影法師にラブコール!(krk)※抜け番あり
DREAM
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学祭当日。私のクラスでは定番の喫茶店を開き、各々が割り当てられた役を演じながら接客を行っていた。
たとえば、不思議の国のアリスに出てくる白ウサギを演じる有本君は「急がなきゃ!ご注文聞いたら急いで公爵夫人のところへ行くんだ!」とお客さんに詰め寄ったり、シンデレラ役になった木村さんは「十二時には帰らないといけないの。その前に、聞いてもいいかしら。あなたのご注文は?」と名残惜しそうに聞いていたりと見ていてとても楽しい演劇喫茶となっていた。お客さんもそういう喫茶と知った上で入ってもらっているので、楽しそうに注文している。
みんなに楽しんでもらえて良かった、とほくほくしていたら、肩をとんとんと叩かれた。振り返ると、絶世の美少年王子様。もちろん赤司である。着替えてからずっと女子達に写真を撮られたためか、心なしか疲れているようにも見える。いやまあ、私も撮ったけど。
「にやけていないでさっさと仕事をしろ」
しかし言うことは辛辣である。私は人魚姫の役なので、いつものように反論はできず仕方なく、ぺこりと頭を下げて、ボードを見せる。
『了解でありますイケメン王子!』
「昼から覚えておけ…」
『ごめんなさい』
逃げるように新しく入ってきたお客さんのところへ行き、あらかじめ書いておいたボードを向けた。
『王子に会うために声をなくしたけれど、気づいてもらえません。ご注文を聞いたら、もう一度あの海へ行こうと思うのです』
演劇部から借りた、ゴシック調の衣装をひらりと靡かせて、儚そうな印象を意識しながら微笑むと、お客さんが感嘆の声を漏らした、ような気がした。これはまゆゆをイメージしているから、この演技で褒められるのならまゆゆは儚い系男子ということが実証されたも同然だね!まゆゆ最高!
「おっ赤司みっけ!レオ姉ー!永ちゃん!黛サン!こっちこっち!」
「大声で呼ばなくてもわかってるっての」
「あ、征ちゃん。お邪魔するわね。」
「ほう…やはりラノベ系美少年は違うな」
途端に賑やかになる。白雪姫役の竹中さんが「バスケ部きたよ!」と教えに来てくれた。
「いらっしゃいませ。席にご案内いたします。ところで、この辺りの海辺で女性を見かけませんでしたか?私の命の恩人なのです」
爽やかに赤司が王子役を演じて微笑む。これには四人とも「おお…」と声を漏らすしかなかった。見ている私も「赤司マジ王子」としか言い様がない。あれは持って生まれた王子属性に違いない。
「ご注文がお決まりになりましたら、そして女性を見かけましたらお声かけください」
「やべー赤司マジ王子じゃん」
「あとで張り出されてる征ちゃんの写真買わなきゃ…!」
「お、牛丼あるじゃねーか。優姫が入れてくれたのか?」
「喫茶店で牛丼って…。つーか、優姫はどこ」
だよ、とおそらく続いたであろうまゆゆの台詞。それは、私と目が合って止まってしまった。まゆゆの普段の無表情が、死んだような目が徐々に見開かれていく。そんな様子に気づかず注文を決めたらしい葉山先輩が手を上げて「注文いいですかー!」と呼んでいるので、私はボードを持ち直してその席へ向かった。
「あ、きたきた。注文なんだけど………え?」
『王子に会うために声をなくしたけれど、気づいてもらえません。ご注文を聞いたら、もう一度あの海へ行こうと思うのです』
葉山先輩が私を見て、目を瞬かせる。私はスッとボードを出して、先ほどと同じようにまゆゆをイメージした儚い笑みを浮かべた。
「え、あの、まさか、優姫、なの?」
はい、とボードに書いて向けたら、葉山先輩の絶叫が教室中に響き渡った。他のお客さんが何事かとびっくりしていたが、おそらくクラスメイト達しかなぜこんなにも葉山先輩が驚いているのかわからないだろう。赤司はやれやれと肩を竦めていた。
そう、私には謎の特技がある。それは。
「か、髪下ろしただけで別人になるなんて、優姫ちゃんの人体の構造どうなってるの?」
実渕先輩が言った通り、私は髪を下ろすと別人になるらしい。らしいというのも、私には自覚がないからだ。けど思えば中学の時から髪を下ろす度に「誰…?」とよく言われていた。そしてもちろん、今回も衣装合わせの段階でクラスメイト全員に「誰…?」と言われた。先生もだ。赤司は「もはやイリュージョンの域だな…」とか言っていた。
「オレ、事前に人魚姫って知ってたからもしかしてって思ったけど、聞いてなかったらわかんなかったわ」
「オレも」
「そういえば優姫ちゃんの髪結んでる姿しか見たことなかったわね…だからって、こんなにも印象が違うなんて思ってもみなかったわ…優姫ちゃん、安心して。今の優姫ちゃん、本当に可愛いわよ!」
いつもは!いつもは違うんすか実渕先輩!と抗議したかったが、今は接客中だ。声も出せないし儚い印象で通さないといけない。昼の自由時間になったら思う存分文句言ってやる…。
そういえば、まゆゆの反応がないな。あれ?とまゆゆを見ると、視線が合った。ずっと私のことを見ていたらしい。少しだけ頬が赤いような…?
「……このラノベ人間め……」
何その謎の罵倒。いやこれ罵倒か?まゆゆはまた無表情に戻って、私を一瞥してからコーヒーだけを注文した。全員の注文を聞いて、私はまたボードを四人に向ける。
『ご注文ありがとうございます。これを届けたら、あの人は気づいてくれるでしょうか』
そう言って遠くを見つめる。ここまでが人魚姫個人の接客のワンセットだ。それから軽く会釈をして、わざと通りかかった赤司とすれ違う。そのとき、ぴたりと足を止めて、一瞬見つめ合って、そして赤司が先に歩き出す。近くにいる人魚姫に気づかない王子の演技で、人魚姫のすれ違いを演出しているのだ。これは赤司と話し合って決めたやりとりである。意外と好評で、お客さんに「隣にいたのに気づいてもらえないなんて、切なすぎる…っ」と感想をいただいたりした。
「きゃーっ!人魚姫ちゃん気づいてもらえないなんてっ!王子様の鈍感っ!」
「なんでちょっとテンション上がってんだよ…」
「ねーねー黛サン大丈夫?」
「何がだ」
「なんか赤司と優姫が良い感じっぽいから、黛サン拗ねてんじゃないかなって!ほら、照れてないでちゃんと優姫に可愛いって言ってあいたぁっ!!」
スパアンッ!ととても良い音がしたので振り返ったら、葉山先輩がテーブルに沈没していた。一体何があった。いつもいつも何なの、葉黛なの?詳しく!詳しく!!
嵐のような四人が去った後、樋口先輩も白金監督も来てくれて同じように接客をして驚愕の顔をされて、解せぬと思いながら午前が終わった。まゆゆは明日が当番だからと言っていたから、まゆゆと午後は一緒に学祭を回ろうと思ってメールをする。すぐに「屋上でラノベ読んでる」と返ってきた。おそらく葉山先輩達からミスディレして逃げたんだろう。
衣装を脱いで、午後のメンバーと交代をして私は屋上へ駆け込んだ。
「まゆゆ!」
「大声で呼ばなくても聞こえてるっつの」
いつもの返しだ。うへへっとまゆゆに駆け寄ったら、なぜか顔をじっと見られた。
「いつもの顔だな…」
「いつもの顔だけど?!」
「何で髪下ろしただけであんなに変わるんだよ」
そう言って、まゆゆが私の髪に触れた。さらりと撫でられて、唐突の接触に身体が熱くなった。顔は、多分とんでもなく真っ赤になっているに違いない。でも、まゆゆから視線も逸らせずされるがままで、ただじっとしていた。
「あ、あの、まゆゆ…」
「ん?」
「その…服、どうだった?やっぱ似合って、なかった?」
みんなは可愛いと言ってくれたけど、自信がなかった。まゆゆから見て、今日の私はどうだっただろう。おかしいな、他の人にどう見られても気にならなかったのに、まゆゆが来たとき、真っ先に衣装が似合ってるかどうか気になったんだ。なんでなのかな。答えはまだ出ないけど。
「…似合ってたよ」
そう言って頭をポフポフと撫でてくれるから、幸せだなあって思うんだ。
「ちなみに、今日の人魚姫はまゆゆをイメージして演じてました」
「そうなると話は変わってくるぞおいこら」
「赤司王子に淡い恋を抱いてしまったまゆゆ姫…!けど赤司王子は気づいてくれない!なら、夜這いするしかないと決意したまゆゆ姫は実は男の人魚でっていうハートフル黛赤ストーリーを妄想しながらあいたぁっ!!まゆゆ今結構本気で殴ったよね?!」
「殴らないと思ってるのかよ」
「昼から覚悟しておけと、僕は言ったよね」
「ヒィッ!!まゆゆ、赤司後ろにいる?!いるよね?どんな顔してる?!」
「魔王」
「ですよね!!ぎゃああああ謝るから間接やめてええええ!!」
たとえば、不思議の国のアリスに出てくる白ウサギを演じる有本君は「急がなきゃ!ご注文聞いたら急いで公爵夫人のところへ行くんだ!」とお客さんに詰め寄ったり、シンデレラ役になった木村さんは「十二時には帰らないといけないの。その前に、聞いてもいいかしら。あなたのご注文は?」と名残惜しそうに聞いていたりと見ていてとても楽しい演劇喫茶となっていた。お客さんもそういう喫茶と知った上で入ってもらっているので、楽しそうに注文している。
みんなに楽しんでもらえて良かった、とほくほくしていたら、肩をとんとんと叩かれた。振り返ると、絶世の美少年王子様。もちろん赤司である。着替えてからずっと女子達に写真を撮られたためか、心なしか疲れているようにも見える。いやまあ、私も撮ったけど。
「にやけていないでさっさと仕事をしろ」
しかし言うことは辛辣である。私は人魚姫の役なので、いつものように反論はできず仕方なく、ぺこりと頭を下げて、ボードを見せる。
『了解でありますイケメン王子!』
「昼から覚えておけ…」
『ごめんなさい』
逃げるように新しく入ってきたお客さんのところへ行き、あらかじめ書いておいたボードを向けた。
『王子に会うために声をなくしたけれど、気づいてもらえません。ご注文を聞いたら、もう一度あの海へ行こうと思うのです』
演劇部から借りた、ゴシック調の衣装をひらりと靡かせて、儚そうな印象を意識しながら微笑むと、お客さんが感嘆の声を漏らした、ような気がした。これはまゆゆをイメージしているから、この演技で褒められるのならまゆゆは儚い系男子ということが実証されたも同然だね!まゆゆ最高!
「おっ赤司みっけ!レオ姉ー!永ちゃん!黛サン!こっちこっち!」
「大声で呼ばなくてもわかってるっての」
「あ、征ちゃん。お邪魔するわね。」
「ほう…やはりラノベ系美少年は違うな」
途端に賑やかになる。白雪姫役の竹中さんが「バスケ部きたよ!」と教えに来てくれた。
「いらっしゃいませ。席にご案内いたします。ところで、この辺りの海辺で女性を見かけませんでしたか?私の命の恩人なのです」
爽やかに赤司が王子役を演じて微笑む。これには四人とも「おお…」と声を漏らすしかなかった。見ている私も「赤司マジ王子」としか言い様がない。あれは持って生まれた王子属性に違いない。
「ご注文がお決まりになりましたら、そして女性を見かけましたらお声かけください」
「やべー赤司マジ王子じゃん」
「あとで張り出されてる征ちゃんの写真買わなきゃ…!」
「お、牛丼あるじゃねーか。優姫が入れてくれたのか?」
「喫茶店で牛丼って…。つーか、優姫はどこ」
だよ、とおそらく続いたであろうまゆゆの台詞。それは、私と目が合って止まってしまった。まゆゆの普段の無表情が、死んだような目が徐々に見開かれていく。そんな様子に気づかず注文を決めたらしい葉山先輩が手を上げて「注文いいですかー!」と呼んでいるので、私はボードを持ち直してその席へ向かった。
「あ、きたきた。注文なんだけど………え?」
『王子に会うために声をなくしたけれど、気づいてもらえません。ご注文を聞いたら、もう一度あの海へ行こうと思うのです』
葉山先輩が私を見て、目を瞬かせる。私はスッとボードを出して、先ほどと同じようにまゆゆをイメージした儚い笑みを浮かべた。
「え、あの、まさか、優姫、なの?」
はい、とボードに書いて向けたら、葉山先輩の絶叫が教室中に響き渡った。他のお客さんが何事かとびっくりしていたが、おそらくクラスメイト達しかなぜこんなにも葉山先輩が驚いているのかわからないだろう。赤司はやれやれと肩を竦めていた。
そう、私には謎の特技がある。それは。
「か、髪下ろしただけで別人になるなんて、優姫ちゃんの人体の構造どうなってるの?」
実渕先輩が言った通り、私は髪を下ろすと別人になるらしい。らしいというのも、私には自覚がないからだ。けど思えば中学の時から髪を下ろす度に「誰…?」とよく言われていた。そしてもちろん、今回も衣装合わせの段階でクラスメイト全員に「誰…?」と言われた。先生もだ。赤司は「もはやイリュージョンの域だな…」とか言っていた。
「オレ、事前に人魚姫って知ってたからもしかしてって思ったけど、聞いてなかったらわかんなかったわ」
「オレも」
「そういえば優姫ちゃんの髪結んでる姿しか見たことなかったわね…だからって、こんなにも印象が違うなんて思ってもみなかったわ…優姫ちゃん、安心して。今の優姫ちゃん、本当に可愛いわよ!」
いつもは!いつもは違うんすか実渕先輩!と抗議したかったが、今は接客中だ。声も出せないし儚い印象で通さないといけない。昼の自由時間になったら思う存分文句言ってやる…。
そういえば、まゆゆの反応がないな。あれ?とまゆゆを見ると、視線が合った。ずっと私のことを見ていたらしい。少しだけ頬が赤いような…?
「……このラノベ人間め……」
何その謎の罵倒。いやこれ罵倒か?まゆゆはまた無表情に戻って、私を一瞥してからコーヒーだけを注文した。全員の注文を聞いて、私はまたボードを四人に向ける。
『ご注文ありがとうございます。これを届けたら、あの人は気づいてくれるでしょうか』
そう言って遠くを見つめる。ここまでが人魚姫個人の接客のワンセットだ。それから軽く会釈をして、わざと通りかかった赤司とすれ違う。そのとき、ぴたりと足を止めて、一瞬見つめ合って、そして赤司が先に歩き出す。近くにいる人魚姫に気づかない王子の演技で、人魚姫のすれ違いを演出しているのだ。これは赤司と話し合って決めたやりとりである。意外と好評で、お客さんに「隣にいたのに気づいてもらえないなんて、切なすぎる…っ」と感想をいただいたりした。
「きゃーっ!人魚姫ちゃん気づいてもらえないなんてっ!王子様の鈍感っ!」
「なんでちょっとテンション上がってんだよ…」
「ねーねー黛サン大丈夫?」
「何がだ」
「なんか赤司と優姫が良い感じっぽいから、黛サン拗ねてんじゃないかなって!ほら、照れてないでちゃんと優姫に可愛いって言ってあいたぁっ!!」
スパアンッ!ととても良い音がしたので振り返ったら、葉山先輩がテーブルに沈没していた。一体何があった。いつもいつも何なの、葉黛なの?詳しく!詳しく!!
嵐のような四人が去った後、樋口先輩も白金監督も来てくれて同じように接客をして驚愕の顔をされて、解せぬと思いながら午前が終わった。まゆゆは明日が当番だからと言っていたから、まゆゆと午後は一緒に学祭を回ろうと思ってメールをする。すぐに「屋上でラノベ読んでる」と返ってきた。おそらく葉山先輩達からミスディレして逃げたんだろう。
衣装を脱いで、午後のメンバーと交代をして私は屋上へ駆け込んだ。
「まゆゆ!」
「大声で呼ばなくても聞こえてるっつの」
いつもの返しだ。うへへっとまゆゆに駆け寄ったら、なぜか顔をじっと見られた。
「いつもの顔だな…」
「いつもの顔だけど?!」
「何で髪下ろしただけであんなに変わるんだよ」
そう言って、まゆゆが私の髪に触れた。さらりと撫でられて、唐突の接触に身体が熱くなった。顔は、多分とんでもなく真っ赤になっているに違いない。でも、まゆゆから視線も逸らせずされるがままで、ただじっとしていた。
「あ、あの、まゆゆ…」
「ん?」
「その…服、どうだった?やっぱ似合って、なかった?」
みんなは可愛いと言ってくれたけど、自信がなかった。まゆゆから見て、今日の私はどうだっただろう。おかしいな、他の人にどう見られても気にならなかったのに、まゆゆが来たとき、真っ先に衣装が似合ってるかどうか気になったんだ。なんでなのかな。答えはまだ出ないけど。
「…似合ってたよ」
そう言って頭をポフポフと撫でてくれるから、幸せだなあって思うんだ。
「ちなみに、今日の人魚姫はまゆゆをイメージして演じてました」
「そうなると話は変わってくるぞおいこら」
「赤司王子に淡い恋を抱いてしまったまゆゆ姫…!けど赤司王子は気づいてくれない!なら、夜這いするしかないと決意したまゆゆ姫は実は男の人魚でっていうハートフル黛赤ストーリーを妄想しながらあいたぁっ!!まゆゆ今結構本気で殴ったよね?!」
「殴らないと思ってるのかよ」
「昼から覚悟しておけと、僕は言ったよね」
「ヒィッ!!まゆゆ、赤司後ろにいる?!いるよね?どんな顔してる?!」
「魔王」
「ですよね!!ぎゃああああ謝るから間接やめてええええ!!」