影法師にラブコール!(krk)※抜け番あり
DREAM
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夏休みが終わり、課題も無事に提出できた私は満足感に浸っていた。休み明けのテストも問題なく解けたし、これは幸先が良い。この調子で、冬のWCも頑張ろう!などと思っていたのだけど。
「優姫ちゃん!お願い!ほんとーにお願い!優姫ちゃんにしか頼めないの!」
「優姫ちゃん以外に頼める人いないの!」
「だからお願い!」
「「赤司君に王子様役をお願いしてきてほしいの!!」」
と、演劇部の女子達が私に頭を下げてきた。ちなみに今赤司は生徒会で席にはいない。
洛山の学祭は十月に二日かけて行われる。出し物は各クラス別、そして部活別の二つで、無論部活動をしている人は二つ掛け持ちが確定している。夏休みを明けてまずクラスで学祭の出し物は何をするのかの学級会が行われる。部活に支障のないよう、一日の最後の授業を使って、まさに今日その話し合いをする予定なのだけど。
どうやら、演劇部は演劇を推しているらしい。
「でもさ、演劇部も演劇するんでしょ?出し物被っちゃわない?」
「うちはほら、どうせ一年出れないし」
「それに、どこの部活ものどから手が出るほど欲しがってる赤司君が、うちのクラスの出し物で王子様してくれたら…!」
「絶対、学祭の優秀賞いけるじゃない?!」
「ていうか赤司君の王子様が見たい!」
「それ!でもお姫様は荷が重いから私はその辺の石ころでいい」
「ほんとそれ」
石ころになるのはとりあえずやめていただきたい。演劇部は率先して役を演じていただきたい。
それにしても、演劇かあ。小学生の頃からそういうのと縁がなくて、役はいつも背景だったから、少し憧れる。高校くらい、私も何か名前のある役をやってみたいなあ。
まあ私の願望は横に置いておき、少し疑問がある。
「なんで私が赤司にお願いする役なの?」
「だって赤司君と普通に話せるの優姫ちゃんくらいじゃない!!」
「恐れ多くて無理」
「男子に至っては断られたら賛同しながらひれ伏しそうって言ってるし」
「女子勢もほぼ同意。断られてもめげずに頼んでくれる人は優姫ちゃんしかいないの」
「蔑まれるのなんて慣れっこでしょ?」
「慣れてねーわ!!誰がドエムだ!!でも赤司の王子様とかめっちゃ見たいから頼んでみるね!!」
それでこそ優姫だーっ!!と、いつの間にかクラス全員が聞いていたらしく歓声があがった。
この半年ほどで、私のポジションがお笑い担当になってしまった気がしないでもない。解せぬ。
「…賑やかだね」
そして、ちょうど良いタイミングで生徒会の仕事を終えたらしい赤司が教室に入ってきた。一致団結したクラスメイトを見て、訝しげにしている。
コホン、と咳払いをして、クラスを代表とした私は赤司の前に立つ。
「えー、赤司君。クラス満場一致で、次の学祭は劇をすることが決まり、赤司君には栄えある王子様役が任命されました」
「僕のいない間に勝手に任命されても困る」
「いいじゃん王子様だよ?!男子だって本当は王子様やって気になるあの子のハートにダンク決めたいけど、それを赤司に譲ってくれたんだよ?!」
そこまで言ってねー!と男子の野次が入るが、聞かなかったことにした。
「WC予選とは時期もずれてるし、赤司は王子様役慣れてるっしょ?やれるって!」
「慣れてはいない、というかしたことはないよ」
「は?!赤司様とあろうものが王子役をしたことがない?!」
「様をつけるな」
そんな…赤司君が王子様未経験だなんて!と女子の嘆きが聞こえるが、そちらも聞かなかったことにした。
「そもそも、王子役といっても何の王子なんだ?」
「あ、そういえば知らない。ねー劇って何するの?ロミジュリ?」
振り返って尋ねたら、演劇部の女子が嬉しそうに本を手に持ってきた。あれは図書室で借りた本だろうか。
「ロミジュリは演劇部がするから、うちは人魚姫をしたいと思います!」
「人魚姫って王子がクソなやつじゃ…はっ、まさかみんなそれで赤司を抜擢…」
「誤解だから!!優姫ちゃんそうやって軽率に赤司君に喧嘩売るのやめよ?!」
「あいたたたた赤司頭鷲掴みするのやめて弾ける、弾けるから!!」
私が赤司から制裁を食らっている間、クラスメイト達は「ああいつものが始まったね」「そっとしておこうね」と傍観を決め込んでいる。くっそー!みんな覚えてろよー!!
結局赤司からの了承を得られないまま、あっという間に学級会の時間になった。そして、スタートから先生に爆弾を落とされた。
「えー、実は学祭二日とも、体育館が予約でいっぱいになってしまった。出遅れた。ほんとにすまん」
「「えええええええ!!」」
まさかの出遅れ!!隣を見れば、赤司が心なしかほっとしているように見えた。クラスメイト達も赤司に王子役をさせられないことにガッカリしている。何か良い方法はないだろうか。赤司に王子役をさせられて、体育館を使わなくてよくて、かつできれば学祭優秀賞を狙えるアイディア。
ピコン、と、突然閃いた。
バシンッ!!
「はい!!」
「早押しクイズじゃないから机を叩くな水瓶。ほら、言ってみろ」
「執事喫茶メイド喫茶ならぬ、演劇喫茶はどうでしょう!!」
ほう、と先生が続きを促してきたので、私は立って具体案を話す。
「みんなが何かの役になるんです!シンデレラや人魚姫、ロミオやジュリエット!衣装だけだとただのコスプレ喫茶になるので、ちゃんとその役になりきって接客するんです。シンデレラならガラスの靴をわざと置いていってみたりとか、人魚姫なら声が出ない演技をするとか、そんな感じです!」
「ふむ…みんなはどうだ?」
演劇部の女子達が真っ先に賛同の意を示してくれた。それにつられてなのか、他のクラスメイト達も面白そうだと話し合っている。これは、まさかの好感触!ドヤッと赤司を振り返ると、ものすごく蔑んだ眼差しを私にくれた。どうやら私が赤司に王子役をさせようとしている目論見がバレバレのようだ。これ部活の時に私死ぬやつや。
他にも出た案を、委員長が黒板に書き出していき、全員の意見をまとめ、結果、私の意見が採用となった。
そして次は誰が何の役をするか、料理担当、衣装担当、会計担当など分野分けが始まり、私は真っ先に手を上げる。
「そして私は料理当番をします!!」
「いや言い出しっぺのお前は接客しろよ!!」
「ていうか優姫料理できたっけ?」
「家庭科の授業思い出してくれる?!あと赤司から三つ星もらったわ!!」
「いや三つ星は出してない」
クラスメイトと赤司から突っ込みをもらうが、私は自分の得意分野が料理であることは自覚しているし、なにより!接客側になったらみんなの演劇が見られないじゃないか!断固として料理当番は譲らんぞ!
フンス!とみんなの意見を跳ね返していたら、ピコン、とさっきの私のように何かを閃いた顔を、赤司がしたではないか。そして綺麗に手を上げ、先生から指名され立ち上がる。
「僕を王子役として接客させるというなら、条件があります」
「あ、待って何言いたいかわかった赤司君ちょっと待って」
「優姫が姫役として接客するのなら、やりましょう」
「やっぱりいいいいいい!!先生みんな!惑わされちゃダメだ!赤司の王子役は見たいだろうけど、私の姫役も追加付与されるんだよ?!毒もついてきちゃんだよ?!」
「よし、赤司は王子役、水瓶は姫役で接客な。他のメンバーも決めるから案出せよー」
「先生の馬鹿あああああああ!!」
クラスメイト達の一件落着、という安堵の顔と、赤司の「ざまあみろ」という顔に私は心砕けた。
「ので、まゆゆ慰めて」
「お前の話聞いてるとオレいつラノベ読んでたっけ?って気分になるわ」
「リアルの話だよおおおお姫役とかやりたくないいいいい!!」
うわああんっと走り込みの最中に全貌をまゆゆに話して嘆く私。前を走る葉山先輩達も話を聞いていたらしく、振り返りながらにやあっと笑っている。
「赤司が王子で優姫が姫とか、めっちゃおもれー!」
「征ちゃんの王子役をもぎ取ってくるなんて、優姫ちゃん偉いわっ!」
「何作るんだ?牛丼?」
「明日その話し合いっす。でも多分牛丼はないんじゃないですかね…」
はあ、と溜息が漏れる。いやそりゃたしかに、劇で一度くらいは名前のある役とかやってみたいとか思ってたけど、まさかこんなにすぐにする羽目になるとは思わないじゃないか。しかも姫とか、姫とか!!
ぐうっと拳を握って呻いていたら、葉山先輩がまた振り返ってきた。
「そういや、姫っていっても何の姫やんの?」
「ああ…私がやるのは人魚姫です。赤司は人魚姫に出てくる王子役です」
「あらあら…黛サン、目が怖いわよ?」
「うっせーよ、前見て走れ」
「ってことは、優姫はしゃべれねーって設定か?」
実渕先輩とまゆゆが何か言い合っている横で、根武谷先輩がそう聞いてきた。そうです、と頷いて、私はまた遠い目をする。
「喋らなくていいのはいいんですけど、その分表情やボードでやりとりしなくちゃいけなくて…もたもたしちゃうと接客にならないし、自分で案出しといて難易度高いこと要求してたなーって実感して嘆いてます…」
「優姫なら大丈夫だって!オレ遊びに行くな!」
「ありがとうございます葉山先輩…!私も先輩達のとこ絶対行きますからね!!そういえば、うちの部も何かするんですよね?何するか赤司から聞いてます?」
「ああ、うちはね、クラシックコンサートよ」
「へ?」
「クラシックコンサートよ」
大事なことだから二回言いました、と言わんばかりに実渕先輩はにこりと笑った。
クラシック、コンサート。
「…いやそれ、どう考えても高校の学祭でやる種目じゃな」
「だらだらとお喋りをしながら走るとは、随分と余裕だな」
「「あ」」
「全員、プラス二十周。行け」
「「はい」」
先頭を走っていた赤司が、スピードを緩めいつの間にか私達と並走をしていて、真顔でこちらを見ていた。
そしてちゃっかりミスディレして逃げていたまゆゆ以外の全員、二十周を走り終えた時には息も絶え絶えに体育館に倒れ込んだのだった。
「優姫ちゃん!お願い!ほんとーにお願い!優姫ちゃんにしか頼めないの!」
「優姫ちゃん以外に頼める人いないの!」
「だからお願い!」
「「赤司君に王子様役をお願いしてきてほしいの!!」」
と、演劇部の女子達が私に頭を下げてきた。ちなみに今赤司は生徒会で席にはいない。
洛山の学祭は十月に二日かけて行われる。出し物は各クラス別、そして部活別の二つで、無論部活動をしている人は二つ掛け持ちが確定している。夏休みを明けてまずクラスで学祭の出し物は何をするのかの学級会が行われる。部活に支障のないよう、一日の最後の授業を使って、まさに今日その話し合いをする予定なのだけど。
どうやら、演劇部は演劇を推しているらしい。
「でもさ、演劇部も演劇するんでしょ?出し物被っちゃわない?」
「うちはほら、どうせ一年出れないし」
「それに、どこの部活ものどから手が出るほど欲しがってる赤司君が、うちのクラスの出し物で王子様してくれたら…!」
「絶対、学祭の優秀賞いけるじゃない?!」
「ていうか赤司君の王子様が見たい!」
「それ!でもお姫様は荷が重いから私はその辺の石ころでいい」
「ほんとそれ」
石ころになるのはとりあえずやめていただきたい。演劇部は率先して役を演じていただきたい。
それにしても、演劇かあ。小学生の頃からそういうのと縁がなくて、役はいつも背景だったから、少し憧れる。高校くらい、私も何か名前のある役をやってみたいなあ。
まあ私の願望は横に置いておき、少し疑問がある。
「なんで私が赤司にお願いする役なの?」
「だって赤司君と普通に話せるの優姫ちゃんくらいじゃない!!」
「恐れ多くて無理」
「男子に至っては断られたら賛同しながらひれ伏しそうって言ってるし」
「女子勢もほぼ同意。断られてもめげずに頼んでくれる人は優姫ちゃんしかいないの」
「蔑まれるのなんて慣れっこでしょ?」
「慣れてねーわ!!誰がドエムだ!!でも赤司の王子様とかめっちゃ見たいから頼んでみるね!!」
それでこそ優姫だーっ!!と、いつの間にかクラス全員が聞いていたらしく歓声があがった。
この半年ほどで、私のポジションがお笑い担当になってしまった気がしないでもない。解せぬ。
「…賑やかだね」
そして、ちょうど良いタイミングで生徒会の仕事を終えたらしい赤司が教室に入ってきた。一致団結したクラスメイトを見て、訝しげにしている。
コホン、と咳払いをして、クラスを代表とした私は赤司の前に立つ。
「えー、赤司君。クラス満場一致で、次の学祭は劇をすることが決まり、赤司君には栄えある王子様役が任命されました」
「僕のいない間に勝手に任命されても困る」
「いいじゃん王子様だよ?!男子だって本当は王子様やって気になるあの子のハートにダンク決めたいけど、それを赤司に譲ってくれたんだよ?!」
そこまで言ってねー!と男子の野次が入るが、聞かなかったことにした。
「WC予選とは時期もずれてるし、赤司は王子様役慣れてるっしょ?やれるって!」
「慣れてはいない、というかしたことはないよ」
「は?!赤司様とあろうものが王子役をしたことがない?!」
「様をつけるな」
そんな…赤司君が王子様未経験だなんて!と女子の嘆きが聞こえるが、そちらも聞かなかったことにした。
「そもそも、王子役といっても何の王子なんだ?」
「あ、そういえば知らない。ねー劇って何するの?ロミジュリ?」
振り返って尋ねたら、演劇部の女子が嬉しそうに本を手に持ってきた。あれは図書室で借りた本だろうか。
「ロミジュリは演劇部がするから、うちは人魚姫をしたいと思います!」
「人魚姫って王子がクソなやつじゃ…はっ、まさかみんなそれで赤司を抜擢…」
「誤解だから!!優姫ちゃんそうやって軽率に赤司君に喧嘩売るのやめよ?!」
「あいたたたた赤司頭鷲掴みするのやめて弾ける、弾けるから!!」
私が赤司から制裁を食らっている間、クラスメイト達は「ああいつものが始まったね」「そっとしておこうね」と傍観を決め込んでいる。くっそー!みんな覚えてろよー!!
結局赤司からの了承を得られないまま、あっという間に学級会の時間になった。そして、スタートから先生に爆弾を落とされた。
「えー、実は学祭二日とも、体育館が予約でいっぱいになってしまった。出遅れた。ほんとにすまん」
「「えええええええ!!」」
まさかの出遅れ!!隣を見れば、赤司が心なしかほっとしているように見えた。クラスメイト達も赤司に王子役をさせられないことにガッカリしている。何か良い方法はないだろうか。赤司に王子役をさせられて、体育館を使わなくてよくて、かつできれば学祭優秀賞を狙えるアイディア。
ピコン、と、突然閃いた。
バシンッ!!
「はい!!」
「早押しクイズじゃないから机を叩くな水瓶。ほら、言ってみろ」
「執事喫茶メイド喫茶ならぬ、演劇喫茶はどうでしょう!!」
ほう、と先生が続きを促してきたので、私は立って具体案を話す。
「みんなが何かの役になるんです!シンデレラや人魚姫、ロミオやジュリエット!衣装だけだとただのコスプレ喫茶になるので、ちゃんとその役になりきって接客するんです。シンデレラならガラスの靴をわざと置いていってみたりとか、人魚姫なら声が出ない演技をするとか、そんな感じです!」
「ふむ…みんなはどうだ?」
演劇部の女子達が真っ先に賛同の意を示してくれた。それにつられてなのか、他のクラスメイト達も面白そうだと話し合っている。これは、まさかの好感触!ドヤッと赤司を振り返ると、ものすごく蔑んだ眼差しを私にくれた。どうやら私が赤司に王子役をさせようとしている目論見がバレバレのようだ。これ部活の時に私死ぬやつや。
他にも出た案を、委員長が黒板に書き出していき、全員の意見をまとめ、結果、私の意見が採用となった。
そして次は誰が何の役をするか、料理担当、衣装担当、会計担当など分野分けが始まり、私は真っ先に手を上げる。
「そして私は料理当番をします!!」
「いや言い出しっぺのお前は接客しろよ!!」
「ていうか優姫料理できたっけ?」
「家庭科の授業思い出してくれる?!あと赤司から三つ星もらったわ!!」
「いや三つ星は出してない」
クラスメイトと赤司から突っ込みをもらうが、私は自分の得意分野が料理であることは自覚しているし、なにより!接客側になったらみんなの演劇が見られないじゃないか!断固として料理当番は譲らんぞ!
フンス!とみんなの意見を跳ね返していたら、ピコン、とさっきの私のように何かを閃いた顔を、赤司がしたではないか。そして綺麗に手を上げ、先生から指名され立ち上がる。
「僕を王子役として接客させるというなら、条件があります」
「あ、待って何言いたいかわかった赤司君ちょっと待って」
「優姫が姫役として接客するのなら、やりましょう」
「やっぱりいいいいいい!!先生みんな!惑わされちゃダメだ!赤司の王子役は見たいだろうけど、私の姫役も追加付与されるんだよ?!毒もついてきちゃんだよ?!」
「よし、赤司は王子役、水瓶は姫役で接客な。他のメンバーも決めるから案出せよー」
「先生の馬鹿あああああああ!!」
クラスメイト達の一件落着、という安堵の顔と、赤司の「ざまあみろ」という顔に私は心砕けた。
「ので、まゆゆ慰めて」
「お前の話聞いてるとオレいつラノベ読んでたっけ?って気分になるわ」
「リアルの話だよおおおお姫役とかやりたくないいいいい!!」
うわああんっと走り込みの最中に全貌をまゆゆに話して嘆く私。前を走る葉山先輩達も話を聞いていたらしく、振り返りながらにやあっと笑っている。
「赤司が王子で優姫が姫とか、めっちゃおもれー!」
「征ちゃんの王子役をもぎ取ってくるなんて、優姫ちゃん偉いわっ!」
「何作るんだ?牛丼?」
「明日その話し合いっす。でも多分牛丼はないんじゃないですかね…」
はあ、と溜息が漏れる。いやそりゃたしかに、劇で一度くらいは名前のある役とかやってみたいとか思ってたけど、まさかこんなにすぐにする羽目になるとは思わないじゃないか。しかも姫とか、姫とか!!
ぐうっと拳を握って呻いていたら、葉山先輩がまた振り返ってきた。
「そういや、姫っていっても何の姫やんの?」
「ああ…私がやるのは人魚姫です。赤司は人魚姫に出てくる王子役です」
「あらあら…黛サン、目が怖いわよ?」
「うっせーよ、前見て走れ」
「ってことは、優姫はしゃべれねーって設定か?」
実渕先輩とまゆゆが何か言い合っている横で、根武谷先輩がそう聞いてきた。そうです、と頷いて、私はまた遠い目をする。
「喋らなくていいのはいいんですけど、その分表情やボードでやりとりしなくちゃいけなくて…もたもたしちゃうと接客にならないし、自分で案出しといて難易度高いこと要求してたなーって実感して嘆いてます…」
「優姫なら大丈夫だって!オレ遊びに行くな!」
「ありがとうございます葉山先輩…!私も先輩達のとこ絶対行きますからね!!そういえば、うちの部も何かするんですよね?何するか赤司から聞いてます?」
「ああ、うちはね、クラシックコンサートよ」
「へ?」
「クラシックコンサートよ」
大事なことだから二回言いました、と言わんばかりに実渕先輩はにこりと笑った。
クラシック、コンサート。
「…いやそれ、どう考えても高校の学祭でやる種目じゃな」
「だらだらとお喋りをしながら走るとは、随分と余裕だな」
「「あ」」
「全員、プラス二十周。行け」
「「はい」」
先頭を走っていた赤司が、スピードを緩めいつの間にか私達と並走をしていて、真顔でこちらを見ていた。
そしてちゃっかりミスディレして逃げていたまゆゆ以外の全員、二十周を走り終えた時には息も絶え絶えに体育館に倒れ込んだのだった。