かっていたら、前方不注意で私は前にいた人に思い切りぶつかってしまった。みんな、歩きスマホだめ絶対。
「あいたたた…」
「わりい!大丈夫か?」
「だいじょ……天使?」
「は?」
すっころんだ私に手を差し伸べてくれたのは、おそらく学校指定のジャージを来た学生だ。けど、ちょうど太陽を背にした彼の周りを、ちょうど鳥が飛んでいき、羽根を落としていった。そんな映画のワンシーンのような状態の彼のことを、天使としか言いようがなくて、ついでに語彙力も消失した。
「あのその、え、天使?」
「いや、オレは天使って名前じゃねーけど」
「はああもうその反応が天使だわああああ!!」
「つーか、そのジャージ、もしかしてWCか?」
「あ」
そうでした!!天使に出会って完全に忘れてたわ!!
口ぶりから察するに彼もWC参加者なのだろう。学校名は、誠凛か。たしか赤司が何か言ってた気がするけど、まあいいや。後で聞こう。
「駅でもみくちゃにされてみんなとはぐれて、遅刻してやばい状況です」
「オレも時差ボケってのしてて、開会式間に合わなかったんだよ。それじゃ一緒に行くか?ナビ使ってたってことは、場所わかんねーんだろ?」
「もう無理天使としか形容する言葉がでてこないお願いします!!」
「変な奴だな」
そういえば、自己紹介をしていなかった。
「私は洛山のトレーナーしてます、一年の水瓶優姫です!」
「オレは誠凛の一年、火神大我だ、です。洛山ってことは、キセキの世代がいるとこだよな?そいつにぶっ倒すって伝えといてくれよ!」
「はーーーバスケ馬鹿な天使とかもーーーーー!!え?ていうか火神くん打倒キセキの世代?つまり、レギュラー?」
「おう!当たってもぜってー負けねえからな!」
「こっちこそ!」
お互いの素性もわかり、ニッと顔を見合わせて笑う。WCに出場する選手で、一年レギュラーということは、かなり手強い相手になるだろう。それでも、うちだって強いんだ。絶対負けないぞ!
「ところで」
「ん?」
「キセキの世代との対戦についてだけど、他のキセキとは戦ったりした?」
「おう!黄瀬だろー、緑間だろー、んで青峰!桐皇には前に負けたんだけどよ、今度は負けねー。青峰はオレが倒す!」
「桐皇?!青峰はって、え、なにそれ、そんなの」
「水瓶?」
「ライバル最高かよおおおおお!!青峰を倒すために燃えるかがみん最高かよおおおお!!青火ですねわかります!!」
じり、じり、と火神大我くん、もといかがみんが後ずさる。おや、かがみん。そんなへっぴり腰で私から逃れられるとでも?
私は両手を構える。そして。
「青峰とのエピソード詳しく聞かせてえええええええ!!」
「ぎゃああああ!!黒子help me!!!」
黒子って誰のことですかそれも詳しく教えてもらおうか!!
走り出したかがみんを追って、私も全力で捕獲体勢をとって走り出した。
「また会えて嬉しいよ。こうやって全員揃うことができたのは実に感慨深いね」
そう言って、赤司君が階段の上から集まった僕達を見下ろした。けど、不思議な感じがした。相手は、あの赤司君だというのに、何故だろう。たしかに緊迫感はあり、緊張もしていて手が少し汗をかいている。なのに、いやな感じが一切しないのだ。中学の頃、何度も感じたいやな感じが、一切なくなっている。これは一体、どういうことなのか。もしかして、昔の赤司君に、戻って…?
「ただ…場違いな人が混じってるね。今僕が話したいのはかつての仲間だけだ。悪いが、君は帰ってもらっていいかな?」
ああ、そんなことはなかった。赤司君は、やはり怖いままだ。
僕の付き添いできた降旗君に命令に近い威圧した言葉を向ける。降旗君はその威圧感に圧倒され、足が竦んでしまっていた。赤司君の機嫌が損ねない内に、どうにか降旗君を逃がそうとしたそのとき。
「黒子ッ!!」
大きな足音と、僕を呼ぶ声がした。あの声は、火神君だ。僕を救ってくれる、唯一の光。
振り返るとその光は、なぜか。
「かがみーん!!最高にキュートだよおおお♪その泣き顔も最高にキュートだよおおお♪」
「黒子後ろ怖いッ!!help me!!」
女子に追われていた。しかも両手を広げて満面の笑みの女子にだ。一体何があったんですか火神君。とりあえず僕の光フォルダに新しい写真が増えましたが。
「火神君大丈夫ですか?!」
「って言いながら助けないんだ!写真撮っちゃうんだ?!」
降旗君がツッコミできる程度には回復したらしい。良かった良かった。
半泣きで僕に助けを求めながら走ってくる火神君を見て、黄瀬君と緑間君と青峰君が「火神(っち)が変態に追われてる…」とハモっていた。仲良いですね。ちなみに紫原君は興味なさげにまいう棒を囓っていた。そして、赤司君は。
あれ、赤司君?なぜ手すりを撫でて具合を確かめているんです?
「テツヤ、少し横にずれてくれ」
「えっ?」
驚愕に目を見開く。あの赤司君が、手すりに足をかけ飛び乗り、そのまま階段下へと滑り落ちていくではないか。どことなく怒りを滲ませながら。
「赤司君?!」
「え?…げっ赤もげふっ!!」
それはとても、綺麗な跳び蹴りでした。
あの女子にはスマートな対応で有名な紳士の赤司君が、何の躊躇いもなく跳び蹴りをした。ひっくり返った女子は、蹴りが掠ったのか直撃したのか、頬を押さえて赤司君を見上げている。
「ぶ、物理攻撃反対……」
「千尋に浮気していたと伝えておくからな」
「うわああああ違うんだああああ私はまゆゆ一筋だよおおおおお!!後生ですから赤司様ああああああ!!」
「せっかく永吉が夕飯はおすすめの牛丼屋に連れて行くと調べていたのにな。残念だな」
「置いていく気満々!!いやあああ私も連れていってえええええ!!」
おや、これは。
「く、黒子。日本の女子っていろいろなんだな」
「いや火神。一部だけだから。しかもあそこまで過激なのなかなかいないから」
「そうなのか?…ってあ!お前が赤司か!」
バスケ馬鹿の火神君は、赤司君達の入り込めないやり取りですら何のその。さっきまで怖がっていたくせに赤司君を見た途端、挑戦的な笑みを浮かべて向かっていった。
名前を呼ばれて、やっとこちらの世界に戻ってきた赤司君は、ああ、と同じように挑戦的な笑みを浮かべる。
「真太郎、そのハサミを貸してくれるかな?前髪が鬱陶しくて少し切りたいと思ってたんだ」
ラッキーアイテムとして持ってきていた緑間君のハサミを借りた赤司君は、それを手に火神君に近寄る。そして。
「会えて嬉しーぜ」
「火神君だったね」
刃が風を切る。何を思ったのか、赤司君がハサミを火神君に思い切り突き刺したのだ。持ち前の反射神経でそれをよけた火神君も、さすがの出来事に驚いている。その表情にご満悦の赤司君は、何事もなかったかのように前髪を切り始めた。
「よく避けたね。今の身のこなしに免じて今回だけは許すよ。ただし次はない。僕が帰れと言ったら帰れ」
ジョキッジョキッ
ピロリン
「この世は勝利がすべてだ。僕は今まであらゆることで負けたことがないし、この先もない。すべてに勝つ僕は。すべて正しい」
ジョキッジョキッ
ピッ
「僕に逆らう奴は、親でも殺す」
ピローン♪
「……」
「はいはい!怒る前にいろいろ言いたいことがあります!!とりあえずかがみんの頬切れたことに関してはどう責任をとるおつもりですか!!ていうか普通に出場停止案件だからね赤司君!!このお馬鹿!!それからいきなり魔王発言も怖いわ!!あとなんで今前髪切った?!」
「……最後の言葉にしては、味気なかったな」
「もしかして私殺される?!いやいやほんと何考えてんの赤司!!ハサミ返しなさい!!」
赤司君の行動を写真を撮った後動画撮影していた彼女は、ひるむことなく赤司君からハサミを奪った。それから持ち主の元へ返しに行く。
「みどっちごめんね!!」
「別にかまわな…今なんて言った?」
それから少しまじまじと見て、「みどっちめっちゃ美人やんけ…」と呟いた。さすがの緑間君も不意打ちだったのか慌てている。少し面白い。
「あ、やっほー青峰!今日も元気に狩られてる?」
「やめろおい。マジでやめろてめえ」
「…あれ、ていうか、今ここ、もしかしてキセキの世代全員集合してる?」
「今頃気づいたのかよ…」
どうやら青峰君と知り合いだったらしい。彼女は青峰君を青ざめさせて、それから僕らをぐるりと見渡した。黄瀬君、緑間君、青峰君、紫原君を見て、最後に赤司君。
「はっ…キセキ赤…あいたたたたた赤司結構入ってる入ってる落ちる落ちる」
「一度落ちた方が僕らの身のためだ」
「ぐえええええごめんなさいでもキセキ赤最高おおおおおぎゃーっ!!」
ぱたり、と赤司君に落とされたらしい彼女が地面に倒れる。ぱんぱんっと手を払って、赤司君は何もなかったように笑った。
「じゃあ僕はそろそろ行くよ。今日のところは挨拶だけだ」
「はあ?!ふざけんなよ赤司!わざわざそれだけのために呼んだのか?!」
「いや…本当は確認するつもりだったけど、みんなの顔を見て必要ないと分かった」
全員の目が鋭くなる。空気が一瞬にして変わる。
「全員、あの時の誓いは忘れてないようだからな」
倒れたままの彼女を脇に抱えて、赤司君はまた階段を上っていく。
「ならばいい。次は戦う時に会おう」
「赤司、ならばいい、とかもう王様やんけ…」
「起きたなら自分で歩け」
「ぎゃいん!!」
落とされた彼女はめげずに、先を歩く赤司君を追いかけていってしまった。
何故だろう。ものすごく威圧感のある言葉とオーラを放っていたのに、あの赤司君に昔のような怖さがない。緩和されている?もしそうだとしたら、原因は…。
「あー…あれかー」
「紫原っち?」
「んー、あの子、赤ちんの友達なんだって」
「いや、それはなんとなく見ればわかったっス…」
「むしろ友達じゃなかったら何なのだよ…」
「いやアレダチっつーより下僕だぞ」
「んで青峰っちはいつ知り合ったんスか?!火神っちも何で追われてたんっスか?!」
きゃんきゃんと吠えている黄瀬君に青峰君がどうでもいいと背を向けて帰って行く。緑間君も紫原君もばらばらになり、黄瀬君は諦めた顔をしていた。
「もーいいっス。それじゃ黒子っち、火神っち、オレも行くっス!」
「はい、それでは」
黄瀬君も去って行き、残されたのは僕と火神君と降旗君。降旗君はようやく呼吸ができると大きく息を吐いた。
「もう二度とこんなとこ来ない…」
「すみません、降旗君」
「いや、黒子のせいじゃないしいいよ。でも、なんかさ」
降旗君は、赤司君と彼女が去っていった方を、ぼんやりと見る。
「最初めちゃくちゃ怖かったのに、あの子来た途端和らいだっつーか…もしかしてあの二人付き合ってんのかな?」
「え」
そんな、赤司君に限って…女子と付き合うとか…。とそこまで考えて、あの様子ではそれはないだろうと結論づける。さすがに恋人に跳び蹴り食らわせるのはDV彼氏もいいとこだ。ただでさえ低評価の赤司君の評価がさらに下がることになる。
けど、降旗君の言いたいことはわかる。火神君も、わかっていると思う。
「なんか、他の奴らより手強そうだな」
「ええ、そうですね」
もし、昔と違って、チームのために戦っていたとしたら、きっととても手強くて、楽しいに違いない。
「ところで、頬は大丈夫ですか?」
「おう。つーか、遅れてわりい」
「いえ、火神君は天使なので許します」
「おいこら黒子」